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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

パルス中性子ビームを用いた118Sn の中性子誘起複 合核から放出されるガンマ線の角分布測定

古賀, 淳

http://hdl.handle.net/2324/4474934

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Statement of depositing dissertation and fulltext file have not been submitted.

(2)

(様式6-2)

氏 名 古賀 淳

論 文 名 Measurement of angular distribution of γrays from neutron-induced compound states of 118Sn with a pulsed neutron beam

(パルス中性子ビームを用いた 118Sn の中性子誘起複合核から放出されるガ ンマ線の角分布の測定)

論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 吉岡 瑞樹 副 査 九州大学 教授 若狭 智嗣 副 査 九州大学 准教授 東城 順治

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

中性子誘起複合核反応を用いた時間反転対称性の破れの探索実験が計画されている。本論文では、

本実験の標的原子候補であるスズについて、中性子誘起複合核から放出されるガンマ線の角度分布 に関して詳細な研究を行った。

本論文は全8章からなる。第1章では、本研究の背景として、離散的対称性である時間反転対称 性の物理、および、その実験的探索の歴史について述べている。第2章では、中性子誘起複合核反 応を用いた時間反転対称性の破れの物理、および、その実験的探索方法について詳細に記述してい る。また、本研究の対象であるスズ原子核について、その性質についてまとめている。第3章では、

スズの中性子誘起複合核から放出されるガンマ線の物理について理論的に定式化し、また、先行研 究の概要とその問題点について述べている。第4章では、茨城県東海村の陽子加速器施設にて、著 者が主導して行った実験の詳細について、特に、実験で使用した中性子源、ビームライン、測定器、

およびデータ取得方法について記述しており、第5章でその取得データの詳細がまとめられている。

第6章では、取得したデータの一連の解析方法が述べられており、スズの中性子誘起複合核から放 出されるガンマ線の分布が有意な角度依存性を持つことを示している。この事実を用いて、時間反 転対称性の探索実験の感度の見積りに必要な未知パラメータの値を世界で初めて決定したことが述 べられている。第7章では、本研究にて得られた結果と先行研究との比較を行い、また、スズを用 いて時間反転対称性の探索実験を行えば、およそ10日間のデータ収集で現在の世界最高精度に達 することができると見積もっている。第8章でこれらをまとめて報告し、中性子複合核誘起反応を 用いた時間反転対称性の破れ探索実験において、スズは有力な標的原子候補である旨を結論してい る。

現在の物質優勢宇宙の謎を解明するために、世界各地で時間反転対称性の破れの探索実験が行わ れてきており、その発見は現代の物理学において喫緊の課題の一つである。現在の最も厳しい上限 値は超冷中性子を用いた電気双極子能率探索実験で得られているが、超冷中性子の密度が今後の感 度向上を律速しつつある。著者が所属する研究グループが提案する中性子複合核誘起反応を用いた 時間反転対称性の破れの探索実験計画はユニークな研究手法であり、世界最高精度で探索できる可 能性を秘めている。さらに、本手法は中性子の電気双極子能率探索実験とは異なるパラメータ空間

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を探索することが可能であるため、両手法により時間反転対称性の破れの探索実験を相補的に推進 することは極めて重要である。本論文は、スズ原子核を用いて時間反転対称性の破れの探索実験を 行った場合、当該研究グループが提案する手法にて世界最高精度を達成できることを示したもので あり、当該分野の実験計画に大きなインパクトを与える。本実験計画は共同研究にて進められてい るが、本論文の主要部分であるデータ解析は著者がほぼ独力で行ったものである。また、データ収 集においても、著者らが新たに考案した手法を用いてデータ収集効率を大幅に改善することに成功 しており、極めて水準の高い独創的な研究となっている。

以上、本論文はスズ原子核を用いた時間反転対称性の破れの探索実験の実現可能性を世界で初め て拓いたものであり、その学術的意義は顕著である。

よって、古賀淳氏は博士(理学)の学位を受ける資格があるものと認める。

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