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熱アシスト磁気記録可能なFePtナノ粒子媒体構造を実現

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布)

熱アシスト磁気記録可能なFePtナノ粒子媒体構造を実現

平成22年8月2日 独立行政法人 物質・材料研究機構 概要 1. 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)磁性材料センター宝野和博セン ター長、高橋有紀子主幹研究員、Zhang Li 研究員は鉄-白金規則合金のナノ粒子を均一な サイズで分散させた高保磁力(37 kOe)垂直磁化膜の作製に成功した。このナノ粒子分散垂 直磁化膜を用いて、日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立 GST) サンホセ研究セ ンターの Barry C. Stipe 博士らは熱アシスト磁気記録ヘッドによる記録試験を行い、現 行のハードディスクドライブ(HDD)の垂直磁気記録方式の記録密度の最高値と同等の 450 Gbit/平方インチの熱アシスト磁気記録が達成可能であることを示した。このような高保 磁力鉄-白金系ナノ粒子分散垂直磁化膜の開発により、次世代の超高密度磁気記録方式と して提案されている熱アシスト方式に適合する媒体の実用化への道筋が示された。 2.現在市販されている HDD の記録密度の最高値は約 550 Gbit/平方インチ程度である。記録 密度を高めると HDD の小型化や消費電力の低減に大きく貢献することから、現行の垂直磁 気記録方式に様々な改良が行われているものの、現行方式では 1 Tbit/平方インチ程度が 限界と考えられている。この記録密度を 4 Tbit/平方インチにまで飛躍的に高めるために は新しい磁気記録方式への移行が必要で、そのための有望な記録方式の一つが熱アシスト 磁気記録である。熱アシスト磁気記録のヘッドは日立 GST で開発が進んでいたが、これま で数ナノメータの粒子サイズで、サイズ分散が小さく、それらの結晶方位を配向した熱ア シスト方式に適する記録媒体の開発が遅れていた。 3.熱アシスト方式の媒体としては、まず数ナノメータのサイズの磁石粒子を均一に分散させ、 磁化しやすい結晶方位を膜に垂直に配列させる技術が必要とされる。材料としては記録情 報を長期間保持するため、ナノサイズの粒子でも磁化が熱で反転しない、結晶磁気異方性 の高い強磁性材料を使う必要がある。そのような材料として鉄と白金の合金で原子が規則 的に配列した規則合金が最適と考えられていた。しかし、鉄白金系規則合金を使って熱ア シスト媒体に適した粒子分散性の良いナノ粒子分散垂直磁化膜の作製が不可能であった。 4.今回の研究によって、熱アシスト磁気記録に適したナノ構造を鉄白金系合金を用いて作製 することに成功し、その媒体を使って熱アシスト磁気記録として最高の 450 Gbit/平方イ ンチの記録密度が実証された。このことから、今回実験室レベルで作製されたようなナノ 粒子構造を持つ鉄白金系媒体の工業的な製造技術を確立すれば、熱アシスト磁気記録の実 用化に大きく近づくと期待される。 5.本研究の成果は 8 月 16-18 日にサンディエゴで開催される第 21 回磁気記録国際会議 (TMRC2010)にて発表される。本研究における日立 GST による熱アシスト磁気記録は NEDO 超高密度ナノビット磁気記録技術の開発(グリーン IT プロジェクト)の一環として行わ れた。

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2 研究の背景 現在市販されている HDD の最高の記録密度は約 550 Gbit/平方インチ程度である。記録密度 を高めると HDD の小型化や消費電力の低減に大きく貢献することから、現行の垂直磁気記録方 式に様々な改良が行われている。しかし既存の垂直磁気記録方式では 1 Tbit/平方インチ程度 の記録密度が限界と考えられている。これを 4 Tbit/平方インチ以上に飛躍的に高めるために は新しい磁気記録方式への移行が必要で、そのための有望な記録方式の一つが熱アシスト磁気 記録である。熱アシスト磁気記録のヘッドは日立 GST で開発が進んでいたが、これまで数ナノ メータの粒子サイズで、サイズのばらつきが小さく、磁化されやすい結晶方向に粒子が配列し たナノ粒子分散型の高保磁力垂直磁気記録媒体の開発が遅れていた。 熱アシスト方式の媒体としては、まず数ナノメータの磁石粒子を均一に分散し、磁化しやす い結晶方位を媒体の膜面に垂直に配列させる技術が必要とされる。磁石材料としてはナノメー ターサイズでも磁化が熱的揺らぎで反転せず、記録情報を長期間保持できるように、結晶磁気 異方性の高い材料を使う必要がある。そのような材料として鉄と白金の合金で、原子が結晶格 子中で規則的に配列した L10構造の鉄白金(FePt)規則合金が最適と考えられていた。しかし、 FePt 系のL10規則合金を使って熱アシスト媒体に適した粒子分散性の良いナノ粒子分散型垂直 磁化膜をこれまで作製することが出来なかったために、FePt 規則合金系媒体での熱アシスト 記録で現行システムと同等の記録密度を達成した例は無かった。 成果の内容 NIMS 磁性材料センターではこれまで長年にわたり FePt 系合金を用いて、垂直磁気記録媒体 に適したナノ粒子薄膜構造を実現する研究を行っており、2008 年にスパッタ法を用いて熱酸 化 Si 基板上に平均粒径 5.5 nm の FePt 粒子をサイズ分散 2.3 nm に制御したナノ粒子分散型垂 直磁化膜の作製に成功していた。その後、ガラス基板上に同様の膜を成長させることにも成功 し、FePt 合金薄膜の磁気記録媒体への応用の可能性への期待が高まっていた。しかし、これ までの研究では L10構造への規則化が十分で無かったために保磁力は 8 - 15 kOe 程度で、熱ア シスト磁気記録のためにはさらに高保磁力化が望まれていた。

今回の研究では、Si 基板上に酸化マグネシウム層を成膜し、その上に銀(Ag)を添加した FePt 合金を炭素(C)と同時にスパッタ成膜した FePtAg-C 膜で、平均粒径 6.1 nm、サイズ分散 1.8 nm、 保磁力 37 kOe のナノ粒子分散垂直磁化膜の創製に成功した(図1(左))。L10構造を持つ FePt を用いた垂直磁化膜としては、これまで報告されていたどの粒子分散膜よりも粒子分散性と結 晶配向性に優れてた膜である。この媒体を用いて、日立 GST サンホセ研究センターBarry C. Stipe 博士らが熱アシスト磁気記録ヘッドによる記録試験を行ったところ、現行のハードディ スクドライブ(HDD)の最高の記録密度にほぼ匹敵する 450 Gbit/平方インチの記録密度が熱ア シスト方式で達成可能であることが示された(図1(右))。 このような FePtAg-C のナノ粒子分散膜は成膜中に自然に結晶方位が配向する MgO の中間層 の上にスパッタ法で容易に成膜できるので、Si 基板以外の安価なガラス基板上でも作製可能 であることから、実用性が極めて高く、次世代の超高密度磁気記録方式として提案されている 熱アシスト方式に適合する媒体実用化に向けて大きく前進したと言える。また工業的な生産の ためには今回行われた同時スパッタ方式によるものではなく、合金ターゲットを用いた製造が 必要となるが、すでに合金ターゲットを用いても同等の FePtAg-C ナノ粒子分散垂直磁化膜が 作製できることを確認しており、現行の製造設備を用いて工業的に実用化できる可能性が高い。

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波及効果と今後の展開 現行方式に置き換わる磁気記録方式としては微細加工によるビットパターン媒体方式など、 いくつかの技術が平行して検討されているが、今回の研究成果によって、FePt 系規則合金を 用いて現行磁気記録方式を超える記録密度を達成可能な熱アシスト磁気記録媒体が少なくと も実験室レベルでは製造可能であることが実証された。その結果、熱アシスト方式の実用性へ の期待が一層高まった。今後、1 Tbit/平方インチを超える磁気記録密度を達成するために、 さらなる媒体構造の改善(FePt 粒子の微細化とサイズ分散の減少)を継続すると同時に、熱 アシスト記録に必要な熱流を考慮した下地構造も検討する必要があるものの、本研究の成果は 実用化への大きな進展といえる。熱アシスト方式により 1 Tbit/平方インチの超高密度磁気記 録が達成されれば、HDD のさらなる小型化、省エネルギー化が進展し、グリーンイノベーショ ンへ大きく貢献することになる。 問い合わせ先: 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 TEL:029-859-2026 研究内容に関すること: 独立行政法人物質・材料研究機構 磁性材料センター長 宝野和博(ほうのかずひろ) TEL: 029-859-2718 FAX: 029-859-2701 E-mail: [email protected]

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4 用語解説 1)垂直磁気記録方式 1975 年当時東北大学の岩崎俊一教授らにより、ハードディスクドライブ(HDD)での磁気記録 媒体で面内方向に磁気情報が書き込まれているのに対して、磁化を垂直方向に記録する方が 高密度化には有利として提唱した。その後長きにわたり面内磁化方式が使われてきたが、2005 年に東芝が垂直磁気記録方式を採用した磁気ディスク装置を世界で初めて商品化、それ以降 大容量 HDD には垂直磁気記録方式が使われている。 2)熱アシスト磁気記録 磁気記録で一平方インチあたり記録できるビットサイズを記録密度と呼ぶが、1 Tbit/平方 インチを超える記録密度では磁性粒子のサイズが 5 nm 程度にまで微細化し、現行の CoCrPt-SiO2媒体では個々の強磁性粒子の磁化が熱エネルギーで揺らぎ、強磁性でなくなって しまう(超常磁性)。このため、磁気記録媒体の高密度化には結晶磁気異方性の高い強磁性 材料(たとえば L10構造を持つ FePt 規則合金)などが必要になってくるが、そうすると保磁 力が記録ヘッドで発生できる磁場よりも高くなり、書き込み(記録)ができなくなる。その ため提案されたのが熱アシスト磁気記録方式で、ヘッドにレーザーを組み込み、レーザーで 高保磁力磁性粒子の温度を上昇させ、保磁力が低くなったところで磁場により書き込みを行 う方式。現在、シーゲート、日立グローバルリサーチで盛んに研究されている。 3)規則合金 2 種類以上の元素を混ぜた合金で、結晶格子中、ある特定のサイトに特定元素が配置する合 金を規則合金とよぶ。Fe と Pt の原子比が 1 対1の FePt 合金は 1300C 以上で fcc 構造(A1 構 造)、1300C 以下で Fe と Pt が交互に積層する L10構造という規則合金になる。この L10-FePt が高い結晶磁気異方性をもつために、ナノサイズでも磁化が安定し、超高密度磁気記録媒体 材料として有望視されている。しかし、媒体の一般的な製造方法であるスパッタ法で薄膜を 作製すると、FePt 合金は不規則構造の A1 構造となり、これを加熱して L10構造に規則化させ る必要がある。従来、この熱処理で FePt ナノ粒子が粗大化するために、FePt 合金を用いてナ ノ粒子分散型磁気記録媒体を製造することが困難であった。 4)結晶磁気異方性 結晶の方位によって弱い磁場で磁化されたり、強い磁場を加えないと磁化されない結晶磁 気異方性という物性がある。結晶磁気異方性の高い材料の磁化反転には高い磁場が必要で、 ナノ粒子になると保磁力が高くなる。 5)保磁力 磁場をかけて一方向に磁化した磁性材料に反対方向の磁場をかけて磁化が反転し、磁化が ゼロになるときの磁場の値。保磁力が高いと、一旦磁化すると容易に磁化を消去することが 困難。

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図1 (左)FePtAg ナノ粒子分散垂直磁化膜の電子顕微鏡像と (右)静的熱アシストヘッドによる記録ビットのパターン FePt 粒子の平均粒径は 6.1 nm でサイズ分散が 1.8 nm。保磁力は 37 kOe で、従来の磁気 記録媒体にくらべて格段に高い。静的熱アシストヘッドによる記録パターンでは、20 nm のビ ットがビット幅 85 nm で観察されており、これを記録密度に換算すると 450 Gbit/平方インチ となり、熱アシスト記録としてはこれまでの報告の中で最高の値。現行の垂直磁気記録シス テムにより、最高値に匹敵する。

参照

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