情報と製造物責任法について(二・完)
著者 川和 功子
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 1
ページ 81‑108
発行年 2008‑05‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011385
情報と製造物責任法について(二・完)八一同志社法学 六〇巻一号
情報と製造物責任法について (二・完)
川 和 功 子
(八一)
一 はじめに 二 米国、EUにおける適用範囲 三 損害の種類 四 米国法におけるソフトウエアの法的地位について
―
契約法と不法行為法の関係―
五 書籍・データベースの瑕疵(以上五八巻六号) 六 設計上の欠陥 七 警告上の欠陥 ⑴ 医療関係 ⑵ キーボードに関する裁判例 ⑶ 汎用プログラムについての警告 八 因果関係 九 免責事由一〇 むすびにかえて情報と製造物責任法について(二・完)八二同志社法学 六〇巻一号
(八二)
六 設計上の欠陥 ソフトウエア自体は﹁情報﹂ではあるものの、本などの情報と異なるのは、その欠陥はソフトウエアの﹁設計エラー﹂ とされることである (
いのこるれさ慮考が陥欠上と告警、はいるあ陥欠のとな計らとるす在存がグバずなるかはにアエウトフソ。上設めた、 性の、はていつに類種欠陥の体自アエウトフそ質のういくにえ考はとこい。と陥欠の上造製、上ソ 66)
われ、バグを完璧に取り除くのは不可能であるとされるが、多くの知られた欠陥が修正されずに、意図的に残されていることが報告されている (
想修トウエアのバグが正ソされていくこともフてーっかしながら、ユザ。のエラー報告によし 67)
定されているため、バグの修正がなされずに安易に頒布がなされる可能性も存在する。頒布後のユーザの報告による修正が行われている現状からみて、製造物責任法が課されないとすると、深刻な損害を惹き起こす可能性のあるバグにつ
いても、ソフトウエアの頒布自体までもがテストとして位置づけられてしまう危険性もはらんでいることが指摘される (
界安におけるソフトウエアの全業対策の重要性に鑑み、業界の医定だし、軍事、後述する療目的用のソフトなど、特た 。 68)
ごとに安全ガイドライン等が作成される傾向が見て取れる (
。 69)
第三次不法行為リステイトメント二⒝条は合理的な代替設計を採用していれば、その製品がもたらす予見可能なリス クを現象または回避することができた場合で、かつその代替設計を採用しなかったことが、その製品を合理的に安全なものにしなかった場合に設計上の欠陥があるとする (
da ity gr te in ta so ftw ar e lo gic
タ)、(フ性合整ターデ、告警るす対ソアトウンイのアエウトフソ・器機)、(クッジロエに者作コウはていおに脈文のアエト操フソは計設替代のられ、ンこー、術技るすクッェチをラピエ、語言用使のターュ 。 70)
ーフェース装置(
eq uip m en t/s of tw ar e in te rfa ce d ev ic es
)、スクリーン上または操作、保守マニュアルにおける操作者へ情報と製造物責任法について(二・完)八三同志社法学 六〇巻一号 の警告についての選択などを含む (
トいステイトメン行におて為は、消費者期待基準リ ( 合法不次二第、場バた布の際に修正できなかったグ。によって損害が惹き起こされ頒 71)
ト第ンメトイテスリ為行法不次三、れさ断判かうどかるあが陥欠で 72)
においては、合理的な代替設計が可能であったかどうかという、より過失に近い判断がなされる (
が場る欠陥が損害を引き起こした合に、バグのない合理的な代替設計よグ製法についてバ物責任造をな適ばら、るす用 。陥欠のアェウトフソ 73)
可能であったか否かという判断をすることが必要となる (
断さ能であったと判計れがる可能性が存在する可 ( 代設替なバ的の際、知られていたグ。が存在する場合、合理こ 74)
。 75)
以下、米国において、設計上の欠陥が問題となった事例について紹介する。
Roberts v. Rich Foods, Inc .
(R ob er ts
者ンたがコピ受ュータの製造業けをラ害トレーラートッはクと衝突して損、 76)(
C ad ec
)を訴えた事件である。事故は、トラックのドライバーが走行中コンピュータ(X 30 0
)にデータを打ち込んでいたため起こった (路のの使用について記道録を残すために行たにれ込。データの打ちみめは税金の申告のたわ 77)(
。 78)
第一審において裁判所は、意図されたまたは合理的に予測できる使用のために合理的に安全でなかったことから、コンピュータに瑕疵があったことが原告によって証明されなければならないとした。裁判所は、コンピュータのデザイン
に欠陥があったかどうかを決定する目的でコンピュータのリスクがその効用を上回るかどうかという判断を行うリス
ク・効用分析を使用することと、ニュージャージー州製造物責任法三⒜⑵条を適用することについて陪審員に指示した。
三⒜⑵条は、被告の積極的抗弁として、製品がその危険な側面によって引き起こされたこと、そして、その側面は通 常人が認識し得る、製品が本来有する性質であることをあげる。ただし、例外として、その危険がその製品の効用(
ut ilit y
)を妨げることなしに排除することが実行可能であった場合をあげ、その場合は積極的抗弁を主張することができないとする。しかしながらこの例外については、陪審員に対して適用の指示がなされなかった。この結果、陪審員
(八三)
情報と製造物責任法について(二・完)八四同志社法学 六〇巻一号
はコンピュータには欠陥がなかったとし、訴訟原因がなかったとの評決を下した (
。 79)
控訴審は、コンピュータの製造者が、停止している時に限りドライバーが情報を入力するようにコンピュータを変更することができたことを認めたため、陪審員指示は危険・効用分析のみについて行われるべきであったとし、コンピュ ータの危険はその製品の有用性(
us ef uln es s
)を損なうことなく、除外することが実行可能であったとして、三⒜⑵条の例外にあたり、コンピュータの製造者は積極的抗弁を主張することができないとした。ドライバーの便宜と、記録をより正確にすることは、
X
―30 0
製品の危険な性質を正当化するのに十分でないこと、三⒜⑵条の例外が適用されることから、C ad ec
は三⒜⑵条の積極的抗弁を請求することができないとの判断がなされた (べ明さといならなばれけなし証、をとこたっあで能可行実れ陪たすけおに中行走、はの審っあできべす下を断判が員る
とがるこ的めたるす除排を弁抗極、積、はていおに裁高最はに原こす去除を険危、くな告とうのがな品製有用性を損 。るあでの 80)
ての機能の操作が
X 30 0
に内在する性質であったかどうか、そして、その特質を除去することが、意図された使用を著しく減少させるものであるかという問題についてであるとの判断が下された。つまり、C ad ec
が、コンピュータの有用 性を損なわずに、(im pa iri ng t he u se fu ln es s
)走行中に操作することによってもたらされる危険を除去できたかどうかについての判断が陪審員によってなされなければならなかったとした (にも去除を険危るれさらたてきっよにとこるす作操に中でた走れ単、れさといならなばけかなし慮考ていつにかうど行
に、単能可が作操に中止停に、あはていおにスーケのこでったーずわな損を性用有のタュピンコ、くなはでかうどか 。 81)
停止中に操作が可能であったかの判断と比較し、より限定的な基準で設計上の欠陥があったかどうかが判断されている。つまり、リスク・効用基準は、効用の基準をどのレベルで設定するのかに左右されることになることに留意する必
要がある。
(八四)
情報と製造物責任法について(二・完)八五同志社法学 六〇巻一号
コンピュータのキーボードについては設計上の欠陥が存在するか否かという点について多くの訴訟が存在する。コンピュータ・キーボードのデザイン上の欠陥により、CTD(
C um ula tiv e T ra um a D iso rd er s
)が引き起こされたとして請 求がなされた、Bowers v. Northern Telecom, Inc.
(Corp. Unisys v. Spears
方他 ( 点しとるじ生が、争な性真、りあがて式被て。たれさ却棄が立告申の決判頼略の性信う、はかについて原告側の証言 キドーボーをの告被はていデの惹ザインが損害にき起こしたかどお 82)e pr ox im at e ca us
る断判と(あで)るすこととさ下が決判のたたっかなきではれ ( 因原がな被、が員審陪的主理合、はてい告製に原のDTCの告が造ドーボーキたしお 83)門知専のていつに識的学科、は所判裁。 84)
家の証言が証拠として採用されるためには、そのような理論または技術がテストされ、批評(
pe er r ev ie w
)されているかどうかなどについて検討する必要があるとし、テストや批評がなされていなかったのでキーボードの使用が損害の 原因であったとする証拠について、除外されるとした (。はがあるとすのる困難な様である て拠根な的学科いーつのように、キーボド。の設計上の欠陥にこ 85)
七 警告上の欠陥 製造物に関する誤った警告が付されている場合には、その製造物には欠陥があるとされる。以下、医療データベースあるいは医療機器についての裁判例、そしてキーボードについての裁判例について紹介する。
⑴ 医療関係 医療関係のデータベースあるいは医療機器に起因する損害について、留意しなければならないのは、医者、あるいは
(八五)
情報と製造物責任法について(二・完)八六同志社法学 六〇巻一号
薬剤師などが介在するか否か、医者に危険についての知識があったかなどの事情により製造者の警告義務の有無が左右
されることである。
Frye v. Medicare-Glaser Corp.
(刷類際、医薬品の種と渡警告ラベルを印すを師薬いては、薬剤がに、患者に処方お 86)
するためにコンピュータ・プログラムを使用したケースである。
薬剤師が、コンピュータ・プログラムを使用して印刷した警告のうち、患者の摂取する薬品の作用がアルコールによ って強められる可能性があるという警告のラベルを使用せずに患者に渡したところ、患者は薬を摂取し、飲酒して死亡したため、患者の遺産管理人が、薬局と薬剤師を過失引受け(
ne gli ge nt u nd er ta kin g
)の理論によって訴えた。第一審は、薬局と看護婦は薬品の危険な副作用について警告する義務はなかったとして、略式判決の申立てを認めた。被告は、薬局とその代理人が副作用について警告する義務はないと主張し、その根拠として、
Kirk v. Michael Reese Hospital &
Medical Cente r
(そ危す告警ていつに性険のばそ、てし対に者医るすれよ処要、が者医、しといなは必くるす告警に者患接直、方、は者
oc e le ar ne d in te rm ed ia ry d in tr
しのける中間媒体者の法理(造製薬用方処、は理法のこに。た)を引お 87)の医療的な判断において、患者に警告を伝達する役目を負うとするものである (
。 88)
イリノイ州控訴裁判所においては、この法理によって、薬局に義務がないことは認識したものの、被告は任意に適切
な警告することを約束したにもかかわらず、履行の際に合理的な注意義務を怠ったため、第二次不法行為リステイトメント三二三条により過失責任を負う可能性があるとして、略式判決を破棄し、下級審に差戻した。
このケースは、コンピュータ・プログラムを使用して印刷された警告が誤っている、あるいは、警告が不十分であるといった請求を取り扱ったものではないが、そのようなケースが存在した場合、コンピュータ・プログラムの製造者に
対し、製造物責任が問えるかどうかが問題となる。投薬についての情報などコンピュータ・プログラムによってもたら
(八六)
情報と製造物責任法について(二・完)八七同志社法学 六〇巻一号 される情報は、情報を使用する人の行為を介して損害を与えるものであるが、航空地図の場合と同様、人的損害をひき起こす可能性が高い。そのような種類の情報提供者に責任を課すことは表現の自由の制約につながるものとはいえな
い。
Jones v. Minnesota Mining and Mfg. Co.
(3
M (種内の素ウヨ線射放たれさ植移に体めたの療治の癌、はていおに) 89)
子(
se ed
)の製造者が、その危険性について十分に警告しなかったため欠陥があるとして訴えが提起された事件である。放射線の量を計算するためにコンピューター・プログラムが使用されていた。計算結果としては一時間当たりの量が表示されていたため、それを年単位の量に変換する必要があったものの、チャートの誤りにより、患者が放射線を大量に浴び損害を蒙った。
患者側は種子について
3
供しとたっあが務義るす提Mを告警な切適で分十はに (そ者射放に子種は医が、はていおに性あ一たは告警、しといるてっ知をとこ審第タの、プログラム・製者を訴えたが造 づ造物責任に基ンいてコピュー、製 90)
れ以上必要なかったとして、製造者に有利な略式判決が下された (
。第一審は、 91)
囲えたわに育範広ていつを与る教必要がなかったと判断したる (
3
しは、医者に対Mに正確な治療過程、。 92)
控訴審は、警告上の義務があったかどうかは、放射線医が過度の放射線の危険性の性質とその範囲についての知識を 有していたかによって判断されるとした。もし知識を有していなかったのであれば、その製品に関する危険について警告する義務は生じるので、争点が存在するため、争点が存在しないとの判断のもとに下された略式判決を破棄した (
。 93)
その後コンピュータは年あたりの量を計算するように修正されている。この裁判例では、医者の知識の度合いによって、警告義務が要求されるかどうかが決定されている。この事例においては、種子についての警告と、コンピュータ・
プログラムの計算を変換する際の誤りが焦点となっており、医者という専門的技能を有する者の過失が関係してくるこ
(八七)
情報と製造物責任法について(二・完)八八同志社法学 六〇巻一号
とになるが (
。る告義務が課され可、能性も発生する警はさて作方法の複雑の、度合いによっ操 94)
この様なケースにおいて、コンピュータの計算結果に誤りがあった場合には、身体的な損害が発生し、航空地図や、薬品のラベルの誤りの場合と同様に、誤った情報を提供した者に責任を課すことは、表現の自由の制約につながるもの
ではない。しかしながら高度先端的な医療機器が緊急医療の場で使用された場合など、欠陥機器の供給者だけでなく、医師やその他の医療関係者に対する責任を負わせるか否かについては状況に応じた細かい判断が必要となってくる可能
性が生じる (
。 95)
例えば、東京高判平成十四年二月七日 (
空破のチューブの損ンにより血流中にプポ工に送の中置装肺心血人、はていお 96)
気が混入して脳梗塞を発症し脳機能障害が残った事例において、製造上の過失、操作する者に対する説明義務又は警告義務の違反が問題となったが、﹁人工心肺装置のポンプ機器は、これを操作する者の取扱い上の過失ないし過誤がなけ
れば、安全に使用することができるものであったと認められる。したがって、本件ポンプ自体は、製造物責任法にいう﹁当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること﹂という欠陥があったということはできない﹂とされ、ポンプへ
のチューブ設定に関しては、技士に過失ないし過誤があったものとされた。しかし、事故発生の具体的危険を指摘する説明ないし警告が発せられなかったとして、過失が認定された。
米国における
T he ra c- 25
と呼ばれる放射線治療器による放射線の大量照射による事故は、裁判例はないものの、プログラムの瑕疵に起因するコンピュータの事故として非常に有名である (を機量に確正が示表の器、はていおに例事のこ。 97)
表示しなかったため、大量照射が起こったことについて確認する手段はなく、患者の状態から放射線の量を推定するしかなかったこと、ソフトウエアのエラーがある特定の操作をした際のみに起こるものの、どのような操作をしたかにつ
いてはっきり特定できなかったこと、エラーメッセージについての説明も不足していたこと、FDAへの届出も遅れた
(八八)
情報と製造物責任法について(二・完)八九同志社法学 六〇巻一号 ことなどが事故を招いたことが説明されている。裁判は和解で終わっているが、エラーメッセージが出た際の警告、エラーメッセージについてマニュアルに記載がなかったこと、安全対策をソフトウエアに頼りすぎていたこと、ハードウ
エアの連動装置がなかったなどシステム上のいくつかの問題点が指摘されている。ソフトウエアとハードが組み合わされたシステムにおいては、ソフトウエアの欠陥があったとしても、システムを停止させるハードが機能することにより、
損害が防げる場合もある。つまり、どの部分をソフトウエアにし、どの部分をハードウエアにするかということは、恣意的にコントロールすることができる。このことからみて、ハードであるかソフトであるかの区別が法的に重要である
ことに疑問が呈される。
第三次不法行為リステイトメントは、処方薬および医療用具について、警告上の欠陥については、予見可能な被害の
リスクに関する合理的な指示もしくは警告が、その指示もしくは警告に従って被害のリスクを減少させるべき地位にある処方者及びその他の医療提供者、または、それらの医療提供者が被害のリスクを減少させるべき地位にいないことを
製造者が知っているか、または知っているべき理由がある場合には直接患者に対して、提供されていなければ、処方薬もしくは医療用具は、指示もしくは警告の不備のために合理的に安全ではないとする (
るにあ、はていつ陥欠の上計設。 98)
医療器具の被害リスクがはるかにその医療効果を上回り、合理的な医療提供者であれば、処方しないと思われる場合の
みに、そうした製品の設計は欠陥であるとされる (
がをあが要必るけ受可、認の)ADF(局りさ薬特社一たし得取を許はらていつに薬療治に品医食、は器機療医びよ品 さ的設替代なが理合、てっ基た計れ準は採用。ていない。医薬品おし 99)
市場を独占する可能性があることから、代替品の製品市場が限定されていることが原因とされる (
。 100)
米国においては一九九二年から一九九八年にかけ、リコールの七・七%がソフトウエアの瑕疵によるものであるとさ れる医療機器ソフトウエアについては、FDAからガイドラインが公表されている (
アにエウトフソ、らさはADF。 101)
(八九)
情報と製造物責任法について(二・完)九〇同志社法学 六〇巻一号
のための市販前の提出書類についてのガイドライン (
so ftw ar e
用)O、らかとこがS広く使たされるようにTをっのンイラドイガの前販市て使いつに器機療医たし用な (ff- S T O elf sh e- th O
組ま込みフに器機る療れト汎用ソ)、ウエア((医 102)はA療機器に使用されるOTが、、特定の医療機器について医はOンいても公表している。TSについてのガイドライ につ 103)
適切でない場合があることや、医療機器の製造者がソフトウエアを組み込んだ医療機器の安全で効果的な実行についての責任を有することに対応したものであるとされる。
日本においては、﹁医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令 (
、用れる部品、組立品(製品に使さ用れるものに限る。)、原料、材料さ使品義﹁構成部て﹂の定等は程、﹁おにい工造製 ﹂、ていおに項二条二 104)
容器、被包、表示物(添付文書を含む。以下同じ。)等であって、製品の一部となるもの及び製品のソフトウェアをいう﹂とされる。四十九条は﹁製造業者等は、構成部品等又は作業環境の条件によって特定医療機器に係る製品が製品要求事
項に適合しなくなるおそれがある場合においては、当該構成部品等及び作業環境の条件のすべてに係る記録の追跡可能性を確保しなければならない﹂とする。﹁薬事法第四十一条第三項の規定により厚生労働大臣が定める医療機器の基準 (
﹂ 105)
一二条は﹁電子プログラムシステムを内蔵した医療機器は、ソフトウェアを含めて、その使用目的に照らし、これらのシステムの再現性、信頼性及び性能が確保されるよう設計されていなければならない。また、システムに一つでも故障
が発生した場合、実行可能な限り、当該故障から派生する危険性を適切に除去又は軽減できるよう、適切な手段が講じられていなければならない﹂とし、実行可能な限り適切な手段を講じなければならないことを定めている。
⑵ キーボードに関する裁判例
Geressy v. Digital Equipment Corp.
(ー告は、原告が被の判コンピュータキ所裁ヨに連区地部東クー邦ーュニていお 106)
(九〇)
情報と製造物責任法について(二・完)九一同志社法学 六〇巻一号 ボードを使用したことによって反復性ストレス障害(
re pe tit iv e st re ss in ju rie s
(R SI s
))となったとする、製造物責任訴訟における陪審員判決を支持する十分な証拠があるとした。そして被告の責任はキーボード使用の危険について警告することを怠ったことから生じるとした。裁判所は、製造者は製品の通常の使用に伴う(損害)の特別のリスクについて知識を有しており、そのリスクについて十分に警告する義務があるとした。
他方
Finley v. NCR Corp .
(ar pa l T un ne l Sy nd ro m e C
しはSTC(被告キをーボードがC))発対会に求請の員社告症原、すとたしるT(管群候症、
いコ・ターュピンのて告被キは所判裁ードー陥根手、にめたの欠ボの上ンイザデのにお 107)Sを惹き起こす可能性のあることを警告する義務はないとの判断し、被告の略式判決の申立てを認めた。判断を下すにあたり、裁判所はコンピュータ・キーボードについて警告がなければ、危険であるとするのは、もっと危険な可能性の
ある遊具が売られている社会において、不適切であるとした。さらに、キーボードの特質よりも、個人の性格と、物理的な反復がよりCTSの発症の原因となると判断した。そしてこれと反対の結論は、通常の物の使用において長期の手
動操作を伴う物のすべてについての警告を必要とすることになるとし、使用に反復的な手動操作を伴うすべての製品について製造物責任が及ぶことに歯止めをかけている。
⑶ 汎用プログラムについての警告 汎用プログラムが製品の一部として組み込まれている場合の警告に関わる責任についてライセンスはどのように考慮
するべきであるかについて手がかりとなる裁判例が若干存在する。
日本の製造物責任法によれば、﹁製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が
専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつ
(九一)
情報と製造物責任法について(二・完)九二同志社法学 六〇巻一号
き過失がない﹂場合に免責される。
米国第三次不法行為リステイトメント五条は、部品の販売者もしくは配給者は、部品自体に欠陥が存在し、その欠陥が被害を惹起した場合、または、製品の設計中への当該部分の組み入れに大幅に関わっていて、かつ当該部品を組み込 んだことによってその製品が欠陥となり、損害を惹起させなければ、責任を問われないとする (
。 108)
EC指令の七⒡条でも、部品の製造者は欠陥が製品のデザインまたは製造者の指示によるものである場合には責任を
負わない。英国の消費者保護法四⑴⒡ⅱにおいても、欠陥が製造物のデザインまたは製造者の指示によるものである場合、抗弁となると規定する。このように指示に従った場合や、組み入れに関わっていない場合、欠陥に責任がない場合
などについて免責の規定が存在する。
米国において、汎用ソフトウエアが他社のシステムに組み込まれた場合の責任について取扱う事例として、
Sparacino
(Sp ar ac in o
)v. Andover Controls Corp.
(A nd ov er
(告ムイラーバーオをテすスシ、し布頒をドるSこ警のていつにとるこあで能可不がと)Mネ理エルギー管システム(E 。は告原でるれらげあ告、被欠会社が危険)陥のある、が 109)
を怠ったとして訴えた (
g n nd A at s em st sy fo er r bu ild in io au to ov m
とを整調気空、気換、房暖をSM)製、造そのるあでE製造のSME、し者シm es t ic ro pr oc sin g eq uip m en
管テスシ理ロ動自ルビは告のムプためのマイク。ロセッサ機器(被 110)ステム(
he at in g, ve nt ila tin g, air c on dit io nin g
(H VA C
)s ys te m
)に組み込んで設置したCMC(C om m un ic at io ns M an ag em en t C or po ra tio n
)である (。 111)
原告
Sp ar ac in o
は五四歳の化学の教員であり、早朝六時に塩素ガスを製造するための実験の準備をしていた。EMSは六時半まで操作不可能に設定されていたため、換気扇が作動せず、教師が気管支、呼吸器等の損傷の損害を蒙った。A nd ov er
もCMCもその旨の警告をしていなかった。厳格責任を負うかについて判断するために、裁判所はEMSが非(九二)
情報と製造物責任法について(二・完)九三同志社法学 六〇巻一号 合理的に危険であって、その性質と意図された機能に照らして、合理的に期待される方法で機能しなかったかどうかについて判断した (
。 112)
裁判所は安全機器を設置するのは、組立てをした者の役目であり、部分品の製造者にすぎない
A nd ov er
にはCMCがユーザが個々にプログラム変更することができるEMSを危険で欠陥のある方法で組みこんだかどうかについて予見す る義務はなかったとした (ov er nd A
厳Cるす告警はにCMっ。た務かなも拠証う義在がも、くなはに、ののる存あは性能可たしといるあで険危にer A ov nd
ムラグロプはSMEるあさ品製のでたれ陥的質本、くなも欠。、れさ行実にりおと 113)格責任を課すことはできないとされた (
。 114)
過失については、
A nd ov er
が危険の可能性について知っていたとしても、人が学校にいることが予定されていないと きに化学の実験が行われることを予測するのは合理的でなく、換気扇の使用者がそのような方法で損害を蒙ることは予見できなかったため警告する義務はなかったとされ (るされさ定設がSMEに間時るれ用使が校学、合場の校学が物建、 115)
のは異常なことではないとされた (
。 116)
このケースにおいてEMSはCMCによって組み込まれた部品であり、それ自体欠陥もなく危険なものではなかった こと、さらに、使用された時間帯と活動の特殊性などから、
A nd ov er
に対して責任を課すことが困難であったと思われる。 他方、日本において、警告の義務が認められたケースとしては、東京地裁平成一五年三月二〇日 (呼呼気管切開チューブに、他者の吸し回路機器を接続して用手人工た着気手は、乳児の装切開管術開に後部位切管気に が件本。るれらげ挙 117)
吸を行おうとしたところ、回路の閉塞によって乳児が換気不全等に陥り死亡したケースである。麻酔ガスや酸素等の新鮮ガスを吸気として患者の体内に送り込み、患者の呼気を排出するために用いる呼吸回路である、ジャクソンリース回
路は、手動式のバッグ、蛇管、Tピースから構成され、本件で使用された回路は、新鮮ガス供給パイプが患者側接続部
(九三)
情報と製造物責任法について(二・完)九四同志社法学 六〇巻一号
に向かってTピースの内部で長く突出したタイプであった。ところが、本件で使用された気管切開チューブは接続部の
内径が狭い構造になっていたため、新鮮ガス供給パイプの先端が気管切開チューブの接続部の内壁にはまり込んで密着し回路の閉塞をきたし、乳児は換気不全によって気胸を発症するなどして死亡した。
裁判所は気管チューブと、ジャクソンリース回路の設計上の欠陥は認めなかったものの、指示・警告上の欠陥を認めた。ジャクソンリース回路は、麻酔用器具としてだけではなく、人工呼吸用にも用いられ、その際に他社製の呼吸補助
用具と組み合わせて使用されていた実態があり、製造販売社としてもそのような実態を認識していたことと、他社製品と組合せ使用がなされた場合、気管切開チューブの接続部の内壁に新鮮ガス供給パイプの先端がはまり込み、呼吸回路
に閉塞が生じる危険がある可能性が存在していたことから、ジャクソンリース回路を製造販売するに当たり、使用者に対し、気管切開チューブ等の呼吸補助用具との接続箇所に閉塞が起きる組合せがあることを明示し、そのような組合せ
で本件ジャクソンリースを使用しないよう指示・警告を発する等の措置を採らなかったことが、指示・警告上の欠陥にあたるとされた。注意書は、﹁換気不全が起こりうる組合せにつき、﹁他社製人工鼻等﹂との記載がなされているのみで
﹁そこに本件気管切開チューブが含まれるのか判然としないうえ、換気不全のメカニズムについての記載がないために医療従事者が個々の呼吸補助用具ごとに回路閉塞のおそれを判断することも困難なものであっ﹂たので、﹁組合せ使用
時の回路閉塞の危険を告知する指示・警告としては不十分﹂であるとされた。さらに、気管切開チューブについても、ジャクソンリースと接続した場合に回路の閉塞を起こす危険があったにもかかわらず、そのような組合せ使用をしない
よう指示・警告しなかったこと、その上、使用説明書に﹁標準型換気装置および麻酔装置に直接接続できる﹂と明記し、小児用麻酔器具である本件ジャクソンリースとの接続も安全であるかのような誤解を与える表示をしたことから、指
示・警告上の欠陥があったとされた。
(九四)
情報と製造物責任法について(二・完)九五同志社法学 六〇巻一号 さらに、ジャクソンリース回路と気管切開チューブ等の呼吸補助用具を組み合わせて使用する医師としては、少なくとも、各器具の構造上の特徴、機能、使用上の注意等の基本的部分を理解したうえで呼吸回路を構成する各器具を選択
し、相互に接続された状態でその本来の目的に沿って安全に機能するかどうかを事前に点検すべき注意義務を負うとし、ジャクソンリースと本件気管切開チューブを組み合わせて使用するに当たり、事前に接続不具合についての安全を
確認すべき注意義務を怠った過失が認められるとされている。本件においては、他の製品との組合せがしばしば行われ、その場合には危険であることが知られていたため、警告する義務があるとされた。
Sparacino
は、プログラムがすでに組み込まれ、一体化されて販売されたケースであり、気管切開チューブについては、単体で販売されていたものの、他社製品との組合せ使用がなされていたことが知られていたため、警告の義務が生じたケースである。システム機器が大規模化し、複雑化するなかで、コンピュータ・プログラムが部品として組み込まれる場合が多く生じている。プログラムの作成者がそれ自体は完璧なプログラムを作成したとしも、第三者がそのプロ
グラムを組み込んであるシステムを作成した場合、使用環境によってはプログラムが正常に機能しない場合や、プログラムが正常に機能していたとしても、組み合わせによってなんらかの損害を引き起こす可能性が存在する (
。汎用性の高 118)
いプログラムは作成者の予定もしなかった形で第三者の製品に組み込まれている可能性があり、そのような場合の責任
についてきめ細かく考慮する必要がある。
八 因果関係 責任を課すためには、欠陥が損害を惹き起こしたことが必要とされる。高度な技術を要する機器等については誤作動
(九五)
情報と製造物責任法について(二・完)九六同志社法学 六〇巻一号
と、操作をする者の誤操作も重なり、因果関係についての判断が困難となるおそれがある。たとえば飛行機事故が起こ
った場合、パイロットの誤操作によるものなのか、混乱するような機器の配置が安全性を低下させたのか、それとも、警告が十分になされなかったから発生したものなのかといったといったさまざまな角度から検討することが必要とな
る (
。 119)
Mark Akins v. District of Columbia
(、動ピュータが作しコなかったためにンる記にてれさ力入が録い罪犯はていお 120)
囚人(
W illi am s
)が仮釈放され、W illi am s
の仮釈放中に起こした強盗によって損害を蒙った原告が、コンピュータの供給者であるIBMに対し、過失責任を追及したケースである。W illi am s
は、正式事実審理サービス庁(P re tr ia l Se rv ic e A ge nc y
以下PSA)が提供した情報に基づいて仮釈放されたが、その情報は、W illi am s
が以前に犯した強盗についての記録を含んでいなかった。犯罪記録が含まれていなかったのは、記録が入力されているIBMのコンピュータが作動せず、PSAの職員が自ら記録を取得することを怠ったことによる。記録が欠けていることが記載されているにもかかわらず、罪状認否手続の裁 判官は
W illi am s
を釈放したため、W illi am s
は再度強盗を働き、原告が被害を蒙った。裁判所はIBMがコンピュータの保守において過失があるとするためには、IBMの過失が原告の損害の法的な主原因(a le ga l pr ox im at e ca us e of t he in ju ry
)であることが必要とされるとする。そして犯罪行為がその過失と損害の間に存在する場合には、犯罪行為の異常な性質に鑑み、過失のある当事者に責任を課す前提として、損害の発生が高い確率で予見できたことが必要であるとする (
illi W am s
り、るIBMはと知ていつに行暴まはたかたし断判とたっな予し有を由理るす期の (e dg ju t en nm ig ar ra
をえ不否認状罪、と為作の判ASPは所判裁。裁官考在てめ含とこるす存(が定決の意任の) 121)。 122)
日本では、東京地判昭和四八年三月二七日 (
株信いての記事を頼にして、ソニーつ式誌にたれさ載掲に株刊週、ていお 123)
(九六)
情報と製造物責任法について(二・完)九七同志社法学 六〇巻一号 を購入した者が、株の下落により損害を蒙ったとして、出版社に対し損害賠償を請求した裁判例が存在する。裁判所は、記事の掲載と損害との間に因果関係が存在するというためには、記事が単にソニー株を購入するについて原因となった
というのではなく、原告が特定の日にこれを売却するについてその誘因となったことが証明されなければならないとして請求を棄却した。しかしながら、因果関係が認められたとしても、そもそも雑誌の記事を信頼したことに基づいて責
任を課すとはあまり考えられないことが指摘される (
。 124)
九 免責事由 最後に、ソフトウエアが製造物責任法の範囲に入るとされた場合、免責事由について考慮する必要がある。日本の製
造物責任法四条は免責事由として、開発危険の抗弁と、部品・原材料製造業者の抗弁について規定する。部品・原材料製造業者の抗弁については警告上の欠陥のところで述べたので、本章においては開発危険の抗弁について述べる。製造
物責任法四条一号は、﹁科学又は技術に関する知見﹂と規定するのみであり、具体的な水準については裁判所の判断に委ねられている (
。 125)
日本の製造物責任法の立法過程において、第一四次国民生活審議会の答申においては、﹁個々の製造業者の水準や業 界の平均的な水準を基準とするべきではなく、製品の﹃規範的﹄製造者からみて入手可能な最高の科学、技術知識の水準とすべきとする考え方が示されている (
準との抗弁の基準な危る科学技術の水険発、。はてし対にれこ開らがなしかし 126)
を緩やかにすれば、無過失責任導入の意味が失われることや、医薬品の製造物責任を巡る裁判例において、製薬会社に高度な予見義務が課せられてきたことを考えるならば、﹁製造物が流通過程におかれた時点において社会に存在する科
学技術の知見としての﹁客観的に社会に存在する知識の総体﹂をもってその基準となる科学技術の知見とすべき﹂であ
(九七)
情報と製造物責任法について(二・完)九八同志社法学 六〇巻一号
るとの意見が主張される (
。 127)
東京地判平成一四年一二月一三日判決も、﹁四条一号にいう﹁科学又は技術に関する知見﹂とは、科学技術に関する諸学問の成果を踏まえて、当該製造物の欠陥の有無を判断するに当たり影響を受ける程度に確立された知識のすべてを
いい、それは、特定の者が有するものではなく客観的に社会に存在する知識の総体を指すものであって、当該製造物をその製造業者等が引き渡した当時において入手可能な世界最高の科学技術の水準がその判断基準とされるものと解する
のが相当である﹂とする。そして、製造業者等は、このような最高水準の知識をもってしても、なお当該製造物の欠陥を認識することができなかったことを証明して、初めて免責されるものと解するのが相当である﹂とし、﹁既存の文献
を調査すれば判明するような事項については開発危険の抗弁が認められる余地はない﹂とした。
米国においては、設計上の欠陥及び警告上の欠陥事例において技術水準の証拠採用が認められている。日本と異なる
点は、技術水準は業界の慣行、品質安全基準、科学技術の到達基準などさまざまな意味で使用されていることである。多くの裁判所では消費者期待基準や危険効用基準に照らし、その製品に欠陥が存在し、非合理的に危険であったという
ことを陪審員が判断することを助けるために認められる (
ア積ナ州、アイオワ州などでは極リ的抗弁として認められているゾ ( の。々の州において技術水準証。拠の取扱いは異なっている個 128)
のお者造製が品製、はていに州ージーャジーュニ。 129)
支配から離れた際に、その製品の合理的に予測された(
re as on ab ly a nt ic ip at ed
)、または意図された機能(in te nd ed fu nc tio n
)を減じることなく、その損害を予防する実用的かつ技術的に実行可能な代替の設計が存在しなかった場合(
pr ac tic al an d te ch nic all y fe as ib le a lte rn at iv e de sig n
)に製造者または販売者は責任を負わないとしている (製が通常のユーザまたは消費者そとの製品のリスクまたは、その、こで、造物が全く安全るくなまたは非常に危険であ 。製、しかし 130)
品が使用者または消費者以外の人間に深刻な被害をもたらすリスクが存在することについての知識を有することを期待
(九八)
情報と製造物責任法について(二・完)九九同志社法学 六〇巻一号 することが可能でないこと、かつその製品があまり有用でないか、全く有用でないという、明白かつ確信を抱くに足る証明がなされれば、技術水準の抗弁は可能でないとされる (
。 131)
第三不法行為法リステイトメント二条コメントdは産業界の慣行についての証拠について、代替設計が実用的(
pr ac tic ab le
)であったか否かを証明するために提出することが可能であるとする。さらに、産業界の慣行は、代替設 計の不採用によって製品が合理的に安全でなくなったのか否かという点と関連があるが、これらの証拠は採用されうるものの、決定的ではないとされる (。 132)
警告上の欠陥事例においては、第二次不法行為リステイトメント四〇A条コメントjは、ある製品が﹁相当の数﹂の人々がアレルギーである成分を含んでおり、かつ、一般的に、危険が知られていない場合、製品の容器に警告を付さな
いため、製品が非合理的に危険である場合、売主は成分と危険の存在に関する知識を有しているか、または、合理的に有しているべきであった場合その旨の警告を与えなければないとしている。つまり、知識を有しているか、または、合
理的に有しているべきであった場合に責任が課され、学会において知られていない知識については責任を問われないという、過失責任における予見可能性に類似した判断基準が設定されている。第三不法行為法リステイトメント二条コメ
ントkにおいても、販売時点において、合理的に予見できない、アレルギー反応に関するリスクについて警告は不要で
あるとされる。
しかしながら、米国法において、過失における技術標準については、業界における慣習に従ったことが、免責につな がるわけではないことに留意する必要がある。
T. J. Hooper
(嵐使もるいてれさ用にで的慣習で界業ののはが長の浜が鏡眼双の船な、えいはとたっかこ機が受は所判裁。たれわ問信 信使を機と受、はていし用になかったこによる過失責任お 133)
のシグナルを見る目であるように、受信機は引き船の耳として機能するものであることから、受信機は装備されていな
(九九)
情報と製造物責任法について(二・完)一〇〇同志社法学 六〇巻一号
ければならなかったとした (
心安けでなく、比較的価たであった。ある用だっ、あかも、受信機は容。易に入手可能でし 134)
(
pr ec au tio n
)を行うことは絶対必要であり、それを無視することが広く行われている場合であっても、省略した場合に責任を免除することはできないとされた (。 135)
Torres v. North. Am. V an Lines
(会社たっ負を任責失過が ( を越引たっ怠をとこるす視監間を時いても運転手の疲労防にぐため運転手の勤務お 136)
よおがすでに存在してりテ、そのシステムにムスタシの会社ではデー処。理のための複雑なそ 137)
って運転手の運転時間が過度にならないようにすることは可能であったとされた (
。 138)
英国法においても同様の立場が採用されているようである。
General Cleaning Contractors Ltd. v. Christmas
(にお 139)
いては、原告が窓を清掃していたところ、下部サッシが落下し、損害を蒙った事例において、使用者が防止策をとらなかったことについて過失があるとされた。レイド卿は、このような危険について無視することが、一般的な慣習である
としても、危険が明白であって、窓を固定することなどで簡単に防げる場合には、そのような危険は無視されるべきでないとした。このように、過失においては、業界の慣行に従ったとしても、無視することのできない危険は存在し、そ
のような危険に関しては、より高度な義務が課されることから、もし、無過失責任において免責される範囲がこれより広くなってしまうと問題であるという指摘が可能である。
EC指令が作成された経緯をみても、開発危険の抗弁については、特に技術的に進んだ製品の場合に、科学の進歩や新製品のマーケティングを阻害しないために、責任を排除する根拠となるべきだとする考えからその採用が支持されて いた。これに対し、開発危険の抗弁が採用されると、製造者が、みずから過失がないことを証明することになることや、消費者が実験台として使用されることを招くことが指摘されていた (
のに国の々個は題問のこは的終最、らがなしかし。 140)
社会的政策に関わるため、消費者、製造者、またはコミュニティーがそのリスクを負うかについて個別の国に委ねられ
(一〇〇)
情報と製造物責任法について(二・完)一〇一同志社法学 六〇巻一号 るべきであるとされた (
。 141)
EC指令において開発危険とは﹁製品が市場に出回った際における科学的および技術的な知識﹂であり、﹁製造者が 従事する産業部門(
in du st ria l se ct or
)における使用についての慣行および安全基準﹂でないので、特定の種類のどの様な製造者であっても欠陥を排除し、または欠陥の発生を予防するために必要な手段をとらない場合であっても、その 手段が入手可能である知識に基づいて採用可能である場合には責任は排除されないことになる (dg no st at e k of w le e
伝のもの、情報が達すつ的理合のていにさ会機の際実るれるテ連知情報関おけるに識状態()がの ミ。科学コィュニテーの 142)ストの基準に基づくものであるとされる (
。 143)
英国の消費者保護法四⑴⒠条によると、製造者の支配下にある間に製造物に存在していた欠陥について﹁同様の製品
の製造者がその欠陥を発見することが期待されるその時の科学的および技術的状態﹂についての抗弁であって、他の製造者と比較して欠陥を発見することが期待できるかどうかが問われている。つまり、特定の産業において、テストされ
ていない種類の欠陥であれば、深刻な欠陥であっても責任を逃れることが出来る可能性があることが指摘されている (
。 144)
ソフトウエアの開発において国際的な標準としては、例えば、
IS O 25 00
:20 05
がソフトウエアの品質を評価するための、機能性、信頼性、有用性、効果性、保守性、携帯性などについて定めるが、この様な標準が技術標準を確定するも
のではない。しかしながら、これらの標準に達しないものに関しては、最高の技術標準のものが提供されていると主張することは困難であろう。また、すでに寡占状態にある、業界における慣習に従ったことが、免責につながるわけでは
ないことは留意されるべきであると思われる。
(一〇一)
情報と製造物責任法について(二・完)一〇二同志社法学 六〇巻一号
一〇 むすびにかえて 米国において、製造物責任法が生まれた背景には契約法理論による被害者救済の限界と、政策的な理由による、契約 法理論を補充する不法行為の適用範囲の拡大という状況が存在する。このように不法行為法の適用範囲が拡大してきた背景を考慮するならば、理論的には今後さらに無体物、役務に適用範囲が広がる可能性もないとはいえない (
。コンピュ 145)
ータ関係の紛争が増大すればUCC第二編における適用範囲の制限、第二編とUCITAにおける黙示的保証の排除規定の存在は、コンピュータ・プログラマーの専門家責任が認められない米国において、電子情報取引を巡る紛争におい
て、製造物責任法上の請求を増加させる可能性が存在する。
情報自体について製造物責任法の範囲内とした場合、表現の自由を阻害するおそれが存在するものの、米国の判例の
状況が示すように、航空地図の事例と同様、コンピュータ・プログラムについては表現の自由を阻害するという問題は存在しない。しかしながら、現在の状況において、コンピュータ・プログラムについて、製造物責任の適用が考慮され
る方向に行くとはいい難い状況である。第三次リステイトメントは従来から製造物責任法が適用されてきた航空地図の問題についても、不実表示の理論で処理されるべき問題であるとする立場を採用している (
。 146)
製造物責任法の範囲が有体物である製造物のみに限定され、役務提供契約には適用されないことは、必ずしも正当化されないように思われる。また、役務の提供がなされても、何らかの成果物が残るタイプの契約については、事情が異
なることについての考慮がなされるべきであろう。売買法の分野においては、米国の多数意見によれば、物品とサービスの要素双方を含んだ契約は、物品の契約あるいは役務提供契約の部分のどちらかが支配的であるかにより、物品の売
買契約に関する法か役務の提供に関する法のどちらかの法が単一の適用法となる。英国法に目を転じると、これらの二
(一〇二)
情報と製造物責任法について(二・完)一〇三同志社法学 六〇巻一号 要素は、物品及び役務提供法という単一の法律の中で、物品の売買と役務の提供という二つの異なった法の原則に従って、別個に処理されうる。
無体物であっても、航空地図といった表現の自由が問題となる可能性が低い情報を含め、損害を引き起こす欠陥を有する目的物に関しては、製造物責任の政策的根拠である、㈠危険な製造物についての損害のコストは、それを製造し、
販売するものによって負担されるべきであること、そのコストは製品のコストに上乗せできること、㈡厳格責任の採用と過失を証明する必要性を排除することは事故の防止につながること、㈢証明が困難なことや、訴訟のコストなどの点
から、過失責任では被害者救済に限界があること、といった点を考慮し特に大量に頒布される汎用プログラムについて理論的には製造物責任法の適用は考慮されてしかるべき問題であろう (
。 147)
従来より、コンピュータ・プログラムにはバグが避けられないことが指摘されてきたが、特に医療や軍事目的のソフトウエアなどについて、安全性を促進するためのガイドラインが存在している。これらのガイドラインそのものが、直
接的に法的な効果をもたらすものではないが、人命がかかわる場面が多いこのような産業において、今度、安全性を確保するため、どのような水準が要求されるべきなのかの参考となりうるであろう。
第三次リステイトメントについていえば、コンピュータ・プログラムが関連する設計上、および警告上の欠陥につい
て、合理的な代替設計が可能であったかなど、より過失責任に近いアプローチがとられていることに留意する必要が生じる。このような状況のなかで、かつて、コンピュータ産業がまだ業界において新しい存在であった時代に、コンピュ
ータ産業に対して厳格責任が課されることに関する、産業の発展の阻害という懸念が、コンピュータ産業が成長した現在においても妥当するかについて検討する余地があり得る。製造物責任法の趣旨に照らし、コンピュータ産業を他の製
造業者と比較して保護する必要性について再考する必要があると思われる (
。 148)
(一〇三)