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(1)

銀ナノ粒子インク 銀ナノ粒子インク 銀ナノ粒子インク

銀ナノ粒子インクを用いた を用いた を用いた を用いた W Wireless W W ireless ireless P ireless Power P P ower ower ower T T Transmission T ransmission ransmission ransmission

吉川 隆

, 境 新

**

Wireless Power Transmission using Silver Nano Paste

Takashi Yoshikawa, Arata Sakai

The wireless power transmission is widely studied for many kinds of application, for example, power supply for cell phone or power source of EV. The supplying power of those applications is always over mW. But it is impossible to transmit for longer distance under the index of regulation of protection from radiofrequency electromagnetic field. Then many applications are constrained by the restriction of transmitting distance. Sensor Network Node (The small wireless information terminal) for HEMS (Home Energy Management System) averagely consumes low power less than 1[mW].

Then we have considered to use wireless power transmission as the power supplier of the small information terminal. So we have designed many kinds of coil for wireless power transmission. Now we have concluded LS-coil can satisfy the specification of the Sensor Network Node for HEMS, so as to transmit the power more than 1m. But the transmitting coil is very large (1m) on LS-coil method, so we have started to study reducing the coil size introducing the silver nano paste flat coil (2D coil) for transmitting coil instead of copper wire (3D coil). As the result we have shown the transmitting characteristics by the magnetic resonance (-28dB @5cm). The transmitting loss with 2D coil is 40dB larger than 3D copper coil because of the decrement of Q factor of the silver nano paste flat coil, but has the advantage for eddy current effect.

Keyword HEMS, Energy Harvesting, Sensor network, Wireless power transmission, spiral coil,

1.1.

1.1.

緒論緒論緒論緒論

現代社会で消費される電力のうち,民生部門においては

約 15%が家庭によるものである[1]。家庭における消費電

力は,エアコンやクーラーなどの家電製品の普及に伴い,

近年増加傾向にある。また今後の家庭での電力消費量は情 報化社会の発展やオール電化の普及等によって,更に増加 すると予測される。家庭内で使用する消費電力を小型端末 などの通信により一括管理し,各部屋の状況を最適な状態 に 調 節 す る 事 で 消 費 電 力 の 無 駄 を 省 く 技 術 と し て HEMS(Home Energy Management System)がある[2]

小型端 末駆動に必要な平均消費電力としては,約 100[μW]であ ることがこれまでの我々の研究から見積もられている[2]。 ところが,家庭内でのエネルギーハーベスティングでは平

均100[μW]の発電は極めて困難である[2]。そこで不足分

の発電量を補う電力供給手段として無線パワー伝送が最

適であると考えた。無線パワー伝送は,電源コードを用い ずコイルに生じた電場または磁場を利用して無線で電力 を供給する伝送方式である。我々は過去にLS(Large and Small)コイルによる無線パワー伝送を行った。小型端末 内に組み込んだ受信用コイルに対して,送信側コイルを大 型化することで 100μW 以上の伝送効率を確保するもの である。この方式ではLargeコイルを天井や床下へ設置を するため,コイルの位置自由度に課題が存在した。

本研究では,まず無線パワー伝送における漏れ磁束が伝 送効率を低減させるため,磁束を集中させることを目的に フェライトコアを用いた無線パワー伝送に取り組んだ。次 に,コイルのコンパクト化を目標に,銀ナノ粒子インクに よる平面コイルを用いた無線パワー伝送に取り組んだ。

1.1 HEMSについて

現在の日本において,エアコンやクーラーの普及,携帯型 情報端末の浸透などにより,消費電力に占める家庭部門の 割合は現在約15%を占め,増加傾向にある[1]。そのため,

家庭での消費電力を抑制する技術が求められている。

HEMS(Home Energy Management System)は家庭内で使用

近畿大学工業高等専門学校

総合システム工学科 電気電子コース

** 近畿大学工業高等専門学校 専攻科 生産システム工学専攻 電気電子工学系

(2)

する家電機器の消費電力や環境情報で得られるセンシン グデータを小型端末により一括管理し,各部屋における電 力状況を最適な状態に調節する事で消費電力の無駄を省 くシステムである。 図1に小型無線端末を用いたHEMS の構成を示す。HEMSにて家電の一括管理するための通信 端末は,コーディネータとエンドノードが存在し,エンド ノードは固定型と移動型の2種類に区別される。コーディ ネータはエンドノードから通信によってデータを受信し,

それをもとに機器を制御するためのデータをエンドノー ドに送信する[2]。

HEMSにはモニタリングHEMSとコントロールHEMSが 存在する。モニタリング HEMS はエンドノードで使用中 の家電の消費電力や環境情報等のデータの収集を行い,デ ータを一方的にコーディネータへと送信する。エンドノー ドの機能は送信のみであり受信は行わないため間欠送信 することでエンドノード自体の消費電力は極めて小さく 抑えられる。コントロールHEMSは,モニタリングHEMS の機能に加えてコーディネータからの機器制御情報をエ ンドノードで受信する双方向通信が必要となる。更にその 後エンドノードではコーディネータから受信した機器制 御情報を家電機器に送信して,家電機器の消費電力を調整 する。その為,エンドノードの消費電力はモニタリングH EMSの倍以上に増加する。この2種類の HEMS につい て具体的な使用例を図1に示す。

図1 小型無線端末を用いたHEMS

1.2 無線パワー伝送について

無線パワー伝送は,電源コードを用いず電極やコイルに よって生じた電場または磁場を利用して無線で電力を供 給する伝送方式である。その方式は電磁誘導方式,共鳴型 方式,RF パワー伝送の3種類に分類され,それぞれで電 力伝送では伝送距離と伝送パワーが異なる。各伝送方式の 伝送パワーと伝送距離の関係を図2に示す[3]。無線パワー 伝送において,電磁誘導方式は2つの隣接したコイルの1 次コイルに電流を流す事によって発生する磁束が2次コ イルに入る事により発生する誘導起電力を利用した方式 で,数mm~数cm単位の伝送距離での利用が適しており,

電気自動車に対する電力給電や,携帯端末を充電する手段 として使用されている。

共鳴型伝送方式は電磁誘導方式による電力の伝送をコイ ルとキャパシタの共振を利用して行う方式で,数 cm~数 mまでの距離を低損失で伝送可能である。電磁誘導方式で はコイル間の距離が大きくなったり,位置ずれが生じると 伝送効率が大幅に減少するが,共鳴型伝送方式では伝送効 率の減少を抑えることが可能となる。

RF パワー伝送方式は放射電磁波を電力に変換する方式 である。電力伝送における範囲は広く,数 m まで伝送が 可能であるが,伝送距離の2乗に反比例して伝送効率が減 少するため微量の電力しか伝送が出来ない。そのため大き なパワーを送る際は送信地点での放射パワーは非常に大 きくなる。人体への影響を考慮して定められている電波防 護指針の規定において,空間放射パワーは1[mW/cm2]以下 であり[4],これを遵守した場合,長距離での実用的な電力 伝送は困難となる。

図2 伝送距離と伝送パワーの分類

1.3 HEMSにおける無線パワー伝送の目標値

HEMSへの適応を考えた場合,数十[cm]から数[m]の伝送 距離において数百[μW]から数十[mW]のパワーを給電対 象に送電できることが目標となる。磁気共鳴型ワイヤレス 伝送方式は数十[cm]程度の距離に数[mW]程度の電力が伝 送可能な方式であるので,本アプリケーションに最適であ り,磁気共鳴無線パワー伝送方式の HEMS への適応につ いて研究を行うこととした。本研究における1つの目安と して1m離れた場所に 100[μW]の電力を送信することを 目標とした。無線パワー伝送における空間放射パワーの防 護指針を遵守した場合,10cm径相当の開口コイル間の電 力伝送において,式(5)に従って-28dB以上の伝送効率 が必要となる。

222

2.. .. 無線パワー伝送と無線パワー伝送と無線パワー伝送と無線パワー伝送と

kQ kQ kQ kQ

積積積積

2.1 磁気共鳴方式無線パワー伝送の等価回路モデル 磁気共鳴型方式では,一対の送受信コイルにてそれぞれ コーディネータ

固定型端末

エンドノード 移動型端末

エンドノード 固定型端末 エンドノード

移動型端末

エンドノード 固定型端末

家電機器 家電機器

コントロールHEMS モニタリングHEMS

電磁誘導 方式

共鳴型 伝送方式

RF 伝送方式

伝送距離 伝

送 パ ワ

mm cm m

W

mW

μW

(3)

のコイルの共振周波数を一致させることで両コイル間の エネルギー伝送効率を向上させる。この現象を理想的な無 損失トランスを用いて表現すると図3のような等価回路 で表すことが可能となる。等価回路においてトランスの1 次側(送信側)とトランスの2次側(受信側)は1次側の 電源を除くと全く同一の回路構成となる。ここで,Lはコ イルの自己インダクタンス,Mはコイルの相互インダクタ ンス,Rはコイルの銅損,Zはそれぞれ端子による内部抵 抗であり,Cはそれぞれの抵抗に印加したコンデンサ容量 である[5]。

図3 磁気共鳴方式における等価回路モデル

2.2 kQ積と効率の関係

今,矩形コイルを考えた場合,コイルの自己インダクタ ンスL,相互インダクタンスMは,コイルの1辺の長さを a[m],コイルの銅線半径を r[m],コイル間距離を d[m], 真空の誘電率をμ0 (4π×10-7[H/m])として,以下の式(1), 式(2)のように表わせられる。ここで,Logは底eの自 然対数である[6]。

(1)

………(2) 結合係数kは以下のように表される。

k =M/L …………(3) 図3に示した等価回路にて,最大電力伝送条件でコイルの

二次側(受信側)で消費される電力と一次側(直径側)の 電力の比,即ち伝送効率η0を計算すると式(4)が導出 される[5]。

η0=(k Q)2/[1+√{1+(k Q)2}]2 ……(4)

これをdB表記で表すと式(5)のようになる。

η=10log100)[dB] ……(5) 又コイルのQ値は共振周波数f0を用いて以下の式(8)のよ

うに定めた。

ω0=√(1/LC) ……(6) f00/2π ……(7)

Q=ω0L/R ……(8)

L:コイルのインダクタンス R:コイルの抵抗

C:挿加したコンデンサの静電容量

式(4)を用いてkとQの積,即ちkQ積と伝送効率ηの 関係を図4に示す。kQ積が大きい程伝送効率は向上して いることが分かる。この様に無線パワー伝送ではkQ積が 最も重要な伝送効率因子となる。

図4 kQ積と伝送効率の関係

3 3

3. HEMSへの HEMSへの HEMSへの HEMSへの小型化に向けた取り組み 小型化に向けた取り組み 小型化に向けた取り組み 小型化に向けた取り組み

3.1 中継コイルを使用した共鳴型無線パワー伝送[5]

我々はこれまで緒論で示したHEMSの目標値である1m の距離において伝送効率-28dBの伝送効率を達成するコイ ル方式を研究してきた。ワンターンのループコイルを対向 させた場合の伝送効率-28dBを達成した伝送距離は60[cm]

程度であった[6]。そこで,伝送効率を改善するための研究 を行ってきた。共鳴型無線パワー伝送において,伝送距離 が離れるほど伝送効率の減衰が拡大するため,中継コイル を設けることで伝送効率の減衰を少なくする方法を検討 した。

送受信伝送距離を10[cm]~100[cm]とした場合において,

それぞれの中継コイルを最も改善効果のある送受信コイ ルの中間地点においた際(図5)の伝送効率の計算結果を 図6に示す。比較のため中継器を用いない方形コイルの計 算値も示した。図6より,-28[dB]での伝送は60[cm]程度 までとなっており,目標には届かなかった。伝送特性とし て,方形コイルと比較すると,伝送距離が短い場合は伝送 効率が向上しているが距離が離れるにつれ伝送効率が減 少し,中継コイルを用いなかった場合との差は1m地点で

は2[dB]となった。

図5 中継コイルを用いた場合の測定系

L L

C R C

R Z

( )





 + −

 

 +  +

= a a

r a a a a a

L 2

2 7 2 2

log 2 2 log

2 2

2 2

0

π µ





+ + +

+ +

+ +

+

= a d a d d

d a a d

d a d a a a

M 4 2 2 2

) 2 ( log )

2 2 2 2 2

2 2

2 2 2 2 0

π µ

共振コイル 調整用コイル

中継コイル

VNA

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

kQ

 η

(4)

図6 中継コイルを用いた場合の伝送効率

3.2 LSコイルを使用した共鳴型無線パワー伝送[5]

次に送信側に大型のコイルを用いるLSコイルについ て検討を行った。同一形状のコイルを送受信コイルに用い る場合と異なり,送信コイルを大きくし(Large),受信コ イルを小さく(HEMS仕様に)した場合(Small),無線パワ ー伝送における磁束の均一性が確保でき,より効率のよい 伝送が可能となる。我々がこれまで行ってきた研究におい ては計算および実測値として1m時点で-23[dB]以上の伝 送効率が測定されており,HEMSを想定した距離での運 用に適した手法であると言える(図7)。

LSコイルでは,HEMSの環境を想定した場合,送信コイ ルを天井もしくは床下に設置し,受信コイルを各無線小型 端末に組み込むという設置形態となる。この手法では高い 伝送効率と引き換えに設置場所が限定されるという課題 が存在した。

図7 LSコイルの伝送効率

尚,LSコイルの仕様は以下の通りである。tは銅線の直 径,φはコイルの直径である。

受信側コイル(Small coil) 送信側コイル(Large coil) φ:10[cm], t =0.16[cm] φ:100[cm], t =0.16[cm]

静電容量C=245[pF] 静電容量C=13.6[pF]

共振周波数を合わせるため,送受信コイルそれぞれの静電 容量を調整している。

3.3 フェライトコアを使用した共鳴型無線パワー伝送 無線パワー伝送において,伝送効率を向上させるために は結合係数kを大きくしなければならない( 2.2節,式(3) を参照)。ここでは,kを拡大するために相互インダクタ ンスMを大きくすることを考える。無線パワー伝送の際,

対向コイルに対して鎖交する磁束以外にも外部に対して 漏れ磁束が放射されている。この漏れ磁束をフェライトに よって対向コイルに導くことで,Mおよびkの向上を図る。

フェライトコアをコイル面内に配置した場合の写真と 伝送効率の測定結果を図8に示す[7]。 通常の銅線方形コ イルと比較し,約1~2dBの伝送効率の向上が観測でき た。フェライトコアを用いることで伝送効率を改善できる ことを確認したが,本方式では HEMS 仕様を満足する伝 送効率を得ることは出来なかった。

図8 フェライトコアを配置した伝送効率

3.4 コンパクト化対策

これまで我々が研究した無線パワー伝送方式は,Large コイルや中継コイル,フェライトコア等の導入による寸法 や重量の増加を伴うものであった。また,これまでの銅線 を用いたコイルでは,コイルの共振周波数の調整が不便で あるという問題も存在した。そこでコンパクト化と,コイ ルの共振周波数の調整を簡易化する事が可能な無線パワ ー伝送方式として,銀ナノ粒子インクを用いた無線パワー 伝送の研究を行うに至った。

4 4 4

4. 銀ナノ粒子インクを用いた無線パワー伝送 銀ナノ粒子インクを用いた無線パワー伝送 銀ナノ粒子インクを用いた無線パワー伝送 銀ナノ粒子インクを用いた無線パワー伝送

4.1 銀ナノ粒子インクの特性

金属は,ナノ粒子化によって粒子の粒径が小さくなるの に伴って,ナノ粒子ではない場合と比較すると,単位重量 あたりの表面積が増加し表面エネルギーが増大すること で導電率の向上が起こる[8]。銀ナノ粒子インクは粒形が 10nm以下の金属ナノ粒子で,比抵抗は2.2µΩmである。

これまでの無線パワー伝送では,主として銅線コイルを用 いていたため伝送効率の向上にあたってシステムの重大 化が起こっていた。銀ナノ粒子インクを紙上にペイントし 平面コイルとすることで,無線パワー伝送におけるシステ ムのコンパクト化を実現することが可能となる。また,銀 -40

-35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0

0 50 100 150 200

伝送距離[cm]

伝送効率[dB] 計算値

実測値 目標値

-25 -20 -15 -10 -5 0

0 10伝送距離d[cm]20 30 40

伝送効率[dB]

フェライトコアあり フェライトコアなし

中継コイルあり

中継コイルなし

伝送距離[cm]

0 20 40 60 80 100

-10

-30

-20

-40

中継コイルあり

中継コイルなし

伝送距離[cm]

0 20 40 60 80 100

-10

-30

-20

-40

(5)

ナノ粒子インクとコンデンサの接合位置を変更すること で簡単にコイルの共振周波数の調整が出来ると考えられ る。他方,銀ナノ粒子の比抵抗は銅の比抵抗0.0172μΩm の約127倍と非常に大きい。また,銀ナノ粒子は塗布膜の 厚みも数μmと薄いため,銅線を用いた場合の抵抗に比べ ると抵抗値は10~10倍大きくなりkQ積が小さくなるた めに,十分な電力伝送が行えない懸念がある。

そこで銀ナノ粒子インクによる平面コイルを用いて無線 パワー伝送が実測可能かの検証実験を試みることとした。

4.2 銀ナノ粒子コイルにおける伝送効率の検証実験[9]

銀ナノ粒子を用いた無線パワー伝送における伝送方式 は磁気共鳴方式を採用した[2]。この方式は,送受信2つの コイルの共振周波数を一致させる事により,共鳴が得られ 高効率の無線パワー伝送が可能となる。実用の際には机上 に銀ナノ粒子をペイントした用紙を設置しておき給電対 象の端末を机上に設置して無線パワー伝送を行う。本研究 においては可能性検証のため基礎伝送特性の測定を行っ た。

(1) 実験手法

方形銅線コイルと方形銀ナノ粒子系の伝送特性を解析す るため,銀ナノ粒子インクによる平面コイルを平行な台の 上で対向させ,測定実験を行った(図9)。

図9 銀ナノ粒子を用いた測定系

(左:測定系 右:銀ナノ粒子平面コイル)

図10 VNAによる銀ナノ粒子インクコイルの伝送効率

共振コイルの外側に,それぞれ送信受信用の給電コイルを 設けてVNAによって伝送効率を測定する。測定は伝送距 離 d を変更するたびにそれぞれの調整コイルとの調整距 離 a を変更して伝送効率が最大となるマッチング調整を 行う。また,コイル単体の共振周波数は片側のコイル端で のS11を測定し最少となる時の周波数とした[10]。

(2)共鳴型無線パワー伝送の確認

伝送距離d=7cmにてS21を測定した結果を図10に示 す。2つの共振が確認できるが,35MHz の高次での共振 は有線の漏洩結合による共振であり,低周波側の共振に着 目する。低次側では8.8MHzにピークを持つ伝送特性とな った。コイルからコンデンサを外し,共振条件を解くとこ のピークは確認出来なくなるため,この周波数において共 鳴伝送が起きていることが確認できた。

(3)伝送距離毎の伝送特性

銀ナノ粒子インクによる各伝送距離での伝送性能を評 価するため,方形銅線コイルを用いた結果と比較した(図 11)。方形銅線コイルに比べ銀ナノ粒子平面コイルでは平 均して40dB程度の伝送効率低下となった。銅線と銀ナノ 粒子の断面積と比抵抗にて双方の抵抗値を考えた場合,

50dB 相当の伝送効率低下が予想されたが,銀ナノ粒子平 面コイルでは表皮効果の影響が少ないため効率低下が抑 えられる結果となった,また,銀ナノ粒子平面コイルでは

伝送距離5[cm]において-28[dB]の伝送が可能であるという

結果を得た。この結果から,銀ナノ粒子インクを用いた無 線パワー伝送は,伝送距離5cm以下の範囲においてHEMS 用端末を机上等に設置する際に有効であるとわかった。尚,

本実験で用いた銀ナノ粒子平面コイルと方形銅線コイル の仕様は表1の通りである。

表1 銀ナノ粒子平面コイルと方形銅線コイルの仕様 銀ナノ粒子平面

コイル

方形銅線コイ ル

辺長φ 10[cm] 10[cm]

電流経路の断 面積

銀ナノ粒子によ る線の太さt=

1cm 厚さlS=数μm

銅線の直径 lR=0.16cm

静電容量C 200[pF] 300[pF]

共振周波数f0

8.8 [MHz]

(伝送特性より)

17.3 [MHz]

(コイル本体 の測定より)

調整用コイル 銀ナノ粒子 共振コイル

伝送距離 D

調整距離a 調整距離a VNA

5 10 15 20 25 30 35 40

周波数 [MHz]

0

-20 20

-40

-60

-20

-100 伝 送 効 率 dB

(6)

図11 方形銅線コイルと方形銀ナノ粒子の伝送効率

(4) 銀ナノ粒子インク幅による伝送効率の変化 無線パワー伝送の伝送効率はコイルの Q 値の増加に伴 って増加する。そこでコイルのQ値を増加させるために銅 損Rを低下させることを考えた(2.2節,式(8)を参照)。

銀ナノ粒子平面コイルの幅を1cmから2cmにして同様の 実験を行った。双方の伝送距離による伝送効率の変化を図 12 に示す。インクの幅を増大させることで銅損が低下し 測定区間全般にわたって伝送効率が 2dB 程度向上してい ることがわかった。

図12 銀ナノ粒子インクの幅による伝送効率の変化

4.3 共振周波数の微調整について

共鳴型無線パワー伝送では対向させる2つのコイルの 共振周波数を一致させることが重要となる。1%の共振周 波数のずれは,伝送距離が増すにつれ数dB程度の伝送効 率の低下につながる[11]。通常銅線コイルを用いた場合は コイルを製作し直すか調整用のコンデンサを付加する必 要があった。しかし銀ナノ粒子平面コイルでは予めコイル タップを付けておくことで微調整が可能であると考えた。

そこで,図14のように銀ナノ粒子コイルにタップを取り 付け,コンデンサの挿加位置を変えて伝送特性の測定を行 った。尚,本実験においては銀ナノ粒子平面コイルとコン デンサの接触抵抗低減のため,広い銅板(圧電素子の電極 を流用)にコンデンサを半田付けし,電極とした。

図14に示すように,銀ナノ平面コイルに挿加するコン デンサの位置をタップで切り替えられるパターンとした。

図14の左側はタップ0の位置に,右側はタップ2の位置 にコンデンサを挿加したものである。2つのコイルの共振 周波数が一致した場合として表2に示すケース1,2つの コイルの共振周波数がずれた場合として表2に示すケー ス2の2つの場合について伝送実験を行った。

図14 銀ナノ粒子インクによる平面コイル

表2 送受信コイルの組み合わせ 送信コイル 受信コイル ケース1 タップ0 タップ0 ケース2 タップ0 タップ2

図15 共振周波数のずれによる伝送効率の変化

実験結果を図15に示す。共振周波数がずれたケース2 の場合は,合致したケース1の場合と比較して約2dB程 度の伝送効率の低下が見られる。このことから,共振周波 数のずれが生じた場合は,タップの位置を変えることによ って共振周波数を微調整できることが確認できた。

5. 5. 5.

5.結論 結論 結論 結論

我々はこれまで HEMS における無線パワー伝送方式の 高効率化を目標として,伝送効率-28dB を満たすべく 様々な方式の研究を行ってきたが,コイルを用いた無線パ ワー伝送システムの大型化は避けられない課題であるこ とも明らかであった。そこで,本論ではコイルの小型化の 研究に取り組んだ。

次に共鳴型無線パワー伝送方式の原理に立ち返り,等価 回路により伝送効率向上のためには kQ積の値を大きくす ることが一意的に関与していることを確認した。そこで対

3 2 1 0 3 2 1 0

-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0

5 15 25 35

伝送距離[cm]

伝 送 効 率 [d B ]

銀ナノ粒子インク 銅線

-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0

5 15 25 35

伝送距離[cm]

伝 送 効 率 η [d B ]

幅1cm 幅2cm

-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0

5 15 25 35

伝送距離[cm]

伝 送 効 率 η [d B ] 共振周波数一致

共振周波数不一致

(7)

向コイルの鎖交磁束を向上させるため,フェライトコアを 介することによって磁束の集中を図るべくフェライトコ アをコイル周辺に配する試みを行った。その結果,コイル の中央にフェライトコアを取り付けることで 1dB~2dBの 伝送効率の改善を確認する事ができた。

次に無線パワー伝送の小型化という観点から,これまで 銅線を用いた3次元コイルであったものを銀ナノ粒子イ ンクでペイントした2次元コイルに置き換える試みを行 った。銀ナノ粒子の比抵抗が銅線に比べて大きいことや,

平面コイルの断面積が小さいことから充分なkQ積が確保 出来ない可能性があったため,共鳴型無線パワー伝送が実 現可能かどうかの検証実験を行った。その結果,銀ナノ粒 子平面コイルは銅線に存在する表皮効果の影響を受けな いため,高周波特性が改善され,同じ経路長の銅線コイル に比べ40dB程度の伝送効率低下はあったものの,S21の 周波数特性より共振のピークを観測することができた。さ らに伝送距離5cmにおいてHEMSの仕様である-28dB の伝送効率を確保していることが確認でき,机上設置によ る HEMS 端末への適用が可能であるとの結論を得た。ま た,銀ナノ粒子平面コイルのパターン幅を太くすることで 約2dBの伝送効率改善を実験によって確認した。これらの 結果より,銀ナノ粒子インクによる無線パワー伝送によっ て,無線パワー伝送を行う事が可能であるとの結論を得た。

今後は伝送距離拡大に向けて,高Q値コイルへの改良やマ ルチホップ方式での無線パワー伝送の検討を行う。また,

銀ナノ粒子平面コイルをスパイラル化するなどして浮遊 容量を活用した共振系を実現させ,更なるコイルの2次元 化を進めてゆきたい。

参考文献参考文献 参考文献参考文献

[1] http://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/japan/

[2] 吉川 隆,”エネルギーハーベスティングを用いたセン サネットワークHEMS”,近畿大学工業高等専門学校紀 要第5号,PP.33-39,2012.

[3] 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

(委託先)沖電気工業株式会社,

省エネルギー革新技術開発 ハーベスティング HEMS の事前研究, pp.28-30,2009年2月.

[4] 総務省 防護指針:http://www.tele.soumu.go.jp/resource/

j/material/dwn/guide38.pdf

[5] 吉川 隆,更谷 翔太,"LS コイルを用いた Wireless

Power Transmission",近畿大学工業高等専門学校紀要

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[8] http://www.denki-glass.jp/report/report_images/

paper_02.pdf

[9] 境 新,吉川 隆”銀ナノ粒子インクを用いた無線パ ワー伝送”,第 21 回日本高専学会(徳山)講演論文集,

p.218 ,2015.8.

[10] 吉川 隆,”磁気結合共振器型無線電力伝送の最適化

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[11] 吉川 隆,更谷 翔太,”HEMS適用としてのWireless

Power Transmission”,近畿大学工業高等専門学校紀要 第6号,pp.63-66,2013年3月.

図 11  方形銅線コイルと方形銀ナノ粒子の伝送効率  (4)  銀ナノ粒子インク幅による伝送効率の変化    無線パワー伝送の伝送効率はコイルの Q 値の増加に伴 って増加する。そこでコイルの Q 値を増加させるために銅 損 R を低下させることを考えた(2.2 節,式(8)を参照)。 銀ナノ粒子平面コイルの幅を 1cm から 2cm にして同様の 実験を行った。双方の伝送距離による伝送効率の変化を図 12 に示す。インクの幅を増大させることで銅損が低下し 測定区間全般にわたって伝送効率が 2dB 程度向

参照

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