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CSR 報告書とマテリアリティ

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CSR報告書とマテリアリティ

CSR 報告書とマテリアリティ

1.は じめに

2.マテリアリティ概念の意義

3.マテリアリティの認識 と特定プロセス 4.事例研 究

5.おわ りに

大 田博樹

1. はじめに

近年、社会的責任(CSR :CorporateSocialResponsibility)に対するニーズ が高 まってお り、企業は自らのCSR活動 を各種利害関係者 に開示するために CSR情報 を含んだ非財務報告書 (以後、CSR報告書 と言 う)を作成す るケース が増加 している。CSR報告書が作成 され始めた初期の段 階では、統一 された フレームワークがなかった事 もあ り他社 の報告書 との比較が難 しいなどの問 題点 も指摘 されていたが、現在 では

GR

I

l

G3

や環境省の環境報告書 ガイ ド

ラインな どに準拠 した報告書が多 くなった事で情報の利便性 も高 まって きて いると言える。

しか し、一方でCSR報告書の質や量 に関 しては統一性 を欠いているという 問題 も指摘 されている。報告書の中には、100ページを超 えるような大量の 情報 を開示する企業 もあ り、情報の取捨選択は情報利用者である利害関係者 に任せて しまうケース もある。 この ような状況の中で、情報の利用者 に対 し て有用 な情報 を分か りやす く提供するために、重要性 (マテ リア リテ ィ)概

1GRIはCERES(CoalitionforEnvironmentalResponsibleEconomies)「環 境 に責 任 を持 つ経済のための連合」 や国連環境計画(UNEP)などが中心となって立ち上げた非政府組織で、

2006年に第3版のガイドライン(G3)を公表した。GRIガイドラインは、持続可能性実現のためには経 済 ・環境 ・社会的側面から企業経営にアプローチする必要があるとの認識から、経済 ・環境 ・社 会の3要素 (トリプル ・ボトム・ライン)を含んだ報告書の作成を求めているのが特徴となっている。

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PrqjectPaperNo.24

念を採用する企業 も出て くるようになって きた。マテ リアリティ概念は、情 報利用者の意志決定に重要な影響 を及ぼす情報 を網羅 し、情報内容に優先順 位 を付 けることで分か りやすい報告書 を作成する事 をE]的 とする考 え方であ る。マテ リア リティ概念によ りCSR報告書の利便性 を高める事が期待で きる が、現在の ところ情報の重要性 を考慮 している企業 はまだ少数派 となってい る。

本稿では、マテリアリティ概念がCSR報告書 に どの ような影響与 えるのか を明 らかにするとともに、今後の課題 について考察することを目的 としてい る。

2. マテリアリティ概念の意義と影響

1)CSR報告書 とマテ リア リティ概念の意義

マテ リアリティ(重要性)という考え方は、既 に会計学の領域で会計原則の 一つ として採 り入れ られている。会計原則 は、長い間の会計実践の中で会計 慣行 として発達 した ものの中か ら一般に公正妥当 として認め られるものを要 約 した ものであるが、会計処理 を行 う会計担当者の会計判断が依拠すべ き準 拠枠の提供や企業会計 に関す る法律や規則 などの制定にあたって有力 な指針

となるなど今 日の企業会計 に大 きな影響 を与 えている。

その中で重要性の原則 は、企業の財務情報 を利害関係者 に提供する際に情 報利用者の判断を誤 らせない ようにするために、重要性の乏 しい項 目につい て本来の会計処理 または表示方法によらないで、他の簡便 な方法 を選択する ことを認めている。ただ し、重要性の高い項 目については、正規の会計処理 を行い明瞭な表示 を行 うことを求めている。 ここでの重要性 には、財務諸表 に記載 される科 目と金額の2種類 の重要性があ り、科 目の重要性では、企業 の財務状況 を表示するうえで不可欠な科 目や企業の財務 に大 きな影響 をもた らす可能性のある科 目の事で、簡便 な方法 による表示 が認め られていない場 合 を指 している。 また、金額の重要性では、‑科 目の金額が一定額以上であ る場合 に企業の財務状況を判断するうえで重要 な意味を持つ と考 えられる場 合 を指 している。以上の ように企業会計では、利害関係者の判断を誤 らせ な いために全ての会計情報 を提示するのではな く、重要性の高い項 目だけを厳

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CSR報告書とマテリアリティ

密な手続 きにより開示す る事 を求めている。

この ような重要性の考 え方は、CSR報告書の ような非財務報告書で も採用 され ようとしている。 これまでのCSR報告書の中には、CSRに関す る全ての 情報 を盛 り込み、報告書全体で100ペー ジを超 えるような膨大 な情報量 を持 つ報告書 もあ り、必ず しも情報利用者 にとって分か りやすい報告書 とは言え ない もの もあった。その背景には、急速に高 まった企業 に対す る社会的責任 論 とその責任 を果た している企業 に積極的に投 資をす るようなSRI(socially responsibleinvestment)と呼ばれる投 資信託の拡大があると思われる。

企業の社会的責任 は 「事業活動 を通 じて派生 して くる社会的な悪影響や環 境上の負荷 を可能な限 り小 さくし、他方で社会や環境 に及ぼす好影響 をで き るだけ大 きくしようとする、個別組織の主体的な取組み」 [日本規格協会編、

2004年、p.23]の事で、その具体的な活動内容 は企業規模や業種、国によっ て異 なっている。 日本では、特に環境問題‑の関心が高かったが、最近の景 気悪化の影響で派遣切 りの問題が発生 し、企業の雇用 に対する責任 を求める 声 も高まっている。企業側 として も各種利害関係者 との良好 な関係 を築 くた めに、様 々なCSR活動に積極的に取 り組 むケースが増 えて きている。例 えば、

環境問題 については2、社会的責任活動の一環 として82.6%の企業が環境対策 を行 ってお り、 この割合 は年々増加 しているとい う。 この ように企業がCSR 活動 を行 なうのは、かつての公害問題 による損害賠償 とはその 目的が違い、

必ず しも企業にとってのコス トではな く、CSR経営 によって企業価値 を高め た り、あるいはリスク回避 した りするなど将来‑の投資 としての意味がある

と考えられるようになって きた事が背景にあると思われる。

また、環境問題以外のCSR活動で も、例 えば富士ゼロックスは、CSRに取 り組むことによってマネジメン ト・プロセスを再活性化 させ、 これまであっ たプロセスをCSRの観点か ら再点検することで、課題が明 らか とな り的確 に 対応す ることが可能になった とい う。 また、CSR活動 は部門横断の活動であ

2環境省が毎年実施している 「環境にやさしい企業行動調査」 で、東京、大阪、名古屋の各 証券取引所の1部、2部上場企業2,516社および従業員数500人以上の非上場企業等3,968社、合 計6.484社を対象としており、平成19年度における取組について調査を実施した。有効 回答数は、

上場企業1,151杜(45.7%)、非上場企業等1,668社(42.0%)、合計2.819社(43.5%)となっている。

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PrqjectPaperNo.24

るため、部門間の連携の強化 にも役 に立 った としている3。そ して、 この よ うな

CS R

活動によって得 られた様々な成果 を

CS R

報告書 などの非財務報告書 によって利害関係者 に開示することで、社会 とのコミュニケー ションを取 り 社会的責任 を果た している事 を証明 しているのである。

一方で

、CS R

に関す る情報 を利用する立場か らのニーズ も結果的に

CS R

報 告書の巨大化 に少 なか らず影響 を及ぼ していた と思われる。例 えば、前出の

S RI

と呼ばれる投 資信託は、 これまでの財務情報 を中心 に分析 を行 う投 資信 託 とは違い、企業の社会的責任行動 を評価 の対象 としているため

、CS R

に積 極的に取 り組んでいる企業の方が資金調達の面で より有利 になるとい う側面 がある。そのため

、CS R

に積極的に取 り組んでいる企業 は、 自らの活動の成 果を網羅的に報告するとい うインセ ンティブが働 き、報告書に記載 される情 報量が増大 した もの と考え られる。近年

、CS R

報告書 にはこの ような傾向が 見 られた事 もあ り、最近では情報利用者の視点か らマテリアリティ概念が採 用 されるようになって きているのである。

2)マテ リア リテ ィ概念導入の影響

現在、 日本では

CS R

報告書 を作成する際に参考 にされているガイ ドライン が、環境省の 「環境報告書 ガイ ドライ ン」 とGRIの 「サステ イナ ビリティ ・

リポーティング・ガイ ドライン」である。GR工が作成 しているガイ ドラインは、

社会や経済、環境 など幅広い側面か ら企業 を捉 え、それ らの情報 を利害関係 者に開示するための報告書 を作成することを目的 としてお り、 日本 を含め世 界的に利用 されている。本 ガイ ドラインでは

、CS R

に関す る情報 を幅広 く開 示す ることを求めて きたが、2006年 に公表 された

「 G3

」 と呼ばれる第

3

版の ガイ ドラインでは、「マテ リア リティ (重要性)」の原則が採用 され、各種利 害関係者の評価や意思決定に大 きな影響 を及ぼす可能性 のあろう項 目を中心 に情報開示す ることを求めるようになった。

G3

4によると

、CS R

報告書の情報 は、「組織の重要 な経済的、環境的お よび 社会的影響 を反映するテーマお よび指標、あるいはステークホルダーの評価

3日本規格協 会編 rCSR企業の社 会 的責任 事例 による企業活動最前線j 日本規格協 会、

2004年、所収p.114

4G3については、GRIのHPを参照のこと。http://www.globalreporting.org/Home

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CSR報告暮とマテリアリティ

お よび意志決定に実質的な影響 を及ぼすであろうテーマお よび指標 を網羅す べ き」であると定義 している。そ して、マテリアリティについては、「ある 課題 または指標が、報告 に値す るほ ど重要 となるか どうかの基準点であ り、

この基準点 を超 えた場合 には全ての重要 なテーマが同一の重要性 を持つ訳で はな く、報告書中では、 これ らの重要 なテーマお よび指標の相対的な優先順 位を反映 して強調 されるべ きである」 と説明 している。

この ようにGRIはG3において、 これ までの 「網羅的」 な情報提供 を改め、

情報 に優先順位 を付 けることで情報利用者 に有用 な情報 を提供するという立 場 を示 したことになる。 これまでのような一律 に全 ての情報 を開示するとい う報告書では、膨大 な情報量 を持つ ことにな り、かえっで情報利用者の利便 性 を低下 させて しまう事 を考 えると当然の提言であると言 える。

このマ テ リア リテ ィ原則 は、CSR報告 書 の保 証 を行 う際 に利用 され る AAIOOO保証基準5で も採用 されてい る。AAIOOO保証基準 は、非財務情報 の審査 に関す る基準の一つで、 イギ リスの

NPO

であるAccountAbilityが作 成 したAAIOOOシリーズの一部 を構成 している。AAIOOO保証基準 では、次 の3項 目を基本原則 として提示 している。 まず、利害関係者の意志決定や判 断のために十分 な情報が開示 されてい るか を判断す る重要性(materiality) の原則、次 に開示 すべ き情 報 を完全 に認識 してい るか を判 断す る完全性 (completeness)の原則、そ して、利害関係者 に対 して的確 に対応 しているか を判断する対応性(responsiveness)の原則である。CSR報告書の保証基準に おいて も、マテ リアリティ概念が重視 されていることか らも、今後 は情報の 重要性 を判断 し、その中で情報に優先順位 を付 けて開示 してい くことが求め

られて きているとい うことが分かる。

この ように、情報 に優先順位 を付 けて報告書 を作成する事で、 これまでの ような企業中心の視点で作 られた 「宣伝広告的」なCSR報告書か ら、様々な 利害関係者の立場 に立った情報 を中心 に開示 をする報告書へ と移行する転換 期 にきていることが指摘で きる。 また、マテ リアリティ概念の導入で網羅的 に情報 を開示するという作業か ら、特定の情報 を開示するという作業に移行

5AccoutAbility"AAIOOOAssuranceStandard"2003詳細 は、www.accountability.org.

ukを参照されたい。

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ProjectPaperNo.24

する事で、報告書 を作成する企業 自身の負担 を軽減 し、 さらに財務報告 と融 合 させた統合 的な報告書の作成 を促進 させ る可能性6もあ り、今後 はさらに 有用な情報が開示 される事が期待で きる。

3. マテリアリティの認識と特定プロセス

1)マテ リア リティの認識

CSR報告書 においてマテ リアリティ概念 を採用 し、情報 に優先順位 を付 け るためには、 まず組織 にとっての利害関係者 を特定 し、その集団の要求する 情報 を認識す る必要がある。 しか し、それぞれ価値観の異 なる利害関係者の 中か ら、組織 に求め られているマテ リアリティを認識する作業は容易ではな

い。

GRIのガイ ドラインであるG3では、マテ リアリティを判断する際の方法 と して、適合す る国際基準お よび組織が遵守すると期待 されている合意事項 に 明記 されている基本的な期待 を考慮するだけではな く、企業の全体的な使命 お よび競争上の戦略、ステークホルダーが直接表明する懸念、幅広 い社会的 な期待お よびサプライチェー ンなどの取引先や関係会社、消費者に対す る企 業活動の影響 など、企業内外の要素 を組み合わせて どの情報が重要であるか の判断を下すべ きであるとしている。企業 を取 り巻 くこれ らの要素に関 して は、著 しい経済的、環境的お よび社会的影響、あるいはステークホルダーの 意志決定 を反映するような情報の重要性 を評価す る際にも検討すべ きである

と付 け加 えられている。

そ して、マテ リアリテ ィを特定する際に考慮すべ き点 について外部要因 と 内部要因に分類 し、次の項 目を挙げている。

<外部要因>

・ステークホルダーによって挙げ られた持続可能性 に関す る主要な関心事 項/テーマお よび指標

・同業者お よび競合他社が報告 した業界の主 なテーマお よび将来的課題

6CSR報告書と財務報告書の融合 の可能性 については、AccountAbility社の rマテリアリティ・

レポ一日 で言及されている。ただし、2つの情 報の融合について、具体 的なフレームワークは提 示されていない。rマデ ノアリティ・レポートJ の詳細については、注7を参照のこと0

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CSR報告書とマテリアリティ

・組織お よびそのステー クホルダーに とって戦略的重要性 を持つ関連法 規、規制、国際的合意事項あるいは自主協定

・専門知識 を持つ と認め られる人物、 またはその分野における信用 に定評 のある専門機関が行 った信頼で きる調査 を通 じて特定 された、合理的に 評価で きる持続可能性の影響、 リスクまたは機会

<内部要因>

・主要な組織の価値、方針、戟略、経営管理 システム、 目的お よび 目標

・特 に組織の成功に投資 したステークホルダーの関心事項/期待事項

・組織 にとっての重大 なリスク

・組織の成功 を実現するために不可欠な要因

・組織の コア・コンピタンスお よびそれ らが持続可能な発展 に寄与 しうる、

あるいは寄与 した と思われる方法

外部要因については、主 に外部利害関係者 と専 門家あるいは専 門機関にお ける判断を重視 し、内部要因については、主 に内部利害関係者 と企業のコア・

コンピタンス、 リスクを重視 し、マテリアリティの判断を行 うことを提言 し ている。 ここで注 目すべ き点は、 これまで企業中心の視点か ら実際の情報利 用者である利害関係者が報告書作成の視点に加 えられたことである。そのた め、今後は利害関係者 にとって有用 な報告書が作成 される事が期待 で きる しか しなが ら、G3では具体 的なマテ リア リテ ィ特定の方法 については言及 されていない。

2)マテ リア リティの特定プロセス

マテ リア リティの概念 について、CSR報告書 を作成す る立場か らも積極 的 に研 究 を行 われてい る。 た とえば、AccountAbility社 は、BT Groupと LloydsRegisterQualityAssurance(LRQA)と協力 してCSR報告書 における マテリアリティの研究報告書である Fマテ リアリティ ・レポー ト』 を公表 し た。本報告書の 目的は、マテ リアリティ概念 について各企業の取 り組みを調 査 し、誰 もが使 えるマテリアリティ・フレームワークを提案することにある。

本報告書 によると、報告者が直面する課題 には、第‑に 「組織の成功 にとっ て本当に重要なことを提示 しなが ら、一部のステークホルダーが求める総合 的なデータを提供するアプローチ」 を見つけ、第二にその情報 を 「簡潔で明

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PrqjectPaperNo.24

瞭なアプローチにする」 ことがあるとしている。そ して、 これ らの課題 を解 決するには、優 れたマテリアリティの特定プロセスの構築が必要であると結 論づけている。

報告書では、3段 階のプロセスを提示 してお り、 まず 「広範 なステークホ ルダー及び情報源か ら課題 をリス トアップする」 (ステージ1)作業か ら始め、

次に 「それぞれの課題の重要度 を特定するために一貫 した一連のフィルター を使用」 (ステージ2)してマテ リアリティを判断する。そ して、「社内の意志 決定お よび外部の レビューにプロセスを組み込む」(ステージ3)ことで、情報 利用者 に信頼 される報告書 を作成するとい うプロセスを繰 り返す事 になる。

ステージ1では、マテ リア リティを判断す るために自社やステークホルダー に関係す る可能性のある広範 な環境 ・社会 ・経済的な課題 を洗い出 して、それ らの重要度を評価する作業 を行 う。このプロセスでは、包含性 を念頭 にお きス テークホルダーの聞いて貰 える権利 を認識する必要があると指摘 している。

図表1 課題の認識のための情報源

情報 の流れ 主な情報源

各事業部門 とステー ク

ホル ダー との関係 規制 当局及びNGOか らの書簡 顧 客のフィー ドバ ック、調査 、苦情 株 主決議、SRⅠア ンケー ト、投資家の質問 前回の報告書に対す るフィー ドバ ック

ステー クホル ダー との

積極的 なエ ンゲー ジメン ト 個別 ステー クホル ダーの調査 (顧 客、従業員 、サプライヤー) 全般的なステー クホル ダー .ダイ ア ログ、 ラ ウン ドテーブル な ど 外部組織 との継続 中の一対一 の関係

報告書 レビュー委員会 またはステー クホル ダー に よるパネル

標準 となってきているステー クホル ダー のコンセ ンサス 自主的な標準、例 えば :国連 グローバル コンパ ク ト原則 同業者 の規範 、セ クター標準 、ベ ンチマー ク

(出所 :

Ac c o u t Ab i l i t y

編 Fマテリアリティ・レポー ト』 (日本語版)

2 0 0 6 、p . 3 8

一部抜粋)

ここで注 目すべ き点は、マテ リアリティを決定する際に収集する情報の半 分以上がステークホルダー との関係 になってお り、情報源の半分以上が社外

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CSR報告書とマテリアリティ

か らの視点 となっている点である。初期のCSR報告書 に見 られた企業の内部 的な視点 とは、大 きく異 なっている事が分かる。

ここで収集 された情報 を基 にステージ2では、重要度 に基づいて情報の振 り分けを行 ってい くことになる。 この段 階では、重要な項 目と戦略 との整合 性 を保つ必要がある。情報の振 り分けには、経営上の重要性 と利害関係者 に とっての重要性があるが、経営上の重要性の評価 には、企業経営への直接的 な経済的影響や収益機会、 リスクなどを考慮する必要がある。 また、利害関 係者への重要性の評価 には、苦情件数やマスコミ報道の レベル各種調査結果 などを考慮することになる。重要性の判断には、た とえば「マテリアル(重要) な課題」 と 「関連するが戦略的にマテリアルではない」、「マテリアルではな い」に分類する方法がある。

そ して、ステ ップ3において レビューを行 い、利害関係者 よ り信頼 される 報告書 を作成す ることを 目標 とす る。 このステ ップで は、社 内 と社外 の レ ビューによりマテ リアリティの分析 を強固に し、その正当性 を確認するだけ でな く、新たな課題 を検討するための重要な役割 を果たす事になる。 この段 階では、 さらに情報の信頼性 を高めるために

AAI O O O

保証基準の ような第三 者による保証 を付 ける事で信頼性 を確保する事 も可能である。

4. 事例研究 ( 大和ハウス工業)

1)マテ リア リテ ィの導入状況

CSR報告書において、現時点で既にマテ リアリティを導入 している企業 は まだ少数派 となっているが、先進的な企業ではマテリア リティを考慮 した情 報開示 をしている。たとえば、大和ハ ウス工業では、2004年 より積極的な情 報開示 と対話により利害関係者 との良好 な関係 を築 くために企業担当者や研 究 ・教育機関、学生、NPO、従業員などを集めてステークホルダー ミーテ ィ

ング7を行い、マテ リアリティの分析 を行っている。

7大和ハウス工業では、ステークホルダーとの対話を行っており、今 回で5回目となる。今 回は、 同 社 の重要課題・CSR自己評価 指標 ・地球温 暖化 防止 ・社 会貢献 活動 の4つの取 り組 みや考え方 についての報告があり、様々な立場 のステークホルダーとディスカッションを行い、それぞれの立場ご とにマデ Jアリティの分析結果をまとめている。

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ProjectPaperNo.24

図表1大和ハ ウス工業のマテ リアリティ分析

利 害関係者 マテ リア リテ ィ分析

1.消費者 1.長期保証 とア フターサー ビス 2.住 まいの安全 (耐震 問題 な ど

2.地域社会 1.地域経 済の活性化 と地元雇 用の創 出 2.工事 をす る場合 の周辺 地域‑ の安全配慮

3.従業員 1.雇 用 の継続 を確保 2.ワー クライ フバ ランス

4.学生 1.明確 な採用基準 と会社情報 の積極 的な公 開 2.イ ンター ンシ ップの実施 と内定者懇談会 な どの対話

5.取 引先 1.発 注代金 の適正 な支払 い

2.サ プ ライチ ェー ンを巻 き込 んだ新規 の商品規格やマー ケ ッ トの開拓

6.NPO、NGO団体 1.NPO団体‑の金銭的支援 2.NPO団体 との協働

7.環境 (地球環境) 1.地球温暖化対策

※表中、マテ リアリティ分析欄の数字は、優先順位 を表 している0 (出所 :大和ハ ウス工業

HP

より筆者作成)

同社では、図表1の ように利害関係者 を7種類 に分類 し、それぞれの利害関 係者 とっての重要性の分析 を行 っている。オムロンの事例 と比較すると、利 害関係者が特定 されている分、具体的な分析結果 となっている事が分かる。

また、全ての項 目が同社の直面する課題であ り、す ぐに対応する事がで きる 内容 となっている。

た とえば、地球環境問題 に関 してステークホルダー ミーテ ィングで 「地球 温暖化問題で大和ハ ウス工業 な らではの取 り組み を期待 したい」 との問いに 対 して、「住宅の ライフサイクルの中で70%が居住段 階で二酸化炭素が発生 しているとい う現状 を踏 まえて、建物の高断熱化や高効率機器の採用 などの ハー ド面の対策を重点的に推進 して きたが、今後 は省エネ生活な どソフ ト面 で もユーザーに提案 してい きたい」 とのコメン トを出 している。そ して、同 社のCSR報告書 を見てみると、た とえば環境問題 に関 して二酸化炭素の削減 や省エ ネルギーに関する情報開示 は行 っているものの、全体の活動の中での 優先順位が示 されていないため、その他の多 くの情報 も優先順位 を付 け られ

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CSR報告書とマテリアリティ

ることな く掲載 されてい る。 その結果、同社 の報告書 は、 これ までの報告香 と同 じようにCSR戦略に関す る情報 を網羅的に掲載す るような報告書 となっ てい る。

2)ステークホルダー ミ‑テ ィング参加報告

企業が どの ようにマテ リア リテ ィを特定す るのか を調査す ることを 目的に

2 0 0 9

年10月

2 7

日に大和ハ ウス工業 のス テー クホル ダー ミー テ ィ ング8に参加 した。詳細 は下記 の通 りである。

日 時 :

2 0 0 9

年10月

2 7

1 3

3 0

〜1 7

3 0

分 場 所 :大和ハ ウス工業 本社 ビル2階会議室

参加人数

: 2 4

名 (参加者 は企業担 当者や

NPO

、学生、行政機 関、研究者 な ど) 内 容 :

1 3

3 0

〜1 3

3 5

分 担 当役 員挨拶

1 3

3 5

〜1 4

時10分 テーマ毎 にグループに分かれ、担 当者 よ り取組 内容 について説明 を受 ける。(テー マ は事前 に選択 可 能、各 テー ブル は6名 前後。筆者 は 「社会 との共創共生」 を選 択、各テーブルには担 当の社 員が

2 ‑3

名 同席す るが、基本 的 な取 り組 み説 明以外 で意見 を言 うことはなか った)

1 4

時10分

〜1 6

1 0

1 6

時10分

〜1 6

2 0

グループデ ィス カ ッシ ョン 休憩

1 6

2 0

〜1 7

1 0

分 全体 で意見 の共有

1 7

1 0

〜1 7

2 0

分 担 当役 員挨拶

1 7

2 0

分 終了

今 回、選定 されたテーマ は、下記 の通 りである。

(∋長期優 良住宅へ の取 り組 み

③持続可能 な都市基盤のために

(卦従業員の ワー クライフバ ランスについて

8ステークホルダーミーティングについて、詳細 は同社HPhttp://www.daiwahouse.cojp/csr/ stakeholder/index.htmlを参照のこと。なお、本文 中の時 間については、当初のスケジュールを使っ ている。

(12)

ProjectPaperNo.24

④社会 との共創共生 について

ミーティングでは、テーマ毎 に各テーブルに分かれて2時間は どディスカッ ションを行なった。 これ らのディスカッション結果はグループ毎 に全体 ミー ティングで報告 し、司会役の小 山氏が総括 を行 なった。大和ハ ウス工業では、

ここでの意見 を基 にマテリアリティの特定 を行 なうと共 に、企業経営に反映 させ るとい う。

た とえば、「住宅の資産価値 を維持す るためには中古住宅の市場作 り、評 価、保証の仕組みが必要ではないか」 とい う要望に対 して、「戸建てオーナー を対象 に したス トックサー ビスでAQAssetとい う建築 ・維持 ・リフォーム ・ 建て替 え・売買等 に関するサー ビスを提案する」 と回答 している。 また、「古 い住宅では図面 を紛失 しているケース もあるため、増改築が錐 しい」 という 問いに対 しては、「図面や契約書面 をデジタル化 して対応 している」 と回答 している。議論す るテーマについては事前に設定 されていて限定 されている とはいえ、参加者の生の声 を経営に反映させ る姿勢は好感が持てるのではな いだろうか。

しか し、参加者のバ ックグラン ドが様々であ り、議論の水準が一定 に保た れないことや立場が違 うことでグループ内で意見が対立 して しまうことがあ るなど、実際の運営には課題が残 されていると感 じさせ られた。 日本国内で 実際にステークホルダー ミーティングを実施 している企業が少ない中で、毎 年実施 している姿勢は評価 に値するが、意見の集約など改善の余地が残 る。

マテ リアリティ分析 については、 日本ではオムロンが行なっている。オム ロンでは、10年先の社会情勢 と同社 の役割 を推測 し、その時点で社会的に何 が求め られているのかを前提 に長期的視点でCSR戦略 を構築 している。確か にCSR活動は長期 間にわたるため新 しい分析視点 としては正 しい ように思わ れる。 しか し、マテリアリティ分析 の際に、外部の視点が入 る前 に、ある程 度会社側でCSR活動の範囲が限定 されているため利害関係者の意見が反映 さ れに くい環境 を作 り上げて しまう危険性がある。

一方で大和ハ ウス工業のマテ リアリティ分析では、最初の段階で利害関係 者を分類 し、それぞれの利害関係者が何 を求めるのかを分析 している。その ため、利害関係者の中でマイノリテ ィの意見が落ちて しまう危険性 は少 ない

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CSR報告書とマテリアリティ

が、意見 の集約が難 しいため非常 に浅 い議論で終 わって しまう可能性 もあ る9。

CSR報告書におけるマテ リアリティ分析 について、ガイ ドラインなど制度 面で も確立 した ものがない中で大和ハ ウス工業の取 り組みは非常に意義のあ るもの と思われる。本稿では、ガイ ドライ ンの精査 と事例研究か ら、次の2 点を指摘す る。

まず、第一にマテリアリテ ィ分析 には共通のクライテ リアの通用が難 しい ことである。 この点については、既 に各種 ガイ ドライン等で指摘 されている が、今 回の事例研究で も2社 ともマテ リアリティ分析の手法 も結果 も異 なっ ていた事か らも明 らか となった。企業規模や業種が違 えば、当然情報の優先 順位 も変わって くる可能性 はある。 また、仮に同 じ業種 であって も国や地域 が違 えば、利害関係者の意識の違いか ら情報の優先順位が変わって しまうこ

とが考えられる。そのため、企業 はマテリアリティ分析の際には、外部利害 関係者の意見を公平 に取 り扱 う事が重要 となって くる。

第二に、マテ リアリティ概念の導入 によって、CSR報告書間の比較可能性 が損 なわれて しまう危険性があることである。 これまで他社のCSR報告書 と の比較 を容易 にするために報告書の体裁 を共通の もの とす るために

、GRI

な どの報告書作成のためのガイ ドライ ン等が公表 されて きたが、マテ リア リ ティ分析 を行 う各社が異 なる優先順位で情報公開を行 う事で、 これ まで 目指 して きた比較可能性 を損 なって しまう事が予想 される。 さらに、企業に不利 な情報 を意図的に隠蔽するような悪質なケース も想定 されるだけに比較可舵 性 とマテリアリティ概念の両立が今後の課題 となる。

5. おわりに

本稿では、年々情報量が増加傾向にあるCSR報告書 について、情報の利用 者の立場か らの利便性 を高めるため重要 な情報に優先順位 を付 けて、優先順 位の高い情報 を中心 に開示するとい うマテ リアリティの概念の概要 と現状 に

9同社の場合、マデノアリティ分析が完全に報告書に反映されている訳ではなく、CSR戦略と報告 書の両面でマデ)7リティが生かされているため、CSR活動 はかなり進んでいると思われる。今後 の展 開が期待される。

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PrqjectPaperNo.24

ついて事例研 究を含めて考察 した。

これまでの考察で

、CS R

戦略で先進的な企業 を中心 に積極的にマテ リアリ ティ概念が導入 されているが、各企業の手法に共通点 を兄いだす事 はで きな かった。すなわち、マテ リアリティに関 してはガイ ドラインによって方向性 を示す事 は可能で も、どの企業 にも当てはまるクライテ リアの適用 は難 しく、

各企業の裁量 に任 されているのが現状である。 しか し、選択の幅が報告書の 中身を操作 し、結果的に利害関係者の意志決定 を誤 らせて しまう可能性 も指 摘で きる。そのため、今後 は先進企業の研究の成果 とガイ ドラインの存在が 重要になって くると思われる。

本稿では

、CS R

報告書におけるマテ リアリテ ィ概念の意義 と今後の課題 に ついて考察 したが、事例 に取 りあげた企業が限定 されていた事やマテ リア リ ティ分析 を行 っている企業が少 ない事 などか ら多 くの課題 を残 しているが、

これ らの点については今後の研究課題 としたい。また、ステークホルダー ミー ティングに受け入れて下 さった大和ハ ウス工業の皆様 にこの場 を借 りてお礼 を言いたい。

<参考文献 >

環境省編 F環境 にや さしい企業行動調査』環境省、2007年 環境省編 F環境報告書ガイ ドライン』環境省、2003年

環境省編 F環境 コミュニケーシ ョンの更なる広が りを目指 して〜環境配慮促 進法について〜』環境省

環境省編 『環境報告書の信頼性 を高めるための 自己評価 の手引 き

環境省、

2007年

環境省 ・日本公認会計士協会編

F cS R

情報審査 に関する研究報告』2007年 照屋行雄著 F企業会計の基礎』東京経済情報出版、2008年

日本規格協会編

F CS R

企業の社会的責任 一事例 による企業活動最前線 ‑』 日 本規格協会、2004年

宮崎修行著 F統合的環境会計論』創成社、2001年

・AccountAbility"StakeholderEngagementStandardExposuredraft'' (http://www.accountability21.net/)

(15)

CSR報告書とマテリアリティ

AccountAbility"AA1000AssuranceStandard"AccountAbility,2003 (http://www.accountability21.net/)

AccountAbility"AAIOOOAccountabilityPrinciplesStandard2008"

(AAIOOOAccountability原 則 基 準2008、 日本 語 翻 訳 版 )(http://www.

accountability21.net/)

・AccountAbility "MaterialityReport"(マ テ リア リテ ィ ・レポー ト、 日本 語翻訳版)2007

GlobalReportingInitiative"SustainabilityReporting Guideline"2006 (http://www.globalreporting.ore/Home)

・オムロ ン株式会社編 F企業 の公器性報告書』

・大和ハ ウス工業株式会社編 FCSRレポー ト

参照

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