論文の内容の要旨
氏名:大井田 憲 泰
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:日本の医師における飲酒行動とその関連要因に関する研究
【緒言】
一般国民における飲酒量の報告はあるが、医師を対象にしたものは少ない。患者の指導に当たる医師の役 割は大きく、患者指導のためにロールモデルとなることが望ましいが、現在医師への健康支援体制は整っ ていない。医師自身も適切な飲酒習慣を持つことが重要となっている。
今回、日本人医師の飲酒習慣とその要因を分析し、今後の医師の飲酒に関する意識の向上を図ることを目 的とした。
【対象と方法】
本研究は日本医師会会員より無作為に抽出した男性6000名、女性1500名を対象に自記式調査票を送付し 調査した。飲酒習慣や生活習慣病のリスクを高める飲酒習慣(以下リスク飲酒習慣)は2012年の国民健 康・栄養調査を参考に定義した。男女別として年齢、診療科毎、喫煙習慣の有無、運動習慣の有無、労働環 境、睡眠問題や精神的な問題の有無と飲酒習慣について調査した。
【結果】
回答数は5954名(回収率は79.4%)であった。記載不十分であったものを除外し5854名を調査対象とし た。
日本人医師は男女ともに飲酒習慣がない医師の割合が年齢とともに上昇した。一方リスク飲酒習慣のある 医師は男性では56-65歳が最も高く、女性では20-60歳代で概ね20%程度であった。多変量解析では年齢 が上がるにつれ飲酒習慣、リスク飲酒習慣ともに少なくなる傾向にあった。また多変量解析の結果、女性
(調整オッズ比1.24(1.04-1.47))、外科もしくは整形外科医(調整オッズ比1.52(1.28-1.80))、喫煙あり
(調整オッズ比1.93(1.59-2.34))、運動習慣あり(調整オッズ比1.17(1.02-1.35))、不眠症あり(調整オ
ッズ比1.53(1.30-1.80))で有意にリスク飲酒習慣が高く、労働時間10時間以上である医師はリスク飲酒
習慣が低かった(調整オッズ比0.77(0.66-0.89))。
【考察】
今回の結果から日本人医師の飲酒量は男女とも一般国民よりも多いことが明らかになった。また、飲酒習 慣の若い年齢、労働環境、睡眠問題、診療科などと関連が示された。しかし、労働時間の長い医師は過度の 飲酒を抑制する傾向があることやヒヤリハットと飲酒習慣との関連性が見られないことは節度ある飲酒習 慣があると示唆された。
【まとめ】
本調査により日本人医師の飲酒習慣が明らかになった。多量飲酒をする医師が多くいることの問題を提起 し、日本人医師の飲酒習慣の現状把握や飲酒対策を積極的に行うことが求められる。これらの活動を通し て日本の医師たちの望ましい生活習慣が図られ、更には患者教育の充実がもたらされることが期待される。