学び合いによる授業改善 数学科から他教科への発展
高度学校教育実践専攻
授業実践・カリキュラム開発コース 浅 井 隆 宏
I
課題分析 1.課題設定の理由中学校では、平成
24
年度より新学習指導要 領が全面実施となる。この改訂においては、「生 きるカ」の理念が継承され、「知識基盤社会」と 言われる日新t
を生き抜くために必要な力がまぎ れもなく「生きるカJ
であることが示された。平成
8
年の中央教育審議会答申において「生き る力」が登場して以来、長い年月が経っている が、「生きる力J
で描かれていた理想をどれだけ 実現できているかは大きな疑問がある。「生きる 力」を支えるものは、「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな体」の調和であり、言し、換えると、
基礎的・基本的な知識・技能の習得を基盤とし た思考力・判断力・表現力等の育成学習意欲 の向上や学習習慣の確立、豊かな心や健やかな 体の育成のための指導の充実である。これらは、
学校教育全般において行われていくものである が、特にその中核となる授業の在り方について 見直していかなくてはならないと考える。
しかし、現場の教師は全体的に多忙感がある。
平成
1 8
年度「文部科学省教員勤務実態調査jによれば、授業の準備をする時聞が足りないと 感じている中学校教諭は
84.7%
であり、十分な 準備を行えないままに授業に臨んでいる現状が ある。また、授業の形態に注目してみると、従 来の一斉画一的な授業(以下斉授業)が多い ように感じる。一斉授業は、効率の面では非常実 習 責 任 教 員 村 川 雅 弘 実 習 指 導 教 員 川 上 綾 子
に優れているが、耕市侭
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カもすれば授業として 成立していても、子ども一人ひとりに目を向け てみると、学びが成立していないことがある。一斉授業に足りないものは、相互のかかわりと それを支える対話であると考えている。子ども が学校の中で大半を過ごすこととなる授業のあ るべき姿は、人と人がよりよい人間関係を築き ながら相互行為ができる場面があり、人ともの が相互にかかわりあう場面があり、人が自分自 身のことを振り返り自己省察できる場面がある 授業だと考える。そこで、「人と人、人ともの、
人と自己が相互のかかわりの中で学ぶいとなみ」
を学び合いとし、本研究の中核に位置づけた。
次に考えなくてはならないのが、教科の壁で ある。中学校は教科担任制であり、各教科聞の つながりが弱い。しかし、教師同士の学び合い なくして授業改善は困難である。教師自身も、
よりよい人間関係を築きながら相互に交わり、
自分自身を見つめ直しながら成長してし、かなく てはならない。激動する社会の中で、教師もそ の変化に柔軟に対応していかなくてはならない。
そこで、「学び合いによる授業」を中核とし、
異教科の教師同士が学び合いながらよりよい授 業を創造していくことを目指し、実習研究課題 を設定した。
2 .
学校の課題2010
年9
月の学校アセスメントより、学校 の課題は、生徒の自主性であることがわかった。このことは、教師にも向けられる課題であり、 育活動を創造していくことにある。
ws
の手法 生徒が主体となる授業になっているかを見つめ や留意点をまとめ、授業研究会等で活用した。直すことも必要となる。教師主導の授業では、
E
課題解決 生徒の自主性を育てることは難しい。そこで、 1.実践研究の計画学び合いの授業が求められることとなる。本研 実践研究を準備期間、数学科における授業改 究では、学ひ沿いを、生徒と生徒、生徒と教師、 善、学び合い試行期間、各教科における授業改 教師と教師の学び合いと幅広くとらえ、学校全 善の
4
期にわけで考え、田村( 2 0
11)のカリキュ 体を視野に入れた 「学び合いによる授業改善j ラムマネジメントモデノレを参考に、以下のようとして研究を進めていくこととした。 な研究の構想図を作成した。
3 .
先行研究と実践研究のかかわり (1) 佐藤学の I学びの共同体j佐藤は、 「学びの共同体」を提唱し、全国の小 中高において学校改革を推進している。「学びの 共同体jの理念は、 「ヴィジョン
J
、「哲学」、「活 動システム」である。その中でも重要となるの が、 「対話J
と 「協同」である。佐藤は、これま でのさまざまな実践の進展からいくつかの授業 の技法を示しており、それらについて分析した。(2) 西川純の 『学び合し、』
西川純の提唱する 『学び合し、』は、「学校観」、
「子ども観」、「授業観」の
3
つの基本的な考え 方からなっている。学びのプロセスはほぼ子ど もに任せられるとしており、全員が課題を達成 するとし、う結果を求める点に特徴がある。『学び 合し、』の授業における具体的な姿を分析した。(3) 東村山市立大岱小学U校の取組
平成
1 6
年に 「リニューアノレ大岱宣言jを行 って以来、劇的な変化を遂げた学校である。7
年間の軌跡をたどりながら、学校改革に成功し た要因を 「授業づくり」と 「校内研修」の2
つ の視点から分析した。(心村川|雅弘のワークショップ型校内研~
ワークショップ型校内研修(以下 WS)の意 義は、キャリアや専門性の違う教師同士が集ま り、 互いの相違を認め合いながら、 具体的な教
学u合いによる鍵・ヨR・E
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準備期の取り組み平成
22
年1 1
月からws
を導入した。育てた い生徒像を抽出するためのws
、それを具現化 するためのws
を行い、教職員の意見を丹念に 擦り合わせていった。そこから、グループ活動 に関する研究の必要性が見い出され、置籍校と 大学院、実習生が一体となって研究を進めていくことができた。
次に、学習の手引き書 「まなブック」を作成 し、平成
2 3
年度の授業開始とともに活用でき るようにした。3
学校課題フィールドワークI
の取り組み (1) 数学科における授業改善第
2
学年 「式の計算J
(全1 2
時間)の授業を 実施した。生徒主体の授業モデルを作り、置籍 校の数学教員2
名とT.T
を組み、協議しながら 授業を進めた。また、数学教室を中心に生徒が学びやすい環境整備を行った。全体をコの字型 の配置にし、すぐに
4
人グループでの学び合い ができるようにした。また、プロジェクタ一、スクリーン、拡大掲示器などの情報機器を常設 し、効果的な指導ができる環境を整えた。背面 黒板には、生徒の授業ノートや重要な数学的用 語を掲示し、生徒の学びの支援を行った。
( 2 )
学習の手引き「まなブ ック」の活用 入学式の翌日、「まなブック」を全員に配涌し、全体に関わる部分の説明集会を行った。詳細の 説明は各教科のオリエンテーションで行った。
「まなブ、ツク」の中に言言設されている基本的な 学び方を示した「学びの達人
J
については、最 重点、項目として定期的に調査し、全校体制で継 続して取り組んでいくこととした。(砂校内相彦の改善
平成 23年度当初に校内研修に関する協議の 場を設定し、前年度までの反省を生かした改善 案を作成した。主な改善点は以下の通りである0
.校内研修の中心を授業研究会とする。
• 1
人年間2
回の公開授業を行う。・その日のうちに授業研究会を行う。
‑授業研究会の形式は、授業者の意向に沿う0 .ビデオで授業の様子を撮影する。
‑授業者は、「授業後の考察」を作成する。
また、授業研究会がスムーズに進むように、
「授業研究会マニュアル」を作成し、活用した。
(心 学び合いに関する認識尺度の作成
授業の展開において、グ、ループ活動を単に取 り入れれば成果が上がるものではない。学校全 体で学び合いの授業を導入するにあたって、生 徒がグループでの学び合いをどのように認識し ているのかを把握することは有効なことだと考 え、「学び合いに関する認識尺度」を作成した。
因子分析の結果、「協同効用因子」、「個人志向因
子」、「互恵舵念因子」の
3
つを抽出し、3
つの 因子聞の相関関係や男女差の検定等を行った。4 .
各教科における学び合いの謝T
学校課題フィールドワーク Iでの活動を考察 し、今後の授業展開について協議を行った。そ こでは、教師主導の一斉授業の展開から脱却し、
生徒主体による学び合いの授業の必要性を考え、
全教科でグループ活動を取り入れた学び合いの 授業への転換を図ることとなったo 授業形態に ついては、数学科で実施しているコの字型の形 態を取り入れたべ。約
3
週間を学び合いの試行期 間とし授業を行った。その後、生徒と教職員に アンケートをとり考察した結果、 2学期以降も コの字型による学び合いの授業展開を行ってい くこととなった。5
学校課題フィールドワークE
の取り組み (1) 学ひも合いの授業の発展学校課題フィールドワーク
E
の最大の目的は、学ひ沿いによる授業を各教科へ発展していくこ とである。どのようにして質の高い学lJ合b吃 実現していくかが求められた。そこで、実習生
は各教科において
T2
として授業の支援を行う こととした。主な役割としては、グループの様 子をi
注意深く観察し、グループでの学び合いが 進んでいないグループをサポートしたり、グノレ ープの中で孤立している生徒のサポートをした りすることて、あった。50
時間程度、T2
として 授業の支援を行い、学び合いの授業が浸透しつ つあることを実感できた。( 2 )
授業研究会の発展授業研究会を校内研修の中心として活動して きた。その中で、
ws
型の授業研究会も円滑に 運営されるようになってきた。しかし、比較的 手軽に実施できる指導案拡大シートやマトリク ス法を用いたws
が多く、「授業研究会マニュアノレ」の中にあるビデオ検討会については、ま ったく実施されていなかった。そこで、iP
ad
を 活用したビデオ検討会を開発した。指導案拡大 シートによるws
を行いながら、iPad
による ビデオ上映を適宜行い、授業研究会に深まりを もたせることができた。6 .
異校種フィールドワークの取り組み 置籍校に隣接する小学校で異校種フィールド ワークを行った。学校の統廃合のため、一小学 校一中学校となり、小中連携の必要性はこれま で以上に増している。そこで、小中の教育活動 に関する現状と課題を把握した上で、実現可能 な小中連携の在り方を探ってみた。7 .
成果と課題( I )
生徒や教職員に対する調査結果3 ( 4 )
で作成した学び合いに関する認識尺度の 変容を分析した。特に大きな変容は見られなか ったが、個人的に変容のある生徒がいたため、インタピ、ユーを行い、変容の要因を探っ
f
こ。ま た、教職員へもインタビューを行い、学び合い の授業に関する考察を行った。(2) 実践研究の成果
各教科において学び合いによる授業が導入さ れ、日常の授業において、生徒が男女混合の
4
人グループで協同的に学び合うことができるようになったのが最大の成果である。また、学習 の手引き書「まなプ、ツク
J
をはじめ掲示物等、生徒が学びやすい環境を整えることができた。
授業研究会についても、従来の話し合い形式だ けでなく、
ws
型の授業研究会を取り入れるこ とで、教職員の参加意識は高まり、多様な意見 が出されるようになった。( 3 )
実践研究の課題「話し合し、」と「学び合し、」の違いを明確に していくことが必要となってくる。学びの質を
高めていくためには、グ/いープ活動後にそれぞ れが個の考えをもち、その上で全体で共有して いくことが求められる。
また、学習活動と学習形態を連動させていく 必要がある。コの字型の学習形態を中心に授業
を行ってきたが、万能な形態ではないため、学 習活動に適した学習形態を柔軟に取り入れてい
くことが求められる。
8 .
今後の展開平成
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年度より、中学校学習指導要領が全 面実施となる。学校としてどのような体制で新 年度を迎えるかは重要な問題である。そこで、「学び合し、
J
を明確にするためのws
を行い、平成
2 3
年度の取り組みを省察し、学び合いに よる授業を進化させていきたい。また、校内研修の在り方を見つめ直し、教職 員の同{~号↑生を高めることのできる授業研究会の システムを整えていきたい。
E 省 察
1.教職大学院入学前の自己省察
これまで
1 5
年の教職経験を「授業J r
学級経 営J r
部活動」の3
つの側面から省察した。2 .
教職大学院2
年間の自己省察教職大学院での学びは、これまでにない充実 したものとなった。そこで、 2年間の学びを「大 学院での授業
J r
視察を行った学校J r
教職大学 院の設定した 3領域 11観点J
から振り返り、最後に
2
年間の学びを総括した。[引用文献・参考文閥
‑中央教育審議会包008)r幼稚園、小学校、中学校、高等学校 及t月朝Ij支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)J
‑村)1除 制200助「授業にいかす教師がいきるワークシヨツ プ型車ff~のすすめJ (ぎょうせい)
・田村知子(2011)r実践・カリキュラムマネジメントJ(ぎょう せい)