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援助要請と生活適応感の関連性 : 自尊感情と他者軽視の観点から

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Academic year: 2021

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序文

援助要請(Help-Seeking)とは「個人が問題の解決 の必要性があり,もし他者が時間・労力・ある種の資源 を費やしてくれた場合,問題が解決・軽減するようなも ので,その必要のある個人がその他者に対して直接的に 援助を要請する行動である。」と Depaulo(1983)は述 べている。援助資源となるのは家族や友人をはじめとし た身近な他者,または心理カウンセリングや学生相談室 などの専門機関が挙げられる。自分の力のみでは解決で きない問題を抱えた場合に,必要に応じて他者に援助を 求めることは重要な対処方略といえよう。しかしながら ストレス社会と言われる現代でも,鬱病性障害を患いつ つも実際に医療機関を受診する人は約 3 割程度にとどま っており(川上他,2008),学生相談室への来談率も僅 か2.8%である(吉武他,2010)。このことからも我が国 では受診に対する,意欲の希薄さや根深い抵抗感がある と考えられる。臨床心理学の分野ではこのようなメンタ ルヘルスに関する問題を抱えていながらも,専門の相談 機関を利用しないというサービスギャップ(service Gap)の現象(Kushner & Sher, 1991)を解消させるこ とを長期的な目標としつつ,専門機関への援助要請にお ける研究が行われている。一方,木村・水野(2004)は 学生相談よりも友人や家族など,身近な人物へ援助を要 請する頻度が高いと報告しており,身近な存在への援助 要請の重要性も改めて示されている。 先行研究の多くでは,基本的に援助要請は個人の適応 にとって望ましいものであるという前提のもと,単一次 元の尺度で測定された援助要請の高低のみが検討されて きた(永井,2013)。しかし,DSM- 5 (American Psy-chiatric Association, 2013)による依存性パーソナリテ ィー障害の診断基準として,「面倒を見てもらいたいと いう広範で過剰な欲求があり,そのために従属的でしが みつく行動を取り,分離に対する不安を感じる」という 記述もあるように,自らの自信の無さや意思決定力の欠 如による過度な他者依存は,個々人の不適応を招く危険 性がある(Bornstein, 1992)。したがって援助要請の仕 方や内容の違いに着目するべきではないだろうか。そし て,どういった要因によって援助要請の内容が規定され るのか,また抱えた問題を解決・軽減し適応すること, つまり生活適応感を獲得するためには,どういった援助 要請が最も効果的なのか検討する必要がある。永井 (2013)は援助要請を自立型援助要請,過剰型援助要 請,回避型援助要請といったようにスタイル(援助要請 受稿日2015年12月16日 受理日2015年12月25日

1  専修大学文学研究科(Graduate School of Humanities, Senshu University)

2  専修大学心理学研究室(Department of Psychology, Senshu Uni-versity)

3  専修大学人間科学部心理学科(Department of Psychology, Sens-hu University)

援助要請と生活適応感の関連性

~自尊感情と他者軽視の観点から~

石黒良和

1

・榎本玲子

2

・山上精次

3

・藤岡新治

3

The Relation between Help-Seeking and Adaptation

from the Aspect of Self-Esteem and Undervaluing Others.

Ryowa Ishiguro1, Reiko Enomoto2, Seiji Yamagami3 and Shinji Fujioka3

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えられる。また,佐藤(2008)は男性が他人に依存する ことを良しとせず,人的資源のみでなく,インターネッ トや本などの情報的援助資源を利用して,自力で問題解 決を行う傾向が高いと報告している。これらのことか ら,男性は女性よりも自力での問題解決意識が強く,実 際に自力での問題解決を試みる頻度が高いと考えられ る。したがって,援助要請を回避することで,問題が解 決されずに残ってしまうという不安が女性よりも低いと 考えられる。 援助要請スタイルの生活適応感の関連性 生活適応感の指標として大学生活不安尺度を用い,援 助要請との関連性を検討した。過剰型援助要請は生活不 安との関連性は確認されなかった。しかし自立型援助要 請は評価不安を軽減していた。また回避型援助要請は大 学不適応を増加させていた。本研究の結果から,生活適 応感を促進させるためには他者に過剰依存するのではな く,必要時にのみ協力を求めるという自立的な援助要請 が必要であることが示唆された。それに対して,どのよ うな状況においても援助要請を回避することは不適応的 であると考えられる。したがって,自力では解決が困難 な問題を抱えた際に,適切に援助を求められることは非 常に大切なスキルであると言える。しかし,仮想型は本 当は他者に援助を求めたいのにも関わらず,相手から否 定的な応答をされるのではないかという不安が強く,な かなか援助を求められないことが示唆された。援助要請 行動を促進させるためには,援助を要請することで自分 にとって利益が得られることを体験的に理解させる必要 があるのではないだろうか。仮想型に該当するような者 に,援助要請を促進させるためにはどのような介入が有 効なのか,今後具体的に検討する必要があろう。 今後の課題 本研究では,自尊感情と他者軽視によって 4 つに類型 し, 4 類型の援助要請に対する態度や実際の援助要請の 内容がどのように異なっているのか検討した。しかし他 者軽視における顕著な影響は確認されなかった。その原 因の一つとして,他者軽視尺度において軽視される対象 の「他者」には,自分の身近な他者と,世間一般の他者 の 両 者 が 混 在 し て い る こ と が 挙 げ ら れ る ( 高 木 , 2009)。本研究では援助を要請する相手を大学の友人に 限定して調査を実施した。しかし,他者軽視尺度が「身 近な他者」に対する軽視の傾向を集中的に評定した訳で はなかった。よって,友人に対する実際の援助要請の生 起に対して,顕著な影響が確認されなかった可能性があ る。身近な友人関係における対人行動との関連性を検討 するために,今後「身近な他者」に焦点を当てた他者評 価尺度を作成する必要があるかもしれない。また本研究 では,各援助要請と生活適応感の関連性を検討した。援 助要請を実行するか,しないかという意思決定には, 様々な理由が存在する。例えば,本当は援助を求めたい のにも関わらず,相手から否定的に応答されることを恐 れるために要請できない場合がある。一方で,自力で問 題を解決することに意味を見出しているために援助要請 を回避することもある。その二つのパターンによって行 動の意味合いは異なると考えられる。過剰型援助要請に おいても同様のことがいえる。自分に自信がないために 過剰依存的になる場合だけでなく,自らの情緒的な安定 を求めるために他者に依存することもある(竹澤・小 玉,2004)。今後,援助要請を実行する理由にも着目し ながら生活適応感との関連性を検討する必要があるので はないだろうか。

引用文献

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参照

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