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「食」を通じた子育て支援

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70巻記念号(7~9) 7

ヤA・ 小児保健の現状と課題,提言

「食」を通じた子育て支援

一幼児期からの食事に望むもの一

恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所        母子保健研究部

      堤  ちはる

臨はじめに

 食べることは生きるための基本であり,子どもの 健やかな心と体の発達には欠かせないものである。

ところが,「平成17年度乳幼児栄養調査」(厚生労働 省)では,幼児期の「遊び食い」,「偏食」,「むら食 い」など食に関する不安や心配をする保護者は多い

(図1)。身近に相談する人がいなかったり,支援:の 場がなかったりすると,子どもの食生活に関する悩 み等が解決できずに,子育て不安の一因となること

もある。そこで本稿では,幼児期からの食事への配 慮の視点から,食を通じた子育て支援について述べ ていく。

陸さまざまな「こ食」

 近年,さまざまな「こ食」が話題になっている

(図2)。一人で食べる「孤食」は,食事のマナーが 身に付かないうえに,好きなものを好きなだけ食べ てしまいがちで,栄養バランスもとりにくくなる。

一方,家族と共にいただく食事は,マナーや栄養バ ランスの問題を解消できるだけでなく,食欲が増し,

協調性やコミュニケーション能力も育つ。また,家 族でいろいろな話をしながら食べた経験は,子ども にとって将来の家庭のイメージ作りにもつながって いく。食事の共食状況と日常イライラするかどうか の関係をみると,朝食,夕食を一人で食べると,共

       遊び食い        偏食する・

       むら食い 食べるのに時間がかかる      よくかまない      ちらかし食い      口から出す*

         小食       食べ過ぎる       食欲がない         早食い 困っていることは特にない

      O.O 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 0/o

       *平成17年新規項目

      平成17年度乳幼児栄養調査結果報告,厚生労働省,2006年6月,調査対象者2,241名.

        図1 子どもの食事で困っていること(1歳以上,複数回答)

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 臨一星一

國昭和60年

|平成7年

。平成17年

融闘騨囑欄醐・ E鷺・、湘目玉闘

盤ヒ

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恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部

〒106-8580東京都港区南麻布5-6-8

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食事は,エネルギーや栄養素の補給の場,家族や友人等とのII コミュ4ケーションの場,ヤナーを身に付ける教育の場でもあるポ     日本子ども家庭総合研究所堤ちはる作成

図2 避けたい7つの「こ食」

朝食を家族そろって食べる     ( n =1 ,459)

  朝食を一人で食べる

    ( n ==1,232)i 夕食を家族そろって食べる     ( n = :3,336)i

  夕食を一人で食べる      (n冨206)

OO/o 20% 400/o 600/o 80% 1000/o

■しばしば 翻ときどき □たまに ■ない

独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成19年度児童生徒の食生活等実態姻査(対象:職掌校5年生.中学校2年生)」

図3 「食事の共食状況」と「イライラする」の関係

食に比べ「いつも」,「ときどき」イライラする割合 が10~20%増加する。夕食では,一人で食べる子ど

もの二人に一人がイライラしている状況にあること が示されている(図3)。

 さらに,家族が同じ食卓を囲んでいても,それぞ れが食べたいものを食べる「個食」も問題である。

「個食」は,食べたことがないものや苦手なものを 食べる機会が減るうえ,好きなものだけを食べるの で栄養バランスが悪くなる。また,例えば 3世代 が一緒に夕食で肉料理を食べる時,高齢者には薄切 りの肉を用意することがある。子どもが「どうして おばあちゃんだけ薄切りなの?」と質問し,「入れ 歯だから,厚いのは噛み切れないのよ」と説明すれ ば,子どもは,自分は容易に噛める肉が高齢者には 噛めないことに気づく。.この気づきから,高齢にな ると体全体の機能が低下することに思いをはせるこ とができ,高齢者や自分より弱い人への思いやりや いたわりの気持ちが芽生えるきっかけになるであろ う。これも同じ食材を家族で食べればこそできる食 育である。

小児保健研究

 その他にも,子どもだけで食べる「子牛」,ダイ エットのために必要以上に食事量を制1汚する「小 食」,同じものばかり食べる「固食」,味付けの濃い

ものばかり食べる「四脚」,パン,麺類など粉から 作られた物ばかり食べる「粉食」も避けたい食べ方 である。

 食事は,エネルギーや栄養素の補給の場であると 共に,家族や友人等とのコミュニケーションの場,

マナーを身に付ける教育の場でもある。保護者の中 にはこのことを忘れがちになっている人もみられる ことから,食事のもつ役割について,今一度考え直 す時期にきていると思われる。

臨偏食のとらえ方

 保護者の中には「子どもに適した食事」を「子ど もが欲しがるものを食べさせる」という意味に解釈 し,何がその子どもにとって適切かを大人が判断し ていないと感じさせられることが多く,気がかりで ある。例えば嫌いな子どもが多いピーマンは,β一 カロチンを含んでいる。しかし,ブロッコリーやホ ウレン草でも群れる栄養素であることから,「嫌い なピーマンを無理に食べさせる必要はない」と考え る人もいる。確かにブロッコリーやホウレン草を食 べられるなら,ピーマンにこだわる必要は栄養学的 にはほとんどないであろう。それでも,いろいろな 生活環境に心や体を適応させる意味で,幼児期は重 要な時期であるので,多様な罵声を口にしてもらい たい。そこで,切り方や味付けを工夫し,「ひと口 でもいいから食べてみよう」と励まし,ほんの少し でも食べたら「すごいね!」と褒めてあげることが 大切である。

 嫌いな食材を食べられたという達成感は,褒めら れることでさらに強くなり,自信が生まれる。その 自信がやる気につながり,物事に前向きに取り組め るようになるであろう。例えば人間関係について考 えてみると,世の中には自分と気の合わない人もい るが,「嫌いだから付き合わない」と切り捨てるわ けにはいかず,ある程度付き合っていかなければな らない。相手を好きになれなくても「こんな考え方 があってもいい」とその人の個性を受け入れること で,円滑な人間関係を築くことができる。学問や仕 事にも同じことが言えると思われる。いろいろな食 べ物を食べることの意義は,生活のさまざまな場面

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にまで広がる。そのことを心にとめて子どもと1向き 合う姿勢が,保護者をはじめ子どもの周囲にいる大 人に求められていると考える。

臨「食」を楽しむ余裕を

 「食べること」は食欲を満たすことで,これは本 来心地良いことである。そこで,難しく考えすぎず に,「楽しく食べて,からだの中から健康に」を目 標に,食生活を楽しむことが大切であると考える。

しかし,食べさせて良いもの,食事の量,偏食など,

幼児の食に関するさまざまな質問が寄せられ,内容 はそれぞれ異なるが,全体的に「良い,悪い」の結 論を急ぎすぎたり,分量などの数字にとらわれすぎ たりしている印象を受ける。

 親の体格や個性,食欲もさまざまなように子ども も一人ひとり異なる。また,同じ子どもでも日によっ て体調や気分も変わる。「これは良いの?悪いの?」,

「Ogならいいけれど,△gはダメ」と,育児書や インターネットなどの情報を機械的に子どもにあて はめていては,「食」をおいしく味わい,楽しむこ とはできないであろう。旅行でも目的地まで最短 コースで行かずに,途中で寄り道をして,景色や出 会った人との会話を楽しむことで旅の楽しみが増す ことがあるように,育児も行きつ戻りつ,試行錯誤 を重ねながら進めていくものである。楽しいことも つらいこともすべてが子育ての醍醐味である。そこ で,子育てを支援する方々は結論を急がず,一人ひ とりの子どもとしっかり向き合うプロセスを大事に

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し,母親や保育者の悩みや不安を受けとめ,丁寧に,

また具体的に答えていくことが必要である。

臨おわりに

 食べることは,日々繰り返される日常生活の一部 である。そこで,大人は「一食くらいは,簡単に済 ませよう」,「今日一日くらいは,食べ過ぎても良い だろう」などとなりがちである。しかし,日常的に 何度も繰り返される行為であるからこそ,「食」の 重要性について考え,各自の食事を見直したいもの である。そして,専門職の方々には子どもの「食」

のみならず,大人の「食」も,ぜひ支援してほしい と願っている。

 日頃から私は,子どもの身近にいる親や子育てに 関わる方々が「食」への興味・関心をもち,各自の 食事を見直し,楽しむことが,子どもの「食」への 関心を引き出すことにつながり,これが心身共に健 康な生活を展開1する「食頃」の原点になると考えて

いる。

         参考文献

・「平成17年度乳幼児栄養調査結果報告」,厚生労働省雇用 均等・児童家庭局母子保健課,2006年6月.

・堤ちはる,平岩幹男,著.やさしく学べる子どもの食,

診断と治療社,東京,2008年9月.

・堤ちはる,土井正子,編著,子育て・子育ちを支援する「子 どもの食と栄養」,萌文書林,東京,2011年3月.

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