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学 位 の 種 類 博士 (ナノメディシン科学) 報 告 番 号 甲第1695号 学 位 記 番 号 第341号 氏 名 竹内 堂朗 授 与 年 月 日 平成 31 年 3 月 25 日 学位論文の題名 金ナノ粒子および金ナノクラスターを基盤としたナノメディシン創薬 論文審査担当者 主査: 山中 淳平 副査: 尾関 哲也, 平嶋 尚英, 出羽 毅久
学位論文内容要旨 金ナノ粒子および金ナノクラスターを基盤としたナノメディシン創薬 薬学研究科・博士後期課程・共同ナノメディシン科学専攻 竹内 堂朗 【序論】 金は細胞毒性が低く、またそのナノ粒子化などが広く研究されており、ドラッグデリバ リーナノキャリアとして注目され、活発に研究が進められている。本研究ではナノメディ シン創薬に向けた、金ナノ粒子(GNPs)及び、保護高分子内部に金原子を立体的に保持 した金ナノクラスター(GNCs)のナノキャリアとしての評価・検討を行った。 1. siRNA 修飾金ナノ粒子(siRNA-GNPs)の調製と血管伸展抑制効果の評価 【目的】 金ナノ粒子は、リポソームやミセルといった従来のナノキャリアと比較し、より微細な ナノスケールでのサイズコントロールが出来る点や、表面修飾が容易であることからナノ キャリアとして注目を集めている。本研究では血管伸展の抑制を目的とし、配列特異的に 遺伝子の発現を抑制することが知られている単鎖の二本鎖RNA である siRNA の末端をチ オール化することで金ナノ粒子表面へと結合させたsiRNA 修飾金ナノ粒子(siRNA-GNPs)を調製しその物理学的性質の評価及び血管伸展に与える影響を評価した 【結果と考察】 siRNA-GNPs を調製しその物理学的性質を透 過型電子顕微鏡(TEM)、動的光散乱法 (DLS)を用いて評価した。サイズは約 5 nm であり単一分散であった。 (Fig. 1) またその遺 伝子サイレンシング効果についてルシフェラー ゼ恒常発現細胞株を用いて評価した結果、ルシフ ェラーゼの蛍 光が有意に減弱しており遺伝子サイレンシング 効果を有したまま、GNPs 上に搭載されている ことが確認された。(Fig. 2)一方、siRNA-GNPs は顕著な細胞毒性は観察されなかった。 (data not shown)またヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVECs)を基底膜マトリックス上で培養す ることによりTube Formation Assay を行った
Figure 1 TEM images of siRNA-GNPs
結果、VEGF レセプターをターゲットとした siRNA を搭載した siRNA-GNPs は control 群、金ナノ粒子単体投与群と比較し有意に血管 伸展を抑制した。(Fig. 3)これらの結果より、 siRNA-GNPs は血管伸展抑制効果を有するナ ノ粒子であり、網膜症や加齢黄斑変性といった 血管新生関連疾患に対して有用であると考えら れる。 2. 金ナノクラスター(GNCs)を用いたナノメディシン創薬 【目的】本研究ではそれ自身がナノキャリアとなり得る、蛍光物質である金ナノクラスタ ー(GNCs)に関して評価・検討を行った。GNCs はタンパク質などの高分子内部に、金 原子あるいは金微小粒子を保持しており、バルクの金や盛んに研究行われている金ナノ粒 子とは異なる性質を持つ強い蛍光性を持つナノ粒子である。細胞毒性が低いとされる金 (Au)を用いることで、カドミウム(Cd)や亜鉛(Zn)を用いる量子ドットと比較しよ り生体適合性の高い蛍光イメージング材料となることが期待される。またその保護高分子 を変化させることで多様な特性を有した蛍光イメージング材料を作成することが出来ると 考えられる。本研究はGNCs 調製時の各種条件が GNCs の生成及ぼす影響を詳細に評価 することで、安定した調製条件の確立行うことを目的とした。またその保護タンパク質を 変化させ、イメージング材料として適した特性を持つGNCs を調製し、その評価を行っ た。さらにGNCs からなるナノ粒子(GNC-NPs)を調製し、評価を行った。 【結果と考察】 A. GNCs の調製 GNCs は保護高分子であるタンパク質と塩化金酸(HAuCl4, 10 mM, 5 mL)の混合溶液 に対し、撹拌下でNaOH(1 M, 0.5 mL)を添加することで調製した。GNCs の調製条件 に関して詳細な検討を行った。検討を行った調製条件は以下のとおりである。 1. 撹拌時間(0‐24 h) 2. 調製温度(4℃, 室温, 37℃) 3. 保護タンパク質濃度(BSA, 25, 50, 100, 200 mg/mL) 4. 保護タンパク質の種類(Table 1)
Table 1 Proteins as protective materials
Proteins M.W. Residues (all) Residues (Cys) Bovine Serum Albumin
(BSA) 68 kDa 583 35
Figure 3 anti-angiogenesis effects of siRNA-GNPs
1. 撹拌時間が GNCs の生成に与える影響 Fig. 4 は GNCs 特有の蛍光ピーク及び pH の時間変化を測定したものである。蛍光は時 間経過とともに増加し、撹拌時間12 時間で上限を迎えた。また GNCs 溶液の pH は時間 経過とともに減少し、理論値まで減少した。これらの結果より12 時間以上の時間をかけ 緩やかに還元反応を進行させることで、特有の蛍光性を有するGNCs が調製されると示唆 された。以下の実験では撹拌時間を24 時間とした。
Figure 4 (a) Time-dependent change of fluorescence intensity of BSA-GNCs. (b) Time-dependent change of pH of BSA-GNCs solution.
2. 調製温度が GNCs の生成に与える影響 Fig. 5 は各種温度で調製した GNCs の UV 照射下における画像及び蛍光スペクトルであ る。室温及び37℃条件下では強い蛍光が観察された。一方、氷冷下では十分な蛍光は観察 されず、GNCs は生成していないものと考えられる。低温条件下においては十分に還元反 応が進まないと考えられることから、タンパク質内部においてAuCl-の還元が十分に進ん でいないことで、蛍光性が十分に現れなかったものと考えられる。すなわちGNCs の生成 には還元反応が十分進行する条件であることが必要であると考えられる。この結果より以 下の実験では37℃温浴下で反応を行うこととした。
Human Serum Albumin
(HSA) 68 kDa 585 35
Ovalbumin (OVA) 45 kDa 382 5 Bovine Lactoferrin (BLf) 83 kDa 689 34
Figure 5 (a) Size distribution and images under UV irradiation of BSA-GNCs prepared at various temperatures. (b) Fluorescence intensity of BSA-GNCs prepared at various temperatures.
3. 保護タンパク質濃度が GNCs の生成に与える影響 Fig. 6 は各種タンパク質濃度で調製した GNCs の UV 照射下における画像及び蛍光スペ クトルである。BSA 濃度が 25, 50, 100 mg/mL において調製した GNCs は十分な蛍光が 観察された。一方BSA 濃度 200 mg/mL で調製した GNCs は十分な蛍光が観察されなか った。タンパク質濃度を200 mg/mL まで増加させると、タンパク質 1 分子あたりに保持 される金原子量は約4 原子と極端に少ない状態となる。それにより十分なエネルギーが得 られず蛍光が発生しなかったものと考えられる。蛍光を有するGNCs の調製にはタンパク 質1 分子あたりに保持される金原子量を調製することが不可欠であると示唆された。
Figure 6(a) Size distribution and images under UV irradiation of BSA-GNCs prepared at various protein concentrations. (b) Fluorescence intensity of BSA-GNCs prepared at various protein concentrations. 4. 保護タンパク質の種類が GNCs の生成に与える影響 Fig. 7 は保護タンパク質を変化させ調製した GNCs の、UV 照射下における画像及び蛍 光スペクトルである。システイン残基を34 あるいは 35 残基含むタンパク質である BSA, HSA, BLf を用いることで強い蛍光が観察された。一方、システイン残基が 5 残基しか有 しないOVA を用いると十分な蛍光が得られなかった。金はタンパク質内部に硫黄‐金結 合(S-Au)によって保持されていると考えており、システイン残基を十分に有しているタ ンパク質を用いることが蛍光性を有するGNCs を調製する条件であると考えられる。
GNCs がタンパク質様の特性を維持していることが示唆されたため、従来研究されてき た手法(エタノール脱溶媒法)でGNC-NPs を調製し、その内部に PTX を封入した。 (Table 2) PTX の封入率は PTX-BSA-GNCs-NPs で 85.8±1.5%、PTX-BLf-GNCs-NPs で 83.1± 6.2%であった。これらは本手法をタンパク質に適用した場合とほぼ同程度であった。また PTX-GNC-NPs は蛍光性を保持していた。(data not shown)
Table 2 Particle sizes of PTX-BSA-GNC-NPs and PTX-BLf-GNC-NPs by DLS
さらにPTX 封入 PTX-GNC-NPs に関し殺細胞 効果を評価した結果、キャリア単体では顕著な 毒性はなく、がん細胞に対してPTX 単体と同程 度の殺細胞効果を示した。これらの結果より、 PTX-GNC-NPs は難水溶性の抗がん剤が封入可 能であり、かつ自身が蛍光を有するナノキャリ アとして利用可能であると示唆された。 【結論】 1. siRNA 修飾金ナノ粒子(siRNA-GNPs)の調製と血管伸展抑制効果の評価 siRNA は GNPs 搭載後も遺伝子サイレンシング効果を有しており、顕著な血管新生抑 制効果がin vitroの実験系において確認された。これらのことから血管新生関連疾患に対 して適用可能であると考えられる。 2. 金ナノクラスター(GNCs)を用いたナノメディシン創薬 GNCs の調製には還元反応の進行とタンパク質への金原子の保持を満たすことが不可欠 であると示唆された。またGNCs は疎水性の抗がん剤を内部に封入することが可能であ り、同時に自身が蛍光性を有するナノキャリアである。これらの特徴はセラティクス (Theranostics)への応用がへつながる。 基礎となる報文
1. Takao Takeuchi, Kaori Fukushige, Tatsuaki Tagami, Tetsuya Ozeki
Sample d (nm) PDI PTX/EtOH(ml)/BSA(mg) 1.8 50.1±1.9 0.19±0.01 1.9 60.2±3.4 0.23±0.01 2 63.7±4.5 0.17±0.01 PTX/EtOH(ml)/BLf(mg) 1.8 41.5±2.5 0.20±0.00 1.9 47.2±0.6 0.20±0.01 2 54.9±4.1 0.18±0.01
Useful property of siRNA coated gold nanoparticles as a mini-nanocarrier platform for intraocular administration
(Journal of Drug Delivery Science and Technology, in press)
2. Increased cellular uptake of Lactoferrin capped gold nanoclusters on C6 rat glioma cells