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気相生成銀ナノ粒子の生体分子に対する構造的・機能的

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Academic year: 2021

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(1)

柴田実奈 , 1

A-16

気相生成銀ナノ粒子の生体分子に対する構造的・機能的

影響に関する研究

Nano risk assessment of gas-born Ag nanoparticles:

Impact on structure and function of biomolecules

応用化学専攻 柴田実奈 SHIBATA Mina

1. 緒言

銀ナノ粒子は抗菌性などへの期待から最も日 常製品に広く利用されているナノ粒子である。そ の一方で、こうした銀ナノ粒子がDNA などの生 体分子に対してどのような影響を及ぼすかにつ いてはよくわかっていなかった。そこで本研究で は、気相中で生成した銀ナノ粒子を水に分散させ たDNA 上に吹き込むことによって、銀ナノ粒子 がDNA に与える影響を調べた。また、その粒径 依存性についても検討した。

2. 実験方法

電気炉内に銀を設置し、窒素ガス流量 2.0 slm

で、1100 ℃まで加熱し、蒸気化させて平均粒径8

nm の銀ナノ粒子を生成した。生成した銀ナノ粒 子をDNA水溶液中に24時間吹き込んだ。ここで、

DNA水溶液は純水200 mLに精製したサケ精巣由

来DNAを1.0 mgを加えて作成した。得られた溶

液を走査透過型電子顕微鏡 (BF-STEM) 、紫外可 視分光光度計、円偏光二色性 (CD) スペクトル、

分光蛍光光度計を用いて測定を行った。また、微 分型電気移動度測定装置 (DMA) 、エアロゾル質 量分級装置 (APM) を用いて導入前後の粒径変化 についても測定を行った。なお、分光蛍光光度計 を用いて測定する際は銀ナノ粒子導入前後の溶 液に対してエチジウムブロマイドを加えて測定 を行った。また、流量を変化させることで銀ナノ

粒子の平均粒径を変えて同様の実験を行った。

3. 結果と考察

3.1 DNA水溶液への銀ナノ粒子導入

DNA水溶液に24時間、銀ナノ粒子を吹き込ん だところ、無色透明溶液から黄色透明溶液に変化 した。こうして得られた溶液に対してSTEM像観 察を行った結果を図1 (a) に示す。非常に多くの 銀ナノ粒子が液中に取り込まれていることが見 てとれる。この数密度は、おおよそ 700個/m2 であった が、この値はポリビニ ルピロリドン

(PVP) を用いて同様の操作を行った場合に比べ

て 10 倍強に相当するものであった。このことか らDNA によって非常に多くの銀ナノ粒子が液中 に取り込まれることがわかった。また、得られた 溶液に対して吸収スペクトル測定を行った結果 を図1 (b) に示す。260 nmと410 nm付近に見ら れるピークはそれぞれDNA由来、銀ナノ粒子の プラズモン共鳴由来のピークである。この2つの

0 0.1 0.2

200 300 400 500

波長/ nm

吸光

50 nm

(a) (b)

図1. (a) STEM像 (b) 吸収スペクトル

(2)

柴田実奈 , 2

ピークが同時に存在していることから、得られた 溶液には DNAと銀ナノ粒子が存在していること がわかる。

3.2 銀原子濃度の粒径依存性

図2に銀原子濃度の粒径依存性を示す。銀ナノ 粒子の粒径が小さいほど多く液中に取り込まれ ていることがわかった。通過させた銀ナノ粒子の 総量は一定となるように、銀試料の総蒸発量を一 定にした条件下で行なっていることを加味する と微少粒径ほど高効率に取り込まれることがわ かった。なお、銀原子濃度算出においては電子励 起遷移の中でもプラズモン共鳴の影響を受けな

い300 nmの吸光度を用いた。一方、予め粒径選

別した銀ナノ粒子をDNA水溶液に透過した後に 再度粒径選別をしたところ、粒径分布に変化はな かった。このことから粒子は溶液中で凝集するこ となく存在していることがわかった。

3.3 DNA構造変化の粒径依存性

図3 (a) に蛍光スペクトル測定を行った結果を

示す。610 nm 付近に見られる蛍光強度は DNA 由来であり、銀ナノ粒子導入後では強度が減少し ていることがわかる。更に、粒径が小さいほど大 きく減少していることがわかる。エチジウムブロ マイドはDNAの二重らせん構造にインターカレ ートし、発光することが知られている。蛍光強度 が減少したのは、銀ナノ粒子がDNAに配位した ことによってエチジウムブロマイドのインター カレートが阻害されたためだと考えられる。すな わち、DNA の塩基対の破壊に相当するものと考

えられる。このことから、より小さい銀ナノ粒子 ほどDNAの塩基対を破壊していると考えられる。

また、この塩基対の破壊の割合は、図2で示した 銀原子濃度に良い相間を示した。このことから、

塩基対に配位する銀ナノ粒子の量は取り込まれ た銀原子濃度に依存すると考えられる。

図3 (b) に8 nmの銀ナノ粒子を導入したとき のCDスペクトル測定の結果を示す。導入前に見 られる210、250、280 nm付近のコットン効果は DNA の最も一般的な構造であるB-form DNA 由 来であることが知られている。銀ナノ粒子導入後 ではコットン効果がほとんど消失していること がわかる。他の粒径でも同様であったことから銀 ナノ粒子によってDNAの高次構造がほとんど解 消されていると考えられる。

4. 結論

DNA を用いることで非常に多くの銀ナノ粒子 を液中に取り込むことができた。また、粒径が小 さい銀ナノ粒子ほどDNAの塩基対を破壊するこ とがわかった。さらに、銀ナノ粒子はDNAの高 次構造をほとんど解消することがわかった。

5. 研究実績

(1) Shibata M, Nishida N and Tanaka H: EAC, ポスター, Praha, Czech Republic, September, 2013.

(2) 柴田実奈, 西田直樹, 田中秀樹: 日本化学第 94回春季年会, 口頭, 愛知, 2014年3月.

図2. 銀原子濃度の粒径依存性

図3. (a) 蛍光スペクトル (b) CDスペクトル

0 2 4 6

0 5 10 15

粒径/nm

銀原子濃度/mg・L-1

550 650 750

導入前 12 nm 8 nm 6 nm

波長/ nm

蛍光強度

-1.5 -0.5 0.5 1.5

200 250 300 350 400

波長/ nm

楕円率/ mdeg

導入前

(a) (b)

導入後

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