第16 回 三重県胎児・新生児研究会抄録
雑誌名 三重医学
巻 52
号 1‑4
ページ 53‑57
発行年 2009‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/10076/10314
第 回 三重県胎児・新生児研究会抄録
日 時: 年 月 日(祝) : :
場 所:国立病院機構 三重中央医療センター研修棟
.胎児母体間輸血症候群の一例
山田赤十字病院 小児科
淀谷典子,川 裕香子,前川佳代子,
梨田裕志,雨宮喜雄,藤原 卓,
東川正宗,井上正和
症例は在胎 週 日,体重 ,アプガース コア 点で出生した女児.定期妊婦健診の胎児 心拍モニタリングで, と基線細変 動の消失,遅発一過性と変動一過性の混在した一 過性徐脈が認められ,同日緊急帝王切開で出生し た.生下時,啼泣なく,心拍 回 分以下の徐脈 を認め、全身蒼白であった.患児の は
と著明に低下しており,輸血を行い,全身状 態は改善傾向を認めた.溶血所見を認めず,分娩 日後の母体 が %と高値であり,胎児母 体間輸血症候群と診断した.患児は経口哺乳がで きるまで回復し,日齢 に退院となったが,日齢 に撮影した頭部 では,テント下・基底核 部を除く大脳半球全体に膿胞性変化を認め,出生 前から頭部に虚血性変化が存在していたことが示 唆された.
若干の文献的考察を加えて報告する.
. トリソミーの児の在宅療養への取 り組み
三重県立総合医療センター
久保田恵理,松野 薫,犬飼さゆり,
西森久史,杉山謙二
今回,私達は ヶ月間に渡る長期入院を経て在 宅療養となった児とその家族に寄り添う機会を得 た.児は約 で出生した トリソミーで,
による心不全が見られたため,なかなか体 重増加が見られず,生後 ヶ月で であった.
その間,徐々に心不全に伴う呼吸状態が悪化し,
経鼻酸素・ 管理を要するようになった.
その後,児の心不全症状悪化したため両親は手術 を選択され,某院にて肺動脈絞扼術・気管切開術 を受けた.術後経過は順調で,在宅療養への支援 を当院で行う事となったが,在宅療養の方向性が 決まってからも両親の不安は強く気持ちが揺らい でいた.今回,家族の思いと医療者側の働きかけ を振り返り,また在宅支援に向けての各部門の協 力をまとめる事で,今後のケアに活かして行きた いと考え,ここに報告する.
.超低出生体重児出産後に発症した産 後うつに対する臨床心理学的アプローチ の経験
三重中央医療センター 臨床心理士), 総合周産期母子医療センター 小児科), 同 産婦人科),臨床研究部),
三重大学 保健管理センター)
増井理恵 ),盆野元紀 ) ),小林良成 ), 山本初実 ),岡野禎治 )
私たちが関わる周産期という時期は,ひとの一 生でも極めて不思議な時期と言える.
なぜならこの時期は赤ちゃんと母親,一度に つの命を見つめなくてはならない時期だからであ る. に象徴される新生児医療の技術の進歩 は,出生体重が低い赤ちゃんの救命に携わってき た.しかし,医療が発達すればするほど,いろい ろな障害やさまざまな病気を抱えたハイリスクの 分娩が多くなり,この状況下における母親の精神 的負担は大きい.
今回,超低出生体重児出産後に産後うつに陥っ た母親に接する経験をした.周産期における心理 臨床の実践として産後うつの一事例に,若干の文 献的考察を踏まえ報告する.
.ガンシクロビル( )投与を行った症 候性先天性サイトメガロウイルス( )感 染症の 例
三重大学大学院医学系研究科生命医科学専攻 病態修復医学講座
三重大学医学部附属病院周産母子センター 小児科
本間 仁,五島典子,上島 肇,
菅 秀,駒田美弘
症候性先天性 感染症は神経学的後遺症を 残すリスクが高いが,治療法は今のところ確立さ れていない.今回我々は症候性先天性 感染 症の児に対して 投与を行ったので臨床経過 を報告する.症例は 歳男児.妊娠 週時にエコー にて両側脳室拡大を指摘され,当院産科に紹介,
母体 抗体陽性であった.在胎 週 日,
頭位経膣分娩にて出生,出生体重 , であった.血中・尿中の 強陽
性, 陽性より先天性 感染
症と診断した.脳室拡大に加えて,血小板減少,
両側網膜のしみ状出血,左中等度感音難聴も認め られたことから症候性先天性 感染症と判断 し,神経学的予後改善を目的に 投与を 週 間行った.経過中軽い骨髄抑制は認められたが,
感染や出血等を起こすことはなく,治療後はウイ ルス量の減少ならびに眼底所見の改善が認められ た.
.絨毛膜羊膜炎の進行度と極低出生体 重児の予後についての検討
三重中央医療センター 総合周産母子セン ター小児科),臨床研究部)
松田和之),山本和歌子),大森雄介), 馬路智昭),佐々木直哉),豊田秀美), 盆野元紀) ),山川紀子),田中滋己), 山本初実),井戸正流)
【背景】絨毛膜羊膜炎( )は早産児の予後 を左右する重要な危険因子である.今回胎盤所見 からみた の進行度と母体因子,早産児の合 併症,予後について検討した.【方法】 年 月 年 月に当院 に入院した出生体重
未満児 例のうち,胎盤病理を確認し得 た 例を対象とした.胎盤病理所見,母体因子(破 水の有無,破水期間,体温,白血球数,好中球数,
値),児の入院時白血球数,好中球数,
値, 値,尿中 値,合併症,転帰を抽 出し, の進行度を 分類に基づいて 群( なし), 群( ), 群( ) の 群に分類し,比較検討した.【結果】多変量解 析で,進行した ( 群)と他群( 群)
との比較では,在胎週数( ),児好中球数
( )が有意に高値であった.死亡に関与す る因子では,在胎週数のみが有意差を認めた
( ).【結語】重症 を合併した児の の時期については,児の週数を考慮 する必要が示唆された.
.超低出生体重児と子宮内感染について
三重中央医療センター 産婦人科 小林良成,前田 眞,前川有香,
日下秀人,吉村公一,澤木泰仁
【目的】近年,超低出生体重児は増加しており,
種々の原因が考えられている.そこで今回,当院 周産期センターで出生した超低出生体重児の予後 とその母体について検討した.
【対象と方法】平成 年 月 日から 年間に,
当院 に入院した超低出生体重児 例の母体
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を対象とした.後方視的に当該診療録を参照し,
出生時妊娠週数・体重別と,子宮内感染の有無に ついて調査した.
【成績】出生体重別にみると, 未満が 例,
例, 例で,児の生存 率は順に, ( 例), ( 例),
( 例).
新生児死亡例の多くは,搬送入院時にすでに絨 毛膜羊膜炎から子宮内感染が成立していた.
【まとめ】児の予後を左右する因子として,在胎 週数や体重といった未熟性や と並び,子宮 内感染の有無が大きな危険因子として関与してい た.
.当 における血液培養分離菌に ついての検討
三重中央医療センター 小児科 ), 同 臨床研究部 ),同 臨床検査科 )
馬路智昭 ),松田和之 ),山本和歌子 ), 大森雄介 ),佐々木直哉 ),盆野元紀 ) ), 山川紀子 ),田中滋己 ),山本初実 ), 井戸正流 ),鈴木啓仁 ),中野学 )
生後早期の新生児は,成人に比し免疫力は低く 細菌感染に対し脆弱である.一般に子宮内や産道 感染に起因する日齢 以内の早発型敗血症は劇症 型で予後が悪く,早期に確実な抗菌療法が必要と なる.また,遅発型敗血症は生後の水平感染に起 因し, においては院内感染対策上その起炎 菌の動向には十分な配慮が必要である.今回我々 は, 年 月 日から 年 月 日までの 年間に当科 に入院した新生児 例から提 出された血液培養 検体より,陽性であった 検体( %)を抽出した.その内訳は,グラム 陽性球菌 %,グラム陽性桿菌 %,グラム陰 性桿菌 %,真菌 %であった.菌別ではブ ドウ球菌属が %と最多で,全体の は % であった.患者背景,検出菌種,薬剤感受性,母 体情報について後方視的に検討し報告する.
.新生児の腹部手術にドレーンは必要 か?
三重大学消化管・小児外科
井上幹大,内田恵一,松下航平,
小池勇樹,大竹耕平,三木誓雄,
楠 正人
年以降に開腹術を施行した新生児のうち清 潔 手 術 を 除 い た 例 (ド レー ン 使 用 : 群
,ドレーン非使用: 群 )につき,
ドレーン使用が術後合併症に与える影響を検討し
た.術後の ( )発生率は
群 ( ), 群 ( )( )で 汚 染・ 不 潔 手 術 に 限 定 し た 場 合 群
( ), 群 ( )( )と共に差は認 めなかった. 群では とは別に
( )を 例( )に認めたが,閉 鎖式ドレーンを使用した 例では は認められ なかった.術後出血や遺残膿瘍のため再手術やド レナージを要した症例は両群とも認められなかっ た.以上の結果から,ドレーンは原則としては必 要ないと思われ,使用する際には閉鎖式を使用す べきであると考えられた.
.カンガルーケア中の児の生体情報や 行動評価を比較検討した 例の報告
カンガルーケア中の非栄養的吸啜を試みて
三重中央医療センター
稲垣奈穂子,上田奈々,橋本眞理子,
稲垣信子,服部みどり,藤代朋子,
櫻井郁美,権野さおり,盆野元紀,
山本初実
カンガルーケア(以下 )は,児の呼吸,循 環系の安定や静睡眠の増加などの効果があり,一
方,非栄養的吸啜( ,以下
)は児を静かに落ち着かせる作用・精神的心 地よさなどの効果があるとされている.私達は当 院 の 実施基準と今回研究を行う際に追 加した条件を満たし,同意を得た 名に対し,
を行った [ ( )]と, を行わ
なかった [ ( )]をそれぞれ施行した.
開始直後 分間の生体情報( , , ) を収集し, 実施中に母の乳房での が児 の生体情報や行動評価に及ぼす影響を比較検討し た.また,児をビデオ撮影し, 中の吸啜の回 数・実施時間を測定し,新生児行動評価スケー ル・リストを用いて児の行動を評価した.
( )の 例に口唇の動きが見られた. の 有無で生体情報に差は見られなかったが
( )のほうが静睡眠が増加した.
.当院 の取り組み
帝王切開術後のカンガルーケア
三重中央医療センター
総合母子総合周産期センター 産科病棟 工藤恵理,柏木めぐみ,仲森理恵,
飯田真由美,長嶋美由紀,美波あゆみ,
金児真澄,盆野元紀,馬路智昭,
田中滋己
当院は 認定病院として,母乳育児成功の ための か条を守り,母乳育児支援を進めるため に私たちは様々な取り組みを行っている. 年 は全分娩件数 件のうち,帝王切開術件数は 件で帝王切開術 %となっている.経膣分娩に おいては,分娩後 分を目安にカンガルーケアと 初回直母はほぼ全例実施することができている.
しかし,帝王切開術においては児との対面とタッ チングまでで終了しており,カンガルーケアや初 回直母の実施には至っていない現状にある.そこ で,帝王切開術でもカンガルーケアを積極的に取 り組んでいきたいと考え,小児科医・産科医と検 討し,基準・手順を作成することができ実践につ ながったのでここで報告する.
. に配置転換した看護職に対す る教育計画
三重大学医学部附属病院周産母子センター 佐藤裕子,土井弘子
.はじめに
配置転換した看護職は,多くの不安を抱えスト レスフルな状況にある.そこで当院の に配 置転換した看護職が抱く不安の実態を把握したい と考え, 年 月に質問紙調査を実施した.そ の結果, に配置転換後に全ての看護職が看 護実践を行ううえで不安を感じていたことが明ら かとなった.特に不安を感じた看護実践の場面は 分娩室でのケア ・ 人工呼吸器管理 ・ 手 術室のケア であった. に配置転換した看 護職に対する教育計画について検討し,従来の教 育計画に つの事項を加えたため報告する.
. に配置転換した看護職に対する教育計 画の実際
従来の教育計画と追加事項
)オリエンテーション(資料 )
ベビーキャッチに関するオリエンテーションを強 化する
)教育計画書と週間予定表の活用(資料 )
) 看護技術調査表(資料 )
)年間の 勉強会スケジュール作成(資料 ) 情報提供として年間のスケジュールをあらかじめ 設定しインフォメーションする
)ペアナースの導入
精神的支援としてペアナースを導入する
.外国人の母親と看護師の関わり方の 検討
当院 での 事例の振り返り
三重大学医学部附属病院周産母子センター 中谷由佳乃,佐藤裕子,土井弘子
当院で,外国人の母親が,面会時に腕組みをし,
鋭い目つきで看護師を見て攻撃的に訴え,流涙す
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ることがあった.看護師は,コミュニケーション が正確にとれるのか,という想いから,母親へ声 を掛けづらく感じ,戸惑いを経験した.
しかし,母親の様子に変化がみられた.看護師 に対して みんないつも良くしてくれてありがと う. と度々言うようになり,笑顔も多くなった.
この事例の母親の状態と,看護師の関わりの振り 返りを通して,以下の示唆を得ることができた.
・外国人の母親は ことば に対して心配を持っ ている.
・国による医療の常識の違いから,外国人が疑問 を抱くことがある.
・早期からの直接的なコミュニケーションを図っ ていくことが大切である.
・言葉の違いからの情報不足を避けるため,通訳 を有効に利用することが大切である.