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中学生の登校回避感情に対する学級担任の推察と支援

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Academic year: 2021

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(1)中学生の登校回避感情に対する学級担任の推察と支援 小幡 緑・堀井 俊章 Homeroom Teachers' Guess and Support for Junior High School Students Who Have Feelings of School Avoidance Midori OBATA and Toshiaki HORII. 問題と目的 中学生における不登校の実態 近 年 , 中 学 生 の 不 登 校 の 問 題 が 深 刻 化 し て い る 。 文 部 科 学 省 ( 2018) は , 不 登 校 を 年 度 間 に 連 続 又 は 断 続 し て 30 日 以 上 欠 席 し ,「 何 ら か の 心 理 的 , 情 緒 的 , 身 体 的 , あ るいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない 状 況 に あ る こ と ( た だ し , 病 気 や 経 済 的 理 由 に よ る も の を 除 く 。)」 と 定 義 し て い る 。 同 調 査 に よ れ ば ,平 成 29 年 度 の 長 期 欠 席 者 の う ち ,不 登 校 を 欠 席 理 由 と す る 中 学 生 は 10 万 8,999 人 に の ぼ り , 割 合 に 換 算 す る と 全 生 徒 数 の 3.25% ( 31 人 に 1 人 ) に あ た る。 一 方 , 日 本 財 団 ( 2018) は , 不 登 校 傾 向 ( 学 校 に 行 っ て い な い 状 態 が 一 定 期 間 あ る ( 30 日 未 満 欠 席 ), 学 校 の 校 門 ・ 保 健 室 ・ 校 長 室 等 に は 行 く が 教 室 に は 行 か な い , 基 本的には教室で過ごすが授業に参加する時間が少ない,基本的には教室で過ごすが皆 とは違うことをしている,基本的には教室で過ごし皆と同じことをしているが心の中 では学校に通いたくない・学校が辛い・嫌だと感じている,といった傾向)を持つ生 徒 の 数 が 全 中 学 生 の 10.2%( 推 計 約 33 万 人 )に 上 る こ と を 明 ら か に し て い る 。こ の よ うに,不登校の兆候をもつ中学生は,文部科学省の調査で明らかになっている以上に 潜在している可能性がある。そのため,学校現場では不登校の兆候に教員が早期に気 づ き ,支 援 を 講 じ る こ と が 求 め ら れ て い る( 文 部 科 学 省 , 2010)。し か し ,筒 井・仙 波・ 大 野 ・ 小 林 ( 1998) や 寺 田 ( 2011) か ら は , 教 員 が 不 登 校 の 兆 候 を 把 握 す る こ と の 困 難さに関して指摘がなされている。 登校回避感情 これまで不登校を引き起こす動機となる感情について様々な研究がなされてきた。 そ れ ら の 中 で ,1990 年 代 初 頭 以 降 に 見 出 さ れ た 代 表 的 な 概 念 の 一 つ に「 登 校 回 避 感 情 」 が あ る 。 登 校 回 避 感 情 は , 森 田 ( 1991) に よ っ て 「 あ ら ゆ る 生 徒 に 見 ら れ る 『 学 校 に 行 く の が 嫌 だ 』 と い う 基 礎 的 な 動 機 感 情 」 と 定 義 さ れ て い る 。 森 田 ( 1991) は , 登 校 回避感情を抱きつつも登校している生徒を「不登校のグレーゾーン」と呼び,彼らの 存在を踏まえたうえで,生徒の行動的側面だけに着目するのではなく,その背景にあ る感情的側面を捉える重要性を指摘している。. 178.

(2) 森 田( 1991)が 登 校 回 避 感 情 を 学 校 に 対 す る「 嫌 悪 感 」と 捉 え た の に 対 し て ,渡 辺・ 小 石 ( 2000) は 登 校 回 避 感 情 を 「 嫌 悪 感 」 と い う 限 局 化 し た 感 情 で 捉 え ず , 広 く 「 不 登校でなくても,学校に行きたくないと思う気持ち」と捉えている。今日,そのよう な包括的な定義のもとで登校回避感情に関する様々な研究が展開され,一定の成果が 得 ら れ て い る 。 そ こ で 本 研 究 に お い て も , 渡 辺 ・ 小 石 ( 2000) の 定 義 を も と に , 登 校 回避感情を「欠席・遅刻・早退などの登校回避行動ならびに不登校の有無にかかわら ず,生徒が『学校に行きたくない』と思う気持ち」と定式化し,扱うものとする。 学校教育における生徒の心情の推察 今日の教員には,子どもたちや保護者に対して共感的に理解を深め,彼らの心的状 態 を 想 像 す る 力 が 求 め ら れ て い る ( 角 田 , 2014)。 こ の よ う に , 相 手 の 心 情 を 感 じ 取 ろ う と す る 行 為 は ,一 般 的 に は「 推 察 」と 呼 ば れ る 。近 年 ,臨 床 心 理 学 の 分 野 に お い て , 推 察 に 類 似 す る 概 念 と し て「 メ ン タ ラ イ ジ ン グ( mentalizing)」が あ り ,注 目 さ れ て い る 。 Allen, Fonagy & Bateman( 2008 狩 野 ・ 上 地 ・ 林 ・ 大 澤 ・ 鈴 木 訳 2014)は , メ ン タ ライジングを「志向的精神状態(たとえばニーズ,欲求,感情,信念,目標,目的, そして理由)の観点から人間の行動を捉え解釈することを可能にする想像的な精神活 動 」 と 定 義 し て い る 。 ま た , 増 田 ・ 田 爪 ( 2018) は , 他 者 理 解 の た め の メ ン タ ラ イ ジ ングを「他者の言動の意味やその背景で起こっている事柄について多面的に想像し理 解 し よ う と す る こ と 」 と 定 義 し て い る 。 さ ら に 上 地 ( 2015) に よ れ ば , メ ン タ ラ イ ジ ングは他者との関係を充実させ,他者との良好な関係を構築する一助になりうると指 摘 し て い る 。 本 研 究 で は , 増 田 ・ 田 爪 ( 2018) の 定 義 を 推 察 の 定 義 と し て 採 用 す る 。 学校心理学と不登校生徒への支援 学 校 心 理 学 と は ,「 学 校 教 育 に お い て 一 人 ひ と り の 子 ど も が 学 習 面 , 心 理 ・ 社 会 面 , 進 路 面 ,健 康 面 な ど に お け る 課 題 の 取 り 組 み の 過 程 で 出 会 う 問 題 状 況 の 解 決 を 援 助 し , 子 ど も の 成 長 を 促 進 す る『 心 理 教 育 的 援 助 サ ー ビ ス 』の 理 論 と 実 践 を 支 え る 学 問 体 系 」 ( 石 隈 , 2016)で あ る 。学 校 心 理 学 の 知 見 は 中 学 校 に お け る 不 登 校 生 徒 へ の 支 援 に 多 く 活 用 さ れ て い る ( 例 . 家 近 ・ 石 隈 , 2003; 石 隈 ・ 家 近 ・ 飯 田 , 2014; 田 上 , 1999; 田 村 ・ 石 隈 , 2003)。 中 で も , 学 級 担 任 は 支 援 の 中 心 的 立 場 を 担 う 重 要 な 役 割 で あ る ( 石 隈 , 1999)。 実 際 に,不登校あるいは不登校傾向の児童生徒への支援に学級担任の存在が必要不可欠で あ る と す る 知 見 が 多 く 報 告 さ れ て い る( 例 . 伊 藤 , 2009;岸 田 , 2010, 2012;久 我 , 2010; 大 石 , 2005)。 そ こ で 本 研 究 に お い て も , 教 員 の 中 で も 特 に 学 級 担 任 と い う 立 場 に 着 目 する。 先行研究における課題 実際の学校現場では,学級担任が生徒の登校回避感情やその発生理由を的確に捉え ることができるとは限らない。事実,学校嫌悪感の高い生徒は,学校嫌悪感の低い生 徒に比べて自己の内面を打ち明けられる友人や先生がいないこと(風間・石村・杉本, 2013 ) や , 中 学 生 は 親 や 教 員 に 対 し て 人 間 関 係 な ど の 深 刻 な 悩 み を 開 示 す る こ と へ の. 抵 抗 感 が 大 き い こ と ( 後 藤 ・ 廣 岡 , 2005; 山 口 ・ 水 野 ・ 石 隈 , 2004 ) が 報 告 さ れ て い る 。. 179.

(3) つまり,教員は生徒の発する言葉だけを頼りにするのではなく,多様な手がかりを通 じて感情を察したり推しはかったりする必要があると考えられる。しかし,学級担任 による登校回避感情の汲み取り方や支援のあり方については未だ明らかになっている とはいえない。 以上のことから,生徒の登校回避感情に対して学級担任がどのような視点から推察 しようとするのか,またその推察を踏まえ,どのような支援を行おうとするのかにつ いて学校心理学の視点から検討し,明らかにすることは,生徒の現状ならびに共感的 理解に重点を置く近年の教育相談,不登校生徒への支援の観点から鑑みても,十分に 意義があると考えられる。 そ こ で 本 研 究 は ,学 級 担 任 が 自 身 の 学 級 の 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を ど の よ う に 推 察 し , どのような支援を行おうとするかについて明らかにすることを目的とする。. 方. 法. 調査協力者 首都圏の国公立中学校 3 校の中学校教員 8 名(男性 5 名・女性 3 名)とした。調査 協 力 者 の 属 性 に つ い て は Table 1 に 示 す と お り で あ る 。な お ,所 属 先 の 管 理 職 な ら び に 調査協力者には調査の趣旨を説明し同意を得ている。 Table 1. 調査協力者の属性. 調査協力者. 性別. 年齢. 中学校勤務年数. 学級担任経験年数. A. 男性. 30 代. 12 年. 10 年. B. 男性. 50 代. 35 年. 26 年. C. 男性. 30 代. 10 年. 9年. D. 女性. 30 代. 9年. 4年. E. 男性. 30 代. 11 年. 10 年. F. 女性. 30 代. 9年. 7年. G. 女性. 50 代. 12 年. 12 年. H. 男性. 40 代. 21 年. 14 年. 調査時期 2017 年 11 月 2 日 か ら 6 日 に か け て , 調 査 を 実 施 し た 。 手続き 調査における倫理事項を遵守しながら半構造化面接を行った。インタビューはハン ディレコーダーを使って録音し,録音については調査協力者の同意を得たうえで実施 し た 。 実 施 時 間 は 1 名 に つ き お よ そ 30 分 か ら 40 分 程 度 で あ っ た 。 調査内容 生徒の登校回避感情を推察し,支援を行った経験についての回答を求めた。半構造. 180.

(4) 化 面 接 に お い て , あ ら か じ め 設 定 し た 質 問 の 構 成 に つ い て は Table 2 に 示 す と お り で ある。 Table 2. インタビューガイドの概略 インタビューの内容. 1 生徒の「学校に行きたくない」気持ちを推察した経験の有無 2 上記の生徒と関わったときの当時の自身の立場 3 上記の生徒の「学校に行きたくない」気持ちを推察した場面やきっかけ 4 上記の生徒に対して行った支援 5 上記の生徒の不登校の有無. 分析方法 ハンディレコーダーで録音した音声データから逐語録を作成した。その逐語録をも と に ,大 谷( 2008, 2011)の SCAT( Steps for Coding and Theorization)を 一 部 改 変 し た 福 士 ・ 名 郷 ( 2011), 増 永 ・ 大 谷 ( 2013) に な ら い , 分 析 を 行 っ た 。 結果と考察 8 名の調査協力者全員が「生徒の登校回避感情を推察した経験がある」と回答し, 語 ら れ た 事 例 は 不 登 校 の 生 徒 と の 関 わ り が 15 事 例 , 不 登 校 で は な い 生 徒 と の 関 わ り が 3 事 例 で あ っ た 。ま た ,語 ら れ た 18 事 例 は す べ て 調 査 協 力 者 が 学 級 担 任 の 立 場 で 自 身の学級に在籍していた生徒と関わった経験であった。このことから,学級担任とい う立場が生徒の登校回避感情を推察しやすい立場にあることが示唆された。 SCAT に よ る 語 り の 分 析 調 査 協 力 者 の 語 り は ,大 き く「 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し た 場 面 や き っ か け 」 「登 校 回 避 感 情 が 推 察 さ れ た 生 徒 に 対 し て 行 っ た 支 援 策 」「 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し 支 援 を 行 っ た 際 の 省 察 」 の 3 つ の 視 点 で 構 成 さ れ て い た 。 SCAT に よ り 抽 出 さ れ た テ ー マ ・ 構 成 概 念 な ら び に カ テ ゴ リ ー は Table 3 か ら Table 5 に 示 す と お り で あ る 。 以 下に,3 つの視点ごとに記述されたストーリーラインを示す。また,分析の結果得ら れ た カ テ ゴ リ ー 間 の 関 連 図 ( 概 念 図 ) を Figure 1 に 示 す 。 な お , 本 文 中 で は 小 カ テ ゴ リーを【. 】, 中 カ テ ゴ リ ー を 〔. 〕, 大 カ テ ゴ リ ー を 《. 》で囲んで示す。. 「生徒の登校回避感情を推察した場面やきっかけ」のストーリーライン 学級担任は, 《生徒情報の獲得》 《行動》 《コミュニティの変化》 《学校不適応》 《パー ソナリティ》 《 教 員 の 直 感 》の い ず れ か ,も し く は 複 数 の 視 点 を 駆 使 し て 生 徒 の 登 校 回 避感情を推察している。 《 生 徒 情 報 の 獲 得 》で は , 【本人からの訴え】 【第三者からの情報】 【 過 去 の 状 況 】な ど を 手 が か り に 推 察 を 行 う 。 こ の よ う な 客 観 的 事 実 か ら だ け で な く ,【 不 登 校 】【 登 校 回 避 行 動 】【 問 題 行 動 】 な ど の 〔 回 避 行 動 〕 や 【 暴 力 行 為 】【 被 暴 力 行 為 】 な ど の 〔 暴 力 行 為 〕と い っ た《 行 動 》に 着 目 し た り , 【友人関係の変化】 【友人とのトラブル】 【友. 181.

(5) 人づくり】などの〔友人関係〕や【環境の変化】といった《コミュニティの変化》に 着目したりして,生徒の登校回避感情を推察することもある。 ま た ,こ れ ら の 外 面 的 な 変 容 に 加 え , 【学習に対する無気力感】 【学校不適応感】 【学 校 不 適 応 感 の 表 出 】な ど の《 学 校 不 適 応 》を 疑 っ た り , 【生徒の特性】 【生徒の価値観】 などの《パーソナリティ》に着目したりして,内面的な変容を推しはかって登校回避 感 情 を 推 察 す る 場 合 や ,【 心 情 の 推 察 】【 ト ラ ウ マ 】 な ど 《 教 員 の 直 感 》 を 働 か せ て 推 察する場合がある。 「登校回避感情が推察された生徒に対して行った支援策」のストーリーライン 学 級 担 任 は , 登 校 回 避 感 情 が 推 察 さ れ た 生 徒 に 対 し て ,【 家 庭 訪 問 】【 保 護 者 と の 連 携】 【問題解決】 【登校促し】 【 干 渉 】な ど を 中 心 に 行 う〔 積 極 的 介 入 〕の 姿 勢 で 支 援 に 臨むか, 【観察】 【登校抑制】 【 干 渉 し す ぎ な い 】な ど の〔 注 視 的 態 度 〕の 姿 勢 で 支 援 に 臨むか, 《 ス タ ン ス の 決 定 》を し た う え で 支 援 策 を 組 み 立 て る 。例 え ば , 《環境づくり》 を重視する支援では, 【担任と生徒との関わり】 【教員同士の関わり】 【生徒と専門機関 と の 関 わ り 】【 教 員 と 生 徒 と の 関 わ り 】【 教 員 と 専 門 機 関 と の 関 わ り 】 な ど の 〔 チ ー ム 学 校 〕づ く り を 行 っ た り , 【 担 任 の 受 容 的 態 度 】で【 個 人 の 安 心 で き る 場 】を 提 供 し【 学 級 所 属 感 】を 高 め る な ど の〔 安 心 で き る 環 境 〕づ く り を 行 っ た り す る 。 《 関 係 強 化 》を 重 視 す る 支 援 で は ,【 生 徒 と の 信 頼 関 係 】【 保 護 者 と の 信 頼 関 係 】 な ど の 〔 信 頼 関 係 〕 の 構 築 を め ざ し ,【 対 話 の 習 慣 化 】【 学 校 と は 無 関 係 な 会 話 】 な ど の 〔 対 話 〕 を 中 心 に 働 き か け を 行 う 。 学 習 の ニ ー ズ が あ っ た 際 に は ,【 教 科 学 習 】【 進 路 学 習 】 な ど の 〔 学 習支援〕や【対人関係づくり】を図る《個別支援》を行う。また,生徒のペースを尊 重して【スモールステップ】の支援を行う場合もある。 「生徒の登校回避感情を推察し支援を行った際の省察」のストーリーライン 学 級 担 任 は ,生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し 支 援 を 行 っ た 経 験 を 振 り 返 り , 【ビジョン】 を 持 っ て 支 援 に あ た り た い と 思 う 一 方 で ,【 揺 ら ぎ ・ 迷 い 】 や 【 困 り 感 】 な ど を 持 ち , 拮抗する《学級担任としての思い》の中で対応にあたっていたと感じている。これら の 思 い は ,【 生 徒 へ の 帰 属 】【 自 分 へ の 帰 属 】 と い っ た 《 登 校 回 避 感 情 の 生 起 要 因 》 や 【子ども時代の経験】などに影響される。 ま た ,【 友 人 サ ポ ー ト 】【 保 護 者 サ ポ ー ト 】 な ど の 〔 支 援 の 強 み 〕 と な り う る 要 因 の 有 無 , 逆 に 【 友 人 の 非 サ ポ ー ト 】【 保 護 者 の 非 サ ポ ー ト 】【 問 題 行 動 】【 力 量 不 足 】【 連 携不足】などの〔支援の足枷〕となりうる要因の有無を《支援に与える影響》として 振り返っている。 こ れ ら の 経 験 が ,自 身 の【 経 験 値 】を 増 や し , 【 チ ー ム 支 援 の 重 要 性 】に 気 づ か せ て くれたことや,時には【想定外の肯定的変化】が起こりうるといった《教員としての 学び》を与えてくれたと実感している。. 182.

(6) Table 3 大カテゴリー. 生徒の登校回避感情を推察した場面やきっかけの概念化. 中カテゴリー. 小カテゴリ― 本人からの訴え. 生徒情報の獲得. 第三者からの情報. 過去の状況. 不登校. 回避行動. 行動. 登校回避行動. 問題行動. 暴力行為 暴力行為 被暴力行為. 友人関係の変化. 友人関係. 友人とのトラブル. コミュニティの 変化 友人づくり. 環境の変化. 学習に対する無気力感. 学校不適応. 学校不適応感. 学校不適応感の表出. 生徒の特性 パーソナリティ 生徒の価値観. 心情の推察 教員の直感 トラウマ. 代表的なテーマ・構成概念ならびにテクスト例 登校意義の喪失感の訴え 例:休む理由としては「学校に行く意味が感じられなくなっ た」みたいな感じでいうような。 保護者や小学校からの心配の声 例:親御さんとか小学校の先生とかから「ちょっと無理し ちゃうことがある子なんです」って聞いて気持ちを知ったこ とがありました。 不登校歴の把握 例:(小学生の時の)休みがかなり多くて,年間3分の2くら いは休んでるような子でしたねー。 長期欠席の膠着状態 例:結論から言うと,初日に来て,その後は(学校に)来れ なかった。 登校行動の波 例:そうですねー…1年生の途中から(学校に)来たり来な かったりがあってー。 見ず知らずの人との外泊行為 例:休んで,都心に泊りに行っちゃう…ネットで知り合った 人と。 家庭内での暴力的な振舞い 例:もう入学式の前から「入学式に出たくない」って言っ て,家で暴れていたんです。 不自然な外傷の発見 例:あのー…ちょっとあざができてる子がいて…「どうした の?」っていう風に(聞いた)。 友人との疎遠化 例:(友人と)距離を置いた状況で…「仲直りー」って「ま た仲良くしよう」っていうまではいかなかったんで。 食い違いによる友人関係のもつれ 例:ちょっとやっぱり気の強いようなことを言う子なんです けど,変なことじゃなく,正しいことだったりを強く言った りするんだけど,それでちょっと(友達と)うまくいかなく なって。 良好な友人関係維持の困難さ 例:合う友達とは一緒にいるけど,合わない友達とは一切関 わらない。で,合う友達とも時々トラブって…それが原因で 少し休みが続いちゃったりなんてこともありました。 小中移行期における中1ギャップ 例:「中学校で(やっていく)自信がない」っていうこと で。 学習に対するモチベーションの低さ 例:元々,勉強好きじゃなかった子だったんで,それも嫌に なったっていうのもあったし,やっぱ目的がないっていうこ とだったんで。 学校に対する不満の蓄積 例:転校する前の学校では,かなり嫌な思いを学校側から (受けた)。何かこういい印象を持ってなくて,学校側に。 学校不信感による投げやりな態度 例:転入してきたけど,最初から「私たちのこと,特に心配 とかしてくれないと思うし」とか,「前の学校ではああだっ た,こうだった」とか(言われた)。 ソーシャルスキル課題 例:人間関係がうまく作れないっていうことを自覚している 子で,最初から。 嫌悪の対象からの回避傾向 例:嫌な日は来ない。嫌な授業のある日は来ない。嫌な先生 のいる時は来ない。 気だるい表情や雰囲気からの心情の読み取り 例:一番最初はやっぱり学校いても元気がないし,面白くな いとかつまんないとかって(見えて)。すごく明るい子なん だけど,それが目に見えてこうちょっとだらーんとして。 先輩に対するトラウマ 例:「先輩と会うのが怖い」っていうことですよね。. 183.

(7) Table 4 大カテゴリー. 登校回避感情が推察された生徒に対して行った支援策の概念化. 中カテゴリー. 小カテゴリ― 家庭訪問. 保護者との連携. 問題解決. 暴力行為の制止 例:結構ね,手も出ちゃうんで,間にがっと入らなきゃいけ ないような(状況だった)。女の子だけど,ガッてしがみつ いて止めたりとかしなきゃいけないようなこともあったん で。. 登校促し. 放課後登校の促し 例:週に1回金曜日に,皆が帰った時間に(本人が)家族と一 緒に毎週私のところに(来るという取り組みをした)。本当 は(私が本人の家に)行けば良かったんですけど,来るって ことで,学校に毎週来る…(学校から)離れないっていうこ とで。. 積極的介入. スタンスの決定. 代表的なテーマ・構成概念ならびにテクスト例 積極的な家庭訪問の実施 例:結構行ってましたねー。毎日…ほぼ毎日(家庭訪問に) 行ってたかなぁ。 保護者のガス抜き相手 例:親(との対応)もね,ほとんど(自分は)聞き役に徹し てたのよね。話を聞いてあげてたら,何かだんだんスッキリ してきたっていうのもあるのかもしれない。. 不登校理由の執拗な追及 例:とにかく本人に「何で来たくないんだ?」っていうこと をひたすら聞いたんですよ。 生徒指導対象としての注意深い観察 例:予兆はメイクがきっかけで気づいて,(自分は)気を付 観察 けるようになって。 心身を休める時間の設定 例:「じゃあ(学校を)休もうか?」って,お母さんと 登校抑制 ちょっとオフの時間を逆に入れたりして。 過干渉にならない関係維持 例:あんまり「学校来い」「学校来い」ってやるのも負担か 干渉しすぎない なーと思って(やらなかった)。 日常生活場面でのさりげない声かけ 例:お昼とか休み時間とかよく子どもたちとおしゃべりする んですけど,そういったのを見て「どうした?」とか「元気 担任と生徒との関わり ないじゃん?」みたいな感じで話しかけたりはしてました ね。最初。 チームとしての職員間の連携 例:何かトラブルがあった時に強い指導を生担(生徒指導担 当)がガッと入れて,その後に担任がフォローっていうので 教員同士の関わり 関係崩さずにいったのも,たぶん受験期に勉強に〇〇さんの ことを信頼して勉強するってなったと(思う)。効果があっ たと思う。 福祉施設との連携・協働 生徒と専門機関との関わ 例:教育相談センターと,あと〇〇っていう施設かな?そっ り ち(施設)にも並行して行ってもらって。 担外職員(担任を持っていない教員)との関係構築 例:別室で,支援スタッフさんとか手の空いてる先生と一緒 教員と生徒との関わり に生活を過ごしてたっていう状況ですね。 専門家からの助言 例:1年生の時に(教育相談)センターにもかかっていたん 教員と専門機関との関わ で,センターの方に来ていただいてケース会議みたいなのを り 開いていただいて,今までのセンターとの関わりで,今後の 関わり方についてはアドバイスをもらいましたね。 干渉. 注視的態度. チーム学校. 環境づくり. 担任の受容的態度. 安心できる環境. 個人の安心できる場. 学級所属感. カウンセリングに基づく傾聴の姿勢 例:「こうしなさい」とか指導じゃなくって,全然。「そう ですかー」「そうですかー」みたいな感じで(話を)聞いて たのが良かったのかなぁって。 個別対応の保障 例:学校には来られないんだけど,放課後,週末金曜日だけ (学校に)来たりだとか。テストの時は保健室でやったりだ とか。 学級と「つながっている」感覚 例:やっぱり学校,担任から連絡をすることで「ちゃんとつ ながってるんだよ」とか「心配してるクラスの一人なんだ よ」っていうのは常に感じさせてっていうか。そういう思い で接していました。. 184.

(8) 生徒との信頼関係. 信頼関係 保護者との信頼関係 関係強化. 対話の習慣化 対話 学校とは無関係な会話. 教科学習 学習支援 進路学習 個別支援. 対人関係づくり. スモールステップ. 継続的な関わりを通した自己開示の促し 例:(家庭訪問に)行ってると向こうも心を開いてくれて, 話してくれたり。 相互理解に向けた保護者との信頼関係の構築 例:本人への働きかけも結果としては良かったのかもしれな いし,先に親御さんとちゃんと関係を作っとくっていうか, その小学校の時に持っていた親御さんの不信感を払拭すると か,そういう部分もあっての,そういう提案が受け入れても らえたんじゃないか。やっぱり「うちの子を見放すんです か?」みたいな話になりかねないような部分もあるので,難 しいところだったんですけど,そこは何とかうまくお家の人 が理解してくれました。 対話による意思の尊重 例:ちょっと(本人と)話して,家族とも話して,そうです ね。ちょっとずつ「行きたい」「行きたくない」みたいなや り取りして。「最近どう?」とか聞くと「楽しい」とか, 色々話をして。 学校とは無関係な話題 例:話が上手なわけじゃないんですよ。例えば,好きなゲー ムの話とかそういう話をして。 担当教科での個別の学習支援 例:教室には入れなくても,相談室とかで一緒に勉強したり とか,放課後来て数学だけちょこっと一緒にやるだとか。 進路指導中心の対話 例:あとは「これはやってごらんよー」「これは出しな よー」みたいな。願書をね,公立で出願はして,受験はして いたので,そういうやり取りとかはすごい一生懸命やってま したけど。 小集団でのコミュニケーションの積み重ね 例:わりと部活も文化部で,個人でマイペースに作業するの が許されるし,厳しい指導が入ることもないのでね。そう いった中では,何となく来ておしゃべりして帰るみたいなの が全然許されちゃう関係だったんで。そこでまた同学年の子 とかのつながりも切れずに続けられた部分はありますね。 許容範囲の拡大をめざした目標設定 例:まず学校に来るっていうのは,何も朝の一番最初から最 後までいる必要もないんだし,親御さんとの相談で部活も自 分(が顧問)の部活に入ってもらったので,例えば「授業の 時間に来れないのであれば,部活だけでも遊びに来るような 感じでもいいんじゃないの?」って話をして。はじめは「そ んなことできない」って感じだったんだけど,お家の人も 「それでいいんじゃないの?」って働きかけをしてくれて。. 185.

(9) Table 5 大カテゴリー. 生徒の登校回避感情を推察し支援を行った際の省察の概念化. 中カテゴリー. 小カテゴリ― ビジョン. 学級担任として の思い. 揺らぎ・迷い. 困り感. 友人サポート 支援の強み 保護者サポート. 友人の非サポート 支援に与える影 響 保護者の非サポート. 支援の足枷. 問題行動. 力量不足. 連携不足. 生徒への帰属 登校回避感情の 生起要因 自分への帰属. 経験値. 教員としての学 び. チーム支援の重要性. 想定外の肯定的変化. 子ども時代の経験. 代表的なテーマ・構成概念ならびにテクスト例 原因撲滅による解決志向 例:「それ(原因)さえ分かれば何とかするから」と(生徒 に伝えていた)。 「プライバシー保護」と「周囲の理解」との板挟みによる葛 藤 例:こっちは大人だから分かる,事情が分かって何とかして あげたいって思うけど,周りの子にとっては関係ない話じゃ ないですか。その子の家庭(について)なんかもちろん言え ないわけだし。「あの子何でそんなことでいちいち怒ったり 殴ってくる?」とか陰でグチグチ(言われていた)。それこ そ,本当に何とかしたいと思った。 生徒の主張に対する疑問 例:(学校に行く意味がないと)言うは言うんですけど,そ れが本当に思ってることなのかなぁ?って(思って)。それ が本当の理由なのかなぁ?って疑ってしまう部分もあって。 周囲の成長による他者受容の促進 例:それで何となく2年3年って子どもたちも周りの子も大人 になってきて,「あいつあんなの(掲示物)作ってくれたん だー」とか男子とかもパッて切り替えていいこと認めてくれ たりする子も出てくるので,それはいいんですけどね。 学校教育への期待感 例:でもわりと話をする中で,保護者の方はまだ(学校に対 して)期待もしてくれてたみたいで,そこの関係が先にでき てきた感じですかね。 学級集団の社会性の欠如 例:その子だけじゃなくて,周りの子もそういう(辛くあた る,自分勝手な)面があって,うまくいかない部分もあるこ とはあるんですけど。 学校刺激を敬遠する保護者 例:やっぱり親御さんも何度も電話来たりすると「何だ?」 「うざい」みたいな感じになったりとかしたんですけど。 加害者の側面 例:でもその子,結構きつくて他の子にも何かそういうひど いことを,女の子とかに対しても(ひどいことを)言っちゃ う子で…うん。 知識・経験不足による視野の狭さ 例:私の働きかけがまずかったのと,やっぱりその連携の仕 方を私自身が分かってなかった。 チーム支援意識の欠如 例:いろんな切り札を試して,ちゃんと連携して試していけ ば,どっかで引っかかったかもしれないし。 生徒の発達課題への原因帰属 例:お勉強とかすごくできる子なんですけど,ちょっともし かしたら発達的な問題?とか,そういったのもあったのかも しれないんですけど。 自身の集団指導者としての抑圧的態度への帰属 例:まだ関係ができるほどではなかったんですけど,担任で すからもちろん全体に指導する場面とかあるし,そういうと ころで威圧感を感じたりとか,そういうなものなのかなぁっ ていうふうには考えてました。 尊敬するベテラン教員の実践からの学び 例:這い上がりましたねー。素晴らしかったですねー。あれ は勉強になりました。私には全くできるレベルじゃない。 学校以外の社会的・長期的資源の活用 例:やっぱり家族の機能が大事だったり,地域の機能が大事 だったりとか,その子に継続してずーっと関わっていく人た ちの力ってのは大事なんだなーと(思った)。 生徒の努力の成果 例:分かんないもんですね。本人の努力というか…(自分 が)特別なこととかも全然したつもりなかったんで。 担任としてのあり方の根拠となる子ども時代の経験 例:自分が中1の時にやっぱり不登校の子が(自分のクラス に)いて。担任の先生が一生懸命やってたのをよく覚えて て。で,結構皆に働きかけてね。皆で呼びに行くとか(学校 に)来たら「一緒に行こうよ」とか。「おいでよ」って言っ たりとか。で,私がちょうど「その子を呼びに行って」って (担任に)言われて行ったりとか。. 186.

(10) 187.

(11) 中学校の学級担任による生徒の登校回避感情の推察の仕方 SCAT に よ る 語 り の 分 析 か ら , 学 級 担 任 が 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 す る 場 面 や き っかけは, 《生徒情報の獲得》 《行動》 《コミュニティの変化》 《学校不適応》 《パーソナ リティ》 《 教 員 の 直 感 》と い う 6 つ の カ テ ゴ リ ー か ら 構 成 さ れ ,そ の い ず れ か ,も し く は複数の視点を駆使して生徒の登校回避感情を推察していることが明らかとなった。 その際, 《 生 徒 情 報 の 獲 得 》と い う 学 級 担 任 が 受 動 的 に 獲 得 し た 情 報 に 基 づ い て 行 わ れ る推察, 《 行 動 》や《 コ ミ ュ ニ テ ィ の 変 化 》と い っ た 生 徒 の 外 面 的 な 変 容 に 着 目 し て 行 われる推察, 《 学 校 不 適 応 》や《 パ ー ソ ナ リ テ ィ 》と い っ た 内 面 的 な 変 容 に 着 目 し て 行 わ れ る 推 察 の プ ロ セ ス が そ れ ぞ れ 見 出 さ れ た 。そ の た め ,Figure 1 で は《 行 動 》な ら び に《コミュニティの変化》を点線で囲い,外面的な変容への着目という枠組みで表現 し た 。ま た , 《 学 校 不 適 応 》な ら び に《 パ ー ソ ナ リ テ ィ 》を 点 線 で 囲 い ,内 面 的 な 変 容 への着目という枠組みで表現した。 こ れ ら の 視 点 は , 文 部 科 学 省 ( 2010) の 述 べ る , 児 童 生 徒 の 不 適 応 問 題 を 早 期 に 発 見 す る た め の 視 点 と 類 似 し て い る と 考 え ら れ る 。 ま た , Allen et al. ( 2008 狩 野 他 訳 2014) が 指 摘 す る , 外 面 に 焦 点 を 合 わ せ る メ ン タ ラ イ ジ ン グ と 内 面 に 焦 点 を 合 わ せ る メンタライジングが登校回避感情の推察に対して適用される可能性が考えられる。 《行 動》や《コミュニティの変化》からの推察が生徒の外面的な変容に着目しているのに 対し, 《 学 校 不 適 応 》や《 パ ー ソ ナ リ テ ィ 》か ら の 推 察 は 生 徒 の 内 面 的 な 変 容 に 着 目 し て い る 点 に つ い て は , 久 我 ( 2010) の 示 す , 教 員 の 省 察 的 思 考 が 行 動 レ ベ ル か ら 内 面 レベルへと深化していく過程にも類似していることが考えられる。学級担任は,省察 的思考を働かせながら登校回避感情の推察を複数の領域へ広げ,かつ内面へと深めて いくことで,登校回避感情という漠然とした思いの理解を拡張・深化させようとして いる可能性が本研究から示唆された。 一方, 《 教 員 の 直 感 》と い う 直 感 的 な 推 察 も な さ れ る 場 合 が あ る こ と も 示 さ れ た 。こ れ は ,Allen et al.( 2008 狩 野 他 訳 2014)が 指 摘 す る 自 動 的・ 黙 示 的 な メ ン タ ラ イ ジ ン グ の 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 そ の 際 に 直 感 だ け に と ら わ れ る の で は な く , 上 地 ( 2015) が述べているように,客観的事実や外面的な変容を踏まえ,それらを根拠にしながら より正確な推察を図ろうとしていることが考えられる。 登校回避感情が推察された生徒に対して学級担任が行う支援策 SCAT に よ る 語 り の 分 析 か ら , 登 校 回 避 感 情 が 推 察 さ れ た 生 徒 に 対 し て 学 級 担 任 が 行う支援策は, 《スタンスの決定》 《環境づくり》 《関係強化》 《個別支援》 【スモールス テップ】という 5 つのカテゴリーから構成され,そのいずれか,もしくは複数の視点 から手立てが講じられていることが明らかとなった。 《 ス タ ン ス の 決 定 》に は ,学 級 担 任 が 積 極 的 な 関 わ り か ら 支 援 を 進 め よ う と す る〔 積 極的介入〕と,様子を見守ることで支援を進めようとする〔注視的態度〕という対極 の 関 係 に あ る カ テ ゴ リ ー が 見 出 さ れ た 。そ の た め ,Figure 1 で は〔 積 極 的 介 入 〕と〔 注 視的態度〕を双方向の矢印でつないで表現している。 伊 藤 ( 2009) は , カ ウ ン セ リ ン グ マ イ ン ド の 導 入 に よ り 教 員 に も カ ウ ン セ ラ ー 的 役. 188.

(12) 割が求められるようになってきたことで,従来の積極的・指示的な関わりに加え,受 容的・呼応的な関わりも求められていることを述べている。本研究で得られた《スタ ンスの決定》には,その両面の役割姿勢が表れていることが考えられる。 《環境づくり》には,登校回避感情が推察された生徒に対して適切な援助資源を見 出し,その関わりを通して支援を行う〔チーム学校〕と,生徒が安心して過ごせるよ うな居場所を生み出す〔安心できる環境〕という 2 つのカテゴリーが見出された。 〔 チ ー ム 学 校 〕 は , 家 近 ・ 石 隈 ( 2003) が 述 べ る 「 コ ー デ ィ ネ ー シ ョ ン 」 と い う シ ステムの構築と類似していると考えられる。彼らは,学校内外の援助資源を調整しな がらチームを形成し,個別の援助チームおよびシステムレベルで,援助活動を調整す る意義を見出しており,登校回避感情の推察場面においてもそのような手立てが積極 的に講じられていることが本研究から示唆された。 一方, 〔 安 心 で き る 環 境 〕は ,田 上( 1999)の 述 べ る「 子 ど も と 環 境 の 折 り 合 い 」と いう概念に基づく手立てであることが考えられる。彼は,子どもを「個人としての子 ど も 」と 見 る と 同 時 に , 「 環 境( 社 会 )の 中 に い る 子 ど も 」と し て 見 る こ と の 意 義 を 指 摘しており,①子どもが自分にとって意味ある行動ができているか,②楽しい時間を 過ごしているか,③人間関係を持っているか,の 3 つの観点において,不登校の子ど もと環境の適合をめざしていく必要性を述べている。学級担任は登校回避感情が推察 された生徒が安心できる環境づくりを行うことで,学校内における居場所づくりをめ ざしている可能性が本研究から示唆された。 《関係強化》には,生徒や保護者との信頼関係の構築を図る〔信頼関係〕と,生徒 との対話を積極的に図る〔対話〕という 2 つのカテゴリーが見出された。 風 間 他( 2013),後 藤 ・ 廣 岡( 2005)が 指 摘 し て い る よ う に ,教 員 へ の 自 己 開 示 に 抵 抗 感 を 持 つ 生 徒 に 対 し て は ,関 係 構 築 が 最 重 要 課 題 と な る 。生 徒 や 保 護 者 と の〔 対 話 〕 を通して〔信頼関係〕の構築をめざすことで,教員に対する開示抵抗感の緩和に努め ている可能性が本研究から示唆された。 《個別支援》には,生徒の学習課題の達成をめざす〔学習支援〕と対人スキルなど を身につけられるプログラムを行う【対人関係づくり】という 2 つのカテゴリーが見 出された。 石 隈 ( 1999) が 述 べ て い る よ う に , 学 校 生 活 の 大 半 は 授 業 が 占 め て お り , そ の 授 業 が「 楽 し く な い 「 」 分 か ら な い 」と い っ た 気 持 ち が 学 校 生 活 そ の も の の 魅 力 を 失 わ せ る 。 〔学習支援〕を行うことで,学級担任が生徒に達成感を味わわせ,自信を取り戻そう と努めている可能性が本研究から示唆された。 学 校 心 理 学 に お い て ,【 対 人 関 係 づ く り 】 の 技 法 と し て 心 理 教 育 プ ロ グ ラ ム が あ る ( 石 隈 他 , 2014 )。 心 理 教 育 プ ロ グ ラ ム は , 生 徒 た ち に 心 理 的 な ス キ ル ( 傾 聴 ス キ ル , 自己主張スキル,攻撃性対処スキルなどの対人関係スキル)を教授することに焦点を 当てた教育フレームからの広い意味でのカウンセリング・アプローチであり,具体的 な技法にソーシャルスキル・トレーニングや構成的グループエンカウンターなどがあ る。これらのトレーニングによって,学校生活や集団生活の適応感が向上することが 明 ら か と な っ て い る ( 石 隈 他 , 2014)。 こ の よ う な 心 理 教 育 プ ロ グ ラ ム を 学 級 担 任 が 実 施することで,推察された生徒を含む学級集団全体に対して,登校回避感情や学校不. 189.

(13) 適応感を緩和させようと努めている可能性が本研究から示唆された。 《 環 境 づ く り 》 が 石 隈 ( 1999) の 述 べ る す べ て の 生 徒 を 対 象 と し た 一 次 的 援 助 サ ー ビスの延長であると捉えるならば, 《 関 係 強 化 》や《 個 別 支 援 》に 見 ら れ る 支 援 は ,学 校生活に苦戦し始めていたり,既に大きな援助ニーズを抱えていたりする生徒,ある いはその保護者を対象とした二次的・三次的援助サービスの一端を担っていると考え られる。 また, 【 ス モ ー ル ス テ ッ プ 】が 表 す よ う に ,小 さ な 段 階 を 踏 み な が ら ,徐 々 に 目 標 を 達 成 し て い こ う と す る 手 立 て を 含 む カ テ ゴ リ ー が 見 出 さ れ た 。こ の 視 点 も 石 隈( 1999) の 述 べ る 二 次 的・三 次 的 援 助 サ ー ビ ス の 一 端 と し て 捉 え る こ と が で き る と 考 え ら れ る 。 生徒の登校回避感情を推察し支援を行った際の省察 SCAT に よ る 語 り の 分 析 か ら , 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し 支 援 を 行 う 経 験 に お い て得られる省察は, 《学級担任としての思い》 《登校回避感情の生起要因》 《支援に与え る 影 響 》《 教 員 と し て の 学 び 》【 子 ど も 時 代 の 経 験 】 と い う 5 つ の カ テ ゴ リ ー か ら 構 成 されることが明らかとなった。 《学級担任としての思い》には,自身の持つ願いや方向性に準じて支援策を打ち出 そ う と す る 【 ビ ジ ョ ン 】, 支 援 策 の 是 非 に つ い て 悩 み , 葛 藤 す る 【 揺 ら ぎ ・ 迷 い 】, 支 援 の 過 程 で 困 難 を 感 じ る【 困 り 感 】と い う 対 極 の 関 係 に あ る カ テ ゴ リ ー が 見 出 さ れ た 。 そ の た め , Figure 1 で は 【 ビ ジ ョ ン 】 と 【 揺 ら ぎ ・ 迷 い 】【 困 り 感 】 を 双 方 向 の 矢 印 で つないで表現している。 《登校回避感情の生起要因》には,登校回避感情の生起を生徒に帰属する【生徒へ の帰属】と,登校回避感情の生起を自身に帰属する【自分への帰属】という 2 つのカ テ ゴ リ ー が 見 出 さ れ た 。 文 部 科 学 省 ( 2018) で は , 不 登 校 の 原 因 を 教 員 が 生 徒 自 身 や 家庭に帰属しやすい傾向があることが示されているが,本研究では同様の結果が得ら れたと同時に,登校回避感情の生起要因を学級担任自らに帰属することもある可能性 が示唆された。 ま た ,《 登 校 回 避 感 情 の 生 起 要 因 》 や 【 子 ど も 時 代 の 経 験 】 を 踏 ま え て ,《 学 級 担 任 と し て の 思 い 》を 抱 い て い た こ と か ら , 《 登 校 回 避 感 情 の 生 起 要 因 》な ら び に【 子 ど も 時代の経験】が《学級担任としての思い》に影響を与える可能性が本研究から示唆さ れ た 。そ の た め ,Figure 1 で は《 登 校 回 避 感 情 の 生 起 要 因 》な ら び に【 子 ど も 時 代 の 経 験】から《学級担任としての思い》に向け,矢印をつないで表現している。 《支援に与える影響》には,友人や保護者によるサポートに助けられたと実感した 〔支援の強み〕と,友人や保護者からのサポートが得られず,自身の力量や連携意識 が足りなかったと実感した〔支援の足枷〕という対極のカテゴリーが見出された。そ の た め ,Figure 1 で は〔 支 援 の 強 み 〕と〔 支 援 の 足 枷 〕を 双 方 向 の 矢 印 で つ な い で 表 現 している。 岸 田 ( 2012) が 述 べ て い る よ う に , 不 登 校 生 徒 へ の 支 援 に お い て 人 間 関 係 の 調 整 が 行われる割合は高く,支援の基本と位置づけられている。そのため,周囲の人の理解 やサポートが得られるかどうかがその後の省察の視点の一つとなりうる可能性が本研 究から示唆された。. 190.

(14) 《教員としての学び》には,実践経験として蓄積されたと実感している【経験値】 と チ ー ム 支 援 の 重 要 性 を 認 識 し て い る と い う【 チ ー ム 支 援 の 重 要 性 】,時 に 想 定 さ れ な い肯定的変化が起こりうるという【想定外の肯定的変化】という 3 つのカテゴリーが 見 出 さ れ た 。 こ れ ら の 思 い は , 久 我 ( 2010) の 示 す 省 察 的 思 考 に よ っ て , 登 校 回 避 感 情の推察ならびに支援の場面において表れている可能性が考えられる。. 主な結果と今後の課題 SCAT に よ る 語 り の 分 析 か ら , 中 学 校 の 学 級 担 任 が 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し た 経 験 が 大 き く「 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し た 場 面 や き っ か け 」 「登校回避感情が推察 さ れ た 生 徒 に 対 し て 行 っ た 支 援 策 」「 生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し 支 援 を 行 っ た 際 の 省察」の 3 つの視点から構成されていることが明らかとなった。 生徒の登校回避感情を推察する場面では,学級担任が受動的に得られた客観的事実 だけを頼りにするのではなく,学級担任が日々接している生徒の外面的な変容や内面 的 な 変 容 に 着 目 す る こ と で そ の 心 情 を 推 し は か ろ う と し て い る こ と が 示 さ れ た 。ま た , 登校回避感情が推察された生徒に対して行う支援策では,生徒を環境や社会の中で捉 える視点と個人として捉える視点の両者から,手立てを講じていることが示された。 さらに,登校回避感情の推察から支援に至る一連の実践を,当時の学級担任としての 思いや登校回避感情の生起要因,支援に与えた影響,経験から得られた学びといった 視点から省察していることが本研究で示された。 本研究では,登校回避感情が推察された生徒全体を回想の対象とし,登校回避感情 が推察された場面に制限をしなかったため,生徒が不登校になってから登校回避感情 を 推 察 し た 事 例 が 存 在 し た 。 寺 田 ( 2010) は , 生 徒 が 不 登 校 に な る 前 の 潜 伏 期 に , 周 囲の人がその兆候に気づきにくいことを指摘しており,学級担任が登校回避感情の推 察を図る前に不登校になる生徒が一定数存在すると推測される。一方で,生徒が不登 校 に な る 前 に 登 校 回 避 感 情 を 推 察 す る こ と が で き た 事 例 も 存 在 し た 。大 石( 2005)は , 生徒が不登校になる以前の初発段階での対応の重要性を指摘し,この段階における生 徒の心の揺れを学級担任が捉える意義を述べている。すなわち,生徒が不登校になる 前 に 登 校 回 避 感 情 の 推 察 を 図 る こ と が で き れ ば , 大 石 ( 2005) の 述 べ る 初 発 段 階 で の 支援を行い,不登校の未然防止の可能性を高められると考えられる。 また,本研究では不登校の有無によって事例を区分せずに分析を行ったため,不登 校群の生徒と登校群の生徒における登校回避感情の推察ならびに支援の差異について 検討することはできなかった。 以上の課題を踏まえ,今後は不登校になる前に生徒の登校回避感情が推察できた事 例ならびに推察できなかった事例の双方を調査し,生徒の登校回避感情に対する推察 に影響をもたらす諸要因について,より詳細に検討する必要があると考えられる。ま た,生徒の不登校の有無による推察と支援の差異についても検討する必要があると考 えられる。. 191.

(15) 引. 用. 文. 献. Allen, J. G., Fonagy, P., & Bateman, A. W. ( 2008 ). Mentalizing in clinical practice. American Psychiatric Publishing Inc. 狩野 力八郎(監修)上地 雄一郎・林 創・大澤 多 美子・鈴木 康之(訳)(2014). メンタライジングの理論と臨床― 精神分析・愛着理論・発達 精神病理学の統合―. 北大路書房. 福士 元春・名郷 直樹(2011).指導医は医師臨床研修制度と帰属意識のない研修医を受け入れ ら れ て い な い ― 指 導 医 講 習 会 に お け る 指 導 医 の ニ ー ズ 調 査 か ら ― 医 学 教 育 , 42(2), 65–73. 後藤 安代・ 廣岡 秀一( 2005). 中学生が 抱く「 相談する こと に対する 抵 抗感」に つ いての実 態 調 査的研究 三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要, 25, 77–84. 家近 早苗・石隈 利紀(2003). 中学校における援助サービスのコーディネーション委員会に関す る研究― A 中学校の実践を通して― 教育心理学研究, 51, 230–238. 石隈 利紀(1999).学校心理学― 教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育 的援助サービス― 誠信書房 石隈 利紀・家近 早苗・飯田 順子(2014). 学校教育と心理教育的援助サービスの創造 学文社 石隈 利紀(2014).学校心理学とは何か 学校心理学の意義 日本学校心理学会(編) 学校心理 学ハンドブック第 2 版― 「チーム」学校の充実をめざして― (pp. 2-3) 教育出版 伊藤 美奈子 (2009). 不登校― その心もようと支援の実際― 金子書房 角田 豊(2014). 学校教育とコフートの自己心理学― 生徒指導,キャリア教育・進路指導,教育 相談,特別支援教育において児童生徒との関わりと理解を深めるために― 京都教育大学 紀要, 125, 15–29. 上地 雄一郎(2015).メンタライジング・アプローチ入門― 愛着理論を生かす心理療法― 北 大路書房 風間 和・石村 郁夫・杉本 好行(2013).学校嫌悪感の高い中学生における自己開示および対人 ストレスコーピングの特徴 東京成徳大学臨床心理学研究, 13, 17–27. 岸田 幸弘(2010).教師が行う不登校児童生徒への支援― 小中学校教師へのインタビューから ― 昭和女子大学 学苑・初等教育学科紀要, 836, 50–62. 岸田 幸弘(2012).不登校児童生徒への支援に関する教師の意識調査 昭和女子大学 学苑・人 間社会学部紀要, 856, 28–36. 久我 直人(2010).学級経営における教師の『省察的思考』の抽出に関する研究― 臨界事象法 (Critical Incident Method)を用いて― 鳴門教育大学研究紀要, 25, 141–157. 増田 優子・田爪 宏二(2018).教師志望学生のメンタライゼーションと共感性との関係 大阪大学 教育学年報, 23, 29–41. 増永 悦子・大谷 尚(2013). がん患者遺族ボランティアによる語りの分析― 緩和ケア病棟でボ ランティアをする意味の解明― Palliative Care Research, 8(2), 351–360. 文部科学省(2010). 生徒指導提要 教育図書 文 部 科 学 省 ( 2018). 平 成 29 年 度 児 童 生 徒 の 問 題 行 動 ・ 不 登 校 等 生 徒 指 導 上 の 諸 課 題 に 関 す る 調 査 結 果 に つ い て Retrieved from http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou /30/10/1410392.htm(2019 年 9 月 30 日). 192.

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(17)

Table 3  生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し た 場 面 や き っ か け の 概 念 化 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念ならびにテクスト例 本人からの訴え 登校意義の喪失感の訴え 例:休む理由としては「学校に行く意味が感じられなくなっ た」みたいな感じでいうような。 第三者からの情報 保護者や小学校からの心配の声 例:親御さんとか小学校の先生とかから「ちょっと無理し ちゃうことがある子なんです」って聞いて気持ちを知ったこ とがありました。 過去
Table 4  登 校 回 避 感 情 が 推 察 さ れ た 生 徒 に 対 し て 行 っ た 支 援 策 の 概 念 化 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念ならびにテクスト例 家庭訪問 積極的な家庭訪問の実施 例:結構行ってましたねー。毎日…ほぼ毎日(家庭訪問に) 行ってたかなぁ。 保護者との連携 保護者のガス抜き相手 例:親(との対応)もね,ほとんど(自分は)聞き役に徹し てたのよね。話を聞いてあげてたら,何かだんだんスッキリ してきたっていうのもあるのかもしれない
Table 5  生 徒 の 登 校 回 避 感 情 を 推 察 し 支 援 を 行 っ た 際 の 省 察 の 概 念 化 大カテゴリー 中カテゴリー 小カテゴリ― 代表的なテーマ・構成概念ならびにテクスト例 ビジョン 原因撲滅による解決志向 例:「それ(原因)さえ分かれば何とかするから」と(生徒 に伝えていた)。 揺らぎ・迷い 「プライバシー保護」と「周囲の理解」との板挟みによる葛藤例:こっちは大人だから分かる,事情が分かって何とかしてあげたいって思うけど,周りの子にとっては関係ない話じゃ ないですか。

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