様式8の1の2 別紙2
論文審査の結果の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 李 暁赫
コンクリートは、その構成材料であるセメントと水の化学反応によって硬化するため、なる べく長期間の湿潤養生を行うことが望ましい。その一方で、建築現場では型枠を転用しているた め、なるべく早期に型枠を外したい(早く湿潤養生を終了したい)という事情がある。そこで、
湿潤養生条件がコンクリートの耐久性および強度に及ぼす影響に関する研究が数多く行われ、湿 潤養生の程度を評価する指標として湿潤養生期間および湿潤養生終了時強度が提案されてきた。
しかし、コンクリートの調合や施工現場の環境条件によっては、定められた期間または強度に達 して湿潤養生を終了したコンクリートからも過度な水分逸散が生じるケースや、逆に定められた 期間よりも早く湿潤養生を終了できるケースがある。このため、長期的にコンクリート中に保有 される水分量を評価できる指標が必要とされている。また、近年プレキャストコンクリートの利 用が増えているが、湿潤養生条件がプレキャストコンクリートの耐久性および強度に及ぼす影響 を詳細に検討した研究例は少ない。
本論文は、上記の課題を解決するために取り組んだ研究の成果をまとめたものであり、その 概要は以下のとおりである。
1)使用セメントの種類、強度レベルおよび湿潤養生条件を幅広く設定した数多くのコンク リート供試体を作製し、それらの水分逸散量を継続的に測定した。その結果をもとに、コンクリ ートの湿潤養生の程度を評価する新たな指標として水分逸散率を提案した。
2)湿潤養生条件がコンクリートの強度および中性化進行に及ぼす影響を調べる実験を行い、
その影響を表す指標として水分逸散率が有用であることを証明した。また、X線回折分析により、
水分逸散率が大きいほどコンクリート中のセメントの水和反応が停滞し、コンクリートの強度増 進が鈍くなるメカニズムを明らかにした。
3)実務において早急に必要とされていたプレキャストコンクリートの品質を確保するため の湿潤養生期間および湿潤養生終了時強度を提案した。
4)水分逸散率を用いて、各種の湿潤養生を行ったコンクリートの強度発現を推定するモデ ルを構築した。本モデルを用いた推定の精度は必ずしも高くなかったが、その理論には萌芽性が あり、今後改良を施すことで実用の可能性がある。
以上のように、本論文にはコンクリートの湿潤養生条件が硬化後の強度や耐久性に及ぼす影 響およびその評価手法に関する有用な学術的知見が示されており、実用分野での貢献も期待でき る。
本論文については、平成28年2月10日に審査委員全員および関連分野の研究者、実務者の出席 のもとに公聴会が開催され、研究内容の発表および質疑応答が行われた。公聴会終了後に学位審
査委員会を開催し、本論文の内容について詳細に審査した。その結果、本論文は建築材料分野に おける新たな知見を示したものであり、工学的に価値が高く、研究内容の独創性・実用性におい ても極めて優れていると評価した。
よって、本論文は博士(工学)の学位論文に値するものと認める。