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Ni 箔を用いた高精度・高感度温度センサの開発

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(1)

博士学位論文

Ni箔を用いた高精度・高感度温度センサーの開発

群馬大学大学院工学研究科

生産工学専攻

市田 俊司

2008年2月

(2)

目次

第 1 章 緒論

1

1.1 温度計測における現状と課題

1 1.1.1 最新の計測および加工技術 1 1.1.2 温度と最新の計測および加工技術の関係 3 1.1.3 温度センサーにおける課題 4

1.2 主な温度センサーの原理と問題点

7 1.2.1 金属抵抗温度センサー 7 1.2.2 熱電対温度センサー 10 1.2.3 サーミスタ温度センサー 12 1.2.4 主な温度センサーの精度規格と問題点 14

1.3 温度センサーの新技術開発状況と課題

15 1.3.1 白金線温度センサー 15 1.3.2 薄膜白金温度センサー 16 1.3.3 ニッケル温度センサー 24 1.3.4 サーミスタ温度センサー 27

1.4 本研究の目的

31

参考文献

32

第 2 章 高精度温度センサー用 Ni 箔の検討

37

2.1 はじめに

37

2.2 Ni の物理的性質

37 2.2.1 Ni の物理定数 37 2.2.2 金属の伝導特性 38 2.2.3 Ni の伝導特性 41

2.3 Ni 箔の結晶構造の歪

44 2.3.1 Ni 箔の熱膨張係数 44 2.3.2 Ni 箔の結晶性と歪 46 (1) X 線回折パターン解析による Ni 箔の結晶性 46

(3)

(2) 極点図解析による Ni 箔の結晶性 46 (3) ロッキングカーブ法による Ni 箔の結晶性 49 (4) 顕微鏡による Ni 箔の結晶性 51 (5) Hall 法による不均一歪 53 2.3.3 調査結果のまとめ 59

2.4 Ni 箔と基板との接合応力

60 2.4.1 基板の膨張係数測定 60 (1) 測定方法 60 (2) 測定結果と基板の選定 60 2.4.2 Ni 箔の残留応力の測定 63 (1) 測定方法 63 (2) 測定結果とバーンインの選定 64 2.4.3 調査結果のまとめ 67

参考文献

68

第 3 章 Ni 箔を用いた高精度温度センサーの開発

69

3.1 はじめに

69

3.2 Ni 箔温度センサーの製造方法

69

3.3 抵抗値の測定

73

3.4 Ni 箔の厚さ測定

74

3.5 素子の形状

75

3.6 センサーの形状

76

3.7 応答性の測定

76

3.8 自己発熱の測定

77

3.9 TCR(Temperature Coefficient of Resistance)の測定

78

3.10 温度抵抗特性測定装置

80

3.11 特性式の最適化

83

3.12 温度センサーの長期安定性

84

3.13 Ni 箔センサーの校正結果

86

3.14 Ni 箔温度センサーの不確かさ

88

3.15 まとめ

89

参考文献

90

(4)

第 4 章 Ni 箔を用いた高感度温度センサーの開発

91

4.1 はじめに

91

4.2 材料の選定

91

4.3 製作方法

92

4.4 試作 1(幅 0.3×長さ 35×厚さ 0.05mm)の実験

95

4.5 試作 2(幅 3×長さ 8×厚さ 0.05mm)の実験

96

4.6 試作 3(幅 3×長さ 8×厚さ約 0.1mm)の実験

100

4.7 まとめ

105

参考文献

106

第 5 章 結論

107

謝辞

112

関連論文

113

(5)

第 1 章 緒論

1.1 温度計測における現状と課題

1.1.1 最新の計測および加工技術

近年,マイクロマシンやナノマシンなどと呼ばれている最先端の微細加工技術や 精密計測技術が,精密機械工業や半導体の産業界にて急速に進展している。これらの 技術は,常温付近で実施されている。 それらの例をいくつか記載する。

(1)Scanning Probe Microscope(SPM;走査形プローブ顕微鏡)による技術 1)

SPM は,さまざまな種類の物理量を利用した顕微鏡があり,トンネル電流を利用す る走査形トンネル顕微鏡(STM),原子間力を利用する原子間力顕微鏡(AFM),近接場光 を利用する近接場光学顕微鏡(SNOM)が良く知られている。SPM は,ナノテクノロジー の最先端技術であり,超精密な計測だけでなく原子や分子を操作して,新しい物質を 創造したり新しい物理現象を解明する技術に利用されている。特に,そのプローブ形 状は性能上重要であり,1 原子相当の細い鋭敏な極細針が最も良く,ナノテクノロジ ーで製作されたカーボンナノチューブは鋭敏な細い針形状であるためにプローブとし て使用され,さらに先進的な研究が進んでいる。すなわち,この技術は,0.1nm 桁の 計測および加工技術を必要としていることから,最も微細な技術である。そこで計測 は温度に影響されるので,精密な温度制御が要求されている。 (2)フォトリソグラフィ技術2),3),4) 半導体のフォトリソグラフィ技術は,3 年で 4 倍の集積度で進行するという有名な ムーアの法則に従って,半導体素子の導体パターン幅は細く微細加工されてきている。 そのフォトリソグラフィ装置におけるフォトリソグラフィ光源とパターン幅の関係を 表 1.1 に示した。この表から,数 10nm から数 100nm の微細加工技術であることが判 る 。 現 在 は , 半 導 体 の 最 も 量 産 化 に 使 用 さ れ て い る 技 術 は , 光 源 に ArF レ ー ザ ー (193nm)を使用した装置で,65nm 程度のパターン形成が可能である。最先端で量産生 産に移行し始めた技術は,ArF レーザーと液浸技術を組み合わせたフォトリソグラフ ィ技術である。液浸技術は,この数年で急速に発展した技術であり,今まで空気中で

(6)

露光していたが,液体中で露光する技術である。露光用レンズとウエハーの間隙約 1mm に,液体を充填して解像度を上げるフォトリソグラフィ装置である。液体の屈折 率が大きくなるに従い,波長が短くなるので,より細いパターンが形成できる。すな わち,下記に示すような解像度を上げることができる。解像度は,下記式で表わされ, NA が大きいほど,すなわち,屈性率が大きいほど,解像度が小さくなり,細いパタ ーンを形成することができる。 ・解像度=k(プロセス係数)×λ(照明光の波長)/N.A. (1.1) ・N.A.=n×sinθ (1.2) kは,プロセス係数で,露光装置に関係した定数であり,約 0.3 程度である。N.A. は,開口数と呼ばれ,レンズの明るさを表わす指標である。nは露光光が通過する媒 質の屈折率を表わし,空気は,n=1 である。θ は露光光の一番外側の光が光軸と成 す角度である。屈折率が 1 の場合,N.A.は,理論的には最高でも 1.0 未満であり,実 際には 0.9 程度(θ=65°)である。 現在の最新フォトリソグラフィ装置では,通常超純水が使用され,理論的に屈折 率 1.44 程度で,45nm のパターンが形成できる。さらに,屈折率を高めた液体の研究 が実施されて,32nm のパターンのフォトリソグラフィ装置の研究開発が実行されて いる。この液浸装置の最大のメリットは,今までの ArF レーザー装置の技術は変更す る必要がなく,液浸部分の新技術の追加対応でより精細なパターン作成が可能である と同時に,今まで使用していた前工程や後工程に使用する装置や薬品や技術等がその まま使用できるために,投資が最小限化できることである。しかし,新たな問題とし て,露光光や露光されるウエハーによって純水が温められて,その熱が露光に悪影響 を与える問題が発生し,純水のより精密な温度計測と制御技術が要求されてきている。

今後は,パターンの微細化を目指して,EUV(Extreme Ultra Violet,極紫外線)露 光技術の研究がさらに進行していくと予想される。また,新しい露光技術として,コ ストが安くできる可能性があるために,ナノインプリントリソグラフィ技術が研究開 発されている。数十 nm 程度で加工されたある種の鋳型を製作し,その鋳型を露光し たいシリコン表面に発熱し押し付けることで,パターンを転写する技術である。装置 や工程が簡単で,価格が安くなる可能性がある。最新の技術では,数十 nm の加工技 術となっている。

(7)

(3)レーザー干渉計による距離計測技術 5),6),7) レーザー干渉計の距離測定装置では,約 5m 計測範囲において 1nm 以下の分解能を 有している装置があり,超高精度の測定が可能である。レーザー顕微鏡では,1nm の 分解能で幅や高さを測定している。リソグラフィに使用されているレーザー干渉計で は,ステップ毎のアライメントの再現性で,8nm 以下を達成している。 これらのことより,最新の技術では,1nm のオーダーの計測技術となっている。レ ーザーの計測では,媒質の温度に影響されるので,精密な温度計測と制御技術が要求 されている。

1.1.2 温度と最新の計測および加工技術の関係

1.1.節において記載したように,最新の計測技術や加工技術は,超精密な重要 技術の集積からなっている。従って,計測や加工する場合,対象材料は,温度により 伸縮するために温度を一定に保持しておく必要がある。超精密を達成するために,構 成要素である材料の変化を考えなければならない。そこで,温度と熱膨張による伸縮 の関係を求めてみる。 半導体に使用されているシリコンの熱膨張係数は,約 2.6×10-6/K であり,鉄鋼 は,約 12×10-6/K である 8)。ナノマシンやマイクロマシン技術で微細構造物を製作 する場合,一般的に Si 基板を用いてフォトリソグラフィ技術を使用して製作される ので,その熱膨張量を計算してみる。 一般的なシリコンウエハーは,直径 300mm である。そのウエハーが±0.01K の温度 幅で制御されていたと仮定する。シリコンウエハーの両端で,熱膨張により変化する 表 1.1:フォトリソグラフィ光源とパターン幅の関係 光源および技術 波長/nm パターン/nm 実用化時期 水銀g線 436 2000 1980 年代 水銀 i 線 365 250 1990 年代 KrF+PSM 248 110 2000 年 ArF+PSM 193 65 2004 年 F2 157 70 2006 年 ArF+PSM+液浸技術 193 45(32) 2007 年 EUV 13 32> 2009 年代 PSM:Phase Shift Mask(位相シフトマスク)

(8)

長さを計算すると, ・0.3×2.6×10-6×0.01=±7.8×10-9m=±7.8nm となる。 この値は,最新のフォトリソグラフィによるパターン幅である約 45nm の±17%に 相当し,その最大温度幅でみると,34%も変動していることになりこの温度制御では フォトリソグラフィすることができない。さらに,半導体のフォトリソグラフィの工 程では,数十回のフォトリソグラフィ工程が繰り返されるので,その間±0.01K より 高精度の温度制御を保持しておく必要がある。 また,シリコンウエハーを乗せるステージは,金属(ステンレス)で製作されてい るので,その位置の再現性を確保するために,レーザー距離測定装置で位置を測定し ている。ステージの熱膨張による長さの変動は,材料の長さを 0.5m とし,温度制御 幅を±0.01K の場合を計算する。 ・0.5×12×10-6×0.01=±0.06×10-6m=±60nm となる。 従って,この値は,パターン幅よりもはるかに大きいので,フォトリソグラフィ 装置でパターンを製作することができず,ステージにおいても,±0.01K より高精度 の 温 度 制 御 を 確 保 し な け れ ば な ら な い 。 従 っ て , こ れ ら の こ と か ら , 1 桁 低 い ± 0.001K 程度の温度管理が要望されている。他の各種技術においても,同様である。

さらに将来は,EUV(Extreme Ultra Violet:13.5nm)を使用したフォトリソグラフ ィ装置の開発が進行しており,50nm 以下のパターン幅の研究が進んでいるので,さ らに温度制御技術は,一歩進んだ要求が必要となってくる。

1.1.3 温度センサーにおける課題

上記 1.1.1 と 1.1.2 項の関係から,超精密加工と超精密計測分野での温度セ ンサーへの要求は,以下のようになっている。 (1)高精度:±0.01K (常温) (2)高信頼性:±0.01K/年 (常温) (3)高速応答性:空気中 10 秒以下 (4)自己発熱:0.01K 以下 (5)高感度:Pt より大きな TCR(3850ppm/K 以上) (TCR:Temperature Coefficient of Resistance)

(1)高精度とは,温度センサー毎のばらつきが小さいこと,すなわち,どの温度セ ンサーを持ってきても仕様の中に入っており,固体差が小さいことである。最近の装 置の大形化に伴い,高精度に保持するには多くの温度センサーを使用せざるを得なく

(9)

なり,それらの固体差にばらつきが無いことが求められている。温度センサーの素子 を完成した時に,±0.01K のような高精度の素子は生産できないので,選別するか, または,校正して生産する方法しかない。選別は,歩留まりが悪く現実的でない。よ って,温度センサーを校正して,高精度な温度センサーにすることが高精度温度セン サーを製作のための必須技術になっている。このような高精度の温度センサーの生産 を維持することは,製造工程の管理を確実に実施し続けることが必須である。 (2)高信頼性とは,高精度に校正した後の温度センサーの経時変化である。一般的 には,一年後の経時変化は精度と同等の量が許容されている。このような高精度にお いては,製造時のわずかな残留応力が経年変化に影響を与えるので,その応力の除去 と評価に新しい技術を必要とする。経時変化の確認は,長期間を要するので,開発に 時間がかかることから,生産性の効率上課題となっている。 (3)高速応答性とは,応答性が速いことであり,形状をより小形にすることで応答 性を速くできる。液体温度を検出する場合は,液体からセンサーへの熱伝達率および 液体の熱伝導率が大きいために応答性が速いが,空気温度を検出する場合は,空気か らセンサーへの熱伝達率および空気の熱伝導率が小さいために液体に比べて応答性が 非常に遅い。従って,空気温度を高速に測定する場合は小形のセンサーが必要であり, そのセンサーに使用される温度素子は小形となるので,小形形状を製作しやすいこと が必要である。また,最近は装置の大型化が進んでおり,大型の装置では温度センサ ー一個で,装置全体の温度を計測することができないので,多くの温度センサーを取 り付け装置全体の温度を計測している。装置全体を均一な温度にするためには,でき るだけ高速に温度を検知して制御温度幅の小さい温度制御を実行することが必要であ る。従って,空気中においても高速応答性を持つ温度センサーを開発することが課題 である。 (4)自己発熱とは,測定時の測定電流によって発熱し,測定温度が測定対象の温度 よりも上昇し,測定誤差を発生することである。自己発熱(測定誤差)は,消費電力 (抵抗値×電流×電流)を熱放散定数(1K 温度上昇させるに必要な電力)で除する と求まる。温度調節器の測定感度を一定とすると,抵抗値が大きいほど自己発熱が少 なく優位である。すなわち,白金の 1K 当たりの抵抗値変化量は,100Ωの場合約 0.4 Ωであり,通常測定電流 1mA であるので,測定感度は 0.4mV である。それに対して, 抵抗値が 1000Ωの場合,1K 当たりの抵抗値変化量は約 4Ωであるので,同じ測定感

(10)

度 0.4mV を得るための測定電流は 0.1mA となる。熱放散定数は,両者同じ 1mW/K(φ 1 保護管の場合)とし自己発熱による温度上昇を比較すると,下記となる。 ・100Ω×1mA×1mA÷1mW/K=0.1K ・1000Ω×0.1mA×0.1mA÷1mW/K=0.01K 従 っ て , 自 己 発 熱 に よ る 温 度 上 昇 は , 100Ω の 場 合 は 0.1K で , 1000Ω の 場 合 は 0.01K になり,1000Ωのほうが自己発熱による温度上昇が小さく優位である。しかし, 実用的な検出回路の場合,数百kΩ以上の大きな抵抗値では,温度素子にノイズが乗 りやすいことや微小な測定電流を安定して供給することが技術的に難しいなどの欠点 が生じる。従って,数kΩ程度の抵抗値が実用化しやすい。また,JIS C16049)白金 測温抵抗体(Pt100 と呼ぶ)では,精度は±0.15K であり,センサーの形状(保護管外 形)は最小φ3.2 と規定されている。この場合,熱放散定数は約 10mW/K であり,1mA の測定電流で上記と同様に自己発熱を計算すると 0.01K になり,±0.15K の精度に対 して小さい値である。従って,自己発熱による測定誤差は,ほとんど影響せず問題で は無い。しかし,上記計算のように Pt100 で熱放散定数が 1mW/K の小形高速応答性の 特徴を持つ±0.01K の超高精度の温度センサーができたと仮定した場合では,1mA の 電流を流すと,0.1K も自己発熱し精度を満足できる計測が出来ないことが判る。よ って,温度センサーの小形化による高速応答性と自己発熱は,相反する現象であるの で,バランスを取る必要がある。±0.01K のような超高精度においては,特に注意す べき項目である。 (5)高感度とは,1K 当たりの変化量が大きいことおよび温度変化に対して応答性が 速いことの 2 つの意味がある。その内,応答性は上記したので,1K 当たりの変化量 が大きいことに関して述べる。抵抗式温度センサーの場合は,1K 当たりの抵抗値の 変化量は,温度抵抗係数(TCR)と呼ばれ,ppm/K の単位で表わされている。Pt100 は, 0℃の抵抗値が 100Ωで,その TCR は,3850ppm/K(0∼100℃間)であり,通常±0.1K オ ーダーの高精度制御に使用されている。±0.01K のような超高精度制御を目指すには, 温度センサーに対して少しでも高感度すなわち 1K 当たりの変化量が大きいことすな わち,TCR が大きいことが要望されている。 以上のような高精度化への技術開発に対応するために,高精度の温度調節器に適 合した新しい高精度温度センサーの開発が求められている。すなわち,抵抗値は 100 Ωより大きく,測定電流を小さくし,自己発熱を考慮しながら,小形高速応答性を有 し,かつ TCR が大きいことが要求されている。

(11)

1.2 主な温度センサーの原理と問題点

10)∼13) 現在実用化されている温度センサーは,金属抵抗温度センサー,熱電対温度セン サー,サーミスタ温度センサーの 3 種類が最も一般的である。それらの温度検出の原 理と特徴を以下に示す。

1.2.1 金属抵抗温度センサー

金属抵抗温度センサーは,温度に従い金属の抵抗が変わる特性(2.2.2 金属の伝 導特性の項参照)を利用したものである。温度と抵抗値の関係は,主に伝導電子(自 由電子)の移動度によって電気抵抗が変わるが,詳細には,荷電粒子の数,原子の熱 振動,格子ひずみ,格子欠陥,不純物などの各要素が組み合わさった複雑な温度依存 性によって特性が変化する。その中で,温度と抵抗値の関係が再現性を持ち,耐食性 のある金属が温度センサーとして使用されている。今までに,銅(Cu)とニッケル(Ni) と白金(Pt)が実用化されている。それらの特徴を下記に記載する。 (1)Cu 測温抵抗体 Cu 測温抵抗体は,最も安価であり,TCR は直線的に変化し約 4250ppm/K(0∼100℃ 間)で,均一な特性の素線が簡単に得られるために,0∼120℃程度の常温付近の温度 測定に使用されていた。しかし,高温になるとすぐ酸化するためにほとんど使用され ていない。また,固有抵抗が小さいので,抵抗線を沢山コイル状に巻かなければなら なく,形状が大きくなる短所を持っている。しかし,Cu 測温抵抗体は 1974 年に, JIS から除外された。 (2)Ni 測温抵抗体 Ni は,白金に比べて安くて,常温付近では安定しており,-50∼300℃で使用され ている。Ni 素材の抵抗温度係数は,約 6800ppm/K(0∼100℃間)で白金より感度が高い ので,高感度の温度センサーとして使用されてきたが,日本では Ni 測温抵抗体の規 定は,1960 年に JIS から除外された。国外では,まだ使用されている。ドイツでは, DIN43760(6180ppm/K;0∼100℃間)に,米国では,MIL-B-5491A(5800ppm/K;0∼100℃ 間)に規定されて使用されているが,基準抵抗表は,素線自体の温度係数より低い温 度係数で規定されている。通常巻き線式であるので形状が大きくなる欠点を持ってい る。

(12)

(3)Pt 測温抵抗体 現在高精度温度センサーとしては,白金測温抵抗体が最も一般的である。白金測 温抵抗体は,主に巻線式測温抵抗体と薄膜式測温抵抗体があり,特に高精度を求める 場合は,巻線式が一般的に使用され,薄膜式は,数量が多くて小形低価格の場合に使 用されている。白金測温抵抗体は,信頼性が高いことから,標準温度センサーとして も,工業用温度センサーとしても,使用されている。 (3-1)標準白金温度センサー14)∼25)

標準白金温度センサー(Standard Pt Resistance Thermometer;SPRT と呼ぶ)は, 1990 年に規定された国際温度目盛 ITS90 で平衡水素の三重点(13.8033K)から銀の凝 固 点 (961.78 ℃ ) ま で の 間 を 補 間 す る 計 器 と し て 規 定 さ れ て い る 。 す な わ ち , こ の SPRT は,トレーサビリティーを確保するための標準温度計であるので,非常に精密 に考慮された材料や構造になっており,もっとも高精度で安定性が確立された温度計 である。この SPRT は,通常 0℃以上では,外形Φ6 のステム形形状が一般的であり, 振動や衝撃に非常に弱いので取り扱いに注意が必要である。非常に高精度であり,不 確かさを小さくするために,定められた補間手続きに従い,使用するのが一般的であ る。SPRT の条件は,0.01℃との抵抗比 W(29.7646℃)=R(29.7646℃)/R(0.01℃)>= 1.11807(3968ppm/K)を満足する必要がある。この SPRT は,JIS C1604 の白金測温抵 抗体とは違った 温度 計であり,抵抗 値は 通常 25Ωで,TCR は 3926ppm/K 以上(0∼ 100℃間)で,JIS の測温抵抗体の TCR よりも大きい。通常,25Ω(0℃)抵抗値品は, 低温用として使用され,2.5Ω(0℃)抵抗値品は,高温用として使用されている。高温 用 SPRT が数Ωであるのは,高温において自重にて抵抗値が変わることを防ぐためで あ る 。 ま た , 高 温 用 の SPRT で , 660℃ (ア ル ミ 凝 固 点 )以 上 で 安 定 し て 使 用 で き る SPRT は,最近開発されたばかりである。SPRT は,機械的に弱いので,定点校正し使 用することが,誤差を小さくするコツである。高温用 SPRT の一例として,SPRT の外 観を図 1.1 に仕様を表 1.2 に示す 26)。抵抗値が 3Ωであり,温度特性が JIS の Pt100 より大きく,1000℃においても再現性が±0.01℃で高安定である。ただし,外形がφ 5×60mm と大きい。

(13)

図 1.1 SPRT の外観と保管ケース 表 1.2 SPRT の仕様 仕様項目 仕様 抵抗値 (at0℃) 3Ω±0.5Ω 温度特性 R100/Ro≧1.39260 使用温度範囲 0℃∼1000℃ 自己発熱誤差 (水の三重点) 1mA の場合約 0.3m℃,3mA の場合約 3m℃ 再現性 ±0.01℃ 保護管材質 高純度石英ガラス管,高純度アルミナ管 保護管外径 φ5mm 保護管長さ 600mm

(14)

(3-2)工業用白金温度センサー9) 工業用白金センサーでは,JIS C1604 に規定されており,約 650℃までが実用上の 使用範囲で,0℃で±0.15K の高精度温度センサーとして,最も一般的に使用されて いる。その構造は,白金細線をコイル状に巻きまわした巻線式白金温度センサーであ る。白金の熱膨張係数は,約 8×10-6/K で,セラミックやガラスの熱膨張係数に近 いので,セラミックボビンに封止された素子やガラスボビンに巻きつけて上からガラ スコートされた素子などがある。実用的には,各種測定環境に対応するために,その 素子をΦ3.2∼Φ6.4 のステンレス保護管に入れて使用している場合が一般的である。 抵 抗 値 は , 100 Ω (0 ℃ ) で , 測 定 電 流 は , 1mA が 一 般 的 で あ る 。 温 度 係 数 は , 3850ppm/K で,SPRT と比較すると小さい。素子の構造は,工業用市場に適用するため に,標準温度センサーに比較すると強固な構造である。 (3-3)薄膜白金温度センサー 薄膜白金温度センサーが,最近非常に多く使用されている。セラミック基板上に 白金薄膜(厚さ 0.数μm 程度)をスパッタ法などにより製作し,フォトリソグラフィ技 術にて,抵抗値パターンを作成している。自由に大きな抵抗値の素子が製作可能であ り,小形で量産性のある素子ができる特徴を持っている。しかし,一般的に巻線式白 金温度センサーより抵抗値や温度係数のばらつきが大きく,かつバルクの特性と異な る特性を有したり,求められているような良好な安定性を得にくい欠点を持っている。 形状は,通常数 mm 角程度の大きさで,精度としては,高精度クラスとして±0.3K で, 工業用白金温度センサーより悪い。抵抗値は,抵抗パターンを変えることで自由な値 に対応できるので,数 kΩ品もある。TCR は,一般的には,JIS C1604 測温抵抗体よ り小さいが,その JIS と同じ 3850ppm/K の製品も出てきた。従って,高精度を求めな い民生市場や工業市場に多く使用されている。

1.2.2 熱電対温度センサー

27)∼31) 熱電対の測定原理は,2 種類の金属導体を電気的に接続して,閉回路を作り,この 一端を発熱するなどの方法で両端に温度差を与えると回路中に電流が流れる。これは, 1821 年に T.J.Seebeck(ドイツ)が銅とアンチモンとの間で発見した現象であって,ゼ ーベック効果と言われている。この現象は,材料毎に熱起電力は異なっているので, その起電力と温度差の関係が JIS C1602 に規定されている。逆に,温度差により発生 する熱起電力を測定することで温度が測定できる。熱電対は,この原理を応用した温

(15)

度センサーである。JIS C1602 熱電対は,貴金属熱電対として 3 種類(B,R,S)と非金 属熱電対として 5 種類(N,K,E,J,T)が規定されている。各種の熱電対毎に許容差と測 定温度が設定されており,それらの測定温度範囲を合わせると,-200℃∼1700℃まで の広範囲の温度を測定でき,かつ価格がやすいので産業界で最も多く使用されている 温度センサーの一つである。さらに,熱電対自体は細線であるため,形状の細い温度 センサーを製作できるので,細い隙間の温度計測や高速応答性を必要とする温度計測 などにも使用されている。 JIS の規定以外においても,様々な熱電対が実用化されている。高温用熱電対とし て,2800℃まで使用されているタングステン−レニウム(W-Re)熱電対がある。極低温 用熱電対として,0.07%鉄・金−クロメル熱電対があり,4K∼273K までの熱起電力が, ASTM32)にて規定されて実用化されている。 熱電対温度センサーは,安価であり,温度範囲により様々な種類の熱電対が使用 されていることや,形状を極細温度センサーや表面測定など自由に加工しやすいこと から,低温,常温,高温と幅広い温度範囲で多く使用されている。JIS C1602 の各種 の材料の熱電対を表 1.3 に示す。S 熱電対(白金・10%Rh−白金)は,材料的に安定して いるので,IPTS68 では,630.74∼1064.43℃で標準温度センサーであったが,ITS90 以後は,SPRT と放射温度計に変わった。 表 1.3 熱電対の種類 構成材料 種類の 記号 プラス脚 マイナス脚 B ロジウム 30%を含む白金ロジウム合金 ロジウム 6%を含む白金ロジウム合金 R ロジウム 13%を含む白金ロジウム合金 白金 S ロジウム 10%を含む白金ロジウム合金 白金 N ニッケル,クロム及びシリコンを主とし た合金 ニッケル及びシリコンを主とした合金 K ニッケル及びクロムを主とした合金 ニッケルを主とした合金 E ニッケル及びクロムを主とした合金 銅及びニッケルを主とした合金 J 鉄 銅及びニッケルを主とした合金 T 銅 銅及びニッケルを主とした合金

(16)

熱電対での計測のためには,冷接点温度を測る必要があるので,別のセンサーで 冷接点温度を測定したり,冷接点を 0℃に挿入したりしているが,精度は±1K 以上で, 白金温度センサーよりも精度が悪い。また,高温での使用では,腐食などの対応策を 検討して使用する必要がある。特に,最も多く使用されているクロメル−アルメル熱 電対(K熱電対)は,400℃付近での使用時に発生する良く知られたショートレンジオ ーダリングや 700℃付近で長期使用時に発生するグリーンロットの現象があり,大き く温度値がずれる場合があるので注意が必要である。

1.2.3 サーミスタ温度センサー

33),34) サーミスタ温度センサー(サーミスタ)は,鉄,銅,ニッケル,マンガン,コバル トのような金属の粉末をある割合で混合し成型し焼結して作られた酸化物半導体であ る。温度が低い時には,抵抗値が非常に高く,高温になると急激に抵抗値が下がる性 質を持っている。半導体であるので,温度が上昇するのに従って,熱エネルギーによ って活性化され,電気の担体である伝導電子の数が増加するために,電気抵抗が対数 的に減少してゆく物理特性を持っている。サーミスタの電気伝導は,シリコン等の半 導体とは異なり,自由電子の数が少なく,局在的に存在しているため,温度が高くな ると熱によって活性化された自由電子が,局在した自由電子間を次々に不連続に飛躍 (ホップ)することによって電気伝導が行われる。このような伝導をホッピング伝導と 呼んでいる。金属と比較して,サーミスタは抵抗が高く,温度が高くなると急激に抵 抗が低くなる性質は,このホッピング伝導の性質によるものである。1975 年に JIS C1611 サーミスタ測温体として制定された。 サーミスタは,抵抗値が数百Ωから数百kΩと自由に選定でき,温度係数が非常 に大きい特徴をもっているが,その抵抗値の変化が対数的に比例しているので,温度 範囲が広くなると抵抗値が一桁以上も異なってくるため,回路上の工夫が必要である。 温度係数が白金温度センサーに比較すると,約 10 倍程度あるので,特定の狭い温度 範囲では,高精度な測定が可能である。一般的には,300℃まで使用している。300℃ 以上の高温サーミスタもあるが,精度が悪いので,一般的には使用されていない。 工業用サーミスタは,サーミスタ測温体として,JIS C1611 で規定されている。そ のなかで,用語の定義等を実施し,製造者や使用者に統一した使用ができるよう配慮 されている。しかし,サーミスタの一番の欠点は,同じ抵抗値のサーミスタでも,メ ーカー毎に温度係数が異なり,温度に対する汎用の標準抵抗値を決めることが出来な いので,特定の市場に限定されて使用されていることである。ビード形サーミスタ

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(ガラス一体焼結タイプ)やガラス封入タイプは,信頼性が高いので,工業用用途でも 使用されている。樹脂モールド形サーミスタ(またはディスク形サーミスタ)は,ビー ド形に比べて信頼性が低いので,一般的に民生用機器に多く使用されている。 高精度サーミスタは,対環境性を高めるためにガラス封入されており,その構造は 様々である。サーミスタ素子は,その製作方法により各種形状のセンサーがあり,数 百万個/年以上使用されている。最近は,改良されて,様々な形状のものが製作され ている。 チップ形サーミスタは,チップ抵抗と同じ形状のサーミスタで,セラミック基板 を製作する方法と同じく,サーミスタ材料を薄い基板に成形しその上にメタル電極を 印刷した後焼結し,その後数 mm 角に小さく切り出したものである。小形であること と,プリント基板にチップ抵抗と同じように搭載できることから,パーソナルコンピ ュータに使用されているマイクロコンピュータ基板に搭載され,最も多く使用されて いるアプリケーションの一つである。 ガラス封入形サーミスタは,チップ形サーミスタと同様に薄いサーミスタ基板を 作成し,両面にメタル電極を焼結し,その後 1mm 角程度に切り出し,ガラスチューブ で封止したものである。ガラス封止しているので,その信頼性は高い。その素子をガ ラスの代わりに,樹脂コートした外形Φ1mm 程度の小形のサーミスタは,電子体温計 に使用されており,数百万個のサーミスタが全世界で広く使用されている。 サーミスタが開発された初期から製作され続けられているビード形サーミスタは, 手作業で 1mm 程度の間隔に張られた 2 本の白金細線上に泥状のサーミスタ粒を組み付 け乾燥後焼結しその後白金細線を切断しガラスチューブで封止したものである。価格 は,他のものより高いが,信頼性が高く工業用にも多く使用されている。ディスク形 サーミスタは,サーミスタ粉末をディスク形に成型し,その後焼結し,その後両面に メタル電極を焼きつけ外部リード線をつけた後,樹脂保護コートしたものである。家 電機器の空調機や暖房機の温度測定に非常に多く使用されている。

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1.2.4 主な温度センサーの精度規格と問題点

(1)白金温度センサー9)

白金温度センサーは,上記のように主に 3 種類があり,その精度は,SPRT では, 認定事業者による校正によって,通常 ITS90 にて規定されており,±0.002K を保た れている。しかし,使用する前に,必ず TPW セル(Triple Point of Water セル)等 にて,校正して使用している。工業用白金温度センサーと薄膜白金温度センサーでは, JIS C1604 にて規定されており,高精度の場合,±0.15K である。これらの温度セン サーは,問題点を持っている。SPRT は,非常に繊細な構造であるので,取り扱いに 細心の注意を払う必要があるため,工業用に使用することはできない。工業用白金温 度センサーは,100Ωであるために,0.001K を検出するためには,測定電流を 1mA 程 度流す必要がある。高精度制御をするためには高感度化が必須で,形状が小さくなり, 自己発熱が大きくなる。自己発熱は,素子の消費電力を熱放散定数(1K 温度上昇さ せるに必要な消費電力)で,除すると求めることができる。すなわち,式(1.3)のよ うに求められる。その式にて,一例として外形がΦ1 程度の保護管の自己発熱を式 (1.4)のように求めた。外形がΦ1 程度の保護管であると,別途求めた熱放散定数は 空気中で約 1mW/K であるので,0.1K の温度上昇が生じることが判る。 ・消費電力(抵抗×電流×電流;W)÷熱放散定数(W/K)=自己発熱(K) (1.3) ・100(Ω)×0.001(A)×0.001(A)÷(1×0.001(W/K))=0.1(K) (1.4) 0.001K を計測するのに対して,自己発熱による温度上昇が大きいので,風速変動 の影響により測定温度が変化することになり,正確に温度を測定できない問題が生じ ている。1kΩの巻き線式白金抵抗温度センサーは,10 倍の白金細線を巻きつければ 製作できるが,形状が大きくなるとともに価格が非常に高く,工業用途に使用するこ とは難しい。 薄膜白金温度センサーは,抵抗値を大きくでき,自己発熱を小さくできる。しか し,薄膜であるために,白金線より抵抗値や温度係数の特性のばらつきが大きく,高 精度にすると歩留まりが悪くなり,バルクと同じように安定した信頼性を示すかが課 題である。また,Φ1mm 程度の保護管形状にするには,素子の小形化や安定性等の検 討が必要である。

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(2)熱電対 29) 熱電対は,JIS C1602 に規定されており,8 種類の熱電対がある。その精度は,高 精度タイプとして,R,S タイプで,±1K,その他の種類で,±1.5K である。白金温 度センサーより,精度が悪い。熱電対は,細線にすることにより小形の形状を製作で き,高速応答化には適している。しかし,冷接点を必要とし,その冷接点の精度がそ のまま精度に影響することや熱起電力特性は,熱電対材料の均質の状態が前提である が,高温で使用することにより材料の不均質化が進行し,温度特性から外れて温度誤 差が生じる。一例として,上記したようなショートレンジオーダリングやグリーンロ ットである。そのために,高精度には適していない。 (3)サーミスタ 33) 工業用のサーミスタは,JIS C1611 に規定されており,精度は,±0.3K となってい る。熱電対より高精度の規定となっている。外国のサーミスタでは,高精度タイプと して,販売しているサーミスタもある。サーモエレクトロニス社のサーミスタの仕様 は,精度±0.25K で,安定性 0.005K/年 35)を持っている。安定性を規定している点は, 高精度センサーの実用化には非常に有効である。サーミスタは,通常ガラス封入して このように安定性を確保している。従って,ガラスコートがあるので,Φ1 以下のサ ーミスタ素子の形状は難しい。また,サーミスタは,抵抗値特性がリニアでなく対数 的に変化するために,回路設計が難しく,幅広い温度範囲では使用することが難しい。 また,市販されているセンサーは,製造メーカーによって,特性がわずかに異なって いるため,互換性が無いなどの問題点がある。

1.3 温度センサーの新技術開発状況と課題

高精度,常温付近での信頼性,高速応答の技術課題を中心に,開発状況や技術状 況を調査した結果を,素子に使用されている材料毎,すなわち,白金,ニッケル,サ ーミスタの順番で記載する。

1.3.1 白金線温度センサー

1975 年以後においては,高精度白金線温度センサーに関する文献ならびに信頼性 に関する文献は少なく,高温の SPRT の論文があったのみである。ITS90 以後,660℃ ∼960℃で SPRT が,参照用温度センサーになったので,それに対応する SPRT の開発

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が実施されたてきた。その結果,1000℃で使用できる安定性のある SPRT が,産業総 合研究所によって,開発された 36)∼41)。常温付近の高精度や信頼性に関する論文は, 見られなかった。

1.3.2 薄膜白金温度センサー

薄膜白金温度センサーは,この数十年間開発されてきているが,最近は,新しい 開発は少なくほぼ完成された技術である。 (1)薄膜白金素子が開発された最後の結果として,JIS C1604 に適応した薄膜温度 素子が完成し発売されており,市場に多く供給されている 42),43) (2)信頼性と応答性に関しては,下記 6 件の報告が見られた。 ・1998 年に尾出らによって,6 社の市販品の白金薄膜温度センサーの信頼性や応 答性が調べられていた。高温放置の信頼性は,150℃で,1000h の条件で実施され,0 ∼-0.2K の変化量であった。その結果を,図 1.2 に示す。また,応答性測定の標準化 のためにその装置を開発し,その結果の一例と装置を図 1.3,図 1.4 に示す 44)。応答 性は,5 秒以下であった。 ・2003 年に今村らは,高温用白金薄膜温度センサーは,600℃3h のアニーリング にて,TCR が変化しなかったことから,白金薄膜の下地は,シリコン熱酸化膜,Al2O3, MgO の 3 層構造が有効であることを見出した。その白金薄膜のセンサーチップパター ンと各種条件の応答性の結果を図 1.5,図 1.6 に示す 45) 。Si 基板をエッチングして ダイアフラム構造にした素子で応答性を比較したが,その効果を確認できなかった。 ・ 1982 年 に 緒 方 は , 350 ℃ 500h の 高 温 放 置 試 験 後 の ド リ フ ト 量 が , 0.1% 以 下 (0.25K)を達成した。素子の形状は,3×30×1mm であり小形高速応答性に適していな い。その素子構造と結果を図 1.7,図 1.8 に示す46)

・1980 年に David L.Timmins は,250℃で,1000h,1mA の負荷試験によるドリフ ト量は,0.1K 以下を確認した。また,エチレングリコール中で応答性(99%)を 5 秒と 確認した。白金薄膜の厚さは,約 5700Åで,シリコンダイの上にチタン薄膜 25Åが 積層され,その上に作成されている。酸化ベリリウムのチップ上に取り付けられたシ リコンダイ上にさらにレーザートリミングされた白金薄膜抵抗体を持った構造である。 その素子の抵抗パターンを図 1.9 に,素子を取り付けたセンサーの写真を図 1.10 に 示す 47)。そのセンサーの大きさは,φ2.3×φ5.3×2.6 であり,小形であった。 ・1995 年に J.A.foerster らは,900℃でアニ―ルすることで,高温まで使用でき る薄膜白金センサーができた。310℃まで,Pt100Ωと同じ特性 TCR を示した。シリコ

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ンダイの上に 4μm のn形 Si エピ膜をつけて,その上に酸化膜をつけその上に Ti 層 (200Å)をつけ,その上に白金薄膜(800Å)を積層させたセンサーである。その薄膜白 金素子の構造と製作工程を図 1.11 に,その素子と Pt100 の TCR の比較を 310℃まで 実施した結果を図 1.12 に示す 48)。それらの結果より,薄膜白金素子の製作に Ti 薄 膜が効果的であることを示した。 ・2003 年に三橋らは,アルミナ基板の厚さ 0.127,0.25,0.5mm に薄膜を付けた素 子サイズ 0.7×0.9,2.8×3.3mm の薄膜白金素子により非常に高速な応答性を得た。 2.8×3.3mm の薄膜白金素子の構造を図 1.13 に,素子サイズ 0.7×0.9mm においてア ルミナ基板厚さの異なる素子の応答性の結果を図 1.14 に示す 49)。室温から 100℃の 攪拌油中での応答性で,0.7×0.9mm 素子が早く,0.079 秒と高速であった。応答性を 速くすることにおいて,材料の選定や形状など今後の開発の方向性を示唆している。 (3)まとめとして,200℃以上の高温での使用を目標とした製品開発と,高速応答 を狙った小形の素子開発があった。しかし,常温での高精度の温度センサーを目標と したセンサーは,現在のところ見られない。すなわち,精度として,0.001 K を議論 する高精度は無く,信頼性も常温付近での確認をした文献は見られないことから,今 後の研究課題として取り上げる必要があることが判った。 図 1.2 D 社の各環境試験結果(0℃での抵抗値変化)44)

(22)

図 1.3 素子の応答性44)

(23)

図 1.5 作成したセンサーチップ 45)

(24)

図 1.8 高温放置特性 46)

図 1.7 薄膜白金素子の形状46)

(25)

図 1.9 薄膜白金素子47)

図 1.10 薄膜白金素子の取り付け部構造

(26)

図 1.11 薄膜白金素子の構造と製作工程

BCL;buried conductive layer 48)

図 1.12(A) 薄膜白金素子の TCR 特性48)

(Pt-100 との比較)

図 1.12(B) 薄膜白金素子の TCR 特性48)

(27)

図 1.13 製作した薄膜白金素子49)

(28)

1.3.3 ニッケル温度センサー

(1)Ni 箔 を 使 用 し た 温 度 セ ン サ ー に 関 し て は , 下 記 2 件 の 報 告 が 見 ら れ た 。 ・ 1996 年 に B.M.Suleiman ら は , Ni 箔 の ス パ イ ラ ル パ タ ー ン の 抵 抗 素 子 温 度 セ ン サ ー で 低 温 の 測 定 に 使 用 し た 。 Ni 箔 の 厚 さ は , 10μ m で , そ の 両 面 に 25μ m の カ プ ト ン シ ー ト に 挟 ん で , 外 形 Φ 20mm の 素 子 に し て い る 。 そ の 素 子 構 造 を 図 1.15 に 示 す 。 50∼ 300K ま で の 抵 抗 温 度 係 数 を 図 1.16( Ni: 破 線 ) に 示 す 50 ) 。 そ の 温 度 係 数 は , 5000∼ 11000 ppm/K ( 0.005∼ 0.01/K) で あ っ た 。 抵 抗 値 は 0.7∼ 5.3Ω で あ り , 抵 抗 値 が 小 さ く 実 用 に は 難 し い 。 精 度 が 不 明 で あ り , 校 正 し な が ら 使 用 し て い る 。 従 っ て , 抵 抗 値 が 小 さ い こ と , 形 状 が 大 き い た め , 工 業 用 途 に そ の ま ま 適 用 で き な い こ と が 判 っ た 。 ・ 1998 年 に ア ル フ ァ エ レ ク ト ロ ニ ク ス 社 の 製 品 が あ り , プ リ ン ト 基 板 な ど の 温 度 補 償 用 に 使 用 さ れ , 形 状 は チ ッ プ 抵 抗 器 と ほ ぼ 同 等 の 数 mm 角 で あ り , そ の 外 観 を 図 1.17 に 示 す 5 1) 。 抵 抗 値 は 5Ω ∼ 1k Ω の 各 種 用 意 さ れ て い る 。 信 頼 性 は , 125℃ 1000h で , ±1%(±1.6K)の ド リ フ ト で あ り 高 精 度 に 対 し て は 悪 い 。 ま た , こ の 素 子 の TCR は , 純 粋 な 素 材 の TCR の 6800ppm/K(0∼ 100℃ 間 )に 対 し て 小 さ く , 6590 ppm/K で あ る 。 (2)Ni 薄 膜 を 使 用 し た 温 度 セ ン サ ー に 関 し て は , 1 件 の 報 告 が 見 ら れ た 。 ・ 1986 年 に Ludwig Sautter は , 電 子 ビ ー ム 蒸 着 法 で 作 成 さ れ た Ni 薄 膜 の セ ン サ ー で , DIN43760 に 適 用 し た 製 品 を 作 成 し て い る 。 形 状 は , 7.8×3×30 で , Ni 薄 膜 の 厚 さ は , 0.1μ m か ら 1μ m で あ り , 抵 抗 値 が 100Ω ∼ 1000Ω が 用 意 さ れ て い る 。 そ の 抵 抗 パ タ ー ン を 図 1.18 に , 構 造 を 図 1.19 に 示 す 52 )。 信 頼 性 は , 373.15℃ 5000h で , ±0.1%(約 ±0.2K)の ド リ フ ト 量 で あ る 。 精 度 は , ±0.5K で あ る 。 TCR が Ni 素 材 よ り も 低 く 6180ppm/K で あ る 。 Ni 線 温 度 セ ン サ ー が 実 用 化 し て い る ド イ ツ で Ni 薄 膜 温 度 セ ン サ ー も 白 金 薄 膜 温 度 セ ン サ ー と 同 様 に 開 発 さ れ て い る こ と が 判 っ た 。 し か し , 精 度 や 形 状 に お い て , そ の ま ま で は 高 精 度 に 適 し た セ ン サ ー で は な い こ と が 判 っ た 。 ま た , 常 温 付 近 で の 信 頼 性 に つ い て は , 明 ら か に さ れ て な か っ た 。 (3)ま と め と し て , 常 温 で の 高 精 度 (0.001 K)の 温 度 セ ン サ ー を 目 標 と し た セ ン サ ー は , 現 在 の と こ ろ 見 ら れ ず , 信 頼 性 も 常 温 付 近 で の 確 認 を し た 文 献 が 見 ら れ な い こ と か ら , 今 後 の 研 究 課 題 と し て 取 り 上 げ る 必 要 が あ る こ と が 判 っ た 。

(29)

図 1.15 Ni 箔 温 度 セ ン サ ー 素 子 5 0 )

図 1.17 Ni 箔 温 度 セ ン サ ー 素 子 5 1 )

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図 1.18 Ni 薄膜温度センサー素子52)

(31)

1.3.4 サーミスタ温度センサー

(1)管 理 さ れ た 工 業 用 サ ー ミ ス タ は , 250℃ や 350℃ の 信 頼 性 評 価 に お い て , ± 0.02K 程度の安定した特性を示している。しかし,抵抗値のばらつきや温度係数に 関連している B 定数のばらつきが大きい点や他社との互換性が無い等が欠点である 53) (2)ア メ リ カ製 の ビー ド 形 (小形 ガ ラ ス封 入 形 )サー ミ ス タに お い て ,小 形 の 安定 性 の あ る サ ー ミ ス タ素 子 が 販 売 さ れ て いる 54)。 安 定 性 を 確 認 し て 出 荷 し て い ると のことで,量産に適した数量を確保できていない不具合が生じている。 (3)W.D.McLennan らによって,薄膜サーミスタが 1975 年に気象衛星の調査用に 使用される目的で開発されていた。薄膜半導体サーミスタの材料は,錫セレン酸化 物 で ,6μ m の カ プト ン フ ィル ムに 水 晶を 両 面 に積 層し そ の上 に サ ーミ スタ の 薄膜 を積層し,さらに,水晶の保護膜を積層した素子である。その構造を図 1.20 に示 す。その素子の信頼性を図 1.21 に示す 55)。常温 3 ヶ月でも安定していることが判 った。しかし,精度は不明であり,抵抗値が高く,高精度温度センサーとしては適 していないことが判った。

(4)1990 年に Keiji Shiraishi らは,Co−Fe−Mn 系のサーミスタ材料に代わって, Mn− Ni 系の 材 料を使 用 し て, 高 温ま で使 用 で きる 耐 環境 性の 良 い サー ミ スタ を開 発した。その構造と信頼性の結果を図 1.22,図 1.23 に示す 56)。構造は,ガラス封 入 し た サ ー ミ ス タ で あ る 。 信 頼 性 は , 150℃ 4000h で , 抵 抗 値 変 化 率 が 2% ( ± 0.4K) 以 下 の非 常 に安 定 し た 結果 が 得られ た 。 ア レニ ウ スモデ ル を 適 用し , 250℃ で抵抗値変化の不良値を 3%(±0.4K)と設定すると,1013 時間以上の寿命を得ら れ,宇宙空間で使用できる信頼性の高いサーミスタが開発できた。高精度品は,± 1%(0.2K)である。しかし,高精度にはまだ不足していることが判った。 (5)1990 年に R.METZ らは,125℃1000hの高温放置試験における抵抗値ドリフト 量の結果,NiO/CuMnO2 系サーミスタは,空気中で急冷することにより,信頼性が 安定することを見出した。また,Ba を添加すると,粒界に BaMnO3 が生じてより安 定することが分かり,その変化量は約 2%である。その信頼性の結果を図 1.24 に 示す。サーミスタの結晶が,空気中で急冷した素子の粒径の写真を図 1.25 に示す 57)。その粒径が 25μm 以下であり,徐冷した素子より小さいことが判った。 まとめとして,様々な特徴あるサーミスタ素子を研究開発しているが,それぞれ のサーミスタの特性が異なり互換性が難しい点や常温で信頼性があり量産性のある 素 子 は 無 い ので , 常温 で の 高 精 度 (0.001 K)の 温 度 セン サ ーを 目 標 と し たセ ン サー は,今後の研究課題として取り上げる必要があることが判った。

(32)

図 1.20 サーミスタ薄膜温度センサー素子の構造 55)

(33)

図 1.22 サーミスタ素子の構造56)

図 1.23 サーミスタ素子の高温放置ドリフト56)

抵抗値変化量

(%

(34)

図 1.25 サーミスタのセラミック焼結体の SEM 写真 57)

(粒径が 20μm 以下,粒界に添加物が集合)

(35)

1.4 本研究の目的

1.1.2 項において常温において,0.001K の超高精度を必要としていることを述べ た。すなわち,超高精度で高感度で高速応答性の温度センサーは無いため,それらの 特徴を持つ温度センサーの開発は,マイクロマシンやナノマシンなどと呼ばれている 超微細加工技術や超精密計測技術の発展に不可欠であり,精密機械工業や半導体産業 等に,極めて重要な課題であることが明確になった。 前述の調査より,TCR では,約-3%/K であるサーミスタが優位であるが,抵抗の 温度特性が非直線性であり,抵抗のばらつきが大きく形状が自由に変更できにくいと の短所が見出された。それに対して,Ni は,TCR が Pt よりも高感度であり,抵抗の 温度特性がほぼ直線性であり,形状を自由に変更できる可能性があることから,Ni 素材を選定した。Ni 素材である Ni 箔を利用して常温付近における超高精度の温度セ ンサーを開発することを試みた。 Ni 箔は,下記のような特徴を有すると期待される。 ・TCR がほぼリニアで白金の 1.5 倍の感度をもっている。 ・バルク特性をもっており,特性のばらつきが小さい。 ・最新技術であるリソグラフィ技術の適用が可能である。 ・将来にわたって,小形化の可能性があること。 また,開発する温度センサーの目標を下記のようにした。 (1)0.001K のオーダーの超高精度温度センサーであること。 (2)常温付近での信頼性が,0.001K のオーダーであること。 (3)自己発熱を小さくするため,1000Ω程度の高抵抗値の温度センサーであること。 (4)形状がφ1 程度の保護管に入ることで,将来にさらに小形化ができること。 (5)低価格であり,量産ができること。 本研究では, 第 1 章にて,緒論として,現在実用化されている温度センサーの分析をし,超微 細加工技術や超精密計測技術を確立する上で不可欠な技術課題や問題点を見出し,超

(36)

高精度温度センサーの開発の重要性を明らかにしたことから,本課題を研究すること とした。 第 2 章は,超高精度温度センサーを開発するにあたり,それに用いる Ni 箔を検討 した内容を記載する。Ni 箔の性質,Ni 箔の応力,基板との接着応力を分析し,見出 した最適な Ni 箔の条件を示す。 第 3 章は,第 2 章で見出した条件で製作した Ni 箔を用いて,開発した超高精度温 度センサーに関する内容を述べる。開発した超高精度化技術とその高精度特性,安定 性や応答性等の特性を述べ,今後の課題も示す。 第 4 章は,次世代に必要となると高感度化のために,開発した高感度温度センサ ーの内容を述べる。極薄セラミック基板を使用した超小形の高感度温度センサーの新 技術および,その温度センサーの特性を示す。 第 5 章では,本論文の結論を述べ,今後の研究課題についても示す。

参考文献

1) 田 中 一 宜 監 修 , 十 倉 好 紀 編 著 : ア ト ム テ ク ノ ロ ジ ー へ の 挑 戦 1 日 経 BP,pp.14-58(2001) 2)http://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/technology/nikon_technology/ immersion/index.htm 3)http://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/technology/nikon_technology/ non_linear/index.htm 4)http://www.ave.nikon.co.jp/pec_j/society/story0203.htm 5)http://cweb.canon.jp/indtech/zygo/zmi2000.html 6)http://www.keyence.co.jp/microscope/laser/vk_9700 7)http://www.ave.nikon.co.jp/pec_j/society/story0203.htm 8)国立天文台編,理科年表,丸善,pp.475-476(1999) 9)JIS C1604,測温抵抗体(1997) 10)温度計測部会編:新編温度計測,(社)計測自動制御学会,pp.36-186(1992)

(37)

11)(社)日本電気計測器工業会:温度計測の正しい使い方,日本工業出版, pp.30-61(1990) 12)三井清人:温度のおはなし,日本規格協会,pp.133-141(1997) 13)(社)計量管理協会,センサの原理と使い方(3),コロナ社,pp.70-87(1984) 14) 木 村 秀 夫 , 櫻 井 弘 久 : 標 準 用 白 金 抵 抗 温 度 計 の 開 発 , 計 測 と 制 御 , VOL.42 , pp.922-925 (2003) 15)新井優,丹波純:白金抵抗温度計による温度測定の分解能,計測と制御,VOL.44, pp.688-693 (2005) 16)櫻井弘久:温度とは何か,コロナ社,pp.93-98(1992) 17)櫻井弘久,田村収,新井優:1990 年国際温度目盛に関する補足情報,計量研究所 報告,Vol.41,No.4 pp.31-82(1992) 18) 計 量 研 究 所 : 1990 年 国 際 温 度 目 盛 (ITS90) , 計 量 研 究 所 報 告 , Vol.40,No.4 , pp.60-69(1991) 19)桜井弘久:ITS-90 の不確かさの伝搬,計量研究所報告,Vol49,第 2 号, pp.49-65(2000) 20)新井優,岸本勇夫,山澤一彰,丹波純,佐藤公一,成島弘一,坂井宗雄:移送用 耐 振 型 白 金 抵 抗 温 度 計 の 開 発 産 総 研 計 量 標 準 報 告 , Vol.4,No.2 , pp.87-92(2005)

21)Shigeaki Sawada , Masaru Arai , Hirohisa Sakurai : Stability Study of Doubled Helix 2.5 ohm Platinum Resistance Thermometers at 1100 ℃ Bulletin of NRLM Vol.35,No.4,pp.89-96(1986)

22)Masaru Arai , Hirohisa Sakurai : Development of Industrial Platinum Resistance Sensors for use up to the gold point Bulletin of NRLM Vol.42,No.2,pp.59-62(1993)

23)Masaru Arai , Akiyoshi Kawata , Tomosuke Imamura , Kazuhiko Kinoshita : Platinum-sheathed High-Temperature Platinum Resistance Thermometers for Use up to 1200 ℃ AIST Bulletin of Metrology , Vol.3,No.1 , pp.53-57(2004)

24)Kazuaki Yamazawa , Masaru Arai:Measurement of the Insulation Resistance for the Development of High Temperature Platinum Resistance Thermometers with a Guard Electrode , AIST Bulletin of Metrology , Vol.3,No.1 , pp.59-64(2004)

(38)

Resistance Thermometer up to 1350 ℃ , AIST Bulletin of Metrology , Vol.3,No.1,pp.65-69(2004)

26)ネツシン㈱, SPRT カタログ (1995)

27)小 川 実 吉 , 後 藤 昌 彦 : 温 度 計 関 係 JIS の 10 年 と IEC 規 格 の 動 向 , VOL.42, pp.888-893(2003) 28) 小 倉 秀 樹 : 熱 電 効 果 を 用 い た 温 度 セ ン サ , 計 測 と 制 御 , VOL.45 pp.306-311 (2006) 29)JIS C1602,熱電対(1995) 30)櫻井弘久:温度とは何か,コロナ社,pp.98-100(1992) 31)温度計測専門委員会編集,温度計測 100 の FAQ (社)日本電気計測器工業会, pp.42-56(1999)

32)Manual on the use of thermocouples in temperature measurement, Table 11.4 , ASTM Special Technical Publication 470B, American Society for Testing and Materials,pp.233(1981)

33)JIS C1611,サーミスタ測温体(1995) 34)二木久夫,村上孝一:温度センサ,日刊工業新聞社,pp.45-85(1980) 35)サーモエレクトロニス社,TC Thermistors Type SP カタログ(1999) 36)新井優,岸本勇夫,山澤一彰,丹波純,佐藤公一,成島弘一,坂井宗雄:移送用 耐 振 型 白 金 抵 抗 温 度 計 の 開 発 , 産 総 研 計 量 標 準 報 告 , Vol.4,No.2 , pp.87-92(2005)

37)Shigeaki Sawada , Masaru Arai , Hirohisa Sakurai : Stability Study of Doubled Helix 2.5 ohm Platinum Resistance Thermometers at 1100 ℃ , Bulletin of NRLM,Vol.35,No.4,pp.89-96(1986)

38)Masaru Arai , Hirohisa Sakurai : Development of Industrial Platinum Resistance Sensors for use up to the gold point , Bulletin of NRLM , Vol.42,No.2, pp.59-62(1993)

39)Masaru Arai , Akiyoshi Kawata , Tomosuke Imamura , Kazuhiko Kinoshita : Platinum-sheathed High-Temperature Platinum Resistance Thermometers for Use up to 1200 ℃ , AIST Bulletin of Metrology , Vol.3,No.1 , pp.53-57(2004)

40)Kazuaki Yamazawa , Masaru Arai:Measurement of the Insulation Resistance for the Development of High Temperature Platinum Resistance Thermometers with a Guard Electrode,AIST Bulletin of Metrology,Vol.3,No.1,

(39)

pp.59-64(2004)

41)Masaru Arai , Akiyoshi Kawata:Properties of a High-Temperature Platinum Resistance Thermometer up to 1350 ℃ , AIST Bulletin of Metrology , Vol.3,No.1,pp.65-69(2004) 42)林電工㈱,CRZ 素子カタログ(2002) http://www.hayashidenko.co.jp/product/Element/crzj.htm (2006) 43)日本抵抗器㈱,白金薄膜温度センサカタログ(2003) http://www.jrm.co.jp/japanese/products/pdf_products/sensor/pf.pdf 44)尾出順,後藤昌彦,池上宏一,小川実吉:薄膜白金測温抵抗素子の環境試験と応答 特性,東京都立工業技術センタ研究報告,第 27 号(1998) 45)今村徹治,鍋澤浩文,岩坪聡,小幡勤,藤城聡史,丹保豊和:MEMSを応用した高 精 度 温 度 セ ン サ の 開 発 , 若 い 研 究 者 を 育 て る 会 研 究 発 表 会 研 究 論 文 集 , pp.25-30(2003) 46)緒方一雄:薄膜白金温度センサ,センサー技術,VOL2,No.9,pp.111-113,(1982) 47)David L.Timmins:Packaing of A thin film platinum resistor for use A quick response temperature sensor , Electron Components Conference Vol30th , pp.422−428(1980)

48)J.A.foerster,R.F.wolffenbuttel:High-Temperature Accurate Thermal Sensing using Integrated Platinum Resistors on Silicon , Conf Proc IEEE Instrum Meas Technol Conf,pp.538-540(1995)

49)三橋雅彦,大屋誠志郎,篠原小太郎:白金薄膜の成膜と薄膜測温素子の作成につ いて,電気学会フィジカルセンサ研究会資料,pp.17-20(2003)

50)B.M.Suleiman,S.E.Gustafsson,L.Borjesson:A practical cryogenic resistive sensor for thermal conductivity measurements, Sensor and Actuators A57, pp.15-19(1996)

51)アルファエレクトロニクス㈱, Ni 箔温度センサカタログ(1998)

52)Ludwig Sautter:Temperatursensoren aus Nickel in dunnshichttechnik , Tech Bau,No12,pp.837-840(1986)

53)計測自動制御学会温度計測部会,新編温度計測,pp.147-153(1992) 54)サーモメトリクス㈱, サーミスタカタログ(1999)

55)W.D.McLennan,R.T.Ooten,D.S.Bynum,J.L.Palmer,K.N.Pendley,C.R.Baxter:A thin film temperature sensor , Journal of Vacuum Science Technology , Vol.12, No1,pp.71-73(1975)

(40)

56)Keiji Shiraishi , Teruo Hayashi:STUDY ON RELIABILITY OF THERMISTORS FOR SPACE USE,ISRM’90,pp.433-438(1990)

57)R.METZ,R.LEGROS,A.ROUSSET,J.P.CAFFIN,A.LOUBIERE,BUI AI: The N.T.C. Thermistors of Low Resistivity and Large Stability,Silicates Industriels, pp.71-76(1990)

(41)

第 2 章 高精度温度センサー用 Ni 箔の検討

2.1 はじめに

前章にて,超高精度温度センサーの必要性を述べた。本章では,超高精度温度セ ンサーを開発するために,Ni 箔材料の物理的特性や製作条件を調査した。まず,Ni 箔の大きな TCR の物理現象に関して整理した。次に,高精度化のために必要な Ni 箔 の組織や応力および,基板に接合した Ni 箔の応力を調べて,最適な製作条件を見出 した。

2.2 Ni の物理的性質

2.2.1 Ni の物理定数

本文に関連した Ni の物理定数をまとめて,表 2.1 に記載する 1) 。 表 2.1 Ni に関する物理定数 Items Content Atomic Number 28 Atomic Weight 58.69 Electron Orbit 3d:8,4s:2 Debye Temperature 450[℃] Curie Point 354[℃] Atomic Radius 0.125 [nm] Crystal Structure FCC Lattice Constant 0.352 [nm] Thermal Expand 13.3×10-6 [℃-1](0∼100℃) Resistivity 6.844 [μΩ・cm](20℃) TCR(Temperature Coefficient of Resistance) 6810×10-6 [℃-1](0∼100℃)

(42)

2.2.2 金属の伝導特性

金属は,金属結合している。金属結合を生じさせている電子は,電子密度が非常 に高く,1cm3当たり 1022桁の数の自由電子がある。金属の電気伝導は,伝導電子の散 乱によって変化する。下記の 2 項が,主な散乱の原因である。 (1)金属結晶中に残存する不純物や格子欠陥 (2)結晶格子の温度に応じた振動 すなわち,格子の熱振動 上記 2 項のいずれも,結晶格子の規則正しい整列からのずれ(不整合)であって, その不整合に伝導電子が散乱されることによって,伝導が妨げられ,伝導度が変わる ことから生じている。(1)の結晶中の不純物や格子欠陥は,温度によってほとんど変 化しないが,(2)の格子の熱振動は,当然温度とともに,変化する。電気伝導は,比 抵抗の逆数で表わされる。 σ=1/ρ (2.1) 金属の比抵抗は,不純物による比抵抗をρi,格子の熱振動による比抵抗をρL とす ると,マチーセンの法則により,全体の比抵抗は,式(2.2)で表わされる 2) ρ=ρi+ρL (2.2) それぞれの抵抗の原理をもう少し詳細に記載する。 (1)不純物による比抵抗 3) ノ ル ド ハ イ ム ( Nordheim ) の 法 則 に よ り , 全 域 固 溶 体 の 合 金 に お け る 比 抵 抗 ρ B(x)は,母金属に不純物として混ぜた金属の濃度を x とすると,式(2.3)で表わされ る。 ρB(x)=αx(1−x) (2.3) αは,合金の両方の金属の種類によって決まる比例定数である。x(1−x)の因子は, 格子点に両方の原子が配置される不規則度の度合いを表わしている。 不純物の濃度が薄い場合は,式(2.3)において,x≪1 であるので,

(43)

ρB(x)=αx (2.4) になり,不純物の濃度に比例して,比抵抗が大きくなる。この不純物の濃度は,温度 によって変わらないので,不純物による伝導は温度特性が無い。 (2)熱振動による比抵抗 4),5),6) 近似的に格子の熱振動による伝導の温度特性を記載する。 格子の位置にある原子イオンが,単振動をすると仮定すると,振動方程式は, (M(d2x/d2t))+cx=0 (2.5) M;イオン質量,x;イオンの平衡位置からのずれ,c;そのずれを元に戻す復元力 の係数(ばね定数)である。振動数 ν は, ν=(1/2π)(√c/M) (2.6) 音子hν は, hν=(h/2π)(√c/M)=kΘ (2.7) Θ は,デバイ温度であり,ばね定数と質量とで決まる物質固有の特性である。 伝導電子が受けるポテンシャルの変化すなわち,エネルギーの変化が散乱の確率を支 配する。イオン変位xに伴うエネルギーはx2 に比例する。従って,散乱確率も x2 に比例する。すなわち,格子振動による伝導電子の散乱は,振動の振幅の 2 乗に比例 する(x2とは変位 x の 2 乗平均の意味)。よって,式(2.8)になる。 ρ∝ x2 (2.8) 1 サイクルの振動の平均ポテンシャルエネルギーは, cx2 であり,振動の全エネ ルギーの半分である。なぜなら,一定の全エネルギーが運動エネルギーとポテンシャ ルエネルギーとに,交互に交代するので,両方の 2 乗平均は等しい。よって,エネル ギーの等配則によりエネルギーは,kT/2 になる。 =kT/2 (2.9)  ̄  ̄ cx2  ̄  ̄  ̄

(44)

上記式(2.7)から,c=(4Mπ22Θ2)/h2であるので, =Th2/8π2kMΘ2 (2.10) よって,式(2.8)は, ρ=AT/(MΘ2) (2.11) になり,比抵抗は,Tに比例する。Aは,比例係数である。 よって,金属の格子振動による抵抗は,温度Tに比例して増大する。 式(2.11)をより正確な理論式にて表わすと,グリュナイゼンの式(2.12)となる。 ρ=AT5 (2.12) この式(2.12)では,高温の場合,X=Θ/T≪1 の時では,分母をそれぞれ指数関数 に分解すると,ex≒1+X,e-x≒1−X と表わされるので,式(2.12)に代入すると, ρ=AT5 (2.13) =(1/4)(Θ/T)4 (2.14) 式(2.14)を式(2.13)に代入すると, ρ∝AT5/T4=AT (2.15) よって,比抵抗は,高温の場合,温度 T に比例することが判る。 低温の場合,すなわち,X=1≪Θ/T の場合,式(2.12)の積分部分は,一定値に なる。よって,式(2.12)のρは,T5 に比例することが判る。実際には,銅の場合  ̄ x2

Θ/T 0 X5 dx (1−e-x)(e−1)

Θ/T 0 X 3 dx

Θ/T 0 X 3 dx

図 1.1  SPRT の外観と保管ケース                表 1.2  SPRT の仕様  仕様項目  仕様  抵抗値 (at0℃)  3Ω±0.5Ω  温度特性  R100/Ro≧1.39260  使用温度範囲  0℃〜1000℃  自己発熱誤差 (水の三重点)  1mA の場合約 0.3m℃,3mA の場合約 3m℃  再現性  ±0.01℃  保護管材質  高純度石英ガラス管,高純度アルミナ管  保護管外径  φ5mm  保護管長さ  600mm 
図 1.13  製作した薄膜白金素子 49)  
図 1.23  サーミスタ素子の高温放置ドリフト 56)    
図 2.26  熱処理無し試料の Ni200 回折とフィッティング結果 
+7

参照

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