学位研究 第9 号 平成1 0年1
0月 ( 研 究 ノー ト・資料) [ 学位授与機構研 究紀要]
米国における国家安全保障の学位 をめ ぐる動向
ReportontheDevelopmentofPostgraduateDegreesintheFieldof NationalSecurityStudiesintheUnitedStates
児矢野 マ リ
MariKOYANOResearchinAcademicDegrees,No.9(October,1998) ltheessay/materia
l ]
TheJoumalofNationalInstitutionf♭rAcademicDegrees米国における国家安全保 障の学位 をめ ぐる動 向
児矢野 マ リ'
は じめに
米国の高等教育機 関では,近年,大学院 レベルで国家安全保障
(nationalsecurity)に関す る学位 が授与 され るよ うになってきているOそれ は大 きく一般大学によるもの と,国防関連組織 の教育機 関によるもの とがある 了 l 本稿 は,その動向に関す る調査報告の一部である。
本調査 は以下の よ うな手順 で実施 したo まず,一般大学 に関 しては,Col
lege Board(ed.),
TheCollegeHandbook1995,
New York,
1996を参照 して, 「 国家安全保 障
」もしくはそれ に類 似す る名称の学位 を授与 している機 関を全て調べ,その機 関又は部局の責任者 に問い合わせ て 入学要項 と講義便覧を入手 した。 また,国防関連組織の教育機 関については,軍事関係の情報 誌 * 2 ,米国国防省 の担 当部局* 3 ,米国の国防関連教育機 関‑の留学経験者 な どに照会 して,学 位 を授与 している教育機 関の担 当部局 に直接手紙 を出 し,入学要項,講義便覧,お よびその他 の教育内容等 を詳述 した書類 を送付 して もらった。そ して,それ ら入手 した出版物 を一つずつ 綿密に読解 し整理 してい くとい う方法を とったO さらに,書類の中で理解 が困難な箇所や疑問 点につ いては,当該機 関の担 当部局‑手紙 を出 して問い合わせ た り, 当該機 関‑の留学経験者 に直接連絡 を とって助言や回答 を得たo このよ うな手順 で作業 を進 め,現在 も続 けているC
今回の報告 では,米国での一般的な動向 と,対象 となった教育機 関の うち3 つ の機 関で提供 され ている教育課程 と学位 の概略について紹介す るO本稿 で具体的 に扱 う教育機 関は,一般大 学ではジ ョー ジタウン大学エ ドモ ン ド外交大学院の国家安全保障研 究課程
(National Secudty StudiesProgram,
EdmundA.WashSchoolofForeignService)であるO また,国防関連組織の教育 機 関では,海軍関係 の機関 として合衆国海軍大学
(TheUnitedStatesNavalWarCollege)と合 衆国海軍大学院学校
(TheUSNavalPostgraduateSchool ) の2 つである。 なお, これ らの機 関で 提供 され ている課程や授与 され る学位 につ いては, ここ数年間で変動のあるもの もみ られ る。
そ うした変動 については,必要 に応 じて本稿の中で触れ る。
その他 の機 関について も現在調査が進行 中である 言4 また,本稿 で紹介す る教育機 関につい て も,その後の追跡調査 を進 めている。 その結果 はまた追 って紹介す るつ も りである o * 5
防衛 関係 の専門用語 につ いては,できる限 り適切 な訳語 を用いるよ うに努 めたが,筆者の能 力の限界 によ り不十分な点 もあるo この点 についてはあ らか じめご容赦願 いたいO ただ し,釈
* 静岡県立大学国際関係学部専任講師
の不十分 さを補 うために,課程,科 目及び学位 の名称,その他まざらわ しい用語等 については, 訳語 と共に原語 も添えた。一般 にわか りにくい用語 については,注で簡単な説明を加 えた。
l 概観 1 ‑般大学
(1)
ジョージタウン大学
(GeorgetownUniversity)エ ドモン ド外交大学院
(EdmundA.WalshSchoolofForeignService)で提供 されている 「 国 家安全保障研究課程」
(National Security Studies Program)を通 して授与 され る,学芸修士
( 国家安全保障研究)
(MasterofA鵬 degrceinNationalSecmityStudies)であるO
その他
,2つの大学に現在照会中である。それ らは,以下の とお りである。
(2)
カ リフォルニア州立大学べルナルデ ィノ校
(califomiaStateUniversity‑Bernardino) (3)南西 ミズー リ州立大学
(southwestMissouriStateUmiversity)国家安全保障 とい う名称の学位 は授与 しないものの,国際関係論や国際政治の課程の一部 と して,国家安全保障または国家防衛 に関連す る科 目を含む課程は多い。そ うした課程 を提供す る大学 としては,例えば以下のものがある。
(4)
ジ ョンズ ・ホプキンス大学
(JohnsHopkinsUniversity)(5)
タフツ大学フレッチャ一法 ・外交大学院
(TheFletcherSchoolofLaw andDiplomacy,
TuftsUniversity)(6)
ジ ョージ ・ワシン トン大学エ リオ ッ ト国際問題大学院 (
TheElliotSchooloflntemational Affairs,GeorgeWashingtonUniversity)(7)
ジ ョージ ・メイ ソン大学
(GeorgeMasonUniversity)(8)
アメ リカン大学行政大学院
(schoolofPublicAffairs,
Am ¢ricanUniversity)(9)
ハーバー ド大学ケネデ ィ行政大学院
(John Fitzgerald Kennedy SchoolofGovernment,
HaⅣardUniversity)以上の大学についての詳細は,現在照会 中である。
2 国防関連組織の教育機 関
4
つの各軍隊 ( 陸軍,海軍,空軍,沿岸警備隊)( 以下
,4軍 とする)統括す る幾つかの上級 レ ベルの教育機関において,国家安全保障に関す る学位が授与 されている。ただ し,教育機関に よっては,実質的な教育内容は国家安全保障に関す る科 目を中心 とす る場合でも,そ こで授与 されている学位の名称は,必ず しも国家安全保障 とい う用語 を含む とは限 らない。 また,修了 者が学位 を取得す るためには,当該課程の修了以外 に付加 された条件 を充た さな くてはな らな い場合 もあり,当該課程の修了 と学位の取得 とが直結 していない課程 もある。 さらに,各教育
‑96‑
機関が個別に他の高等教育機 関 と提携関係 を結んで,そこでの学位授与制度の中に組み込まれ る形で,当該課程の修了者がそ うした他 の教育機関の課す条件を充た した場合 にのみ,その教 育機 関か ら学位 を授与 され る場合 もある。
なお,学位の取得が可能な課程を履修できる者の範囲は,多 くの場合,米国軍隊に所属す る 士官 ( 以下,米国士官 とす る),米国政府国防関連組織ない しその他 の米国政府 の文官,お よ び,他国の軍隊に所属す る士官 ( 以下,他国士官 とする)ない し他国政府の文官に及ぶ。 さら に,米国士官については,本人の所属が4 軍のいずれであるかにはかかわ らず, ともに同‑の 課程教育に参加 させ る場合がほとんどのよ うであるO
以下に掲げるものは,そのような国防関連組織の教育機関の例である。
( 1 )合衆国陸軍指揮幕僚大学
(UnitedStatesAm yCommandandGeneralStaffCollege) (a)指揮幕僚学部 (Command and General Staff College)で提供 されている指揮幕僚課程 (CommandandandGeneralStaffProgram)(b)上級軍事研究学部 (AdvancedMilitaryStudiesCollege)
によ り提供 されている上級軍事研 究課程
(AdvancedMilitaryStudiesProgram)なお,以上の課程は,実質的に国家安全保障ない し戦略論の科 目を教育カ リキュラムの中心 とするが,授与する学位の名称 としては,国家安全保障等の用語は用 いない。
(2)合衆国陸軍大学 (United States Am y War College)で提供 されている提携学位課程 (cooperativeDegreeProgram)
3
つの一般大学 との提携 による。希望者 は,本科課程 と,それ ら大学の提供す る課程 との組 み合わせによって,それ らの大学の学位 を取得できる。本科 自体の課程を履修す るだけでは, 学位 を取得できない。また,
(1)と同様,それ らの学位 の名称には,国家安全保障等の用語 は含 まれない
。*̀(3)合衆国海軍大学 (UnitedStatesNavalWarCollege) (a)海軍作戦学部 (collegeofNavalWarfare)
(b)海軍指揮幕僚学部 (CollegeofNavalCommandandStaff)
以上の各々で提供 されている課程の修 了者 に対す る学芸修士 ( 国家安全保障及び戦略研究
(MasterofA
rtsinNationalSecurityandStrategicStudies))である。
(4)合衆国海軍大学院学校 (UnitedStatesNavalPostgraduateSchoo
l )
「 国家安全保障及び情報
」 (NationalSecurityandIntelligence)課程 の修了者 に対す る学芸修士
(MasterofA
rts)( 国家安全保障事情
(NationalSecurityAffairs)又は 「軍民関係 と国際安 全保障」 (
civil‑Military Relations and lntemationalSecurity)),及び, 「特殊戦」 (
Special Operations)課程の修 了者 に対する科学修士 (「防衛分析」 (
DefenseAnalysis))である。
なお, この教育機 関では,以上の他 にも,実質的には国家安全保障や戦略論 に関す る科 目を
中心 とす る課程 で,国家安全保 障や 防衛 に類す る用語 を含 まない名称 の学位 を授 与す るカ リ キュラム も提供 されてい る。 これ は,一般 にこの教育機 関が,各学 問領域につ いて国防の実践 に役 立つ よ うな明確 な方 向性 をもつ内容 に焦点 を当てて,教育 を行 っていることによる。
ll 具体的内容
1
‑般大学
<ジ ョー ジタ ウン大学
(GeorgetownUniversity)>エ ドモ ン ド外交大学院
(EdmundA
.WalshSchoolofForeignSeⅣice)で提供 され ている国家安 全保 障研究課程
(TheNationalSecurityStudiesProgram)参考文献 :
GeorgetownUniversity,TheGraduateSchoolofArtsandSct'envesCatalogue1997‑98.( 1 )概要
国家防衛 に関す る職業 に従事 してい る,又は,将来 この分野での仕事 を希望す る者 の教育上 の必要 を充たす ことを 目的 として,多角的な学際研 究科 目を提供す るC教員 には,連邦政府や 防衛分析 に関す る民間の研 究機 関か らの専門家 も含 まれ ている
。 1977年 に設立 され たO
(2)
学位及びその取得要件
*7学芸修士 ( 国家安全保障研究)
(MasterofArtsdegreeinNationalSecurityStudies)が取得 さ れ得 る。
最低 で も
Bレベル の成績 で
36時間の単位 を修得す ることが条件 で ある
。36時間 は
,21科 目に 匹敵す る。本課程 は,原則 として他の教育機 関か らの単位互換 を認 めない。 ただ し,本学の他 の課程や学科 の提供す る科 目のみは,例外的に認 め られ る。
学生は, フル タイム ( 1 学期 につ き
4科 目を履修す る)又 はパー トタイムのいずれ かの形態で, 課程 を履修す ることができる。
この課程 では, ほ とん どのクラスは夜 間に開講 され る。全 ての新規学生は,課程
1年 目に, 政治分析
(politicalAn alysis)及び米国防衛政策
(U.S.DefensePolicy)を履修 しな くてはな ら ない。 また,卒業までに,経済及び国家安全保 障の必修科 目を履修 しな くてはな らない。 さら に,学生は
,4つ の グルー プ ( 安全保 障研 究の基礎,防衛 問題及び政策形成,地域安全保障研 究,経済及び国家安全保障) の各々か ら,最低
1つ の科 目を選択 しな くてはな らない。 そ して, その科 目の うち,最低2 つ の筆記セ ミナー を とらな くてはな らない。 以上の要件 に加 えて,学 生は, 自分の職業上のニーズや学習 目標 にそって各 自の学習科 目を組み立てることが望ま しい。
(3)
カ リキュラム
*&以 下の
3つ
(A,
B,
C)か ら成 る。
A :課程最初の2
つの学期 で,2 つ の中核 クラス ( 米国防衛政策,政治分析) に参加す る。
‑98‑
B:
以下の4 つの各分野か ら,最低1 つの科 目を履修す る。
①国家安全保障研究の基礎
(FundamentalsofNationalSecurityStudies)戦争論
(OperationalA
rtofWar),海軍力 と戦略 (NavalPowerandStrategy),戦略思想 :古代か ら現代まで
(Strategic Thought:Antiquity to the Present),地政学及び国家安全保障
(GeopoliticsandNational Security),米国軍事力整備計画 (Plami ngU.S.MilitaryForces),
国家安全保障及び意思決定
(NationalSecurityandDecisionmaking),セ ミナー :外交政策 としての軍事的手段
(Seminar:MilitaryInstrumentsofForeignPolicy)②地域安全保障研究 (
AreaSecurityStudies)1990
年代のロシア軍隊
(TheRussianMilitaryinthe1990S),ラテ ンアメ リカの安全保障問題
(Security ProblemsofLatinAmerica),アジアの安全保障に関す る問題 (Issuesin Asian Security),欧州 の安全保障の政治 (politicsofEuropeanSecurity), ロシアの外交及び軍事政
策
(Russian Foreign and Military Policy),中東及び北アフ リカの安全保障問題 (Security
Problems ofMiddle Eastand North Africa), 中東及びペル シャ湾の安全保障問題 (Security
Problems of Middle East and the Persian Gulf),セ ミナー :第三世界 にお ける武器拡散
(seminar.・WeaponproliferationintheThirdWorld)
③防衛 問題 と政策
(DefenseProblem andPolicy)兵器拡散 と軍事紛争
(WeaponproliferationandMilitaryConflict),科学技術 と国家安全保障 (TechnologyandNationalSecurity),低烈度紛争 の進化 (EvolutionofL
ow IntensityConflict)議会 と国家安全保障政策 (
congress and National Security Policy),情報 と国家安全保 障 (Intelligence and NationalSecurity),出現 しつつ あるグローバル な安全保障問題 (Emerging GlobalSecudtyProblems),セ ミナー :メディア及び国家安全保障 (seminar:Mediaand National Security),セ ミナー :情報 と国家安全保障 (seminar:IntelligenceandNationalSecurity),セミナー :米国の外交政策
(seminar:AmericanForeignPolicy)④経済及び国家安全保障
(EconomicsandNationalSecurity)米国の防衛産業
(TheUS DefenseIndustry),経済 と国家安全保障 (Economy and National Security),紛争の経済的原因 (Economic causes of Conflict),国家安全保障の経済的手段(Economic lnstmments of National Security)
,セ ミナー :国際経 済安全保 障
(seminar: IntemationalEconomicSecurity),セ ミナー :防衛予算の経済 と政治 (seminar:Economicsand PoliticsoftheDefenseBudget)C:
最低2 つの筆記セ ミナー
(Writingseminar)を履修す ること。
2
国防関連組織の教育機 関
<合衆国海軍大学
(UsNavalWarCollege) (NWC)>参考文献 :
TheUSNavalWarCollege,UnitedStatesNavalWarCollegeCatalogue:1994.(1)
本機 関の概要
上級 レベルの軍隊専門教育 と戦略に関す る研究を担 う。教育面では,軍隊にお ける健全な意 思決定,軍事戦略 と作戦技術の適切 な遂行,統合体制
*9の増進 を実現す ることに貢献す るよ う な,管理職 レベルの人材 を養成す ることを 目的 とす る
。1884年1
0月に設立 され,教育課程は, その後の世界情勢及び米国の安全保障政策の変化 に伴 う変遷 を経て,現在 に至っている。在籍 学生総数は,毎年5
20か ら
550人程度である。学生は,米国士官* 1 0 ,米国政府 の文官及び同盟国 等の士官か らなる。
4
つの学部 よ り構成 され,教育は3 つ の学科 (「 戦略及び政策」 (
DepartmentofStrategy and Policy), 「国家安全保障意思決定」 (
DepartmentofNationalSecurity Decision Making),
「 統合軍事作戦」 (
JointMilitary OperationsDepartment))でなされ る. また,米国軍隊の予備 役士官 を対象 とす る課程
(ReserveOfficerPrograms)も設定 されてお り,毎年多 くの参加者が ある。
研究機 関 として, 「 上級研究セ ンター」 (
CenterfわrAdvancedResearch) (1975年設立) と
「 海軍作戦研究セ ンター
」 (CenterforNavalWarfareStudies) (1981年設立)がある。
(2)
教育担当組織の構成
戦略及び政策学科,国家安全保障の意思決定学科,及び,統合軍事作戦学科 とい う
3つの学 科がある。各学科の教育概要は以下の とお りである。
(a)戦略及び政策学科
ここでは2つの点に焦点が当て られ る。一つ は国家 の政治的利益 と目標 との関係 であ り, も う一つは,そ うした利益 と目標 に対 して軍事力が役立ってきた,または,役立つ ことのできる 方法である。 これは,海軍大学の教育 に独特のカ リキュラムである。 この科 目では,学生の戦 略的な思考能力を養 うことを 目的 として,歴史,政治学及び国際関係 といった幾つかの学問領 域か ら戦争に関す る研究にアプ ローチす る。
具体的には
3つの方法 を とる。第‑ は,歴史的に最重要な軍事戦略家 の戦略 ( クラウゼ ヴィ ッツに始まる一般的な軍事戦略 と,マハ ンに至 るまでの海軍戦略) について学習 し,理論的な 基礎 を養 う。第二は,アテネ ・スパル タ戦争 にまで遡 り,過去の紛争 の際に とられた戦略 につ いて,歴史的観点か ら検討す る。最後 に,以上の学習によって培 われた戦略 と政策 との関係 を め ぐる客観的かつ想像的な思考 に基づいて,最近の過去の戦争について分析す る。
全体 を貫 くテーマ は,戦略 と政策 の整合性 ,戦略の妥 当性,多国籍 軍 との作戦
(coalition wa血 re)とそのための国際環境,軍民関係,戦争前の作戦計画 と戦争 の終結方法,戦後処理, 戦略の社会的側面である。
事例研究は講義, リーデ ィング,個別指導, レポー ト,セ ミナーの組み合わせで進 め られ る。
‑100‑
(b)国家安全保障意思決定学科
ここでの教育の 目的は,利用可能な限 られた国家資源 を用いて,効果的な選択のできる能力 と軍隊の リーダーシップをとることのできる能力 とを養 うことであるo これは,士官または文 官の学生が,将来上級 レベルの指揮幕僚を担 うことに備 えるものであるO
統合作戦や同盟国との作戦 も含む全ての主な防衛計画を対象 とす る。具体的には,経済,政 治 ・外交,軍事的要素に着 目す ると同時に紛争の論理的な分析 も伴 う国家戦略に始ま り,グ レ ナダ, ソマ リア,ボスニア等の一連の事例研究を通 して,国家指揮構造の強弱について現実的 に検討す る。
ここでは,経済,政治学,管理論,戦略,オペ レーシ ョンズ ・リサーチ, リーダーシップ, 組織心理学及びその他 の関連学問を統合 した,学際的なアプローチが とられ る。
この科 目はさらに
3つの科 目 ( 兵力整備計画,合理的な意思決定,政策策定 と実施) に分か れ る。いずれ も口頭及び筆記の課題 を中心に進 められ, さらに分析ペーパーの提出も求め られ る。
(C)
統合軍事作戦学科
ここでの 目的は,学生が作戦技術 と戦争の作戦 レベル についてよ り深 く理解できるようにす ることである。具体的には,潜在的な脅威である軍隊 とそれに対抗す るために実行可能な戦略 的かつ作戦上の選択肢について,学生各 自の理解 を高める。それ によって,国家の軍事戦略の 作戦上の実体を理解す るために必要な知識 と洞察力を養 う。学生各 自が軍事的な意思決定 と作 戦計画過程に参加 し,それ を指揮するための能力を習得することに,比重は,おかれ る。 これ は,それまで 自分の所属す る軍での専門的な環境 に慣れてきた学生に とっては,将来の任務の 遂行のために必要な能力である。そのために,戦略 と作戦 レベルでの軍事的意思決定,作戦計 画 ,及 び, 単一軍種
*l l 及 び統合 軍 に よる戦 闘能力 と限界 (
service and joint warfighting capabilitiesandlimitation)について,学際的な研究方法 をとる
。.なお,陸,港,空での統合の重要性は
1986年に法律でも確認 されてお り,ここでの教育方針 はそれ を受けている。
14
か ら
15人程度の学生セ ミナーを中心 として進 め られ る。その際の共通す る手法は, 「ウオ ー ・ゲーム」
(war gaming)* 1 2 であるOまた,軍隊関係者 らによる講義 も頻繁にあるO さらに, 学生は リサーチペーパーを含む幾つかの課題 をこなさな くてはな らない。
(3)
学部の構成
(a)
海軍作戦学部
(collegeofNavalWa血re)上級 レベルの学際的な内容の教育を行 う
。3カ月 ごとの3 学期制か らなる
1年間課程
(8月か ら
翌年の6 月まで)である。入学資格者 は,大佐又は中佐 クラスの米国士官及び様 々な米国連邦
政府機 関の同等 クラスの文官である。学生数は,毎年200か ら225人程度である。学生の所属先
の比率 としては,全体の約60%弱が海軍士官で,残 りの20%を陸軍,空軍及び海兵隊で均等に
占め,最後の
10%のほとん どは文官であ り,沿岸警備 隊士官はわずかにすぎない。
学生は,3 つの中核科 目 ( 国家安全保障意思決定,戦略及び政策,統合軍事作戦) を履修す る。 また,最初の
2学期 間は,海軍指揮学部 の講義や他国学生のセ ミナー と合同で学習す る場 合 もある
。 1つの学期 について
,1つの選択科 目 ( 軍事理論,地域研究,国際関係,専門職倫理, 国際法,メデ ィア関係等)‑の参加 が要求 され る。 なお,選 ばれた学生は,海軍作戦研究セ ン ターの提供す る中核科 目の上級研究課程 ( 1 学期分) に進む こともできる。
(b)海軍指揮幕僚学部 (collegeofNavalCommandandSta
f f)
中級 レベルの学際的な内容の教育を行 う
。3カ月 ごとの3 学期制か らなる1 年 間課程
(8月か ら 翌年の6 月まで)である。入学資格者 は,少佐又 は大尉 クラスの米国士官及び様 々な米国政府 機関の同等 クラスの文官である。学生数 は,毎年240 か ら
260人程度である。学生の所属先 の比 率 としては,全体の約6
0%強が海軍士官で,残 りの20%を陸軍,空軍及び海兵隊で均等 に占め, 後の6%は文官,4%が沿岸警備 隊士官である。
学生は,3 つの中核科 目 ( 戦略 と政策,統合海 軍戦略,国家安全保障意思決定) を履修す る。
これ らの基本的なカ リキュラムは,本質的には海軍作戦学部の学生が履修す るもの と同 じであ るが,海軍指揮幕僚学部では,少佐又は大尉 クラスの学生の経験程度や職務上のニーズに適合 す るよ うに,各科 目は工夫 されている。 また
,1つの学期 について
1つの選択科 目 ( 軍事理論, 地域研究,国際関係,専門職倫理,国際法,メデ ィア関係等) に参加 しな くてはな らないC な お,選 ばれ た学生は,海軍作戦研究セ ンターの提供す る中核科 目の上級研究課程 ( 1 学期分) に進む こともできる。
(C)海軍指揮学部 (NavalCommandCollege)
1956
年 に設立 され た。他国の大佐又は中佐 クラスの士官 を対象 に,上級 レベル の学際的な 内容の教育 を行 う
。3カ月 ごとの3 学期制か らなる1 年 間課程
(8月か ら翌年 の6 月まで) である。
学生数 は毎年3
5人程度 である
。 1993年 までに76 カ国か ら1
,150人 が卒業 してお り,その うち約
70%が本国で将官クラスに昇進 している.学生は,3 つの中核科 目 ( 戦略 と政策,国家安全保障意思決定,統合軍事作戦) を履修す る。
また,最初の
2学期間は,海軍指揮幕僚学部の学生 と一対になってセ ミナーに参加す る。第
3学 期 には海軍指揮幕僚学部の授業科 目に匹敵す る内容 の別個の科 目を履修す るが, ここでは とく に,グローバル及び地域的な安全保障問題 と,学生各 自の本国の海軍 に影響 を与えるよ うな独 自の国内の政治及び経済的な問題 に比重がおかれ る。 この科 目を履修 している間に,学生は 自 国の海軍 と国家が直面 している問題 に関す るブ リー フィング
(NavalForceIssueBriefings)を 準備 し,発表す る。 さらに, この期 間中には,選 ばれた海軍指揮幕僚学部の学生が海軍指揮学 部のクラスに参加 し,米国 と他国 との間の一連 の対話 を行 う.
ー102‑
(d)
海軍幕僚学部
(NavalStaffCollege)1972
年 に設立 された。他 国の少佐又は大尉 クラスの士官を対象 に,中級 レベル の学際的な内容 の教育を行 う
。5カ月半の課程 で,入学時期 は1 月 と7 月
(1年 に2 回) である。学生数 は,毎年
25人程度であ り,地理的に広範囲の国の出身者 を含むよ うになっている
。1993年 までに
88カ国 か ら
879人の学生が卒業 してお り,その うちの多 くは本国で中枢 のポジシ ョンについている。
学生は
,3つの中核科 目 ( 戦略及 び政策,国家安全保 障の意思決 定,統合軍事作戦) と,
「 国際法 と海洋政策」 を履修す る。 「 国際法 と海洋政策」は海軍幕僚学部 に独特の科 目であ り, ここでは国際法の他 に海上貿易,海洋資源,汚染,海洋法の執行 なども扱われ る。海軍幕僚学 部の課程は短期であるために,他の学部 と交流す る機会 は限 られ るが,講義や討論 では
3つ の 学科の教官 も含 めて多彩なメンバーが指導す る。以上のカ リキュラムに加 えて,学生は米国 と 本国 との相互利益に関す る リサーチペーパーを提出す る。 また, 自国の歴史や文化 を海軍大学 全体に紹介す るために
,30分間の 口頭での発表 を行 う。 さらに,在学 中に各 自の選択で選択科
目を履修 しな くてはな らない。
(e)
継続教育学部
(collegeofContinuingEducation)上記の課程に参加できない中級ない し上級 レベル の米国士官,米国政府の文官及び限 られた数 の同盟国の海軍士官 に対 して,海軍大学の課程 を提供す ることを 目的 とす る中級 レベル の教育 を行 う。セ ミナー課程 と通信課程 がある。学生は,そのいずれか一つまたは両者 を組み合わせ たものを選択す ることができる。
学生は
,3つの中核科 目 ( 戦略 と政策,国家安全保障意思決定,統合軍事作戦) を履修す る。
さらに,通信教育の学生は, 「 国際関係論
」または 「 国際法」のいずれか一つの科 目を選択す ることができる
。3つの中核科 目を終了 した学生には,デ ィプ ロマが授与 され る。
(4)学位
学芸修士 ( 国家安全保障及び戦略研究)
(MasterofArtsinNatinalSecmityandStrategic Studies)0
1991
年 に, ミューイ ングラン ド基準協会
(New EnglandAssociationofSchoolsandColleges ((NEAS&C)) によって認 定 され た。海軍作戦学部 または海軍指揮幕僚学部 の修 了者 で,所 定の条件 を充た した者 に対 して授与 され る。
(5)学位取得条件
(a)中核科 目 (
戦略及び政策,国家安全保障意思決定,統合軍事作戦) の各 々又は上級研究 課程で,
B以上の成績 を得 ること。
(b)3
学期間の各学期 で選択科 目 ( 軍事理論,地域研究,国際関係,専門職倫理,国際法, メ
ディア関係等)に合格す ること。
(6)
その他
(a)単位互換制度NWC
修 了者 が取得 した一定数 の単位 は,大学等 の他の教育機 関‑の入学 に際 して承認 され うる。所定の単位数 は,海軍指揮学部が1
7,海軍幕僚学部が8 である。
<合衆国海軍大学院学校
(TheUnitedStatesNavalPostgraduateSchool )
(NPS)>
参考文献 :
TheUSNavalPostgraduateSchoolTheNavalPostgraduateSchool:AcademicYear1998.(1)
本機 関の概要
海軍の管轄の下で,海軍及び他の軍の利益に貢献す るよ うな研究課程 を提供す る教育機 関で ある.1
951年1
2月 に設立 されたO組織の運営は一般 の高等教育を基準 としているが,海軍の特 別 のニー ズ に適合 す る よ うに工夫 され てい る。 毎年 「 大学院教 育検討 委員 会
」 (Graduate Education Review Board)で検証 され る海軍の大学院教育のための政策ガイダンスや指針が,ここでの教育の基礎 となる 。 * 1 3 また,NPS の教育内容 については, 「 諮問委員会」 (
Board of Advisers)が,毎年定期的に査定 を行 ってい る。*1 4 ここでは,提供 され てい る教育課程 が効果 的に
NPSの任務 を達成 していることの有無や将来の計画の是非な どに関す る評価がな され,そ れに基づ き海軍長官 に助言がな され る。
校長 は海軍将官であ り,その補佐役である教育部長は文官の教官か ら選 ばれ る。現在,在籍 学生数 は約1
,500人 である。その内訳 は,米軍士官* 1 5 ,約3
0カ国の同盟国軍士官,及び,少数 の米国連邦政府職員 と他国の政府職員である
O *16教育スタ ッフの大多数 は文官
(civilians)であり
,99%以上が博士号
(ph.D.)を取得 している。ここで提供 され る課程 は,士官の実務上のニーズに応 えることを 目的 とし,その内容は通常 の大学院 レベルの学位取得 に必要 とされ るものを超 える。 したがって,政府職員で学位取得希 望者 については,個人の教育 目標 にそ うよ うに課程が設定 され うる。特 に,NPS との協議 に基 づいて,寄宿義務条件 が緩和 され うる。 また,学位 の取得 を望まない政府職員 には,特別な課 程 も提供 され うる。 こ うして,士官及び政府職員双方のニーズに十分応 えることができるよ う になっている。
学期 は
4学期制 ( 第1 学期開始時期 は課程 によって異なる)である。課程の修養年限は各課程 によ り様々である。
また, 「 国際プ ログラム事務局」 (
ⅠntemationalProgram Office)が設置 されてお り, 「 安全 保障支援 トレーニングプログラム」 (
SecurityAssistanceTrainingProgram)や 「情報プ ログラ ム
」 (Information Program)等 を通 して,人材教育面にお ける他国 との協力関係 を推進 している
。1954年以来,すでに3,
100人 を超 える6 5カ国か らの士官がNPS を卒業 している。
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