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プリン代謝異常症の遺伝子解析

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86 学術情報

艦驕。8欝,評言〕

第1回東京女子医科大学遺伝医学研究会

日 時 1992年7月11日

会場第1臨床講堂

(土)PM 2:00∼5 00

開会挨拶 指定講演  プリン代謝異常の遺伝子解析

 HBV突然変異の臨床的意義

 ミオシン重鎖遺伝子と心臓病 特別講演  赤血球酵素異常による遺伝性溶血性貧血 閉会挨拶        学長 吉岡 守正     座長 (第二解剖学)相川 英三 (膠原病リウマチ痛風センター)鎌谷 直之         (消化器内科)長谷川 潔        (循環器小児科)松岡瑠美子       座長  (小児科)福山 幸夫  本学輸血部客員教授  沖中記念成人病研究所所長  日本人類遺伝学会理事長  三輪 史朗          (小児科)福山 幸夫    世話人代表  (小児科)福山 幸夫    当番幹事  (第二解剖)神田 尚俊          (小児科)斎藤加代子        (循環器小児科)松岡瑠美子        (消化器内科)山内 克己  プリン代謝異常症の遺伝子解析    (膠原病リウマチ痛風センター)鎌谷 直之  プリン体は核酸やヌクレオチドを構成する要素であ り,生体内で情報やエネルギーの担体として重要な役 割を果たす.プリン体はヒト生体内で合成され,その 分解産物は尿酸である.プリン体を合成し,分解する 回路は多くの酵素により触媒されており,それらの酵 素をコードする遺伝子の突然変異により遺伝病が起き る.プリン代謝酵素の遺伝病は痛風精神神経症状, 尿路結石症,先天性免疫不全症など,さまざまな症状 を示す.この内,頻度の高いHPRT(hypoxanthine guanine phosphoribosyltransferase)欠損症, APRT (adenine phosphoribosyltransferase)欠損症について その遺伝子レベルの研究を解説する.  HPRT欠損症は常染色体性劣性の遺伝病である.本 疾患の病因遺伝子は極めて良く解析されており,多数 の突然変異がみつかっている.突然変異の場所はさま ざまであり,一般に家系が違えば突然変異も異なる. 変異の種類は,遺伝子の大きな欠失や異常の見られる 例もあるが殆どは点突然変異である.最も多いのは塩 基置換によるmissense突然変異で,続いてnonsense 突然変異,1個から数個の塩基の挿入や置換による frame−shift突然変異, exon・intron接合部の変異によ るsplicing異常などが続く.精神神経症状を伴わない

HPRT部分欠損症の場合はすべてmissense突然変異

であり,重症のLesch−Nyhan症候群の場合はすべて の種類の変異を含む.HPRT欠損症は世界のどの人種 にもほぼ同じ比率でみられるが,APRT欠損症は人種 間で頻度に差がみられる.本疾患は日本でのみ極めて 多数例が報告されている.即ち世界全報告例156例の 内,日本人は120例である.この差は,ある程度は診断 技術の差によると思われるが,実際の病因遺伝子の頻 度の差も反映していると考えられる.日本人のAPRT 欠損症は以前より,酵素欠損の程度によって,タイプ II(完全欠損症)と,タイプ1または日本人型(部分 欠損症)に分類されていた.このタイプII欠損症はす べて同じ突然変異を持つ、4PRT*ノ対立遺伝子を持っ ていることが分かった.ノ4班丁*ノ対立遺伝子の変異

はコドン136のATG(Met)からACG(Thr)への

missense突然変異で,日本人の一般人口の0.8%にも 一1080一

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分布する遺伝子である.日本人のその他のAPRT欠

損症の病因遺伝子の突然変異も判明しており,完全欠 損をコ「ドする対立遺伝子(null allele, APRT*Qδ) でいちぼん多いのはコドン98のTGG(Trp)からTGA (Stop)へのnonsense突然変異,さらに4塩基の重複,

大きな遺伝子異常と続く.日本人全部のAPRT欠損

症病因遺伝子の約96%はわずか3つの突然変異により 説明される.限られた数の突然変異がほとんどの患者 の突然変異を説明する理由として,①ホットスポット 説,②共通祖先遺伝子説,③病因変異限定説があるが, 病因対立遺伝子のハプロタイプの分析により同じ突然 変異をもつ病因対立遺伝子はすべて同祖的であること がわかっている.日本人以外のAPRT欠損症の数は 少ないが,分析された遺伝子の突然変異はすべて日本 人のものとは異なることがわかっている.従って,3 つの仮説のうち②が正しいことはこの結果からも明ら かである.しかも多くの殴盟7’*ノ対立遺伝子の分析 により,もしそれらがすべて聴手的とすると,遺伝子 内に交叉の証拠が見られ,それらのデータからの計算 により.4迎∼T*ノの年齢は6万年∼9万年と計算され る.遺伝病の遺伝子がこのように長い間集団内に保存 されることは驚くべきである.分かっているほとんど のAPRT突然変異を有した患者や,ヘテロ接合体で は病因突然変異をターゲットにした遺伝子診断が可能 である.しかし,未だ変異が確定していない場合は, ホモ接合体についてはT細胞診断法,ヘテロ接合体に ついては体細胞突然変異法が確実である.

 HBV突然変異の臨床的意義

       (消化器内科).長谷川 潔  B型劇症肝炎(BFH)の成因として,過剰な免疫反 応を中心.とする宿主側の要因Dと,HBs抗原や, HBs 抗原の抗原性の変化,あるいは,ウイルスの複製能の 高進などのウイルス側の要因が挙げられているが,い まだにその本態は不明である.  我々は,イスラエルにおけるBFHの院内感染を調 べたと.ころ,感染した5例全例が劇症化したところが ら,ウイルス側の要因がより重要と考え,このウイル スの分子生物学的な解析を行った.まず,5例のBFH 患者と,感染源の患者のHBVの全塩基配列を解析し た結果,すべてのウイルスは同一の株に由来すること が解った...また,この塩基配列を野性株(WT)と比較 した結果,いくつかの変異が見出されたが,このうち,

HBVのPrgC領域にstop codonを生じさぜるような

変異が注目された2}.この変異により,HBe抗原は産生 されなくなるところがら,HBe抗原自体は肝炎の劇症 化にはかかわっていないものと考えられた..また,.こ のHBe抗原の非産生化は, BFH患者に起こる早期の seroconversionを説明でき,またHBe抗体陽性慢性 活動性肝炎に多く見られることから,この現象が肝炎 劇症化に強く関連していると考えられた.  しかし,その後の我々の研究では,アメリカにおけ る劇症肝炎患者では,必ずしもこの変異を伴わないこ とから3),PreC変異の重要性が,疑問視された.そこ

で,我々はWT HBVDNAにPreCの変異を導入し,

それを肝癌細胞にtransfectして, HBV関連抗原の産 生とウイルスの複製能を調べることにより,PreC変 異の意義について検討した.その結果,PreC変異は, これらの性質についてはWTと.差がなかった.そこで

次に,BFH患者より得たPreC変異を持つHBVを

transfect可能な形に再構築して,同様の実験を行った ところ,WTと比べ, cAgとreplicative intermediate の過剰な産生を認めた.この結果から,勿θ伽。におけ るcAg産生と複製能についてみる限り, PreC以外の 変異が重要であると考えられた.塩基配列解析の結果, WTと比較してアミノ酸の変化を伴う変異は, PreC/ Coreに12ヵ所, Polに15ヵ所, PreS/Sに4ヵ所, Xに 6ヵ所認められた.そこで,これらのうち,cAg産生 とウイルス.複製の高進に寄与する変異を明らかにする

ために,WT HBVDNAと変異ウイルスとのcassette

exchangeを行い,得られたconstructを用いtrans− fection実験を行った.ところ,過剰なウイルス複製に は,PreC, Core,さらにPolの5’側の少なくとも3カ 所の変異の,いずれもが必要であるごとが解った..こ のことから,我々は,mutant constructの複製の高進 には,pregenome RNAのpackagingに原因があると 推測し,現在この点につき検討を加えている. 1)Hasegawa K, Yamaucki K, Furukawa T et a1:  Dual color fluorescence analySis of peripheral T  cell subsets in hepatitis B virus・induced liver  disease. Hepatology 8:1134−1137,1988 2)Liang TJ, Hasegawa K, Rimo鏡Net a1:A  hepatitis B virus mutant associated with an  epidemic of fulminant hepatitis. N Eng J Med  324:1705−1709,1991 3)Hasegawa Kl, Huang J, Wands JR et a璽:  Association of hepatitis B viral recore muta.  tions w三th fu董minanat hepatitis B in Japan.  V董rology 185:460−463,1991 一1081一

参照

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