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電磁環境の改善に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

電磁環境の改善に関する研究 

アクティブ磁気シールド空間の形成に関する研究 

古賀文隆*1 竹内信次郎*2  酒井福夫*3  円福敬二*4

A Study on Improvement of Electromagnetic Environment

A Study on Formation of Magnetically Shielded Space Using Active Compensation

Fumitaka Koga, Shinjiro Takeuchi, Fukuo Sakai and Keiji Enpuku

 

  低コスト,省資源で高性能な磁気シールドシステムを実現する有効な方法の一つとして,磁気シールドルーム内 部に補償コイルを付帯させ,動的に侵入磁界を補償する内部アクティブ磁気シールドシステムが挙げられる。この システムの実現のための内部補償コイルの適切な配置を導出することを目的として,実際の磁気シールドルームに おける磁界分布の状態を実測し,そのデータを基に有限要素法による数値計算モデルを作成して磁界解析を行った。

その結果,内寸幅 2.1 m,奥行 2.3 m,高さ 2.1 m の磁気シールドルームに対して,2.06 m×2.26 m の長方形のル ープコイルを 1.1 m 間隔で配置すれば,高さ方向成分の磁界を良好に補償可能であることがわかった。 

 

1  はじめに

 

  病院に設置されているMRI装置や,脳磁図・心磁 図等の極微弱な生体磁気を計測する磁気計測システム では,電車の通行等によって生じる変動磁界の影響を 受けやすく,診断画像に歪みが生じて画像解析精度が 悪くなる。また,電子顕微鏡やEB(電子ビーム)描 画装置でも同様に悪影響を受ける。そのためこれらの 悪影響を除去するには磁気的にシールドされた空間が 必要となる。しかし,磁気遮蔽性能を上げるためにパ ーマロイ等の磁気遮蔽材を多量に用いて多層化するの みでは,重量,コストや省資源化の観点から問題があ る。そこで,軽量,低コストで高い磁気遮蔽性能を実 現するためにアクティブ磁気シールドシステムの研究 が行われている1-4)。これは,磁気シールドルームに補 償コイルを付帯させ,磁気センサによる同ルームへの 侵入磁界の測定値を補償コイルに帰還させて打ち消し 磁界を発生させ,侵入磁界を動的にキャンセルするこ とで磁気遮蔽性能を向上さるものである。この補償コ イルは,磁気シールドルーム外部1-3)または内部4)に配 置する方法が考えられるが,内部に配置する内部アク ティブ磁気シールドシステムでは,コイルで発生した 磁界が新たな磁気障害源にならず,またコイルに流す

電流が小さいため安定化が容易で省電力化できる等の 利点があるが,これまで十分な研究開発は行われてい ない。

 

  本稿では,共同研究機関に設置されている内寸幅2.1  m,奥行2.3 m,高さ2.1 mの磁気シールドルームにおい て磁界分布を実測するとともに,同形状の数値計算モ デルを作成し,有限要素法を用いて内部磁界分布の解 析を行った。更に,磁気シールドルームモデルに内部 補償コイルを付加した状態で解析を行うことにより,

ルーム内の中央部付近に一様で低磁界な領域を形成す るための適切な内部補償コイル配置の導出を行った。

その結果,2.06 m×2.26 mの長方形のループコイルを 1.1 m間隔で配置すれば,高さ方向成分の磁界を良好に 補償可能であることがわかった。  

 

2  磁気シールドルームの磁界分布測定 

2−1  実験方法 

  磁界分布の実測を行った磁気シールドルームの主な 仕様を表−1に示す。この磁気シールドルームに,図

−1のように配置した磁界印加用コイルにより磁界を 印加し,内部の磁界分布をフラックスゲート磁界セン

表−1  磁気シールドルームの仕様 

*1 機械電子研究所 

磁気遮蔽材:パーマロイ

:2重

外側寸法 :幅2.304 m 奥行2.504 m 高さ2.304 m 厚さ1.6 mm 内側寸法 :幅2.100 m 奥行2.300 m 高さ2.100 m 厚さ2.0 mm

*2 ユニテック(有) 

*3  (株)エムティアイ 

*4  九州大学大学院システム情報科学研究院 

(2)

サにより測定した。磁界印加用コイルの位置が上下非 対称なのは,設置スペースの制限によるものである。

印加する磁界の強さは,磁気シールドルーム内の中心 点に相当する位置に,磁気シールドルームがないと仮 定したときに生じる磁束密度の大きさとして定義した。

測定ポイントは,図−2に示す125ポイントとし,磁界 センサを移動させながら1ポイントごとに磁束密度の 測定を行った。 

2−2  直流磁界の測定 

磁気シールドルームに磁界印加用コイルにより0 →  +3 µT → -3 µT → 0の順で磁界を印加し,それぞれ の状態で磁束密度を測定した。図−3に印加磁界がゼ ロのときの磁気シールドルーム内部の磁束密度のz成 分の分布を示す。図−3の磁束密度が不均一に分布し ているのは,磁気遮蔽材の磁化状態が場所により異な っていたり,磁気シールドルームが設置されている環 境の地磁気が建築物の鉄骨や周辺の機材等の影響で一 様性に欠けているためであると考えられる。図−4に -3 µTの磁界印加時の磁束密度を基準とした,+3 µTの 磁界印加時の磁束密度のz成分の差分を示す。図−4で

は,磁束密度は図−2に示したX3のラインとY3のライ ンを軸にほぼ対称な分布となっていた。図−3,図−

4より,磁気シールドルーム内部の磁界(磁束密度)

の初期値は不規則な分布であっても,その変動成分に 関しては磁気シールドルームによって均等に減衰され 図−1  磁界印加用コイルの配置 

5.2

4.8 0.548

0.138 Magnetically Shielded Room Coil

2.304 2.504

2.304

X Z Y

単位:m

内側遮蔽材底面 からの高さ

Z1 0.25 m Z2 0.65 m Z3 1.05 m Z4 1.45 m Z5 1.85 m 計125ポイント 1

2 3 4 5

6 7 8 9 10

11 12 13 14 15

16 17 18 19 20

21 22 23 24 25

Y1 Y2 Y3 Y4 Y5

0.4 0.4 0.4 0.4

0.4 0.4 0.4 0.4

X1 X2 X3 X4 X5

X Y

Z

図−2  磁界(磁束密度)測定ポイント

(e) 高さ  0.25 m  (d) 高さ  0.65 m  (c) 高さ  1.05 m  (b) 高さ  1.45 m  (a) 高さ  1.85 m 

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 -100

-60 -20 20 60 100

FluxDensity(nT)

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 -100

-60 -20 20 60 100

FluxDensity(nT)

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 -100

-60 -20 20 60 100

FluxDensity(nT)

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 -100

-60 -20 20 60 100

FluxDensity(nT)

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

50 100 150 200 250 300

FluxDensity(nT)

図−3  印加磁界ゼロのときの磁束密度の z 成分の分布 

(3)

ていることがわかる。したがってこの変動成分に対し ては,内部に配置した単純な形状の補償コイルで打ち 消すことが可能であると考えられる。  

2−3  交流磁界の測定 

  磁気シールドルームに磁界印加用コイルにより振幅

µT,周波数50 Hzの交流磁界を印加し,ロックイン アンプを用いて磁束密度の50 Hz成分のみを測定した。

図−5に磁気シールドルーム内部における磁束密度 のz成分の分布を示す。ただし,この図では磁束密度 の振幅を示しており,位相は考慮していない。磁束密 度の大きさは,±3 µTの直流磁界を印加したときより 1桁程度小さかったが,図−2に示したポイント1〜

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

20 40 60 80 100

FluxDensity(nT)

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

20 40 60 80 100

FluxDensity(nT)

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

20 40 60 80 100

FluxDensity(nT)

(e) 高さ  0.25 m 

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

20 40 60 80 100

FluxDensity(nT)

(c) 高さ  1.05 m  (b) 高さ  1.45 m  (a) 高さ  1.85 mm 

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

20 40 60 80 100

FluxDensity(nT)

図−4  ±3 µT 印加時の磁束密度 z 成分の差分 (d) 高さ  0.65 m 

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

2 4 6 8 10 12 14

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

2 4 6 8 10 12 14

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

2 4 6 8 10 12 14

(e) 高さ  0.25 m  (c) 高さ  1.05 m  (b) 高さ  1.45 m  (a) 高さ  1.85 m 

図−5  振幅 3 µT の 50 Hz 交流磁界印加時の磁 束密度 z 成分の分布 

(d) 高さ  0.65 m 

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

2 4 6 8 10 12 14

FluxDensity(nT)FluxDensity(nT)FluxDensity(nT)FluxDensity(nT)FluxDensity(nT)

X1 X2 X3 X4 X5 Y1

Y2 Y3

Y4 Y5 0

2 4 6 8 10 12 14

(4)

3近傍で大きくなる分布となっていた。直流磁界印加 時に比べ全体的に磁束密度が小さいのは渦電流シール ドの効果によるが,ポイント1〜3近傍で磁束密度が 大きくなったのは,磁気シールドルームの扉の存在の ために部分的に壁面の電気抵抗が大きくなり渦電流シ ールドの効果が低減したことによると考えられる。 

 

3  アクティブ磁気シールドルームの磁界数値解析 

  有限要素法を用いて,前述の磁気シールドルーム及 び磁界印加用コイルと同形状の数値計算モデルを作成 し,線形磁界解析を行った。2章の結果からもわかる ように,交流磁界(50 Hz)より渦電流シールド効果の 得られない直流磁界の方が磁気シールドルームに侵入 する磁界のレベルが大きいことから,動的な補償は主 に直流磁界から数Hz程度の低周波磁界に対して行うこ とを前提とし,ここでは静磁界解析を行った。 

3−1  磁気シールドルームの磁界分布解析 

数値解析は,図−6に示す1/4モデルで行った。ただ し,この図では空気部の要素は表示していない。また,

磁界印加用コイルは1/4ではなく全体を表示している。

2章の磁界分布測定実験での±3 µTの磁界印加と同条 件となるように,磁界印加用コイルで6 µTの磁界を発 生させた状態とし,磁気遮蔽材の比透磁率の設定を変 えることにより種々の条件下での計算を行った。図−

7は,磁気遮蔽材の比透磁率を20000としたときの磁気 シールドルーム内部の磁束密度のz成分の分布の計算 結果である。図−4に示した実測値と比較し,レベル,

分布ともに近い傾向を示す結果が得られた。 

3−2  内部補償コイルの配置 

内部補償コイルは,システム構成の単純さを優先し,

ループコイル2個構成として磁気シールド内に配置し た。このときのモデルを図−8に示す。この図でも空 気部の要素は表示しておらず,補償コイルは1/4ではな く全体を表示している。コイルの寸法は,X方向2.06 m,

Y方向2.26 mであり,内側の磁気遮蔽材から更に20 mm

図−6  磁界解析用磁気シールドルームモデル 磁界印加用 コイル

Y X Z

0 20 40 60 80 100

FluxDensitynT)

0 20 40 60 80 100

FluxDensitynT)

0 20 40 60 80 100

FluxDensitynT)

0 20 40 60 80 100

FluxDensitynT)

(e) 高さ  0.25 m (d) 高さ  0.65 m  (c) 高さ  1.05 m  (b) 高さ  1.45 m  (a) 高さ  1.85 m 

0 20 40 60 80 100

FluxDensitynT)

図−7  磁気シールドルーム内磁束密度 z 成分 分布計算値 

(5)

内側の位置に配置している。これは,実際の磁気シー ルドルームの内装の厚みを考慮したものである。磁気 シールドルームに加える外部磁界は,磁界発生用コイ ルにより生じさせるのではなく一様なz成分の磁界と し,その磁束密度は6 µTとした。補償コイルの間隔を 0.9,1.0,1.05,1.1,1.2,1.3 mとした6通りについ て磁束密度分布の計算を行った。このとき補償コイル に流す電流は,磁気シールドルーム内の中心点での磁 束密度がほぼゼロ(1 pT以下)となるように設定した。

磁気シールドルーム内の中心点を原点と定義し, X,Y,

Z各座標軸に沿った磁束密度のz成分の変化を示したの が図−9である。また,X,Y,Z軸上で磁束密度のz成 分が,外部磁界(磁束密度)の1/10000である0.6 nT 以下に収まる領域を補償コイルの間隔に対して表現し たものを図−10に示す。図−9,図−10より,あ る大きさの磁束密度を設定し,その値以下の領域を有 効な磁気シールド領域とみなす場合,着目する座標軸 や設定する磁束密度の大きさにより,有効な磁気シー ルド領域を広く確保できる補償コイルの最適な間隔は 異なることがわかる。ここでは,各方向に比較的バラ ンスよく有効な磁気シールド領域を確保できているコ イル間隔1.1 mを採用することとした。このときの磁束 密度のz成分の分布の計算値を図−11に示す。 

3−3  補償コイル間の干渉 

  実際のアクティブ磁気シールドシステムでは,x,y,

zすべての成分の補償を行うために3組の直交させた 補償コイルを用いる。そのため,例えば磁界のz成分を 打ち消すためにz成分補償コイルによって発生される 磁界にはx,y成分も含まれていることから,それがx,

y成分の補償系に影響を与える可能性が考えられる。そ

こで,図−8のモデルを用いて外部に一様磁界は印加 せずにz成分補償コイルのみで磁界を発生させた状態 で磁束密度分布の計算を行い,各成分の比較を行った。

対称性から各座標軸上ではx,y成分の影響は見られな いが,座標軸から遠ざかるにしたがって影響が大きく なると考えられる。そこで,直線X = Y = Zに沿った磁 束密度の各成分の変化を図−12に示す。この図にお いて,磁束密度の大きさは原点でのz成分の値で正規化

図−8  内部補償コイルを付加した磁界解析用 磁気シールドルームモデル 

(a) コイル間隔 0.9 m 

(b) コイル間隔 1.0 m 

(c) コイル間隔 1.05 m 

(d) コイル間隔 1.1 m 

コイル間隔 内部補償

コイル

Y X Z

(e) コイル間隔 1.2 m 

(e) コイル間隔 1.3 m 

図−9  各座標軸に沿った磁束密度 z 成分の変化

(6)

している。有効な磁気シールド領域として原点を中心 とした半径0.3 m程度の球を考えると,図−12におい

て原点からの距離0.3 m以下の範囲では磁束密度のx,y 成分はz成分より2桁小さかった。以上のことから,同 範囲では3方向3組の補償系が,互いに及ぼし合う影 響は小さいと考えられる。 

 

4  まとめ 

 

磁気シールドルームにおける内部磁界分布の実測 を行い,その磁界(磁束密度)の初期値は不規則な分 布であっても,変動成分に関しては磁気シールドルー ムによって均等に減衰されていることが確認できた。 

また,有限要素法を用いて,実測データを基に数値 計算モデルを作成して線形静磁界解析を行い,内寸幅 2.1 m,奥行2.3 m,高さ2.1 mの磁気シールドルームに 対して,2.06 m×2.26 mの長方形のループコイルを1.1  m間隔で配置すれば,高さ方向成分の磁界を良好に補償 可能であることがわかった。このとき,磁束密度の高 さ方向成分が外部磁界(磁束密度)の1/10000以下にな る領域は,原点(中心)から幅方向に±0.27 m,奥行 き方向に±0.40 m,高さ方向に±0.33 mであった。 

本研究の一部は,(財)福岡県産業・科学技術振興財 団が実施する産学官共同研究開発事業の一環として行 ったものである。 

 

5  参考文献 

1) 風見,足立,河合,上原,尾形,賀戸:日本生体磁 気学会誌,Vol. 13, No. 1, p. 166 (2000)

 

2) 加藤,山崎,松葉,炭:日本生体磁気学会誌,Vol. 

13, No. 1, p. 170 (2000)

 

3) 山崎,藤原,栗城,林,平田:電気学会論文誌 A,

Vol. 121,No. 12, p. 1085 (2001) 

4) 竹内,坂井,酒井,円福: 三島光産技報,No. 22,  p. 26 (2001) 

図−10  磁束密度の z 成分が 0.6 nT 以下 に収まる領域の各軸上での原点からの距離

-40 -30 -20 -10100 20 30 40

FluxDensity(nT)

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

FluxDensity(nT)

-40 -30 -20 -100 10 20 30 40

FluxDensity(nT)

-40-30 -20 -10100 20 30 40

FluxDensity(nT)

(a) Z=0 面  (高さ 1.05 m に相当) 

(b) Z=±0.1 面  (高さ 0.95,1.15 m に相当)

(c) Z=±0.2 面  (高さ 0.85,1.25 m に相当)

(d) Z=±0.3 面  (高さ 0.75,1.35 m に相当)

図−11  間隔 1.1 m のコイルで補償を行っ たときの磁束密度 z 成分分布計算値 

図−12  直線 X = Y = Z に沿った磁束密度 の各成分の変化 

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