※ 本 稿 は 、 拙 稿 ﹁ 浄 影 寺 慧 遠 の 仏 性 思 想 ︵ 上 ︶ ﹂ ︵ ﹃ 駒 澤 大 学 仏 教 学 部 紀 要 ﹄ 第 六 五 、 二 〇 〇 七 年 三 月 、 以 下 ﹁ 慧 遠 仏 性 ︵ 上 ︶ ﹂ と 略 称 ︶ の 続 篇 で あ る 。 こ の 拙 稿 の 目 的 は 、 浄 影 寺 慧 遠 ︵ 五 二 三 ︱ 五 九 二 ︶ の ﹃ 大 乗 義 章 ﹄ 巻 第 一 ﹁ 仏 性 義 ﹂ 中 の ﹁ 釈 名 一 ﹂ に お け る ﹁ 性 ﹂ の ﹁ 四 義 ﹂ を 考 察 す る こ と に あ っ た 。 既 に 第 一 義 目 ﹁ 種 子 因 本 の 義 ﹂ と 第 二 義 目 ﹁ 体 の 義 ﹂ に つ い て 吟 味 し た の で 、 本 稿 で は 第 三 義 目 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ と 第 四 義 目 ﹁ 性 の 別 の 義 ﹂ に つ い て 論 究 し た い 。 尚 、 本 稿 は 続 編 な の で 各 節 と 引 用 番 号 は 前 掲 拙 稿 の 番 号 を 踏 襲 し て い る 。 ま た 、 ﹁ 慧 遠 仏 性 ︵ 上 ︶ ﹂ と 本 稿 と は 、 拙 稿 ﹁ ﹃ 大 乗 義 章 ﹄ の 研 究 ︵ 二 ︶ ︱ ﹁ 仏 性 義 ﹂ 註 釈 研 究 ﹂ ︵ ﹃ 駒 澤 短 期 大 学 仏 教 論 集 ﹄ 第 一 二 、 二 〇 〇 六 年 一 〇 月 、 以 下 ﹁ 義 章 ︵ 二 ︶ ﹂ と 略 称 ︶ の 研 究 篇 に 相 当 し 、 こ の ﹁ 義 章 ︵ 二 ︶ ﹂ に お い て ﹁ 仏 性 義 ﹂ の 訓 読 を 提 示 し た の で 、 ﹁ 仏 性 義 ﹂ 本 文 の 引 用 は 原 漢 文 と し 、 訓 読 上 の 過 ち が あ る 場 合 、 註 に お い て 訂 正 し た い 。 第 三 節 不 改 の 義 ﹁ 性 ﹂ の ﹁ 四 義︵ 1 ︶ ﹂ 中 の 第 三 義 目 は ﹁ 不 改 の 義 ﹂ で あ る 。 は じ め に ﹁ 不 改 の 義 ﹂ の 全 文 を 掲 げ れ ば 次 の よ う で あ る︵ 2 ︶ 。 [ 14 ] 三 、 不 改 名 性 。 不 改 有 四 。 一 、 因 体 不 改 、 説 之 為 性 。 非 謂 是 因 常 不 為 果 説 為 不 改 。 此 就 因 時 、 不 可 随 縁 、 及 為 非 因 。 故 称 不 改 。 故 経 説 言 。 若 殺 衆 生 、 喪 滅 仏 性 、 無 有 是 処 。 又 復 説 言 。 因 不 改 者 、 得 果 之 時 、 因 名 雖 改 、 因 体 不 亡 。 因 体 即 是 如 来 蔵 性 。 顕 為 法 身 、 体 無 変 易 。 非 如 有 為 得 果 因 謝 。 就 体 以 論 。 故 名 不 改 。 二 、 果 体 不 改 、 説 名 為 性 。 一 得 常 然 。 不 可 壊 故 。 第 三 、 通 就 因 果 自 体 、 不 改 名 性 。 如 麦 因 果 、 麦 性 不 改 。 以 不 改 故 、 種 麦 得 麦 、 不 得 余 物 。 如 是 一 切 。 仏 性 亦 爾 。 仏 因 仏 果 、 性 不 改 故 、 衆 生 究 竟 、 必 当 為 仏 、 不 作 余 法 。 経 説 仏 性 旨 要 在 斯 。 第 四 、 通 説 諸 法 体 実 不 改 名 性 。 雖 復 縁 別 内 外 染 浄 、 ニ ハ ロ イ 三 〇 九 駒 澤 大 學 佛 學 部 論 集 第 三 十 八 號 成 十 九 年 十 月
浄
影
寺
慧
遠
の
仏
性
思
想
︵
下
︶
岡
本
一
平
浄 影 寺 慧 遠 の 仏 性 思 想 ︵ 下 ︶ ︵ 岡 本 ︶ 三 一 〇 性 実 平 等 湛 然 一 味 。 故 曰 不 改 。 此 是 第 三 不 改 名 性 。 ︵ 大 正 蔵 四 四 ・ 四 七 二 上 ︱ 中 ︶ ま ず ﹁ 不 改 ﹂ と い う 語 そ の も の に つ い て 吟 味 し た い 。 ﹁ 不 改 ﹂ の 語 は 、 動 詞 ﹁ 改 ﹂ に 否 定 の 副 詞 ﹁ 不 ﹂ を 加 え た 語 で あ る︵ 3 ︶ 。 従 っ て 、 ﹁ 改 め ず ﹂ ﹁ 改 ま ら ず ﹂ と 動 詞 と し て 訓 読 す る こ と が 基 本 で あ る 。 そ の 意 味 は ﹁ 改 ま ら な い ﹂ ﹁ ∼ を 改 め な い ﹂ ﹁ か わ ら な い ﹂ ﹁ 変 化 し な い ﹂ で あ る 。 し か し 、 記 述 [ 14 ] に お け る 冒 頭 の ﹁ 不 改 を 性 と 名 づ く ﹂ と い う 表 現 の 場 合 、 ﹁ 不 改 ﹂ は 目 的 語 と し て 用 い ら れ て い る の で 名 詞 扱 い と 判 断 で き る 。 こ の 場 合 の 意 味 は ﹁ 変 化 し な い も の ︹ こ と ︺ ﹂ で あ る 。 記 述 [ 14 ] で 使 用 さ れ る ﹁ 不 改 ﹂ の 語 は 名 詞 扱 い さ れ て い る 場 合 が 多 い 。 ま た 、 こ の 記 述 [ 14 ] 中 の ﹁ 不 亡 ﹂ ﹁ 無 変 易 ﹂ ﹁ 常 然 ﹂ ﹁ 平 等 ﹂ ﹁ 湛 然 ﹂ ﹁ 一 味 ﹂ の 語 は 、 ﹁ 不 改 ﹂ の 同 義 語 と し て 用 い ら れ て い る の で 、 ﹁ 不 改 ﹂ は ﹁ 性 ﹂ の 常 住 性 ︵ ﹁ 不 亡 ﹂ ﹁ 無 変 易 ﹂ ﹁ 常 然 ﹂ ﹁ 湛 然 ﹂ ︶ と 一 元 性 ︵ ﹁ 平 等 ﹂ ﹁ 一 味 ﹂ ︶ を 示 す 語 と い え る 。 こ の ﹁ 不 改 ﹂ と い う 表 現 を 、 漢 語 と し て 理 解 す べ き な の か 、 何 ら か の サ ン ス ク リ ッ ト 語 に 対 す る 漢 訳 語 と 見 做 す べ き な の か に つ い て は 、 ﹁ 性 ﹂ を ﹁ 不 改 ﹂ と 規 定 す る 思 想 背 景 と と も に 後 述 す る 。 次 に 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ の 構 成 に つ い て 考 察 し て お く 。 ﹁ 変 化 し な い も の を 性 と 規 定 す る ︵ 不 改 名 性 ︶ ﹂ と い う 主 張 は 、 記 述 [ 14 ] に お い て 四 段 に わ た っ て 説 明 さ れ て い る ︵ ﹁ 不 改 有 四 ﹂ ︶ 。 四 段 と は 、 ﹁ 因 体 不 改 ﹂ 、 ﹁ 果 体 不 改 ﹂ 、 ﹁ 通 就 因 果 自 体 、 不 改 名 性 ﹂ 、 ﹁ 通 説 諸 法 体 実 、 不 改 名 性 ﹂ で あ る 。 の 四 段 の 構 成 と 内 容 は 、 ﹁ 性 ﹂ の 第 二 義 目 ﹁ 体 の 義 ﹂ と ほ ぼ 共 通 し て い る 。 構 成 上 の 共 通 性 を 示 せ ば 次 の よ う で あ る 。 ︻ 体 の 義 ︼ ︻ 不 改 の 義 ︼ 仏 因 自 体 ︵ 真 識 心 ︶ ︱ 因 体 不 改 仏 果 自 体 ︵ 法 身 ︶ ︱ 果 体 不 改 通 就 仏 因 仏 果 、 同 一 覚 性 ︱ 通 就 因 果 自 体 、 不 改 名 性 通 説 諸 法 自 体 ︱ 通 説 諸 法 体 実 、 不 改 名 性 両 者 の 構 成 上 の 比 較 に よ っ て 次 の こ と が 推 定 さ れ る 。 ﹁ 体 の 義 ﹂ の 目 的 は 、 ﹁ 仏 性 ﹂ の ﹁ 性 ﹂ は ﹁ 因 果 ﹂ ︵ ︶ 、 あ る い は ﹁ 諸 法 ﹂ ︵ ︶ の ﹁ 体︵ 4 ︶ ﹂ で あ る こ と の 論 証 に あ り 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ の 目 的 は 、 そ の ﹁ 体 ﹂ が ﹁ 不 改 ﹂ で あ る こ と の 詳 論 に あ る 、 と 。 つ ま り 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ は ﹁ 体 の 義 ﹂ に お い て 示 唆 さ れ て い た ﹁ 性 ﹂ = ﹁ 体 ﹂ が ﹁ 不 改 ﹂ で あ る こ と を 明 示 す る た め に 設 定 さ れ た 規 定 と い え る 。 ど こ で 示 唆 さ れ て い た か と い え ば 、 ﹁ 体 の 義 ﹂ の 次 の 一 節 で あ る 。 [ 15 ] 因 果 恒 別 、 性 体 不 殊 。 ︵ 大 正 蔵 四 四 ・ 四 七 二 上 ・ 一 ハ ニ ハ ロ イ ニ ニ ハ ハ ロ ロ イ イ ニ ハ ロ イ ニ ハ ロ イ
浄 影 寺 慧 遠 の 仏 性 思 想 ︵ 下 ︶ ︵ 岡 本 ︶ 三 一 一 九 行 ︶ こ の 他 、 構 成 上 の 問 題 と し て 、 ﹁ 体 の 義 ﹂ で 提 示 さ れ た ﹁ 能 知 性 ﹂ と ﹁ 所 知 性 ﹂ の 区 別 が 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ に お い て も 反 映 さ れ て い る の か が 気 に な る 。 ﹁ 体 の 義 ﹂ に お い て 、 は ﹁ 能 知 性 ︵ 認 識 す る 者 の 性 ︶ ﹂ 、 は ﹁ 所 知 性 ︵ 認 識 さ れ る 対 象 の 性 ︶ ﹂ と 区 別 さ れ て い た 。 こ れ も ﹁ 不 改 の 義 ﹂ に お い て も 有 効 な 区 別 と 思 わ れ る 。 と い う の も 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ は 、 ﹁ 内 外 ︵ 衆 生 と 非 情 ︶ ﹂ の ﹁ 性 ﹂ も 問 題 さ れ 、 ﹁ 外 ︵ 非 情 ︶ ﹂ を 含 む 以 上 こ れ が ﹁ 能 知 性 ﹂ で は な く ﹁ 所 知 性 ﹂ で あ る こ と は 明 白 だ か ら で あ る︵ 5 ︶ 。 し た が っ て 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ は ﹁ 能 知 性 ﹂ 、 は ﹁ 所 知 性 ﹂ に 関 す る 解 説 と 思 わ れ る 。 四 段 の 構 成 に つ い て は 以 上 で あ る 。 以 下 、 四 段 の 内 容 に つ い て 論 究 し た い 。 ま ず 記 述 [ 14 ] ︵ ﹁ 能 知 性 ﹂ ︶ に 共 通 す る ﹁ 因 ﹂ ﹁ 果 ﹂ ﹁ 体 ﹂ の 三 語 の 意 味 に つ い て 確 認 し て お き た い 。 先 述 し た よ う に ﹁ 不 改 の 義 ﹂ の 目 的 は ﹁ 体 の 義 ﹂ に て 提 起 さ れ た ﹁ 性 ﹂ = ﹁ 体 ﹂ が ﹁ 不 改 ﹂ で あ る こ と を 詳 論 す る こ と に あ る 。 し た が っ て 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ に お け る ﹁ 因 ﹂ ﹁ 果 ﹂ ﹁ 体 ﹂ の 三 語 は 、 ﹁ 体 の 義 ﹂ の 各 語 を 踏 襲 し て い る と 判 断 で き る 。 と す れ ば 、 次 の よ う に な る 。 ハ ロ イ ニ ハ ロ イ ニ ニ ハ ロ イ 以 上 の 確 認 を ふ ま え て ﹁ 不 改 の 義 ﹂ に つ い て 順 番 に 吟 味 し た い 。 [ 14 ] ﹁ 因 体 不 改 ﹂ は ﹁ 因 の 体 は 不 改 な り ﹂ と 読 み 、 そ の 意 味 は ﹁ 衆 生 の 真 識 心 = 如 来 蔵 性 は 変 化 し な い ﹂ で あ る 。 そ の 直 後 に こ の 場 合 の ﹁ 不 改 ﹂ に つ い て 、 ﹁ 是 の 因 は 常 に し て 、 果 と 為 ら ざ る を 説 き て 不 改 と 為 す と 謂 う に は 非 ず 。 ﹂ と 補 足 し て い る 。 こ の 補 足 説 明 は 、 ﹁ 不 改 ﹂ が 変 化 し な い こ と を 意 味 す る 以 上 、 ﹁ 因 ﹂ ︵ 衆 生 ︶ が ﹁ 果 ﹂ ︵ 仏 ︶ に な ら な い 、 と 誤 解 さ れ る 可 能 性 が あ る こ と に 注 意 を 促 し た も の で あ る 。 次 に ﹁ 又 復 説 き て 言 わ く ﹂ 以 下 で は 、 ﹁ 因 の 不 改 と は 、 得 果 の 時 に 、 因 の 名 は 改 ま る と 雖 も 、 因 の 体 は 亡 ぜ ず ﹂ と い う 。 こ こ で は ﹁ 因 の 名 ﹂ と ﹁ 因 の 体 ﹂ と が 対 比 さ れ 、 前 者 は 果 を 得 る 時 に 改 ま り 、 後 者 は そ の 場 合 で も 亡 び な い と さ れ る 。 こ の ﹁ 因 ﹂ ﹁ 果 ﹂ ﹁ 体 ﹂ を 先 に 確 認 し た 術 語 に 置 き 換 え れ ば 、 衆 生 と い う 概 念 ︵ ﹁ 因 の 名 ﹂ ︶ は 果 を 得 た 時 点 で 仏 に 改 ま る が 、 イ 因 衆 生 果 仏 真 識 心 ・ 如 来 蔵 性 体 法 身 同 一 覚 性 諸 法 自 体 ・ 諸 法 体 性 ・ 諸 法 体 実 イ ロ ハ ニ
浄 影 寺 慧 遠 の 仏 性 思 想 ︵ 下 ︶ ︵ 岡 本 ︶ 三 一 二 衆 生 の 真 識 心 = 如 来 蔵 性 ︵ ﹁ 因 の 体 ﹂ ︶ は 変 化 し な い 、 と 解 釈 で き る 。 こ の 主 張 の 前 提 に な っ て い る 考 え 方 は 、 ﹁ 名 ﹂ の 虚 偽 性 と ﹁ 体 ﹂ の 真 実 性 で あ る と 思 わ れ る 。 こ の ﹁ 名 ﹂ と ﹁ 体 ﹂ と の 対 比 は 、 ﹃ 楞 伽 経 ﹄ に お け る ﹁ 名 ﹂ ﹁ 相 ﹂ ﹁ 妄 想 ﹂ ﹁ 正 智 ﹂ ﹁ 如 如 ﹂ と い う ﹁ 五 法︵ 6 ︶ ﹂ 説 を ふ ま え た 主 張 と 考 え ら れ る 。 慧 遠 は ﹃ 大 乗 義 章 ﹄ 巻 三 本 ﹁ 五 法 ・ 三 自 性 義 ﹂ 中 の ﹁ 一 明 五 法 ﹂ に お い て ﹁ 名 ﹂ と ﹁ 体 ﹂ と に つ い て 次 の よ う に 述 べ て い る 。 [ 16 ] ﹁ 名 ﹂ と は 、 所 謂 る 妄 想 ・ 施 設 の 諸 法 の 名 字 な り 。 諸 法 を 宣 説 し 言 教 を 流 滅 す 。 故 に 称 し て ﹁ 名 ﹂ と 為 す 。 是 れ を 以 っ て ﹃ 経 ﹄ に 言 わ く 、 ﹁ 名 は 謂 わ く 瓶 の 等 き な り ﹂ と 。 又 復 た 世 間 の 仮 名 の 法 は 実 を 究 め れ ば ﹁ 体 ﹂ 無 し 。 但 だ 是 れ ﹁ 名 ﹂ 有 る の み 。 故 に ﹁ 名 ﹂ と 曰 う な り 。 ⋮ 中 略 ⋮ ﹁ 如 如 ﹂ と 言 う は 、 是 れ 前 の 正 智 の 契 う 所 の 理 な り 。 諸 法 の ﹁ 体 ﹂ は 同 じ な る が 故 に 名 づ け て ﹁ 如 ﹂ と 為 す 。 ﹁ 一 如 ﹂ の 中 に 就 い て 、 ﹁ 体 ﹂ は 法 界 恒 沙 の 仏 法 を 備 え る 。 法 に 随 っ て ﹁ 如 ﹂ を 弁 え れ ば 、 ﹁ 如 ﹂ の 義 は 一 に 非 ず 。 彼 此 は 皆 な ﹁ 如 ﹂ な り 。 故 に ﹁ 如 如 ﹂ と 曰 う 。 ﹁ 如 ﹂ は 虚 妄 に 非 ず 。 故 に 復 た ﹃ 経 ﹄ の 中 に は 亦 た ﹁ 真 如 ﹂ と 名 づ く 。 ︵ 大 正 蔵 四 四 ・ 五 二 三 上 ・ 八 ︱ 二 一 行 ︶ 記 述 [ 16 ] は ﹃ 四 巻 楞 伽 ﹄ に 基 づ い て 纏 ら れ た 慧 遠 の ﹁ 五 法 ﹂ 説 中 の ﹁ 名 ︵na -man ︶ ﹂ と ﹁ 如 如 ︵tathata -︶ ﹂ に 関 す る 箇 所 で あ る 。 ﹁ 名 ﹂ は ﹁ 妄 想 ・ 施 設 さ れ た 諸 法 の 名 字 ﹂ 、 あ る い は ﹁ 瓶 ﹂ の よ う な ﹁ 世 間 の 仮 名 の 法 ﹂ と 見 做 さ れ て い る 。 こ の ﹁ 名 ﹂ は 虚 偽 な る も の で あ り 、 そ の ﹁ 実 ﹂ を 論 究 し て も ﹁ 体 ﹂ は 無 い と さ れ る 。 で は ﹁ 体 ﹂ と は 何 で あ ろ う か 。 ﹁ 体 ﹂ は ﹁ 如 如 ︵ 真 如 ︶ ﹂ で あ る 。 ﹁ 如 如 ﹂ は 正 智 の 認 識 対 象 と し て の ﹁ 理 ﹂ で あ り 、 ﹁ 諸 法 ﹂ に 共 通 す る ﹁ 体 ﹂ あ り 、 法 界 恒 沙 の 仏 法 を 備 え る ﹁ 体 ﹂ で あ り 、 ﹁ 虚 妄 ﹂ で は な く 真 実 と い う 観 点 か ら ﹁ 真 如 ﹂ と 漢 訳 さ れ た と 述 べ ら れ て い る 。 こ の ﹁ 五 法 ﹂ に お け る ﹁ 名 ﹂ と ﹁ 如 如 ﹂ と は 、 記 述 [ 14 ] ﹁ 因 体 不 改 ﹂ に お け る ﹁ 因 の 名 ﹂ と ﹁ 因 の 体 ﹂ に 対 応 す る 。 つ ま り 、 衆 生 と い う 概 念 ︵ ﹁ 因 の 名 ﹂ ︶ は 五 法 に お け る ﹁ 名 ﹂ に 相 当 す る 。 衆 生 と い う 概 念 は ﹁ 瓶 ﹂ の よ う に ﹁ 名 ﹂ の み 存 在 で あ り 、 真 実 と し て は 存 在 し な い 。 真 実 と し て 存 在 す る の は 、 衆 生 の 如 来 蔵 性 = 真 識 心 ︵ ﹁ 因 の 体 ﹂ ︶ で あ り 、 こ れ は 五 法 に お け る ﹁ 如 如 ﹂ に 相 当 す る 。 そ し て 、 ﹁ 因 体 不 改 ﹂ は 、 ﹁ 因 の 体 と は 即 ち 、 是 れ 如 来 蔵 性 な り 。 顕 れ て 法 身 と 為 る も 、 体 は 無 変 易 な り 。 有 為 が 果 を 得 て 因 謝 す る が 如 き に は 非 ず 。 体 に 就 い て 論 ず る を 以 っ て の 故 に 、 不 改 と 名 づ く ﹂ と い う 言 葉 で 締 め く く ら れ て い る 。 つ ま り 、 ﹁ 如 来 蔵 性 ﹂ ︵ ﹁ 因 の 体 ﹂ ︶ は ﹁ 法 身 ﹂ と し て 顕 現 す る が 、 ﹁ 体 ﹂ と し て 同 一 で あ り 、 変 化 し な い ︵ ﹁ 不 改 ﹂ ﹁ 無 変 易 ﹂ ︶ の で あ る 。 ま た 、 ﹁ 如 来 蔵 性 ﹂ ︵ ﹁ 因 の 体 ﹂ ︶ か ら ﹁ 法 身 ﹂ へ と い う 方 向 性 は 、 有 為 法 の 因 果 論 で は な い と 主 張 し 、 慧 遠 は イ イ
浄 影 寺 慧 遠 の 仏 性 思 想 ︵ 下 ︶ ︵ 岡 本 ︶ 三 一 三 ﹁ 性 ﹂ = ﹁ 体 ﹂ を 無 為 法 で あ る 可 能 性 を 示 唆 し て い る 。 例 え ば 、 無 羅 叉 訳 ﹃ 放 光 般 若 経 ﹄ 巻 第 三 ﹁ 了 本 品 第 一 四 ﹂ に は 、 次 の よ う に ﹁ 無 為 法 ﹂ を ﹁ 不 改 ﹂ と 定 義 し て い る︵ 7 ︶ 。 [ 17 ] 無 為 法 と は 、 不 生 に し て 亦 た 不 滅 、 不 終 に し て 亦 た 不 始 、 常 住 に し て 改 ま ら ず 。 婬 ・ 怒 ・ 癡 尽 き る も 、 法 性 及 び 真 際 と 異 り 有 る こ と 無 き が 如 し 。 ︵ 大 正 蔵 八 ・ 一 八 下 ︶ こ の 記 述 [ 17 ] に お い て 、 ﹁ 無 為 法 ﹂ は ﹁ 不 生 亦 不 滅 ﹂ ﹁ 不 終 亦 不 始 ﹂ ﹁ 常 住 而 不 改 ﹂ と 規 定 さ れ て い る 。 こ の 用 例 で も ﹁ 不 改 ﹂ は 常 住 性 を 示 す 概 念 で あ る こ と が 確 認 で き る 。 ま た ﹁ 無 為 法 ﹂ は ﹁ 法 性 ﹂ と ﹁ 真 際 ﹂ と 同 一 の も の と も さ れ て い る 。 ﹃ 放 光 般 若 経 ﹄ は 、 如 来 蔵 思 想 を 説 示 す る 経 典 で は な い が 、 ﹁ 常 住 ﹂ な ﹁ 無 為 法 ﹂ ﹁ 法 性 ﹂ ﹁ 真 際 ﹂ を 説 く 経 典 と い え る 。 慧 遠 が ﹁ 因 体 不 改 ﹂ に お い て 、 ﹁ 有 為 ﹂ 法 と の 差 異 を 述 べ る の は 、 記 述 [ 17 ] の よ う な ﹁ 無 為 法 ﹂ を ﹁ 不 改 ﹂ と 表 現 す る 規 定 を 想 定 し て い る よ う に 思 わ れ る 。 し か し 、 本 当 に 重 要 な 問 題 は こ の 先 に あ る と 私 は 考 え る 。 仏 教 思 想 が 常 住 な 何 か を 主 張 す る と 見 做 す 立 場 に お い て 、 課 題 と な る の は 、 常 住 な 何 か を 因 に お い も 認 め る の か 、 果 に お い て だ け 認 め る の か 、 と い う こ と が 議 論 の 中 心 に な る 。 し か し 、 仏 教 思 想 が 無 常 を 主 張 す る と 見 做 す 立 場 に お い て 、 無 為 法 を 容 認 す る こ と 自 体 に 疑 義 を 覚 え ざ る 得 な い 。 私 は 後 者 に 属 す 。 も う 一 つ 重 要 な こ と は 、 南 北 朝 末 か ら 隋 に か け て の 中 国 に お け る 仏 教 思 想 の 課 題 は 、 無 常 の 思 想 を 展 開 す る こ と よ り も 、 常 住 の 思 想 を 確 立 し て ゆ く こ と に あ っ た こ と を 認 識 す る こ と で あ る 。 こ の 時 期 の 中 国 に お け る 仏 教 思 想 は 常 住 論 へ と 傾 斜 し て ゆ く の で あ る︵ 8 ︶ 。 し た が っ て 、 こ の 時 代 の 代 表 的 な 仏 教 思 想 の 展 開 を 高 く 評 価 す る 場 合 、 常 住 論 に 対 す る 評 価 と 不 可 分 で あ る は ず と 私 は 考 え る︵ 9 ︶ 。 次 に 記 述 [ 14 ] ﹁ 果 体 不 改 ﹂ に つ い て 吟 味 し た い 。 読 み 方 は ﹁ 果 の 体 は 不 改 な り ﹂ で 、 そ の 意 味 は ﹁ 果 の 体 は 変 化 し な い ﹂ で あ る 。 ﹁ 一 得 常 然 。 不 可 破 壊 故 ﹂ と は 、 ﹁ 一 度 ︹ 果 を ︺ 得 れ ば 常 住 で あ り 、 ︹ 性 は ︺ 破 壊 す る こ と が 不 可 能 で あ る か ら ﹂ と い う 意 味 で あ る 。 こ の ﹁ 一 得 ﹂ と い う 表 現 を 重 視 す る と 、 ﹁ 果 を 得 た 場 合 の み 常 住 で あ る ﹂ と 解 釈 す る こ と も 可 能 で あ る 。 し か し こ の 解 釈 は 慧 遠 の 意 図 す る も の で は な い だ ろ う 。 な ぜ な ら ば 、 す で に ﹁ 因 体 不 改 ﹂ を 主 張 し て い る 以 上 、 果 を 得 て も 得 な く と も ﹁ 性 ﹂ = ﹁ 体 ﹂ は ﹁ 不 改 ﹂ だ か ら で あ る 。 あ く ま で 、 ﹁ 一 度 、 果 ︵ = 法 身 ︶ を 得 れ ば ︹ 性 は 果 と し て ︺ 常 住 で あ る ﹂ と 理 解 す べ き と 考 え る 。 次 に 記 述 [ 14 ] ﹁ 通 就 因 果 自 体 、 不 改 名 性 ﹂ に つ い て 検 討 し た い 。 こ の 箇 所 の テ ー マ は ﹁ ﹁ 因 果 ﹂ の ﹁ 自 体 ﹂ が 変 化 し な い ︵ 不 改 ︶ こ と ﹂ で あ る 。 こ の ﹁ 自 体 ﹂ は ﹁ 体 ﹂ の 同 義 語 で あ る 。 つ ま り 、 ﹁ 不 改 の 義 ﹂ を 受 け て 、 ﹁ 因 ﹂ で あ れ ロ イ ハ ロ
浄 影 寺 慧 遠 の 仏 性 思 想 ︵ 下 ︶ ︵ 岡 本 ︶ 三 一 四 ﹁ 果 ﹂ で あ れ そ の ﹁ 性 ﹂ = ﹁ 体 ﹂ ︵ ﹁ 自 体 ﹂ ︶ は 変 化 し な い こ と を 再 説 し て い る 。 こ こ に 慧 遠 が ﹁ 因 果 ﹂ ︵ 衆 生 と 仏 ︶ と い う 制 約 を 受 け て も 変 化 し な い ﹁ 性 ﹂ を 重 視 す る 姿 勢 を 窺 う こ と が で き る 。 末 尾 に ﹁ 経 典 が 仏 性 を 説 示 す る 要 旨 は こ こ に あ る ﹂ と 結 論 づ け て い る よ う に 、 こ の [ 14 ] の 規 定 を 慧 遠 自 身 は 仏 性 思 想 の 要 だ と 見 做 し て い る 。 な ぜ か と い え ば 、 ﹁ ﹁ 仏 因 ﹂ で あ れ ﹁ 仏 果 ﹂ で あ れ そ の ﹁ 性 ﹂ が 変 化 し な い か ら 、 衆 生 最 終 的 に は 必 ず 仏 に 為 る べ き で あ り 、 他 の 法 に 作 ら な い ﹂ ︵ ﹁ 仏 性 亦 爾 。 仏 因 仏 果 、 性 不 改 故 、 衆 生 究 竟 、 必 当 為 仏 、 不 作 余 法 ﹂ ︶ か ら で あ る 。 衆 生 に は 変 化 し な い ﹁ 性 ﹂ = ﹁ 体 ﹂ が あ る か ら こ そ 、 必 ず 仏 に 成 る ︵ ﹁ 必 当 為 仏 ﹂ ︶ こ と が 可 能 だ と 慧 遠 は 考 え て い る の で あ る 。 こ の 学 説 の 前 提 に な っ て い る の は 、 次 の よ う な ﹃ 宝 性 論 ﹄ 巻 第 三 ﹁ 一 切 衆 生 如 来 蔵 品 第 五 ﹂ に お け る ﹁ 法 身 ﹂ と ﹁ 真 如 ﹂ と ﹁ 仏 性 ﹂ の 同 一 性 と い う 考 え で あ ろ う︵ 10 ︶ 。 [ 18 ] 向 の 所 説 の 如 く 、 一 切 衆 生 に 如 来 蔵 有 り 。 彼 は 何 の 義 に 依 る が 故 に 、 是 の 如 く 説 く や 。 偈 に 言 わ く 、 仏 の 法 身 は 遍 満 し 真 如 は 無 差 別 な り 皆 な 実 に 仏 性 有 り 是 の 故 に 常 に 有 り と 説 く 此 の 偈 は 何 の 義 を 明 か す や 。 三 種 の 義 有 り 。 是 の 故 に 如 来 は 一 切 時 に 如 来 蔵 有 り 、 と 説 く 。 何 等 を 三 と 為 す や 。 一 に は 、 如 来 の 法 身 が 一 切 衆 生 の 身 に 偏 在 す 。 偈 に ﹁ 仏 の 法 身 は 遍 満 し ﹂ と 言 う が 故 な り 。 二 に は 、 如 来 の 真 如 ニ の 無 差 別 な り 。 偈 に ﹁ 真 如 は 無 差 別 な り ﹂ と 言 う が 故 な り 。 三 に は 、 一 切 衆 生 に は 皆 な 悉 く 実 に 真 如 仏 性 有 り 。 偈 に ﹁ 皆 な 仏 性 有 り ﹂ と 言 う が 故 な り 。 ︵ 大 正 蔵 三 一 ・ 八 二 八 上 ・ 二 五 行 ︱ 中 ・ 六 行 ︶ こ の 記 述 [ 18 ] で は 、 ﹁ 如 来 蔵 ︵tatha -gata-garbha ︶ ﹂ の 存 在 理 由 と し て ﹁ 法 身 ︵dharma-ka -ya ︶ ﹂ ﹁ 真 如 ︵tathata -︶ ﹂ ﹁ 仏 性 ︵tatha -gata-gotra ︶ ﹂ の 遍 在 性 を 主 張 し て い る 。 つ ま り 、 ﹁ 如 来 蔵 ﹂ ﹁ 法 身 ﹂ ﹁ 真 如 ﹂ ﹁ 仏 性 ﹂ の 四 語 は 、 同 一 の 存 在 を 示 す 言 葉 で あ り 、 そ の 様 態 に よ っ て 名 称 を 異 に し て い る に す ぎ な い の で あ る 。 慧 遠 が ﹁ 因 ﹂ ・ ﹁ 果 ﹂ ・ ﹁ 因 果 ﹂ と い う 様 態 に お い て ﹁ 性 ﹂ = ﹁ 体 ﹂ の 常 住 性 や 一 元 性 を 主 張 す る 根 拠 は 、 こ の よ う な イ ン ド 以 来 の 如 来 蔵 思 想 を 根 拠 に し て い る 。 そ れ 故 に 、 ﹁ 衆 生 に お い て も 仏 果 に お い て も ﹁ 性 ﹂ は 変 化 し な い ﹂ ︵ ﹁ 仏 因 仏 果 、 性 不 改 ﹂ ︶ と 慧 遠 は 主 張 す る の で あ る 。 次 に 、 ﹁ 通 説 諸 法 体 実 、 不 改 名 性 ﹂ に つ い て 検 討 し た い 。 前 の が ﹁ 能 知 性 ﹂ で あ っ た こ と に 対 し て 、 は ﹁ 所 知 性 ﹂ で あ る 。 こ こ で い う ﹁ 諸 法 ﹂ と は 、 直 後 の 例 示 を 考 慮 す れ ば 、 ﹁ 縁 ﹂ と 言 い 換 え ら れ 、 具 体 的 に は ﹁ 内 外 ﹂ ︵ 衆 生 と 非 情 、 情 と 理 ︶ 、 ﹁ 染 浄 ﹂ ︵ 有 漏 と 無 漏 ︶ で あ る 。 こ の ﹁ 縁 ﹂ は ﹁ 条 件 ﹂ と い う 意 味 と 思 わ れ る 。 つ ま り 、 何 ら か の 条 件 の 具 体 例 を ﹁ 内 外 ﹂ ﹁ 染 浄 ﹂ と 称 し て い る と 私 は 解 釈 す る 。 ま た 、 こ こ で ﹁ 不 改 ﹂ と 規 定 さ れ る も の は 、 ﹁ 体 実 ﹂ と ﹁ 性 実 ﹂ の ニ ハ ロ イ ニ ハ ロ イ