博 士 ( 理 学 ) 塩 野 正 道 学 位 論 文 題 名
The characteristic evolution of the centric diatom . the Thalasszoszra ケ ヵ 乞 ぬ group
and the Azpeitia 7zodulifera group , in Neogene sediments
from the northwest Pacific Ocean
( 中心型珪藻 , Thalassiosira trifulta group 及び Azpeitia nodulifera group にみられる北西太平洋における 新第三紀の進化特性)
学位論文内容の要旨
珪 藻 は バ ル ブ(valve) と 呼 ば れ る珪 質 の 細 胞 壁を 有 す る 微 細藻 類 で あ り 、 その ′ ヾ ル ブ の対 称 性 に よ っ て 中 心 珪 藻 類 と 羽 状 珪 藻 類 の2個 の グ ル ー プ に 分 け ら れ る 。 本 研 究 で 対 象 と し た中 心 珪 藻 類 は 浮 遊 性 で あ り 、 海 水 や 汽 水 中 か ら 多 く 出 現 す る 。 珪質 の バ ル ブ は微 化 石 と し て 堆積 物 中 か ら 大 量 に 見 い だ さ れ る こ と か ら 、 様 々 な 応 用 的 な 研 究 に利 用 さ れ て きた 。 例 え ば 、 珪藻 の 進 化 を 利 用 し た 生 層 序 や 、 群 集 解 析 を 用 い た 古 海 洋 環 境 の 復元 な ど で あ る。 こ れ ら の 研 究成 果 は 、 古 海 洋 学 の 発 展 に 非 常 に 大 き な 影 響 を 与 え て い る 。 し かし な が ら 、 珪藻 は 極 め て 多 様化 し て い る た め に 、 群 集 を 利 用 し た 研 究 を 行 い や す ぃ 反 面 、 分 類が 非 常 に 難 しい と ぃ う 問 題 点も あ る 。 特 に 、 化 石 珪 藻 の 分 類 学 的 な 混 乱 が 応 用 的 な 研 究 の 発 展を 阻 害 し て いる 。 ま た 生 層 序学 は 生 物 進 化 を 基 本 に し て い な が ら 、 珪 藻 の 進 化 を 明 ら か に し た 研 究 例 は 少 な ぃ 。 本 研 究 は 、 異 な る 海 洋 水 塊 、 す な わ ち 寒 冷 水 塊 と 温 暖 水 塊 に 各 々 生 息す る 珪 藻 グ ルー プ の 後 期 中 新 世 以 後 の 進 化 を 比 較 す る こ と に よ J、 その 進 化 特 性 を明 ら か に す るこ と を 目 的 と する 。 ま た 、 珪 藻 グ ル ー プ の 進 化 お よ び 多 様 化 と 、 古 海 洋 学 的 な 研究 成 果 と を 比較 す る こ と に より 、 珪 藻 の 進 化 に 対 す る 気 候 変 動 の 影 響 を 考 察 す る 。 研 究 に 用 いた 試 料 は 北 西太 平 洋 と 日 本 海か ら 採 取 さ れ たDSDP Holes 579A、580、581、 お よ びODP Holes 797B、881Bで あ る 。 研 究 対 象とし たThalassiosira trf ful to gr oupとAzpei tia nodu/iferaゲoupは、それぞれ寒冷水塊と温暖 水 塊 の 代 表 的 な 珪 藻 種 群 で あ る 。 こ れ ら の 珪 藻 グ ル ー プ の 詳細 な 進 化 過 程を 明 ら か に す るた め に 主 と し て 電 子 顕 微鏡 下 で 微 細 構 造の 詳 細 な 記 載を 行 っ た 。 また 、F trifulta groupは 生 層序 学 的 に 重 要 な 種 を 含 む こ と か ら 、 こ の グ ル ー プ の 生 存 期 間 を 決定 す る た め に、 補 助 的 な 措 置と し て光学 顕微鏡 下での 計数分 析も 行った 。
Thalassiosira trifultaゲoupを 観 察 し た 結 果 、 こ の 珪 藻 グ ル ー プ は特 徴 的 な2個の 微 細 器 官 で あ るtrifultate fultoportulaとoccluded areolaの 有無 に よ っ て3個 の サ ブ グ ル― プ に 区 分 で
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き ること が明らか になっ た。本 研究で はtrifultate fultoportulaを有 する種 群をFoestru[ii subgroup、occluded ar edaを有する 種群をFbipora subgroup、 その2個 の微細 器官を 持たな い 種群をF frenguelliopsis subgroupとして 定義した 。生存 期間を 観察し た結果 、Ftrifu/ta groupは5.6 Maに 分 化 した 後 、4.8 Maま で に 特 徴的 な 微 細 器官 を 有 す る2個 のサブ グルー プ に 分 化 した こ と が 明ら か になっ た。この 初期の 多様化 の過程 で、生 存期間 が10‑ 20万年 程度 の 移行形 態が出現 した。 その後 、種の 個性化 が進む と同時 に、1.5 Maまでの間に徐々に分類群 の 数を増 やしてき た。F oestrupijは生 層序学的 に重要 な種で ありそ の分岐 年代は5.3 Maとさ れ てぃた が、fultopor tulaの特徴 に基づ く種の 定義の 結果、そ の分岐年代は2.4―2.2 Maであ ることが明らかになった。
occluded areolaは本 研究に よって見 いださ れた微 細構造 であり 、この構造を有する6新種を 記載した。光学顕微鏡下では、occluded areolaはcentral fultoportulaに類似してぃるために、
これらの新種は複数のcentr al fultoportulae゛を有する種として同定されてきた可能性がある。
未 発達なoccluded ar eolaを有 する分 類群を5.1―4.8 Maから記載したが、これらの分類群は変 異 が大き く、観察 した個 体数も 少なぃ ことか ら現在 までに3分類群 が新種 として記 載でき てぃ な ぃ 。 その 生 存 期 間が 非 常に短 い(10―20万年程 度)こ とから 、本研究 ではそ れらの 分類群 を 移行形 態として 定義し た。移 行形態 の電子 顕微鏡 下での 詳細な 記載によ り、5.1―4.8 Maの 間にoccluded areolaがcentr al ar eaのfultoFxコrtulaに近接するar eolaeから進化したことを明 らかにした。trifultatef ultoportulaについても、未分化な状態の構造をFpr eaoestr upiiなど か ら見い だしたこ とから 、その 進化過 程を明 らかにした。未分化なtrifultate fultoportulaは 4.8 Maに 出 現し 、 完 全 なtrifultate fultoportulaは3.4−3.2 Maに 出現 した 。trifultate fultoportulaを 有 す る Foestrupiisubgrouli,i 3.2 Ma以 降 に 多 様 化 し た 。 Azpeitia noculiferaザoupを観察した結果、大型のcentral rimコpor tulaの細胞の外側への開 口 を 有 する2つの 分 類 群を 見いだ した。 これらの 分類群 の中で 、円形 の開ロ を有す る個体 をA ば ぬiliferaf.cyclopusとして同定したが、不定形の開口を有する分類群は未記載の可能性があ る ためにA nodulifera type1と して同 定した。 またAzpeitia noduliferaのrimoportulaに関す る3つの形 質、突 起の長径 、外側 への開 口の長 径、お よびknobの 長径に ついて 電子顕 微鏡下 で 測 定した 結果、こ の種の 鮮新世 の形態 は更新 世の形 態に比 べてよ り大きな変異を有することが 明 らかに なった。 これら の観察 の結果 、この 珪藻グ ループ は4.6―2.4 Maにかけ て、種・ 変種 レベルで多様化し、同じ時期にA. noduliferaの種内変異も増大していたことが明らかになった。
上 述し た2大 珪 藻 グル ープ の進化 あるぃ は多様 化した 時期を比 較する と、5.6−4.7 Maおよ び2.4‑ 1.6 Maに好 寒冷種 群のThalassiosira trifu/拍groupのみが 進化あるぃは多様化してお り 、4.6−2.5 Maでは主として好温暖種群のAzpei tia no〔M/所agroupが進化あるぃは多様化し て ぃたこ とが明ら かであ る。古 海洋学 的な研 究成果 によれ ば、4.4ー2.7Maはその前後の時期 に 比べて 比較的温 暖であ る。こ のこと から、 上述の2大珪藻 グルー プは気 候条件の 良好な とき に進化あるぃは多様化したと考えられる。
本 研 究 は 電 子 顕 微 鏡 下 で 微 細 器 官 の 詳細 な 記 載 を行 う こ と によ り 、 好 寒冷 種 群 で ある 冖1a艪Ssめsケ.a川ん/拍groupが、好温暖種群のA印e/C艪n〇du〃触ragroupよりも寒冷な時期に進 化 ・多様 化してい たこと を明ら かにし 、各々 の珪藻 グル― プにと って環境条件の良好な各々が 時 期 に 進 化 ・ 多 様 化 す る と ぃ う 珪 藻 グ ル ー プ の 進 化 特 性 を 明 ら か に し た 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 小 泉 格 副 査 教 授 岡 田 尚 武 副 査 助 教 授 鈴 木徳行
学位論文題名
The characteristic evolution of the centric diatom , the ヱ 'halasszosira trifulta group and the Azpe カ 励 nodulifera group , in Neogene sediments
from the northwest Pacific Ocean
( 中 心 型 珪 藻 , Thalassiosira trifttlta group 及び Azpeitia nodulifera group に みら れる 北西 太平 洋に おける 新 第三 紀の 進化 特性 )
本 論 文 は 寒 冷水 塊 と 温 暖 水塊 に各 々生 息す るThalassiosiraf ′ ぱuJ 亡a グル ープ と A ゆej ぬn 〇du ヱぬ Ja グ ルー プの500 万 年前 以降 の進 化特性を明らかにするために、北西 太平 洋と 日本 海の 深海 堆積物から検出した珪藻殻の微細構造を主として走査型電子顕微 鏡下 で観 察・ 記載 し、 その多様性と進化様式を解明した後に、進化を引き起こした要因 とし て気 候変 動と の関 連性 を検討 して いる 。ま た、 丁m ん|ぬグループに含まれる生層 序学 的に 重要 な示 準化 石種の生存期間を決定するために光学顕微鏡下で珪藻殻数の計数 分析を行っている。
丁 fmJJ ぬ グ ル ー プ の 観 察 で は 、 本 研 究 に よ っ て 初 め て 見 い 出 し た 微 細 構 造 occuludedareola を 有 す る 6 新 種 を 記 載 ・ 公表 し て い る 。 occuludedareola と 既 知 の tmultatefultoportula という特徴的なニつの微細構造の有無によって、丁艚u |ぬグルー プを 三つ のサ プグ ルー プに 細分・ 定義 して いる ;す なわ ちtmultatefultoportula を有 する種群を丁〇es ぼ蝉)ロサブグループ、occludedare ○la を有する種群をア鰤〇ra サブグ ループ、何れの微細器官も持たない種群を丁加ngue ヱ比)ps おサブグループとしている。
OCCludedare01a はCentr 甜 area のfultoportula に 近接 するareolae か ら5 . 1Ma 〜4 .8 Ma の 期間 に進 化し たこ とを 明らか にし てい る。 また 、未分化なtnfultatefultoportula は4 .8Ma に出現し、3 .4 〜3 .2Ma に完全な構造となり、trifultatefultoportula を有する 丁〇 es ぱ up 口 サプ グル ープ は3 . 2Ma 以 降に 多様 化し た進 化過 程を 明ら かに して いる。
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