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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

学 位 論 文 題 名

博士 ( 農学 )   郭    蒙

Study on Impact of Desertification on Greenhouse Gas     Concentrations Using Remote Sensing Technique

(リモ ートセンシ ング手法 を用いた 温室効果ガス濃度に及ぼす砂漠化の影響に      関する 研究)

学位論文内容の要旨

  砂漠化は地球ヒのバイオマス量の減少およぴ生物生産性の悪化を引き起し,グロー/シレに士暖腐随量 を激減させ,物質循環に影響を与えるとともに土壌中の炭素貯留量を著しく減少させる。そのため砂漠 化は世界の食糧安全と環境保全にとって深刻な問題である。また,気候変動も21世紀に重要な課題のー つである。大気中の温室効果ガス濃度の増加が,気候変動の重要要因であることが確認されており,そ の影響を緩和するためには,大気中への温室効果ガスの排出量を削減することが必要である。気候変動 は砂漠化に影響する主要な要因の1っとして認識され,気温降水量,日射、や風速などの空間およU時 間的なパターン変化を通じて砂漠化を進行させる。一方,励璢餅l:はクリアされーおよび牲の枯死によっ てCQが放出され,砂漠化した土地の炭素隔離ポテンシヤルの減少による更に気候変動を悪化させると いう悪循環に陥っている。

本研 究の目 的は, 淵bcDプロ セス, 温室効 果ガス 濃度 の変化 を把握し,それらの関係解明を通じて 砂漠化と温室効果ガス濃度の関係を明らかにすることである。この目的を達成するために,(1)アジア にお ける砂 漠化の 進行 および 現状の 把握,(2)砂 漠化 と温室 効果ガス濃度鯲みの解析,()MODISプ ロ ダ ク ト に 基 づ い たC02濃 度 推 定 の モ デ ン レ イ 匕 に つ い て 研 究 を 行 な っ た 。   1.研究地域として中国東北部に位置する砂漠化が深刻化しているホルチン沙地を選んだ。1977年から 2009年までの人工衛星I.andsat MSS,TMおよてSE'nWデータを用い,エキスパート分類法によって土地破 覆変化を調べた。Tasseled Cap変換(1℃)と正規fぼ直生指数(NDvDに基づき,砂地の分光特陸に応じて,

明 る さ(Brightness)とNDVIの 差(B‑NDヽmを 新た な分 類指標 とし て提案 した。B‐NDWはNDWお よび TCB(Tj職ledCapB迎觚巌みと比較してみると,沙漠化の研究にもっとも適することがわかった。更に,

2009年 の画 像を用 いて, 教師な し分 類くIsODAlA) ,教師 付き分類鰍法)とエキスパート分類法の比 較を行った。その結果は,エキスパート分類法は砂地の分類にもっとも精度が高いことを明らかになった。

また,砂漠化と気候変動の関係解听から,砂漠化の進行には気候要因だけではなく,人間活動も影響して いることが判明した。

  2. GIMMSとMODISからによるNDVIデータを砂漠化指標として,1982年から2011年までのアジア地域に おける 繃ゆ 爿頃向 を評価 した。30年間のNDVIトレンドの時間的・空間的な異質性を解析するために,

各ピク セル のMK傾向 検定(Mann‑KendaJJtd∞) と線形 回帰モデルを用いた。詳細な砂漠化プロセスを 理解す るた めに,1982年〜1994年,1994年〜2噺亀2000年〜2011年と1982年〜2006年のMKの統計くs) とスコ ープ に)お よぴqRモ デル のピアソン相関係数(恥と回帰スロープをそれぞれ算出した。その結 果,1982年から2011年までに砂漠化|瑚辭かな減少傾向にあることが示唆され,今まで発表された研究結 果と異なっていた。そこで,研究対象地域として中国全域を選んで,砂漠化の進行に対する気候因子の影 響を調べたその結果,砂漠化と降水量の間には|對係がなくG〓O.10),温度上昇は砂漠化と負の相関を 示したQ〓m.77)。これらの結果は,アジアにおける砂漠化の時間・空間的変化の知見が得られ,広域気 候システムの秘嬉酊はこ及ぼす影響についての理解を深めた。

3.土地被覆変化は,大気中の温室効果ガスの濃度を変化させることが示唆されている。しかし,広範囲 な温室効果ガスの詳細なデニタが不足しているため,地域規模で土地被覆変化と温室効果ガス濃度の関係

‑ 943−

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に関 する定 量tlt<Jな鰯祈 は行 なわゎ ′て いな1、 。2009年l月23日に日本で打ち上げたGOSAT (Greenhouse gases Observing SATellite)衛 星 は , こ の問 題 を 解 決 す る た めに 十 分 な情 報を 与えて くれ る。本 研究 では, まず GOSAI丶 デ ー タ に よ り2009年4月 か ら2011年l0月 ま で の 東 ア ジ ア におけ る月 平均温 室効 果ガス 濃度 を算出 し た 。 そ の 後 ,GOSATの 温 室 効 果 ガ ス デ ー タ ,MODISのNDVIお よ ひ:EAS‑GloCovロ はK功 の 土 地 被 覆 デ ー タ を用 い , 土 地 被 覆 (農 地 , 森 林 , 灌 木 林, 草 地 と 裸 地 ) と温 室効 果ガス 濃度 の相関 を調 ぺた。 植物 の 生育 期間に ,農 地と潅木木で面積率と00尚隻度には負の相関岱卸.25,Pくo.Olとr 印28,Pく0101),同期間に 森林 ,草地 およ ぴ裸地 では 面積率 とCQ趨 渡に は正の 相関 があっ た鰤 .47, 勾.01,I 037,P印.Olとr司ー4, Pくo.01)。 また, 灌フ 淋と草 地で は面積 率とaもは 負の相 関にm28 Pく0.01とFm30,Pく0101) があり ,そ こは(乳の吸収源として考えられ〜森林と農地はaもと正の相関があることから(F036 Pく0.01と| 0.40,Pく 0101) ,aもの ソー スと考 える ことが でき た。

  4.東 ア ジ ア で 土 地 劣化 が 最 も 深 刻 な 中国 北 部 と モ ン ニ ゴ ンレ 国 を 研 究 対 象 地域 と して 選択し ,EbMSAT SCIAMACHY(Scannむ 培hn画ngAは 坤donSpemome缸fbrAtnl呵 )k血Ch甜 昭apy) と ば )sATTANS0 ぐne珊a】 んldN或 ぱ 尚bredSensorforcamlOぬ 珊 価omに よ り 温 室 効 果 ガ ス 濃 度 デー タ とMODISか ら得 ら れたND` ′Iデ ー タ を 用い て , 季 節 的 な 温室 効 果ガス 濃度 の空間 分布 を解析 した 。通常 クリ ギング 内挿 法を 温室 効 果 ガ ス 濃 度 の空 間 分 布 の マ ッ ピ ング に 使 用 し た 。 また ,NDWデ ー タ を 降 水量 お よび 地表面 温度 (以 下,Umデ ・ ー タと 組 み 合 わ せ て , 温室 効 果 ガ ス 濃 度 の空 間 分 布 解 听 に 使用 し た 。 そ の 結 果 ,土 地 の 劣 化 が温室 効果 ガス濃 度を 増加さ せる 可肯亀 性が 示され た。本研究によって緑缶嘯盡物の光合成:や土壌の呼吸作用 がCQ濃 度 に 影 響を 与 え る 主 要 な 原 因で あ る こ と が 判 明し た 。 更 に , 中 国北 東 部 に お い て は ,水 田 と 湿 地 が(Hの 濃度 を 決 定 す る 上 で最 も 重 要 な 要 素 であ り , な か で も そ こで の 降 水 量 とLSTが 温室 効 果 ガ ス 濃 度 の空間 分布 に影響 を与 えると 考え られた 。

  5. 気 象 現 象で あ る サ ン ド ダ スト ス 卜 ー ム ( 以 下 ,SDS―Sand Dust SWm)は ,環 境 と 人 間 の 健 康 だけ で なく , 大 気 組 成 に も 影響 を 与 え る 。SDSは ,ア ジ ア 特 に 中 国 北部 で , ほ ば 毎 年 発生 し て いる 。しか し, 温 室効 果 ガ ス 濃 度 とSDSの関 係 に 関 す る 研 究 冽は ご く少な い。 本研究 では ,北東 アジ アにお ける2009年と2010 年 の 春 に 発 生 し た4回 のSDSを 抽 出 し , 温 室 効 果 ガ ス 濃 度 に 対 す る 影響 を 調 べ た 。SDSの 移動 ル ー ト を MODISのLIBデ ー タ に よ っ て 追 跡 し ,SDSの 発生 日 お よ ぴ そ の 月 のC02とCH4の 濃 度 平 均 値を 調 べ た 結 果 , SDS発生 日 の そ れ ら が 月の 平 均 よ り も 高 い 値を 持 っ て い た こ とが 分 かっ た(C02濃 度は5.43,1.98,0.14と 3.88ppm,CH4濃度 は0.06,0.02,0.01と0.04ppm,それぞ加アの±曾カ卩冫。更にSDS巻生日前後の濃度変化を解析 したと ころ ,SDSがC02とCH4の濃度 を増 加させ るこ とが明 らか になっ た。

  6. C02濃 度 の デ ー タ は, 通 常 , 地 ヒ 観 測局 や 衛 星から 得ら れる。 しか し,地 ヒ観 測点の 分布 と衛星 デ ー タ の 保 有 年 数 に よっ て , 長 期 間 の 地 域ま た は 地 球 規 模 でのCQ濃 度 変 化を 調 べ る こ と が 困 難に な る 。 本 研 究 で は ,MODIS温 度(MOD11C3), 植 生 指 数(MOD13C2とMOD15A2)と 植 物 生 産 性 デ ー タ (MOD17A2)に 基 づ い たTVP (Temperature,Vegetation and Produc舳)モ デル を地球 規模 でのCて )! 濃度 を 評 価 す る ため に 開 発 し た 。 様々 な 土 地 被 覆 タ イプ を考慮 し, 各々の 大陸 に対応 するTVPモデ ンレ「 ンデ ッ ク ス を 選 択 し た 。GO& 灯1、ANSOか ら 得 られ たC0d農 度 がTVPモ デ ンレ の 精 度 検 証 に 使用 し た 。 そ の 結 果,観 測さ れたC( )2濃 度と比 べて みると ,研 究地域 全体 にわた る濃 度誤差 カ迎 .56〜3.14ppmであるこ と が わ か っ た。TvPモ デ ン レ に は まだ 幾 っ か の 問 題 があ る が , リ モ ー トセ ン シ ン グ 手 法 を用 いたCQ濃度 の 推測に 利用 可能で ある ことが 示さ れた。

  本 研 究 で は , 秘 違 鮒ヒ モ ニ タ リ ン グ のた め の 新 し い 手 法, ま た ,MODISデー タ に よ る 新 た なC02濃 度 推 測モ デ ル を 提 案 し ,土 地 被 覆 タ イ プ と温 室 効 果 ガ ス の 濃 度の 関 係 ,サ ンドダ スト ス卜ー ムの 発生と 温 室 効 果 ガ ス 濃 度 の 関 係 を 明 ら か に し た 。 本 研 究 で 開 発 さ れ た理 論 や 手 法 は , 新 たに 打 ち 上 げ ら れ る OC0‑2,CarbonSatとGOSAT‑2な ど の 新し い 温 室 ガ ス 観 測衛 星 の 運 用 開 始 と相 ま っ て , 更 に 広 い分 野 で 適 用さ れ る こ と が 期 待さ れ る 。

‑ 944一

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学位論 文審査の要旨 主査    准教授    王    秀峰 副 査    教 授    大 崎    満 副査   特任教授   齋藤   裕 副 査    教 授    野 口    伸 副 査    准 教 授    谷    宏

学 位 論 文 題 名

Study on Impact of Desertification on Greenhouse Gas     Concentrations Using Remote Sensing Technique

(リモ ートセン シング手 法を用い た温室効 果ガス濃度に及ぼす砂漠化の影響に      関する 研究)

  本 論文は8章からな り,図55,表8,引用文献287を含む218ベージ の英文論文で,参考 論文6編 が 添 え られ てい る 。

  砂漠化は地球上のパイオマス量の減少および生物生産性の悪化を引き起し,グ口ーバルに土壌腐植量 を激減させ,物質循環に影響を与えるとともに土壌中の炭素貯留量を著しく減少させる。そのため砂漠 化は世界の食糧安全と環境保全にとって深刻な問題である。大気中の温室効果ガス濃度の増加が,気候 変動の重要要因であることカ部竃認されており,その影響を緩和するためには,大気中への温室効果ガス 排出量を削減することカ迎ぼである。

  本研究の目的は,砂漠化のプ口セス,温室効果ガス濃度の変化を把握し,それらの関係解明を通じて 砂漠化と温 室効果ガス濃度の関係を明らかにすることである。この目的を達成するために,(1)アジア における砂 漠化の進行および 覡状の把握,(2)砂漠化と温 室効果ガス濃度関 係の解析,(3) MODISプ ロダクトに 基づぃたC02濃度推定のモデ ル化について研究 を行なった。

  1. 研究地域として中国東北部に位置する砂漠化が深刻化しているホルチン沙地を選んだ。1977年から 2009年までの人 工衛星Landsatデータを用い ,エキスバート分 類法によって土地 被覆変化を調べた。

TasseledCap変換ぐI℃)と正規化植生指数いDヽmに基づき,砂地の分光特性に応じて,明るさ(Bri曲眦鴎)

とNDヽHの差(B‐NDVI)を新たな分類指標として提案した。また,砂漠化と気候変動の関係解析から,砂 漠 化 の 進 行 に は 気 候 要 因 だ け で は な く , 人 間 活 動 も 影 響 し て い る こ と が 判 明 し た 。   2. GIMMSとMODISによるNDVIデ ータを砂漠化指標として,1982年から2011年までのアジア地域におけ る砂漠化の傾向 を評価した。30年 間のNDVIトレンドの時間的・空間的な異質性を解析するために,各ピ クセルのMK傾向 検定と線形回帰モ デルを用いた。その結果,1982年から2011年までに砂漠化は緩やかな 減少傾向にあったことが示唆された。また,砂漠化の進行に対する気候因子の影響を調ベ,砂漠化と降水 量の聞には関係がなく,温度上昇は砂漠化と負の相関を示した。これらの結果から,アジアにおける砂漠 化の時間・空間的変化の知見が得られ,広域気候システムの砂漠化に及ばす影響についての理解を深めた。

  3.土地被覆変化は,大気中の温室効果ガスの濃度を変化させることが示唆されている。本研究では,ま ず.GOS觚データにより20年月から2011年10月までの東アジアにおける月平均温室効果ガス濃度を算出 した。その後,GOSATの温室効果ガスデー夕,MO[)硲のNDヽqおよびEA闘kあCov・ば(2009)の土地被覆 データを用い,土地被覆(農地,森林,灌楙お,草地と裸地)と温室効果ガス濃度の相関を調べた。植物 の生育期間に, 農地と灌木林で面 積率と0Q濃度には負の相関,同期間に森林,草地および課地では面積

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率とC02濃度には正の相関があった。また,灌木林と草地では面積率とCH4は負の相関があり,そこは.(H4 の吸収源とし て考えられ,森林と農地は.akと正の相関があることから,aLのソースと考えることがで きた。

4.東ア ジアで土地劣化が 最も深刻な中国北部 とモンゴル国を研 究対象地域として 選択し,ENVISIU' SCIAMACHYとGOSAl' TANSOに よる 温室 効 果ガ ス濃 度 デー タとMODISから得られたNDVIデータを用い て,季節的な温室 効果ガス濃度の空間分布,また,NDVIデータを降水量および地表面温度データと組み 合わせて,温室効果ガス濃度の空間分布を明らかにした。その結果,土地の劣化が温室効果ガス濃度を増 加させる可能性が示された。

  5.気象現象であるサンドダス卜ストーム(以下,SDS)は,環境と人間の健康だけでなく,大気組成に も 影響を与える。本研 究では北東アジアにおける2009年と2010年の春に発生した4回のSDSを抽出し,温 室効果ガス濃度に対する影響を調べた。SDSの移動Jレー卜をMODISデ・ータによって追跡し,SDSの発生日 お よびその月のC02とCH4の濃度平均値を調べた結果,SDS発生日のそれらが月の平均よりも高い値を持っ て いたことが分かった。更にSDS発生日前後の濃度変化を解析したところ,SDSが・CQとCH4の濃度を増加 させることが明らかになった。

  6.C02濃 度のデ一夕は,通鴬 地上観測局や衛星から得られる。しかし,地ヒ観測点の分布と衛星デ ータの保有 年数によって,長期間の地域または地球規模でのC02濃度変化を調べることが困難になる。

本研究では,MODISの温度,植生指数と植物生産性デ一夕に基づしゝたTVPくTemperature,Vegetation and Productive)モデルを 地球規模でのC02濃度を評価 するために開発した。TVPモデルはルモートセンシ ング手法を用いたC02濃度の推測に利用可能であることカj示された。

  本研 究では,砂漠化モ二 夕リングのための 新しい手法,また ,MODISデータによる新たなC02濃度 推測モデルを提案し,土地被覆夕イプと温室効果ガスの濃度の関係,サンドダストストームの発生と温 室効果ガス濃度の関係を明らかにした。種々の衛星データを利用して砂漠化と温室効果ガス濃度の様々 な 関 係 の 解 析 を 行 っ て お り , そ の 成 果 は , 学 術 上 , 応 用 上 , 高 く 評 価 さ れ る 。 よって,審査員一同は,郭蒙カ斗尊士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実