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オーストラリアにおける「学習困難(障害)」問題と 学習援助教師の役割

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(1)

オーストラリアにおける「学習困難(障害)」問題と 学習援助教師の役割

著者 玉村 公二彦

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

巻 2

ページ 33‑44

発行年 1993‑03‑31

その他のタイトル Issues of Educational Support teachers for students having learning difficulties in Australia : The role of Support Teachers for Students with LD

URL http://hdl.handle.net/10105/4455

(2)

玉 村 公二彦 (障害児教育研究室)

Issues of Educational Support teachers for students having learning difficulties in

Australia二The role of Support Teachers for Students with LD

In Australia, support teachers for students with learning difficulties (STLD) are employed in many schools. This paper reviews the trend on the practice of STLD from 1980to present and also describes the role of STLD. Scince the early1980 s, STLD have been making their effort in regular classrooms rather than in the resource roomes. Their role are to help students with learning difficulties using effective and specific skills, and to consult with regular classroom teachers in solving the problems relating to learning difficulties in regular classes.

Currentley, one issue of the support system for LD students is to organize a more systematic approach which involves STLD. Regarding this issue, the concept of Teacher Supporting Team and a possible Model are proposed to a department of education in Australia.

Keywords:学習困難(障害) 学習援助教師 I.はじめに

本稿の意図は、比較教育学の立場から「学習障害」の問題にアプローチすることにある。

「学習障害」についての今E]の研究の段階は、アメリカの「学習障害」研究の紹介が主要なもの であり、また、その概念・定義の検討および当該児童・生徒に対する心理学的なアプローチが重要 視される傾向にある。しかし、 「学習障害」ないし「学習困難」については、それが現下の教育シ ステムから生じてきている社会的な現象であり、教育上の現象であることは明らかであり、従って、

「学習障害(困難)」について吟味は、教育学の立場からのアプローチが不可欠であると考える。と ころが、 「学習障害」についての一般教育方法学からのアプロ‑チの現状は、今だ未開拓な現状に ある。そこでは、 「障害」を理由として、それを「特殊教育」の枠組みの中で処理をして行くべき ものとの認識が一般的なものとなっているのではないかと危倶されるのである。

研究に限っていえば、一般的に、この間題が教育学分野で未開拓な研究の現段階となっている理 由は、わが国の教育の枠組みが「普通(学級)教育」と「特殊教育」に二分され、その上「特殊教

(3)

育」においては、障害児の医学的モデル、心理モデルによって対象児童・生徒の特性を説明する傾 向が強いことによるものであると言えるかもしれない。その意味では、アメリカの「学習障害」に 対する特別な教育援助システムへの着目は、それ自体重要なことである。すなわち、普通学級で多 くは学ぶ「学習障害」児に対する「特殊教育」による特別な援助が存在するという制度的基礎自体

1)

が、二分的なわが国の教育システムが持っ重大な問題を明らかにするものとなっているからである。

こうした教育システム上の問題提起は、アメリカにとどまらず、 「学習障害」に対する教育援助シ ステムの比較教育学的な検討の重要性を示唆するものといえよう。

以上の問題意識から、本稿では、オーストラリアを対象として、そこでの教育の体系の中に「学 習障害」の問題がどのように位置づき、そこへの教育的対応がどのようなものとして展開されてい るかを、普通学級での「学習障害」を経験する子どもたちのための「学習援助教師(Learning SupportTearchers)」の役割を通して検討しようとするものである。オーストラリアにおける「学 習障害」について、筆者はすでにその歴史的概観を行い、 1970年代半ばに確立された「学習困難

2)

(障害)」への対応の基本的考え方の特徴を報告した。そこでも詳述したように、オーストラリアで は、 「学習障害」を障害のカテゴリーとして認定し教育措置を展開したアメリカとは異なり、障害 のカテゴリーとするというよりは教育全般の生態学的な検討を進展させる中で、 「学習困難(障害)」

について教育サービスを展開してきた経過を持っている。オーストラリアでは、イギリスの影響も 一因となって用語としては「学習困難(LearningDefficulties)」が使用される。内容的には、ア メリカでの「学習障害(LwarningDisabilities)」と同等の内容を示すものであるが、用語として

「学習困難(LearningDifficulties〕」が使用されることは、オーストラリアでの「学習障害」のと らえ方の特徴を示すものである。ここでは、混乱を避けるために、以下では、オーストラリアの

「学習障害」を記述するために、すでに使用してきたが「学習困難(障害)」という表記で統一して おきたい。

Ⅱ.障害児教育と「学習困難(障害)」への教育的対応

オーストラリアの教育界は障害児の教育に関して、教師と学校の活動の自立性の保障の下で、柔 軟な教育の体系の創造と不断の革新、教育方法の実験的試みの奨励を行ってきた。また、そのよう な試みに対して、州政府は固有の財政的基礎を提供している。連邦全体にわたる障害児教育の現状 を把握することは、広大な国土を持っオーストラリアでは非常に困難な作業であるが、概括的にみ れば、オーストラリアの学齢児童・生徒の2.5%から3%が障害児教育を必要とする障害を持って いると考えられ、この内、おおよそ2%が普通学校に在籍しており、 0.7%が障害児学校へ在籍し ている。加えて、 14%ないし15%の児童・生徒が学習ないし行動上の問題によって学校生活での特

3)

別な教育サービスの援助を必要としていると指摘されている。

オーストラリアの「特殊教育」は、学習ないし行動上の問題を持っ児童・生徒も含めて論じられ、

この中には「学習困難(障害)」を持っ子どもも含まれる。 「学習困難(障害)」については、 1970 年代半ば、 「学習困難(障害)」の子どもを持っ親たちの運動によって、オーストラリア下院に特別 委員会が組織され、 2年にわたってヒアリングを含む調査がなされ、その報告によって教育的対応

4)

の基本方向が示された。報告においては、 「学習困難(障害)」の定義と原因に関しては多くの概念 上の混乱があると結論づけられたが、それにも関わらず、子どもたちの「全体的な学習環境」を見 つめて子どもたちを援助する活動が必要であるということが認識され、州教育省においても、厳格

(4)

な定義の束縛なしに普通学校が学習困難を経験している子どもたちに援助の試みをおこなうという 政策が支持された。1970年代後半以降、普通学級におけるこうした子どもに対する援助が全体的な 学習環境の整備とともに本格的に実施されたのである。

ところで、「学習困難(障害)」への教育的対応としてリソース・ティーチャーの制度が導入され たが、リソース・ティーチャーは取り出し指導モデルと学習援助協議モデルを基にして活動を展開 していった。取り出し指導モデルとは、アメリカなどで行われている通級制の特別指導室(リソー スルーム)での指導をいい、また、学習援助協議モデルとは、リソース・ティーチャーが専門性を 発揮し、普通学級担任とカリキュラムや教授方法を協議しあって、より望ましい学級での授業展開 をっくっていくことをいう。こうして、本格的に開始されたオーストラリアの「学習困難(障害)」

への教育的対応は、1980年代に入って、普通学級の中での特別な対応としての特色を明らかにして ゆくことになる。

Ⅲ.「学習困難(障害)」児の教育的対応の場と原因としての教授・カリキュラム

「学校委員会(TheSchooIsCommissin)」は、「学習困難(障害)」の出現率を指摘するような、

・..

「特殊教育」の国内調査を行った。そのデータは、子どもの要求に見合った教師の力量の見地から 定義された「学習困難(障害)」についての教師の認識について物語っており、付加的な治療学習

の援助が必要とされるところまで指摘されたのである。175の小学校における59,757人の子どもか らのデータに基づいて、10.95%は学習困難を持っているとされ、おおよそ半分(5.3%)に対して は実際に治療的な学習がなされていた。中学校レベルにおいて(129の学校における68,934人)、同 様の人数が見積もられている(11%、6.25%)。予期されていなかった結果は、学校間での出現率 の割合に多様性があったということである。たとえば、いくつかの学校では「学習困難(障害)」

はほとんどいないと報告していたが、他の学校では20%以上を上回る出現率が報告されていた。し かしながら、普通学級教師が、このような児童・生徒を援助する際にもっと訓練をうけるならば、

特別な援助の必要は減少していくものと考えられ、その意味で、この数字は厳密な意味での「学習 障害」というより、その周辺部分を含んだものといえよう。

1.教育的対応の場

「学習困難(障害)」を持つ子どもたちの教育的対応の場は、①普通学級での対応、②特別学級

6)

での全日ないレヾ−トタイムでの対応、③学校外の対応に大別される。

1)普通学級での対応と援助教師

最も最新のアプローチは、リソースルームを活用するというよりは通常の学級の中でこれらの児

7)      8)

童・生徒を援助するという試みである。Wangの適応的学習環境とChalfantの教師援助チームは、

教育的な不成功を減少させるための効果的な方法の例である。適応的学習環境モデル(ALEM)

は、照会、責任、協同を育むためにインフォーマルな方法と基礎的技能の直接的教授とを結びつけ るものである。生徒達はグループにおいて活動する一方、教師は指導し、フィードバックを準備す る。教師援助チームは、学校レベルでのスタッフの集団であり、その課題は特殊教育への照会なし に教師が問題を解決することを援助することにある。それは、また、ケースの管理を行い、教師が 必要でないと思っているような伝統的なテストやレポート実践を避けるようにする。補充的な教員 養成を経た援助教師は、「学習困難(障害)」を経験している生徒たちの学習要求により見合うよう

に、すべての教師への援助を展開していくことができるとされる。

(5)

2)全日ないレヾ−トタイムでの特別学級での対応

しばしば、児童・生徒は、普通学級の教師が準備できる以上の集中的な対応を必要とする場合が ある。そのような場合には、治療的対応のためにパートタイムないし全日で、特別な学級において 過ごすようになる。そこでの対応は、通常、指導(ガイダンス)教師、援助職員、治療/リソース

/リーディング・リカバリー教師といった専門家によってなされる。その専門家は、物理的には子 どもの学級以外の部屋で子どもと関わるかもしれないが、専門家が、どのような技能を身につけさ せているのか、教授のどのようなタイプが普通学級と特別学級の設定において構成されているかを、

学級担任と協議することが非常に重要である。加えて、子どもが普通学級のプログラムに帰ったと き、治療的設定における進歩が持続させるということは専門家の役割となる。

3)学校外での対応

「学習困難(障害)」児を持っ親や養育者は、子どもが学校で困難を持っていることを通常認識 している。家庭でなされる対応は学校で行われたことと両立し、それを補強するものでなければな らないことが重要視される。学校は、親に子どもをどのように援助したらよいのかについての情報 を提供しなければならない。そのような資料(読みやスペリングといった特別な学力に焦点をあて たものが多い)は、家庭学習についての援助を考えているすべての親に対してゆきわたるものでな ければならず、学年が開始する時などに配布することができるようなパンフレットとなっている場 合もある。いくっかの学校では、治療教師やリソース・ティーチャーないしは指導主事によって、

昼間や夕方の時間を使って特別な両親プログラムが組み立てられている学校も存在する。また、親 が学校外や家庭外で子どものために援助を求める場合がある。オーストラリアのいくつかの州では、

「学習困難(障害)」児協会(SPLD)や治療教師協会が、資格をもった教師による学校外での授業 を組織している。また、多くの私設団体が診断とサービスを行っているが、多くのこれらの私的な サービスについては、使用されている方法について疑問があり、注意が必要であるとの警告がなさ れていることは付言しておきたい。

以上のような教育的対応の場は、二者択一のものではないが、すでに述べたように、最近のアプ ローチは、「学習困難(障害)」を持っ子どもたちに対して、学習援助教師と普通学級教師の協力に よる、普通学級の中での対応である。しかし、「学習困難(障害)」を持っ子どものための準備され た援助は、今だ不十分なものではないということは明らかであると指摘されている。

2.「学習困難(障害)」の原因としての教授とカリキュラム

オーストラリアにおける「学習困難(障害)」についての教育的対応の今日的アプローチの背景 には、その原因論の影響を見ることができる。ここでは、要約的に触れるにとどめるが、その原因 論については「学習困難(障害)」の定義と関連して複雑な論争がなされてきたことは周知のこと である。

「学習困難(障害)」の原因論について、「学習困難(障害)」、軽度知的障害、情緒障害の3つの グループの特徴が重複していることから、「学習困難(障害)」を軽度知的障害や情緒障害と区別す ることはできないと論ずる研究者もいる。他方、幾人かの研究者は、固有の特徴によって確認する ことができる「学習困難」のカテゴリーの中に、いくつかのサブグループが存在すると論じている。

その他の研究者は、「学習困難」は環境的、文化的ないし経済状態によって、または不適当なカリ キュラムによって生じていると論じている。

ここで注目しておきたいのは、「学習困難(障害)」の原因としての教授とカリキュラムに論究す るものである。実際、児童・生徒達に内在する要因のみが「学習困難(障害)」に関係するもので

(6)

はない。他の状況、とりわけ学級教授というものが、子どもたちのもっ問題を探求するための出発 点となろう。例えば、オーストラリアの実践に影響を及ぼしたニュージーランドのClayは、読み の困難をもった子どもたちの多くの特徴について「そのような事実は生み出されたもの」であると

11)

示唆している。すなわち、学習の困難は、環境的、文化的、経済的状態の結果として生ずるという ことである。もう少しいえば、器質性の困難(障害)と状況と関連した読みの困難(障害)を区別 することはできないと主張しているのである。

Clayの観点を拡張するならば、子どもたちは「学習困難(障害)」になるように教えられている

12)1こl)

ということができる。Barrの調査はこの観点を支持するものとなっている。子どもたちは、用い られる教育プログラムの結果として、読みの誤りの特定のタイプを生じさせていることを兄いだし ている。同様に、Elkindは、学習困難を持つ子どもたちは「カリキュラム障害」であると指摘し

14)

ている。他の言葉で言えば、カリキュラム内容はある種の子どもたちにとっては不通切なものとなっ ているといえよう。

従って、長期的な教育的見通しを持った普通学級のカリキュラムを変更することなしには、また、

普通学級の改革なしには、この間題は解決することが困難であり、教育的対応もまた、普通学級の 中で専門的な視点から組み立てられが必要があるという結論が導かれるのである。この役割を担う

ものとして、象徴的な言い方が許されるならば、リソースルームを基盤としたリソース・ティーチャー から学習援助教師(サポーティング・ティーチャー)への発展があるといえよう。

Ⅲ.学習援助教師の役割と学習援助チームの提案 1.「学習困難(障害)」を持っ児童の援助教師の教育的活動

オーストラリアにおける「学習困難(障害)」児の縦断的で総合的な研究として、クイーンズラ

15)16)17)

ンド大学の特殊教育研究所の調査研究から、いくつかの結論を「学習困難(障害)」の教育的対応 に即して要約しておくと、次のようになる。

「学習困難(障害)」児の親は、学校が始まり、第1学年の間が危機の段階であると考えていた。

親は、子どもが問題を持っていることを認識する際、学校に信頼をおいているが、親は教師が特別 な子どもたちのニーズないしレディネスにあわせた教授を受け入れてくれるとは思っていない。親 は、「学習困難(障害)」があるとみなされた子どもに治療的な援助を与えることを重視している。

第2学年のはじめ、学校によって発見された児童は、実質上、言葉や文字を区別することが出来に くかったり、言葉をポインティングしたり、線の続き具合やページの順序、句読点によって、こと ばを習得することができていなかった。しかしながら、「学習困難(障害)」児は、実際以上に楽天 的な自己認識を持っていた。

調査では、第2学年以降、「学習困難(障害)」を持っ子どもに対する学習援助教師の本格的な教 育的対応が開始されていく所をとらえている。この調査結果から、学習援助教師の活動とその役割

18)

を要約しておくこととしよう。

1)調査の結果、援助教師は、「学習困難(障害)」のアセスメントについて主要な責任を持って いることは明らかであった。それは、主要にはインフォーマルな方法を用いて行っており、テ ストを用いると同様、学級における観察によって学力の伸長の状況をモニターすることをも行っ ている。

2)援助の組織化については、援助教師は問題に直面していた。すなわち、どのくらい援助を行

(7)

うかというような要因について、広範な多様性があり、9時から3時までの学校時間で仕事を するという制約が、通常の学級教授への参加を減らすことなく、集中的に援助を行うようにス ケジュールを組むという問題をいっそう困難なものとしている。援助教師と学級担任の協力の 努力が必要で、とりわけ、家族とのコンタクトをする場合には、考慮されなければならないと いうことであった。

3)「学習困難(障害)」のサンプルを兄いだすために使用された早期発見の多様性の事実は明 らかであった。たいていの児童が、言語に基礎をおいた問題を持っており、単に算数上の困難 のみというものは少なかった。人格的社会的な目標が同様に突出的に指摘されていたというこ とは興味深いものである。援助教師は明確に生きた目標として自律的な学習者にしていくとい うことを考慮するものである。

4)選択されたアプローチやストラテジーの範囲は、伝統的な治療に焦点をあてたものと、メイ ンストリーミングの方向で全言語/ジャンル(類型・様式)に焦点をあてたものの両者を反映 したものであった。市販教材というよりむしろ、専門的な管轄として自主教材が作成され、治 療的教授の中で用いられている。

5)しかしながら、援助教師の教育活動の効果について、また「学習困難(障害)」が彼らの援 助なしにやってゆけるのかについてはいくつかの懸念が表明された。

この調査の結果が妥当であるとするならば、援助教師の養成については明確に成功しているとい えるが、しかし、学級担任とまたとりわけ親とともに活動するという点などの課題も提起されてい る。主要なものをあげれば、次のようなものである。

19)

1)普通教師と特殊教育教師との問での協力の拡大がアメリカでも残された課題であり、また、

この調査のデータにおいてもそれが課題として指摘された。

2)教授上の協力について、学級担任と援助教師が共通の方針決定を行う自由が求められている。

3)これらの児童の軌跡を跡づけし、学習や援助について理解を進めるための総合的で継続的な 調査研究を州教育省が進めていくこと。

4)Kennyは、低学年での再度の学年の繰り返しは長期間の利益をもたらさないと指摘してい

20)

る。ふたたび、効果的でない実践が続かないように全学習のノヾターンをレビューする必要があ るといえよう。

以上見てきたように、「学習困難(障害)」援助教師は、主として学校間をまたがって活動せず、

完全なスタッフメンバーとしての立場を有意義なものと考えており、学校を基礎としての援助サー ビスのモデルが可能であると考えられた。しかし、援助教師が合理的効率的に活動を展開する上で、

特に学校内での普通学級担任と協議するなど学校内でのチームでの教育活動を発展させる課題が明 らかになっているといえよう。そこから、「学習援助チーム」モデルが新たな提案としてなされて きているのである。

2.学習援助チームモデルの提案「学習困難(障害)」を経験する小学校児童のための実行可能な 援助モデル

ニこ、

このモデルは、すべての学校が、「学習困難(障害)」を持っ子どもたちの分野に特有の専門性を 持ったスタッフメンバーを持っことを基礎としている。そのようなスタッフは、大規模学校におい てはフルタイムで雇用され、運営のメンバーであるか、もしくは特別な援助の役割を持つのと同様 に、普通学級の指導の任務をもっ者となると考えられている。しかしながら、小学校がそのような 職員をスタッフとして持たないのならば、学校は広域の地区・地域を通して、彼らにアクセスする

(8)

図1 対応とレビューのフローチャート

l

親、担任教師、リーディ ングリカバリー教師によっ て判断されたものとして の成功

親、担任教師によって判 断されたものとしての成 功

教師援助チームの専門家 へのアドバイスの要請

親、担任教師によって判 断されたものとしての成 功

1

段 階

第   2   段   階

カウンセラーを含んだ 広域地区/地域での評価・検討

親、担任教師、STLD によって判断されたもの としての成功

学校による将来的な活動 についての提案

学校外での1対1 での専門家による 授業

短期ないし長期の 学校内での専門家 のサービス

まれではあるが、スペシャ ルエデュケーションの指導 担当者は生徒を継続的な援 助に組み込むことに賛成す る。例えば、学習困難がき つい場合の録音テキストの 使用など。

第   3   段   階

4

(9)

ことが求められている。

図1は、その進行の過程と効果的サービスが提供されるような手続きと責任を示したものである。

次にこのモデルの進行過程に即した原則と提案された援助モデルの運用の実行可能なメカニズムを 示した。

このモデルの原則は、学校が子どもの学習上の問題を発見し対応していく主要な場である、とい うことである。このことは、学校とその職員が、とりわけ学級担任が、その発見と治療の分野に責 任を持ち、行動を行わなければならないということを意味している。

1)第1段階

主に教師は授業の間や親との懇談を適して、個々の子どもの問題を自覚し始める。教師によって モニターされる普通学級は、発見の役割を持つ教師を援助する場である。加えて、いくつかの学校 は、第一学年において、子どもをスクリーニングするプログラムを持っており、もしそれが利用可 能ならば、リーディング・リカバリーなどが求められる問題や困難を持っ子どもを発見することに なるだろう。このプログラムの結果は、親、学級担任、リーディング・リカバリー担当教師によっ て、成功しているか否かは判断される。もし、リーディング・リカバリーが成功していない場合、

学級担任は、「学習困難(障害)」援助教師(STLD)と協議することとなる。

親には、教師によって直ちにある分野で子どもが進歩していないこと、ないしは、困難を持って いることがわかるように協議が持たれる。

この時点で、学級担任は、子どもの立ち入ったアセスメントを行い、教授上の対応を行い始める。

この対応は特別なもので、記録がなされ、親に特別な対応がなされているのだと言うことが自覚化 される。進展の状況が省みられ、学級担任と親によって成功しているか否かが判断される。

このモデルの上記の手順において三つの原則がある。第一は、常に親に協議がなされ、アセスメ ント、対応、期間、レビューの過程についての検討決定に親も参加するということである。第二に、

対応は学級において学級担任によって行われ、特別かっ慎重に記録化されるということである。第 三に、結果は親とともにレビューされ、議論されるということである。

2)第2段階

もし、学級担任によって、行われた対応が成功しなかった場合、子どもの教師は子どものアセス メントの情報、対応の記録、そしてその結果を、教師援助チームに持ち込むことになる。教師援助 チームは、そのケースを検討し、次の段階を検討するように教師を援助する。このことは、教師が はじめに行っていた対応を延長すること、はじめの対応を修正すること、新しい対応を行うことを 含むものである。教師の判断によって、教師援助チームのアドバイスに基づいて行動することとな る。

教師援助チームは、多くの他の学級担任を含むものであり、校長、熟練教師、司書、スピーチセ ラピスト、リーディング・リカバリー教師、カウンセラーによって補充される。

教師援助チームが実施することがらは、カギとなる原理として、(a)子どもの計画化された対応の 責任は、援助チームも共有するということであり、(b)何を行ってきたかということについてチーム で議論、効果のない理由についての吟味、今後どのように子どもを援助するかについての指摘、(C)

決定の記録、(d)付加的資源(ソース)の利用可能性(スタッフ、時間、教材etc.)を含むもので ある。

子どもへの対応は、教師援助チームの責任となるとはいえ、援助チームのアドバイスを実行し、

モニターすることは学級担任の責任である。

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このモデルにおいて、選択された対応は、両親援助プログラムないし、ピアチュートリングプロ グラムの使用を含むものである。学級担任は、これらのアプローチを第一段階といて用いるか、ま たは教師援助チ1ムが対応の第二段階として使用すると示唆するかもしれない。

対応の第二段階がモニターされ、学級担任によって記録化される。対応の効果は、親、担任教師、

教師援助チームによって判断される。

3)第3段階

もし、対応の結果が十分でなかった場合、学級担任チームは、「学習困難(障害)」援助教師との 協議を求めることになる。

このモデルにおいては、「学習困難(障害)」援助教師のサービスは、すべての努力がなされない 限り、外部に援助を求めることをなくすように、財政は学校から支出するものとなる。学級担任教 師は、「学習困難(障害)」援助教師に、第一段階から第二段階までの対応についての資料とその結 果を用意することになる。

それから、「学習困難(障害)」援助教師は、その子どものための対応プログラムを開発する責任 を果たすこととなる。このことは最初に、より深いアセスメントを含むものになろう。対応が「学 習困難(障害)」援助教師、ないしボランティア、またはエイドによって学級においてなされるこ

とになる。

「学習困難(障害)」援助教師の参加と関連する多くの原則が存在する。すなわち、(a)アセスメ ント、プログラムの計画化、レビューについての両親との協議は不可欠である。(b)学校との連携を

「学習困難(障害)」援助教師は責任をもって行う。(C)対応の実践、モニタリング、その評価を「学 習困難(障害)」援助教師は責任をもって行うこと。(d)「学習困難(障害)」援助教師自身が実践し ない場合には、「学習困難(障害)」援助教師はボランティアないしエイドをスパーバイズし、対応 が要求されたものとして適用されているかどうかを確認する責任をもつ。

対応の総括の際、親、学級担任、「学習困難(障害)」援助教師は、その対応が成功しているかど うかを決める。

4)第4段階

もし成功していないとするならば、地区・地域レベルで子どもの問題とデータとしてまとめられ た対応の第三段階は報告され、検討される。これは地区・地域での評価として知られるものである。

評価の総括の際、地区・地域レベルのスタッフは、2つの選択肢をもっている。(a)学校による一 層の活動のための示唆をすること。(b)特別な段階をとるということである。

もし、上記の選択肢の(a)が採られるならば、広域地区/地域におけるスタッフは、示唆が実行可 能なものとなるように、学校が何をすべきなのかを記録化し、学校に対して教材ないし職員の援助

(「学習困難(障害)」援助教師の使用を含める)を準備しなければならない。その際、次のような 原則が必要不可欠なものとなろう。(a)なされた示唆をモニターし、レビューする責任は、地域地区

/地域における責任である。(b)治療プログラムへの同意づくりをしてゆくために、親と学校と協議 を行うことである。

選択肢の第二は、対応のために可能なメカニズムを含むものである。対応のすべてのメカニズム は、学校ではなく広域地区/地域によって用意される資源を含むものである。

1.学校時間外のプログラムに措置をする。このプログラムは1対1の授業を含む。学校時間外 のプログラムの導入を合理的に行うために、教授の時間を増やし、学級内での学習機会を無視 しないということである。誰がこの授業を行うかを言うわけではないが、適当な訓練された人

(11)

がそれにあたることが必要である。

2.専門家のサービスを含むプログラムの中に子どもを措置する。この対応は、短期間ないし長 期間のものであり、学校時間内に行われる(例えば、SC(IR))。

3.たいへんまれなケースであるが、子どもの持っ問題がとても深刻な場合は、障害児教育の担 当官が、児童に密着した継続的な援助を承認することとなろう。このようなことは、深刻な学 習障害のケースにおいてのみ生ずるものと予想されており、全児童の0.1%以下の割合で起こ

るものと考えられる。

1、2、3においてなされる原則は、(a)1、2、3の着手とモニターの責任は学校と広域地区な いし地域のスタッフにある。(b)親の知識と同意に基づいて発議されることを、含むものである。

ここでは、すでに普通学級教師とともに専門的な知見を持って活動を行う学習援助教師の活動と ともに、学校単位で教師援助チームを組織し、また、地域レベルでもその評価と援助が可能となる ように広域地区でのスタッフ集団を財政分担を含めて確立することが提案されているのである。新 しい概念として「教師援助チーム」の概念が提起され、主要な改善のための示唆として、相互援助 と共同活動を準備するために、「学習困難(障害)」援助教師や他の専門家、カウンセラー、熟練し た教師達によって構成されるチームを発展させること、第二の示唆として、個々の児童のニーズを よりよく提起し得るように、内容と同様、方法上の多様性を増進するための分化されたカリキュラ ムの選択肢を発展させることが、提案されてきているといえよう。

Ⅳ.おわリに

オーストラリアにおける「学習困難(障害)」を持つ子どもたちに対する教育的援助は、リソー スルームの活用を行ってゆくというところから、普通学級において担任教師の教育的力量を高めな がら、「学習困難(障害)」についての専門的知見を有する援助教師が普通学級や学校全体の中で役 割を果たすという方向に進んでいることが明らかになった。また、今日的には、「教師援助チーム」

という概念が提起され、教師集団として「学習困難(障害)」の問題を教育実践のプロセスの中で 解決して行こうとしているといえるだろう。このことは、アメリカなどにおける「学習障害」への 教育的対応の方向づけとの関連でみると比較教育学的に興味深いものといえるであろう。

また、今日のわが国の普通学級での学力形成の現状や40人学級の達成後の学級規模や教員配置の 問題がクローズアップされている中で、また、特に「学習障害」についての世論の高まりの中で対 策が急がれれている中で、「学習困難(障害)」援助教師の存在や「教師援助チーム」の提案からは、

学ぶものが多いといえよう。障害児教育の中の文脈で、「就学後も継続した就学指導」として普通 学校の中に組織化された校内適正就学指導委員会の実質上の役割の中に、障害児学級での経験を生 かしての学力問題への取り組みがなされている場合があるが、そうした取り組みと重ね合わせて検 討することも課題となるであろう。

ところで、1992年4月、文部省の「教員定数の在り方に関する調査協力者会議」は、「今後の教 職員配置の在り方について(中間まとめ)」を発表し、学級編成あるいは教職員の配置のあり方に ついて報告を行った。そこでは、小・中学校でチーム・ティーチングの導入や、また、高等学校に おける40人学級制となるよう教員の定数を改善することがまとめられている。また、算数などのつ まづきの出やすい教科についてはチーム・ティーチングが有効であるとの実験校からの報告などが 出されている。「特殊教育」と「通常の教育」という枠組みだけでなく、今日のわが国の学校の自

(12)

立性や教師の教育課程編成の自由などの点で、教育条件や教育課程に関わって、オーストラリアの 教育システムとわが国の教育システムとの間にかなり大きな隔たりがあり、教育システムLの比較

教育学的な分析がなされる必要があることを最後に指摘しておきたい0

【注】

1)本木章喜、 (1990)、アメリカ合衆国におけるリソースルームの指導、発達障害研究、 12(3)、

日本文化科学社、上野一彦、 (1992)、学習障害児(LD)の補償教育、佐伯・汐見・佐藤編『学 校の再生をめざして2教室の改革』、東京大学出版会

2)玉村公二彦、 (1993掲載予定)、オーストラリアにおける「学習困難(Lwarning Difficulties)」

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13) Barr, R. C. (1974). The Effect of Instruction on pupils'Reading Strategies. Reading Research Quarterly, 10, 555‑582.

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参照

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