不登校傾向の各水準における教師のソーシャルサポートと中学生の学習意欲の関連
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(2) 不登校傾向の各水準における教師のソーシャルサポートと 中学生の学習意欲の関連 日野 英里*・本田 真大**. The Relationship between Social Supports from Teachers and Junior High School Students’ Motivation to Learn by the Level of Tendency toward Non-Attendance at School. 要 約 本研究の目的は不登校傾向の各水準における教師のソーシャルサポートと中学生の学習意欲の関連を, 不登校傾向の水準ごとに検討することである。中学生506名のデータを用いて,不登校傾向の水準別に 学習意欲と教師の学習面のソーシャルサポートの関連を検討した。本研究の結果より,教師の実行され たサポートと生徒の学習意欲の関連は,不登校傾向低群の生徒に対しては有意な正の関連を示したもの の,その関連は弱かった。また,不登校傾向高群の生徒に対しては有意な関連は認められなかった。本 研究の結果から,生徒の学習面の援助ニーズに対する教師のソーシャルサポートの効果が考察された。. 問題と目的. 2017)。さらに不登校生徒の支援では,再登校す るという結果のみを目標にせず,主体的に進路を. 今日の学校現場において,不登校生徒数は依然. 選択し社会的に自立していくことをめざす一方で,. として高水準で推移している。不登校の中学生が. 学習の遅れへの配慮や進路選択上の不利益につい. 学校を休み始めたきっかけや継続理由には,人間. て留意する必要性があるとされる(文部科学省,. 関係の悩みや勉強がわからないことなどがある. 2019)。以上より,不登校状態にある中学生の学. (文部科学省,2006) 。また文部科学省(2016). 習面の援助ニーズを満たすことは重要な課題であ. によれば,不登校の状態は生徒の成長過程や周囲. ると言えよう。. からの関わりにより変化していくため,支援方法. さらに,不登校状態に陥ってから支援を開始す. が多岐にわたるが,不登校期間における学習の遅. るのではなく,不登校傾向を早期に発見し支援を. れを同時に改善することが必要であると指摘され. 開始することが望ましいであろう。そこで本研究. ている。. では,不登校の前駆的状態である不登校傾向(五. 学習支援は不登校経験者が当時受けたかった支. 十嵐・萩原,2002)と学習面の援助ニーズについ. 援であり(文部科学省,2006) ,不登校状態にあ. て検討する。不登校傾向と学習面の要因の関連を. る子どもに多様で適切な学習活動の機会を十分に. 検討した研究は少ないものの,例えば,学校生活. 確 保 す る こ と が 不 可 欠 で あ る( 文 部 科 学 省,. スキル(飯田・石隈,2002)の下位尺度である「自. *. Eri HINO:北海道公立学校スクールカウンセラー. **. Masahiro HONDA:北海道教育大学函館校. キーワード:不登校傾向,学習意欲,ソーシャルサポート. 51.
(3) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). 己学習スキル」は小学生,中学生の不登校傾向と. 行うソーシャルサポートの尺度を作成し,これら. 関連することが示されている(五十嵐,2011a) 。. の3つの下位尺度が得られている。本尺度は学習. また,五十嵐・萩原(2009)は中学生の一年間の. 面に特化したサポートを測定する尺度ではなく,. 不登校傾向の変化と学級適応感の関連を検討し,. 知覚されたサポートではなく実行されたサポート. 学年当初の不登校傾向と学習意欲の間に負の関連. を測定するものである。本研究では教師が行う具. があること,学年末には「遊び・非行に関連する. 体的なソーシャルサポートと生徒の学習意欲の関. 不登校傾向」と「在宅を希望する不登校傾向」は. 連を検討することとし,細田・田嶌(2009)の尺. 学習意欲と負の関連にあることを示している。本. 度を用いることとする。. 研究では学習面の要因の中でも,学習面の問題状. 以上より,本研究では不登校傾向の各水準にお. 況によりよく取り組むために重要と思われる学習. ける教師のソーシャルサポートと中学生の学習意. 意欲に焦点を当てて検討する。. 欲の関連を検討することを目的とする。. 不登校傾向のある生徒に対する教師の指導・援. 方 法. 助を考えるにあたって,本研究ではソーシャルサ ポートの概念から検討する。小学生の不登校傾向 と知覚されたサポートの関連(五十嵐,2009) ,. 1.調査対象者. 小学生,中学生の一年間にわたる不登校傾向と知. 北海道の公立中学校5校に通う中1~3年生. 覚されたサポートの関連(五十嵐,2011)など,. 543名(1年生男子149名,女子143名,2年生男. 不登校傾向と教師のソーシャルサポートに関する. 子65名,女子52名,3年生男子71名,女子63名). 研究は散見される。また,ソーシャルサポートと. を対象とした。. 学習面の要因に関する研究には中山(1995)があ る。中山 (1995) は中学生を対象に父親, 母親, きょ. 2.調査時期. うだい,先生,友人,塾の先生からの知覚された. 2016年6月~7月に実施した。. サポートと学習統制感の関連を検討し,きょうだ い,先生,友人,塾の先生からの知覚されたサポー. 3.質問紙の構成. トが学習統制感と正の関連にあることを明らかに. 各学級で学級担任が学級活動等の時間等を用い. している。しかし,教師のソーシャルサポートと. て一斉に実施し,その場で回答・回収された。学. 学習面の要因の関連が不登校傾向の程度によって. 級担任には調査の手続きを書いた資料を渡し,そ. 異なるかどうかを検討した研究はほとんど見られ. れに沿った説明をするように依頼した。フェイス. ない。. シートで学年,年齢,性別が尋ねられ,続いて以. ところで,ソーシャルサポートの具体的な内容. 下の項目への回答が求められた。. はいくつか種類に分類される。浦(1992)はソー. ⑴ 学習意欲尺度. シャルサポートの種類を「何らかのストレスに苦. 佐々木(2015)の学校適応感尺度の下位尺度の. しむ人にそのストレスを解決するために必要な資. 「学習への意欲」(「勉強に積極的である」など). 源や情報を提供するなどの働きかけ」である道具. を用いた。5項目4件法(「1:全然あてはまら. 的サポート, 「ストレスに苦しむ人の傷ついた自. ない」~「4:よくあてはまる」)で回答が求め. 尊心や情緒に働きかけて自ら積極的に問題解決に. られた。. 当たれるような状態に戻すような働きかけ」であ. ⑵ 教師のソーシャルサポート尺度. る情緒的サポート,そして, 「内発的な満足を満. 細田・田嶌(2009)のソーシャルサポート尺度. たすための相互作用」を意味する共行動的サポー. の中から教師をサポート源とする尺度を用いた。. トに分類している。これらの中で,川原(1994). 尺度使用にあたり,教師と中学生の関係で考えに. は共行動的サポートは楽しみを共有する点で子ど. くい「一緒に遊びに出かけたりする」という項目. もにとって重要であると述べている。 また, 細田・. は削除した。「共行動的サポート」(「なんとなく. 田嶌(2009)は父親,母親,同性の親友,教師が. 一緒にいてくれる」など), 「道具的サポート」 (「何 52.
(4) 不登校傾向の各水準における教師のソーシャルサポートと中学生の学習意欲の関連. か困っているときにアドバイスをくれる」など) , 3年生男子66名,女子63名)を分析対象とした。 「情緒的サポート」 ( 「あなたの良いところをほめ てくれる」など)の3つの下位尺度から構成され, 1.各尺度の記述統計量 14項目5件法( 「1:まったくない」~「5:よ. 先行研究をもとに下位尺度を構成しα 係数を算. くある」 )で回答が求められた。 ⑶ 不登校傾向尺度. 出した(Table 1) 。その結果, 「在宅を希望する 不登校傾向」のみα =.50と低かったが,五十嵐・. 五十嵐・萩原(2004)の中学生用不登校傾向尺. 萩原(2004)においてもα =.57であったため,. 度を用いた。 「別室登校を希望する不登校傾向」. 本研究でも先行研究と同程度の内的整合性がある. (「学校に行っても, 保健室や相談室で過ごしたい」. と判断し,分析に使用した。. など) , 「遊び・非行に関連する不登校傾向」 ( 「学 校へ行ったり家にいたりするより,それ以外の場. 2.不登校傾向と学習意欲との関連の検討. 所で友達とずっと遊んでいたい」など) , 「精神・. 各不登校傾向得点のM±1/2SDを基準にして3. 身体症状を伴う不登校傾向」 ( 「少しのことで気分. 群(低群,中群,高群)に分類した。不登校傾向. が落ち込み,学校に行くのがつらい」など) , 「在. を独立変数とし学習意欲を従属変数とする一要因. 宅を希望する不登校傾向」 ( 「学校に行かず,家で. 分散分析を行った。その結果,すべての不登校傾. ゲームをしてすごせたらと思う」など)の4因子. 向において,不登校傾向低群は学習意欲が最も高. 構造であり,13項目4件法( 「1:あてはまらな. いことが示された(Table 2)。. い」~「4:あてはまる」 )で回答が求められた。 3.不登校傾向ごとの教師のソーシャルサポート 4.倫理的配慮. と学習意欲の関連の検討. 質問紙のフェイスシートに,倫理的配慮として. 各不登校傾向の3群ごとに学習意欲と教師の. 質問すべてに対して拒否権があること,拒否して. ソーシャルサポートの関連を検討した。. も不利益がないことを明記した。また,質問紙調. ⑴ 各 不 登 校 傾 向 低 群 に お け る 変 数 間 の 関 連. 査は無記名で実施された。. (Table 3) 別室登校を希望する不登校傾向低群では,学習. 結 果. 意欲は共行動的サポート(r=.22, p<.01),情緒 的サポート(r=.21, p<.01)との間に有意な正の 単相関係数が認められた。遊び・非行に関連する. 欠損値のあるデータを除いた506名(1年生男. 子132名,女子136名,2年生男子61名,女子48名, 不登校傾向低群では,学習意欲と情緒的サポート Table 1 分析に用いる変数の記述統計量(N=506) 学習意欲. M. SD. 得点範囲. α. 2.69. .64. 1-4. .83. 教師サポート 共行動サポート. 3.42. .86. 1-5. .76. 道具的サポート. 3.69. .78. 1-5. .82. 情緒的サポート. 3.31. .95. 1-5. .86. 不登校傾向 別室登校を希望する不登校傾向. 1.44. .68. 1-4. .82. 遊び非行に関連する不登校傾向. 2.04. .69. 1-4. .67. 精神・身体症状を伴う不登校傾向. 1.81. .67. 1-4. .67. 在宅を希望する不登校傾向. 2.13. .85. 1-4. .50. 53.
(5) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度) Table 2 不登校傾向の各群における学習意欲 尺 度. 低群. 中群. 高群. F. 別室登校を希望する. n. 281. 109. 116. 22.43**. 不登校傾向. M. 2.84. 2.63. 2.39. 高群 < 中群 < 低群. 遊び・非行に関連する 不登校傾向 精神・身体症状を伴う 不登校傾向. SD. .61. .60. .63. n. 156. 200. 150. 23.35** 高群 < 中群 < 低群. M. 2.91. 2.71. 2.43. SD. .62. .57. .66. n. 152. 218. 136. 23.52**. M. 2.97. 2.60. 2.52. 高群 < 低群,中群 < 低群. SD. .63. .60. .61. 在宅を希望する. n. 192. 196. 118. 38.97**. 不登校傾向. M. 2.93. 2.68. 2.32. 高群 < 中群 < 低群. SD. .59. .57. .66 **p<.01.. に有意な正の単相関係数が見られた(r=.23, p. 遊び・非行と関連する不登校傾向中群における情. <.01)。精神・身体症状を伴う不登校傾向低群で. 緒的サポートと学習意欲,精神・身体症状を伴う. は,学習意欲と共行動的サポート(r=.24, p<.01) , 不登校傾向中群の共行動的サポート,道具的サ 道具的サポート(r=.22, p<.01) ,情緒的サポー. ポートと学習意欲,在宅を希望する不登校傾向中. ト(r=.23, p<.01)との間に有意な正の単相関係. 群における情緒的サポートと学習意欲の間は有意. 数があることが示された。しかし,いずれも弱い. ではあったがほとんど関連は見られなかった。. 関連であった。. ⑶ 各 不 登 校 傾 向 高 群 に お け る 変 数 間 の 関 連 (Table 5). 別室を希望する不登校傾向低群における道具的 サポートと学習意欲,遊び・非行に関連する不登. いずれの不登校傾向の高群においても各サポー. 校傾向低群における共行動的サポート,道具的サ. トと学習意欲の間に有意な関連は見られなかった。. ポートと学習意欲,在宅を希望する不登校傾向低. 考 察. 群における道具的サポート,情緒的サポートと学 習意欲の間は有意であったがほとんど関連は見ら れなかった。. 本研究の目的は不登校傾向の各水準における教. ⑵ 各 不 登 校 傾 向 中 群 に お け る 変 数 間 の 関 連. 師のソーシャルサポートと中学生の学習意欲の関. (Table 4). 連を検討することであった。. 別室登校を希望する不登校傾向中群では学習意 欲と各サポートの間に有意な単相関係数は見られ. 1.不登校傾向と学習意欲の関連. なかった。遊び・非行に関連する不登校傾向中群. 不登校傾向が高いと学習意欲が低いという結果. では学習意欲と共行動的サポートに有意な正の単. は五十嵐・萩原(2009)と一致している。不登校. 相関係数があった(r=.20, p<.01) 。精神・身体. の中学生が学校を休み始めたきっかけや継続理由. 症状を伴う不登校傾向中群では学習意欲と情緒的. の一つに学習面の援助ニーズが挙げられている. サポートの間に有意な正の単相関係数が認められ. (文部科学省,2006)。そして,不登校傾向の高. た(r=.23, p<.01) 。在宅を希望する不登校傾向. い生徒は自己学習スキルが低い(五十嵐,2011a). 中群では学習意欲と共行動的サポートに有意な正. 上に,援助に対する肯定感が低いことから(五十. の単相関係数があることが明らかになった(r. 嵐・萩原,2002),学習面の援助ニーズに対して. =.21, p<.01) 。しかし,いずれも弱い関連であり,. 自ら解決することが難しくても援助を求めないた. 54.
(6) 不登校傾向の各水準における教師のソーシャルサポートと中学生の学習意欲の関連 Table 3 ソーシャルサポートと学習意欲の関連(不登校傾向低群) 学習意欲 別室登校. 遊び・非行. 精神・身体. 在宅希望. n=281. n=156. n=152. n=192. 共行動的サポート. .22**. .19*. .24**. .14. 道具的サポート. .15*. .18*. .22**. .15*. 情緒的サポート. .21**. .23**. .23**. .17* *p<.05, **p<.01.. Table 4 ソーシャルサポートと学習意欲の関連(不登校傾向中群) 学習意欲 別室登校. 遊び・非行. 精神・身体. 在宅希望. n=109. n=200. n=218. n=196. 共行動的サポート. .04. .20**. .16*. .21**. 道具的サポート. .17. .12. .18**. .10. 情緒的サポート. .14. .17*. .23**. .15* *p<.05, **p<.01.. Table 5 ソーシャルサポートと学習意欲の関連(不登校傾向高群) 学習意欲 別室登校. 遊び・非行. 精神・身体. 在宅希望. n=116. n=150. n=136. n=118. 共行動的サポート. .02. .08. -.01. -.04. 道具的サポート. .13. .14. .05. .01. 情緒的サポート. .07. .14. .04. .07. 注)表中の「別室登校」は「別室登校を希望する不登校傾向」 , 「遊び・非行」は「遊び・非行に 関連する不登校傾向」,「精神・身体」は「精神・身体症状を伴う不登校傾向」 , 「在宅希望」は 「在宅を希望する不登校傾向」を示した。. 種類よりも教師によってサポートが実行されるこ. めに問題状況が改善しにくいと推察される。. と自体が学習意欲の向上に寄与する可能性がある。 2.不登校傾向ごとの教師のソーシャルサポート. ⑵ 不登校傾向中群における各変数の関連. と学習意欲の関連. 遊び・非行に関連する不登校傾向と在宅を希望. ⑴ 不登校傾向低群における各変数の関連. する不登校傾向中群において,教師の共行動的サ. 不登校傾向の種類にかかわらず,教師のソー. ポートと生徒の学習意欲の間に弱いながらも正の. シャルサポートが学習意欲と正の関連があること. 関連が見られた。遊び・非行に関連する不登校傾. が示された。中山(1995)は教師の知覚されたサ. 向と在宅を希望する不登校傾向はどちらも教師と. ポートと生徒の学習統制感の関連を示しており,. の関係と負の関連にあるものの(五十嵐・萩原,. 本研究の結果では教師による実行されたサポート. 2009),そのような教師が行う「内発的な満足を. と生徒の学習意欲の関連が明らかにされた。つま. 満たすための相互作用」である共行動的サポート. り,教師によるソーシャルサポートは生徒の学習. (浦,1992)は肯定的に受け止められることで,. 面の自助資源を強める効果があると示唆される。. 学習意欲が高まる可能性が考えられる。. さらに本研究の結果から,ソーシャルサポートの. 精神・身体症状を伴う不登校傾向中群では,教 55.
(7) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). 師の情緒的サポートが生徒の学習意欲と正の関連. 待できる。不登校傾向が低い状態の時は教師の. にあった。精神・身体症状を伴う不登校傾向は従. ソーシャルサポートは種類によらず生徒の学習意. 来の不登校の神経症タイプに近い状態であると考. 欲の向上に効果的である可能性がある。また,精. えられており(五十嵐・萩原,2004) ,生徒の学. 神・身体症状を伴う不登校傾向が中程度に高い生. 習面に限らず様々な援助ニーズに応えるために,. 徒には情緒的サポート,遊び・非行に関連する不. 情緒的サポートが特に重要であると考えられる。. 登校傾向や在宅を希望する不登校傾向が中程度に. ⑶ 不登校傾向高群における各変数の関連. 高い生徒には共行動的サポートが学習意欲の向上. 不登校傾向の高群では,教師のソーシャルサ. に有効かもしれない。しかし,不登校傾向が強く. ポートと生徒の学習意欲の間に有意な関連は認め. なった生徒に対しては,教師のソーシャルサポー. られなかった。不登校傾向の種類によらず関連が. トは学習意欲の向上に寄与しない可能性がある。. 認められなかった理由として以下の2点が考えら. もちろん,不登校傾向が高い生徒に対しては学習. れる。第一に,不登校傾向の高群は自己肯定感が. 意欲以外の様々な側面からアセスメントし援助. 低く(粕谷・河村,2004) , 被援助性志向が低い (五. ニーズを把握することが必要となろう。ただし,. 十嵐・萩原,2002)と考えられるため,与えられ. 本研究では変数間の因果関係を検討していないた. たソーシャルサポートの満足量や知覚量が低い可. め,これらの実践への提言はあくまで可能性の範. 能性(浦,1992;細田・田嶌;2009) ,すなわち. 囲にとどまる点に留意すべきである。. 高ストレス下においては有効なはずのサポートが 無効状態となっている可能性(嶋,1992)が考え. 4.本研究の限界と今後の課題. られる。言い換えれば,不登校傾向の高群の生徒 は教師が行うソーシャルサポートをサポートとし. 本研究の限界と課題として以下の三点が挙げら れる。第一に,在宅を希望する不登校傾向のα 係. て知覚しにくいために学習意欲との関連が見られ. 数が低かったため,本研究の結果の中で当該尺度. なくなっていると思われる。. に関する結果は慎重に扱う必要がある。第二に,. 第二に,これまでの先行研究から不登校傾向高. 教師のソーシャルサポートと生徒の学習意欲との. 群の生徒は不安が高く安心感を求めている(五十. 関連は全体的に弱く,限定的であった。本研究で. 嵐・萩原,2004) 。また学習意欲が低く (五十嵐・. は学習面への直接的な指導・援助ではなく,教師. 萩原,2009) , 学習に関するスキルも低いため(五. が日常的に行うソーシャルサポートを採用したた. 十嵐,2011a) ,学習に自信を失っている状態にあ. めに学習意欲との関連が見られにくかったと思わ. ると想像される。そうであれば,本研究で検討し. れる。今後は学習面への直接的な指導・援助と学. たソーシャルサポートは安心感や不安,抑うつ症. 習意欲の関連を検討したり,教師の様々なソー. 状の低減の方に機能しており,学習意欲の向上に. シャルサポートが不登校傾向の高い生徒の学習意. はより直接的な学習面のサポートが有効であるか. 欲以外の側面(不安,抑うつ症状など)とはどの. もしれない。本研究では学習意欲の点から教師が. ような関連があるのかを検討したりすることが課. 行うソーシャルサポートの効果を検討したため,. 題である。第三に,本研究では教師のソーシャル. 学習意欲以外の側面への効果を検討することは今. サポートと生徒の学習意欲の因果関係は検討して. 後の課題である。. いない。実証に基づく不登校支援を考える上では 両者の因果関係を検討することが今後の課題であ. 3.実践への提言. る。. 本研究の結果を実践に活かす方法について述べ. 引用文献. る。まず,中学生の不登校傾向についてアセスメ ントすることで,教師の日常的なソーシャルサ ポート(共行動的サポート,道具的サポート,情. 細田絢・田嶌誠一(2009).中学生におけるソー. 緒的サポート)が生徒の学習意欲の向上につなが. シャルサポートと自他への肯定感に関する研究 . り得る生徒とそうでない生徒を把握することが期. 教育心理学研究,57,309-323. 56.
(8) 不登校傾向の各水準における教師のソーシャルサポートと中学生の学習意欲の関連. 法律 Retrieved from . 五十嵐哲也 (2009) .小中学生の不登校傾向とソー. http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/. シャルサポートとの関連 愛知教育大学保健環 境センター紀要,8 ,3-9.. seitoshidou/1380952.htm(2019年7月1日) 文部科学省(2019) .不登校児童生徒への支援の. 五十嵐哲也(2011a) .中学進学に伴う不登校傾向. 在り方について Retrieved from. の変化と学校生活スキルとの関連 教育心理学. https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/. 研究,59,64-76.. seitoshidou/1422155.htm(2020年6月21日). 五十嵐哲也(2011b) .小中学生の一年間にわた. 中山勘次郎(1995) .中学生におけるソーシャル. る不登校傾向の変化とソーシャルサポートとの 関連 愛知教育大学教育創造開発機構紀要,1 ,. サポートと学習統制感との関連 上越教育大学. 21-28.. 研究紀要,14(2),537-547.. 五十嵐哲也・萩原久子(2002) .中学生における. 佐々木聡・浅川潔司・真田穣人・南雅則(2015) .. 不登校傾向に関する研究(2)――被援助志向性. 中学生の自己愛傾向と学校への適応感との関連 兵庫教育大学教育実践学論集,16,1-9.. との関連―― 日本教育心理学会総会発表論文. 嶋信弘(1992).大学生におけるソーシャルサポー. 集,44,276.. トの日常生活ストレスに対する効果 社会心理. 五十嵐哲也・萩原久子(2004) .中学生の不登校. 学研究,7 (1),45-53.. 傾向と幼少期の父親および母親への愛着との関 連 教育心理学研究,52,264-276.. 浦光博(1992) .支え合う人と人―ソーシャルサ. 五十嵐哲也・萩原久子(2009) .中学生の一学年. ポートの社会心理学 サイエンス社. 間における不登校傾向の変化と学級適応感との. 付 記. 関連 愛知教育大学教育実践総合センター紀要, 12,335-342. 飯田順子・石隈利紀(2002) .中学生の学校生活. 本研究にご協力頂きました調査協力校のみなさ. スキルに関する研究――学校生活スキル尺度. ま,本研究にあたり,ご助言を頂きました森範行. (中学生版)の開発―― 教育心理学研究,. 先生(当時の所属:北海道教育大学)に深謝致し. 50,225-236.. ます。. 粕谷貴志・河村茂雄(2004) .中学生の学校適応 とソーシャル・スキルおよび自尊感情との関連 ――不登校群と一般群の比較―― カウンセリ ング研究,37(2),107-114. 川原誠司(1994).子どもを対象としたソーシャ ルサポート研究の動向 東京大学教育学部紀要, 34,245-253. 文部科学省(2006) .平成18年度不登校実態調査 Retrieved from http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ seitoshidou/1349949.htm(2019年5月6日) 文部科学省(2016).不登校児童生徒への支援に 関する最終報告 Retrieved from http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/ chousa/shotou/108/houkoku/1374848.htm (2019年5月6日) 文部科学省(2017).義務教育の段階における普 通教育に相当する教育の機会の確保等に関する 57.
(9) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). SUMMARY The Relationship between Social Supports from Teachers and Junior High School Students’ Motivation to Learn by the Level of Tendency toward Non-Attendance at School Eri HINO*, Masahiro HONDA** (*Hokkaido public school counselor) (**Department of Education,Hakodate Campus,Hokkaido University of Education). The purpose of this study is to examine the relationships between social supports from teachers and students’ motivation to learn by the level of tendency toward non-attendance at school. The participants were 506 junior high school students. The results suggested that social supports positively correlated to motivation to learning in the low level of tendency toward non-attendance at school, but these correlations were weak. Furthermore, the correlation coefficients between them were not significant in the high level of tendency toward non-attendance at school. The effects of social supports from teachers were discussed.. Key words : tendency toward non-attendance at school, motivation to learn, social support. 58.
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