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小児慢性特定疾病対策における自立支援事業に関する現状と課題

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

【分担研究2】自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析

 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業は、実施主体が都道府県・指定都市・中核市・児童相談所 設置市となっており、地域による支援の充実により慢性疾患を抱える子どもの自立促進を図ってい る。しかし、自立支援事業の実施内容は、都道府県等間で差異があることが指摘されており(平成 27年度全国実施状況調査;厚生労働省)、全国保健所を対象とした調査でも、相談支援に取り組ん でいるが人員が限られ、知識・研修の不足等の課題が明らかとなっている。また、ニーズの把握や 予算の確保、実施方法などがわからないとの意見があり、成功事例の紹介など具体的な対応を検討 する必要がある。本項では、小児慢性特定疾病自立支援事業の任意事業の取り組み(相互交流支援 事業、介護者支援事業、その他自立支援事業)、および任意事業ではないが関連する各自治体での 取り組みについて、好事例を紹介する。

任意事業の取り組み

任意事業 実施主体 取 り 組 み 内 容

相互交流支援事業

岡山市 政令指定都市

同世代の子ども同士や療養経験のある 支援員・ボランティアとの交流機会

ピアサポート 介護者支援事業

京都府中丹東保健所

中核市 きょうだい支援プログラム

就職支援事業

その他自立支援事業 愛媛県 都道府県

就職支援事業…研修、お仕事体験、就労体験、

面接練習、シンポジウムの開催など その他自立支援事業…学習支援

任意事業に関連する各自治体での取り組み

実施主体 取 り 組 み 内 容

学習支援や出張相談

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

任意事業の取り組み

相互交流支援事業 岡山市 (政令指定都市)

取り組み内容 相互交流支援、ピアサポート

事業委託先 認定特定非営利活動法人 ポケットサポート(市内)

  事業委託先の活動内容と小慢の自立支援事業の内容が合致し、事業立ち上げに繋がる

1.支援内容

 〈相互交流支援〉同世代の子ども同士や、療養経験のある支援員・ボランティアと交流する場を 提供している。交流の内容は知育ゲームで遊ぶ、学校の宿題などさまざまである。

 〈ピアサポート〉児童・青年期に小児慢性特定疾病の療養経験がある支援員が、子どもたちと交 流する中で学習や友人関係、病気に関する悩みなどの相談を受けている。

活動の様子

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

 支援従事者は病気の子どもの支援に関わった経験があ り、かつ自身も児童・青年期に小児慢性の療養経験のあ る「支援員」と、県内で教育・医療・福祉などを学ぶ学 生の「ボランティア」、支援拠点では看護師や教員免許 資格保有者などの「有資格者」も配置している。

 また、岡山市の小児慢性特定疾病自立支援員や保健 師、保健所や教育委員会、他NPO法人とも連携しなが ら子ども一人ひとりに応じた支援を検討している。

  岡山市では「岡山市民協働推進モデル事業」があり、

岡山市における社会課題の解決を市民と行政の協働です すめる取り組みがされている。その中で「慢性疾病を抱 える子どもの自立を目指す学習・復学支援および交流を 支援する場【ポケットスペース】」の運営、「院内学級を 有しない岡山市内の総合病院に入院中の子どもの学習環 境調査」、「病気の子どもたちの環境理解のための講習会 や講演会」の開催によって、市内の慢性疾患児の支援体 制の充実を図った。

 *ポケットスペース…外来通院前後や自宅療養中に利用 できる学習・交流スペースのこと

事業委託先のその他の活動内容

 慢性疾患などの病気を抱える子どもたちへの学習・復 学支援、子どもたちやきょうだい家族が集う交流イベン ト、ピアサポート相談、関係機関との連携を行っている。

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

2.ニーズの把握

  支援員自体に療養経験があることで、自身の経験から活動に繋げている。ピアサポート相談 や、毎週活動があることで、活動の中から必要な支援を行っている。また、支援員やボランティ アのスキルアップの機会として病気の基礎知識、適切な手指衛生、心理的ケアの実践などの研修 や、支援に関するアドバイスの機会を設けている。

  県教育委員会の「長期療養児教育サポート相談窓口」に専門家チームとして所属し、復学が困 難な事例や学習支援が必要な場合等、ケースを共有して支援につなげている。市保健所と連携し、

事業報告や実施についての話し合いの場を設け、保健所から紹介を受けた利用者も増えている。

3. 対象者への広報や自立支援事業周知のために実施していること

 ホームページやSNSでの情報発信、市保健所や県前県民局 管内・支援対象先医療機関へのパンフレットの設置、ポケサポ 相談ダイヤルの運営などを行っている。さらに、クリアファイ ルを制作し、支援拠点及び市内の教育・医療関係者への配布や 当団体利用者へも郵送している。

 ホームページのアクセス解析結果では、一年間で約630件 の訪問が記録され、前年比の2倍となっており、ホームペー ジを通じて保健所窓口で紹介を受けた利用者が新規訪問、ホー ムページを通じて問合せ、岡山県教育員会を通じて紹介頂くな ど、事業の周知の効果が得られている。

 また、当事者家族や医療関係者の周知として、一般財団法人地域活性化センターが発行する事例 集や、へるす出版「小児看護」へメディア掲載を行っている。

作成したクリアファイル

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4.活動により得られた効果

 ◇ 治療への前向きな意欲向上

   毎週の活動が楽しみになることで、苦手な処置や検査なども頑張っている。

 ◇ 交流による同世代の支援対象者の変化

   病室の外で一緒に勉強したり遊んだりすることで、仲間がいると感じることができている。

 ◇ 支援対象者の年齢に応じた対応による課題解決

   支援員や学生ボランティアは子どもたちと年齢が近いこともあり、医療者や家族にはできな い第三者による関わりによって、思春期の支援対象者の心の部分も支えることにつながって いる。

 ◇ 支援対象者の適切な感情表出

   入院生活により「お母さんに迷惑をかけたくない」「静かにしないといけない」といった抑 圧された感情があった支援対象者が、交流活動中は学習や遊びを通して本来の元気な性格を 表出することができた。交流活動に積極的に参加する姿に保護者も医療者も喜び、支援対象 者にとってもストレス解消となっている。

 ◇ エンパワーメント(自主的・自律的な行動を引き出す支援活動)

   退院間近の支援対象者が、退院後の友達との関係づくりや学習の遅れを補う方法などを支援 員や学生ボランティアに質問する姿が見られ、退院後の不安解消や復学に向けた意欲が見ら れた。

 新型コロナウイルス感染症対策

 新型コロナウイルス流行以前から、支援拠点や医療機関での活動の前に問診を行う、看護 師・病棟保育士との連携など、感染症対策を行い安全な支援を提供することを心掛けている。

令和2年度は支援拠点での対面支援、病院内での支援実施を休止したが、支援先の医療機関 それぞれにiPadを配布し、ICTを活用しながら時間や頻度を変えることなく支援を継続して いる。

 ICTでの支援は移動など時間的な制約がないことに加え、感染症対策として病院内や自宅 から集団に出られない子どもへの活用などが考えられる。子どもの細部への配慮には対面での 支援のメリットが大きいところがあるが、今後の状

況や、感染症リスクの高い子どもへの対応、GIGAス

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介護者支援事業 京都府中丹東保健所(舞鶴市・綾部市) (中核市)

取り組み内容 きょうだい支援

事業委託先 なし

  きょうだい児支援を行う民間団体と連携し、講演会や親子で楽しめるプログラムを実施

1.支援内容

  きょうだい児支援を行っている「NPO法人しぶたね」「京都こどもきょうだい会えるも」と連 携し、小児慢性疾患児をきょうだいに持つ人による講演会やプログラムを開催している。「きょ うだい」のための1日のプログラムでは、きょうだい児を主役とした「遊びのプログラム」と して遊びやおやつを作ったり、子

ども同士が遊んでいる間は保護者 の交流会として日頃の思いなどを 話すことができる「保護者同士の 談話コーナー」、最後に親子で思 いっきり遊ぶ「親子プログラム」

を 実 施 し て い る。 実 施 時 に は、

6ヶ月以上~就学前のお子さんの 保育を行う保育ルームを併設して いる。

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2. ニーズの把握

  小児慢性特定疾病医療費助成の申請時におたずねアンケートを実施し、ニーズ把握を行った上 で、各疾患および全疾患交流会を行っている。

3. 対象者への広報や自立支援事業周知のために実施していること   チラシの配布や各保健所の担当課より対象者へ案内をしている。

4. 活動により得られた効果

 小児慢性疾患児のきょうだい経験者より「きょうだい支援のポイント」

について講演があったことで、家族それぞれがきょうだいのことを理解し 寄り添う視点が得られた。疾患は違っても、保護者の病児やきょうだいへ の思いは同じであり、他の保護者の思いを聞くことで、共感し涙される場 面もあり、支援者にはできない保護者同士のエネルギーになることができた。

 在宅で過ごす小児慢性疾患児のきょうだいへ心理的サポート及び母 親の思いの傾聴などの個別支援に対応する中で、保護者のニーズから きょうだい支援の交流会を開催するに至りました。

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就職支援事業

その他(学習支援事業) 愛媛県 (都道府県)

取り組み内容

就職支援事業:研修、お仕事体験、就労体験、面接練習、シンポジウ ムの開催など

その他(学習支援事業):病気療養児への学習支援・ボランティア育成

事業委託先 認定NPO法人ラ・ファミリエ(県内)

  自立支援員を中心とした多職種が強みを生かしながら連携し ライフステージに合わせた多様な支援を実施

1.支援内容

 就職支援事業

  障害者雇用や支援をしている団体や企業から協力を得て、パソコン研修、マナー研修、子ども も参加可能な医療関係のお仕事体験、インターンに類似する就労体験、ハローワークへの同行や 面接練習、シンポジウムの開催などを行っている。

  就労支援を行う中で、主治医と連携して本人の健康問題や特徴を把握し、必要な資源を収集 し、本人と繰り返し相談してハローワークと連携を取ることを行っている。就労定着、継続を考 慮して本人にあった職業を見つけ、職業訓練校につながった例もあり、現在も連絡を取りながら 本人の困りや現状について情報収集をしている。

パソコン教室の様子 就労体験の様子

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 その他(学習支援事業)

  2015年より、入院中または自宅療養中で学習空白期間のある病気療養児に対する学習支援を 行っている。対象児の希望や体調に合わせて週1~2回、1時間程度の行っており、場所は対面 の場合、愛媛県内の基幹病院や、ファミリーハウス、自宅療養中の児童の自宅など、オンライン の場合はビデオ会議システムを使用している。

 学習支援の実施にあたっては、自立支 援員だけではニーズに応えきれないた め、愛媛県内の大学と連携し、活動に取 り組んでいる。また、ボランティアを募 集・育成するために、小児慢性特定疾病 自立支援事業以外の事業を受託してボラ ンティア研修活動を継続していけるよう にしている。

2. ニーズの把握

  障害者相談支援専門員、社会福祉士、保育士、教員免許などさまざまな背景のある6名の自 立支援員が対象者のニーズに合わせて分担して活動を行っている。コミュニケーションをとりつ つ様子をみながら、不安や悩みについて一緒に話すことができる関係性を作り、思っていること

病室での対面支援 タブレットでの学習支援

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 事業委託先の活動内容

 滞在施設ファミリーハウスあいの運営、平成27年より小児慢性特定疾病 児童等自立支援事業の委託を受け、ピアカウンセリングや相互交流を目的と したキャンプなどを実施しています。

3. 対象者への広報や自立支援事業周知のために実施していること

対象者への広報 自 立 支 援 事 業 周 知 県内病院への活動の周知

相談事業の中での希望 入院・通院中の医師からの紹介

SNSやHPでの活動紹介 地方紙やラジオへの出演

SNS(Facebookや公式LINE)、HPでの広報 関連機関でのチラシの設置

4. 活動により得られた効果

 就職支援事業

 ○就労体験を経験することで実際の職業について知ることができ、視野が広がり現実的に見つめ ることができた。その結果、就労とはどんなことなのかを認識して、自身ができることできな いこと等を検討し、就労に向けて自己決定をする力を身に着け、就 労に結びついた。

○お仕事体験のイベント開催により、自分の身体について考えた り、就労について考えるきっかけづくりになった。いろんな仕事 の内容を知るきっかけとなり、仕事の選択肢が広がる。体験をす ることで仕事の内容を知ることができ、興味を持つきっかけと なっている。

 お互いどのような人なのかわかっていた方が連携を取りやすいの で、顔の見える関係づくりを大切にしながら、関連機関と連携してい ます。

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

 学習支援事業

  個別に対応できることで、学習だけではなく、心理的なケアにも繋がる。入院中でも自宅療養 中でも、学習する機会が提供でき、対象児の体調や理解度に合わせて学習を進めることができ、

復学がスムーズとなる。

【事例】小児がんで入院した中学3年生。病状により、院内学級に行 けず学習が進まないことも多く、受験にかなり不安感があった。週1 回程度、体調と相談して可能な時に学習支援を実施し、勉強意欲のポ ンプとなる。また、退院して復学するまで、タブレット端末を使用し たオンラインでの学習支援を実施し、受験までのサポートをした。

 令和元年度「三浦保」愛基金社会福祉分野事業『伝えて拓く、私の未来』

 慢性疾患児者や障害児者の多くは、自分の病気や障害について他者に伝える経験が少なく、

そのことにより、就学、就労などの社会生活において、理解を得ることが難しく感じている。

そこで、自分の病気について自分の言葉で話すということを目的に、自分の病気について話せ るようになり、就労への意欲を高めることを目指すとともに、地元企業に対しても障害者の就 労に対する啓発と理解を促すために映画の上映とシンポジウムを開催した。

 福祉・医療・行政・教育・金融関係者など多方面からの参加があり、多職種連携の強化と周 知活動を行うことができ、今後の子どもたちの未来へと繋がりが広がっていく希望ができた。

シンポジウムでは、体験者、就労側、支援側、教育側から興味深いお話を聞くことができ、地 域を含めた支援活動が広がり、安心した地域生活が送れるネットワークができる橋掛かりがで きた。

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関連する取り組み

 北九州市の取り組み

 自立支援員がさまざまな相談を受けながら対応する中 で必要な支援を見出し、学習支援や出張相談、患児・家 族交流会などの次の活動へとつながっている。

1. 支援内容

 出張相談窓口の設置

  市内3つの医療機関に出張相談窓口を開設してい る。支援室まで来所できない人や、患児に会うことが できるチャンスとなっている。

 学習支援ボランティア養成

  慢性疾患を抱える子どもの学習支援を推進するにあたり、「病気の子どもたちにとっての教育」

をテーマに講演会を開催した。講演会の後、学習支援ボランティア養成研修会を実施し、令和2 年度にかけて学習支援体制を構築していく予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の 流行もあり、開催形態をオンラインと会場参加の両方ができるようにした研修会や事例を通した ワークショップを行っており、実際の活動に向けて準備をすすめている。

出張相談窓口の案内ポスター

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

 各疾患に関する講演会の実施

  患児・家族が抱える問題や苦悩、支援者のことなど、小児慢性 特定疾病について広く理解を得るために、講演会を実施した。患 児・家族や保育士・幼稚園教諭をはじめとした教育関係者、など を対象としている。

岡山県外でも活躍しています

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

2. ニーズの把握

  相談窓口を開設し、自立支援員がさまざまな日常の相談を受けながら丁寧に対応することで、

受け止めた相談内容からニーズを感じ取ることができ、実際に必要な支援が見え、学習支援や出 張相談、患児・家族交流会など次の活動の展開へと繋がっている。

3. 対象者への広報や自立支援事業周知のために実施していること

  チラシの活用やホームページ・Facebookでの発信、市政だよりに掲載。市内3つの医療機関 については事前に各医療機関の担当者にお願いし、説明の時間をとっていただき進めていった。

4. 活動により得られた効果

 ◇ 支援室とつながったことにより、不安や悩みが解消した後、また状況が落ち着いた後もまた 不安や悩みが生じた時には相談があり、相談窓口として定着、周知になった。

 ◇ 関係機関との連携ができるようになった。

 子どもたちが大人になるまでの過程で生じる様々な相談は、福祉関 係の対応や教育関係、医療関係など、その時の対応で完結するものは 少ないので、一度相談対応した事例は、見守りという継続した支援と なることもあります。子どもたちの将来を見据えて、自立に向けた支 援について何ができるのか、どうすることが一番良いのか、子ども・

保護者・関係者と一緒に考えるようにしています。

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

 福岡県の取り組み

 相談窓口の設置や地域関係者向け研修会、ピアサポーターの育成、患児家族交流会、小児慢性特 定疾病児童等レスパイト支援、就労支援等を行っている。特に就労支援に関する取り組みでは、難 病相談支援センター事業と連携することで、小児から成人まで切れ目のない相談対応を実施している。

1. 支援内容

 相談窓口の設置

  慢性疾病を抱える子どもやその家族のために、

福岡県難病相談支援センターにおける個別相談や 福岡市立こども病院での月2回の出張相談、小 児慢性特定疾病医療受給者証の更新時には県内の 保健福祉(環境)事務所での個別相談に対応して いる。

 地域関係者向け研修会

  小児慢性特定疾病児童等を受け入れる保育園・

幼稚園・学校等の地域関係者に対し、小児慢性特 定疾病についての理解促進を図ることを目的とし て開催している。

 ピアサポーターの育成

  難病相談支援センター事業とともにピアサポー ター養成講座を開催し、登録されたサポーターに

は個別相談や患児家族交流会のファシリテーターとして活動の場を提供している。

 患児家族交流会

  小児慢性特定疾病を抱える患児家族が共通する悩みや不安、日頃抱えている思いを共有する場 を提供している。

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

 就労相談

  福岡県では平成10年より難病ネットワーク事業を開始し、平成18年から難病相談支援セン ター事業、平成27年には小児慢性特定疾病児童等自立支援事業が加わったことで、小児から成 人まで切れ目のない相談対応を目指して活動を行っている。就労相談に関しては難病相談支援員 とともにニーズに応じた情報提供や、関連機関との連絡調整を行っている。

2. ニーズの把握

  療育相談で相談を受けたケースを難病相談支援員ととも に保健所職員と連携して就職につないだ例もあり、関係職 種との情報共有や、病院のケースカンファレンスへの出席 からニーズを拾っている。

  また、保育園・幼稚園・学校等への訪問も行っており、

幼少期より将来について心配している家族からの相談を受 けることもある。具体的な就職相談は中学校卒業で就職す る年齢層や高校卒業で就職する年齢が多い。

3. 対象者への広報や自立支援事業周知のために実施していること

対 象 者 へ の 広 報 自 立 支 援 事 業 周 知 小慢受給者証更新時の療育相談で各保健所が

案内チラシを送付

小慢自立支援員PR用チラシに掲載 ホームページ掲載

難病相談支援センターパンフレット 難病相談支援センター周知カード 小慢自立支援員PR用チラシに掲載

ホームページ掲載

 このほか事業推進のために、ケースを通して得た情報網の活用や、新聞社などマスメディアとの 情報共有、関連事業(小児等在宅医療連携拠点事業・医療的ケア児保育支援モデル事業等)との情 報共有、出張相談を行っている保健所やこども病院との連携などを行っている。

小児慢性特定疾病対象者の就労相談

支援計画書の一例

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分担研究「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析」

4. 活動により得られた効果

  福岡県難病相談支援センターの難病相談支援部門が作成した“難病のある人のための就労ハン ドブック”を紹介し、活用方法を説明しながら、年齢的に成人に移行する対象者は難病相談支援 員に引き継ぎを行っている。受けた就労相談は相談窓口を紹介し、見守っているのが現状である。

小慢自立支援員PR用チラシ

 国が行っているほかの事業(小児在宅医療連携拠点事業・医療的ケ ア児保育支援モデル事業・移行期支援事業等)との情報交換やすり合 わせの必要性を感じます。また、居住地によって受けることのできな いサービスがあり、各市町村の福祉サービスの格差を感じています。

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小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

令和2年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究班

分担研究課題

小児慢性特定疾病対策における自立支援事業に関する現状と課題

研究分担者:掛江直子(国立成育医療研究センター 生命倫理研究室長/小児慢性特定疾病情報室SV) 研究協力者:森淳之介(国立成育医療研究センター 小児慢性特定疾病情報室データマネージャー)

0. はじめに

  小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の実施状況を把握することを目的として、厚生労働省健 康局難病対策課から、全国の実施主体の担当者に対して、メールで当該事業の実施状況等を問い 合わせた結果について、本分担研究として集計および解析を行うものである。

  本年度の調査は、令和2年12月に実施し、主に令和2年度(2020年度)の当該事業の実施 状況について把握することとした。また、当該研究において、同様の調査を過去2年間も続け ており、またそれ以前の平成27年度からの5年度分のデータも保有していることから、本報告 書においては、過去5年間の取組状況の変化等も示すこととした。

1. 調査の方法

 1)対象実施主体と調査実施時期

   本調査は、小児慢性特定疾病対策に取組む実施主体を対象に実施した。なお、当該対策の実 施主体は、都道府県、政令指定都市、中核市、児童相談所設置市と定められており、参考資料 1に示すように、実施主体が都度追加されていることから、対象実施主体数は年度により異な る。

   なお、本年度の調査の回答率は、厚生労働省健康局難病対策課ならびに実施主体担当者の協 力もあり、100%となっている。

   ◎2019・2020年度分(令和2年12月実施)130実施主体

    (内訳)都道府県:47、政令指定都市:20、中核市:60、児相設置市:3    ○2018年度分(平成31年4月実施)125実施主体

    (内訳)都道府県:47、政令指定都市:20、中核市:58    ○2017年度分(平成30年4月実施)121実施主体     (内訳)都道府県:47、政令指定都市:20、中核市:54    ○2016年度分(平成29年4月実施)115実施主体     (内訳)都道府県:47、政令指定都市:20、中核市:48    ○2015年度分(平成28年3月実施)112実施主体

(27)

小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果

    (内訳)都道府県:47、政令指定都市:20、中核市:45

 2)調査の方法

   調査票は、「相談支援事業(必須事業)について」、「小児慢性特定疾病児童等自立支援員に よる支援について」、「地域内の小児慢性特定疾病施策に対するニーズの把握について」、「自立 支援事業のうち任意事業について」、「慢性疾病児童等地域支援協議会について」の5つのパー トから構成されている。

   厚生労働省健康局難病対策課より実施主体担当者へ、当該調査票を送付いただき、記入済み の調査票ファイルを、国立成育医療研究センター小児慢性特定疾病情報室に返信していただ き、集計等を行った。

2. 調査結果

  本調査の集計結果を以下に示す。なお、過去の結果との比較、経年的な取組みの変化等につい ては、適宜併せて示すこととする。また、調査項目により訊ねている期間が異なる場合等、回答 数が異なるので、注意されたい。さらに、毎年同じ調査項目にて調査を行っているのではないた め、項目によっては一部の年次の結果を示すことが出来ないことを、予め承知いただきたい。

 1)相談支援事業(必須事業)について

 1-1)相談事業の実施について(R2年2月時点)

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小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

 1-2)相談の内容(重複回答あり)

   その他回答としては、電話や窓口での個別相談支援や、講演会及び相談会の開催を挙げてい る実施主体が多くみられた。

 2)小児慢性特定疾病児童等自立支援員による支援について  2-1)自立支援員等の配置について

(29)

小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果

 2-2)自立支援員等の配置(専任・兼任の人数推移)について

 2-3)自立支援員等の配置(常勤・非常勤の人数推移)について

(30)

小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

 2-4)個別支援計画の作成状況について

 2-5)個別支援計画を作成していない最大の理由(R2年12月時点)

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小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果

 3)地域内の小児慢性特定疾病施策に対するニーズの把握について  3-1)ニーズを把握しているか(R2年12月時点)

 3-2)ニーズの把握方法(複数回答、 R2年12月時点)

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小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

 4)自立支援事業のうち任意事業について  4-1)任意事業の実施状況(R2年12月時点)

 4-2-1)療養生活支援事業の推移

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小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果

 4-2-2)相互交流支援事業の推移

 4-2-3)就職支援事業の推移

 4-2-4)介護者支援事業の推移

(34)

小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

 4-2-5)その他の自立支援事業の推移

 4-3)任意事業を行っていない最大の理由

   その他回答として、多くの実施主体で、新型コロナ感染拡大防止のために、予定していた対 面での任意事業(主に相互交流支援)を中止したためという理由が示された。

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小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果

 5)慢性疾病児童等地域支援協議会について

 5-1)慢性疾病児童等地域支援協議会の設置状況の推移

 5-2)共同開催の協議会等の名称(R2年12月時点)

(36)

小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

 5-3)設置している協議会の数

 5-4)協議会での議論の内容

   協議会での議論の内容は、上記の通りであるが、その他回答としては、移行期医療体制整備 および移行期支援に関するものもあった。

(37)

小児慢性特定疾病等自立支援事業等の実施状況について調査 結果

3. まとめ

  本年度は、全体的に小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の更なる展開は、期待された程は見 られなかった。理由としては、昨年度末からの新型コロナ感染拡大防止対応等が求められ、担当 部門の人員が駆り出されてしまい活動がやや停滞した実施主体があったり、対面で予定されてい た任意事業等を自粛する判断を行った実施主体があったり、予定を変更せざるを得ない状況がみ られた。

  今後は、さらに詳しく結果を解析して、研究班の研究報告書へ掲載することを予定している。

また、任意事業への取組みを進める実施主体への詳細調査を実施し、任意事業をこれから検討す る実施主体への情報提供を行うと共に、任意事業が進まない原因等についても詳しく調査を実施 したいと考える。

参考資料 1.

年   月 都道府 県数 

政令指 定都市 数  

中核市

数   (追加された中核市名)

児童相 談所設 置市数

(追加された   児童相談所設置 市名)     

合計

2015H27)年4 47 20 45 越谷市 八王子市 0 112

2016(H28)年4 47 20 47 呉市 佐世保市 0 114

2017(H29)年1 47 20 48 八戸市 0 115

2018H30)年4 47 20 54 福島市 川口市 八尾市

0 121

明石市 鳥取市 松江市

2019(H31)年4 47 20 58 山形市 福井市 甲府市

0 125

寝屋川市

2020(R2)年4 47 20 60 水戸市 吹田市 2 世田谷区 江戸川区 129

2020R2)年7 47 20 60 1 荒川区 130

 ※ 八戸市と荒川区は年度の途中で追加されており、「年度初めの数」と「年度末の数」が違うので注意。

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分担研究「小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析」

小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析

      研究分担者 及川 郁子(東京家政大学)

      研究協力者 小柴 梨恵(横浜市磯子区洋光台福澤保育センター)

      仁尾かおり(三重大学医学系研究科)

      西田みゆき(順天堂大学保健看護学部)

      野間口千香穂(宮崎大学医学部看護学科)

      福田 篤子(東京立正短期大学)

      安  真理(社会福祉法人平磯保育園)

      吉木 美恵(社会福祉法人花山認定こども園)

Ⅰ . 実態調査結果

  小児慢性疾患児の保育所等への就園の実態と就園に関する課題、就園準備に必要な要素を明ら かにすることを目的に、保育所に質問紙調査とヒアリング調査を実施した。

1. 質問紙による実態調査

 1)施設概要

   132施設に郵送で調査を依頼し65施設から回答があった(回収率49.2%)。回答者は園長・

主任が約75%を占め、保育園看護師による回答が10%あった。所在地は北海道から九州まで 分散し、公設が16施設(24.6%)、民営が43施設(72.3%)であり、認可保育所が48施設

(73.8%)、認定こども園が17施設(26.2%)であった。在籍園児数は、100名以下24施設

(36.9%)、101~200名36施設(55.4%)、201名以上5施設(7.7%)で、58施設(89.2%)

が0~5歳の全クラスを所有していた。保育職員数は、20名以下32施設(49.2%)、21名以 上33施設(50.8%)であった。看護職員数は、0名35施設(53.8%)、1名25施設(38.5%)、 2名5施設(7.7%)であった。実施している保育事業には、延長保育83.1%、障がい児保 育70.8%、一時預かり事業53.8%、地域子育て支援事業44.6%が多く、病児・病後児対応型 6.2%、体調不良児対応型保育7.7%、医療的ケア児受け入れ事業3.1%であった。

   小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の認知状況は表1のように、ほとんど認知されてい ない状況であった。

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      表1 自立支援事業等の認知状況       N=65

  人数 %

自立支援事業 21 33.3

小児慢性特定疾病児童等自立支援員 1 1.6 障がい児等相談支援専門員 17 26.2 医療的ケア児コーディネーター 4 6.3

 2)小児慢性疾患児等の受け入れ状況

   これまで小児慢性疾患児受け入れの依頼があった施設は、27施設(41.5%)であり、受け 入れ依頼が無い施設が38施設(58.5%)であった。受け入れを検討にするにあたり、慢性疾 患に関連した必要な情報は、表2のようであった。

   これまで小児慢性疾患児等を受け入れ依頼があった施設の中で、過去5年間に児を受け入 れた施設は22施設(78.6%)であり、受け入れ人数は1名が最も多かった。

       表2 慢性疾患に関連した必要な情報   N=28(複数回答)

施設数 %

診断名 28 100.0

詳しい症状 28 100.0

普段の生活で気を付けること 28 100.0

病状に応じた緊急時の対応 27 96.4

定期薬があるか 26 92.9

特別な医療行為があるか 26 92.9

主治医の有無や医療機関 26 92.9

家庭状況 24 85.7

医療機関以外との連携の有無 24 85.7

発症からの経過 23 82.1

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       表3 受け入れ時の関係職員    N=22(複数回答)

  施設数 %

自治体職員 10 45.5

施設長(園長) 20 90.9

施設保育者 20 90.9

保育所看護職 8 36.4

医師(主治医、かかりつけ医、訪問医) 6 27.3

地域の保健師 5 22.7

児童発達支援センター等療育施設職員 5 22.7

嘱託医(園医) 2 9.1

障がい児等相談支援専門員 2 9.1

   受け入れた施設の受け入れの判断基準15項目で、特に重視する項目を3項目挙げてもらう と表4のようであった。

   小児慢性疾患児等の受け入れの依頼の有無については、看護職配置の施設のほうが依頼は有 意に多かった(p<0.01)。また、公設保育所のほうが受け入れの打診および受け入れ経験と も高い傾向にあったが、施設背景等について有意な項目はなかった。

       表4 特に重視する判断基準    N=22(複数回答)

  施設数 %

集団保育が可能な病状であるか 13 59.1

保育士の加配が必要か 11 50.0

どの程度介助(年齢相応以外)が必要か 8 36.4

緊急時の対応ができるか 6 27.3

看護職の配置が可能か 1 4.5

設備が整っているか 1 4.5

療育施設などのからのサポート体制 1 4.5

園の規則など変更等が可能か 1 4.5

 3)受け入れ児の状況

   受け入れ児については、過去5年間に入園し、小児慢性疾患で内服を含めた医療的ケアを 必要とする児とした。小児慢性疾患については、小児慢性特定疾病16疾患群に分け、主な病 名を記載するとともに、疾患群または病名で回答を得た。表5のように、39名の記載があり、

ダウン症(8名)と慢性心疾患(8名)が多かった。

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表5 受け入れ児の疾患

疾   患   群 児数 記 載 さ れ て い た 疾 病 名 慢性腎疾患 2 巣状糸球体硬化症、IgA腎症

慢性呼吸器疾患 2 慢性肺疾患、慢性呼吸器疾患

慢性心疾患 8 心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、肺動脈弁狭窄症、

ファロー四徴症、鎖骨下動脈孤立症

内分泌疾患 4 成長H分泌不全性低身長、甲状腺機能低下症

糖尿病 2 1型糖尿病

先天性代謝異常 1 骨形成不全症

神経・筋疾患 6 先天性筋強直性ジストロフィー、てんかん、

二分脊椎・水頭症、小頭症、両上下肢脳原発性運動機能障害

慢性消化器疾患 2 ヒルシュスプリング病

染色体・遺伝子の変化に伴う疾患 11 ダウン症、5p欠失症候群、ターナー症候群 コルネリア・デランゲ症候群

   保育所で行われていた医療的ケアについては、内服2名・座薬1名、気管吸引2名、血糖 測定2名、インシュリン注射1名、胃ろう・経鼻経管栄養各1名、導尿2名であった。

   保育士の加配は15施設、担当保育士の加配は16施設(両方12施設)、看護師の加配は3 施設であった。設備等の変更などは無く、空気清浄機を設置した園が1施設あった。

 4)受け入れ依頼の経験がない園での受け入れ基準

   これまで小児慢性疾患児の受け入れの依頼について「無い」と回答した37施設の、小児慢 性疾患児を受け入れるための判断基準15項目で、特に重視する項目を3項目挙げてもらうと、

表6のようであった。

       表6 特に重視する判断基準     N=37(複数回答)

施設数 % 集団保育が可能な病状であるか 18 48.6

緊急時の対応ができるか 16 43.2

看護職の加配が可能か 12 32.4

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2. インタビューによるヒアリング調査

  インタビュー調査は、7名の保育園看護師であり、関東近郊5か所の認可保育所16事例、地 方都市2か所の認可保育所14事例であり、設置主体は民営であった。

  関東近郊の事例では、通常の入園手続きを行って入園してくることが多く、入園後に疾病や医 療的ケアが必要なことが発覚する、入園後に発病するなどであった。長期入院になる場合は一時 休園措置を取ることもあるが、園生活を継続させることができている。発達上の遅れや年齢相応 以上の介助が必要な場合は、受け入れ園が限定されるため母親が直接打診してくることが多い。

ベテラン保育士がいると小児慢性疾患児の受け入れはそれほど難しくないが、医療的ケアの内容 によること、医療的ケアのある子どもの受け入れは園の考え方や保育士の受け入れ雰囲気により 異なること、医療的ケアがあるだけで保育士たちのハードルが高くなること、保育士の医療的知 識や技術などの力量を高めるために保育士たちに情報提供や指導できる人が身近にいることが重 要である、ということが語られた。また、医療者からの登園許可書を基本に、園内でできること を保護者と具体的に話し合うことで(保育内容確認書)、保育士、保護者双方の不安の軽減に努 めている保育所もあった。

  地方都市事例では、2施設それぞれが当該地域の中心となって医療的ケアを必要とする小児慢 性疾患児を受け入れていた。入園ルートが確立されているため準備期間も短く、療育センターや 医療機関など地域関連機関とも連携が図られていた。1施設は、医療的ケアを必要とする子ども の部屋を設けて看護師が中心に医ケアを実施し、保育の時間は各クラスに出向いて保育を受ける ことができるよう調整が図られていた。また、個別支援計画を作成し、定期的に会議を実施しな がら保育内容や発達支援の方向性を決定するなど個別支援コーディネーターが中心となって実施 していた。

  両地域の事例とも、入園後は日々保護者や担当保育士との連絡・調整を行い、体調管理をしな がら保育活動にスムーズには入れるように促し、大きな問題もなく過ごすことができていた。

Ⅱ. 入園に必要な要素の検討

  小児慢性疾患児を受け入れるに当たり判断基準となるものを15項目から特に重要と思われる 3項目について調査した結果、受け入れ経験の有る園と経験が無い園とでの違いがみられた(表7)。

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分担研究「小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析」

表7 受け入れの判断基準 受け入れ有無による違い

判  断  基  準

受け入れ経験 有 N=22

受け入れ経験 無 N=37 施設数 % 施設数 % 集団保育が可能な病状であるか 13 59.1 18 48.6 保育士の加配が必要か 11 50.0 10 27.0 どの程度介助(年齢相応以外)が必要か 8 36.4 8 21.6 緊急時の対応ができるか 6 27.3 16 43.2

看護職の加配が可能か 1 4.5 12 32.4

  「集団保育が可能な病状であるか」は受け入れ経験の有無にかかわらず最も重要と考えている が、経験有の園では保育士の加配や介助の状況を重視しており、保育活動を念頭に入れた回答と 推察される。一方、経験の無い園では、緊急時の対応や看護職の加配が上位を占め、未経験によ る疾患や医療的ケアへの不安が反映されたものではないかと考えられる。本調査においては、看 護職配置が無い園においても、受け入れ依頼・受け入れ経験があるため、看護職配置の有無にか かわらず、保育活動を提供できる環境を検討していくことが必要と考える。

Ⅲ.就園のための情報共有シートの作成 1. 段階的支援の必要性

  今回の調査を通し、小児慢性疾患児が保育所での生活を安定的に送ることができるようにする には、段階的に支援していくことが必要と考える。

 ① 就園の準備期間:就園の方法や手続きは地域により異なり、小児慢性疾患児や家庭の情報と 集約が必要であり、一定の準備期間を要する。小児慢性特定疾病児童等自立支援員が身近にい ないことから、保育活動と医療的視点の双方から連携・調整できるコーディネーターを決めて 準備することが必要であろう。その際、小児慢性疾患児がスムーズに保育活動に参加できるよ うにするためにも、具体的に小児慢性疾患児の健康レベルと保育活動とをすり合わせ(どの程 度介助が必要か)、子どもの安全と保育士の負荷を軽減する(保育士の加配が必要か)ことが

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 ③ 子どもの自立期間:小児慢性疾患児が他の児たちと一緒の保育環境で集団生活ができるよう になる時期である。手厚いケアも必要だが、小児慢性疾患児の発達や周りの子どもたちへの影 響を考え、保育士だけでもある程度対応できるようにすることが必要となる。そして、小児慢 性疾患児の成長と生活をすり合わせながら、小児慢性疾患児の生活習慣(セルフケア能力)を 促すことが重要となる。また、小児慢性疾患児の保育活動の様子から、保護者が就学の見通し やイメージをもつことができるよう支援していく。この時期は保育士主導であり、必要に応じ た多職種フォローができるような仕組み作りが必要である。

  今回の結果を踏まえ、就園の受け入れを促進するためには、以下の3点が必要であることが 示唆された。

  ◦ 保育活動へのスムーズな導入のために、疾病等による保育活動の具体的なレベルの確認と 調整ができること

  ◦ 子どもの状態から生活レベルをどの程度整えられるか検討できること   ◦ 入園前の準備・確認をできるだけ洗い出せること

  このことから、「就園のための情報共有シート」を作成して保育活動へのスムーズな導入を図 るとともに、保育士に負荷が掛からないための知識・技術のサポート体制、保護者や保育士以外 の職種への保育活動への理解が得るように働きかけていくことが望まれる。

2. 就園のための情報共有シートについて

  就園のための情報共有シートは、現場の意見をも踏まえながら作成した。①医学的な状況、② 発達・生活上の配慮、③保護者情報、④園の調整内容、の4つの点からなっている。医学的な 状況は、集団生活に支障がないかどうか医療側の判断が大切であること、また保育中に実施する 必要がある服薬や医療的ケアと、体調への配慮事項、緊急時の対応のみ記載するようにした。可 能な限り主治医に記載いただくとよい内容である。発達・生活上の配慮は、どの程度の発達状況 でどの程度の生活レベルかを判断し、年齢相応の保育が可能かどうかなどを検討するものであ る。保護者情報は、就園に対する保護者の意向を確認し、また入所要件の検討の参考となる。園 での調整内容は、医学的な状況、発達・生活上の配慮、保護者情報を踏まえ、園で具体的に連 携・調整が必要となる事項を記載する。また、受け入れる保育所等が過度な不安にならないよ う、疾患の特徴や集団生活上のポイントなどを記載するようにした。

  相談を受けた人が保護者とともに記載するが、すべての情報を埋めることができなくとも、ま た保護者からの情報だけでは不十分な場合は、関係機関との確認にもご活用できる内容である。

記載事例を2つ紹介する。

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分担研究「小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析」

 【氏名: Aちゃん      】【年齢: 3歳7か月  】【 男児 ・  女児  】  【病名  急性リンパ性白血病     】 

 医学的な状況

医療機関名(主治医/担当医) A大学病院(主治医:A先生)

受診状況 全ての入院治療が終わり、2~3週に1回、定期的に外来受診をし ている。

治療内容

維持療法として、①メトトレキサート(週1回・朝夕)、②メルカプ トプリン(毎日・寝る前)、③バクタ(毎週水木曜に朝夕)の内服を している。今後15カ月間続く。

就園/集団生活が可能か

(医師の許可) 退院後いつからでも可能 配慮の有無

詳        細 有 無

園で行う服薬や医ケア

(医ケアが有る場合は内容 を選択し詳細をお書き下 さい)

☐ ☑

医ケア:吸引(鼻腔内、口腔内、気管カニューレ内)

経管栄養(経鼻、経口、胃瘻)導尿、人工肛門、

酸素吸入、血糖測定、インシュリン注射、与薬、その他

体 調・ 症 状( 早 期 発 見・

早期対応方法) ☑ ☐ 内服治療(メルカプトプリン)のため、免疫機能が低下 しているので、感染予防対策が必要。

緊急時の対応 ☑ □ 外傷による出血や鼻出血が止まらない時は、救急搬送ま たは主治医への連絡が必要。

 発達・生活上の配慮

配慮の有無

詳        細 有 無

食 事

哺 乳 ☐ ☑

食 事 ☑ ☐

生ものの摂取が禁止されている(バクタ内服中はずっと)。 皮の薄い果物や生野菜は控える必要がある。水筒はスト

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分担研究「小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析」

小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

遊 び 行 動

身体機能

(運動機能) ☑ ☐

治療や安静によって体力が低下している。他の子どもと 同じように動けないことがあるので配慮が必要。医師の 許可があるまで、ジャンプ は禁止されている(ステロイ ド療法による骨粗鬆症の可能性があるため)。

環境・場所

(室内・園庭・

屋外)散歩

☑ ☐

プール、泥遊び、砂遊びは禁止されており、医師の指示 で徐々に進めている。動物や生き物には、医師の指示が あるまで触れてはいけない。埃っぽい場所は避ける(マッ ト運動、工事現場、掃除の場など)

発 達

言葉/表現 □ ☑

理解力 □ ☑

社会性 □ ☑

そ の 他 手洗い石鹸は個人の物を使用する。運動会などのイベントの参加はその 都度主治医へ相談する。インフルエンザ、水痘流行時は登園しない。

 保護者情報

保護者の意向・気持ち 早く普通の生活を送らせたいので通園させたいが、通園することによって感 染症に罹患するのではないかと心配している。

集団生活への理解 薬の副作用で脱毛があり、他の子どもから何か言われるのではないかと心配 している。主治医からは数か月で髪は生えてくると言われている。

家族構成・配慮が必要

な家族背景 父38歳、母36歳、妹1歳(保育園)と姉6歳(小学1年生)の5人家族。

 園の調整内容

年齢相応のクラスでよ

いか 年齢相応のクラスで問題ない。

手帳の有無 身体障害者手帳     療育手帳     小児慢性特定疾病

加配の必要性

要 ・  不要    理 由:

   担当者:保育士、看護師、介助員、保護者 設備・機材等 なし

地域連携機関の有無

あり ・  なし

   連携先:療育・発達支援センター、訪問看護、保健師(行政)

その他 なし

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分担研究「小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析」

 疾患の特徴や集団生活上のポイント

Aちゃんは標準リスク群に分類されるため、再発のリスクは低い。今後1年間ぐらいは内服治 療が必要となるため感染しやすい状況が続くが、保育所で感染症が流行していなければ、マス クは着用しなくて良い。生ものの摂取禁止やジャンプの禁止は、定期受診で状況を見ながら 徐々に許可されていく。9か月の長期入院生活で体力が低下し疲れやすいため、活動は休憩し ながら無理をさせないようにする必要がある。

【氏名: Fちゃん  】【年齢: 4歳 2か月  】【 男児 ・  女児  】

【病名: 1型糖尿病        】 

 医学的な状況

医療機関名(主治医/担当医) F大学病院 小児科 F先生 受診状況 毎月1回定期受診

治療内容 インスリン注射 2回/日(朝食前、夕食後)

就園/集団生活が可能か

(医師の許可)

血糖測定と低血糖に対する対処について配慮が必要。その他生活上 の制限はないため、集団生活は可能。

配慮の有無

詳        細 有 無

園で行う服薬や医ケア

(医ケアが有る場合は内容 を選択し詳細をお書き下 さい)

☑ ☐

医ケア:吸引(鼻腔内、口腔内、気管カニューレ内)

経管栄養(経鼻、経口、胃瘻)導尿、人工肛門、

酸素吸入、 血糖測定 、インシュリン注射、与薬、その他 本人が自分で手指を消毒、穿刺針を使って血液を採取、

血糖測定機器を用いて測定。見守りと値の確認が必要。

体 調・ 症 状( 早 期 発 見・

早期対応方法) ☑ ☐

① 血糖測定の実施:①食前と食後、②低血糖症状(「元 気がない」「冷汗がでる」「強い空腹感がある」「手が震 える」など)がある時。

② 低血糖の時にはぶどう糖かお菓子を食べる必要があ る(補食)。本人が持参。園にも常備する必要がある。

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分担研究「小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析」

小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究(H30 -難治等(難)- 一般-017)

 発達・生活上の配慮

配慮の有無

詳        細 有 無

食 事

哺 乳 ☐ ☑

食 事 ☑ □

食事やおやつは他の園児と同じでよい。

何からの理由で食事を食べられないと低血糖を起こすこ とがある。

食前・食後の血糖測定。低血糖時には食事やおやつ以外 の補食(ぶどう糖やお菓子など)が必要。

排   泄 ☐ ☑

睡   眠 ☐ ☑

遊 び 行 動

身体機能

(運動機能) ☐ ☑ 環境・場所

(室内・園庭・

屋外)散歩

☑ □

運動や活動の制限は不要。活動量が普段より多くなると 低血糖が起こりやすくなるため、活動中や活動後の症状 に注意が必要。

発 達

言葉/表現 ☐ ☑

理解力 ☐ ☑

社会性 ☐ ☑

そ の 他

保護者情報

保護者の意向・気持ち

家の近くの保育園では入園を断られた。小学校に入る前に、同じ年代のお子 さんとの集団生活を体験してほしい。近所のお友達が行っているので、本人 も楽しみにしている。

集団生活への理解

一生、インスリン注射や血糖測定をしなくてはいけないと知った時にはとて もショックだった。でも、そのこと以外には特別なことはないので、みんな と一緒に普通の生活をしてほしい。

家族構成・配慮が必要 な家族背景

両親共働き。父方祖父母が近所に住んでおり、面倒をみてくれるので頼って いる。

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分担研究「小慢児童の保育所等就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析」

 園の調整内容

年齢相応のクラスでよ

いか 年齢相応でよい

手帳の有無 身体障害者手帳     療育手帳     小児慢性特定疾病

加配の必要性

要  ・ 不要

   理 由:血糖測定や低血糖の対応が必要なため、看護師がいる方が望 ましい。

   担当者:保育士、 看護師 、介助員、保護者 設備・機材等 なし

地域連携機関の有無 あり ・  なし

   連携先:療育・発達支援センター、訪問看護、保健師(行政)

その他 血糖測定は、安全に落ち着いてできるように配慮が必要。

 疾患の特徴や集団生活上のポイント

他の園児と一緒に活動することが可能であるが、血糖値のコントロールのために血糖測定や補 食が必要なので、保育士をはじめ周りの理解や協力が欠かせない。今後、病状によってはイン スリンポンプによるインスリン注射も考えている。

参照

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