相手の思いに気付き、自 分の気持ちや考えを
言葉で表現する幼児の育成
-落ち着いて物事を考えることのできる言葉掛けの工夫-
特別研修員
澤野
和子
(桐生市立北幼稚園)
《 研究 の概 要 》
本研究は、落ち着いて物事を考えることのできる言葉掛けの工夫をすることで、相手の
思いに気付き、自分の気持ちや考えを言葉で表現する幼児を育成しようとするものである。
具体的には、幼児の発達の時期や実態に応じて相手の考えを伝えたり、遊びの楽しさを知
らせたり、目的意識を知らせたりするなどの言葉掛けの工夫をしていくことで、幼児の変
容を明らかにしたものである。
○
はじめに
幼児 期は、自我が芽生え他者の存在を意識し、
かかわ りを求め始める時期である。幼児は、大人
や友達 とのかかわりの中で、感動的な体験、感情
的な体 験など、様々な体験を豊富にもち、自分の
気持ち や考えを自分なりに話したり、相手の話を
聞き、伝え合う喜びを味わったりする。
本学 級の実態から、自分の気持ちや考えを通そ
うと強 い口調で話したり、相手の批判をしたりす
る幼児 、思いが通らないと手が出る幼児、自分の
気持ち や考えが言葉で表現できずに、不本意なが
ら友達 の考えに従ってしまう幼児がいたりする。
こうい う幼児は、自分の気持ちや行動が落ち着か
ず、物 事をしっかりと考えることができないのだ
ととら えられる。気持ちや行動が落ち着くと相手
の思い に気付き、話を聞こうとしたり、思いを分
かろう としたりする。そして、友達とやりとりを
する中 で、自分の気持ちや考えを整理する力が身
に付い ていくと考える。また、落ち着いて物事を
考えることにより、目的意識や思考力が働いたり、
友達と 話し合って遊びを作り上げていくという協
同での 活動を進められるようになったりする。そ
こで、 落ち着いて物事を考えることができる言葉
掛けを 工夫していけば、相手の思いに気付き、自
分の気 持ちや考えを言葉で表現する幼児が育成で
きると考えた。
Ⅰ
研究の概要
1
基本的な考え方
(1)
相 手の思いに気 付き、自分 の気持ちや 考え
を言葉で表現する幼児とは
ここでは 相手の思いを、気持ち、考え、願い、
要求など、心の状態ととらえた。
幼児は、大人 や友達とのかかわりの中で、経験
したこと、見た こと、聞いたこと、考えたことな
どを、言葉で表し、伝えるようになる。しだいに、
相手に親しみを もつようになると、相手の表情や
言葉、態度など から相手の思いに気付き、話を聞
くようになり、 かかわりが深まっていく。このよ
うな過程をたど る幼児を、相手の思いに気付き、
自分の気持ちや 考えを言葉で表現する幼児ととら
えた。具体的な姿を次にあげる。
○
自分の気持 ちや考えを出したり、相手の思い
を聞いたりする幼児
・
思ったこ とや考えたことを、先生や友達に
伝えようとする。
・
相手の思 いを聞こうとするが、自分の気持
ちや考えを 主張し、いざこざになったり友達
に非難されたりするようになる。
○
友達関係が 安定し、思いを出し合いながら自
分たちで遊びを進めようとする幼児
・
自分の思 ったことを、筋道立てて話そうと
する。
・
相手の表 情や態度や言葉を理解しようとす
る。
・
相手の話を関心をもって聞こうとする。
群 H0 1 - 0 2 教 セ 平 1 8 .2 3 4 集・
いろいろな友達と一緒に活動する中で、自
分 の考えを伝えようとしたり、相手の考えを
受け入れようとしたりする。
○
友 達と一緒に目的をもって遊びを進めていく
幼児
・
互いの考え方の違いに気付くようになる。
・
互いの考えを取り入れて遊びを楽しくしよ
うとする。
・
自分たちの遊びたいイメージに合わせて、
相談しながら遊びを進めようとする。
(2)
落 ち着 い て 物事 を考 えるこ との でき る言 葉掛
けの工夫とは
幼児 が落ち着いているときの具体的な姿をあげ
る。
・
口調や表情が穏やかである。
・
一つの遊びにじっくり取り組む。
・
相手の話に対して、相手の顔を見て相づち
やうなずきを示す。
落ち 着いて物事を考えるとは、次のようにとら
えた。
気持 ちが不安定な状態では、一方的に自分の思
いを表 現するだけで、相手の思いを考える余裕は
ない。 気持ちが安定した状態のとき、それぞれの
気持ち や考えを言葉で伝え合うことができると考
える。
そこ で、落ち着いて物事を考えることのできる
言葉掛 けの工夫としては、次のようにとらえた。
○
自 分の気持ちや考えを出したり、相手の思い
と感情をぶつかり合わせたりする時期
・
悔しい気持ちを受け止めると共に、気持ち
の切り替えができるような言葉掛け
・
安心して話すことができるよう、うなずい
た り、相づちを打ったり、言葉を繰り返した
り 、言葉を補ったりする。また、感情が高ぶ
っ ているときには、落ち着いて話ができるよ
う呼吸を整えさせるような言葉掛け
○
友 達関係が安定し、思いを出し合いながら自
分たちで遊びを進めるようにする時期
・
遊びの楽しさを知らせる言葉掛け
・
幼児の興味関心が持続するような言葉掛け
・
共感していることを示す言葉掛け
・
対話が十分にできるよう、状況に応じて幼
児 の言葉を繰り返して言ったり、相手の気持
ちに気付かせるような言葉掛け
○
友達と一緒 に目的をもって遊びを進める時期
・
幼児同士 の気付きをつないだり広げたりす
る言葉掛け
・
互いの考 えを出し合いながら、遊びが進め
られるような言葉掛け
・
友達のよ さを認め、協力し合って活動が進
められるような言葉掛け
2
研究の内容及び方法
(1)
研究の内容
幼児の育ちを 見ていくと、おおよそ次のように
三つの時期に分 けて考えられる。それぞれの時期
にふさわしい手立てを講じることとした。
ア
自分の気持 ちや考えを出したり、相手の思い
と感情をぶつ かり合わせたりする時期には、幼
児のありのま まの思いを受け止めたり、気持ち
の切り替えが できるような言葉掛けをしたり、
相手の考えを 伝えたりするなどの言葉掛けの工
夫をすること で、自分の気持ちや考えを安心し
て言葉で表現 したり、相手に分かるように伝え
たりできるようにする。
イ
友達関係が 安定し、思いを出し合いながら自
分たちで遊び を進めるようにする時期には、幼
児同士の対話 が十分でき、遊びの楽しさを知ら
せる言葉掛け の工夫をすることで、相手の思い
に気付き、友 達と互いに気持ちや考えを表現す
ることを楽しめるようにする。
ウ
友達と一緒 に目的をもって遊びを進める時期
には、幼児同 士の気付きをつなぐ言葉掛けや目
的意識をもた せる工夫をすることで、相手の思
いに気付き、 気持ちや考えを言葉で表現しなが
ら目的に向か って遊びを進めることができるよ
うにする。
(2)
研究の方法
○ 対象
桐 生市 立北 幼稚 園
2年保 育5歳 児16 名
(男児7名
女児9名)
○実施期間
平成18年5月~12月
○ 方法
教 師 の観 察法 を基 に 記録 をと り、 分 析
する。
Ⅱ
実践
1
実践事例
枠内の分析については、○は教師がとらえた幼児の思い、*は教師の意図である。以下の事例につい
ても同様である。
アにかかわる事例
事例1
6月14日「人のこと悪く言っちゃいけないんだよ。」(互いの気持ちが言い合える状況作り)
幼児と教師の言動
分
析
○A児・B児・J児が音楽に合わせ、それぞれ振りを考え踊り始める。 ○ B 児 は、 教 師 に自 分 の こと を 認 め ○B児「先生、上手でしょう。」と、得意そうに言う。 てほしいと思う。 ○教 師「う ん、み んな自 分で考 えた んだよ ね。音 楽に合 ってと ても いい ○ A 児 は、 B 児 が自 分 の こと を ア ピ ね、楽しそうだよ。」と、幼児たちの踊りを認める言葉を掛ける。 ー ル する の で 、私 だ っ てう ま い の ○B児「私のいいでしょう。先生、まねしてもいいよ。」と言う。 よ、という思いがある。 ○A児「私のをまねして。家で考えてきたんだよ。」と言う。 ○ Y 児 は、 わ ざ と言 っ て 気を 引 き た ○見ていたY児「Aちゃんのがうまいと思うよ。Bちゃんの変なの。」 いのではないか。 ○そ れを聞 いたB 児「い けない んだ 。人の こと悪 く言っ ちゃい けな いん ○ B 児 は、 頑 張 って い る のに 何 で 否 だよ。私だって頑張っているんだから。」と大きな声で反論する。 定 す るの 、 と いう 思 い があ る の で ○Y児「ふん、おかしいよ。」B児「Yくん謝ってよね。」Y児「やだね。」 はないか。 ○教師は、黙って聞く。 * 言 い 合う こ と で、 互 い の思 い を 出 ○B児「先生、Yくん意地悪 なんだ よ。私のことおかしいって言うん。」 させたい。 と、教師に助けを求めてくる。 ○ B 児 は、 教 師 に自 分 の 気持 ち を 受 け止めてもらいたいようだ。 ○そ こで、 気持ち が高ぶ ってい るB 児とY 児を部 屋の端 に場を 移し 、座 * 場を変え、3人だけで話し合える よ って話をする。 うにし、気持ちを落ち着かせたい。 ○B児「何かやると、下手とか太ってるって言うんだもん、やだよ。」 ○教 師「そ んなこ と言わ れると 、嫌 だよね 。先生 だって 言われ たら 悲し * B 児 の嫌 だ と いう 気 持 ちに 寄 り 添 い気持ちになっちゃうな。」 い、B児の気持ちを言語化する。 ○Y児「Bちゃんだって、僕にいつも怒って言うんだよ。お返しだ。」 ○教 師「そ う、Y くんも 、嫌な こと があっ たんだ ね。お 互いに 、自 分の * B 児 とY 児 が 、今 の 状 況を 落 ち 着 こ とを悪 く言わ れたり 、威張 られ たりす るのが 嫌な気 持ちだ った んだ い て 考え ら れ るた め に 、互 い に 嫌 ね。どうしようか。」 だ と いう 思 い を整 理 し て、 幼 児 に ○B児「言わないようにするといいと思う。」 返 そ う。 Y 児 の行 動 や 気持 ち も 言 ○Y児「いつもそうに言うけど、大きな声で威張るんだよね。」 語化し、気持ちに寄り添おう。 ○B児「わかったよ、言わないよ。」と言う。 ○Y児「僕も下手って言わないよ。ごめんね。」事例2
5月29日
「弱いからやっちゃだめ。」(自分の気持ちを相手に伝える言葉掛け)
○Y児「シャベルで穴を掘ってたら、BちゃんがSちゃん弱いからやっ ちゃだめって言ったんで、Sちゃんが泣いたんだ。」と、教師におとな しいS児の代弁をして訴えにくる。 ○B児は、何で責められるの?とい ○B児「みんな私が意地悪言うのが悪いっていうんだよ。」 う思いがある。 ○Y児「やっちゃだめって言ったよ。」*
B 児 の こ と を 受 容 し な が ら 落 ち ○教師「Bちゃんはやっちゃだめって言ったけど意地悪は言ってないん 着いた話し方をするこ とで、 安心 だね。じゃどうしてやっちゃだめなの?」と、B児に聞く。 して自分の思いを言ってほしい。 ○B児「私は強いシャベル(金)、Sちゃんは弱いシャベル(プラスチッ○
B 児 は 、 誤 解 さ れ て い た こ と に ク)だからよく掘れないでしょう。だから使っちゃだめって言ったん 気付いていないようだ。 だよ。」 *B児の言い方を認める ことで 、B○教師「そうか、よく分かったよ。Bちゃん、今みたいに詳しく話すと 児は今後相手に思いが 伝わる よう みんなに分かると思うよ。」と、言う。 に話すだろう。 〈家庭との連携〉 母親は、 B児の強 い口調と落 ち着かな い態度を 心配し、 教師に時 々園での 様子を聞く 。母親には 、ひざの 上 にのせス キンシッ プをとった り、絵本 を読んだ りと、ゆ っくり過 ごす時間 を作ること 、母親も小 言を少な く すること などが良 いのではな いかとア ドバイス をする。 担任と情 報交換す ることで、 母親自身の 気持ちが 安定することにつながったと思われる。 〈考察〉 事例1 は、互い に自分の 嫌な気持 ちを言い合 えたこと で、結果 的に相手の 思いに気が 付くことが できた。 教 師が聞き 手になり 互いの気持 ちを言い 合える状 況作りを したこと 、幼児が 自分の気持 ちが分かっ てもらえ たと いう安心感 がもてるよ う、幼児の発 した言葉を 繰り返した こと、などの 言葉掛けが 、幼児の気持
ち
が落 ち 着くこと につなが り、自分の 気持ちや 考えを安 心して言 葉で表現 したり、 相手に分か るように伝 えたりで きるようになったと考える。 事例2は 、言葉が 足りなくて 誤解をし た事例で ある。教 師は幼児 がきちん と思いを伝 えられるよ う言葉を 補 ったり、 安心して 表現できる ような落 ち着いた 話し方を したり、 自分の思 いを伝えな いと分から ないこと があることに気付かせたりすることが必要であると考える。イにかかわる事例
事例3
9月4日「グループの名前、決めようよ」 (友達と互いに気持ちや考えを表現できるような言葉掛け)
幼児と教師の言動
分
析
○教師「グループの名前考えてね。」と、話合いの場を設ける。 * み ん なで 意 見 を出 し 合 い、 納 得 す ○A グルー プは6 人(A 児、B 児、 R児、 S児、 C児、 T児) が話 し合 る名前を決めてほしい。 う。「スティッチはどう?」「いいよ。」「私もいいよ。」黙っているR児 に、A児が「みんないいって言うんだけど、いい?」と聞く。 ○R児「えー、やだ。」と言うと、幼児たちがそれぞれR児の思いを聞く。 * 自 分 たち で 話 合い を 進 め、 そ れ ぞ 「ど うして 嫌なの ?」「か わいく ないよ。」「じゃ 、何がい いの?」「た れ の 意見 を 聞 くこ と が でき る よ う まごっち。」「ええ、やだよたまごっちなんて。」 になってきている。 ○B児「そんなこと言ったら、決まらないよ。」 ○ S 児 は、 み ん なの 中 で はま だ 恥 ず ○A 児が「 Sちゃ ん、さ っきか ら黙 ってる けど何 の名前 がいい の? 」と か し くて な か なか 自 分 の思 い が 言 聞くが、S児は黙っている。 えないようだ。 ○教 師は幼 児が話 し合う 様子に 耳を 傾けて いたが 、しば らくし て「 名前 * 幼 児 に任 せ る が、 時 々 今の 状 況 を はどうしたかな。」と、今の状況を確認する言葉掛けをする。 確 認 する こ と によ り 、 幼児 に 話 合 ○A 児「み んなス ティッ チがい いん だけど 、Rち ゃんが 嫌だっ てい うか いの柱をはっきりさせる。 ら決まらないんだ。」*
あ せら ず じっ く り話 し合 って ほ し ○教師「ほとんどの子が スティッチがいいんだね。」と、幼児の言葉を繰 いので、時間を十分取る。 り返す。「Rちゃんは、 納得し ないんだ。今日決まらなければ明日また 話し合ってもいいんだよ。」と、言う。 ○翌日、再び話合いをする。 ○教師はS児に「本当はどの名前がいいの?」とささやくように聞く。 S児「たまごっち。」と、小声で言う。 教師「そう、たまごっちが いいん だ。Sちゃんの気持ち分かったよ。」 * S 児 が思 い を 言え た の で、 話 す こ と、言えたことを認める。 と へ の自 信 が もて る よ う、 言 え た ○A 児「じ ゃあ、 ジャン ケンは どう ?」と 案を出 し、3 対3で ジャ ンケ ことを認めよう。 ンをする。R児は負けるが納得しない。 ○R児は、悔しい思いなのだろう。 ○A 児「R ちゃん 、負け たんだ よ。 それな のにど うして ジャン ケン した * R 児 が黙 っ て いる の で 、教 師 が ジん?」と言う。R児は黙っている。 ャンケンの結果を再確認する。 ○教 師「い ろいろ な考え が出て きた ね。ジ ャンケ ンでス ティッ チが 勝っ * R 児 は、 ジ ャ ンケ ン に 負け た こ と たんだよね。」と、幼児 の話合 いに理解を示し、内容を分かりやすく幼 が 自 分の 思 い をあ き ら める 要 因 に 児たちに返す。 な っ たと 考 え る。 自 分 の思 い を 友 ○しばらくしてR児はT 児に「スティッチでいい。」と、自分から言う。 達 の 方に 変 え るこ と で 、気 持 ち が ○B 児「R ちゃん がステ ィッチ でい いって 言って くれて よかっ た。 あり 楽になったのではないか。 がとう。」と言う。 * B 児 の落 ち 着 いた 優 し い気 持 ち を ○教師が「Bちゃんの優 しい言葉、先生うれしいな。」とみんなの前で言 受 け 止め 、 周 りの 幼 児 に知 ら せ る う。 ことで、皆にも認めてほしい。 〈 家庭との連 携〉 今回の 活動につ いて、 保護者に クラス 便りを 通して 幼児のそ れぞれ の思い や教師の 援助、 活 動のねら いなどを 知らせた。 その結果 、自分た ちの思い を言い合 い解決で きるように なった幼児 の成長に 驚いたという声が聞かれた。 〈考察 〉 今回のグ ループ決 めで、自分 の考えを 友達に伝 えるため に、話合 いを十分 してほしい という教師 の意図が あ った。R 児は、友 達に言われ 意地を張 ったのだ と考える が、友達 の説得、 そして友達 の意見に従 うことも 大 事である というこ とに気が付 いたのだ と思われ る。時間 を気にす ることな く話合いが できるよう にしたこ と 、幼児た ちと共感 しながら聞 いたこと 、幼児が 今、何の ことで話 合いをし ているのか 確認できる よう状況 を 整理した こと、な どにより、 友達と互 いに気持 ちや考え を表現で きるよう になり、6 人での話合 いが十分 にできたと考える。
ウにかかわる事例
事例4
12月6日
「クリスマスパーティーをしようよ。」
(幼児の遊びや気持ちをつなぐ言葉掛け)
幼児と教師の言動
分
析
○H児、A児、R児の3人が色紙で一つのクリスマスツリーを作る。 ○ 3 人 は気 が 合 い、 楽 し そう に 目 当 H児「ねえ、みんなでこれ飾ってクリスマスパーティーしない?」 てに向かって進めている。 A児、R児「いいよ。 じゃあ、もっと飾りを作ろうよ。」と言い、飾り を作りながらどんなパーティーにしようか話し合う。 ○教師「楽しそうだね。 先生もまぜてもらいたいな。」と、周りの幼児に * み ん なが ま ざ るこ と を 期待 し て 、 聞こえるように大きな声で言う。A児「まざっていいよ。」 周りの幼児に聞こえるように言う。 ○楽しそうな様子に、C児Y児も「まぜて。」と言う。 ○絵 本を作 り始め ていた J児、 T児 、M児 、B児 たちも 交ざる こと にす * 遊 ん でい た 遊 びが 生 か せる よ う な る。B児「何しようか な。」①教師「絵本をパーティーに使ったらどう 言葉掛けをする。 かなあ。」と提案する。 B児「そうだね。」と言ってクリスマスの絵本を作り始める。 ○ク ラス全 員の幼 児たち が交ざ り、 それぞ れが友 達とパ ーティ ーを イメ ージしながら準備をする。 ○Y児「9時30分から クリスマスパーティーが始まりますよ。」と、一 ○Y児は、早くパーティーを始め、 人で時間を決め、はな組(4歳児)に宣伝を始める。 会を進行したいのかもしれない。 ○H児「ええ、まだだよ。だって、飾りができてないもん。」 ○②教師は、幼児たちを集めて話し合う場を作る。*
遊 びの 内 容が 様 々な ので 、話 合 い 教 師「友 達と相 談して 、いろ いろ 準備し て頑張 ってる ね。だ けど どん を通して理解させたい。 な パーテ ィーに しよう か考え てい ること がいろ いろだ よね。 Hち ゃん たちは、どんなパーティーをしようと思ったの?」と聞く。 H 児「う ん、飾 りを作 ってク リス マスら しくす るでし ょう。 そし て、○
そ れぞ れ やり た い思 いが ある 。 友 ごちそう食べたり踊ったり楽しくしようと思ったんだよ。」 達 の 思い を 聞 いて 、 イ メー ジ が ふY児「うん、僕は、はな組を招待しようと思ったんだ。」 くらんできたのではないかな。 J児「私は絵本読んでやるの。」M児「プレゼント作ったよ。」 B児「ねえ、パーティーだから音楽に合わせて踊りしようよ。」 教師「踊りたい人もいるんだね。Hちゃんたちどうする?」 H 児「う ん、い ろいろ あって 楽し そうで いいと 思うよ 。それ じゃ あ、 10時30分に始めたらいいんじゃない。」 Y児「いいよ。」B児「楽しそう。」と、にこにこして言う。 教 師「み んなで 飾り付 けをし たら 、踊り を踊っ たり、 ごちそ う食 べた * 幼 児 のイ メ ー ジの 共 有 化を 確 認 す り、プレゼントを配ったりしてパーティーをすれば良いんだね。」 る。 〈考察〉 幼児たち は、友達 との結び付 きが強く なり、相 談しなが ら行う遊 びが増え てきている 。遊びがク ラス全体 に 広がった ことは、 幼児たちの やってみ たいとい う気持ち や、数日 行ってい る絵本作り の遊びをつ なぐこと に よい言葉 掛け(① )であった と考える 。また、 途中で中 断して(②)みんな で話し合わ せたことで 、パーテ ィ ーの内容 をはっき りイメージ させるこ とができ たと思う 。そして 内容が共 有化できた ことで、よ り充実し たパー ティーになっていっ たと考える。このように遊びを通して相手の思いに気付き、気持ちや考えを言葉 で 表現しな がらより 強くなった 目的意識 に向かっ て遊びを 進めるこ とができ たと考える 。幼児たち は、口調 や 表情が穏 やかにな る、相手の よさに気 付く、周 りの幼児 に認めら れる、友 達と相談し ながら楽し く友達と 遊ぶ、などの変化がみられるようになった。
〈おとなしく、友達との会話が少ないM児の事例〉
事例5
11月20日
「犬になりたいんだ。」
幼児と教師の言動 分 析 ○教師「大きなかぶの劇 をしようか。」と、クラス全員に呼びかけ、みん なで配役を相談しながら始める。 ○J児が「Mちゃん、一緒にネコになろうよ。」と、誘う。 ○ い つ もと 違 い 、J 児 に 従わ な い 。 ○M児「ううん。」と、首を振る。 自分の思いがあるんだ。 ○J児「ねえ、お願い。一緒にしようよ。」と、M児に頼む。 ○教 師「犬 になり たい子 ?」と 言う と、M 児が自 分から 手をあ げる 。教 * 本 当 は、 意 志 が強 い の だろ う 。 M 師「MちゃんとTちゃんだけか。でも自分で手をあげられたんだね。」 児 の 頑張 り を 認め 、 満 足感 を 味 わ ○劇が終わり、教師「M ちゃんの犬、元気にできてよかったよ。」と、M わせよう。 児の意志を認める。 〈 考察〉 友達の意 見に従っ て遊びを進 めてきた M児は、 少しずつ 自分の思 いを通せ るように変 化してきた 。仲良し の J児の誘 いにも乗 らず、自分 は犬をや りたいと いう思い を皆の前 ではっき り示すこと ができた。 様々な遊 びを通して楽しさを感じてきたこと、教師とかかわることで甘えたり信頼感がもてるようになってきたこと、 自 分の思い を通して も受け入れ られると いう安心 感や自信 がもてる ようにな ってきたこ と、などが 要因であ ると思う。最近では 、友達から「Mちゃんて、時々面白いことをぼそっと言うんだよね。」と言われ、周りの 幼 児の見方 も変化し てきた。M 児は、表 情が豊か になり、 教師にふ れあいを 求めたり、 教師や友達 に心を開 き少しずつ自分から話し掛けたりするようになった。2
事例 から明 らか になった幼児の 二つの傾向 と教
師のかかわりについて
相手 の思いに気付き、自分の気持ちや考えを言
葉で表 現する幼児を育成するために実践を行って
きた。その結果 、自分の思いばかり言い張る幼児
と、自分の思い を言葉で表現できない幼児の二つ
の傾向があるこ とが分かった。次にこの二つの幼
児の傾向について考察することとした。
傾向別幼児に対する教師のかかわり
〈1)自分の思いばかり言い張る幼児に対して
実態(内容と態度)
教師のかかわり
☆ 落ち着いてゆったりした言葉で対応したり、場を変えたりして幼 ・大きな声を出す。 児の気持ちの高ぶりを押さえる。(事例1) ・「意地悪は言ってないんだね。じゃ、どうして駄目なの?」(事例2) ☆ 相手の気持ちに気付かせるようにする。 ・口調がきつい。 ・「言われた相手はどんな気持ちだったのかな?」 ・批判的な言葉が多い。 「○ちゃんの言った言葉を聞いてどう思う?」(事例1) ・自分のことばかり話す。 ☆ 友達に優しい言葉で言ったり態度で示したりしたことを、全体の 前で具体的に知らせ、認められるようにする。 ・「○ちゃんの優しい言葉、先生うれしいな。」(事例3) ☆ 話合いの場を作り、相手の考えを聞いて受け入れられるように する。 ・周囲の言葉を聞いていない。 ・「○ちゃんは納得しないんだ。今日決まらなければ明日また話し合 ・自分のことばかり話す。 ってもいいんだよ。」(事例3) ・「どんなパーティーにしようか。考えてることがいろいろだよね。 ○ちゃんたちは、どんなパーティーにしようと思ったの?」(事例4)・話を最後まで
☆ 集団で相談しながら遊べるような場を作る。聞いていない。
・幼児たちを集めて話合いの場を作る。(事例4) ・相手に言い返されると ☆ 幼児の行動や気持ちを言語化し、気持ちに寄り添うようにする。 悔しくて泣く。 ・「自分のことを悪く言われたり、威張られたりするのが嫌な気持 ちだったんだね。」(事例1)〈考察〉
自分の思 いばかり 言い張る幼 児は、自 分を表現 したい、 認めても らいたい という思い が強い。教 師は、幼 児 の悔しい 、やりた い、うれし い、自分 もできる 、頑張っ たよ、な どの気持 ちを受け止 め、自分の 本音が出 せる状況を作ることが大事である。そこでこれらの思いを受け止め、幼児を認める言葉掛けに重点をおいた。 そ の結果、 幼児は相 手の「思い 」に気付 き、分か るように なり、自 分の言い 方を工夫す る、自分の 考えを変 える、自分との共通点を見いだす、相手のよいところを認める、など変化していくことが分かった。今後は、 幼 児の育ち とともに 、集団で相 談して遊 べる場を 作り、幼 児が協力 し合って 活動が進め られるよう な言葉掛 け をするこ とで、相 手の「思い 」に気付 き、幼児 の複雑な 思いまで 言葉で表 現できるよ うになって いくと考 える。〈2)自分の思いを言葉で表現できない幼児に対して
実態(内容と態度)
教師のかかわり
☆ 教師に心を開 き、安心して過 ごせるよう一緒に いる時間を多く作 ・教師の言葉掛けに り、必要な場面で落ち着いて言葉を掛けるようにする。 対して 、笑顔を見せる ☆ 毎 朝元気な声であいさつしたり、 ふれあいをもったりする。 だけで言葉はない。 ☆ 戸外で体を動かして一緒に遊び、リラックスさせたり体力を発散 ・うなずきが多い。 させたりする。・大勢の前だともじもじして