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CSR 報告書の保証に関する研究

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(1)

CSR 報告書の保証 に関す る研究

大 田 博 樹

アブス トラク ト

本稿 では、CSR報告書の保証の現状 について調査す るとともに、今後の課題 について考 察す ることを 目的 としてい る。 まず、csR報告書にお ける保証 を 「自主審査」 と 「第三者 意見」、 「第三者審査」に分 け、それぞれの特徴 について整理 した。

そ して、環境配慮促進法によ り特定事業者 に指定 されている独立行政法人の環境報告書 の内容 と保証の有無 について考察 した。 また、一般企業のCSR報告書では、環境省 と財 団 法人地球 ・人間環境 フォー ラムが主催す る 「環境 コミュニケーシ ョン大賞」を受賞 した報 告書の保証の有無 と内容 について検討 した。

以上の調査か ら、CSR報告書にお ける保証 システムは報告書の内容 の信頼性 を高 める レ ベル には達 していない ことが明 らか となった。その背景 には、まず、報告書の内容 が広範 に渡 っている事が挙 げ られ る。 そのため、CSR報告書に対 して保証 を行 う場合 には、広範 囲な知識が要求 され ることとな り、報告書全体の保証が難 しくなってい ると言 える。第二 に、保証 を行 うための社会的なシステムが整備 されていない ことも指摘できる。特 に、実 務では利害関係者 と報告書作成組織、保証付与人 との間で合意 された基準が必要 になるた め、今後の議論 が必要になると思われ る。 そ して、第三に情報利用者側が求める 「保証」

と保証付与者 の 「保証には少 なか らず ギャ ップが存在 している点が指摘できる。第四に は、保証水準の暖昧 さがある。CSR報告書の保証 について明確 な判断基準がない とい う問 題がある。

CSR報告書の信頼性 を高めるためには、まず統一 された報告書を作成す ることが重要で、

その後、第三者意見 と第三者審査の違いを理解 し、それぞれの強みを生か した保証業務 を 行 ってい くことで、保証 システムが有効 に機能す ると考 え られ る。

1.

はじめに

近年、環境問題な ど企業の社会的責任 (CSR:

Corporate SocialResponsibility)に関す る非財 務情報の開示は年 々増加傾 向にある。環境省の 調査1による と、2006年度 に環境報告書 を開示 している企業は1049社 にのぼるとい う。 この数 字は、調査対象企業の約64%以上にあた り、多 くの企業か ら非財務情報が開示 されてい ること

が分かる。その背景 には、環境 問題の深刻化 と 企業活動 との関連性 が注 目されてい ることや法 規制の整備 、非倫理的な企業 に対す る消費者行 動な どがあると考 え られ る。そのため、企業は 自社の環境対策 な どの社会活動 をCSR報告書 に よ り情報開示す ることで、様 々な利害関係者 に 積極的にアプ ローチを していると言 える。

しか し、一方で情報 を開示す ることで、報告 書の内容が利害関係者のニーズに合致 しなかっ CSR報告書の保証に関す る研究 79

(2)

た り、正確性 の低い情報が開示 されて しまった りと企業の信頼性 を低下 させて しま うとい うリ スクも指摘 され てい る。 その結果、

CS R

報告書 の価値 を下げて しまい、有価証券報告書な どと の不整合 とい う問題が起 こる危険性 がある。そ のため、一部の先進的な企業では、

CS R

報告書 の信頼性 を高めるために保証 を付 ける試みが さ れ るよ うになってきている。 しか し、

CS R

報告 書の保証に関 しては規制がないため、保証の範 囲や水準に大 きな違 いがあるのが現状である。

本稿 では、以上の問題意識 に基づいて

CS R

報 告書の保証の現状 と今後の課題 について明 らか にす ることを 目的 としてい る。

2. CSR

報告書 と保証の概要

1)CSR報告書の概要

環境 問題が深刻化す る中で企業活動 と環境問 題 との関係 が注 目された り、企業活動のグロー バル化 によ り社会‑の影響が大 きくなった りし た ことで、利害関係者 に とって も企業に とって も社会的責任 とい う概念 は重要なキー ワー ドに なっていると言 える。そのため、企業活動 を円 滑に進 めるためには、社会的責任活動の内容 に ついて利害関係者 に情報開示す る必要があ り、

その コ ミュニケー シ ョン手段 として

CS R

報告書 な どが利用 され るよ うになってきているのであ る。

環境省 の調査 によると、環境や

CS R

に関す る データ、取組等 の情報 を一般 に公開 してい る企 業は

2 0 0 5

年度 は

5 0. 3 % ( 2 0 0 4

年度 は

3 5 . 5 %)

で、

公開 していない企業の

4 0% ( 2 0 0 4

年度は

5 3 . 8%)

を大き く上回 る結果 となっている。前年度比で も、公開 してい る企業が大 き く伸びていること が分か る。 この よ うに企業が開示す る非財務情 報は年々増加 してお り、その役割 も拡大 してい るといえる。 日本ではもともと環境問題‑の関 心の高 さか ら環境報告書が多 く開示 されていた が、企業の社会的責任 として環境面だけではな く、経済や社会面で も責任 を果た してい くとい

8 0

国際経営論集

No . 3 6 2 0 0 8

う世界的潮流の中で、環境報告書 よ りもよ り範 囲の広い

CS R

報告書 を作成す る企業が増加 して きた

。2 0 0 3

年度、何 らかの非財務情報 を開示す る企業の うち

8 4%

は環境報告書を開示 していた が、その後

、2 0 0 4

年度では

6 2%、2 0 0 5

年度 は

41

%、そ して

2 0 0 6

年度では

21 %

にまで減少 してい る。

一方 、

cs R

報告書 を開示 してい る企 業 は、

2 0 0 6

年度 には

3 4%

にまで増加 し、環境報告書 を 作成 してい る企業 よ りも

1 3

ポイ ン トも多 くなっ てい る。 また、 これ らの

CS R

情報 を開示 してい る企業の中で

、5 8. 9%

の企業が

「 CS R

報告書」

(環境報告書や持続可能性報告書 を含む) を作 成 してい ると回答 してい る。そ して、 これ らの 報告書の公 開 目的 に関 しては、 「情報提供等 の 社会的な説明責任 を果たすために公開 している」

8 0 . 6%

、 「利 害 関係者 との コ ミュニケー シ ョ ンのために公 開 してい る」 が

6 9. 6%

、 「環境や

CS R

に関す る取組 の

PR

のために公開 している」

5 7 . 6%

と回答 してい る。

この よ うな

CS R

報告書 の作成 に関 して、一部 の報告書は法律 に基づいて開示 されてい るが、

その他の多 くの報告書は作成のためのガイ ドラ イ ンを参考 に 自主的に公表 されている。 これ ら のガイ ドライ ンには強制力はない ものの、比較 可能性 の確保 な どの面か ら効果が期待 されてお り、 日本では環境省 が公表 している 「環境報告 書ガイ ドライ ン」 と

GRI( Gl o b a lRe p o r t i n gl n i t i a t i v e )

が公表 している 「サステ イナ ビリテ ィ ・

リポーテ ィング ・ガイ ドライ ン」が利用 され る ケースが多 くなってい る。

環境省 は環境報告書 を環境 コミュニケーシ ョ ンのための重要なツール であるとともに企業が 社会 に対 して説明責任 を果たすための手段であ るとの認識 の もとに

、2 0 0 3

年 「環境報告書ガイ ドライ ン」 を公表 した。 その他 、環境問題 に対 して

、1 9 9 9

年 には 「環境保全 コス トの把握及び 公表 に関す るガイ ドライ ン」の中間取 りま とめ を公表 し

、2 0 0 0

年 に 「環境会計 システムの導入 のためのガイ ドライ ン」

、2 0 0 2

年 と

2 0 0 5

年 にそ れぞれ 「環境会計ガイ ドライ ン

2 0 0 2

年度版」 と

(3)

「環境会計ガイ ドライ ン2005年度版」な ども公 表 している。

他方、GRIはCERES(CoalitionfわrEnvironmental Responsible Economies)「環境 に責任 を持 つ経 済のための連合」や 国連環境計画 (UNEP)な どが 中心 とな って立 ち上 げた非政府組織 で、

2006年 に第3版 のガイ ドライ ン (C3)を公表 し た。GRIガイ ドライ ンは、持続 可能性 実現 のた めには経済 ・環境 ・社会的側面か ら企業経営に アプローチす る必要があるとの認識か ら、経済 ・ 環境 ・社会の3要素 (トリプル ・ボ トム ・ライ

ン) を含んだ報告書の作成 を求めてい るのが特 徴 であ る 本 ガイ ドライ ンは、世界 の2,300以 上2のCSR報告書な どで利用 されてい る.

また、日本国内では、 「環境情報の提供の促進 等 による特定事業者等の環境 に配慮 した事業活 動 の促進 に関す る法律 (環境配慮促進法)」に よ り、特定事業者3は環境 報告書 の作成 と公表 が義務付 け られてお り、特定事業者 と利害関係 者 との間の コミュニケー シ ョンの円滑化 と信頼 性 向上を 目的 としてい る。本法律 によって作成 され る環境報告書には、事業活動に係 る環境配 慮の方針や取組 、製 品等 に係 る環境配慮の情報 な どが記載 され ることが求め られてい る。

その他、報告書に関す るガイ ドライ ン以外 に は、社会的責任 に関す るISO規格であるISO26000 や国連のグローバル ・コンパ ク ト、 日本経団連 の 「企業行動憲章」な どがあげ られ る。

2)

保証の意義

企業が積極的にCSRに取 り組む 中で、保険会 社 による保険金の不払い問題や、食品偽装問題 な どCSR報告書の信頼性 を大 き く損 な う事件 が 発生 した。 日本の大手保険会社 が保険金の不払

問題 に関 して、2006年5月に金融庁 よ り保険 業法第133条の規定 に基づ く業務 の一部停止命 令お よび同法第132条の規定 に基づ く業務改善 命令 を受 けた。 その前年 の 「CSRコ ミュニケー シ ョン レポー ト」の中で は、 「お客様 のニー ズ に応 えた質の高い保険商品の提供」や 「カスタ

マ‑セ ンターやホームペー ジな どの多様 な窓 口 を通 じて、お客様 の声 を収集、その内容 を分析

し、サー ビスの改善に活かす」な どを社会的責 任 の一つに挙げているが、実際には保険金の不 払い問題が発生 してお り事実 とは違 う内容になっ て しまっている。そのため、 この よ うな事件 を きっかけにCSR報告書その ものの信頼性 が低下 して しま う危険性 を指摘ができる。

このよ うな問題 が発生 した背景 には、現在 の csR報告書に対す る保証の規制がな く、基本的 に報告書の内容は 自由に作成す ることが可能 と なってい ることが挙げ られ る。環境省の調査 に よる と、CSR報告書の信頼性 を高 めるための手 段 として、27.4%が 「第三者機 関等 か らの コメ ン ト」が必要であると回答 してい る。その他、

18.3%が 「自主審査 」、16.7%が 「第 三者機 関等 による審査」 となってお り、報告書の審査 ・保 証に対す る企業の関心の高 さが伺 える。 しか し、

実際に保証 を付 けているのは、一部の先進的な 企業に限定 されてい るのが現状 となっている。

今 日のCSR報告書が、利害関係者 の意志決定 に重要な役割 を果た していることを考慮す ると、

csR報告書の信頼性確保 が必要不可欠 であると いえる。そ して、そのための手段 として注 目さ れているのが、第三者 による報告書の審査 ・保 証であ り、報告書その ものの信頼性 を高めるこ とが可能 となる。 さらに、第三者 による審査 に よ り報告書の内容 の正確性 に加 え、利害関係者 が求める情報 を正 しく認識す ることで、情報の 有用性 ・適正性 について も高めることが期待 さ れ るのである。

このよ うな状況の中で、環境省 は非財務情報 の信頼性 を高めるための手引き として 「環境報 告書の信頼性 を高めるための 自己評価の手引き」

を公表 した。本手引きは、2005年 に施行 された 環境配慮促進法 を受 けて公表 され た もので、同 法は特定事業者 に環境報告書 を作成 し、毎年度 公表す ることを義務づ けてい るが、 さらに特定 事業者 自らが環境報告書の記載事項等 について の評価 を行 うことを求 めてい る。 「自己

評価 であるところに客観 的な信頼性 としての問題 が csR報告書の保証に関す る研究 81

(4)

1

保証 の分類

(保 証付与者)

組織 内

保証 の分類

自主審査 (基準 り )

自主審査 (基なし)

三者審 査

三者 意 見

指摘 で きるが、環境報告書 の 自己評価 を報告書 の信頼性 向上 の手段 の一つ として 「評価 」す る こ との重要性 を認識 してい る点が注 目され る。

3)

保証 の概 要

CSR報告書 の信頼性 を高 め るた めの 「保 証」

については、次 の3点 につ いて考察す る必要が あ る。 まず 、第一 に保 証 の実施方法 と、第二 に 保証基準の有無 、そ して第三に保証水準である。

まず 、CSR報告書の保証の実施方法 については、

い くつ か の方 法 が考 え られ て い るが 、 今 日の CSR報告書 の保 証 は図1の よ うに分類す る こ と が 出来 る5。 まず 、保 証 を付 け る主体 の違 い に よ り、 自主審査 と第三者 に よる審査 に分 けるこ とが出来 る。 これ は報告書 に対す る保 証 を誰 が 付与す るのか とい う違 い に よる分類 で、 自らが 審査 した上 で保 証 を付 与す る場合 を 自主審査 と 言 い、組織外 の第三者 に よ り保証 が付 け られ る 場合 を第三者審査 とい う。 また、第三者 に よる 審査 は、公認 会計士や監査法人 な どに よる保証 と第三者 意見 と言 われ る専 門家 な どに よる意見 表 明に分類す る こ とが出来 る。 さらに、それ ぞ れ の審査 には基 準 を用 い るケー ス と独 自の視 点 で評価 を行 な うケー スに分 け られ る。本稿 では、

CSR報 告 書 の保 証 を、 上 記 の 「自主審 査」と

「第三者審査」お よび 「第三者意 見」 に分類 し、

82 国際経 営論 集 No.36 2008

基準あ り

基準な し

考察 をす る こ ととす る。

まず 、 自主審 査 とは、CSR報告書 を作成 した 組織 に よる 自らの審査 の事 で、前 出の環境配慮 促進 法 の 中で も触れ られ てい るので参考 に した い6。 まず環境省 は、環 境 問題 に積極 的 に取 り 組 んでい る企業 が高 く評価 され るよ うな社会や 市場 の仕組 み が重要 であ る との認識 を示 してい るが、その基本 的な前提 とな るのは企業が作成 す る環境報告書が十分 な信頼性 を備 えてい るこ

とで ある と指摘 してい る。 そのための手段 とし て、報告書 が 目的適合性及 び信頼性 、理解容易 性並びに比較容易性 とい う一般的報告原則 に従っ て作成 され てい るこ とが重要 とな る。 また、報 告書 の信頼性 を高 め る手段 として 自己評価 の実 施や双方 向 コ ミュニケー シ ョン手法 の組込 、第 三者 に よる審査 な どの方策 が あ るこ とを挙 げて い る。 自主審査 には、(丑自己評価 の実施 、② 内 部管理 の徹底 、③ 内部監査規 準や環境報告書作 成規準等 の公 開、④社 内監査制度等 の活用 、⑤ 社会的 に合意 され た環境 報告書作成 の規準‑の 準拠 な どが あ る と してい る。 ここでの 自己評価 は、環境省 が作成 した 『環境報告書ガイ ドライ ン2007年度版』 で求 め られ てい る29項 目につい て記載事項 を確認す る方 法 を とってい る。 そ し て、 も し報告書 に記載 しない項 目が ある場合 に は、掲載 しない理 由につ いて説 明す るこ とが求 めてい る。 しか しなが ら、 自己評価 は報告喜作

(5)

成者 と評価者 が同 じ立場 で審査 を行 ってい る点 で客観 的な信頼性 が完全 に確保 され てい る とは 言 えない とい う問題 があ る。

次に、第三者 に よる審査及び意見では、組織 外 の視点で評価 が行 われ ることになる。第三者 による審査では、一定の基準 に従 ってCSR報告 書の審査が行 われ るケー ス と独 自の視点で審査 が行われ るケー スがある。 た とえば、 日本 の大 手監査法人の関連会社の保証業務では、AA10007

の基本原則 である重要性 ・完全性 ・適応性 の3 つの視点でイ ンタ ビューや レビュー をす ること でCSR報告書 を評価 し、第 三者 の立場 か ら所 見 を表明 してい る。 このケー スでは、一定の規格 に従 ってCSR報告書 の審査 を行 うことで、前年 度以前の状態 との比較や他社 との比較 が可能 と なってい る。

一方 、第三者 に よる意 見 とは、CSR報告書 の 評価 に対 してNPOやNGO、CSR研 究者 が独 自の 見地か ら報告書 を評価 し、第三者 の立場 か ら意 見 を表明す るものである。現在 、第三者 による CSR報告書 の評価 では、 この方式 を採用す る企 業が多 くなってい るが、第三者意見では、報告 書の内容の正確性 を審査 しているとい うよ りも、

審査人が報告書 に対 して持つ意見 を述べ るケー スが多 くなってい るため報告書の内容 について の信頼性確保‑の貢献度 はあま り高い とは言 え ない と思われ る。

第三者審査では、一定の基準 に従 って審査 が 行 われ る事が多いため、他社 との比較が可能 と なるが、第三者意見では、それ ぞれが独 自の見 地で評価 を行 うため、評価項 目の違 いな どか ら 他社 との比較が難 しくなってい る とい う違いが ある。

4)保証の基準 と水準

CSR報告書の保 証 に関 しては、い くつかのガ イ ドライ ンや フ レー ム ワー クが公表 され てい る が、 日本 で はAAIOOO保 証 基 準 を利 用す る報告 書 が多 くな ってい る。AAIOOO保 証基 準 は、非 財務情報 の審査 に関す る基準の一つで、イギ リ

スのNPOであるAccountAbilityが作成 したAAIO00 シ リー ズの 一部 を構成 してお り、企業な どが利 害関係者 に対 して説明責任 を果たす ためのガイ ドライ ン と して公表 され てい る AAIOOO保証 基準では、次の3項 目を基本原則 として提示 し て い る。 (AccoutAbility "AAIOOO Assurance

St a nd a r d"

2003)

・重要性 (materiality)

利 害関係者 の意志決定や判断のために十分 な情報が開示 されてい るか。

・完全性 (completeness)

開示すべ き情報 を完全 に認識 してい るか。

・対応性 (responsiveness)

利害関係者 に対 して的確 に対応 しているか。

企業な どの組織 がCSR報告書 を作成す る際に、

これ らの3項 目に準拠 してい るか どうかを確認 す ることで説 明責任 を果 たす ことが可能 になる と期待 され てい る。 また、第三者審査 において AAIOOO保証基準が利用 され るケー スも多 くなっ て きてい る。 現在 、AAIOOO保 証基 準 を利用 し てい る報告書 は、世界 で100以上 もあ り、 日本 で も富士 フ イル ムや東芝 、東京電力 な ど8社8 が利用 してい る。

一方、AAIOOO保 証基準 に対 して、従来の財務 監査 か ら派生 した基準 として公表 されてい るの がISAE3000 (InternationalStandardonAssurance Engagements3000:財務情報 の監査 とレビュー 以外 の保 証 業務 に関す る国際基 準 ) で あ る。

ISAE3000は、 国際会計 士連盟 (IFAC)の国際 監査 ・保証規準審議会 が作成 した非財務情報 を 対象 とす る国際保証基準 となってい る。

そ の ほか 、SA80009やGRIガイ ドライ ンな ど を利用す る方法 も考 え られ てい る。SA8000は、

ア メ リカのSocialAccountability lnternationalが 基本的な労働者 の人権保護 に関 して作成 した規 準で、児童労働や労働者 の健康 と安全 な ど9項 目か ら構成 され る。 労働 問題 に積極 的に取 り組 んでい る企業は同規準の認証 を受 けることが可 能 とな り、労働 問題 に関 して国際的に評価 を受 けるこ ととな る。 また、GRIガイ ドライ ンは、

持続可能性 実現のためには経済 ・環境 ・社会的 csR報告書 の保証 に関す る研 究 83

(6)

側 面か ら企 業経 営 にアプ ローチす る必要が あ る との認識 か ら、経済 ・環境 ・社会 の3要素 (ト リプル ・ボ トム ・ライ ン) を含 んだ報告 書 の作 成 を求 めてい るのが特徴 であ る。本 ガイ ドライ ンは 、 世 界 の2,300以 上 のCSR報 告 書 な どで利 用 され てお り、 日本 で も多 くの企業 が採用 して い る。 この よ うな基準や ガイ ドライ ンに準拠 し た報告書 を作成 してい るのかを審査す ることで、

説 明責任 を果 たす ことが可能 にな る と期待 され てい る。

最後 に、保証水 準 については、まず保証付 与 業務の リス クの違 いに よって 「合理的保証業務」

と 「限定 的保 証業務 」 に分類 され る10。 保 証付 与業務 の リス ク とは、保 証付与者 が報告書 に重 大 な虚 偽 の記載 が ある場合 に不適切 な結論 を出 す 可能性 の事 で、次 の3つ の リス クが ある。

(1)「固有 リス ク」 ・‑関連す る内部統制 が存 在 してい ない との仮 定 の上で重要 な虚偽 の 表示 がな され る可能性

(2)「統制 リス ク」 ‑・重要 な虚偽 の表示 が、

関連す る内部統制 に よって適 時 に防止 また は適 時 に発 見 され ない可能性

(3)「発 見 リス ク」 ・‑業務実施者 に よ り重要 な虚偽 の表 が発 見 され ない可能性

合理的保証 業務 とは、保 証業務 の対象 につい て、適用 され る基準 に照 らして適正性 も しくは 信頼性 、有効性 な どにつ いて絶対 的ではないが 相 当高い心証 を得 た と言 うこ とを意 味 し、積極 的形式 に よって結論 を報告す る。 一方 、限定的 保証 では報告書 の作成者 が一定 の基準 に従 って 作成 したか ど うかについて保 証付 与者 が入手 し た証拠 に基づ いて評価 した結果 を 「当該 作成基 準 に従 って作成 され ていない と認 め られ る事項 が発 見 され なか った」との消極 的形式 に よ り結 論 が報告 され 、いわ ゆる レビュー業務 に当た る もの とな る (企業会計審議 会編 [2004年]p.5‑

6)0

た とえば、 シャー プのCSR報告書 (2008年度 版) は、あず さサ ステ イナ ビ リテ ィが第三者審 査 を行 って い るが 、 審 査 報 告 書 の結 論 に は、

「報 告 書 に記載 され てい る環境 パ フォー マ ンス 84 国際経営論集 No.36 2008

指標 、環境会計指標及び社会性パ フォーマ ンス 指標 が、会社 が定 めた作成基準 に従 って、重要 な点 にお いて合理 的 に把握 、集計 、開示 され て いない、 と認 め られ る事項 は発見 され なかった」

と限定的保証 を行 な ってい る。 日本 にお け るC sR報 告 書 の第 三者 審 査 で は、 この よ うな限定 的保 証 を付 けてい るケー スが多 くなってい る。

また、CSR報告書 の審 査報告書‑ の記載 項 目 につ いては、財務諸表監査 と同 じよ うに、①無 限定の結論 と② 限定付 きの結論 、③否 定的 な結 論 、④結論 を表 明 しない とい う結論 、の 4つ が あ る (内藤 文雄 [2005年]p.29)。 た だ し、 限 定的保 証 につ いては 「限定 した手続 きに よ り保 証業務 リス クを限定的保証業務 に求 め られ る水 準 に抑 えるた めの手続 きを実施 した こ とを記 し た うえで、すべ ての重要 な点 にお いて、一定の 基準 に照 らして適正性 、有効性 等 がない と考 え られ る重要 な事項 が発 見 され なか った とす る消 極 的な結論 を報告す る もの」 (広瀬義州[2008年]

p.16)で合理 的保 証 とは 性質 が異 な るた め、上 述 の4つ の分類 には適用 され ない。

3.

保証の状況

1)特定事業者 の環境 報告書 の保証状況

本項 で は、実際 にCSR報告書 にお いて どの よ うな保 証 が付 け られ てい るのか、また保証 の有 無 に よ り報告書 に どの よ うな影響 を及 ぼ してい るのか につ いて考察す る。 まず 、環境配慮促進 法 で特定事業者 に指定 され てい る独 立行政法人 の25法人11の環境 報告 書 の保 証状況 と保 証 の有 無 に よる報告書‑ の影響 につ いて調査 した。

まず、25法人 の うち何 らかの保 証 を付 けてい た報告書は、11法人 で全体の44%となってお り、

保証 の内訳 は、 自主審査 が7法人 で第三者意見 が3法人 、第三者審査 が1法人 となってい る。

環境報告書 に保 証 を付 けてい る法人 は全体 の半 分以下で、その多 くは 自主審査 とな ってい るこ とが分 か った。 また、報 告書 のペー ジ数 は、法 人 に よって12ペー ジか ら88ペ ー ジ と大 きな開 き

(7)

があ り、平均ペー ジ数 は38ペー ジだった。 ここ で保証 を付 けている法人 に注 目してみ ると、保 証を付 けている報告書の平均ペー ジ数 は46ペー ジ となってお り、法人全体の平均ペー ジ数 よ り も多 くなっていた。報告書のペー ジ数が多けれ ば優れた報告書であると単純 に判断す ることは 出来ないが、多 くのペー ジ数 を使い利害関係者 に情報提供す ることに関心のある法人が報告書 の信頼性 を高めるために保証 を付 けていると考 えることが出来 る。その他、報告書の方 向性や デー タの裏付 け、分か りやす さな どで比較 した ところ保証の有無による報告書の内容 に大 きな 違いは見 られ なかった。 なお、保証基準につい ては、利用 してい る法人 はなかった。

独立行政法人海洋研究 開発機構の環境報告書 2007では 自主審査 を行い 「環境報告書評価結果 報告書」 を作成 してお り、審査の実施者 は、総 務部長 と安全 ・環境管理室長、監査 ・コンプ ラ イアンス室長の3名 となっている。審査は 「環 境配慮促進法」 と 「環境配慮促進法第 4条に基 づ く環境報告書の記載事項等」、 「環境報告書の 信頼性 を高めるための 自己評価 の手引き (試行 版)」を基本 に実施 され てい る。審査結果 は、

報告書が上記の基準に基づいて作成 された もの で、 「網羅性 、信 悪性 、妥 当性 について評価 を 行 った結果、適正であることを確認 しま した

としてい る。 そ して、 「今後の環境配慮活動 を 推進す るにあたって、環境配慮 についての改善 目標 をよ り具体的かつ効果的に設定できるよ う、

各種指標 の把握方法 について も工夫 し、それ に 基づいて、各担 当部署がそれぞれの責任分担 の もと効果的な改善 ・向上活動 に取 り組 んでいけ るよ う、 よ りいっそ う努力 され ることを期待 し ます」 と締 めてい る。 同法人の保証は、限定の ない合理的保証 となっているが、保証付与者 が 同法入内の在籍 しているため客観的な信頼性 は 低 くなってい ると思われ る。

一方、第三者意見を採用 している独立行政法 人都市再生機構の審査報告書は、有識者意見 と して社団法人環境情報科学セ ンターに依頼 して い る。有識者意見報告書では、同法人は環境‑

の取 り組みについて分か りやす くま とめてあ り、

全体的に読みやすい よ うに工夫 されている とし なが らも、 4つの課題 について指摘 している。

まず、同法人が環境対策 において果たすべ き役 割 についての課題 として、都市再生の分野 も含 めた広い分野での対策の推進 と研 究開発 による 取 り組み、環境教育 を受 けていない現役世代‑

の環境教育の実施 を挙げている。 また、環境対 策の成果 をマテ リアル フローによって開示 して いるが、 目標値 も設定す ることが重要である点 を指摘 している。上述 した よ うに、第三者意見 では報告書の内容 の審査 とい うよ りも有識者 に よる意見表明になっているケースが多いため、

報告書の内容 についての信頼性確保‑の効果は 低い と思われ る。

2)企業のCSR報告書の保証状況

本項では、一般企業が作成 したCSR報告書の 保証状況 について、環境省 と財団法人地球 ・人 間環境フォーラム主催の 「環境 コミュニケーショ ン大賞12」 の受賞企業15社 を取 り上 げることと す る。 まず、受賞企業15社 の うち何 らかの保証 を付 けていた報告書は13社で全体 の87%となっ ていた。保証の内訳13は、第三者意見が9社 で 第三者審査が5社 となってお り、 自己審査 を し てい る企 業 はない こ とが分 か った。 そ して、

CSR報告書の作成時に環境報告書ガイ ドライ ン とGRIガイ ドライ ンを利用 し、保 証の審査基準 と して、ISAE3000と環境 報告 書 ガイ ドライ ン 2007、GRIガイ ドライ ンを利用す る企業が多 く なっていた。報告書のペー ジ数は

、2 8

ページか

ら121ペー ジまでの幅があ り、全体の平均ペー ジ数 は64.8ペー ジで保証 を付 けてい る報告書は 67.9ペー ジ と若干多 くなっていた。 また、第三 者 意 見 を付 けてい る報告 書 の平均ペ ー ジ数 は 66.1ページで、第三者審査 を付 けてい る報告書 では70.8ペー ジ となっていた。ペー ジ数での単 純比較は難 しいが、よ り厳格 な審査 を受 けてい る報告書の方が よ り多 くの情報量 を持 ってい る もの と思われ る。ただ、その他 、保証の有無に csR報告書の保証 に関す る研究 85

(8)

よる報告書 の方向性やデー タの裏付 け、分 か り やす さな どに大 きな違 いは見 られ なか った。

今回、大賞を受賞 した松下電器産業は、ナチ ュ ラル ・ステ ップ とい うNGOに よ る第 三者 意 見 を採用 してい る。 ナチ ュラル ・ステ ップに よる 第三者 意見報告 書 は2ペー ジに も渡 り、松 下電 器産業が果 たすべ き社会的責任 につ いて、製 品 の グ リー ン化や サ ステナブル な商品開発 な どの 重要性 を指摘 してい る。 独 立行 政法人での調査 結果 と同 じよ うに、第 三者意 見では報告書 の内 容 に対す る指摘 はほ とん どな く、松 下電器産業 が今後 どの よ うに社会や環境 に配慮 してい くべ きなのかの方向性 についての指摘 となってい る。

一方 、 シャー プの第三者審査 を行 った あず さ サ ステ イナ ビ リテ ィは、審査報告書 に よる と同 社 の 「環境 ・社 会報告書2008」に記載 され てい る環境パ フォーマ ンス指標 、環境会計指標及 び 社 会 性 パ フ ォー マ ンス指 標 の信 頼 性 につ い て ISAE3000を参 考 に 「環 境 報 告 書 審 査 基 準案 」 (環 境省[2004年 ]) と 「サ ステ ナ ビ リテ ィ情 報 審査 実務指針 」 (サ ステナ ビ リテ ィ情報審 査協 会[2007年]) に準拠 して審 査 を実施 してい る。

審査方法 は、まず報告書 の作成 ・開示方針 につ いての質 問か ら始 め、指標 に関 して会社 の定 め る基準 の検討 、 内部統制 の整備 ・運用状況 の評 価 、一部 の工場 に対す る現地審査 な どを行 って い る そ の結 果 、 「上記 審査 手続 きを通 じて結 論の基礎 となる十分かつ適切 な証拠 を入手 した。

環境 ・社会報告 書 に記載 され てい る指標 が、会 社 が定 めた作成 基準 に従 い、重要 な点 において 合理 的 に把握 、集 計 、開示 され ていない、 と認 め られ る事項 は発 見 され なかった」 としてい る。

「開示 され てい ない と認 め られ る事項 は発 見 さ れ なか った」 と限定的な保証 となってい るこ と が分 か る。今 回の調査対象 となった企業 の うち 第三者審査 を受 けていた5社 は全 て限定的保 証 とな っ て い た 。 しか し、 独 立 した 第 三 者 が ISAE3000な どの基 準 に基 づ い て報 告 書 を審 査 す る ことで客観 的信頼性 が高 まってい る と思 わ れ る。

86 国際経営論集 No.36 2008

4.

保証の問題点 と今後の課題

1

)保 証 の問題点

現在 、「csR報 告 書や 環境 報 告 書 は、既 に保 証業務概念 を援用 した ゆ るや かな第 三者 審査等 が行 われ てい る ところまで きてい る」 (広瀬 義 州[2008年]p.16)。 そ して、CSR報告書 な どの非 財務報告書 は投 資意志決定 の際の参考資料 にな るな ど果 たすべ き役割 は年 々拡大 してお り、今 後 の展 開 を考慮すれ ば何 らかの保証 を付与 し、

情報 の信頼性 を高 めるこ とが重要であ る と思わ れ る。 しか しなが ら、現 時点 ではCSR報告書 に お け る保証 はまだまだ発 展.段階 にあ り、保証 シ ステ ムの影響度 は大 きい とは言 えない。 この よ うにCSR報告書 の保証 システ ムが進展 しない背 景 には、非財務情報 が利 害 関係 者 に与 える影響 が財務情報 に比べて小 さく、情報 の利 用者 が少 ない こ とが挙 げ られ る。 そのた め、企 業側 が不 利 な情報 を開示す るこ とはな く、不正 を発 見す るための保 証 システ ムの必要性 が低 くなってい る と考 え られ る。 しか し、報告書の信頼性 を高 めるためには早急 に保証 システ ム を確 立す る必 要があ る と言 える。

これ までの考察 か ら、CSR報告書 の保 証 には い くつかの問題 点があることが明 らか となった。

まず 、第一 に保 証 の対象 とな る範 囲の広 さが挙 げ られ る。 これ まで非財 務報告書 は、環境情報 が 中心で あったが、最近 では環境 問題 以外 に も 社会や経 済 の情報 を含 んだCSR報告書‑ と範 固 を拡 大 してい る。保証付 与者 には 「自らの業務 を適正 に遂行す るための専 門的 な技能や知識 を 有す る」 (企業会計審議 会編 [2004年]p.6)こ とが求 め られ るた め、CSR報告書 に対 して保証 を行 う場合 には、広範 囲 な知識 が要求 され るこ とにな る。 あるいは、分 野 ご とに多 くの専門家 を集 め分野 ご とに保証業務 を行 うこ とになるた め、報告書全体 の保証 が難 しくなってい る と言 える。

第二 に、保 証 を行 うた めの社会的なシステ ム が整備 され ていない こ とも指摘 で きる (上妻義

(9)

図2 AAIOOO保証基準 による審査項 目一覧

分 類 項 目 重要仕 完全性 対応性

4つのパラメータ 開示の対象範囲 開示の有無

経 営 コーポ レー ト.ガバナンス 2 全 あ り

コンプライアンス&リスクマネジメン ト 2 国内 あ り

マネジメン トシステム 2 国内 あ り

お 客 様 お客様対応 2 国内 あ り

製品の安全管理 3 国内 あ り

(出展:富士フイルム 『サステナビリティレポー ト』2007より一部抜粋、筆者加筆)

直 [2006年]p.6)。現在 の ところ、環境省 の環 境報告書ガイ ドライ ンやGRIガイ ドライ ン、AA IOOO保証基準な ど様 々なガイ ドライ ンが存在 し ているが、 どれ も社会的な合意が確 立 している とは言 えない。特 に、実務 では利害関係者 と報 告書作成組織、保証付与人 との間で合意 された 基準が必要になるため、今後の議論が必要にな

ると思われ る。

第三には、現在csR報告書の多 くで利用 され てい る第三者意見は、その報告書に対す る方向 性や保証付与者の提言 を開示 しているものの、

不正発見の視点か ら審査 しているものではない 事が指摘できる。情報利用者側が求める 「保証」

と保証付与者 の 「保証」 には少 なか らず ギャ ッ プが存在 してい るのであ る14。 本稿 では、CSR 報告書の保証 として 「自主審査」 と 「第三者意 見」、 「第三者審査」 を取 り上げたが、 自主審査 には客観的な信頼性 とい う面で問題 があると思 われ る。 また、第三者意見では、客観的な視点 ではあるものの、その多 くは報告書の内容の信 頼性 を保証す るものではな く、保証付与者 が報 告書作成組織 に対 しての提言 を行 うとい うケー スになっていた。そのため、第三者意見は第三 者審査 とは全 く違 う目的を持 っていると言 える。

そ して、第四には、保証業務 を行 う際に参考 となるガイ ドライ ンや基準では保証水準につい て判断基準が暖味になっているとい う問題 があ る。 た とえば、AAIOOO保 証基準 を利用 してい

る富士 フイル ムのCSR報告書では、重要性 ・完 全性 ・対応性 について図 2の よ うな表 を作成 し てお り、報告書が どの程度の情報 を網羅 してい るのかが分か りやす くま とめ られている。

しか し、それぞれの項 目については、記載 し ているか どうかの判断が加 え られ るだけである ため、情報の質である記述内容 までは審査対象

とはなっていない とい う問題 もある。

2)今後の課題

CSR報告書 にお ける保証の問題 について考察 してきたが、 これ らの問題 の解決 には制度面や 保証付与者 の問題 もあるため、早急 に解決す る のは難 しい と思われ る。 しか しなが ら、CSR報 告書の信頼性 を高めるためには、保証 システム の確立が必要であるといえる。そのためには、

まず重要性 の観点か ら環境報告書ガイ ドライ ン を作成 し、統一 された報告書を作成す ることが 重要で、CSR報告書の体裁 を統一す ることで他 社 との比較が可能 になるとともに、保証業務 を 効率的に行 えるよ うになるか らである。 この点 については、現在の ところGRIがその役割 を果 た しつつあると言 える。

そ して、保 証 につ いては 「第三者 意 見」と

「第三者審査」 を全 く違 う目的の もの と捉 え、

それぞれ を併用す るとい う方法が有効であると 思われ る。既 に考察 した よ うに、第三者意見は CSR報告書の保証に関す る研究 87

(10)

第三者 とい う客観 的 な視点ではあ るものの、報 告書 の内容 を審査 し信頼性 を保 証す るものでは な く、保 証付 与者 が報告書作成組織 に対 しての 提言 を行 うもの と考 え られ る そ のた め、CSR 報告書 の中で今後 の企業経 営 に与 える影響 の高 い項 目に対 しては監査法人 な どの第三者 に よる 審査 を実施 し、デー タの裏付 けを含 めた保証 と す る一方 で、CSRに対す る方 向性や 定性 的 な情 報 に対 して は 関係 す る有識 者 やNGOな どに第 三者意見 を求 めてい くこ とで、今後 の方 向性 を 決定す る基礎 的情報 とす る事 が有用 であ る と思 われ る。 この よ うに 「第三者 審査

と 「第三者 意見」 のそれ ぞれ の良 さを生か して評価 対象 を 分 けて保 証 を付 けてい く事 で、CSR報告 書 の信 頼性 を高 め る保 証 システ ムの運用 が可能 にな る

と考 え られ る。

CSR報告書 の 内容 には環境 問題 や社 会 問題 が 含 まれ てい るが、環境 問題 の よ うに一国一企業 では解決 で きない問題 もあ り、地球規模 での取 り組み が重要 となってい る。特 に、環境 問題 に ついては環境 サ ミッ トの開催や気象状況 の変化 か らも分 か るよ うに、大 き く取 り上 げ られ る こ とが予測 され るた め、今 後 は地球規模 でCSR報 告書が果たす役割 は さらに拡大す ると思われ る。

本稿 でのCSR報告書 の保 証 に関す る研 究 では、

調査対象 の報告書が 日本企 業 に限定 され ていた が、世界各 国の取 り組 み については今後 の研 究 課題 として取 り組 んでい きたい。

1 環境省 が毎年実施 してい る 「環境 にや さ しい 企業行動調査」で、東京、大阪、名古屋の各証券 取引所 の1部 、2部上場企業2,695社お よび従業 員数500人以上の非上場企業等3,749社、合計6,444 社 を対象 としてお り、平成18年8月に調査開始。

有効回答数は、上場企業1,213社 (45%)、非上場 企業等1,478社 (39.4%)、合計2,691社 (41.8%)

となっている。

2http://www.corporateregister.com/ 現在、GRIガ イ ドライ ンに準拠 した2,381の報告書が掲載 され ている。 日本では、189の報告書がGRIガイ ドライ ンに準拠 している。

3特定事業者 には、独立行政法人や国立大学法人 88 国際経営論集 No.36 2008

な どの公的法人が指定 されている。

1本調査は、国連環境計画 とサステイナ ビリティー 社、格付け機 関のスタンダー ド&プアーズ社が共 同で、世界中で開示 され ているCSR報告書の格付 けを行 なった もので、2006年 に 「グローバル ・レ ポー タース〜明 日の価値〜」を公表 した。 一方、

残念なが ら上位50社 には選ばれなかった ものの、

レベルの高い報告書 を作成 しているとして 「その 他の50社」のランキングも作成 され、 日本企業か らは、東京電力 とサ ン トリー、エーザイな ど5社 が選ばれている。

本報告書 については、http://vw .sustainability.

com/index.aspを参照 されたい。隔年の発行 となっ ている。評価方法は、会社概要な どの基本情報か らパ フォーマ ンス情報 な ど29項 目で、評価の際の 視点はパ フォーマ ンスの優劣ではな く報告書の質

となっている。

5保証方法の分類 については、環境省編 『環境報 告書の信頼性 を高めるための 自己評価の手引き』

2007年 と上妻義直編著 『環境報告書の保証』同文 館 出版、2006年、園部克彦 ・伊坪徳宏 ・水 口剛著

『環境経営 ・会計』有斐 閣、2007年及び2005年度 以降に発行 された各社のCSR報告書を参考に した 6 環境配慮促進法は 「環境」情報の開示 を求める 法律 となっているが、 ここで同法を取 り上げたの は、 「環境」 がCSRに内包 され ると考 え られ るか らであ り、また同法 による自己評価 の概念がcSR 報告書に援用できると思われ るか らである。本稿 では、環境省編 『環境報告書の信頼性 を高めるた めの 自己評価の手引き』 を参考に している。

7 AAIOOOは、イギ リスのNPOであるAccountAbilit yが開発 した基本原則お よび保証規準で、重要性 ・ 完全性 ・適応性 の3要素か ら構成 され てい る。非 財務報告書の審査規準 として利用 され る。詳細は、

ww .accountability.org.ukを参照 されたい。

8AAIOOO保証基準 を利用 している企業の調査は、

vww.corporateregister.comに よる。 日本 で は、 富 士フイル ム、 日興 コ‑デ ィアル証券、 日本製紙、

タクマ、三菱東京UFJ銀行 、東京電力、東芝、あ いおい損保 の計8社 が利用 してい る。 2008年4月 現在、corporateregisterにはあいおい損保 を除いた 7社が登録 されている。

9 同規準は、アメ リカのSAI:SocialAccountability lnternationalが 作 成 。 規 準 前 のSAはSocial Accountabilityの頭文字 を とった もの。 SAIの詳細 な情報 については、次のHPの参照の こと。http:/ /www.sa‑intl.org/

10広瀬義州著 「企業会計 における非財務情報の役 割」『合計』、森 山書店、第173巻第6号、所収p.ll

CSR報告書等の非財務情報は財務諸表監査の保 証業務概念 を援用 した審査が既 に行われつつある

(11)

ため、保証業務 の分類 につ いては、企業会計審議 会の 「非財務情報等の保証業務 の概念 的枠組み に 関す る意 見書」 (2004年) の 「合理 的保 証業務 」 と 「限定的保証業務」の分類 が多 く利用 され てい ると思われ る。

11環境配慮促進法 で特定事業者 として指定 され て い る独 立行政法人 は次 の通 り。 (独 立行政法人 は 省 略、順不 同) 自動車検査 、宇宙航 空研 究開発機 構 、海洋研 究開発機構 、家 畜改良セ ンター、環境 再生保全機構 、高齢 ・障害者雇用支援機構 、国立 環境研 究所、国立高等専 門学校機構 、国立病院機 構 、雇用 ・能力 開発機構 、産業技術総合研 究所 、 新エネル ギー ・産業技術総合 開発機構 、森林総合 研究所 、水産総合研究セ ンター、石油天然 ガス ・ 金属鉱物資源機構 、 中小企 業基盤整備機構 、鉄道 建設 ・運輸施設整備 支援機構 、都市再生機構 、 日 本原子力研 究開発機構 、農 業 ・食 品産業技術総合 研究機構 、農林水産消費技術セ ンター、物質 ・材 料研 究機構 、水資源機構 、理化学研 究所 、労働者 健康福祉機構

12 「環境 コ ミュニケー シ ョン大賞」 は環境省 と財 団法人地球 ・人間環境 フォー ラム主催 、 日本経済 新 聞社後援 、財 団法人地球環境戦略研 究機 関持続 性セ ンター協力 で、2006年11月か ら2007年11月 ま でに発行 され た報告書が対象 となってい る。応募 作 品は317件 で、 ガイ ドライ ンに沿 ってい るのが 望 ま しい とされ てい る。審査 では、基本 的要件 が 明記 され てい るこ とや分 か りやす い ことな どが選 考基準 となってお り、受賞企業 は松下電器産業や

トヨタ 自動車、シャープな ど15社。

13凸版 印刷 だけが、第三者意見 と第三者審査 の両 方 を行 っていたため合計企業数 にズ レが生 じてい

る。

14その要因 として、上妻 (2006)は保証付与者 が 保証の限界 について理解 してい るのに対 して、情 報 の利用者 は保 証 の限界 につ いて理解 していない 点 を挙 げてい る。

参考文献

・上妻義直著 『環境報告書 の保証』 同文舘、2006

・環境省編 『環境 にや さ しい企業行動調査』環境 省、2007年

・環境省編 『環境報告書ガイ ドライ ン』環境省 、 2003年

・環境省編 『環境 コ ミュニケー シ ョンの更 な る広 が りを 目指 して〜環境配慮促進法 について〜』

環境省

・環境省編 『環境報告書の信頼性 を高 めるための 自己評価 の手引 き』環境省、2007年

・環境省 ・日本公認 会計士協会編 『csR情報審査

に関す る研 究報告』 2007年

・企業会計審議会編 『非財務情報等 の保証業務 の 概念的枠組み に関す る意見書』、2004年

・園部克彦 ・伊坪徳宏 ・水 口剛著 『環境経営 ・会 計』有斐閣アルマ、2007年

・柴 田英樹 ・梨岡英理子著 『進化す る環境会計』

中央経済社、2006年

・水 口剛著 『企業評価 のための環境 会計』 中央経 済社、2002年

・宮崎修行著 『統合 的環境会計論』創成社、2001 午

・AccountAbility"StakeholderEngagementStandard Exposuredrab"(http://www.accountability21.net /)

・AccountAbilityHノレ11000 AssuTanCe Standard"

AccountAbility,2003(http://www.accountability21.

net/)

・GlobalReportingInitiative"sustal'nabl'JI'tyReportl'ng Gul'deJl'ne"2006 (http://www.globalreporting.org/

Home)

・日本公認会計士協会編 「CSRマネ ジメン ト及 び 情報開示並び に保証業務 の基本的考 え方 につい て」『経営研 究調査会研究報告書26号』 2005年

・上妻義直著 「日本型CSR報告書 の特性」『会計』

第173巻第4号、森 山書店

・吉見宏著 「非財務情報 の監査」『会計』第173巻 第4号、森 山書店

csR報告書の保証に関する研究 89

図 1 保証 の分類 ( 保 証付与者) 組織 内 保証 の分類 自主審査 ( 基 準 あ り )自主審査 (基準な し) 第 三者審 査 第 三者 意 見 指摘 で きるが、環境報告書 の 自己評価 を報告書 の信頼性 向上 の手段 の一つ として 「 評価 」す る こ との重要性 を認識 してい る点が注 目され る。 3) 保証 の概 要 CSR 報告書 の信頼性 を高 め るた めの 「 保 証」 については、次 の 3 点 につ いて考察す る必要が あ る。 まず 、第一 に保 証 の実施方法
図 2 AAIOO O保証基準 による審査項 目一覧 分 類 項 目 重要仕 完全性 対応性 4 つのパラメータ 開示の対象範囲 開示の有無 経 営 コーポ レー ト.ガバナンス 2 全 あ り コンプライアンス& リスクマネジメン ト 2 国内 あ り マネジメン トシステム 2 国内 あ り お 客 様 お客様対応 2 国内 あ り 製品の安全管理 3 国内 あ り ( 出展 :富士フイルム 『 サステナビリティレポー ト 』2 0 0 7 より一部抜粋、筆者加筆) 直 [ 2006 年]p

参照

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