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クリスチャン・イェーガー「通常事例手法という 特別な考慮の下での構成要件と量刑の間の相関 関係⎜⎜ならびに量刑に方向づけられた解釈の

意義についての考察」

野 澤 充(訳)

〔翻訳者はしがき〕

以下に紹介するのは、フランツ・シュトレンク70歳祝賀論文集に掲載された、ク リスチャン・イェーガー教授による論文「通常事例手法という特別な考慮の下での 構成要件と量刑の間の相関関係⎜⎜ならびに量刑に方向づけられた解釈の意義につ いての考察」(Christian Jager, Wechselbeziehungen zwischen Tatbestand und Strafzumessung unter besonderer Berucksichtigung der Regelbeispielsmethode‑

Zugleich  eine  Betrachtung  zur Bedeutung  der strafzumessungsorientierten Auslegung ‑,Festschrift fur Franz Streng zum 70.Geburtstag,2017,S.285‑294)

の翻訳である。イェーガー教授は現在、エアランゲン・ニュルンベルク大学教授で あるが、その経歴については法政研究81巻1・2合併号(2014年)F47頁以下を参照 して頂きたい。

本論文の内容は、量刑規定、とりわけ各則における、いわゆる「通常事例(Regel- beispiel)」と呼ばれる形式の規定に関して、これらの規定が構成要件解釈に与える 影響について検討するものである。

通常事例」の規定形式とは具体的には、例えばドイツ刑法の各則において窃盗罪 が242条に規定され、その加重類型が243条に「特に重大な窃盗事例」として規定さ れているが、この243条の規定の文言は、「特に重大な場合において、窃盗は3月以 上10年以下の自由刑により処罰される。」とその第1項第1文に定めたうえで、その 第2文に「特に重大な場合とは、通常〔in der Regel〕次のような場合である、す

(2)

なわち、行為者が……」として、それ以下に第1号から第7号までにいくつかの事 例が列挙されている(後掲の【参考条文】を参照)。このような「『通常』次のよう な場合」という規定の文言から、243条第1項第2文第1号ないし第7号は、「制限 列挙」として「『特に重大な窃盗』と評価される場合の要件」を定めたものではなく、

あくまでも「例示列挙」として「『特に重大な窃盗の事例』と評価され得るような場 合を単純に例示したもの」と考えられているのである(例えば、Adolf  Schonke/

Horst Schroder/ Albin Eser/ Nikolaus Bosch, StGB, 28.Aufl., 2010, 243 Rn.1 などを参照。「加重事由は、完結した評価規定としてはもはや規定されていないので あって、単なる通常事例としてのみ規定されているのである。」)。すなわち、客観的 構成要件としては242条の窃盗罪としての要件を満たしつつ、それが「特に重大な場 合」であるということだけで243条は成立し得ることになるのである。これにより、

243条第1項第2文第1号ないし第7号に明示的に挙げられた事情が存在せずとも、

「『特に重大な窃盗である』と評価され得る事情」を裁判所が示しさえすれば243条 は成立し得るし、また逆に243条第1項第2文第1号ないし第7号に挙げられた事情 が明らかに存在する事案であったとしても、裁判所の判断により「特に重大な窃盗 の事例ではなかった」として243条の成立を認めな い こ と も あ り 得 る の で あ る

(Schonke/ Schroder/ Eser/ Bosch, a.a.O., 243 Rn.1)。このような観点から、

243条第1項第2文第1号ないし第7号の部分は、「構成要件規定」ではなく、むし ろ「量刑規定」であると考えられているのである(Thomas Fischer,StGB, 60.Aufl., 2013, 243 Rn.2)。

構成要件の内容が量刑に影響することは当然のことであるといえるが、逆に、量 刑規定についての考慮が構成要件の解釈に影響することはあり得るのであろうか。

本論文はこの問いに対して「あり得るもの」とした上で、それに関するいくつかの 例を挙げている。すなわち、⑴刑法250条第1項第1号bの構成要件該当性が、その 法定刑の重さの観点から否定される場合があり得ること、⑵刑法244条が成立する場 合に刑法243条の事情を量刑上考慮することの可否、⑶強盗罪(249条)と強盗的恐 喝罪(255条)の区別に関して、とくに恐喝罪(253条)および強盗的恐喝罪がいわ ゆる被害者の「財産処分」を要件として必要とするのかどうかの判断、⑷詐欺罪(263 条)において「経済的困窮を被害者にもたらしたこと」によりその財産損害性を肯

(3)

定して詐欺罪の成立を認めることの可否、などである。これらの検討を通じてイェー ガー教授は、構成要件の客観的・主観的要素が量刑の側面に影響を及ぼすだけでは なく、逆に量刑レベルもまた構成要件に反作用を及ぼすことを示し、その結果、構 成要件段階と量刑段階の間に多くの相互作用が存在することが明らかになったとし ている。またその際にまさに「通常事例」規定形式から、個別の構成要件要素の評 価のための逆推論が引き出されたともしている。

日本においてはこのような「通常事例」の規定形式が採用された条文は刑法典に 存在しないものの、例えば「不動産侵奪罪」(235条の2)の「侵奪」概念の解釈に 際して、その法定刑(の上限)が、所有権侵害を内容とする窃盗罪(235条)と同じ

「十年以下の懲役」となっていることから、不動産侵奪罪は単なる利用妨害罪では なく、「(不法領得の意思に基づく)所有権侵害にも匹敵する占有侵奪」が必要なの であって、よって単に「一時的に利用」する場合には成立しない(大阪高判昭和40・ 12・17高刑集18‑7‑877、東京高判昭和53・3・29高刑集31‑1‑48など)と解釈される など、法定刑から構成要件の実質的な内容解釈が行われることはあり得るものと考 えられる。また、上述の⑶において問題とされた、本文中に挙げられている例1の 事例(言うなれば⎜⎜「使用窃盗」ならぬ⎜⎜「使用強盗」の事例)をどのように考 えるのか、2項強盗罪において「不法領得(利得)の意思なき強盗」は成立し得る のかなど、日本でも検討すべき点・参考とすべき考え方が見られるものであり、よっ てここで紹介する次第である。

なお、本文はほぼ原文どおりであるが、日本語としてわかりにくい表現の箇所に 関して、意訳した部分があることを御承知頂きたい(言葉を訳者が完全に補うなど した場合には、〔〕括弧内に示した)。また、脚注についてはできるだけ原論文の脚 注を補足するような形で文献名等を記載するように努め、さらに章番号の明確な誤 植を修正した〔Ⅲ→Ⅳ〕。なお、文末脚注(ローマ数字の注)は本文の補足説明とし て訳者が説明を加えたものであるので、文末脚注の文責は訳者にある。また、末尾 に参考となるであろうドイツ法の条文の日本語訳を挙げた。

* * *

(4)

被祝賀者〔Franz Streng〕は、既に3版を重ねるその教科書が強く証明している ように、制裁法の大家で

(1)

ある。量刑問題が教育において不当にも影のような存在で あることについて如実に物語る証拠は、Franz Strengがその教科書の冒頭において 確言しているように、しかるべき声が量刑問題の部分の法発見を、「クライマックス」

として、「最高点」として、そして「判断形成の最も困難な部分」として呼んでいる にもかかわらず、〔そのように扱われていることが〕そうである。その際にまさに、(2) これまで不十分にしか学問的に意識されてこなかった、構成要件評価と法律効果評 価の多くの相互作用が明らかになるがゆえに、教育において制裁法が低い位置に置 かれていることは、不当なものであることになるのである。したがって以下の論考 は、量刑法の観点の解釈論的な関連性に対する展望を研ぎ澄ますためのささやかな 検討を行うものである。

Ⅰ. 量刑レベルと構成要件レベルの間の相互関係の表れとしての法定 刑に方向づけられた解釈

法定刑に方向づけられた解釈」というキャッチフレーズのもとに、Kudlichはそ の2003年に公表された大学教授資格講演において、構成要件解釈のために、法定刑(3) の意義に対して注目すべき視線を投げかけ、そして当然にも、法定刑に方向づけら れた解釈の意義について何らの疑いも存在し得ないことを指摘した。その際にここ(4) では、このような法定刑による方向づけが解釈基準の内部に独立性を必要とし得る ものであるのか、もしくはそれは結局は体系的解釈ないしは目的論的解釈の下位の 場合のみを形作るものなのかは、未解決のままである。

法定刑に方向づけられた考察についての例は、例えば刑法211条による謀殺要件の(ⅰ) 解釈を提供する。そこでは原則的に限定的な取り扱いが一般的に認められているの である。したがって例えばSinnにおいて、Hornに由来する適切な指摘が見られる、

Franz Streng, Strafrechtliche Sanktionen, 3. Aufl., 2012.

Streng, Strafrechtliche Sanktionen(脚注1), Rn.2.

Hans Kudlich, Die strafrahmenorientierte Auslegung  im  System  der strafrechtlichen  Rechtsfindung, ZStW 115(2003), S.1ff.

ここと次の個所についてはKudlich,ZStW 115(2003),S.1ff.;SK-StGB/Hans-Joachim Rudol- phi/Christian Jager, 8.Aufl., 144.Lfg. (August 2014), 1Rn.34aもまた参照。

(5)

すなわち「刑罰は弾力性がないので、概念は柔軟性のあるものでなければならな

(5)

い」、と。さらなる例を刑法250条第1項第1号bが形成している。そこでは、利用 された客体がその脅迫的特徴をとりわけ欺 により充足する限りにおいて、その適 用が断念されるのである(いわゆるLabello〔訳者注:リップクリームの商品名〕

(6)

判決)。ここではとりわけ、刑法250条第1項の重い法定刑がそのような場合には正 当化できないことが指摘されているのである。したがって判例は、刑法250条第1項(7) 第1号bの適用領域から、携行された客体が客観的考察においてその外見的な見か けによれば明らかに危険ではないような場合を排除したのである⎜⎜このことは例 えばLabello判決においては事実そうであったのだが、その〔リップクリームの〕助 けによって強盗犯はそのズボンのポケットを膨らませ、武器を所持しているように 装った場合のように。(8)

BGHは、実行行為の欺 的特徴が重要な位置を占めている場合の刑法250条第1 項第1号bの否定を、刑法250条第1項第1号bの重い刑罰が刑法249条との関係で 正当化され得ないことによって、そのような場合に常に根拠づけている。(9)

しかし他方でBGHはごく最近になって、いわゆるTrolley事例〔キャリーバック

(10)

事例〕において、刑法250条第1項第1号bの適用を肯定した。その事例では、恐喝 者がスーツケース〔キャリーバック〕を持って銀行に入り、そして金銭の引き渡し に関するその要求を、彼がキャリーバックの中に爆弾があるかのように装うことに よって強調した。しかし当該事例はおそらく、欺 の優先と脅迫の優先に関する区 別が、実際上貫徹され得ないということのみを示すものであった。なぜならTrolley 事例においても当該行為者はその目的を欺 によって達成しようと試みたからであ る。その限りにおいて、行為者のズボンのポケットに武器の代わりにリップクリー ムがあったのか、もしくはスーツケースの中に爆弾の代わりに空気だけがあったの

SK-StGB/ Arndt Sinn, 8.Aufl., 125.Lfg. (Oktober 2010), 211 Rn.8、既に以前においてSK- StGB/Eckhard Horn, 5.Aufl., 30.Lfg. (1993), 211Rn.6.

BGH  NStZ 1997, 184、その論評としてOlaf Hohmann, Anmerkung, NStZ 1997, 185.

それについて、およびさらなる例についてはKudlich, ZStW 115(2003), S.6ff.参照。

BGH  NJW 1996, 2663、同様に筒状プラスチックケースにおいて、BGHSt 38, 117ff.、その論 評としてWolfgang Mitsch,NStZ 1992,434、もしくは木片において、BGH NStZ-RR 1996,357、

もしくは派手な色の水鉄砲において、BGH  NStZ 2011, 703.

確立した判例である、例えばBGH  NStZ 2007, 333、その論評としてHans Kudlich, JR 2007, 379およびMatthias Jahn,JuS 2007,583;BGH  NStZ-RR 2007,375;BGH  NStZ 2011,703;BGH  Beschluss v. 23.5.2013‑4StR 143/13を参照。

BGH  NStZ 2016, 215.

(6)

かは、何らの役割も果たさない。なぜなら両方の事例において、被害者は中身を見 ることができなかったからで

(11)

ある。したがって、Labello判例がそもそも厳格に根拠 づけられたのかどうかについてたとえ著しい疑念が存在したとしても、当該判例が 結局として量刑考慮を指摘してのみ今やすでに20年を越えて維持され得たことは、

やはり注目すべきことであり、そしてそれ以上に、量刑考慮が明らかに特別な説得 力を内在していることをも示しているのである。しかし同時に、挙げられた例から は、量刑考慮が構成要件解釈においては原則的に何ら隔絶された役割を演じること は許されないのであって、常に事例比較において確証を必要とするものであること もまた明らかである。したがって当然にも、すでにKudlichもまた、量刑に方向づけ られた解釈が通常は補助的にのみ援用され得るということを指摘している。しかし(12) このことは、構成要件レベルと量刑レベルの間の相互作用が否定され得ないことに ついて、何も変更するものではない。もっともその限りにおいては、どの程度まで そのような相互作用がまさに構成要件と似たように形作られた量刑規定において書 き留められ得るのかという問題は、光を当てられていないままである。

Ⅱ. 通常事例への構成要件の影響

1. 通常事例への客観的構成要件の影響

ここで未解決であるのはとりわけ、加重構成要件が通常事例とどのような関係に あるのか、ということである。それについての最も著名な例は、刑法243条に対する 刑法244条の関係である。ここで今日まで通説は、刑法243条第1項第2文第1号が 構成要件に類似して形作っていることを理由として、このような243条第1項第2文 第1号は、刑法244条の6月というより重い法定刑の下限を理由として、特別関係と いう方法で、刑法244条の背後へと隠れることを出発点として

(13)

いる。しかしながらそ

当該批判についてはすでに、学説からのさらなる指摘とともに、Christian Jager,Eine bombige  Tauschung, JA 2016, 72.

Kudlich, ZStW 115(2003), S.13.

したがってすでにTatjana Hornle, Die wichtigsten A  ̈nderungen des Besonderen Teils des StGB durch das6.Gesetz zur Reform des Strafrechts,Jura 1998,171、同様にFrank Zieschang, Der praktische Fall ‑Strafrecht:,,Der rachsuchtige Hundeliebhaber“,JuS 1999,52;Christian  Fahl, NJW 2001, 1700、異なる見解 と し て Walter Gropp, Der Diebstahlstatbestand unter

 

(7)

れは反論されるべきものである。不法の同等性が存在する限りにおいて、むしろ刑 法46条第3項の二重評価

(ⅱ)

禁止に抵触するのである。したがって、行為者が住居に侵 入した(刑法244条第1項第3号)場合に、このような侵入がもう一度刑法243条第 1項第2文第1号により刑罰を重くするように考慮されることは許されないのであ る。すなわちここでは刑法244条の構成要件が刑法46条第3項に関して不法の同一性 を理由として量刑を排除するような効果を持つのであり、その結果罪数論レベルで の排除はもはや必要ではないのである。しかし不法の同一性が欠ける場合において も、実際には罪数論の問題ではない。これについて例となるようなのは、例えば窃 盗犯がガソリンスタンドに侵入し(そしてそれにより刑法243条第1項第2文第1号 を実現した)、そしてその際にナイフを携行した(そしてこの方法で刑法244条第1 項第1号a第2選択肢を充足する)ような事例である。ここでは確かに243条の量刑 枠は既に完全に、244条の量刑枠の中に含まれている。しかしながら行為者がガソリ ンスタンドに侵入したことを、刑法244条の量刑枠の内部でよく十分に考慮されるこ とは許されるべきである、なぜなら行為者が追加的に刑法244条を実現したことを理(14) 由としてのみこのような量刑要因が考慮されるべきでなくなる、というのは、理解 され得ないからである。このことがまったくもって明白となるのは、例えば刑法244 条第1項第1号a第2選択肢に対する刑法243条第1項第2文第6号の関係におい てである。ここでは同様に、どうして行為者がナイフを携行していたことを理由と してのみ被害者の無力さという量刑の観点が考慮されるべきでなくなるのかは、理 解され得ない。逆にそれに加えて、被害者の無力さは行為実行の枠内では、単なる ナイフの携行よりも〔刑罰が〕より重くなり得る。ここで考慮の可能性が独立した 量刑関連性から明らかになり、そしてそれゆえに実際には、このような問題は普通 一般に議論されているような観念的競合の観点では何も行う必要がないのである。(15)

besonderer Berucksichtigung der Regelbeispiele,JuS 1999,1047(排除関係〔Ausschlussverhalt- nis〕)。

したがって結論において当然にBGH  NStZ 2003, 186もそうである。

ただしそれぞれさらなる指摘とともに、Adolf Schonke/ Horst Schroder/ Albin Eser/ Ni- kolaus Bosch,StGB,29.Aufl.,2014, 244Rn.36およびKarl Lackner/Kristian Kuhl,StGB,28.

Aufl., 2014, 244Rn.13を参照。

(8)

2. 通常事例への主観的構成要件の影響

構成要件と法律効果との間の関連性は、主観的行為側面において最も明白となる。

その限りにおいては、故意が通常事例の実現にも関連していなければならないとい うことは、一般的に承認されている。それゆえに主観的行為側面は、行為者に少な(16) くとも刑罰の加重を根拠づける事情が認識されていなければならないという方法で 影響を及ぼすのである。量刑規定においてこのような要件は、構成要件と同様に形 作る作用をもつものであることを理由として、本質的には争われていない。ここで はせいぜいのところ、完全に明記されていない刑罰減軽事由ないしは刑罰加重事由 に関連しての論争が多くなされている。すなわち例えば、行為者が刑罰を加重する もしくは刑罰を減軽する根拠となる事情をそもそも認識していなかった場合に、と くに重大な事例ないしはあまり重大ではない事例が認められ得るのかどうかが議論 されている。ライヒ裁判所はここでなお、量刑は完全に主観的な行為の状況に左右 されずに評価されるべきであるという見解を主張

(17)

した。それに対して通説的な見解 は当然にも、量刑の側面は構成要件側面から明白に切り離され得るものではないと いうことを出発点としている。なぜなら減軽は行為実行の事情から、そしてそれと ともに実行行為から明らかにならねばならないからである。したがって行為者は少(18) なくとも、加重または減軽が生じるような事情を認識していなければならない。そ れに加えて、量刑規定においても明記されていない刑罰変更事由が問題となる。な ぜならそれに加えて裁判官は、立法者によって具体化された通常事例において、個々 の場合においてその適用を見合わせることができるからである。しかしもしそうで ある場合には、通常事例においては故意関連性を要求し、そして完全に明記されて いない刑罰変更事由においてはそのような故意関連性を断念するのは、矛盾してい るように思われる。

ただしそれぞれさらなる指摘とともに、BGHSt 26, 246;Claus Roxin, AT Ⅰ,4.Aufl.,2006, 12 Rn.143f.; Jorg Eisele, Die Regelbeispielmethode im  Strafrecht, 2004, S.284;同じくJorg  Eisele,Die Regelbeispielsmethode :Tatbestands-oder Strafzumessungslosung?,JA 2006,312 を参照。

RGSt 68, 391;RG JW 38, 504;NK-StGB/Ingeborg Puppe,4.Aufl.,2013, 16Rn.17、不明確 なのはGeorg Furtner, Der ,,schwere“, ,,besonders schwere“und ,,minder schwere Fall“im  Strafrecht, JR 1969, 12.

さらなる指摘とともに、Reinhart Maurach/Heinz Zipf, AT/1, 8.Aufl., 23Rn.18参照。

(9)

Ⅲ. 構成要件レベルへの通常事例の先行作用

1. 法定刑に方向づけられた解釈という意味での、構成要件を形作るような、通常 事例の先行作用

a)通常事例の構成要件類似性に基づく先行作用

通常事例は、その構成要件に類似して形作る作用をもつことに基づいて、特別な 方法で法定刑に方向づけられた解釈のために適切なものである。なぜならその存在 から、およびその立法上きちんと整理された内容から、場合によっては構成要件解 釈についての具体的な逆推論が導き出され得るからである。

b) 量刑問題としての、強盗および(強盗的)恐喝の限界づけに関する未解決の論 争

通常事例からのそのような法獲得の可能性は、例えば強盗と強盗的恐喝の限界領 域において、今日まで大きく争われている法問題の解決のために貢献することがで きるであろう。ここでは刑法上の議論の重点は、恐喝の構成要件ならびに強盗的恐 喝の構成要件は奪取によっても実行され得るのか、もしくは刑法253条、255条は常 に任意な利用の自由を前提とする被害者態度を、財産処分という意味で必要とする のかどうか、という問題をめぐって

(19)

いる。

ここで学説の大部分は周知のごとく、恐喝および強盗的恐喝はそのような財産処 分を必要としているということから出発するが、その一方で(20) 判例および学説の残り(21) の部分は、このような構成要件の実現を、被害者が単に行為者による奪取を黙認す(22)

Otto, Strafrecht BT 2, 6.Aufl., 2002, S.264参照。

Gunther Arzt/ Ulrich Weber/ Bernd Heinrich/ Eric Hilgendorf, Strafrecht BT, 3.Aufl., 2015, 18Rn.14;Gregor C. Biletzki, Die Abgrenzung von Raub und Erpressung, Jura 1995, 636f.;Schonke/Schroder/Eser/Bosch,StGB,(脚注15), 253Rn.8;Thomas Fischer,StGB,63.

Aufl., 2016, 253Rn.5,9ff.;Volker Krey/Uwe Hellmann/Manfred Heinrich,Strafrecht BT 2,16.Aufl.,2012,303ff.;Wilfried Kuper,NJW 1978,956;Rudolf Rengier,Strafrecht BT 1,18.

Aufl., 2016, 11 Rn.37, 同じくRudolf Rengier, Die ,,harmonische“Abgrenzung des Raubes  von der rauberischen Erpressung entsprechend dem  Verhaltnis von Diebstahl und Betrug, JuS 1981, 660;MK-StGB/Gunther M. Sander, 2.Aufl., 2012, 253Rn.3, 13ff.

BGHSt 14,387;BGHSt 25,228;BGHSt 41,125;NStZ-RR 1997,321、その論評としてSteffen  Cramer, NStZ 1998, 299およびRalf Krack, NStZ 1999, 134;BGH  NStZ 1999, 350;BGH  NStZ 2003, 605;BGH  NStZ 2011, 701;OLG Celle NStZ 2012, 448.

Volker Erb, Zur Bedeutung der Vermogensverfugung fur den Tatbestand der Erpressung  und dessen Verhaltnis zu Diebstahl und Raub, in: Holm  Putzke u.a. (Hrsg.), Herzberg-FS, 2008,S.727;Gerd Geilen,Raub und Erpressung,Jura 1980,51;Christian Jager,Strafrecht BT,

(10)

る場合にも肯定する。

財産処分を必要とする見解は、これがとりわけさもなければ刑法249条の規定が完 全に不必要なものとなるであろうという論拠によって根拠づけられている。なぜな ら判例によれば加重的な強要による奪取はいずれにせよ既に刑法255条による強盗 的恐喝罪の構成要件を、その強盗と同様の刑罰の反作用によって充足するであろう からである。それ以上に、刑法249条が判例の理解に関して特別構成要件としてのみ(23) 理解されることになる点が反論として挙げられる。立法者は普通一般には基本構成 要件を特別構成要件の前に規定するものなので、刑法249条が一般的な刑法253条、

255条の前に存在しているのは体系的ではないことになってしまうのである。

もっとも、学説においては、BGHに従い、そして刑法253条、255条の実現のため には、奪取の黙認でも十分とされ得るという意見が増えている。理由づけのために(24) とりわけ、財産処分という要件によって、特定の状況において、被害者を暴力的に 奪取の黙認へと強要したような行為者を不適切にも優遇してしまうことになるであ ろう、という論拠が引用される。

例1:Aは不法領得の意思なしにタクシーで小旅行をして、そして車両を引き続いて再びタク シー事業者のもとに返却するという計画を実行しようとした。それゆえに彼はタクシー事業者 を拳で殴打して意識をなくさせ、被害者のズボンのポケットから鍵を取り去り、小旅行を行っ て、そして車両を⎜⎜意図したように⎜⎜返却した。

例2:例1におけるように、Aは小旅行を計画しようとした。しかし今回は彼はタクシー事業 のオーナーに、オーナーが鍵を引き渡さない場合には殴打するとだけ脅した。タクシー事業者 は確かに、鍵を引き渡さないことによって彼がそのタクシーという一時的な損失を避けること ができるであろうことを前提としつつも、ズボンのポケットに携行していた鍵を行為者に手渡 した、なぜなら彼は殴り合いの場合には、確かに勝つけれども、しかしおそらく怪我をも負う であろうことから、殴り合いに巻き込まれたくなかったからである。

6.Aufl.,2015,Rn.376;SK-StGB/Sinn,(脚注5)Vor 249Rn.16ff.;Bernd Hecker,Die Strafbar- keit des Ablistens oder Abnotigens der personlichen Geheimnummer,JA 1998,305;LK-StGB/

Joachim Vogel,12.Aufl.,2010, 253Rn.13f.;NK-StGB/Urs Kindhauser,4.Aufl.,2013,vor 249 Rn.44ff.

MK-StGB/Sandner,(脚注20) 253Rn.16;Urs Kindhauser,Strafrecht BT/2,9.Aufl.,2016, 18Rn.7ff.;Johannes Wessels/Thomas Hillenkamp,Strafrecht BT/2, 38.Aufl.,2015,Rn.712.

最近でも再び強調するのは、さらなる指摘とともに、Wolfgang Mitsch, Strafrecht BT/2, 3.

Aufl., 2015, S.602.

(11)

ここで、刑法253条、255条のためには財産処分を必要とするという学説の見解に従 う場合には、明確な量刑法上の評価矛盾が現れている。なぜならタクシー事業者を 粗暴に打ち倒すことによって即座に絶対的強制へと着手した行為者(例1)は、刑 法253条、255条ではなくて、刑法240条、248b条および223条によってのみ処罰され 得ることになる、なぜなら奪取は存在するが処分は存在しないからである。それに 対して、殴打を予告して脅迫した行為者(例2)は、支配的な学説の見解によれば、

より厳しい刑法253条、255条から答責的とされ得る、なぜならば被害者はこのよう な場合において、鍵の引き渡しという形式で処分へと強要されたからである。

c) 限界問題の、法定刑に方向づけられた評価づけ

しかし場合によっては、ここでもまた問題の解決のための根拠は量刑の観点から 獲得され得るのである。このような関連において興味を引くのは、ほとんど考慮さ れていなかった刑法253条第4項の量刑規定である。

ここでまず第一に注目すべきなのは、第6次刑法改正法が単純恐喝について〔刑 法253条第4項第2文により〕明文で、刑法263条第3項第2文第1号の量刑規定の みを引き継いだが、しかし刑法263条第3項第2文第2号ないし第5号の通常事例を 引き継がなかったことである。既にこのことは場合によっては、立法者が詐欺との 大きすぎる観念上の近接性の確立を、刑法253条において処分基準を必要と主張する 支持者に追加的な論拠を提供することを恐れてしり込みしたことについての証拠と なり得るものであろう。

しかしそれ以上に、刑法253条第4項の量刑規定は場合によっては、奪取の黙認も また恐喝にとって十分であるかどうかという問題に関する議論が、刑法249条と刑法 255条の関係とはわずかにしか結びついておらず、まず第一には独立して刑法253条 と結びつくべきであろうことをも示すものである。その際には刑法253条第4項は、

立法者がこのような通常事例の採用に際して、上納金の恐喝にはより重い刑罰で対 応されなければならないという考え方によって導かれたことを明白にするものであ る。その限りにおいて刑法253条が、物に対する暴行のみを把握していることが、顧 慮されるべきである。このことは刑法255条についての逆推論から明らかになる、す(25) なわち刑法255条は人に対する暴行の使用を処罰しているのである。したがって刑法

(12)

253条第4項において立法者は、例えば被害者の家財を壊すことによって、被害者に 上納金を強要するような恐喝集団を念頭に置いていたので

(26)

ある。

物に対する暴行の使用の際にはいずれにせよ刑法253条による単純恐喝のみが関 連し得る〔(すなわち、刑法249条の強盗および刑法255条の強盗的恐喝は成立し得な い⎜⎜訳者注)〕ので、このような規定の適用領域の問題が、上納金の恐喝者が被害 者の財産客体を処分によって引き渡させたか、もしくはこれを自分自身で取ったの かによって本当に左右され得るのかどうかというのは、ここではやはり非常に疑わ しいように思われる。なぜならまさにここで、量刑法上の拒絶がとくに明確な方法 で示されているからである。すなわち、強要によって強いられた客体の奪取に際し て、〔「刑法253条では被害者の財産処分が必要である」とする学説を前提に、その財 産処分がないことを理由として〕刑法240条および303条のみを使用する場合には、

その法定刑は3年以下の自由刑であることになる(ただし刑法240条第4項第1文に より、明記されていない重大事例の承認によって5年以下にまで最大限重くされ得 る)。それに対して刑法253条第4項と関連しての刑法253条第1項を使用する場合に は、法定刑は1年以上15年以下の自由刑であることになるのである。

刑法253条の独立した考察において、体系的な論拠もまた効果がない。「特別構成 要件は通常はより一般的な構成要件の後におかれる」という。なぜならそれに関し ては、既に刑法253条は刑法249条との関係において、まずもって第一に完全に異な る不法(すなわち、例えば人に対する暴行の代わりに、物に対する暴行という形式 において、加重されない強要手段の把握)を形成しているのである。その限りにお いて立法者がこのような不法を直接に刑法249条以下によって別個に規定したこと が理解可能なのであり、そして立法者がその場合に、刑法253条の加重されない強要 構成要件を基礎にして、刑法255条の加重された強要構成要件を体系的に、このよう な基本規定と関連してはじめて規定したということは、追体験可能なものとしても 明らかになっている。

ただしそれについてはMitsch, BT/2 (脚注24), S.585; NK-StGB/ Kindhauser, (脚注22) 253 Rn.4を参照。

刑法253条第4項は、1994年12月1日に施行された犯罪撲滅法によって挿入され、そして組織犯 罪行為の典型的な現象形式としての上納金の取り立ての阻止という目的に明文で役立つもので あった。BT-Drucks. 12/6853, S.27を参照。

(13)

結局のところいずれにせよ、立法者が刑法253条第4項の控えめな定式化によっ て、刑法263条への準拠を回避したことだけではなく、このような通常事例から、奪 取の黙認が恐喝において、そしてそれを基礎にして(はじめて)強盗的恐喝におい ても、十分なものであると説明するような解釈のための根拠が明らかになったこと をも示しているのである。

2. 逆の二重評価禁止の意味における、構成要件を阻却するような先行作用 a)総論

通常事例の構成要件類似性を理由として、構成要件実現の特定の形式が、量刑規 定内での立法者の考慮に基づいて排除されることは、当然であるように思われる。

その限りでそれは、通常事例が特定の構成要件実現を完全に排除しているという 方法でも通常事例が先行して作用し得るのかどうかという、これまでまだ検討され ていなかった問題を描き出すものである。結局としてここでは、法定刑に方向づけ られた解釈の特別な形式が問題となっているのであって、それはその他の解釈基準 に付け加えてそして体系的解釈、歴史的解釈、目的論的解釈、ならびに意味論的解 釈を補足するだけでなく、そのうえ特定の構成要件実現に関して真正の阻却事由へ と至るものなのである。当然にこのことは、明記されていない刑罰変更事由におい ては問題にならない、なぜなら刑罰加重事由の明記の不存在は当然に、自動的に構 成要件の側面の具体的な阻却が生じることへとは至り得ないからである。

それに対して、具体的な立法者の量刑指示が構成要件実現の可能性に対する先行 作用を持つことは、論理にかなったものでしかないように思われる。それについて の例として、刑法263条による財産的損害は一身的な損害の発生に基づいても生じ得(27) るものかどうかという問題に関する、BGHによって新しく誘発された議論が役に立 つ。周知のごとく、判例はここでこれまで、給付と反対給付の同等性にもかかわら ず、損害の発生が個別的に以下のことによって生じ得るということを前提にしてい た、すなわち

これについて全体として、Fischer,(脚注20) 263Rn.146ff.;MK-StGB/Roland Hefendehl,2.

Aufl.,2012, 263Rn.688ff.;Lackner/Kuhl,(脚注15) 263Rn.48ff.;Schonke/Schroder/Perron, (脚注15), 263Rn.121ff.;Heiner Christian Schmidt, NJW 2015, 284ff.

(14)

⎜⎜被害者に対する給付が、契約上予定された目的のためにもしくは他の期待可能 な方法では、完全な範囲においては利用可能ではないこと

⎜⎜受取人が財産を侵害するような結果的支出へと強いられたこと、もしくは

⎜⎜被害者が、その債務の規則どおりの履行のために、もしくはそのほかにその者 の一身的な関係にふさわしい経済的やりくりおよび生活遂行のためにどうして も必要であるような手段に関して、もはや利用可能ではないこと(要約すれば、

被害者が経済的な窮地に陥った

(28)

こと)

である。

しかしながら最近BGHはこのような判例を2つの裁判において少なくとも疑問

(29)

視し、そして連邦憲法裁判所によって許容されないと宣言された、損害規定の規範 化に鑑みて、一身的な損害の発生という法形式に関して疑念を口にした。しかしな がら結論においてBGHは、一身的な損害規定の正当性の問題を未解決のままにし た。なぜなら、判断されるべき事例において、既に給付と反対給付の同等性が欠け ていたという事実から、最終的な判断は重要ではなかったからである。

実際上、一身的な損害発生という法制度は、そこに含まれている規範的傾向に鑑 みると、高度に問題のあるもののように思われる。したがって利用可能性の欠如(そ れは契約上予定され、もしくはさらに期待可能なものである)は、経済的な損害を 清算するような意味で負担することが可能であるという観点〔によるもの〕ではな い。経済的な損害はここでは、提供された客体の、契約上両立可能な給付の適性が 欠けている場合にのみ、承認され得るであろう。(30)

BGHによれば一身的な損害発生として重要な結果的給付〔結果的支出〕において もまた、追加的な結果的給付なしに反対給付が低い価値を持っていた場合に、経済 的な損害を承認することができるであろう。しかしその場合には実際には同様に給 付と反対給付の同等性が欠けており、その結果既に客観的に損害へと到達している

このような3つの要件についてはBGHSt 16,321,325、その論評としてErnst Heinitz,JR 1968, 387;BayObLG NJW 1973,633を参照、批判的なのはHorst Schroder,Grenzen des Vermogenss- chadens beim Betrug,NJW 1962,721ff. これらの事例群について詳しくはOtfried Ranft,Grund- falle aus dem  Bereich der Vermogensdelikte, JA 1984, 723, 726も参照。

BGH NStZ 2014,517、その論評としてChristian Jager,Der untreue Notar,JA 2014,875なら びにそれ以前にすでにBGH  NStZ 2014, 318.

それについては結局としてFischer, (脚注20) 263Rn.147も参照。

(15)

のである。したがって最も疑わしいのは、一身的な損害発生の枠内において挙げら れた第三のグループである。そこでは財産的不利益の規範化があまりにも広いので、

被害者からその自由な処分に基づいて、その債務の規則どおりの履行のために、お よび適切な生活遂行のために、その手段が剥奪された場合にもまた、損害は肯定さ れ得るのである。そのような損害の根拠づけが許容される場合には、例えば購入者 が売却可能性が高い土地であることに関する欺 によって、当該土地を獲得する気 になった場合に、確かにその土地はその値段だけの価値のあるものではあるが、し かしその購入者が、その土地の売却性の容易さがそのように装われていたものでし かなかったことを後に確認するに違いないような事例においては、詐欺を描き出し 得る。なぜならその点でいずれにせよ、被害者が購入に基づいて、もはや適切な生 活遂行をすることができなくなった場合には、詐欺であることとされ得るであろう からである。

b) 刑法263条における、一身的な損害の理由づけと量刑の、許されない二重基準と しての「経済的な困窮」という例

少なくとも、「経済的な困窮」(上述第三事例グループ参照)の惹起に基づく個別 損害の理由づけは、将来的には放棄されなければならないであろう。このことは、

規範的な損害の理由づけの許容性の問題に左右されずに、量刑考慮から明らかにな る。なぜならここでもまた、再び通常事例に目をやると、経済的な困窮の発生とい う論拠のみによる損害の理由づけは、排除されることが示されるからである。その 限りにおいてこれまで、考慮されていないままであるのは、刑法263条第3項第2文 第3号が被害者の経済的な困窮への転落を刑罰を加重するようにのみ、通常事例と して把握していることである。そこにおいては経済的な困窮は、被害者が行為の結 果として、その経済的な存在基盤を危険にさらすような、もしくはそれに基づいて 必要不可欠な生計を第三者の助けなしにはもはや保証されないような、不足状態に 陥ったことを意味するのである。しかしそれにより、このような概念はこれまで判(31) 例によってなお承認された、一身的な損害発生の第三グループと一致するのである。

Fischer, (脚注20) 291Rn.27と関連しての 263Rn.220.

(16)

c) 逆の二重評価禁止

しかしその場合にはこのような一致性の帰結は、刑法263条における経済的困窮の 惹起という観点が、刑罰を根拠づけて、一身的な損害発生に基づいて財産損害を肯 定するために援用され得るものではないということでなければならない。ここで逆 の二重評価禁止について述べられ得るであろう。すなわち、立法者の構成要件要素 としての不法の理解が、量刑に際して再度の考慮を排除する(刑法46条第3項)の と同様に、量刑における把握として明文で立法者が判断したこともまた、構成要件 における考慮の資格を排除することへと至らなければならないのである。

したがって、経済的な困窮の発生からは、一身的な損害の発生は導き出され得る ものではない。なぜなら立法者は明文で、このような財産処分の帰結を法律効果に おいて行為者の負担になるように考慮するものと判断していたからである。それと ともに同時に、問題のある規範化は一身的な損害の理由づけの内部においては何ら 根拠を持たないことは明白である。なぜなら困窮状況の惹起を量刑において考慮す るという立法者の判断を真面目に受け取らない場合には、実際には2つの異なった 詐欺の種類を作り出すことになるからである。すなわち一方では、損害が給付と反 対給付の同等性の不存在に基づくような通常の詐欺であり、そしてそこでは困窮状 況の惹起による刑罰の加重が可能なのである。そして他方では困窮状況の惹起とい う不法内容がすでに損害の理由づけのために用いられる詐欺であり、そしてそれに ついてはもはや量刑においては考慮され得ないのである。このような細分化を立法 者は望むべくもなかった。むしろ立法者は刑法263条第3項第2文第3号において は、経済的な困窮の惹起が刑罰を加重するように作用すべきものであり、その結果 損害の理由づけは明確に、他の規定に従わなければならないということを明らかに 言葉に表現したのである。したがって、もう一度、通常事例においてとくに浮き彫 りとなることを経験した解釈論的な問題の解決が、ときおり量刑法の基準から獲得 され得ることが示されたのである。

Ⅳ. 結論

本稿は、構成要件の客観的・主観的要素が量刑の側面に影響を及ぼすだけではな

(17)

く、逆に量刑レベルもまた構成要件に反作用を及ぼすことを示した。これについて の根拠は、量刑が常に行為実行の状況の中に埋め込まれており、その結果、構成要 件段階と量刑段階の間の多くの相互作用が明らかになったことに存在する。その際 にまさに通常事例から、特別な方法で、個別の構成要件要素の評価のための逆推論 が引き出された。しかし法定刑に方向づけられた法律解釈のための、そこから結果 として生じる潜在能力の完全な把握は、処罰規範の要件側面および法律効果側面を 統一した全体として理解する場合には、可能なものでしかないだろう。そしてこの ような方法でのみ、量刑が「法律化および理論化の必要不可欠な手続」を被ること になることが、その他の点で達成され得るのである。その歩みに関して被祝賀者は、(32) 特別な方法で功績を打ち立てたのである。この論考は、彼の70歳の誕生日について の心からのお祝いとともに献呈されるものである。

このドイツ刑法 211条の謀殺罪の要件に関する日本語の文献として、山本光英『ドイツ謀殺罪研 究』(1998年)を参照。

このドイツ刑法46条第3項の二重評価禁止規定に関する日本語の論考として、林美月子「量刑に おける二重評価の禁止」神奈川法学26巻1号(1990年)135頁以下。

【参考条文】

〔刑法〕

▼46条 量刑の原則

行為者の責任は量刑の基礎である。社会の中での行為者の将来の生活にとって刑罰により予期 されるべき効果は、考慮にいれられる。

量刑において裁判所は、行為者にとって有利な事情と不利な事情を、相互に考量する。 その際 に特に次のようなことが考慮される、すなわち

行為者の動機と目的、

行為に現れている心情と行為の際に向けられた意思、

義務違反の程度、

実行の方法と引き起こされた行為の影響、

行為者の前歴、その一身的・経済的状況、ならびに

行為者の行為後の態度、とりわけその損害を回復する努力、ならびに被害者に対する和解を達成す る行為者の努力。

⑶ 既に法律上の構成要件の要素である事情は、考慮されることは許されない。

▼211条 謀殺

⑴ 謀殺者は、無期自由刑に処する。

⑵ 謀殺者とは、

このような必要な発展についてはStreng, (脚注1), Rn.2を参照。

(18)

殺人嗜好から、性欲の満足のために、物欲から、もしくはその他の低劣な動機から、

背信的に、もしくは残酷に、もしくは公共の利益を害する手段によって、または 他の犯罪行為を可能にするために、もしくは隠蔽するために、

人を殺害する者である。

▼223条 傷害

⑴ 他人を身体的に虐待し、またはその健康を害した者は、5年以下の自由刑または罰金刑に処す る。

⑵ 本条の未遂は可罰的である。

▼240条 強要

⑴ ある人に、暴行により、またはひどい害悪についての脅迫により、違法に、ある行為、容認、も しくは不作為を強要した者は、3年以下の自由刑または罰金刑に処する。

⑵ 努力された目的のための暴行の使用または害悪の脅迫が、非難すべきものとして評価される場 合には、当該行為は違法である。

⑶ 本条の未遂は可罰的である。

特に重大な場合においては、その刑は6月以上5年以下の自由刑とする。特に重大な場合とは、

通常次のような場合である、すなわち、行為者が、

1. 妊婦に妊娠中絶を強要した場合、または

2. 公職者としてのその者の権限もしくはその者の地位を濫用した場合 である。

▼242条 窃盗

⑴ 自らまたは第三者に違法に物を領得せしめる意思で、他人の動産を他者から奪取した者は、5年 以下の自由刑または罰金刑に処する。

⑵ 本条の未遂は可罰的である。

▼243条 特に重大な窃盗事例

特に重大な場合において、窃盗は3月以上10年以下の自由刑により処罰される。 特に重大な場 合とは、通常次のような場合である、すなわち、行為者が

1. 行為の実行のために、建造物、事務室、店舗、もしくはその他の包囲された場所に、押し入った り侵入したり、偽の鍵または規則に従って開けるための決められた道具ではないその他の物に よって侵入したり、もしくはその場所に隠れていたりした場合、

2. 鍵の掛けられた容器もしくはその他の保護装置により、奪取に対して特に保護されていた物を 盗んだ場合、

3. 職業的に窃盗をしていた場合、

4. 教会もしくはその他の宗教運営に供する建造物もしくは部屋から、礼拝に献呈される、もしくは 宗教的崇拝に供する物を盗んだ場合、

5. 学問、芸術もしくは歴史にとって、または技術的発展にとって意義のある物で、一般に開放され た博物館にある、もしくは公に展示された物を盗んだ場合、

6. 行為者が他者の無力状態、事故もしくは公共の危険を利用することによって盗んだ場合、または 7. その取得のためには武器法に従って許可を必要とする携帯火器、もしくは機関銃、自動小銃、全 自動銃もしくは半自動銃、もしくは戦争兵器管理法の意味における爆薬を含んだ戦争兵器、もしく は爆薬を盗んだ場合

である。

⑵ 本条第1項第2文第1号ないし第6号までの場合において、行為が価値の低い物に関連するも のであった場合には、特に重大な事例は除外される。

▼244条 武器を伴う窃盗;集団窃盗;住居侵入窃盗

⑴ 次のような者は6月以上10年以下の自由刑により処罰される、すなわち、

1. 窃盗を行った者が、その際に本人またはその他の関与者が

(19)

a)武器もしくはその他の危険な道具を携帯している場合、

b) 暴行もしくは暴行についての脅迫によって他の者の抵抗を阻止する、もしくは克服するため に、その他に道具もしくは手段を携帯している場合、

2. 強盗または窃盗の継続的実行のために結成された集団の構成員として、他の集団構成員の協力 の下に窃盗した者、または

3. 窃盗を行った者が、その際に本人が行為の実行のために、住居に、押し入ったり侵入したり、偽 の鍵または規則に従って開けるための決められた道具ではないその他の物によって侵入したり、

もしくはその住居に隠れていたりした場合 である。

⑵ 本条の未遂は可罰的である。

⑶ 本条第1項第1号ないし第3号のそれほど重大ではない場合においては、その刑は3月以上5 年以下の自由刑とする。

⑷ 本条第1項第3号による住居侵入窃盗が長期間使用された私邸を攻撃したものである場合に は、その刑は1年以上10年以下の自由刑とする。

▼248b条 乗物の権限無き使用

⑴ 原動機付乗物または自転車を権利者の意思に反して使用する者は、当該行為が他の規定におい てより重い刑罰の対象とされていない場合には、3年以下の自由刑または罰金刑に処する。

⑵ 本条の未遂は可罰的である。

⑶ 当該行為は告訴によってのみ訴追される。

⑷ この規定の意味における原動機付乗物とは、機械力によって動かされる乗物であり、陸上の原動 機付乗物は、それが鉄道線路と結合されていない限り、本条の原動機付乗物である。

▼249条 強盗

⑴ 人に対する暴行によって、または身体もしくは生命に対する現在の危険による脅迫の使用の下 で、自らまたは第三者に違法に物を領得せしめる意思で、他人の動産を他者から奪取した者は、1 年以上の自由刑に処する。

⑵ それほど重大ではない場合においては、その刑は6月以上5年以下の自由刑とする。

▼250条 重大な強盗

⑴ 次のような場合は3年以上の自由刑が科されるものとする、すなわち、

1. 行為者、またはその他の強盗への関与者が

a)武器もしくはその他の危険な道具を携帯している場合、

b) 暴行もしくは暴行についての脅迫によって他の者の抵抗を阻止する、もしくは克服するため に、その他に道具もしくは手段を携帯している場合、

c) 行為によって他の者に重大な健康侵害の危険をもたらした場合、または

2. 行為者が強盗を、強盗または窃盗の継続的実行のために結成された集団の構成員として、他の集 団構成員の協力の下に行った場合

である。

⑵ 行為者、またはその他の強盗への関与者が

1. 当該犯罪行為の際に武器もしくはその他の危険な道具を使用した場合、

2. 本条第1項第2号の場合において武器を携帯している場合、または 3. 他の者に対して、

a)当該行為に際して身体的に重大に陵辱した、もしくは b)当該行為によって死亡の危険をもたらした場合 には、5年以上の自由刑が科されるものとする。

⑶ 本条第1項および第2項のそれほど重大ではない場合においては、その刑は1年以上10年以下 の自由刑とする。

(20)

▼253条 恐喝

⑴ 自己または第三者に不当に取得させるために、ある者に対して違法に、暴行によって、または著 しい害悪についての脅迫によって、作為行為、黙認または不作為を強要し、そしてそれにより被強 要者またはその他の者の財産に不利益を与えた者は、5年以下の自由刑または罰金刑に処する。

⑵ 暴行の使用または害悪についての脅迫が、得ようと努力された目的のために非難すべきものと して評価されるべき場合には、その行為は違法である。

⑶ 本条の未遂は可罰的である。

特に重大な場合においては、その刑は1年以上の自由刑とする。 特に重大な場合とは、通常、

行為者が職業的に、または恐喝の継続的実行のために結成された集団の構成員として行動した場 合である。

▼255条 強盗的恐喝

恐喝が、人に対する暴行によって、または身体もしくは生命に対する現在の危険による脅迫の使用の 下で、行われた場合には、その行為者は強盗犯と同じく処罰されるものとする。

▼263条 詐欺

⑴ 自己または第三者に違法な財産上の利益を得させる目的で、虚偽の事実を仮構することにより、

または真の事実を歪曲もしくは隠蔽することにより、錯誤を起こさせ、またはこれを持続させるこ とで、他人の財産を侵害した者は、5年以下の自由刑または罰金刑に処する。

⑵ 本条の未遂は可罰的である。

特に重大な場合においては、その刑は6月以上10年以下の自由刑とする。特に重大な場合とは、

通常次のような場合である、すなわち、行為者が

1. 職業的に、または文書偽造もしくは詐欺の継続的実行のために結成された集団の構成員として 行動した場合、

2. 大規模な財産損害を生ぜしめた、もしくは詐欺の継続的実行によって多数の人々に財産価値の 損害の危険をもたらす意図で行動した場合、

3. 他者を経済的困窮へと至らしめた場合、

4. その公職者もしくは欧州公職者としての権限もしくは地位を悪用した場合、または

5. 行為者もしくは他の者が保険金目的で重要な価値をもつ物を放火した、もしくは放火によって 完全にもしくは部分的に破壊した、もしくは船を沈没もしくは座礁させた後で、保険事故を装った 場合

である。

⑷ 243条第2項ならびに247条および248a条は準用される。

⑸ 263条ないし264条もしくは267条ないし269条による犯罪行為の継続的実行のために結成された 集団の構成員として、詐欺を職業的に実行する者は、1年以上10年以下の自由刑で、それほど重大 ではない場合には6月以上5年以下の自由刑で、処罰される。

⑹ 裁判所は、行状監督を命ずることができる(68条第1項)。

▼303条 器物損壊

⑴ 違法に、他人の物を損壊または破壊した者は、2年以下の自由刑または罰金刑に処する。

⑵ 権限なく、他人の物の外観を重大かつ継続的に変えた者も、前項と同じく処罰される。

⑶ 本条の未遂は可罰的である。

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