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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

吸着単分子膜と脂質二分子膜における分子混和性と ドメイン形成に関する研究

平城, 慎也

http://hdl.handle.net/2324/2236030

出版情報:Kyushu University, 2018, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式6-2)

氏 名 平城 慎也

論 文 名 Study on Molecular Miscibility and Domain Formation in Adsorbed Monolayer and Lipid Bilayer

(吸着単分子膜と脂質二分子膜における分子混和性とドメイン形成に関 する研究)

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 瀧上 隆智 副 査 九州大学 教授 松森 信明 副 査 九州大学 教授 安中 雅彦

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

生体膜には“ラフト”と呼ばれる局所的に構造や分子組成の異なる数十 nm 程度のナノドメイン が存在し、物質透過やシグナル伝達等の機能発現の場として注目されている。生体膜を模したリン 脂質やコレステロール(Chol)からなる混合膜においても、分子構造や組成に依存した多様なドメイ ン形態(サイズ・形状)が見出されている。この様な不均一膜中のドメイン境界線では ( )オ ーダーの線張力 (過剰エネルギー)が生じており、 に寄与する 2つの因子;ドメインと周囲の溶 媒との接触に起因し界線を収縮させる接触エネルギー と、配向分子間に働き界線を伸長させる双 極子間斥力 の拮抗( )で、ドメインの形態が支配されると考えられている。一方、ドメ イン内部と外部の構造や分子混和性の定量評価法が極端に少ないことに加え、線張力の計測手段が 計測対象のドメインの形状や性質に依存し制限されることから、混合膜における多様な形態のドメ イン形成原理は今なお理解に至っていない。そこで本研究では、膜組成と分子間相互作用を巨視的 熱力学量として定量評価できる界面張力法と、膜の微視的構造を評価できるX線反射率(XR)法に着 目し、ソフト界面吸着膜におけるドメイン内外の組成・分子配列と分子間相互作用との関連性を定 量的に検討した。さらに、ブリュースター角顕微鏡(BAM)法によるドメイン形態の観察結果から、

分子混合による形態変化を線張力の観点より考察した。さらに生体膜のより良いモデルである脂質 二分子膜系におけるドメイン線張力の計測基盤の確立を試みた。

研究1 単鎖リン脂質-コレステロール混合系吸着膜における分子混和性とドメイン形成

まず生体膜の最も基本的なモデルとして水溶性の単鎖リン脂質(C14PC)と油溶性のCholからなる ヘキサン/水界面単分子膜(吸着膜)を研究対象に選んだ。界面張力法より得られた界面圧 vs. 一分子 占有面積曲線からは、気体膜(G)、膨張膜(E)、固体膜(C)、及びEとCの中間的な膜状態(Im)の4種類 の吸着膜が確認された。吸着の相図及びXR測定より決定された電子密度プロファイルから、C14PC に 富 むE膜 で は 電 荷 の 解 離 し た ホ ス ホ コ リ ン(PC)基 間 の 静 電 反 発 を 緩 和 す る ようC14PC分 子 は staggered配列しており、CholとC14PCが約 で混合したC膜ではstaggered構造が緩和されたC14PC 分子の疎水鎖間にCholが貫入し密充填した構造をとることが判明した。C膜でのChol分子の活量係 数が1より小さい( )ことを併せると、異種分子の親水基間に働く水素結合と疎水基間の効果的な 充填によって得られるvdW相互作用がC膜形成の駆動力であることが分かった。BAM観察より、E

-C膜間相転移点近傍のC膜は円形のEドメインが分散した不均一構造であること、ドメイン内外に

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おけるC14PC組成の増加と共にEドメインの半径 は小さくなることが見出され、混合に伴う線張 力 の低下が示唆される。一方、吸着分子間の双極子が大きく異なる場合、従来の理論式では と を正確に算出することが難しいことも判明した。

研究2 パルミチン酸メチル-コレステロール混合系吸着膜における分子混和性とドメイン形成

先の結果を踏まえ、Cholとの間に水素結合の形成が予想され且つCholと似た双極子を有する油溶 性のパルミチン酸メチル(MePa)とCholとの混合系単分子膜を採用した。この混合系では、ヘキサン 溶液中のChol組成が高い場合には濃度の増加に伴い順にG→E→C膜へと相転移し、低い場合にはG膜 からC膜へと転移する。吸着の相図より全ての膜においてChol組成が約 と極めてCholに富み、活 量係数の値よりMePaとCholの親水基間に水素結合が働く反面、円筒型のMePaと逆接頭円錐型の Chol分子の疎水鎖同士では効果的に充填できないため、混合しにくいことが分かった。BAM観察か らは、G-C及びE-C膜相転移点直後のC膜領域に円形のドメインが分散した構造が確認され、X線 反射率のドメインモデル解析より円形ドメインはそれぞれ転移点直前の膜構造にほぼ等しいことが 判明した。さらに図1の様に、膜中のMePa組成が増えるにつれE、Cドメインの平衡半径は減少し、

と の算出よりその原因が の減少にあることが分かった。電子密度プロファイルから見積もられる ドメイン内外の厚みの差 から判断すると、 の低下は、ドメイン/ヘキサン溶媒間接触面の減少やMePa のドメイン境界線への吸着(界線吸着)の効果によるものと結論付けた。

研究3 飽和脂質-不飽和脂質-コレステロール3成分系二分子膜における線張力の定量

生体膜により近いモデル膜としてDSPC(またはbSM)-DOPC-Cholからなる3成分系二分子膜 (Giant Unilamellar Vesicle;GUV)を研究対象に採用した。これらGUVでは、膜の組成に依存して液 体秩序(Lo)ドメインと液体無秩序(Ld)ドメインが共存した不均一構造が出現する(図2)。また、

ドメイン間の厚みの差 を埋めるようにドメイン境界近傍の分子がbend、tilt、spray等の弾性変形を起 こし、この変形エネルギー が単分子膜系の に相当する( )。線張力の計測には、簡 便性や単分子膜系と二分子膜系の両方に適用できること等を考慮し、ドメイン境界の熱揺らぎのフ ーリエ級数解析から線張力 を求めるflicker spectroscopy(揺らぎ法)を採用した。

図2の様にLo/Ld共存領域における対応線(tie line)を基にドメイン組成が決められ、DSPCを含む 系では から臨界点に最も近い組成で の、bSMを含む系では から の線張力 が計測された。線張力に関する弾性理論に基づき二分子膜の弾性係数や自発曲率から を計算し たところ、その値は実測値を大きく上回り、理論の改良及び弾性係数等の物性値をより詳細に検討 する必要があることが判明した。一方で、臨界点に近づくにつれ線張力が低下する傾向は再現され、

Lo/Ldドメイン内での組成変化がドメイン境界線における分子の配向やコンホメーションを変え、線 張力に影響を及ぼすことが判明した。

以上の結果はソフト界面膜の不均一性に及ぼす分子混和性や線張力の効果を解き明かしたコロイ ド・界面化学分野における先駆的かつ重要な研究成果である。よって、本研究者は博士(理学)の 学位を受ける資格があるものと認める。

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