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中学生の登校回避感情に対する学級担任の推察と支援(続報)

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Academic year: 2021

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中学生の登校回避感情に対する学級担任の推察と支援(続報). 小幡 緑・堀井 俊章 . Homeroom Teachers' Guess and Support for Junior High School Students . Who Have Feelings of School Avoidance (Second Report) . Midori OBATA and Toshiaki HORII . 問題と目的 . 近年,中学生の不登校の問題が多様化・深刻化し,学校現場では不登校の兆候に教. 員が早期に気づき,支援を講じることが求められている(保坂 , 2002;文部科学省 , 2010,. 2014)。そのような社会情勢に伴い,近年の不登校研究の傾向として,単に生徒の行動. 的側面だけに着目するのではなく,背景にある感情的側面を捉えようとする知見が散. 見されるようになってきている。例えば,欠席行動と意識の関連(本間 , 2000)や不. 登校生徒に対する教員の捉え(岸田 , 2010, 2012;邑上 , 2015)に着目した研究などが. 挙げられる。また,不登校あるいは不登校の兆候を持つ生徒に対して,適切な支援方. 法を検討した知見(安達 , 2009;中田 , 2013;吉井 , 2016 など)も多く見受けられる。. しかし,その一方で思春期という発達段階から,中学生の不登校の兆候を教員が把握. することが困難を極めることも多く報告されている(後藤・廣岡 , 2005;風間・石村・. 杉本 , 2013;寺田 , 2011;筒井・仙波・大野・小林 , 1998 など)。 . 小幡・堀井( 2020)は,森田( 1991)が提唱した不登校を引き起こす動機感情であ. る「登校回避感情」に着目し,他者の言動の意味やその背景で起こっている事柄につ. いて多面的に想像し理解しようとする「推察」の視点から,学級担任が中学生の登校. 回避感情をどのように推察し,どのような支援を行おうとするのかを質的に検討して. いる。その結果,久我( 2010)が述べる教員の省察的思考や上地( 2015)が指摘する. 客観的事実を根拠にしたメンタライジング( 「他者の言動の意味やその背景で起こ. っている事柄について多面的に想像し理解しようとする行為」(増田・田爪 , 2018)). を通して,生徒の外面的な変容ならびに内面的な変容を推しはかることで登校回避感. 情を推察している可能性を示唆している。また,登校回避感情が推察された生徒に対. して,田上( 1999)や伊藤( 2009),石隈他( 2004)が指摘する,環境や社会の中で捉. える視点と個人として捉える視点の両者から,支援策を講じていることを報告してい. る。さらに,登校回避感情の推察から支援に至る一連の実践を,学級担任が省察して. いることも明らかとなっている。 . 小幡・堀井( 2020)による上記の研究において,今後の課題として,学級担任が不. 登校になる前に生徒の登校回避感情が推察できた事例ならびに推察できなかった事例. の双方を調査し,生徒の登校回避感情に対する推察に影響をもたらす諸要因について,. より詳細に検討する必要性を指摘している。そこで,本研究は学級担任を対象に,生. 徒の登校回避感情を推察できた経験ならびに生徒が不登校になる前に登校回避感情を. 183. 推察できなかった経験について回想法によるインタビュー調査を行い,次の 2 点を明. らかにすることを目的とする。 1 点目は,生徒の登校回避感情に対する推察に影響を. もたらす諸要因を明らかにすることである。 2 点目は,生徒の不登校の有無による推. 察と支援の差異を検討することである。 . 方 法 . 調査協力者 . 首都圏の国公立中学校 5 校の中学校教員 10 名(男性 6 名・女性 4 名)とした。調査. 協力者の属性については Table 1 に示すとおりである。なお,所属先の管理職ならび. に調査協力者には調査の趣旨を説明し同意を得ている。 . Table 1 . 調査協力者の属性 . 調査時期 . 2018 年 8 月 2 日から 24 日にかけて,調査を実施した。 . 手続き . 調査における倫理事項を遵守しながら半構造化面接を行った。インタビューはハン. ディレコーダーを使って録音し,録音については調査協力者の同意を得たうえで実施. した。実施時間は 1 名につきおよそ 40 分から 50 分程度であった。 . 調査内容 . 生徒の登校回避感情を推察できた経験ならびに生徒が不登校になる前に登校回避感. 情を推察できなかった経験についての回答を求めた。半構造化面接において,あらか. じめ設定した質問の構成については Table 2 に示すとおりである。 . 協力者 性別 年齢 中学校経験年数 学級担任経験年数. A 男性 30代 12年 11年. B 男性 40代 15年 8年. C 男性 30代 12年 10年. D 男性 50代 35年 29年. E 男性 40代 16年 14年. F 男性 30代 13年 8年. G 女性 40代 25年 15年. H 女性 50代 34年 27年. I 女性 30代 13年 11年. J 女性 50代 27年 17年. 184. Table 2 . インタビューガイドの概略 . インタビューの内容 . 1 自身の学級の生徒の「学校に行きたくない」気持ちを推察できた経験の有無 . 2 1 の生徒の気持ちを推察できたと思われる要因(きっかけや見られた兆候を . 含む) . 3 1 の生徒に対して行った支援 . 4 1 の生徒の不登校の有無 . 5 自身の学級の生徒の「学校に行きたくない」気持ちを不登校になる前に推察で . きなかった経験の有無 . 6 5 の生徒の気持ちが推察できなかったと思われる要因 . 7 5 の生徒の気持ちの推察に必要だったと思われる要因 . 8 5 の生徒に対して行った支援 . 分析方法 . ハンディレコーダーで録音した音声データから逐語録を作成した。その後,大谷 . ( 2008, 2011)の SCAT(Steps for Coding and Theorization)を一部改変した福士・名郷. ( 2011),増永・大谷( 2013)にならい,分析を行った。 . 結 果 と 考 察 . 10 名の調査協力者からは,26 の事例が語られた。これらの事例は,①不登校になる. 前に登校回避感情の推察はできたが,その後不登校になった生徒,②登校回避感情の. 推察ができ,その後も不登校にならなかった生徒,③不登校になる前に登校回避感情. の推察ができず,その後不登校になった生徒に分けられた。 . 以下,①を推察可能・不登校群,②を推察可能・登校群,③を推察不可能・不登校. 群とし,①~③の群ごとに結果を記述することとする。 . 推察可能・不登校群による語りの分析 . 調査協力者の語りは,大きく「不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できた. 要因」「不登校になる前に登校回避感情を推察できた生徒に対して行った支援策」「不. 登校になる前に生徒の登校回避感情を推察でき支援を行った際の省察」の 3 つの視点. で構成されていた。SCAT により抽出されたテーマ・構成概念ならびにカテゴリーは,. Table 3 から Table 5 に示すとおりである。 . 以下に, 3 つの視点ごとに記述されたストーリーラインを示す。また,分析の結果. 得られたカテゴリー間の関連図を Figure 1 に示す。なお,本文中では小カテゴリーを. 【 】,大カテゴリーを《 》で囲んで示す。 . 「不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できた要因」のストーリーライン . 学級担任は,生徒の【無気力】な様子,【表情・態度の変化】などの《視覚的変化》. 185. や【友人トラブルの訴え】【集団からの孤立】【友人付き合いの変化】などの《友人関. 係の変化》を捉えることができれば,不登校になる前に生徒の登校回避感情の推察が. 促されると感じている。また,【複雑な家庭環境】かどうかや【保護者や小学校からの. 情報提供】などの《生徒情報の把握》,【本人の性格特性】や【登校回避行動】の有無. などの《生徒の行動・性格特性》に着目することによっても推察が促されると感じて. いる。さらに,学級担任が生徒の【人間観察】や【本音を打ち明けられる関係】づく. りを日頃から行っていたり,自身の【教育観】を持っていたりすることで《日常的な. 教育実践の成果》が発揮されることも推察を促す要因として捉えている。 . 「不登校になる前に登校回避感情を推察できた生徒に対して行った支援策」のストー. リーライン . 学級担任は,不登校になる前に登校回避感情を推察できた生徒に対して,【初期対応】. 【本人との継続的な接触】【雑談】【調査】などの《直接的な働きかけ》を行ったり,. 【職員間の連携】【専門機関との連携】【家庭との連携】【生徒の協力】などの《周囲と. の連携》を行ったりしている。また,その際に当該生徒に対して【目標設定】をした. り,【支援方針の提案】をしたりして《見通し》を持たせることを大切にしている。 . 「不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察でき支援を行った際の省察」のストー. リーライン . 学級担任は,不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察し支援を行った経験を振. り返り,【生徒に対する推察の難しさ】や【保護者連携の難しさ】があったという《学. 級担任の限界》を感じている。一方で,【教員の油断】があったことや【周囲からの援. 助】に助けられたことを感じている場合もある。 . Table 3 . 不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できた要因の概念化 . 大カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念. 無気力 無気力による集中力の低下,学力不振によるモチベーションの低. 下 表情・態度の変化 暗い表情に対する違和感,担任との心理的距離の拡大. 友人トラブルの訴え 長期休業中のクラスメイトとのいざこざ,同級生のからかいに対. する被害の訴え 集団からの孤立 強い同調圧力による排除傾向,学級集団からの孤立. 友人付き合いの変化 親密だった友人との離別、友人の不登校の後追いの疑い. 複雑な家庭環境 親子関係への違和感,子どもに無関心な家庭の認識. 保護者や小学校からの情報. 提供 保護者との密な情報共有,家庭環境の把握による観察強化. 本人の性格特性 怠学傾向の疑い,自己主張の苦手さ. 登校回避行動 欠席行動の多さ,不定期な登校回避行動の表出. 人間観察 日常生活の中での小さな変化に対する着目,休憩時間中の学級内 の人間関係の観察. 本音を打ち明けられる関係 日記というツールを活用した密な対話,本音を吐露できる関係性 の構築. 教育観 生徒像に対する疑いの目,他者受容を重んじる教育観. 視覚的変化. 生徒情報の把握. 友人関係の変化. 生徒の行動・. 性格特性. 日常的な教育実践. の成果. 186. Table 4. 不登校になる前に登校回避感情を推察できた生徒に対して行った支援策の概念化 . Table 5 . 不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察でき支援を行った際の省察の概念化 . 大カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念 初期対応 「気になる子」としての声かけ,注意深い経過観察. 本人との継続的な接触 定期的な交流,コミュニケーションの継続. 雑談 学校以外の話題によるコミュニケーション,たわいない雑談によ るコミュニケーションの機会確保. 調査 トラブルに対する事実確認,教員主体の事情聴取. 職員間の連携 対話と学習を主軸にした校内支援,職員間での情報共有. 専門機関との連携 福祉行政機関の介入,外部支援機関との連携によるコーディネー ション. 家庭との連携 家庭連絡による保護者との対話,家庭―学校間の関係強化. 生徒の協力 友人を活用したアプローチ,クラスメイトの協力体制. 目標設定 人目につかない時間帯での登校促し,スモールステップを意識し た目標設定. 支援方針の提案 欠席を容認する提案,今後の支援方針の擦り合わせ. 直接的な働きかけ. 周囲との連携. 見通し. 大カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念. 生徒に対する推察の難しさ 生徒の本心が理解できない心苦しさ,聞き役しかできなかったこ. とへの無念. 保護者連携の難しさ 無関心な保護者との連携の希薄化,物理的な距離による状況把握. の難しさ. 教員の油断 現状と過去の相違による高括り,不十分な支援に対する後悔 周囲からの援助 思いやりのある学級,保護者との信頼関係の維持. 学級担任の限界. 187. 推察可能・不登校群の生徒に対する登校回避感情の推察の促進要因 . SCAT による語りの分析から,不登校になる前に学級担任が生徒の登校回避感情を. 推察できる要因は,《視覚的変化》《友人関係の変化》《生徒情報の把握》《生徒の行動・. 性格特性》《日常的な教育実践の成果》という 5 つのカテゴリーから構成されることが. 明らかとなった。すなわち,これらの 5 つのカテゴリーが不登校になる前の生徒の登. 校回避感情を推察する促進要因を表している可能性が示唆された。 . 《視覚的変化》では,生徒の【無気力】な様子や【表情・態度の変化】を学級担任. が捉えることで,登校回避感情の推察が促される可能性が示された。これは,文部科. 学省( 2010)の述べる児童生徒の不適応問題を早期に発見するための視点の一つであ. る「態度・行動面の変化」と概ね類似していると考えられる。伊藤( 2009)も述べて. いるように,「子どもの初期値(一人ひとりの通常の状態)」からのずれを学級担任が. 注意深く感じ取ることによって,生徒が不登校になる前に登校回避感情を推察するこ. とができる可能性が本研究から示唆された。 . 《友人関係の変化》では,【友人トラブルの訴え】を聞いたり,【集団からの孤立】. 【友人付き合いの変化】が見られたりした際に登校回避感情の推察が促される可能性. が示唆された。文部科学省( 2014)によれば,中学生の不登校のきっかけの半数以上. が「友人との関係」を挙げている。このことから,友人関係の変化を学級担任が敏感. に感じ取ることによって,生徒が不登校になる前に登校回避感情を推察することがで. きる可能性が本研究から示唆された。 . 《生徒情報の把握》では,【複雑な家庭環境】に関する情報を聞いたり,【保護者や. 小学校からの情報提供】が得られたりした際に登校回避感情の推察が促される可能性. が示唆された。つまり,学級担任の耳に入る生徒情報の豊かさによって,生徒が不登. 校になる前に登校回避感情を推察することができる可能性が本研究から示唆された。 . 客観的事実に基づく《生徒情報の把握》からの推察や,《視覚的変化》《友人関係の. 変化》といった外面的な変容からの推察に加え,【本人の性格特性】や【登校回避行動】. といった《生徒の行動・性格特性》からも登校回避感情の推察が促される可能性が示. 唆された。この推察では,石隈他( 2004)の述べる,心理面のアセスメントを行って. いる可能性が考えられる。彼らは,子どもの情緒の状況や考え方の特徴,言語の特徴,. 行動の特徴など,子ども自身の心のありようについての情報を集め,検討する意義を. 述べており,そのようなアセスメントが登校回避感情の推察を促した可能性が考えら. れる。 . 《日常的な教育実践の成果》では,学級担任が日頃から【人間観察】を行ったり【本. 音を打ち明けられる関係】に努めたり,【教育観】を持っていることによって登校回避. 感情の推察が促される可能性が示唆された。吉井( 2017)は,不登校の未然防止とし. て取り組むべきことは,たとえ問題が顕在化していなくとも,まず日常の教育活動そ. のものであると指摘している。学級担任が自身の学級経営の中で生徒を気にかけたり,. 交流を図ったりすることが登校回避感情の推察を促す可能性が本研究から示唆された。. 推察可能・不登校群の生徒に対する学級担任の支援策 . SCAT による語りの分析から,不登校になる前に登校回避感情を推察できた生徒に. 対して学級担任が行う支援策は,《直接的な働きかけ》《周囲との連携》《見通し》とい. 188. う 3 つのカテゴリーから構成されることが明らかとなった。 . 《直接的な働きかけ》には,声かけや観察などの【初期対応】や家庭訪問などの【本. 人との継続的な接触】,コミュニケーションを図る【雑談】,トラブル等の事実確認を. 行う【調査】という 4 つのカテゴリーが見出された。これらのカテゴリーは,生徒本. 人に直接働きかけを行うことで,生徒の反応の感触を掴み,以降の支援に活かしてい. くというアセスメントの側面を含んでいる(安達 , 2009)ことが考えられる。生徒の. 反応から仮説を組み立て,アセスメントと援助を両立しながら支援を行っている可能. 性が本研究から示唆された。 . 《周囲との連携》には,【職員間の連携】【専門機関との連携】【家庭との連携】【生. 徒の協力】という 4 つのカテゴリーが見出された。「チーム学校」の考え方の普及に伴. い,学級担任が生徒を一人で抱え込まずにチームで対応することによって,多面的な. アセスメントと多様な資源の発見・活用が可能となり,個々の負担軽減と安定的・継. 続的援助が可能になることが既に多くの知見や実践事例で示されており(石隈他 , . 2004),このような連携や協働が学校現場でも実践されやすくなってきていることが本. 研究から示唆された。 . また,【目標設定】や【支援方針の提案】を行い,生徒や保護者などの意思を聞き取. り尊重しながら《見通し》を立てる手立てが見出された。これらのカテゴリーは,石. 隈他( 2004)が述べる「コンサルテーション」の役割を担っている可能性が考えられ. る。コンサルテーションとは,「異なる専門性を持つ複数の者が,援助の対象の問題状. 況について検討し,よりよい援助のあり方について話し合うプロセス(作戦会議)」(石. 隈他 , 2004)である。 . 《直接的な働きかけ》が生徒に直接支援を行うのに対して,《周囲との連携》や《見. 通し》は間接的に支援を行い,生徒を取り巻く環境に対して働きかけを行っているこ. とが考えられる。このような直接的あるいは間接的な支援を通して,登校回避感情が. 推察された生徒に対する支援を学級担任が行っていることが本研究から示唆された。 . 推察可能・不登校群の生徒の登校回避感情を推察し支援を行った際の省察 . SCAT による語りの分析から,不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察し支援. を行った経験を通して得られた省察は,《学級担任の限界》【教員の油断】【周囲からの. 援助】という 3 つのカテゴリーから構成されることが明らかとなった。 . 《学級担任の限界》には,【生徒に対する推察の難しさ】と【保護者連携の難しさ】. という 2 つのカテゴリーが見出された。不登校になる前に生徒の登校回避感情が推察. できたとはいえ,実際には不登校が起きているという実状から,これらの事例におい. て推察や保護者との連携の難しさを学級担任が特に感じている可能性が考えられる。. また,【教員の油断】や【周囲からの援助】は,久我( 2010)の示す省察的思考が登校. 回避感情の推察ならびに支援の経験において表れている可能性が考えられる。 . 推察可能・登校群による語りの分析 . 調査協力者の語りは,大きく「登校群の生徒の登校回避感情を推察できた要因」「登. 校回避感情を推察できた登校群の生徒に対して行った支援策」「登校群の生徒の登校回. 避感情を推察でき支援を行った際の省察」の 3 つの視点で構成されていた。 SCAT に. より抽出されたテーマ・構成概念ならびにカテゴリーは Table 6 から Table 8 に示すと. 189. おりである。 . 以下に, 3 つの視点ごとに記述されたストーリーラインを示す。また,分析の結果. 得られたカテゴリー間の関連図を Figure 2 に示す。なお,本文中では小カテゴリーを. 【 】,中カテゴリーを〔 〕,大カテゴリーを《 》で囲んで示す。 . 「登校群の生徒の登校回避感情を推察できた要因」のストーリーライン . 学級担任は,【本人からの SOS】【保護者からの SOS】【生徒指導】など《 SOS の把. 握》ができること,【友人関係の変化】【モチベーションの低下】【本人の行動傾向】な. どの《生徒の様相》が捉えられること,【教員としての自負】や【教員の経験】などの. 《教員の特性》があることによって,登校回避感情の推察が促されると感じている。 . 「登校回避感情を推察できた登校群の生徒に対して行った支援策」のストーリーライン . 学級担任は,登校回避感情を推察できた登校群の生徒に対して,【周囲からの情報収. 集】や【適材適所のチーム支援】などの《チーム学校》の精神に則り,【学級づくり】. や【モチベーション向上活動】などによって《環境の調整》を図っている。また,【声. かけ】【傾聴】【信頼関係の構築】などの〔コミュニケーション〕や【ペースに合わせ. た助言】を行い,積極的な《関係構築》をめざして支援を行っている。 . 「登校群の生徒の登校回避感情を推察でき支援を行った際の省察」のストーリーライン . 学級担任は,登校群の生徒の登校回避感情を推察し支援を行う際,【初期の推察のし. づらさ】を感じていた。しかし,一連の省察の過程で,《経験から得た学び》を感じて. いる。例えば,【働きかけの意義】や【推察の意義】を見出すことができ,〔実践意義. の実感〕を持つようになる。ただ,自身が支援を行うことで発生しうる【デメリット. の自覚】や【情報に呑まれない】ようにする必要性も感じており,支援が生徒にどの. ように作用するか【予測不能】であるという思いから,〔正解のない支援〕であること. の難しさを感じている。 . Table 6 . 登校群の生徒の登校回避感情を推察できた要因の概念化 . 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念 本人からのSOS 自己開示による本音の吐露,悩みや相談の自己表現,. 保護者からのSOS 保護者からの訴えによる間接的な感情把握,被害者意識を伴う保 護者からの相談. 生徒指導 発見を与えてくれる生徒指導の手応え,和やかな生徒指導場面の 設定. 友人関係の変化 周囲との心理的距離の拡大,希薄な友人関係からの見取り モチベーションの低下 雰囲気や言葉数の顕著なギャップ,無気力感を彷彿させる言動. 本人の行動傾向 ソーシャルスキル課題の推察,技能教科における授業中の行動観 察. 教員としての自負 事後対応よりも予防を重視する価値観,自身の教育観に基づく努 力. 教員の経験 職務経験から得られたカウンセリングスキル,経験則による生徒 の思いの察知. SOSの把握. 生徒の様相. 教員の特性. 190. Table 7 . 登校回避感情を推察できた登校群の生徒に対して行った支援策の概念化 . Table 8 . 登校群の生徒の登校回避感情を推察でき支援を行った際の省察の概念化 . 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念 学級づくり 要望に応じた学級編成,差別根絶を訴える一斉指導. モチベーション向上活動 自己有用感や被受容感を高めるプログラムの実施,外発的動機づ けを促す学級経営. 周囲からの情報収集 平等性を維持するための情報収集,担外職員との情報共有による 支援の必要性の判断. 適材適所のチーム支援 ファシリテーションの導入,支援の適任者の選定. 声かけ 注意深い観察を伴った声かけ,軽いコミュニケーションによる関 係構築. 傾聴 受容・共感を重視した対話,本人のガス抜き. 信頼関係の構築 気軽に相談できる信頼関係の構築,意思表示を促す積極的なコ ミュニケーション. ペースに合わせた助言 生徒の意思確認,担任の立場での助言. 環境の調整. チーム学校. 関係構築. コミュニケー ション. 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念 働きかけの意義 行動の選択肢を増やすことの意義,能動的な働きかけの必要性. 推察の意義 個々の生徒に対するメンタライジングの重要性,十分な観察によ るトラブル軽減の実感. デメリットの自覚 助言に対する後ろめたさ,自身の支援のデメリットの自覚. 予測不能 ケースバイケースの結果,流動的な感情の受容. 情報に呑まれない 申し送りの過信への警鐘,保護者の話を鵜呑みにした弊害. 初期の推察のしづらさ 本音と建て前の顕著なギャップ,表裏のある生徒像の認識. 正解のない支援. 経験から得た学び. 実践意義の実感. 191. 推察可能・登校群の生徒に対する登校回避感情の推察の促進要因 . SCAT による語りの分析から,登校群の生徒の登校回避感情を学級担任が推察でき. る要因は,《SOS の把握》《生徒の様相》《教員の特性》という 3 つのカテゴリーから. 構成されることが明らかとなった。すなわち,これらの 3 つのカテゴリーが「不登校. のグレーゾーン(森田 , 1991)」と呼ばれる登校群の生徒の登校回避感情を推察する促. 進要因を表している可能性が示唆された。 . 《SOS の把握》では,【本人からの SOS】や【保護者からの SOS】といった SOS を. 受信することで登校回避感情の推察が促される可能性が示された。登校群の生徒の登. 校回避感情は極めて潜在的であり,それを学級担任が正確に推察することは困難であ. る(邑上 , 2015)ため,SOS の発信からの推察が行われやすいことが推測される。ま. た,これらの受動的な情報からの推察に加え,【生徒指導】の場面においても登校回避. 感情の推察が促される可能性が示された。 . 《生徒の様相》では,【友人関係の変化】や【モチベーションの低下】,【本人の行動. 傾向】などの生徒の様相の変化を捉えることで,登校回避感情の推察が促される可能. 性が示された。これらの視点は,文部科学省( 2010)の述べる児童生徒の不適応問題. を早期に発見するための視点である「言動の急変化」「態度・行動面の変化」と概ね類. 似していると考えられる。学校生活の中で捉えられる生徒の行動の変化を受け流さず,. より慎重に注意を向けることが登校回避感情の推察の促進につながる可能性が本研究. から示唆された。 . 《教員の特性》では,教員の価値観や努力に基づく【教員としての自負】や【教員. の経験】そのものが登校回避感情の推察を促す可能性が示された。筒井他( 1998)は,. 不登校の前兆行動を教員が捉える際,経験の程度や関心の度合い,イラショナル・ビ. リーフなどによって個人差が生じることを指摘しており,本研究でも類似した傾向が. 見られたと考えられる。教員の抱く信念やそれまでの経験が登校回避感情の推察の促. 進につながる可能性が本研究から示唆された。 . 推察可能・登校群の生徒に対する学級担任の支援策 . SCAT による語りの分析から,登校回避感情を推察できた登校群の生徒に対して学. 級担任が行う支援策は,《環境の調整》《チーム学校》《関係構築》という 3 つのカテゴ. リーから構成されることが明らかとなった。 . 《環境の調整》には,生徒にとって居心地のよい学級経営をめざす【学級づくり】. や【モチベーション向上活動】という 2 つのカテゴリーが見出された。これらは石隈. 他( 2004)が述べる,一次的援助サービスの延長にある手立てと考えられ,生徒と環. 境の 適合をめざした支援(田上 , 1999)を行うことで学級担任が登校回避感情の緩和. につなげようとしている可能性が本研究から示唆された。 . 《チーム学校》には,生徒の周辺にいる友人や関係職員から生徒に関する情報を得. る【周囲からの情報収集】と支援に適任であると思われる人選を行い,チーム支援を. 行う【適材適所のチーム支援】という 2 つのカテゴリーが見出された。これらの手法. は,学校心理学において拡大援助チームもしくはネットワーク型援助チームとして構. 成されており(石隈他 , 2004),生徒の自助資源と環境における援助資源の双方を活用. し,援助の輪を広げていくことができるという利点を有していると考えられる。 . 192. 《関係構築》には,〔コミュニケーション〕を通して関係構築を図る手立てと,【ペ. ースに合わせた助言】によって関係構築を図る手立てが見出された。生徒との対話的. な関係性の構築がその後の支援を円滑にする(中田 , 2013)ことから,学級担任が個々. の生徒との関係構築を行うことで,登校回避感情の推察をより確実に行おうとしてい. る可能性が本研究から示唆された。 . 推察可能・登校群の生徒の登校回避感情を推察し支援を行った際の省察 . SCAT による語りの分析から,登校群の生徒の登校回避感情を推察し支援を行った. 経験を通して得られた省察は,《経験から得た学び》【初期の推察のしづらさ】という. 2 つのカテゴリーから構成されることが明らかとなった。 . 《経験から得た学び》には,働きかけや推察に対して〔実践意義の実感〕を抱く一. 方で,〔正解のない支援〕という現実にも直面しており,対極する 2 つのカテゴリーが. 見出された。そのため,概念図では〔実践意義の実感〕と〔正解のない支援〕を双方. 向の矢印でつないで表現している。登校群の生徒の登校回避感情を推察できたとはい. え,実際にはそれが正しい推察であったのかどうかは学級担任に判断することはでき. ない。伊藤( 2009)は,不登校生徒への支援において教員が陥りやすい役割葛藤とし. て,指導的・管理的立場と受容的・共感的立場の二重性を指摘している。学級担任が. 登校回避感情の推察・支援を行う一連の経験を通して,役割葛藤を感じている可能性. が本研究から示唆された。 . 【初期の推察のしづらさ】という思いが見出されたことから,森田( 1991)の指摘. した「不登校のグレーゾーン」に該当する生徒たちの登校回避感情を学級担任が推察. することの難しさが本研究においても示されたと考えられる。また,風間他( 2013). や後藤・廣岡( 2005)の知見と同様に,登校回避という学校に対する否定的な感情は,. 開示抵抗感の高さによって推察が阻まれた可能性も考えられる。 . 推察不可能・不登校群による語りの分析 . 調査協力者の語りは,大きく「不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できな. かった要因」「登校回避感情を推察できず不登校になった生徒に対して行った支援策」. 「不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できず支援を行った際の省察」の 3 つ. の視点で構成されていた。 SCAT により抽出されたテーマ・構成概念ならびにカテゴ. リーは Table 9 から Table 11 に示すとおりである。 . 以下に, 3 つの視点ごとに記述されたストーリーラインを示す。また,分析の結果. 得られたカテゴリー間の関連図を Figure 3 に示す。なお,本文中では小カテゴリーを. 【 】,中カテゴリーを〔 〕,大カテゴリーを《 》で囲んで示す。 . 「不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できなかった要因」のストーリーライ. ン . 学級担任は,【思い込み】や【固定観念】などの《先入観》,【周囲の連携不足】【相. 談できない環境】などの《環境要因》,【生徒の特性】や【兆候の無さ】などによって,. 不登校になる前に生徒の登校回避感情の推察が抑制されると感じている。 . 193. 「登校回避感情を推察できず不登校になった生徒に対して行った支援策」のストーリ. ーライン . 学級担任は,登校回避感情を推察できず不登校になった生徒に対して,【形式的な家. 庭訪問】【共感的な対話】【進路に対する動機づけ】【スモールステップの登校刺激】【一. 緒に楽しむ】ことなどを通じて,《本人への働きかけ》を重視した支援を行う。また,. それと同時に【保護者ケア】【職員間の連携】などの《コーディネーション》を重視し. た支援も行う。 . 「不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できず支援を行った際の省察」のスト. ーリーライン . 学級担任は,不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できなかった原因につい. て【軽視しない捉え】や【広い視野】で関わろうとする〔意識〕に欠けていた点と,. 【かまってあげる】ことや【傾聴】【特別な配慮】などを行ったり【他職員との協働】. を図ったりする《行動》の至らなさがあった点を実感している。しかし,一方では【過. 度な介入のリスク】や【指導者の限界】も感じている。 . また,不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できなかった経験を振り返り,. 《登校回避感情の生起要因》を【教員への帰属】【家庭への帰属】【生徒の特性】のい. ずれかに感じていたり,【周囲からの援助】に助けられたという実感を持っていたりす. る。 . Table 9 . 不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できなかった要因の概念化 . Table 10 . 登校回避感情を推察できず不登校になった生徒に対して行った支援策の概念化 . 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念. 思い込み SOSの見逃し,病欠だという過信. 固定観念 感情を推しはかることへの諦め,新たに形成されるコミュニティ 予測の難しさ. 周囲の連携不足 保護者との意見の不一致,申し送り情報の不足. 相談できない環境 家族への意思表示のなさ,生徒の開示抵抗感による気づきにくさ. 生徒の特性 表情の乏しさによる気づきにくさ,内向的な性格. 兆候の無さ 意欲的で落ち着いた学校生活,普段と変わらない素振り. 先入観. 環境要因. 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念. 形式的な家庭訪問 本人との適度な交流,定期的な家庭訪問. 共感的な対話 対話のための施設訪問,共感的姿勢でのアフターケア. 進路に対する動機づけ 卒後に向けた学習への動機づけ,高校進学の勧め. スモールステップの登校刺 激. 負担感の少ない短時間登校の促し,「タッチ&ゴー」から始める 登校促し. 一緒に楽しむ 趣味の共有による交流,気分転換を図るための外出. 保護者ケア 家庭(保護者)に対するピアサポート,親子関係のストレスによ り生じる関係不和への理解. 職員間の連携 保護者との関係が構築しやすい職員による働きかけ,臨床心理士. によるアセスメント. 本人への働きかけ. コーディネーショ. ン. 194. Table 11 . 不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察できず支援を行った際の省察の概念化 . 推察不可能・不登校群の生徒に対する登校回避感情の推察の抑制要因 . SCAT による語りの分析から,不登校になる前に学級担任が生徒の登校回避感情を. 推察できない要因は,《先入観》《環境要因》【生徒の特性】【兆候の無さ】という 4 つ. のカテゴリーから構成されることが明らかとなった。すなわち,これらの 4 つのカテ. ゴリーが不登校になる前の生徒の登校回避感情を推察する抑制要因を表している可能. 性が示唆された。 . 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念. 軽視しない捉え 登校回避行動に対する疑いの目,SOSに対するメンタライジング. 広い視野 学級外活動への関心,学習以外の学校魅力の発見. かまってあげる 教員主体の積極的な声かけ,「気にかけている」意思表示. 傾聴 個々の生徒との親密な関係構築,被受容感の必要性. 特別な配慮 学級内でのファシリテーターとしての機能,配慮が必要な生徒に. 対する個別支援の充実. 他職員との協働 カウンセラーの活用,チーム支援による協働. 教員への帰属 自分自身への原因帰属,顧問からの一方的な指導. 家庭への帰属 家族との死別による寂しさ,家庭内トラブルへの帰属. 生徒の特性 学習に対する過度な不安,自身の国籍の劣等感から生じる自己嫌. 悪. 周囲からの援助 校外での友人付き合いによる居場所感の獲得,連携を駆使した. チーム支援の定着. 過度な介入のリスク お膳立てに対する自問,生徒同士の関係構築に介入することへの. 疑問. 指導者の限界 指導者として生徒と対話することの難しさ,教育相談の理想と現. 実のギャップ. 登校回避感情の. 生起要因. 意識. 行動. 実践意義の実感. 195. 《先入観》では,学級担任が【思い込み】や【固定観念】を抱くことによって登校. 回避感情の推察が抑制される可能性が示された。寺田( 2010)は,不登校の兆しを教. 員が軽く受け取ることで見過ごすおそれがあることを危惧しているが,実際に学級担. 任が生徒の変化を軽視し,登校回避感情の推察をすすんで行おうとしなければ,その. 兆候を一層捉えにくくなる可能性が本研究から示唆された。 . 《環境要因》では,保護者や教員どうしなどの【周囲との連携不足】や生徒が周囲. の大人に【相談できない環境】であることにより,登校回避感情の推察が抑制される. 可能性が示された。一人だけで行う主観性が強い狭小な推察は,妥当性に欠ける場合. があるが,他者との関わりを通して客観性を高め,深まりを得られるものであると考. えられる。つまり,学級担任が推察を保護者や他の職員等との連携を通して深めよう. としなければ,登校回避感情が推察されにくくなる可能性が本研究から示唆された。 . 【生徒の特性】では,性格特性や行動傾向によって登校回避感情の推察が抑制され. る可能性が示された。内向的で自己表現に乏しい生徒の場合,外向的な生徒と比べ,. 推察の手がかりとなる情報も相対的に少なくなることが考えられる。このような状態. が推察の抑制を生む可能性が本研究から示唆された。 . 【兆候の無さ】では,学校生活の中で特段変化が見られない生徒に対しては登校回. 避感情の推察が抑制される可能性が示された。本間( 2000)は,欠席せずに登校して. いる生徒であっても欠席願望は有しており,近年彼らの学校から離脱する力が学校に. 向かう力に比べ,相対的に大きくなっていることを指摘している。彼の知見からも,. 特段兆候が見られない生徒に対しても登校回避感情の推察を行う必要性がうかがえる。. 推察不可能・不登校群の生徒に対する学級担任の支援策 . SCAT による語りの分析から,登校回避感情を推察できず不登校になった後,生徒. に対して学級担任が行う支援策は,《本人への働きかけ》《コーディネーション》とい. う 2 つのカテゴリーから構成されることが明らかとなった。 . 《本人への働きかけ》には,生徒と会う【形式的な家庭訪問】や共感の姿勢を示し. ながら対話を図る【共感的な対話】,進路を意識させる【進路に対する動機づけ】,無. 理のない範囲での登校を促す【スモールステップの登校刺激】,一緒に楽しめることを. 探して行う【一緒に楽しむ】という 5 つのカテゴリーが見出された。これらの手立て. はいずれも不登校になった後に行われている事後支援である。不登校になる前に登校. 回避感情を推察できなかったとしても,その後の生徒本人への働きかけは必須であり,. 岸田( 2012)の述べる基本的な支援に位置づけられると考えられる。 . 《コーディネーション》には,保護者に対して理解を示し支える【保護者ケア】と. 職員同士の連携を図る【職員間の連携】という 2 つのカテゴリーが見出された。これ. らの手立てを通して,石隈他( 2004)の指摘する,チーム援助の実践を学級担任が積. 極的に取り入れようとしている可能性が考えられる。 . 推察不可能・不登校群の生徒の登校回避感情を推察し支援を行った際の省察 . SCAT による語りの分析から,生徒の登校回避感情を推察し支援を行った経験を通. して得られた省察は,《実践意義の実感》《登校回避感情の生起要因》【周囲からの援助】. 【過度な介入のリスク】【指導者の限界】という 5 つのカテゴリーから構成されること. が明らかとなった。 . 196. 《実践意義の実感》には,【軽視しない捉え】や【広い視野】の必要性を実感してい. る〔意識〕面と,生徒に対して【かまってあげる】ことや【傾聴】することなど【特. 別な配慮】を行う必要性を実感している〔行動〕面のカテゴリーが見出された。 . これらの意義を実感する一方で,学級担任は【過度な介入のリスク】や【指導者の. 限界】を感じているという側面も見出された。これは,学級担任が自身の立場での推. 察を心理教育的援助サービスとして重んじている視点と,自身の解釈と判断だけで生. 徒の支援を行うことに対して警鐘を鳴らしている視点の両者を兼ね備えていると考え. られる。 . 《登校回避感情の生起要因》には,【教員への帰属】【家庭への帰属】【生徒の特性】. という 3 つのカテゴリーが見出された。登校回避感情の生起要因を生徒自身や家庭に. 帰属する傾向のほか,学級担任への帰属傾向も見られる点は,小幡・堀井( 2020)の. 結果と同様であった。また,不登校になる前に登校回避感情を推察できなかったとい. う自責の思いから,このような語りが得られた可能性も考えられる。 . まとめと今後の課題 . 生徒の登校回避感情を推察することはその生徒が不登校になる,ならないにかかわ. らず ,生徒支援の初発対応となる可能性が本研究によって示唆された。これは学校心. 理学の視点に立った際に,登校回避感情に対する推察が一次的援助になりうると考え. られる。保坂( 2002)は,今日の学校教育が従来の「カウンセリング型支援」から「ア. ウトリーチ型支援」に移行していく必要性に言及したうえで,これまで以上に教員が. 積極的に関わりを持ち,生徒の様子に心を傾けて観ること,生徒の声に耳を傾け聴く. ことの重要性を指摘している。上地( 2015)の述べる正確なメンタライジングと豊か. なメンタライジングを学級担任が行うことができるかどうかが,登校回避感情の推察,. さらにその後の支援にも影響をもたらすと考えられる。また,それを実現するヒント. となりうるのが,学校心理学の知見であり,「援助チーム」を構成することで実現する. チーム支援であると考えられる。 . 文部科学省( 2010)は,不登校の未然防止や早期発見,早期対応を進めるうえで学. 級担任の果たすべき役割が大きいことを述べているが,その一方で,学校には一人の. 児童生徒をめぐって様々な教員が多様なかかわりを持ち支えていくことができること. を利点として挙げている。生徒や保護者が自発的に相談に来るのを待つのではなく,. 小さな兆候(サイン)を捉えて事案に応じて適切に対応し,深刻な状態になる前に早. 期に対応することが可能になるのは,学級担任・ホームルーム担任を始め,教育相談. 担当教員,養護教諭,生徒指導主事,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワ. ーカー,管理職,専科教員や授業担当者,部活動の顧問など様々な立場の教職員によ. る連携によるとの見方も示している。 . 生徒の登校回避感情に対して,学級担任が一人だけで行う主観性が強い狭小な推察. は,妥当性に欠ける場合がある。しかし,複数の視点から推察を行い,相互に共有し. 合い客観性を高めることで,不登校の予防的支援が図れる可能性が本研究によって示. 唆された。学級担任による生徒の登校回避感情の推察という行為が今後の教育相談の. 充実ならびに不登校の未然防止の強化に寄与すると考えられる。 . 197. 最後に,今後の課題は以下の 3 点である。 . 1 点目は,調査協力者の特性についての課題である。本研究の調査協力者の特性に. は偏りがあると考えられる。今後は調査協力者を拡大した上で,多様な特性を考慮に. 入れた分析を行い,知見を洗練していく必要があると考えられる。 . 2 点目は,調査方法についての課題である。本研究では,学級担任に過去の実践を. 回想してもらうことでデータ収集を行っている。そのため,生徒が当時実際にどのよ. うに感じていたかを確認するための調査を実施していない。今後は教員だけでなく,. 生徒も対象に入れた分析を行うことで,より推察のメカニズムや適切な支援などを明. 確にできるのではないかと考えられる。 . 3 点目は,登校回避感情の構成概念の捉え方についてである。本研究では先行研究. にならい,登校回避感情を一元的な構成概念から捉えている。しかし,登校回避感情. の構成概念は多元的に捉えられる可能性もあり,それぞれの次元に応じた推察や支援. のあり方を検討することも重要であると考えられる。 . 引 用 文 献 . 安達 英明( 2009).SOS チェックリストを活用した教師の連携 石隈 利紀(監) 水野 治久. 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Table 4  不登校になる前に登校回避感情を推察できた生徒に対して行った支援策の概念化 Table 5  不登校になる前に生徒の登校回避感情を推察でき支援を行った際の省察の概念化大カテゴリー小カテゴリ―代表的なテーマ・構成概念初期対応「気になる子」としての声かけ,注意深い経過観察本人との継続的な接触定期的な交流,コミュニケーションの継続雑談学校以外の話題によるコミュニケーション,たわいない雑談によるコミュニケーションの機会確保調査トラブルに対する事実確認,教員主体の事情聴取職員間の連携対話と学習を主軸に
Table 7 登 校 回 避 感 情 を 推 察 で き た 登 校 群 の 生 徒 に 対 し て 行 っ た 支 援 策 の 概 念 化 Table 8 登 校 群 の 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 で き 支 援 を 行 っ た 際 の 省 察 の 概 念 化大カテゴリー中カテゴリー小カテゴリ―代表的なテーマ・構成概念学級づくり要望に応じた学級編成,差別根絶を訴える一斉指導モチベーション向上活動 自己有用感や被受容感を高めるプログラムの実施,外発的動機づけを促す学級経営周囲からの情
Table 11 不 登 校 に な る 前 に 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 で き ず 支 援 を 行 っ た 際 の 省 察 の 概 念 化 推 察 不 可 能 ・ 不 登 校 群 の 生 徒 に 対 す る 登 校 回 避 感 情 の 推 察 の 抑 制 要 因 SCAT に よ る 語 り の 分 析 か ら , 不 登 校 に な る 前 に 学 級 担 任 が 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 で き な い 要 因 は ,《 先 入 観 》《 環 境 要 因

参照

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