所属専門分野 電子情報工学分野( 松下研究室 ) 学籍番号
07674006
氏 名 磯部 現論文題目 超伝導
DyBCO
コート線材の臨界電流密度における重イオン照射の影響
1.
はじめにDyBaCuO(DyBCO)
やYBCO
などの希土類系線 材は高温高磁界で優れた臨界電流特性を持つた め、磁界中での応用が期待されている。そこで、人工的にピンニング・センターを導入して、更 に特性を改善することが目指されている。最近、
ロッド状の人工ピンである
nano-rod
において、作製条件を変化させることで、ピンのサイズや 形状の制御の可能性が示されつつある。しかし、
どのようなピンが臨界電流密度
J
cの改善に有効 に働くか、定量的な議論がまだ行われていない。本研究では、円柱状欠陥が臨界電流特性に与え る影響を調べるため、
DyBCO
コート線材に重イ オン照射行うことでサイズや数密度が分かる円 柱状欠陥を導入し、臨界電流特性に与える影響 を調べた。2.
実験試料は
THEVA GmbH
によるDyBCO
コート線 材 で 、 厚 さ90 μm
のHastelloyC276
上 にISD (Inclined Substrate Deposition)
法による厚さ3.7 μm
のMgO
配向層を堆積させ、その上に0.3 μm
のMgO-cap
層 、 共 蒸 着 法 に よ る 厚 さ1.5 μm
のDyBCO
層を積んだもので、0.5 μm
のAg
保護膜 を持つ。この試料にテープ面に垂直方向からAu
またはNi
イオンを照射した。測定は、磁界をテ ープに対して垂直、すなわち円柱状欠陥に対し て平行に印加し、SQUID
磁力計を用いて行い直 流磁化を測定し、その結果から臨界電流密度を 、 磁化緩和測定の結果からE-J
特性、n
値を評価し た。3.
結果及び検討図
1
に重イオン照射前後のJ
c-B
特性を示す。図1において
r
0は予想される欠陥半径で、B
Φは 照射量を欠陥の数が等しくなる磁界に換算した マッチング磁界である。低磁界では、照射によ りJ
cが低下した。低磁界におけるJ
cの劣化量と 照射による臨界温度T
cの劣化量の間に相関が見 られており、これらは超伝導組織の劣化が原因であると考えられる。高磁界では
Au
イオンを 照射した試料でJ
cが大幅に向上し、欠陥サイズ が大きい場合と、欠陥密度の高い場合で高いJ
cを示した。一方、
Ni
イオンを照射した試料では 大幅な特性改善は見られなかった。Ni
イオン照 射による欠陥は、Au
イオン照射による欠陥に比 べサイズが小さく、要素的ピン力が弱いためで あると考えられる。これらの結果について、磁 束クリープ・フローモデルと要素的ピン力の加 算理論を用いて解析を行い、実験値から磁束ク リープの影響を取り除いた仮想的な臨界電流密 度J
c0の最頻値を計算し、更に実験値と理論値の 比較のため、もともと自然発生的に存在してい るピンからの寄与と円柱状ピンからの寄与の分 離を行った。その結果、重イオン照射を行った試料の臨界 電流特性と要素的ピン力の統計的加算理論で予 想される値を比較したところ、よい一致が見ら れた。加算理論で予想されるように欠陥サイズ が大きく、照射量の多い試料の方が臨界電流密 度の改善に効果的であると考えられる。
0 2 4 6
10
810
910
1070 K 77 K B
1.0 T 0 T
2.0 T
J
c(A /m
2)
B (T)
Au 320 MeV Au 200 MeV Au 200 MeV Ni 200 MeV
1.0 T 5.0 T r
08 nm 5 nm 5 nm 2 nm ion energy
図1:照射前後の