医薬品 リード化合物の創成 と評価
研究代表者 理 学部 平 井 美 朗
研究 内容
環 上 に多 くの不斉 中心 を有す るアザ糖類や海洋 ポ リ環状エーテル等 のヘ テ ロ脂環式化合物 は、強い生物活性 を有 してお り、 これ らのエナ ンチオ選択的な合成法 の開発 は、創薬 の観 点 か らも極 めて重要な課題 となってい る。 また近年 、抗 ウイル ス作用や制癌作用 を有す る核酸 類 が見出 されてお り、新規 な核酸類 の合成 が世界的にも注 目を集 めてい る。一方、富 山県は 医薬 品業界が多 く、大学 にお ける創薬 に繋が る基礎 的研 究 に多 くの期待 が寄せ られてい る。
そ こで、 これ まで培 って きた研 究成果 を基礎 に、今 回新 たに、 (1)環 状エーテル が梯子状 に連 なった海洋産ポ リ環状エーテル類 、 (2)糖 類及び核酸類 を標 的化合物 とし、それ らの新 規合成法の開発 を行 った。
進捗状況
1 . ポ リ環状エーテルの合成
非常 に強い神経毒性 を有 し、生化学の分野か らも注 目されてい るポ リ環状エーテル の合成 を 目指 し、Pd(II)触媒 を用 いた 6員 環エーテル骨格 の立体選択的合成法の開発 を行 った。そ の結果、単環か ら3環 性エーテル の立体選択的合成 に成功 した。現在、本反応 を用い天然物 の部分構造 の合成 に取 り組 んでい る。
2 . ヘ ミアセ タール を経 由す るヘテ ロ環化反応の開発
基質 に7‑hydroxy 3 pheny1 5‑heptenalを用い、種 々の 2価 のPd触媒 による環化反応 を試 みた。その結果 、PdC12(PhCN)2の触媒活性 が最 も高い事がわかつた。またヘテ ロ求核斉Jとし て種 々のアル コール を用 い反応 を行 った ところ、 1 級 、 2 級 、 3 級 何れ のアル コール を用 いて も反応 は50‑80%の 収率で進行 した。 また得 られた2‑alkoxy‑4 pheny1 6‑vinyltetra h y d r o p y r a n の4 、 6 位 の相対配置 は、高立体選択的にθゴsに制御 されていた。特に 2、 3級 アル コール を用い る と100%のθお選択性 であった。以上の結果 よ り基本的な反応 の開発 はほ ぼ完了 した。
3 . レ r i b o s e の全合成 およびdeoxy―D ―r i b o s e の全合成
単糖 のD ―r i b o s e の合成 を行 つた。出発原料 であるθゴ,2‑butene l,4‑diolより1 3 段階 を経 て環化前駆体 を合成 し、ヘテ ロ環化反応 を行 い、高立体選択的に環化体 を得 た。 その後 2 段階でD―r i b o s e の全合成 に成功 し、本反応 の有用性 を明 らかに した。更にL―リンゴ酸 を出 発原料 に用い、 8 段 階 を経て環化前駆体 を合成 し、ヘテ ロ環化反応 を行 い、高立体選択的 に環化体 を得 た。その後 5段 階でdeOxy―D ―r i b o s e の全合成 に成功 した。D riboseの反応 系 よ りも自由度 の高い環化基質で も容易 に反応 が進行す ることを明 らかにす る と共 に、糖合 成 の よ り汎用性 の高い方法論 とな りうることを示 した。
研 究 成果
( 1 ) ポ リ環 状 エーテル の合成
これ ま で我 々 は、 2 価 の P d 触 媒 を用 い るア リル アル コ ル に対す る立体選択 的ヘ テ ロ環化 反応 の開発 を行 つて きた。 この反 応 を分 子 内アル コ ル を求核斉J とす る系 に用 いれ ば環状 エー テル構 造 の合 成 が可能 と考 えた。そ こで ジオール 1 を 塩 化 パ ラジ ウムアセ トに トリル錯 体 で処 理す る と環 化反応 が進 行 し、 6 員 環 エーテル 2 を 高 立体選 択 的 に得 る こ とがで きた。
1
2
P d C 1 2 ( C H 3 C N ) 2 1,4‐benzoquinone
100 0
H F協
丁 8
S c h e m e l
更 に得 られた、環化体 2よ り同様 の反応 を繰 り返す ことによ り2環 性エーテル 5、 3環 性エー テル 7 を 立体選択的 に合成す ることが出来た。この よ うに本反応 を用いてポ リ環状エーテル骨 格 を立体選択 的に合成 で きることが明 らかになつた。
°H Pd(:り
Pd(ll)
。 Scheme 2 ′
(2)ベ ミアセ タール を経 由す るヘ テ ロ環化 反 応 の開発
先 の反 応 系 にお け るアル コ ル 求核 剤 の代 わ りにヘ ミアセ タール を用 いた分子 内環化反応 を行 うこ とに よ り糖 類 の合成 が行 え るので はない か と考 えた。 つ ま リアル デ ヒ ド 8の 様 な分 子 内 にア リル アル コール 部 とアル デ ヒ ドを有す る基 質 に対 し、ヘ テ ロ原 子 を有す る求核剤 を
8
ヾu Pd(ll) ヽH
1
9
ググ
1ギIII;fNu NuH
Pd(││)
10
O H
N u = R O n = 2
10 mol% PdCl2(PhCN)z
2 . 2 e q . E t O H , 丁 H F 65% Ph S c h e m e 4
Nu = sugar
Scheme 3
まず環化基質 11を合成 し代表的な 2価 のパ ラジ ウム触媒 を用いて環化反応 の検討 を行 った。
その結果、ジハ ロゲ ン化パ ラジ ウム系の錯体で環化反応 が進行 した。特 に THF溶 媒 中、2.2eq のエ タノール と 10mol%のパ ラジ ウムクロライ ドベ ンゾニ トリル錯体で処理す ると環化体 12 が 6 5 % の 収率で得 られた。
P h / 〔 1 : 1 : こ / ハ\
。T H P
l l 12
次 に種 々のアル コール を求核斉J に用い環化反応 、及び生成物 の立体化学 について検討 を行 つた。アル コール には、エ タノール、イ ソプ ロピルアル コール、̀―ブチル アル コール 、シクロ ヘ キシルアル コール を用いた。環化生成物 の 4位 と6位 の相対配置に関 しては、いずれの反 応 で もシス体が主生成物 であつた。特 に嵩高いアル コール を用いた場合 には、100%の シス選 択性 であつた。また、ア ノマー位 である 2位 の立体化学 に関 しては、β体が主生成物であ り、
その選択性 は 2:1か ら3 : 1 程 度 であった。
OEt
P h / 〔 l l l : 、 / ハ\
。丁H P l l a
5 mol% PdCl2(PhCN)z
2.2 eq. R'OH, THF
話 0′ ′+
4 , 6 ‐c お ( 1 3 )
Table 1. The diastereoselectivities of the cyclization reactions
4,6‐frans(14)
Run RI ゾeld(%) diastereomeric ratio (%).
4.6-cis 4.6-trans
diastereomeric ratio(%)
2α 2β
1
2
3
4
Et i-Pr c-Hex
f-Bu
70 59 63 56
8 5
︲ 0 0
︲ 0 0
︲ 0 0
15 0 0 0
2
3
5
9 3
2
2
2
68 77 75 71
★Diastereomeric ratio was deterrnined on HPLC ( 3 ) D r i b o s e 及 び 2 d e o x 「D ―r i b o s e の全 合 成
( 2 ) で は環状アセ タ ル の立体選択的合成 が可能 となつた。そ こで, 多 官能基化 された基 質 を用いれ ば、単糖 の合成 が可能である と考 え られ る。そ こで代表的な 5 単 糖 であ りR N A 及 び D N A の 構成単位 で もある D―ribose及び 2 ‑ d e o x y ―D ―r i b o s e の全合成 を行 うことに した。
D ―r i b o s e の合成ルートを s c h e m e 5 に示す。 出発原料の εお…2 ‑ b u t e n c ‑ 1 , 4 ‑ d i o l から5 段 階、通算 収率 7 0 % で 光学活性 なモ ノアセチル体 1 6 を 9 7 % e c で 得た。更 に 8 段 階 を経て環化前駆体 1 7 を通算収率 68%で 得た。基質 17に 対 し、5 mol%の PdC12(PhCN)2を用い、2.2当 量の MeOH、
T H F 溶 媒 中、室温で攪拌 した ところ、反応 は 8時 間で完結 し、五員環生成物 である四置換テ トラ ヒ ドロフラン体 1 8 を 粗収率 8 7 % で 得た。また得 られた環化生成物 は 5 : 1 のジアステ レオ 混合物であつた。1 8 よ り更に 3 段 階 を経 て D ―ri b o s c ( 1 9 ) を合成 した。この合成 品 と標 品の l H N M R ス ペ ク トル はよい一致が見 られた。
H° ヽcコ/ °H
5 steps AcC)¨ 一 ヽ .̲ゴ 「° H
° ン く '
丁H P O 8 steps
68%
70% ιで
︲ 7
0
環化 反応 を行 い三置換 テ トラ ヒ ドロフ ラン体 2 2 を 収 率 7 1 % で 得 た。 更 に 5 段 階 を経 て 2 ‑ d e x o y …D ―r i b o s e ( 2 3 ) を合成 した。 以上の ことか ら本反応 に よ り幅広 い単糖 の合成法 が確 立 さ れ た。
H02C)f/\
C02H 8steps̲ 丁 HPO CHO
°H 20 53% 21° Bn
10 mol%PdC12(PhCN)2 2.2 eq.MeOH
丁H F , r t , 2 h 71%
OMe 5 steps H0 0H
Bno-" 22 57%
Hd 2s 4 diastereomers
1 1 :5 : 2 : 1
Scheme 6
今 後 、本 法 を用 い てオ リゴ糖 合成 お よび核 酸類 の合成 に展 開す る こ とを計画 してい る。