プラズマ化学気相成長法による多結晶及び非晶質 Si‑C薄膜の構造に関する研究
著者 竹下 哲義
発行年 1992‑09‑30
URL http://hdl.handle.net/2297/30548
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博 士 論 文
プラズマ化学気相成長法による 多結晶及び非晶質S i−C薄膜の 構造に関する研究
金沢大学大学院自然科学研究科 物質科学専攻
材料物性講座
学 籍 番 号
氏 名
主任指導教官名
89−2004
竹下哲義 長谷川誠一
目次
第1章序論 1
1.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ..・.......。........1
1.2 単結晶S i Cの特徴と課題 …・・…………・・・… ……・..1
1.2.1 特徴 ………・・…・…・………・・…1
1.2.2 課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… …・・・・・・・・・・・…3
1.8 非品質と微結晶S i Cの特徴と課題 ………・……・…・…5
1.4 多結晶S i Cの特徴と課題 ・・・… …・・・… …… …・……・6
1.5 研究の目的 ・………・… ………・… …・7 1.6 論文の構成 ・・………・・…………・……・・…8
参考文献 ・… ……・……・・........__..._...。....._....g
第2章 S i−C薄膜の堆積
2.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・…
2.2 堆積条件と評価方法 ・・…・
2.3 堆積速度 ・・…………・・
2.4 プラズマ発光分析 … …・・
2.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・…
参考文献 ……・……・…・・・…
18
・・・・・・・…@ .・・… .・・・… .・・.・… 13 ・・・・・・… .....・・・… .・・.… .・13
・・…@ .・・… ..・・.・・… .… .・・… 15 … ..・… .・・・・・・・… .・.・.… .19
・・・・・・・・…@ .・.・… .… .・・・・・… 22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… @ ..・・・・… 24
第3章 S i−C薄膜の結晶構造と欠陥 25
3.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 25
8.2 実験方法 ・・・・・・・・・… ……・・・・… …・…・…・・・・・・・・…25 3.3 XRD測定による緒品構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ……・…27
3.3.1 結晶系の組成依存性 …… …・…… …・・………27 3.3.2 緒品性の水素希釈率依存性 ・・………・……… …30 8.3.3 格子定数の変化 ・・………・…・・…・・・・・… …・…32
3・8.4 結晶構造の堆積温度依存性 ・……・・…・…・・・・・…36
8.4 ESR測定 … .・・.・ ...・.. ・.・・… …・・・・・・・・・・・・・・・・…38 3.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 41
参考文献 ・・…・… .・..... . ・.・....…….…・…・… …… …43
5.5.8 S i−C結合 ・……・… …・・・・… ………・……90 5.5.4 S i−C結晶相と非晶質相 … …… …・…・・・・・・…93
5.6 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 97
参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・… ..・・・… .・・・・・・・・… .…・・・・・・・・・… 100
第4章Si−C薄膜の結合構造 。。
4・1 S i−C系の結合構造モデル ・・・・… ……・・・・・・・・・・・・・・…45 4.1.1 四面体モデル ・・・・・・・… ……・・・・・・… …・・・・・…45 4.1.2 物理量の変化 ・・・・・・・・・・・・・… …・… ...・....._.49
4.2 実験方法 ・・…・・…・一… …・・………・・… ……・・…・52 4.3 XPSスペクトルと膜組成の決定 … …・・・・・・… …・・・・…52 4.8.1 組成の決定法 ・… …・…・・……・・………52
4.3.2 XPSスペクトルと組成 ・・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 53 4.8.3 化学シフト ・・・・・・・・・・・… ……・・…・・…・・……57 4・4 結合エネルギーと半値幅 ・… …・・…・…・・・… ……・・…58
4.4.1 結合モデルと化学シフト ・・・・・… …・・・・・・・・・・・・…58 4・4・2 S i2P結合エネルギー ・・・・… ……・・・・・・・・・・・…61 4・4・8 Cls結合エネルギー ・・・・… …・……・・・・・… …・62
4.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 64
参考文献 ・… …・・・・・・・… .・・ ・・・・・・・・・・・・… …・・・・… ……・・66
第5章Si−C薄膜の光物性 。。
5.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 68
5.2 実験方法 ・……… .・・・・・・・… 一……… …・…・… …・69 5・8 近紫外光から近赤外光吸収法による結果と考察 ・・・・・・・… ...70 5・4 赤外吸収法による結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… .・...75
5・5 ラマン散乱法による結果と考察 ・・・… ………・・・・・… ._82
5・5・1 S i−S i結合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…83 5・5・2 C−C結合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ....88
第6章Si−C薄膜への不純物ドーピング 1。。
6.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 105
6.2 実験方法 ・・…・… …・・・・・・・・・・… …・・…・・…・… …・105
6.8 抵抗率の変化 ・……… …・…・… …・…・…・・… …・・106
6.8.1 ドーピング濃度依存性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… …106 6.3.2 膜組成依存性 ・・・・・・・・… …・・・・… ……・… …・107
6.4 格子定数の変化 …………・… …・・…・…川・……・・109
6.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… .....................111
参考文献 ・………・・… ……・…・… …………・・… ……・・1I3
第7章結論
謝辞
研究関達論文一覧
114
119
120
第1章序論
1.1 はじめに
IV−IV族化合物半導体である炭化珪素(S i C)は、天然鉱物中にはほとんど存 在しないが、歴史的には古い化合物半導体であり、実験室では前世紀より合成、
そして研究されている一)。半導体レベルの低不純物革緒品の作製は長い間困難で あったが、1980年代になって高品質の立方品S i CがS i基板上に気相エピタキ シャル成長できるようになり2 3)、耐環境半導体材料として研究が活発になされ るようになった4 5)。一方、同じく1980年代初頭より非品質や微緒皇S i。.。
C。はヘテロ接合太陽電池6)、そしてごく最近になって多緒品S i Cを含めてヘ テロ接合バイポーラトランジスタヘの応用研究が活発になされている7 8)。この ように、S i−C化合物半導体は非品質から単結品まで幅広く研究されており、そ れらに関する国際会議が毎年開催されている4 6)。この論文は多結品及び非品質
S i。.。C。薄膜の、膜組成κに対する系統的な物性の変化を研究した結果をまと めたものである。
以下、研究の背景となったS i−C系半導体である、非品質、微結晶、多緒品、
そして単結晶S i−Cの特徴と、それらが有する課題について述べ、ついで研究の 目的、そしてこの論文の構成を述べる。
1.2 単結晶S i Cの特徴と課題
1.2.1 特徴5 9)
S i C結晶はS i(またはC)原子が4つのC(またはS i)からなる正四面 体の中心に位置する構造をとり、S iとCはともにIV族原子で、基本的には共有 結合であるが、S iとCの電気陰性度の差によって約12%のイオン性をもつ。
S i Cの結晶学上の特徴に原子の配列方法の多様性があげられる。その配列構造 には、S i原子とC原子を一対とした立方稠密充填構造と六方稠密充填構造があ
り、六方稠密充填構造にはさらに数多くの多層周期構造が存在している。これら は・S i−Cのdoub1e−layerの積層方法の違いから生じ、これら数多くの構造を 結晶多形(ポリタイプ)と呼ぶ。代表的な結晶多形である8C,2H,6H,1
5Rの物理的性質を表1.1に示す。緒品多形の表記法は、数字は繰り返し周期を、
そして英字は結晶対称性の頭文字でCは立方晶(cubic)、Hは六方品(hexaεon a1)・Rは菱面体構造(rh㎝bohedra1)を表す。立方晶系は3C−S i Cのみで、
これをβ一S i Cと呼び、そのほかをまとめてα一S i Cと呼んでいる。閃亜鉛鉱 型の8C−S i CではすべてのS i(またはC)原子周辺の原子配置は立方晶位置
(k)であり、ウルツ鉱型の2H−S i Cは六方品位置(h)をとる。そして、その ほかの結晶多形はこの2つの位置の組み合わせ構造をとる。
(2)禁制帯幅の大きい半導体ではp,n両伝導型の制御が難しいが、S i Cは 窒素や燐のドーピングでn型に、棚素やアルミニウムでP型になり、いずれもド ーピング量で1016〜1018㎝・3オーダのキャリア濃度の制御が可能である。
(3)電子移動度が大きく、8C−S i Cエピタキシャル膜での移動度は約750
㎝2/Vsが得られると報告されている川。また、そのほか半導体素子として高周 波や大電力素子として必要な電子の飽和ドリフト速度γ、、臨界電界E、、比誘電 率εo、そして熱伝導度κをS i,GaAsと比較して表1.2に示す12)。電界効 果型トランジスタでS iより、IMPATT(1叩act Ava1ance and Transit Ti me)ダイオードではGaAsより有用であろうとしている。
妻1.2SiC,Si,GaAsの特性比較(文献12)
表1.1S i Cの主な結晶多形の物理的性質(文献5)
緒品多形
3C 2H 6H
15R結晶系 立方品 六方品 六方品 菱面体
原子配置 k (h)2 (hkk)。 (hkhkk)。
格子定数 a。 4.3596 3.0763 3.0807 3.073
(A) θ。 5.0480 15.1174 37.30
禁制帯幅(eV) 2.20 2.86
S i C S i GaAs
γ、(㎝/S) 2X107 1X1O? 2X1Oバ
E。(V/㎝) 5X106 2×105 3X105
ε0 9.7 12 11
κ(W/㎝.C) 5.0 1.5 0.5
*最大速度
そのほか、耐環境半導体材料としてS i Cの特徴として、次のような点をあげ ることができる。
(1)8C−S i Cは1700.C程度以上で界拳するが、酸化遠度が遅く1000・C 程度まで大気中での加熱に耐えることができる。また、禁制帯幅(バンドギャッ
プ)が広く・3C−S i C電界効果型トランジスタは650.Cまでの動作が確認さ
れている10)。
1.2.2 課題
数多くの結晶多形の中で、3C■S i Cと6H−S i Cがもっともよく研究され ている。前者は移動度が高いため耐環境性の電子素子材料として、後者は表1.1 に示したように禁制帯幅が前者よりさらに広く、青色発光材料として研究が進め られている。しかし、いずれも実用化にはまだ解決しなければならない問題がい
くつかある。ここでは8C−S i Cを電子素子に応用する際の課題をまとめてみた。
単結晶8C−S i Cの作製は、主にS i基板上へのヘテロエピタキシャル成長法
一2一 一3一
が用いられている。この3C−S i Cのいちばん大きな問題として、単結晶S i基 板上にエピタキシャル成長させるのに1300−1400.Cという高温が必要なことで ある3 9)。S i CとS iには約20%の格子不整があるため、成長層にきわめて 高密度のミスフイット転位と積層欠陥が含まれ、さらには熱膨張係数の差により 引張応力が存在するg)。これらの欠陥を減少させるのに、(1)成長温度を下げ る13)・(2)基板に6H−S i Cを用いるM・1s)、といった方法が考えられ、欠陥 の低減に向けて研究されつつある。しかし、6H−S i Cインゴットの成長には 2400−2500 Cの高温を必要とし・大量生産や大型化はきわめて難しく、ようやく
1インチ・ウエハが得られるようになった段階であり、S i基板にとって代わるの は現状では難しい9)。そこで、(1)の方法が検討されており、NishinoとSarai e13)はプラズマ化学気相成長法(CVD)を用いて、1工50.Cでの8C−S i Cの成 長を報告している。さらに、最近分子線エピタキシー(MBE)などの検討もなされ ている16 17)・成長温度は・超高真空下でMB E法を用いて900 C程度まで低 下できることが報告されている17)。また、ごく最近、メチルシランを用いると、
減圧CVD法でエピタキシャル温度を750 Cまで低下できるという報告がなさ れた18)。このように、成長温度の低温化は始まったばかりである。
そのほか重要な課題として残留キャリアの問題がある。不純物をドープしてい ない3C−S i Cの残留キャリア濃度はlX1016㎝一3程度と高く、その大幅な低 下が必要とされる19)。この残留キャリアの起源について明確な解答はなされてい ない9)・窒素不鈍物の混入と言われてきたが、これだけでは説明がつかず、残留 キャリア濃度が反応ガス中のC/S i原子比に依存することから・・)、ノンストイ ギオメトリによるのではないかとも考えられているg)。アンチサイトや空孔など の点欠陥は結晶のストイキオメトリとも深く関係しており、結晶多形により空孔 密度が異なるという報告もあり21 22)、ストイキオメトリと欠陥の研究は、S i
Cを研究する上で大切な分野となっている23)。
さて・S i Cを素子に応用するときの課題についてであるが、ここでは応用素 子のひとつとしてヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)について述べる。
バイポーラトランジスタを高速化、高利得化する最も有効な方法の一つにヘテロ 接合構造を採用する方法があげられ・ワイドギャッフェミック材料として単結晶
S i Cが検討されている24)・HBT(nPn型)では、ぺ一スからエミッタに注
入される正孔に対する障壁の高さを、エミッタからぺ一スヘ注入される電子に対 する障壁高さよりも大きくできる。したがって、エミッタのキャリア濃度を低く、
ぺ一スのキャリア濃度を高くしてもエミッタ注入効率は低下せず、設計の自由度 が増すことになる。HBTに求められている高濃度で非常に薄いべ一ス層の形成 には、低温成長のエピタキシャル層を用いることが多く、1000 C以上の成長温 度ではべ一ス不純物の再分布を引き起こす原因となる。そのためにも、S i Cの 成長温度の低下が強く求められている 7 25)。
1.8 非昌質と微結晶S i Cの特徴と課題
一般に非品質(a一)S i、リC。:Hはシリコン源としてシラン(S iH。)、炭 素源としてメタン(CH。)やアセチレン(C2H2)を用い、プラズマCVDで基 板温度200−400 Cとして堆積される。このa−S i、.。C。:Hの大きな特徴とし て、炭素含有量ズを変化させることで禁制帯幅を自由に可変できるという点があ げられる26)。さらに、価電子制御が可能であるため、非品質S i:Hとのヘテロ 接合太陽電池や電子写真感光体材料など広い応用分野を有し、実用化もされてい
る6)。しかし、エの増加にともない欠陥も増加し、光学バンドギャップが2.1 eVになるとn,P型a−Si。一πC。:Hの場合で暗導電率は10−8〜10一?S㎝・1と 小さな値しか示さない6 27)。最近、a−S i。.。C。:Hの応用分野として単結晶
S i Cと同じくHBTが注目されている8・27)。HBTのエミッタ材料としてa−
S i。一。C。:Hを用いるために、またヘテロ接合太陽電池の高効率化のためには、
さらにワイドバンドギャップで不純物ドーピング特性を向上させ導電率を高くす る必要がある6 27)。この要請のために注目されているのが微緒昌(μC一)
S i、一κC。:H薄膜である。
徴結晶材料は非品質S iと微細結晶粒S iの混合相からなるμc−S i:Hに代 表され、その生成プロセスの研究が盛んに行われている28)。その特徴は、光学的 にはa−S i:Hに近いが、不純物ドーピング効率がa−S i:Hよりはるかに高い ため、a−S i:Hより2桁以上の低抵抗化が可能なことである27)。この微結品化 による低抵抗化をa−S iエーπCヵ:Hに対してもあてはめる試み、すなわちμc一
S iユ.蘂C。:H薄膜の作製が試みられている6 29 30)。しかし、高周波プラズマC VD法で作製した場合、μc−S i。.。C。:H薄膜はS i微細結晶とa−S i。.。
C。:Hの混合相になりやすく、κ>0.1では結晶化が抑えられ非晶質状態になる ために、高抵抗を示すことが多い27 3 )。最近、ECR(E1ectron Cyclotron R esonance)プラズマCVD法を用いて、S i CとS iの結晶相が混在するμc−
S i1.。C。:Hが得られたという報告がなされている6・32)。この方法でBドープ P型μc−S i。.。C。:Hを作製し、バンドギャプ2.25eVで導電率10S㎝一ユが 報告されている32)。しかしこの方法を用いても、バンドギャップの増加とともに 導電率は減少傾向にあり、バンドギャップ2.8eVでは導電率が10 2S㎝・1に
低下している32)。
このように、ワイドバンドギャップ(〜2.8eV)、低導電率(〜10S㎝・1)で、
S i C微細結晶とa−S iユ.。C。:Hの混合相からなるμc−S i、.。C。:H薄膜の 作製は現状では困難である。また、HBTに応用するためには、熱処理プロセス による水素の離脱、非品質材料が有する電気的ストレスなどによる経時変化が問 題となるであろう27)。
ユ.4 多結晶S i Cの特徴と課題
多結晶S i Cは、CVD7 33)、スパッタリング34)、プラズマCVD35・36)、
電子線蒸着37 38)、レーザー・アブレーション391州、などの方法で作製されてい る。特に高周波プラズマCVDは、通常の単結晶S i C成長に比ぺ600−700.C 低い堆積温度700 C前後での作製を可能にする、という大きな特徴を有す
る36 41 42)。堆積温度に関しては、通常のCVDでは低温分解可能なS i2H。と C.H。を用いて堆積温度900 C、レーザー・アブレーション法では基板温度 1070−1080.Cで堆積が行われている7 畑)。これらの報告は、それぞれ電子素子 材料への応用を意図しており、HBT7 33 37)、ピエゾ抵抗素子36)、薄膜トラン
ジスタ(TFT)38)・としての特性を評価している。特にHBTへの応用に関して は単結晶・非品質と微結品の項で述べたように、それぞれは多くの解決すべき課 題を抱えている・したがって・不純物ドーピング効率が高く低抵抗なS i Cが、
比較的低温(<1000.C)で堆積できる多結晶S i CのHBTへの応用が最も期待 される・・… 仙)。そのほか、S i C/S iヘテロ接合の応用として太陽電池やパ ワーダイオードなどがあげられている33)。
このように、最近多糖品S i Cは特に電子素子材料として検討され始めている。
しかし、検討が始まったばかりであり、単結品や非品質と異なり・その基本的な 性質についてはほとんど研究されておらず36 34 仙)、系統的な報告はなされてい ない川。したがって、多緒品S i Cの最大の課題は基本的な物性の解明であると
いえる。
1.5 研究の目的
この論文は、測定手段にX線光電子分光法(XPS)やラマン散乱法などを用 いて、堆積温度600−770.Cで、プラズマCVDを用いて作製したS i。一、C。薄 膜の構造研究の結果をまとめたものである。すでに述べたように・この温度範囲 付近で作製したS i。.、C、薄膜は多緒品状態になることが報告されており35 36)・
その最大の課題は基本的な構造を解明することである川)。この研究の主要な目的 は、堆積温度700 C近辺で堆積したS i。一、C。薄膜の膜組成κに対して・その 構造解析を系統的に行うことである。また、所望の特性を得るためには・種々の 測定手段で調べた物理的性質や化学構造と堆積条件の相関関係の理解が大切であ る。このためにも、膜組成変化に加えて堆積用ガスの水素希釈率や堆積温度を変 化させたときの構造変化を探ることをも試みる。
単結晶S i C成長温度の低減化の可能性を探ることは、すでに述べたように・
欠陥の低減やHBTへの応用のための最も重要な課題のひとつであり・プラズマ CVD法などを用いて成長温度の低下が試みられている13 17)。その目的では・
プラズマCVD法を用いた700 C付近の低温下でのS i1一。Cエ薄膜の緒品化の 様子や結合構造の変化を詳しく調べることは・単結晶S i C成長温度低下のため にも大切な試みになるといえる。さらに・膜中の欠陥はガスや膜の組成と深く関 係しており・・)、この研究はSiCを研究する上で大切な分野となっている22 23)・
そこで、S i。.元C、薄膜のκ〜0.5における結品性及ぴ欠陥や構造の変化を調べ
一6一 一7一
ることにより、緒品S i−C系材料物性の重要な知見が得られるであろう。
一方・非品質S i−C系での大きな興味のひとつは、膜中の異核結合の割合が最 大(完全なケミカルオーダリング)となるようなSi。.,C、薄膜作製の可能性に ついての研究にある43 )。非品質S i−C系では、異核結合の割合は堆積温度と
ともに増加するという報告や州、原料ガスの水素希釈により膜特性が向上すると いう報告がなされている46 )。したがって、非昌質や微緒昌に比べ高温である 700 C近辺で堆積したS i・一。Cκ薄膜でのκ、そして堆積温度や水素希釈に対 する結合構造変化を調べることは・S i−C系材料の物性解明に新たな知見を与え
るものとなろう。
1.6 占文の構成
この章では・論文の背景と目的を述べた。第2章では、S i、.、C、薄膜の堆積 条件などと堆積速度などについて扱い、ついで第8章では、X線回折法(XRD)
を用いて緒昌構造について議論する。S i1}C、薄膜の結合構造については、第 4章でXPSなどを用いて・また・第5章ではラマン散乱など光学的測定手段を 用いて解析を試みた・さらに・第6章では、不純物のドーピング効果について簡
単に触れる。
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一10一 一11一
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(1988).
2.1 はじめに
第2章 Si−C薄膜の堆積
前章で紹介したように、この論文中で扱うすべてのS i−C薄膜は高周波グロー 放電を用いたプラズマCVDによって作製されたものである。プラズマCVDは 放電によって生成された励起種を反応させて堆積する技術であり、熱CVDより も低い堆積温度で薄膜作製が可能である。このグロー放電プラズマは、電子温度 と気体温度との間に熱平衡が成り立っていない非平衡プラズマであることを特徴 とする。このプラズマ中においては、外部電界によって加速された高エネルギー 電子が気体分子と衝突して、これを励起やイオン化している。この化学的に活性 なラジカル種どうし、またはラジカル種と原料ガスとのあいだの複雑な反応によ って膜成長が起こっている。しかし、これらの反応機構は複雑であり、解明され
ていない部分が多い )。
本章では、堆積に用いたS i H。、CH。ガス混合比やH。希釈比などを変化さ せてS i。}C。薄膜の堆積速度の変化2)、そして発光分析によりプラズマ中の発 光種の変化を観測することで膜成長機構について検討を行う。
2.2 堆竈条件と評価方法
S i。.。C。薄膜は、H。によって希釈されたS i H。とCH。の高周波グロー 放電分解を用いて成長させた。堆積に用いた装置の概略図を図2.1に示す。プラ
ズマCVD装置は、反応管そして試料置台を溶融石英製とし外部に誘導結合電極 と電気炉を配置することでプラズマ発生部から金属材料の影響を無くしている3)。
この方法により700.Cという高温でも不純物導入が少ないプラズマを発生させ ることができる。S iH。の流量は[SiH。]=0,143〜2,162s㏄回と変化させ、
CH。流量は堆積速度を調べるとき以外はすべて[CH。]=1.32s㏄㎜で一定とし た。そして、H2流量[H。]を[CH。]に対して変化させた。堆積条件として、
S i H4流量比rq=[SiH。]/([SiH。]十[CH。])、水素希釈率r。=[H2]/[CH。]、
ヒーター 基板台
高周波コイル
原料ガス
・ ■. 、一
反応管
可
s
ローヒ{=図2.1プラズマCVD装置概略図。
ロータリ ポンプ
堆積温度r。、ガス圧力、そして高周波電力を表2.1に示す。水素希釈率と堆積温 度の標準条件はそれぞれr。=36とτ。=700.Cであり、この論文を通して特に 断らない限りこの条件で堆積したS i、一。C。薄膜を用いている。
堆積温度は反応管外に設けた電気炉を通して、反応管近辺まで挿入した熱電対 にて測定し、反応管入り口より基板位置に直接挿入した熱電対にて、温度較正を おこなった。反応管の内壁に付着した膜を四弗化炭素と酸素の混合ガスにてエッ チングすることで4)、内壁からの汚染を防ぎ履歴を除いた。
膜厚は、堆積時に石英ガラス基板(厚さ〜0.3㎜)上に置いた石英ガラスのマ スクにより生じた段差を、触針型輪郭形状測定装置(東京精密、サーフコム 200Bシリーズ)を用い測定することにより求めた。すべてのS i、.。C。薄膜で 膜厚は420−800㎜の範囲であった。
膜組成は第4章で扱うXPSで、S i2pとC1sラインの面積比を用いて決定 している。本章では、流量比と膜中に取り込まれたすぺてのC原子との関係を調 べるため、C1sラインより表面吸着Cのみを除いた総C含有量エ。。。、1を用いて
いる。
プラズマ発光分析は、反応管端部に設けた石英窓を通して分光器にガス流れに 平行な方向より発光を導くことで、スペクトル分析を行った。観測に用いたスペ
クトル線は、H*のパルマー系列Hγ(4340.47A線)、CH㍗の4300A系列
(4314.2A線)、SiHホの4142人系列(4142.3A線)であり、これらの輝
線の高さを強度とした5)。
2.3 堆積速度 表2.1堆積条件
rq([SiH。]/([SiH。]十[㎝。]))
r。([H2]/[CH。])
Td (.C)
全ガス圧 (Pa)
高周波電力[13.56…z] (報)
O.098〜0.62 20, 36. 50
250,600,650,700,725.770 33
70
図2−2に[CH・]一定の条件でr・を変化させて作製したS i、.。C蠣薄膜の堆 積速度の[SiH。]依存性を示す。堆積温度τd=700.Cで、図中の実線はハ=
36のデータに最小二乗法を適用して求めた直線である。いずれの水素希釈条件で も堆積速度は[SiH・]に対して直線的に変化しており、この条件ではS i。.、C、
薄膜の堆積速度はS i H・の供給によって待遠されていることがわかる。また、
r・による堆積速度の変化は少ない。図2.3には、同じく[SiH、]に対する堆積 速度の変化を、こんどはr・=36で一定としrdを変化させた場合の結果を示す。
図中の実線は図2.2と同じものである・τ・を変化させても、堆積速度はほぼ同 一の直線上にのっている。すなわち・この温度範囲では、堆積速度は堆積温度に
一14一 一15一
(.…
ε
\E
5
一①〇
」
⊂◎
竈
ω
◎
α①
0
30
20
10
0
Si1一。C。
rD
◎20●36 ●
△50
1CH41=1.32sccm
Td=7000C
O O.5 1.0 1.5 2.O
lSiH41 (sccm)
図2.2水素希釈率r・を変化させたときの堆積速度のS i H4流量 依存性。直線は最小二乗法の適用結果。
(.…
ε
\ε
5
ψo」①
⊂
◎
箏
ω◎ o.0
0
30
20
10
0
Si1一。C。
Td(oC)
◎ 600
0700 ●
△770
◎
●
1CH4ト1.32sccm rD目36
0 0.5 1.0 1.5 2.O
[SiH41 (sccm)
図2・3堆積温度τdを変化させたときの堆積速度のS i H、流量 依存性。直線は最小二乗法の適用結果。
よってほとんど変化せず、堆積の活性化エネルギーは小さいものと判断され、
[CH。]一定の条件のもとでは堆積速度は物質輸送待遠といえる。
図2.4に、[CH。]=1.32s㏄㎜で一定とした図2.2と同条件で、κ。。。。。の S i H。流量比rQ依存性を示す。このκ。。。、1はrQの減少とともにほぽ直線的 に増加しており、κ。。。。、く0.53となるrQの範囲ではr。による差異はなく、
ぽぽ同じ傾きを示している(図中の補助線はκ。。。、1:0.53)。しかし、興味深い ことに、κ。。。。1〜0.53より大きくなると、r。によりκ。。。。、の増加傾向が大き
く変化し、ハが大きくなるにしたがってその傾きは小さくなっている。つまり、
r。=20でばん。。。。1vs rqの傾きの変化はわずかであるが、r。二50では 篶。。、1はrqに対してほぼ一定の値を示すようになる。この結果より、(1)r。
にかかわらずκ。。。。ユ〜0.53を越えはじめるとC原子はS i1.。C。薄膜中に取り
1S1H41
00,330,881,98
0.7
O.6
ψO.5ε
セ◎O.4 0
0
0.3石ち
←O.2
◎ S i1_xCx
● ● ◎
●● ◎
O
△●
△◎
rD ●
020 036
△50 Td=7000C
0.1 1CH41昌1.32sccm O
●
◎ ●
OO.20.40.6
[SiH41/(lSiH41+lCH41)
図2.4水素希釈率r・を変化させたときの総C含有量尤、。、、1の S i H4流量比rQ依存性。図中の直線はハ。。、ユニ0.53 の変化点を示すための補助線である。
込まれにくくなる、(2)高水素希釈条件下ではrqを減少させてもκ。。。。1〜
0.53−0.54てほぼ一定の値となる・という事実が明かとなった。CH。流量一定 の条件で、rQはS i H・流量・すなわち堆積速度に深くかかわっている。した がって、図2.4の変化点は、一roや堆積速度ではなく、膜中の組成κ、。。。1によっ て決まっていると解釈される。
次に、図2.5に[SiH・]=O.441s㏄回と一定にした場合の堆積速度と総C含有 量κ・。い1の[㎝。]依存性を示す。図より、[㎝。]〜1.4s㏄回までは[CH。]の増 加とともに堆積速度も直線的に増加していることがわかる。この直線の傾きから 求めたCH。の存在による堆積速度への寄与は、[CH。]:1.32s㏄皿のとき1.8
㎜/囚inとなる。しかしながら、[㎝。]一定の場合、[SiH。]を減らしていくと堆 積速度はOに近くなり・CH4だけでは堆積はほとんど起こらないことになる.
(図2.2参照)。事実・図2.2の条件で[S川。]=0とすると、堆積速度は極めて 小さいことが分かっている。また・300 Cでのa−S iユ.、C、:Hの堆積に対して
も・高水素希釈下ではCH・のみによる堆積はほとんど行われないと報告されて いる6)・また・[CH・]〜1.4s㏄回を越えると、すなわちκ、。、、1〜O.53より大き
7
?
…
\6ε
5
£ 59
;…1
王4
88・
o
3Si1一。C.
Td目700.C
S1◎pe 1.36
<一
◎
O
◎一>
◎
●
O
旧21昌47.4sccm 1S旧41;0,441sccm
O.7
O.6
O.5
O.4
O.3 O O.5 1.0 1.5 2.0 2.5
1CH41 (sccm)
一⊂ ψ①⊂
◎O
○ 万一◎
←
図2・5S i H・流量一定としたときの堆積速度(●)と総C含 有量(O)のCH4流量依存性。
くなると、CH。流量一定の場合と同じくん。。。。、の増加傾向は緩くなってくる。
ここで、S iとS i Cの単位体積あたりの原子数を比較すると、単結品材料の 格子定数から求めたそれぞれの中のS i数は、5.OX1022/㎝3と4.8X1022
/㎝3となりほとんど等しい値となる。すなわち、C原子の増加はS i、.。C。薄 膜の密度の増加に結びついており、結合長の平均値が組成にほぼ比例すると仮定 すると、S i−rich状態では組成によらずS iの堆積によって堆積速度が決定さ れると考えることができる。堆積速度が[SiH4]に比例している図2.2の変化は
この状態を反映していると考えることができる。しかし、そうすると[SiH。]一 定とした図2.5で堆積速度は一定となるはずであり、傾きを持っているデータを 簡単には説明できない。
2.4 プラズマ発光分析
本節では、プラズマの状態を探り、前節で示した事実との関係について考察し てみる。図2.6にτo=700 Cで[CH。]を一定としたときの、 [SiH。]に対する
S i H心強度の変化を示す。条件は図2.2と同じである。図中の直線は[SiH4]=
2.17s㏄口のデータを除いて最小二乗法により決定したものである。図2.2に示 した堆積速度の変化と同様に[S川。]に対して直線的に変化している。この領域 ではHホ強度は[SiH。]とともにごく緩やかな減少傾向を示していた。非品質
S iの堆積を支配しているラジカル種がS i Hホ強度に比例しているという報告 があり7)、[CH4]一定の条件では、S i1一。C。薄膜の堆積においても堆積速度は 見かけ上ばばS i H業強度に比例しているといえる。
次に、CH。の分解について考えてみる。図2.7は図2.6と同条件で、 [SiH。]
に対するCH㍗強度の変化を示したものである。CH業強度はS i H㍗強度と異 なりr。にも大きく依存しており・r・が小さいときや[SiH。]が小さくなると、
CH㍗強度は[CH。]一定にもかかわらず増加傾向にある。このことより、もし CH㍗強度がCH。の分解量に比例すると仮定すると8)、水素希釈率が小さい膜 や[SiH。]が0.5s㏄皿(rQ〃0.27)以下と小さいところで、κ、。、。、の増加が期 待される。図2.4のκ・。 ・くO・53で・[SiH・]を固定したときのκ。。。。1のr。
一18一 一19一
(ω
一
⊂ コ
・o
」O
)
書工 ω
10
5
0
rD
◎20
●36
△50
△
△
●
lCH41=1.32sccm
OO.51.01.52.02.5
1SiH41 (sccm)
図2.6水素希釈率r・を変化させたときのS i H*発光強度の S i H。流量依存性。直線は[SiH4]=2.27s㏄皿のデー タを除いて最小二乗法を適用した結果である。
(ω
⊂
⊃
.o
」◎
)
書
工
O
10
5
O
rD◎
020 ◎ 036
● ◎ △50
● ◎、 ◎
◎
●△縦・●
△ △△△ ○
lCH4121.32sccm
OO.51.01.52.02.5
1SiH41 (sccm)
図2・7水素希釈率rDを変化させたときのCHホ発光強度のS i H、流量依存性。
による差は、このCH*強度の差により説明でき、この期待はかなっている。ま た・[SiH・]が小さいところでも、r。が小さいとC原子が膜中に取り込まれやす いことは定性的には説明できる。しかし、r。を固定した場合のκ。。。、1〜0.53 前後での状態変化は説明がつかず、期待に反する事実が示されている。この、
0.53という値がストイキオメトリに近いことより、C−richになることにより現 れるC原子同士の結合構造がS i原子同士の場合とは大きく異なることが推測さ
れる。
このCH*強度がr。や[SiH。]に強く依存する理由として、単純には、r。
が小さく[H。]が少ないときや、[SiH。]が少ないときにCH。の分圧が増加する ことにより、S i H・より分解速度の遅いCH。の分解量が増えるためと考える ことができる9 10)。これらの混合ガスの高周波プラズマ中で、CH。の分解速度 はS i H・の約1/10との報告もある川。しかし、r。が小さい場合、[SiH。]
が小さくなるとCH4が急激に増加している様子は簡単には説明できない。そこ で・CやS iに関するラジカルや分子同士の気相反応が考えられ、ひとつの解析 手段にC2種の発光測定(Swan系列など)がある12)。しかし、ここではH。種 の強い発光に隠れてはっきりとは認められず、この気相反応に関しての情報は得 られなかった。また・ここで用いている水素希釈条件下では、Hγの発光強度は
r・=20以上で飽和傾向にあり、堆積には水素ラジカル反応より水素による CH・の希釈効果が大きく影響する、と考えられる条件であることをつげ加えて
おく。
したがって・CH・の分解状態はS i H。そしてH2の分解状態と別個に考え ることは困難であると判断でき・C原子の膜中への取り込まれ方は、S i H、、
H2そしてκい・・1に深くかかわり複雑な挙動を示していると緒論する。また、
[CH・]が一定であることと・r・:50でCHホ強度の[SiH。]に対する変化が少 ないことより水素希釈はCH・の分解反応を制御していると考えることができる。
こんどは、やはりτ・=700.Cで[SiH。]を一定として[CH4]を0.7から 2・2sc㎝まで変化させたときのCH㍗強度を図2.8に示す。この条件は、
図2.5と同じである。CH*強度は・[CH・]に対しほぼ線形に増加しており、
S iH木強度はCH水強度の変化に比べて緩やかに減少している。すでに述べた ように、単位体積あたりの原子数の変化より、κく0.5では組成によらずS iの
10
(坐
E コ
ー。 5き
)
◆工
O
O
O
ぐCH○
◎ O SiH.一>
◎ O O
●
旧21=47.4sccm ぶH41=O.441sccm
10
5
O
O O.5 1.0 1.5 2.0 2.5
1CH41 (sccm)
(名
.三 コ
.o
」o
)
書工
uつ
図2.8S i H。流量一定としたときのS i Hホ(O)とCHホ(●)
発光強度のCH。流量依存性。
堆積により堆積速度が決定されると考えることができる。そうすると、この S i H*強度から図2.5の堆積速度の変化を説明することはできない。この事実 は、Cに関するラジカルとSiに関するラジカルの表面反応によるラジカルの付 着係数変化、またそれらのラジカル同士や分子などとの気相反応、堆積薄膜の密 度の低下などの原因をあげることで説明できる13 M)。しかし、CH、流量一定 のときの図2.2や図2.4での堆積速度と[SiH。]やκ、。、、、とrQの間の直線性関 係や、これらのデータから得られる堆積速度とκ、。、。1の関係からん、。、、1の変化 に応じてC原子は膜密度を増加させていると考えられる。したがって、膜中への S i原子の取り込みに関して、CH。分解の影響を受けている可能性が高い。
C。薄膜の膜組成や堆積速度の変化、そして発光分析によりプラズマ中の発光種 強度の変化について観測を行った。
水素希釈率r。を変化させたときの総カーボン含有量のrq依存性を調べた結 果、次のような事実が明かとなった。
(1)r。にかかわらずκ。。。、1〜O.53を越えはじめるとC原子はS i1.。C。薄 膜中に取り込まれにくくなる。
(2)高水素希釈条件下ではrQを減少させてもκ。。。、1〜0.53−O.54てほぼ一定 の値となる。
堆積速度やこのようなκ。。。。、の変化を、CH。やS i H。の流量変化やCH㍗
やS i Hホの強度変化から簡単に説明することはできない。また、CH。の分解 状態はS i H。そしてH2の分解状態と別個に考えることは困難であると判断さ れ、C原子の膜中への取り込まれ方は、CH。、S iH。、H。そしてκ。。。。。が深
くかかわり合い複雑な挙動を示している。このことが、S iユ.。C。薄膜の物性を 決定し、水素希釈はCH。の分解反応を制御していると考えることができる。
CH。流量を固定しても、S iH。流量を固定してもκ。。。、1〜O.53の前後で 組成変化の様子が一変し、その様子がr。によっても変化する。この0.53とい
う値が有する意味、そして水素希釈率による構造変化についての検討を次章より
行う。
2.5 まとめ
本章では、S i H。、CH。ガス混合比やH2希釈比などを変化させてS i、.,
一22一 一23一
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11)橘邦英,松井安次:真空31,179(1988).
12)O・M・t・・㎜・t・,H.T・・hi㎜・,・・dY.K・…ki:Thi・S・1id月1口。128,341 (1985).
13)M・S・C・・d・… dD.R.C…:J.^口.Ch㎝.S・・.106.5421(1984).
14)松田彰久:真空31,188(1988).
3.1 はじめに
第3章 Si−C薄膜の結晶構造と欠陥
S i Cの緒品構造は、第1章にて述べたとおり数多くの結晶多形が知られてお り、大きくは閃亜鉛鉱型(8C−S i C)のβ一S i Cとそれ以外のα一S i Cの2 種類に分けられ、耐環境電子素子としてはβ一S i Cが用いられている一)。この3
C−S i Cは比較的低温で構造が安定といわれており2 3)、900〜1100 Cでのレ ーザー・アブレーションやCVD法で作製した多結晶S i Cでは8C−S i Cの成 長が報告されている4 5)。しかし、プラズマCVDを用いて作製した多結晶S i
Cの結晶系についてははっきりしていない6 7)。また、単結晶Si Cではガスや 膜の組成と欠陥などについての関係が報告されているが8 9〕、上述の多結晶S i
Cの報告では膜組成はいずれもストイキオメトリに近いとしており、組成に対す る構造変化や欠陥についての報告はなされていない。
本章では、第1章に述べた目的と前章の結果に基づいて、700.C近辺で作製し たS i1一ヵC。薄膜の組成や堆積用ガスの水素希釈率、そして堆積温度を変化させ たときの緒品系、緒品成長や欠陥などと組成の関係について考察する18川)。
8.2 実験方法
S iユ.。C。薄膜の堆積条件などは第2章で述べたとおりである。XRD測定と 電子スピン共鳴(ESR)測定に用いた試料は、石英基板上に堆積した薄膜を用 いた。また、透過電子顕微鏡(TEM)観察とパウダーからのXRD測定には、
熱酸化したη型単結晶S i上に堆積した試料を用いた。TEMとパウダーXRD 測定には、S i、.。C。薄膜をそれぞれ厚さ100㎜と2900㎜堆積し、弗硝酸 中にてS i基板をエッチングして除き、パウダーX線回折用には、さらに瑠璃乳 鉢で粉末にしたものを用いた。
XRDスペクトルは自記X線回折装置(島津XD−5)でC u Kα線(35kV,