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デジタルコンテンツの真正性認証に関する 調査研究報告書

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(1)

デジタルコンテンツの真正性認証に関する 調査研究報告書

平成17年3月

財団法人 デジタルコンテンツ協会

(2)

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです

(3)

目次

1 はじめに...1

1.1 調査研究の背景と目的...1

1.2 本年度の調査研究の概要(エグゼクティブ・サマリー)...3

1.3 調査研究体制...8

2 著作物としてのコンテンツ真正性に関わるモデル分析...9

2.1 デジタル著作権の考え方...9

2.1.1 デジタル万引き...9

2.1.2 情報という財貨の特質...10

2.1.3 創作のためのインセンティブ...10

2.1.4 アナログとデジタル... 11

2.1.5 著作権法の枠内の対処策...12

2.1.6 著作権制御方式の流動化...12

2.1.7 著作権法を越えて情報法へ...13

2.2 コンテンツ真正性の解決課題と技術要件...14

2.2.1 真正性の定義...14

2.2.2 ネットワーク社会における4つの解決課題...17

2.2.3 課題解決のための技術要件...19

2.3 デジタルコンテンツを支える社会システム基盤...21

2.3.1 Dマーク...21

2.3.2 クリエイティブ・コモンズ...23

2.4 映像関連業界の動き...24

2.5 米国著作権ビジネス調査...25

2.6 まとめ...28

3 ネットワーク社会における真正性認証に関わる要素技術の整理...29

3.1 真正性認証に関わる技術基盤のとらえ方...29

3.1.1 e文書系コンテンツと著作物コンテンツの比較...29

3.1.2 真正性認証のための技術要件と要素技術...31

3.1.3 e文書系要素技術の著作物コンテンツへの適用可能性...32

3.2 e文書系コンテンツで用いられる要素技術...34

3.2.1 電子署名...35

3.2.2 タイムスタンプ...41

3.3 著作物コンテンツで用いられる要素技術...45

3.3.1 DRM ...45

3.3.2 電子透かし...53

3.3.3 ライセンス情報の標準化(REL, Rights Expression Language) ...55

3.4 まとめ...63

4 著作物としてのコンテンツ真正性認証のためのフレームワーク...66

(4)

4.1 真正性認証フレームワーク...66

4.1.1 認証モチベータ...67

4.1.2 真正性認証プロセスの抽象化...68

4.2 基本モデル...70

4.2.1 ダイレクトトラスト型...73

4.2.2 レジストリ型...75

4.2.3 証明書型...77

4.3 認証フレームワーク実現のための課題考察...80

4.3.1 基本モデルの適用可能性...80

4.3.2 他の技術との相互運用性...82

4.3.3 真正性認証を支える法制度...84

4.3.4 真正性認証を支える社会的信頼関係...87

5 まとめ...95

6 参考文献...97

付録 e文書の真正性に関わるビジネスモデルと法制度...98

A e文書系既存ビジネスのケーススタディ...98

A-1 国税電子申告・納税システム(e-Tax)...98

A-2 官報オンラインサービス...101

A-3 ASP型の電子カルテシステム...103

B e文書系コンテンツ真正性を支える法基盤...105

B-1 電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律、平成12年)...105

B-2 e 文書法(「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する 法律」、平成16年)...106

B-3 タイムスタンプ...106

C 米国著作権登録ビジネス調査報告(別冊)...108

(5)

図表番号

図 1-1 コンテンツ真正性リスクの変遷...3

図 1-2 物に固定された著作物コンテンツの流通モデル...4

図 1-3 デジタル著作物コンテンツの流通モデル...5

図 1-4 デジタル・ネットワーク社会が解決すべき4つの課題...6

図 1-5 真正性認証フレームワーク...6

表 1-6 3つの基本モデル...7

表 1-7 委員会の構成...8

表 2-1 著作権等制御の提案比較...13

図 2-2 ネットワーク社会における4つの解決課題...19

図 2-3 課題解決のための技術要件...21

図 2-4 VHSビデオ用ホログラムシール...25

図 3-1 各アプリケーションが要求する技術要件...30

図 3-2 技術要件を満たす代表的な要素技術...31

図 3-3 真正性情報分離のリスク...33

図 3-4 電子署名とタイムスタンプが実現するもの...34

図 3-5 Microsoft Authenticodeの利用画面(Windows XP SP2) ...36

図 3-6 政府認証基盤(GPKI) ...37

図 3-7 アリスの信頼ポイントと信頼チェイン...39

図 3-8 CMS SignedDataフォーマット...40

図 3-9 タイムスタンプの付与による電子署名の有効性延長...43

図 3-10 タイムスタンプの通信モデル...44

図 3-11 DRMシステムの標準的なモデルと要素技術...45

図 3-12 WMRMのコンテンツ保護と利用の手順...48

図 3-13 FairPlayを使ったiTunes + iPodの利用制御...49

図 3-14 Adobe Policy ServerAcrobat 7によるPDF文書の利用制御...50

図 3-15 Microsoft社のInformation Rights Management ...51

図 3-16 バリューチェーン...57

図 3-17 RELLicense構造...58

図 3-18 RELRDD及びDRMの関係...59

図 3-19 ODRLの構成...61

図 3-20 DRMアーキテクチャ...63

図 4-1 真正性認証フレームワーク...66

図 4-2 抽象化された真正性認証プロセス...68

図 4-3 権利者による真正性情報付与と利用者による検証...69

図 4-4 権利者による真正性情報付与と検証...70

図 4-5 解決課題に対するアプローチと基本モデル...71

(6)

図 4-6 ダイレクトトラスト型...74

図 4-7 レジストリ型...76

図 4-8 証明書型...78

図 4-9 基本モデルの適用可能性...82

図 4-10 他の技術との相互運用性...84

図 4-11 機械的機構、人的機構、社会的機構...88

図 4-12 認証局の正しさと秘密鍵の利用/管理が正しいこと...92

図 4-13 客体としての情報...94

本調査研究報告書は、委員会にて討議した内容を事務局で加筆修正して作成しました。

ただし、下記章節についてはその領域の専門家である委員会メンバにご執筆頂きました。

2.1 デジタル著作権の考え方 林 紘一郎 委員長

2.2 コンテンツ真正性の解決課題と技術要件 申 吉浩 委員

3.3.1 DRM 京嶋 仁樹 委員

3.3.3 ライセンス情報の標準化 鈴木 優一 オブザーバ

4.3.3 真正性認証を支える法制度 六川 浩明 委員

4.3.4 真正性認証を支える社会的信頼関係 藤本 一男 委員

付録 B e文書系コンテンツ真正性を支える法基盤 六川 浩明 委員 付録 C 米国著作権登録ビジネス調査報告書 田中 美苗 オブザーバ

(委員会メンバは報告書8頁参照)

(7)

1

はじめに

1.1

調査研究の背景と目的

近年、インターネットのブロードバンド化・低コスト化により、文書や写真だ けでなく、新聞・音楽・映画・書籍など、様々なコンテンツが電子化・デジタル 化され、ネットワーク上を流通しはじめている。また、クリエイティブ・コモン ズ[CC]

D

マーク[DM]あるいは超流通[SD]といった、インターネットならではの新た なモデルも提唱されている。元来のアナログコンテンツが、限定された流通形態 によって配布・利用される事を中心に発達してきたのに対し、これらの新しいモ デルでは、デジタルコンテンツがネットワークと言う新しい流通形態を手に入れ ることにより、新たな価値創造を試みるものだととらえることができる。

「コンテンツ(contents)」と一口にいっても、デジタルの世界においては、それ は単に「データ」ということに等しい。すなわちデジタル動画、デジタル音楽、

デジカメ写真、知的財産データ、電子契約書、電子カルテなどは、いずれもデジ タルで記述されたコンテンツであるということができる。本報告書では「コンテ ンツ」を、いわゆる「著作物としてのコンテンツ(以下、著作物コンテンツ)」と

「e文書系コンテンツ」とに分類する。前者は著作権法の観点を元に定義 される ものであり、先の例ではデジタル動画、デジタル音楽、デジカメ写真が該当する。

後者は著作物コンテンツ以外のコンテンツを指し、知的財産データ、電子契約書、

電子カルテなどが含まれる。

デジタル情報としてネットワークを流通するコンテンツ(以下、単に「デジタ ルコンテンツ」と呼ぶ)1が増加しつつある現在、これらコンテンツの真正性 2を 脅かすリスクも増大している。この最も大きな要因は、デジタルコンテンツは複 製行為を繰り返しても内容が劣化しない、改竄しても痕跡が残らない、日付けを 偽ることが簡単にできるなど真贋の区別・判別がつかないことにある。そもそも、

モノ(物質)に固定されたデジタルコンテンツであれば、経験的に真贋の区別は

1 一般にデジタルコンテンツというとき、デジタル情報としてネットワーク上を流通するコン テンツを指す場合もあれば、モノ(例えばCDなど)に固定されモノと共に流通するコンテンツ を指す場合もある。本報告書では、前者をデジタルコンテンツと呼び、後者を明示的に「モノに 固定されたデジタルコンテンツ」と呼ぶ。

2 本報告書における真正性の定義は、著作物の人格権的な視点から導かれる著作者とコンテンツ との結合と等値性(改竄されていないこと)、財産権的な視点から導かれる正当な流通とコンテン ツの保護などを示す。詳細な説明については、2.2.1項で述べる。

(8)

可能である。例えば、本・

CD

DVD

商品の装丁が整っていることで判断できた り、

CD

DVD

の場合では正規にプレスで作られたもの(いわゆる銀盤)とコピ ーメディアとの違いは商品固有の特徴から判断できる。しかしながら、デジタル コンテンツがモノに固定されず、ネットワーク上を流通した場合、その情報の真 贋を区別・判別することは難しい。昨今、

P2P

のファイル交換システムを悪用し た違法コピーが問題視されているが、

P2P

ネットワークにおいて違法に交換され るコンテンツの多くは、モノに固定されたデジタルコンテンツからコピーされた ものであるにもかかわらず、中身は同一であるため、真贋の区別を行なうことは 難しい。

また、フルデジタルで制作されたコンテンツは、制作過程の履歴なども複製や 改竄可能なため、本当の著作者しか保有し得ないものを示すことでコンテンツの 創作者を証明することも難しくなってきている。

一方、e文書系コンテンツにおける真正性の担保については、法律と技術の両 面から整備がなされてきている。現在、多くの

B2B

(民民トランザクション)や

G2C/B

(官民トランザクション)において、従来は手書き署名や押印が必要であ

った契約書や受発注書類などが、真正性を保ちつつ、電子データとして交換され ている。これらe文書系コンテンツの真正性を支える技術基盤の中で最も代表的 なものに、

PKI

Public Key Infrastructure

、公開鍵認証基盤)が挙げられる。

PKI

に基づくデジタル署名・認証技術によって、多くのe文書系コンテンツ真正性を 支える基盤が構築されている 。さらに電子署名法やe文書法などの、事実上

PKI

技術を前提 とした法整備によって、真正性証明の法的な担保がなされている。

デジタルコンテンツについてe文書系と著作物の両面からみると、e文書系コ ンテンツにおいては真正性リスク低減のための社会基盤(法制度、ガイドライン など)や技術基盤(PKI技術や、それに基づいた認証基盤など)が整備されつつ ある。一方、今後ネットワークを流通する著作物コンテンツが本格的に増加する ことが予測される中で、真正性を脅かすリスクに対して法律や技術面での対応が 必要になってくると思われる。(図 1-1)。本報告書では、e文書系の社会・技術基 盤を参考としながら、著作物コンテンツの真正性リスクを適切に軽減するフレー ムワークを提示する。さらに、映像などの著作物コンテンツにおける真正性認証 の将来ニーズやインフラ機能について社会・技術の両面から考察し、著作物コン テンツを安心・安全にネットワーク流通するためのモデルや実現に向けての課題 を洗い出すこととした。

(9)

社会・技術基盤連携 によるリスク低減に成功

電子化の流れ

真正性を脅かすリスク

•社会基盤の整備

(電子署名法、e文書法等)

•技術基盤の確立

(政府認証基盤、Identrus等)

e文書系コンテンツ真正性 著作性コンテンツ真正性

•劣化のない複製が可能

•瞬時かつ大量に複製可能

•改変が容易

•P2P流通の台頭

コンテンツ真正性を 確保するモデルが必要

We are here!

図 1-1 コンテンツ真正性リスクの変遷

1.2

本年度の調査研究の概要(エグゼクティブ・サマリー)

本調査研究の委員会では、先行するe文書系コンテンツ真正性の社会・技術基 盤を整理し、それを参考としながら、映像などの著作物コンテンツの領域におい て、未研究領域である著作物の人格権的な視点から導かれる真正性(著作者とコ ンテンツとの結合、等値性)を実現するモデルや将来ニーズを中心に議論した。

まず、本、CD、DVDなどモノに固定されたコンテンツの流通において真正性 はどのように担保されているのかを分析した。図 1-2に示すように、消費者は出 版社、レコード会社のブランド、販売店のブランドを信じて商品を購入する。よ く知っているあのレコード会社がアーティストに無断で商品を作り、店頭に並べ たりしないこと、すなわち「信頼のよりどころ」を経験的に知っているからであ る。

(10)

人格権 財産権人格権 財産権

消費者 消費者

価値の提供 対価の回収

・紀伊国屋書店で売っている

・東洋経済新報社発行の

・林紘一郎著作の本

これは本物だ!!

(消費者に蓄積される経験知 1:n)

企業 団体

グループ 個人 著者・著作物 商品化エンジン

この人の著作物だ!!

(契約 1:1)

ビジネス源泉の提供

リス クヘ ッジ

既存の流通モデル

図 1-2 物に固定された著作物コンテンツの流通モデル

そこで、ネットワークで流通するデジタルコンテンツの場合、「信頼のよりどこ ろ」はどこにあるのかを切り口に議論を重ねた。簡単に複製物を作れたり、改竄、

なりすまし、だましなどの脅威がある中で、安心・安全なネットワーク流通を実 現するためには、図

1-3

に示すように、商業コンテンツ分野、フリー流通コンテ ンツ分野それぞれの分野において下記のような真正性を担保する仕組みが求めら れることが判った。

1.

商業コンテンツ分野においては、海賊行為裁判での立証便宜視点から 著作物の登録を含めた著作権登録制度の確立(著作者とコンテンツと の結合)

2.

フリー流通コンテンツ分野においては、安心・安全の視点からコンテ ンツが改竄されていないことを証明する仕組み(等値性)

(11)

価値の提供

人格権 財産権人格権 財産権

消費者 消費者

企業 団体

グループ 個人 商品化エンジン

ビジネス源泉の提供

価値の提供 対価の回収

クリエイティブ コモンズ Dマーク

氏名表示権や同一性保 持権を担保する仕組み 著者・著作物

リス クヘ ッジ

ネット流通モデル 簡便に私の著作物を証明

(推定認証)する仕組み

商業コンテンツ分野

フリー流通コンテンツ分野

図 1-3 デジタル著作物コンテンツの流通モデル

1については、米国の著作権登録制度を調査分析した結果、海賊行為裁判に備 えて映画、音楽、書籍などほぼ全ての商業コンテンツがU.S.コピーライト・

オフィスに登録されていることや日本のアニメなども幾つかはU.S.コピーラ イト・オフィスに登録されていることがわかった。さらに電子登録などの研究も 進められている事も判明した。

先行する

e

文書系コンテンツを含めて安心・安全なネットワーク社会を構築し ていくための課題を社会・技術基盤から整理すると図

1-4

に示すような4つの課 題に整理できることが判った。

e

文書系コンテンツについては、これら4つの課題 について社会基盤、技術基盤が整備されつつあるため、

e

文書系コンテンツ事例や アプローチ手法を参考にしながら、著作物コンテンツに対する取り組み方を議論 し、図

1-5

に示すようなフレームワークをまとめ上げた。概ね

e

文書系コンテン ツの社会・技術基盤を適用しつつ、著作物コンテンツの特性を考慮しながら、真 正性認証の4つの課題に対する優先度、アプリケーション要件から導き出したと ころ、3つの基本モデルに分類することができた。

(12)

コンテンツと作者 等値性 との結合

正当な流通 コンテンツの保護

PKI PGP

タイム スタンプ

財産権 人格権

DRM e文書系の

技術が どこまで 使えるか

社会システム基盤

著作物系 技術基盤

e文書系 技術基盤

著作物系の現状

e文書系の現状

担保義務

秘匿義務

真正性認証フレームワーク

図 1-4 デジタル・ネットワーク社会が解決すべき4つの課題

財産権 著作権上 人格権

の分類

①権利者による真正性情報付与

②権利者による検証

①権利者による真正性情報付与

②利用者による検証 利用者 権利者 認証モチ

ベータ プロセス

真正性認証

コンテンツの保護 正当な流通

コンテンツと 等値性 著作者との結合 解決課題

真正性の維持 真正性の確認

性質

財産権 著作権上 人格権

の分類

①権利者による真正性情報付与

②権利者による検証

①権利者による真正性情報付与

②利用者による検証 利用者 権利者 認証モチ

ベータ プロセス

真正性認証

コンテンツの保護 正当な流通

コンテンツと 等値性 著作者との結合 解決課題

真正性の維持 真正性の確認

性質

権利記述言語(REL)の処理 存在証明

改竄防止 作成者の 否認防止

技術要件 認証 利用制御

権利の認可

DRM(狭義)

代表的な 電子署名 要素技術

アクセス制御

透かし 暗号化

利用者認証 タイムスタンプ

権利記述言語(REL)の処理 存在証明

改竄防止 作成者の 否認防止

技術要件 認証 利用制御

権利の認可

DRM(狭義)

代表的な 電子署名 要素技術

アクセス制御

透かし 暗号化

利用者認証 タイムスタンプ

DRMを使って補うことが可能な領域 証明書型

ダイレクトトラスト型 レジストリ型 基本

モデル DRMを使って補うことが可能な領域

証明書型 ダイレクトトラスト型

レジストリ型 基本

モデル

1-5

真正性認証フレームワーク

(13)

表 1-6 3つの基本モデル

基本モデル モデルの特徴

ダイレクトトラスト型

コンテンツの利用者と権利者が直接お互いを信頼すること によって真正性認証を実現する最も単純なモデル。

現実社会において信頼を確立できているケース、例えばク リエイターと配給会社の関係などに適用しやすい。

レジストリ型

第三者がコンテンツを安全に管理することで、真正性認証 を実現するモデル。

利用者・権利者の双方から信頼できる第三者がいるケース、

例えば教授が提供する学生向けコンテンツを、大学が配信 するような場合に適用しやすい。

証明書型

コンテンツが真正であることを第三者が証明できる仕組み を提供することで、真正性認証を実現するモデル。

レジストリ型と似ているが、第三者がコンテンツを預かる わけではないのでより強度な真正性を保つことができる。

例えば不特定多数の一般消費者と、コンテンツを配信する プロバイダに対して、中立な認証局が証明書を発行するこ とでコンテンツの真正性を保つことが可能になる。

また、

e

文書系コンテンツの社会・技術基盤と比較して下記のような著作物コン テンツ固有課題を抽出することができた。

3. e

文書系コンテンツと比較してデータ量が膨大なため、暗号化、ダイ

ジェスト生成、メタデータ作成などについてコンテンツ固有の特性、

利用場面などを考慮した機能や仕組みを付加する必要がある

4. e

文書系コンテンツでは特性上起こりえないコンテンツと真正性保障

情報との分離(海賊・改竄行為)に対する対策が必要になる

(14)

5. e

文書系コンテンツでは特性上起こりえないコンテンツの一部分の利 用(トリミング、カット)、引用、派生的利用など著作物コンテンツ特 有の課題を検討する必要がある

初年度の本調査研究では、デジタルコンテンツの真正性認証に関して

e

文書系 の社会・技術基盤や米国における著作権ビジネス事例を参考にしながら、安心・

安全の視点から映像などの著作物コンテンツにおける真正性認証の将来ニーズ、

社会技術基盤の整備状況、今後に向けた課題を抽出することができた。次年度は、

今回得られた知見をベースにより具体的な領域において真正性認証の仕組みに求 められる機能、課題分析、提言などをまとめていく。

1.3

調査研究体制

本調査研究では、財団法人デジタルコンテンツ協会内に調査研究員会を設置し た。本委員会の構成を下記に示す。

表 1-7 委員会の構成

委員長 林 紘一郎 情報セキュリティ大学院大学 副学長 委員 藤本 一男 作新学院大学 人間文化学部 助教授

京嶋 仁樹 富士ゼロックス(株)コンテンツセキュリティチーム長 申 吉浩 東京大学先端科学技術研究センタ 協力研究員

六川 浩明 千葉大学法科大学院 非常勤講師・弁護士 石垣 陽 セコム(株)

IS

研究所 研究員

松本 直人 (株)ネットアーク 代表取締役社長

(平成

16

8

月-12月の期間委員就任)

オブザーバ 鈴木 優一 セコム(株)IS研究所 プリンシパルコンサルタント 島岡 政基 セコムトラストネット(株) 事業推進部

吉田 圭佐 セコムトラストネット(株) 事業推進部 田中 美苗 大日本印刷(株)

C&I

事業部

(平成

17

1

月-

3

月の期間就任)

事務局 木村 勇 デジタルコンテンツ協会 部長 倉田 道夫 デジタルコンテンツ協会 研究主幹

米国著作権登録ビジネス調査チーム

(15)

2

著作物としてのコンテンツ真正性に関わるモデル分析

報告書2章では、著作性コンテンツ真正性の流通形態をモデル化し、将来必要 となる真正性認証のための解決課題と技術要件を議論する。

本章前半では、こうした真正性認証を実現するための4つの課題を挙げ、それ を解決するための10の技術要件を抽出した。

後半では、インターネットならではの新しいモデルや、米国事例研究を取り上 げた。

2.1

デジタル著作権の考え方

ナップスター事件を契機に、著作権をめぐる内外の紛争が発生し、制度の根幹 を揺るがしている。この問題は一般に、著作権制度の内部論理により解決すべき 事柄と理解されている。しかし実際は、①アナログを前提にしている現在の法体 系が、デジタル・ネットワーク化の影響を最も深刻に受けた最初のケースであり、

②情報という無形の財貨にどのような権利を認めるべきかという、法の根幹に触 れる問題を内包している。

2.1.1 デジタル万引き

われわれの世代は、書店に入って店主の目を気にしながら立ち読みをすること に、ある種の快感と若干の申し訳なさを感じたものである。しかし現代の若者は、

カメラ付ケータイで必要なページを盗撮(?)することに、気恥ずかしさも罪の 意識も感じないようである。ここで法的に「盗撮」と表現することの妥当性を考 えてみよう。世間ではこの行為が、窃盗罪(刑法235条)に当たるのではない かと考える向きが多い。しかし同条にいう「財物」とは有形財のことであり、同 245条に「電気窃盗」が特別に規定されていることや、その制定経過を考慮す ると、「情報」は窃盗の対象ではないと解釈するしかない。つまり法的には「デジ タル万引き」は成り立たないのである。

それでは、この行為が著作権侵害に当たるだろうか。カメラで写したデータを もとに、レポート対策用素材として学生相手に販売すれば当然に法に触れるが、

自分が使うだけならば「私的使用」(著作権法30条)に該当し、著作権侵害には ならない。これらは、いささか常識に反すると考えられるかもしれない。書店主 や本の著者にとっては、有形の本を盗めば明らかに「窃盗」に当たるのに、その 内容を電磁的に記録して持ち帰っても、何の咎めも受けないとは許し難いと感じ

(16)

られよう。しかしここには、「情報」という無形の財貨を扱う際に避けて通れない、

大問題が潜んでいる。

2.1.2

情報という財貨の特質

ここで、本そのもの(有形財)の取引と、本に収録されている情報(無形財)

の取引を比較してみよう。本の場合は、私が読んでいれば他の人が同じ本を読む ことはできない(競合性)し、私が買った本には買主に支配権を与え、他の人を 排除することが、技術的にも経済的にも可能である(排他性)。この競合性と排他 性から、所有権という権利が誕生し、資本主義的取引の秩序が保たれている。た とえば売買契約は、所有権が売主から買主に移転されることで、買主は本をどの ように使うも、貸すも、売るも自由になる。逆に売主には、何の権利も無くなる。

ところが、その内容である情報の場合には、一人の人が持っている情報を他の 人が同時に持つことは可能だし(非競合性)、これを長期間一人占めにすることは コストがかかりすぎて、営業秘密など特に秘匿したい情報を別にすれば、不可能 に近い(非排他性)。このような特質を持つ財は、経済学では公共財と呼ばれてお り、市場取引になじみにくい。なぜなら、有形財の売買のようにAからBに売っ たつもりでも、Aにも同じものが残っていることになり、有形財における所有権 のような明確な権利を設定することは難しいからである。

2.1.3

創作のためのインセンティブ

しかし、だからといってデジタル万引きのように、他人の創作物を勝手に利用 すること(タダ乗り)を許したのでは正義感に反するし、創作で身を立てること はできないことになる。そこで社会的に有用な情報の生産には、それにふさわし いごほうび(インセンティブ)を与えることになった。これが知的財産制度であ る。

ここで、3つの点に注意を喚起しておこう。まず第1点は、知的財産権は所有 権とは違うということ。世間では「知的所有権」といって、両者を混同する向き があるので注意したい。第2点は、知的財産権は、対象となる財貨の経済的特質 とは反する面があるということ。これを法的に言い直せば、知的財産を守るには 相応のコストをかけざるを得ず、放っておくと機能不全に陥りかねないことを意 味する。第3の、そして最も重要な点は、創作者にインセンティブを与えること は、それを乗り越えようとする第2、第3の創作者にはディスインセンティブに なる、ということである。世間ではこの点が往々にして忘れられがちだが、法は

(17)

もともと「一定期間に限って」権利を認めることとして

(

所有権は永久の権利であ るのに対して)、創作と利用とのバランスを取ろうとしているのである。

いずれにせよ、知的財産制度は、現在の法体系の中では特別法に位置づけられ るだけでなく、他の法律が有形財を念頭においているのに対して、当初から無形 財を対象としている点で、きわめてユニークな地位を占めている。ちなみに、私 人間取引を規律する基本法である民法においては「本法において物とは有体物を いう」という規定(85条)があり、無形の財貨については一般法においては扱 わないことを宣言している。

2.1.4

アナログとデジタル

ところが不思議なことに、デジタル技術の到来までは、有形財とは違うはずの 創作物.

(正しくは創作情報..

)も、何らかの媒体に体化・固定されて流通するケー スがほとんどであった。著作が本に、音楽がレコードやCDに、映画がフィルム に、テレビ番組がVTRに、といったように。この場合には、媒体としての物の 扱いをコントロールすることで、同時に著作権という無形財への権利を処理する ことができる。たとえば違法コピーを取り締まるには、違法コピーにより作成さ れたCDを差押さえればよい。

またアナログ時代にはコピーにはコストがかかり、品質も著しく劣化すること が多かった。これらはアナログ技術の欠点であるが、逆説的だが欠点があるが故 に、本物とコピーには品質の差が生じ、複製権を中心とする著作権制度は有効に 機能し得たのである。ところが、デジタル技術は、アナログ技術の欠点をほとん ど克服してしまった。コピーはたやすく、ほとんどコストを意識しない程度でで き、品質は本物と変わらない。しかもこれをネットワークを介して伝送でき、有 形財という媒体を介さずにデジタル情報のまま消費可能である。

こうなるとアナログ技術の下で隠されていた、情報という財貨の特性がむき出 しになってくる。つまりアナログ時代までは、有形財の権利と無形財の権利が一 体となって取引されていたのだが、デジタル技術によって両者が分離され、無形 財の権利処理の困難性と歴史的な未成熟が露呈されることになった。ナップスタ ー以降頻発する、ネット上の著作権をめぐる争いは、このような文脈で理解すべ きだろう。しかもここで悩ましいのは、一旦違法コピーが出回ってしまうと、回 収することも難しいことである。

(18)

2.1.5

著作権法の枠内の対処策

このような事態に対して、その解決策を知的財産制度の枠内で、見出そうとす る努力が続けられている。ウェブサイトを介して著作物を送信する行為(自動公 衆送信)や、その前段としてウェブサイトに掲出する行為(送信可能化)を、著 作権の対象に加えること(著作権法23条ほか)。著作権管理情報を、偽ったり改 変することを侵害行為とみなすこと(同113条)。著作物へのアクセスに制限を 加えるソフトウェアの、機能を不全にすることを禁ずること(不正競争防止法2 条ほか)、など、近年ほぼ一年ごとに著作権法等の改正がなされている。

しかしここで忘れてはならないのは、情報という無形財に権利を付与し、その 権利を完全に保障しようというのは、もともと無理な要請だという点である。そ の具体例は、権利の完全性を保障しようとすればするほど、利用がしにくくなる 点に現れる。たとえばDRM(

Digital Rights Management

)は、アクセス制御機 能を幅広く含むソフトウェアによって、著作権のみならずファイルに対する権利 一般を統制する技術である。このソフトを使えば、著作権であろうがなかろうが、

コードによって利用制限を設定できるが、コードの設定は使いにくさをもたらす ことは避けられない。

したがって、著作物の利用を幅広く認めて欲しいと願う側からは、なるべくパ ブリック・ドメインにしたいとするフリーソフト(ここでフリーとは無料ではな くフリーダムの意である)の運動や、著作者の意思を重んじて、権利の束のうち 特定の部分だけを留保するが、他は放棄するなどの案が出されている。

2.1.6

著作権制御方式の流動化

こうした提案は多岐にわたっているが、主なものを紹介しよう。それらは著作 権等の制御を目的としている点では似かよっているが、①現行法に忠実 (L=

Loyal 型)か、独立志向(I=Independent 型)か、②何を対象にし、どのような 処理方式を取るのか、という二つの軸で分類可能である。

②は大別して創作物を対象にするものと、より広くファイル一般を管理する ものに分かれる。前者は更に原著作物に関する権利情報を、データベースとして 一元的に蓄積するか(D=Directory)、それともウェブサイトによるリンク形式の ようなものを用いるか(この中が更に狭義のハイパー・リンクH=Hyperlink と、

現在のウェブ型=Wに分かれる)、IDを埋め込み型にして追跡していく型を取る か(T=Traceable)、という分類が可能である。このうちDは集中処理型、他は分 散処理型と言えそうである(表参照)。

(19)

個々の例をあげれば

:

①北川善太郎教授の“copymart”は、コンピュータによる 現行著作権の保護、つまりL型でしかもD型。② Ted Nelson 氏の

“transcopyright”は、ハイパー・リンクの創始者らしく、I=H型。③ Free Software Foundation の GPL (General Public License)は、I=W型の典型で ある。④ Lawrence Lessig 氏が提唱した cc(Creative Commons)マークは、同じく I=W型。⑤ 私のⓓマークは、基本はI=W型ではあるが、工夫をすればL=W 型にも使える点に特徴がある。⑥ 森亮一教授の“super-distribution は、典型 的なI=T型。⑦ Content ID Forum (cIDf)は、L=T型にもI=T型にも使え る汎用的な仕組みを考えている。

表 2-1 著作権等制御の提案比較

対象 現行法との関係

処理方式 忠実 (L) 独立 (I) 集中処理 ディレクトリ型(D) Copymart

狭義のハイパーリンク型(H) Transcopyright

ウェブ式リンク型(W) (ⓓマーク)

GPL cc マーク

ⓓマーク

ID による追跡型(T) cIDf Superdistritution cIDf

ファイル

一般 分散処理 ライセンス制御型 DRM

2.1.7

著作権法を越えて情報法へ

こうして著作権上の問題を、著作権の制度内で解決しようとするのは、それな りの意義があるが、このような見方は実は狭すぎる。現在の法体系は有形財を念 頭に置いたものであり、無形財の取り扱いは知的財産制度にゆだねてきたが、そ の知的財産制度も、情報という無形財が有形財に体化する局面を捉えて規律を維 持してきた。デジタル技術によって、デジタル情報が無形のまま生産・流通・消 費されるようになった今日では、知的財産制度に限らず法体系全体を、デジタル 時代にふさわしく再設計する必要があるのである。

その際著作権は、パイオニアとしての役割を担うであろう。なぜなら①アナロ グ時代といえども情報それ自体を法の対象としてきた歴史があり、②他の知的財 産(たとえば特許権)と比べても、より広範囲な表現行為一般を扱うものであり

(20)

(特許は技術情報のアイディア的側面しか扱わない)、③財産的要素のみならず精 神的要素(著作者人格権)も含んでいる、からである。

われわれは、著作権紛争をそれ自体として解決するだけでなく、著作権をも超 えた情報法そのものを考察しなければならない。一例として先にあげた回収不可 能性を考えてみよう。権利を侵害された者からすれば、①まず侵害行為を差止め、

②原状に回復させ、③損害賠償を求める、といった手順を望むだろう。これらが 無形財については殆ど意味をなさないとすれば、たとえば侵害公示(侵害情報を 公衆に知らせるため、検索エンジンで必ずヒットするよう工夫する)などの制度 を新設し、侵害状態の継続にサンクションとして機能するような仕組みができな いだろうか。

このように考えると、誕生から100余年を経過した近代著作権制度は、デジ タル時代に不適応症状を起こして死に向かっているのではない。デジタル情報財 に関する新しい法モデルとして、脱皮の苦しみを味わっていると見るべきである。

今年数年をかけて著作権法の大幅な改正が検討されているやに聞くが、ぜひこの ような前広の発想で取り組んでもらいたいものである。

2.2

コンテンツ真正性の解決課題と技術要件

2.2.1

真正性の定義

デジタルコンテンツの真正性の定義を行うにあたっては、誰のための定義であ るかを考えなければ、徒に定義のみを与えても概念の遊びに終始してしまう危険 がある。デジタルコンテンツの流通の当事者を考える時、著作者・流通事業者・

利用者に大別して大きな故障はないが、それぞれの当事者にとって、ネットワー ク社会における著作物が従来のそれに較べてどう変化してきたかを考察し、その 上でデジタルコンテンツの真正性を定義する必要がある。

著作者にとっての著作物については、長い研究の歴史を有する著作権という枠 組みの中で捉えれば、大きな遺漏がないと思われる。即ち、著作者にとっては、

自らが著作物に対して有している著作権が担保されることが、表現がデジタル符 号となりメディアがネットワークとなった現代においても変わらぬ関心である。

著作権(隣接権は含まない)は、大きく、人格権と財産権とに分類される。人 格権は、更に、公表権、氏名表示権、同一性保持権から構成される。この

3

つの 人格権のうち、公表権はデジタル化の影響を受けない。一方、著作物を大量に配

(21)

布するには相当の資本が必要であったデジタル化以前に比較して、誰でもがネッ トワークを介して著作物を大量に撒布することが可能である現代においては、剽 窃の蓋然性は比較にならないほど大きく、また、その影響も段違いに大きい。即 ち、著作者が自らの手になる著作物に対して自身の氏名を表示する権利は、デジ タル化によりその保証は容易ではない。同じ理由で、同一性保持に対する脅威も、

デジタル化以前と以後とでは差が歴然である。即ち、氏名表示権と同一性保持権 の二つの権利は、デジタル化により大きな脅威に晒されているといってよい。

一方、財産権は許諾権である。従って、財産権の担保とは、「許諾の権利の保護」

と「許諾を経ない権利行使の排除」の二つの要素からなる。許諾の権利の保護と は、財産権を許諾する資格のある者だけが許諾行為を行うことができるというこ とである。デジタル化は著作物の配布を容易にしただけではなく、著作物を作成 するコストをも大幅に低減した。そのため、全ての人間が、少なくとも原理的に は、人口に膾炙する著作物の著作者となる機会を享受しているわけで、一部の「特 権階級」に著作行為が帰属していたデジタル化以前とは異なり、「著作行為の大衆 化」の前では、誰が正当な許諾権の行使者であるかを判断するために従前の前提 に拠るわけにはいかない。また、許諾を経ない権利行使の排除とは、正当に許諾 された者だけが著作物を利用できるということである。デジタル著作物の複製と は何かという議論は措くとしても、無形的な利用権、及び、二次的著作物を作成 し利用する権利は、デジタル化により深刻な脅威に晒される。ネットワーク社会 では、デジタルコンテンツの複製を制御することは原理的に不可能であり、デジ タルコンテンツはネットワーク上に遍在することを覚悟しなくてはならない。つ まり、従来のように、著作物の存在を制限することにより、権利行使を制限する ことが不可能であるからである。

このように、著作者にとっての著作権の維持は、著作物を作成し、或いは、改 変して、大量に複製し、配布するに当たって、相当の資本が必要であったデジタ ル化以前と比較して、基本的に資本が不要であるというデジタル化以後では、極 めて困難な状況に直面している。デジタルコンテンツの真正性という概念が、危 殆化している著作権の維持に役立つのであれば、著作者にとって大きな意義があ る。

流通事業者にとっては、著作権だけでなく、デジタル化による著作隣接権への 影響も重大な関心事である。John Lockeの自然権論に立脚する著作権に対し、著 作隣接権は事業や権益に関わる権利である。この事実は、創作に寄与しないレコ ード事業者の利益が、著作隣接権の名のもとで保護されていることからも明らか である。それだけに、デジタル化がもたらす著作隣接権の侵害は、経済的なイン パクトに直結する。楽曲データの

P-to-P

流通に対するレコード業界のヒステリッ クともいえる反応は、この辺りの事情を雄弁に物語っている。しかしながら、デ

(22)

ジタル化の著作隣接権への影響は、必ずしもネガティブな面だけではないところ が複雑である。もともと、隣接権を含めた著作権は、メディアの進歩がもたらす 新しいビジネスモデルを追いかけながら変遷してきた歴史がある。

P-to-P

は好個 の一例といえるだろうが、ネットワークという新しいメディアは、新たな事業形 態と事業機会を生み出す力も秘めているのである。著作隣接権に表象される既存 の事業を一旦は破壊することで、産業の活性化をもたらす可能性もある。つまり、

流通事業者にとって、デジタル時代の著作権の保護は焦眉の課題であるが、著作 隣接権に表象される事業面の権利に関しては、デジタル化は諸刃の剣であるとい える。

最後に、利用者にとっての著作物を考察する。利用者は、純粋に、著作物がも たらす価値にのみ意義を見出す。ここでいう価値とは、著作物の内容のみならず、

著作者の社会的評価、著作物の利用場所、利用時間、価格など、利用に関わる全 ての要因を包含する。このように考えると、内容の改竄と著作者の詐称を除けば、

デジタル化はユーザーに利益をもたらしこそすれ、利益を毀損することは少ない と考えられる。例えば、デジタル化は、著作物の利用場所や利用時間の自由度を 拡大し、著作物の低価格化にも一役買う。著作物の「不正コピー」も、短期的に 考えれば、利用者にとっては利益である。

以上の考察を踏まえると、デジタル化により危殆化の対象となっているものは 著作権者と流通事業者の(著作隣接権も含めた)著作権であり、真正性の担保に よって何かを守るとしたらそれは著作権である。

以降では、ネットワーク社会における著作権の保護という観点で、デジタルコ ンテンツの真正性を考えていく。

さて、デジタルコンテンツの著作権保護といえば、

DRM

Digital Rights

Management

)という言葉が既に耳新しいものではなくなっている。

しかしながら、

DRM

は、前述の考察に照らして述べれば、著作権の保護よりは、

デジタルコンテンツの流通ビジネスの環境を作り上げる方向に偏っている。実際、

DRM

におけるコンテンツへのアクセス制御は、著作権者の権利を保護するという よりは、むしろ、コンテンツの利用と課金システムとをリンクさせることを目的 とする。これは、自然権論な立場よりはインセンティブ論に基づき著作権を法制 化し、それ故人格権を認めない、また、レコード事業者に著作権を認める米国に よる主導の下で概念及び技術が作り上げられてきた事情に由来するのかもしれな い。

一方、著作権法の原典となった

1709

年のアン法でも、日本の著作権法の基礎と なっているベルヌ条約においても、著作権法の精神は稍もすると強大になりすぎ る「メディアの支配者」から、著作者の労苦の果実を守る点にあった。ただし、

(23)

印刷技術の発明以来、メディアを支配してきた「資本」は強大であったには違い がないが、それでも、一定の良心を期待することが可能であったし、行政による 規制には従順(脆弱)であったといえる。それに対し、デジタル化とインターネ ットがもたらす「メディアの解放」は、ある意味では、無秩序で無法な主人にメ ディアを隷属せしめる過程である。インターネットビジネスという言葉も、旧来 の制度的な掣肘を逃れ、無制限に発散しようとする

Netizen

の活力を一定の社会 的枠組みの中に収束させるというよりは、むしろ発散を奨励する方に加担してい るようである。

このような現状認識に基づき、本委員会で目指す「デジタルコンテンツの真正 性認証」は、徒にインターネットによるビジネスチャンスを追求する風潮に組す ることなく、アン法以来の著作権法の精神に基づき、本来の意味で著作権を保護 することを目的としたい。その意味では、事業上の権益に深く関わる著作隣接権 をスコープに含めず、更には、財産権よりは人格権により強い焦点をあてるもの とする。

本報告書では、デジタルコンテンツの真正性を「著作者及び著作権者の著作権、

就中、人格権を保護するために必須の属性」と定義し、真正性の認証は著作権を 保護することを目的とした該属性の確認を指すものとする。

2.2.2

ネットワーク社会における4つの解決課題

以降では、著作権に著作隣接権を含めない。

著作権の保護という観点から、コンテンツのデジタル化に伴って解決が要請さ れる課題を整理する。

まず、人格権の観点からは、氏名表示権と同一性保持権の保護を目的として、

剽窃などコンテンツと著作者の正当な結合を阻害する行為、及び、改竄など著作 者の承諾を経ずに著作物の変形や切断を行う行為を防止しなくてはならないこと を前節において述べた。以下では、前者を「コンテンツと著作者の結合」の課題、

後者を「等値性」の課題と呼ぶこととする。

コンテンツと著作者の結合 著作者が公表した時点での著作物に対し、著作者 が望む名称が結合され、著作物の利用者は随時その結合を確認できること。著作 者の名称が削除されたり、または、変更される等、両者の結合が毀損された場合 には、著作物の利用者はその事実を検知できること。

等値性 著作者が公表した時点の著作物と、利用者による利用の時点の著作物 とが同一(等値)であることを検証できること。

次いで、財産権の観点から、対処するべき課題を整理する。

(24)

前節で見たように、財産権の保護は、許諾の権利の保護と許諾を経ない権利行 使の排除の

2

点を達成することで実現される。

許諾の権利の保護を実現するためには、財産権に基づいて許諾を与えようとし ている者が、著作物の正しい著作権者であるかを確認できる必要があるが、著作 権者は財産権を第三者に譲渡することができるため、著作者において発生した財 産権は、著作者に固定されるわけではなく、著作権者間の譲渡行為に伴って流通 するという問題がある。ただし、従来は質量をもった著作物の流通を制御する方 法が存在したため、権利が野放図に流通することはなかった。一方、森亮一氏の 超流通の考え方にもあるように、ネットワーク社会においては、デジタルコンテ ンツの流通を制御する有効な手段は存在しない(超流通においては、デジタルコ ンテンツは暗号化されているので、流通を制御しなくても安全である)。即ち、ネ ットワーク社会においては、権利の流通は著作物の質量というくびきから解き放 たれ、従って、著作権者の確認は著しく困難さを増す。逆にいえば、ネットワー ク社会においては、財産権の正当な流通を保全することが、著作権の保護の観点 から重要な課題となる。これを、「正当な流通」の課題と呼ぶ。

許諾を経ない権利行使の排除には、デジタルコンテンツの利用の局面において、

著作権者が不正に財産権を行使しようとしたり、著作権者から許諾をうけない利 用を試みた場合、これを拒否する手段が必要となる。これも、先に述べたように、

デジタルコンテンツの流通を制御することはできないことから、デジタルコンテ ンツはネットワーク内に遍在し、任意に権利行使を試みる機会が存在するからで ある。この問題は、コンテンツを不正な権利行使から保護するという意味で、「コ ンテンツ保護」の課題と呼ぶことにする。

以下に、正当な流通とコンテンツ保護の要件を述べる。

正当な流通 財産権の許諾にあたり、許諾を与える者が、著作者であるか、或 いは、著作者から財産権の譲渡を直接・間接に許諾された者であることを検証でき ること。

コンテンツ保護 財産権を許諾されていない者が、該権利を行使しようとした 場合、これを拒否できること。

(25)

コンテンツと作者 等値性 との結合

正当な流通 コンテンツの保護

PKI PGP

タイム スタンプ

財産権 人格権

DRM e文書系の

技術が どこまで 使えるか

社会システム基盤

著作物系 技術基盤

e文書系 技術基盤

著作物系の現状

e文書系の現状

担保義務

秘匿義務

真正性認証フレームワーク

図 2-2 ネットワーク社会における4つの解決課題

2.2.3

課題解決のための技術要件

前節では、デジタルコンテンツの真正性を認証する、即ち、著作権を保護する ために解決しなければならない課題を、コンテンツと著作者との結合、等値性、

正当な流通、及び、コンテンツ保護の

4

項目に整理した。

ここでは、各課題を解決するための技術要件を整理する。

コンテンツと著作者の結合 コンテンツと作者の結合の実現のための技術要件 として、「作成者の認証」と「否認防止」を挙げる。デジタルデータに対して、そ の作成者を認証する機能を「作成者の認証」と呼ぶ。作成者の認証の機能は、著 作者が作成した時の状態で著作物が利用者に供された場合、利用者が著作者を紛 れなく特定することを可能とする。しかしながら、作成者の認証は、不正な第三 者が著作物を入手し、あたかも自分の著作物であるかのように改変することを妨 げない。この問題を解決するために、「否認防止」の機能が必要となる。否認防止 は、著作物が改変されていることが発覚した場合、作成者の認証により認証され た第三者が著作物の改変に関与していたことを否認できないよう、著作物に証拠 性を持たせる機能である。否認防止は、改変によるなり済ましを事前に阻止或い はリアルタイムに検知する手段とはならないが、事後(

after-the-fact

)に、攻撃

(26)

者が不正行為を否認できないことにより、抑止効果をもつ。このことから否認防 止は、「否認拒否」もしくは「否認不可」と呼ばれることもある。

等値性 等値性の実現のための技術要件として、「改竄防止」と「存在証明」を 挙げる。「改竄防止」は、作成者の認証と不可分に提供される機能であり、作成者 の認証により認証される作成者を変えることなく改竄を行った場合、著作物の利 用者が改竄を検知することができる機能を提供する。なお、改竄防止はあくまで も改竄を事後的に検知する機能であり、事前に改竄行為を抑止したり、改竄行為 がなされた事をリアルタイムに検知するものではない。一方、「存在証明」は、あ る時点において、特定の表現を有する著作物が存在することを証明する機能であ る。著作者が著作物の公表時に存在証明を取得し、更に、著作物に改竄防止の処 理を施せば、利用者は公表の日時を存在証明から知ることができ、また、著作物 に変更や切断があった場合には改竄防止の機能により検知することができる。

正当な流通 正当な流通の課題を解決するための技術要件として、「著作権記述 言語処理」及び「利用者の認証」を挙げる。「著作権記述言語処理」とは、著作権 を記述するための言語仕様及び処理系の技術である。著作権記述言語に従い電算 機により処理可能な形式で記述された著作権データは、オリジナルが著作者によ って生成され、財産権の許諾行為及び実施行為に伴い、適切に改訂されて著作者・

著作権者・利用者の間を流通する。著作権データの「作成者の認証」・「否認防止」・

「改竄防止」等、著作権処理に必要なセキュリティは処理系の内部において充足 される3。一方「利用者の認証」とは、コンテンツの流通過程において、その利用 者がコンテンツに対する正当な行為権限者であるかどうかを確認する機能をいう。

利用者の認証は、著作権記述言語の処理系の機能として提供されることもあり得 るが、外部で提供される

PKI

の機能を利用することで、より汎用的に機能を提供 することが可能となる。

コンテンツの保護 コンテンツの保護の課題を解決するための技術要件として、

「著作権記述言語処理」、「アクセス制御」、及び、「利用制御」を挙げる。利用制 御は、コンテンツへの権利行使(利用)を適正に実行するために、利用期限や利 用回数の制御、トレースのための利用ログの記録などの機能を提供する。アクセ ス制御は、著作権者或いは利用者によるコンテンツの操作(利用)の可否を制御 する機能である。アクセス制御機能は、前述の著作権記述言語の処理系及び後述

3 「作成者の認証」「否認防止」「改竄防止」については、「正当な流通」を解決するための技術 要件ではない。すなわち厳密には、「著作権記述言語処理」は「真正性の維持」だけでなく、「真 正性の確認」をも包含する性質を持つ要件と考えられる。しかし実際の著作権記述言語(REL,

Rights Expression Language)における処理は、DRMに代表される要素技術によって「真正性の

維持」を達成することに重きを置かれている。以上の観点からみたDRMの実装については、3.3.1 項に詳しい。またRELの標準化動向については3.3.3項にまとめられている。

(27)

する利用制御と密接に連携する。著作権記述言語の処理系による著作権データの 処理結果を受け、実行環境に照らして、アクセスの可否を利用制御に指示する。

財産権 著作権上 人格権

の分類

コピーコントロール アクセス制御(狭義)

存在証明 改竄防止

作成者の 否認防止

技術要件 認証 世代管理 編集コントロール

真正性認証

(本調査研究のスコープ)

再生回数、時限 トレーサビリティ確保

コンテンツの保護 正当な流通

コンテンツと 等値性 作者との結合 解決課題

真正性の維持 真正性の確認

性質

財産権 著作権上 人格権

の分類

コピーコントロール アクセス制御(狭義)

存在証明 改竄防止

作成者の 否認防止

技術要件 認証 世代管理 編集コントロール

真正性認証

(本調査研究のスコープ)

再生回数、時限 トレーサビリティ確保

コンテンツの保護 正当な流通

コンテンツと 等値性 作者との結合 解決課題

真正性の維持 真正性の確認

性質

ネットワーク社会 真正性イニシエータ

正当な流通 コンテンツ保護

図 2-3 課題解決のための技術要件

2.3

デジタルコンテンツを支える社会システム基盤

2-2

もしくは図

2-3

に示す解決課題・要素技術のキーワードをリファレンス として、関連研究の事例紹介を行う。

2.3.1 D

マーク

d

マークは、「デジタル創作権」と呼ばれる権利を記述する仕組みであり、1999 年に提唱された[DM]。dマークでは、Web上で発表される著作物について、著作権 者自ら、または代理人を通じて「デジタル創作権」を設定できる。この権利の期 間は

0

年、5年、10年、15年の

4

パターンが用意されている。通常の著作権は著 作行為によって自然に発生する権利であるのに対し、

d

マークにおけるデジタル創 作権は、その著作物が公開されることによって発生する。また、特にその著作物 の財産権については、自ら権利の存続期間(0年~15年)を宣言することによっ て発生する。

従来の著作権法では、著作物が有体物であるメディアを通じて管理されること を前提としていた。これに対し、

Web

をはじめとするデジタル情報は瞬時に世界 へ拡散するため、著作権者の死後

50

年~

70

年という長期に渡って権利を守ること は困難である。

d

マークは、デジタル情報に適した著作権のあり方を提唱するもの といえる。

表 1-6  3つの基本モデル  基本モデル モデルの特徴 ダイレクトトラスト型 コンテンツの利用者と権利者が直接お互いを信頼することによって真正性認証を実現する最も単純なモデル。  現実社会において信頼を確立できているケース、例えばク リエイターと配給会社の関係などに適用しやすい。 レジストリ型  第三者がコンテンツを安全に管理することで、真正性認証を実現するモデル。 利用者・権利者の双方から信頼できる第三者がいるケース、 例えば教授が提供する学生向けコンテンツを、大学が配信 するような場合に適用しやすい
図 3-5  Microsoft Authenticode の利用画面(Windows XP SP2)
図 3-6  政府認証基盤(GPKI)  GPKI は、ブリッジ認証局及び各府省の認証局から構成され、ブリッジ認証局は 総務省、府省認証局は各府省において整備されている。そして各府省の認証局は、 処分権者である大臣等の官職証明書を発行している。申請者側にも GPKI と相互 に信頼関係を結んだ民間認証局等により証明書が発行される。 こうして発行された証明書を用いて電子署名を行うことで、あるe文書(例: 確定申告、通知書)が、本当にその名義人(例:申請者や行政機関の処分権者) の同意・確認によってなされたもの
図  3-12 WMRM のコンテンツ保護と利用の手順 WMRM は、 3.3.1.1 節で述べた標準モデルに近い典型的な DRM システム である。 コンテンツは Contents Packager によって保護が施される。一度保護され たコンテンツは、保護された状態で利用者に提供されるので、利用者への提 供方法の選択が WMRM の系の安全性に影響することがない。 保護されたコンテンツの利用を制御するためには、保護されたコンテンツ を復号するための鍵情報と、利用者に許諾する利用の範囲を限定するビジネ ス
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参照

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