オーバーバンキングの解消が議論されて久しい。 キャッチアップ型の高度経済成長期を終え、 成 熟期をむかえた日本経済には、 リスクを伴う技術開発を支えるリスクマネーが必要であろう。
しかし、 近年の大手行を中心とした銀行の統合は、 金融システムの改革ではなく、 経営統合から 得られるコストカットや寡占化による超過利潤を不良債権処理費用に充てる緊急避難的な方策では なかろうか?その意味では、 短期的には銀行の統合は致し方ないと考える。 そうであれば、 長期的 には、 現状以上の銀行市場の寡占化は進行しない可能性があり、 その寡占化の帰結を現時点で分析 する必要性は薄いのかもしれない。
星・カシャップ (2006) によれば、 成熟期をむかえた日本経済において、 伝統的な銀行業務の金 融市場における役割は縮小する事は避けられない。 現在の大手行を中心とした合併は、 グループ内 の証券会社、 保険会社なども統合させ、 巨大な金融グループを形成する事で、 金融市場における自 らの存在感を守る意図を感じる。 大手行は、 伝統的な銀行業務だけでなく証券業務、 保険業務、 年 金資金などの資産管理業務をも統合し、 銀行の店頭にて、 様々な金融商品が取引されるワン・ストッ プ・ショッピング () を可能とする戦略を図っている。 この戦略によりオーバーバンキングは 解消されるのかもしれない。 しかし、 星・カシャップ (2006) によれば、 この戦略が成功、 失 敗しようとも、 大手行と地方銀行の経営統合、 合併が進行するようである。 結局は、 銀行市場の寡 占化は進行する事となる。
戦略が成功すれば、 より多種多様な顧客を求めて、 大手金融グループは、 地方銀行の取り込 みを図る。 戦略が失敗すれば、 大手行は伝統的銀行業務に回帰し、 規模の経済を念頭に、 より 大きな顧客基盤を求めて地方銀行の吸収を目指すであろう。 この事は、 オーバーバンキングの解消 につながるのであろうか。 どちらにしても、 日本の金融市場の現状から、 銀行間の統合は進捗する ようである。 従って、 銀行貸出市場における寡占化の帰結を議論する事は、 意味があると考える。
一般的に市場の寡占化は望ましいとは言えない。 銀行の統合は、 貸出金利の上昇、 預金金利の低 下、 貸出供給量の低下などを引起すであろう。 このような観点から銀行市場の競争度の変化が金融
銀行貸出市場の寡占化と金融政策
―静学モデルによる分析―
山 本 康 裕
*本論文は、 2007年度日本金融学会秋季大会において、 早稲田大学 晝間文彦先生から貴重なコメントを頂いた。 記 して、 感謝したい。
市場やマクロ経済に与える影響を分析した先行研究が多数存在する。 (1997) によれば、 銀行間の競争度の上昇は、 貸出金利を下降させ、 預金金利は上昇、 その結果銀行の利鞘 は縮小する。 その意味で銀行の競争度の上昇は、 社会的効用を高め、 金融政策の有効性は増大する と述べている。 また、 渡辺・澤田 (2002) は、 同様の観点から銀行の寡占化は、 預金金利の下落と 貸出金利の上昇を招き、 社会的効用を低める弊害があるとしている。 彼らは、 他業種も含め、 銀行 市場への新規参入を促す事で、 その弊害を回避できるとしている。 上記も含め多くの先行研究が、
当然であるが、 銀行の競争度の上昇は、 貸出金利の低下、 預金金利の上昇により銀行の利鞘が縮小 すると論じている。 この銀行間の競争度の変化が如何なる効果を持つかを分析している理論面から の先行研究は大きく分けて2つのタイプに分けられる。 まず、 第1のタイプの先行研究は、 銀行間 の競争度の変動が、 マクロ経済のパフォーマンスに如何なる影響をもたらすかを分析している。 第 2のタイプの先行研究は、 銀行間の競争度の上昇が、 マネーサプライに如何に影響するかを論じて いる。
前者の先行研究には、 (2004) と(1998) がある。 両者は、 銀行貸出 市場において情報の非対称性が存在する事を前提に議論を展開している。
(2004) は、 貸出市場における情報の非対称性を回避するには、 コストを掛けても銀行が借手のプ ロジェクトを事前・事後ともに審査する必要性があるとしている。 しかし、 銀行の寡占度が大きく なれば、 銀行に超過利潤が発生し、 大きな内部留保が形成される。 この状況にいたれば、 銀行が企 業のを調査するインセンティブが縮小し、 十分な調査が実行されない。 そこでは、 借手に が発生し、 劣悪なプロジェクトが実行され、 結果的にマクロ経済のパフォーマンスが 悪化する。 このマクロ経済のパフォーマンスが悪化するという意味で、 銀行間の競争度の低下は、
金融政策の有効性を下落させる事となる。
(1998) は、 貸出市場の競争度が低下すれば、 貸手たる銀行は、 借手のを貸出 金利に転嫁する事が可能となり、 銀行はその事で情報の非対称性による損失を回避する。 貸出金利 はの転嫁分上昇し、 市場で高金利が形成されるため、 資本蓄積が過小となり、 その結 果、 経済成長率が抑制されると結論付けている。 この経済成長率が低下するという意味で、 銀行間 の競争度の低下は、 金融政策の有効性を低下させると主張する。
銀行の競争度とマクロ経済のパフォーマンスの関係を論じた (2004) と (1998) は、
銀行の競争度↑ (↓) →金融政策の有効性↑ (↓)
と主張している。
銀行間の競争度とマネーサプライの関係を論じた後者のタイプの先行研究には、 (1985 ) とスティグリッツ・グリーンワルド (2003) がある。 (1985 ) によれば、 銀行間の 競争度の上昇は、 貸出金利と預金金利の利鞘を縮小させる。 貸出金利が下落しているため、 調達コ ストの低い中央銀行借入による貸出実行であっても収益は十分ではない。 よって、 金利が変動した
としても貸出による収益は低位安定的となり、 銀行による銀行準備の需要量は大きく変動しない。
銀行の準備金が安定的であるならば、 中央銀行は、 マネーサプライの管理が容易になり、 その意味 で、 金融政策の有効性は高まるとしている。 つまり
銀行の競争度↑ (↓) →金融政策の有効性↑ (↓)
と主張している。
それに対して、 スティグリッツ・グリーンワルド (2003) は
銀行の競争度↑ (↓) →金融政策の有効性↓ (↑)
と逆の関係を主張する。 銀行間の競争度が高まれば、 貸出金利と預金金利のスプレッドは大幅に縮 小する。 従って、 中央銀行が金利を変動させても、 スプレッドは変化しないので、 銀行が預金量・
貸出量を変動させるインセンティブは小さく、 銀行の活動に変化が生じない可能性がある。 よって、
銀行の競争度の上昇は、 金融政策の有効性を引下げると論じ、 (1985 ) 等の主張と正反 対の議論を展開している。
実証分析の先行研究は、 銀行の競争度ではなく、 市場の集中度と貸出量の関係を分析している。
(2005) は、 金融政策が有効であるという状況を 「公定歩合の上昇が銀行貸出額 の減少をもたらす」 と規定した。 彼らは、 銀行貸出市場を都市部と地方に分割して、 各市場の銀行 の集中度をハーフフィンダール指数 () により計測した。 そして、 市場の集中度が高ければ、
金融政策が有効であるという推定結果を提示している。 筒井・佐竹・内田 (2005) では、 日本の都 市銀行のデータを用いてを導出し、 銀行貸出市場の集中度と総貸出額の関係を分析している。
その結果は、 と総貸出額の関係は、 ケースバイケースであり、 単純な因果関係ではない事を提 示している。
本論は、 (1985 ) とスティグリッツ・グリーンワルド (2003) と同様に、 理論的に銀 行間の競争度と金融市場の関係を論じてゆく。 分析対象は、 銀行貸出市場に限定する。 その貸出市 場で、 銀行の数が減少、 つまり銀行の統合が進行してゆくと、 貸出供給量の変動とその変動率がい かに変化するかを分析する。 また、 銀行の統合が進捗してゆくと、 コールレートの変動により、 貸 出供給量とその変動率がいかに変化するかを考察する。 例えば、 コールレートの上昇は、 貸出供給 量を減少させると予想できる。 もし、 その減少額及び減少率が、 銀行統合が進行する状況で、 小さ くなれば、 銀行間の競争度の低下は、 金融政策の効果を低めることになる。 これは、
(1985 ) が提示した銀行間の競争度と金融政策の効果に正の関係が存在するという含意と合致す る。 逆に貸出供給量の減少額及び減少率が、 銀行統合が進行する状況で、 大きくなれば、 銀行間の 競争度の低下は、 金融政策の効果を高めることになる。 これは、 スティグリッツ・グリーンワルド (2003) が提示した銀行の競争度と金融政策の効果に負の関係が存在するという含意と整合的にな る。 本論では、 これらの因果関係を求めるため、 銀行貸出市場におけるクールノー・ナッシュ均衡
を導出する。
銀行間の競争度と金融政策の関係が判明すれば、 将来的に日本の銀行市場において起こると予想 される地方銀行を舞台とした再編・統合に関し、 何らかの含意を提示できると思料する。
本節では、 銀行貸出市場は独占的競争状態にあるものと仮定し、 クールノー・ナッシュ均衡によ りその均衡値を導出する。 その均衡の総貸出を銀行の数やコールレートで微分する事で、 銀行貸出 市場の競争度と総貸出額の関係を導出する。
銀行貸出市場に行の銀行が存在するものとする。 銀行は、 お互いの生産活動を所与として利益 最大化を図っていると仮定する。 本節では、 その均衡解を導出する。
銀行は、 当期の利益を最大化するように貸出額を決定する。 その最大化問題は、 下記のように 定式化される。
(1)
=1…:銀行の番号 π:第銀行の利益 :第銀行の貸出額
:第銀行の預金額 :第銀行のコールマネー :預金金利 :コールレート
:銀行が直面する逆需要関数 (2)
:第銀行の費用関数 (3)
銀行の費用関数は、 貸出残高の増加に伴い逓増する費用と貸出額の増加が規模の経済を生む費 用を合計した上記 (3) 式と設定する。
下記の (4) 式は、 規制を考慮した第銀行のバランスシートを定式化したものである。
α:自己資本比率 (4) :信用乗数 (5)
(5) 式により
(6) (7)
が成立する。
ここで、 銀行はコール市場においてベースマネーを調達するものとする。 ベースマネーの供給額 は、 中央銀行によりコール市場でマクロ的に実行される。 コール市場においては、 無担保コール取 引のように、 資金の出し手と取り手が直接資金を授受する取引形態が存在する。 従って、 不良債権 等が原因で、 コール市場において資金調達に困難を伴う銀行が存在しうる。
そこで、 銀行を下記のような2つのタイプに分類する。
タイプ1銀行:コール市場における資金調達に障害のない銀行 タイプ2銀行:コール市場における資金調達に上限のある銀行
また、 銀行貸出市場を、 市場に参加する全ての銀行がタイプ1銀行である1とタイプ1と タイプ2銀行が混在する2に分けて分析してゆく。
タイプ1銀行の最適化問題は下記のように設定される。
(8)1
(8) 式に (6) 式を代入する。 そして、 その (8) 式を1により最適化して、 タイプ1銀行の反応 関数を導出する。
タイプ1の反応関数: (9)
この反応関数から均衡の総貸出額は下記となる。
(10)2
:1における総貸出額
1各変数に表示するサブスクリプト「1」は、 その変数がタイプ1銀行の変数であることを示す。
2補論 (1) 参照
次項では、 タイプ1とタイプ2銀行が存在する2におけるクールノー・ナッシュ均衡を導 出する。
タイプ2銀行がコール市場において調達できるコールマネーには、 不良債権等の財務上の問題点 から、 上限^ があるものと仮定する。 よって、 タイプ2銀行に関しては利益最大化問題の端点解2 のみを分析の対象とする。 よって、 タイプ2銀行の貸出2は、
(11)
となり、 貸出額の上限^ と等しいとする。2
タイプ1銀行の反応関数は前項により、 「 」である。
この2では、 タイプ1銀行は −行、 タイプ2銀行が行、 存在すると仮定する。 また簡 単化のためタイプ2銀行は、 同一の貸出額^ を行うと仮定する。 従って、 総貸出額は、2 、 となる。 タイプ1銀行の反応関数は下記のように書き換えられる。
(12)
この (12) 式から2のクールノー・ナッシュ均衡におけるの総貸出額2が導出される。
(13)3
次節では、 1の均衡解1と2の均衡解2に関して比較静学を行う。
!"#$%&
本節では、 2節で得られた1の総貸出額1と2における総貸出額2に関する比較 静学を行う。 下記の表1が比較静学の結果である。 比較静学の符号条件は、 >、 >を仮定して 導出した。 >、 >は、 貸出金利が資金調達金利より大きい事を意味し、 強い仮定ではないと考 える。
3補論 (2) 参照
1から7は下記のように定義される。
:総貸出額を銀行の数で微分
:銀行統合による総貸出額の変動率をで微分
:総貸出額をコールレートで微分
:金利変動による総貸出の変動額をタイプ1銀行の数で微分
:金利変動による総貸出の変動率をタイプ1銀行の数で微分
:金利変動による総貸出の変動額をタイプ2銀行の数で微分
:金利変動による総貸出の変動率をタイプ2銀行の数で微分
上記の比較静学の結果から、 銀行間の競争度が低下 (↓↓) する時の総貸出額の変動を分析す る。
注) 5、6、 7 1と 2では異なった符号をとる。
4補論 (3) 参照
本項では1における比較静学の結果から、 銀行間の競争度が低下すると貸出市場に如何な る変動が起こりうるかを分析してゆく。 分析の結果は下記となる。
①銀行統合の推進は、 より大きな信用収縮をもたらす。
より、 銀行の統合 (↓) は総貸出額を減少させる。 また、 より、 銀行
の統合の進行は、 貸出額の減少率を高める。 よって、 銀行統合の推進は、 その進行につれて、 より 大きな信用収縮をもたらす。
②銀行統合の進行は、 金融政策の効果を抑制する。 ただし、 銀行の統合は金利変動から生じる貸出 の減少率には影響を与えない。
より、 コールレートの上昇は、 総貸出額を減少させる。 また、 より、 銀行
統合の進行は、 金利上昇による総貸出額の減少額を抑制させる。 しかし、 より、
銀行統合が進行してもその減少率は不変である。
1における銀行統合は、 優良行同士の合併である。 銀行の統合が進む中で、 コールレート を引上げる場合、 この統合が進めば進むほどコールレート引上げによる貸出額の減少額は小さくな る。 その理由は下記である。 調達金利の上昇に応じて銀行は貸出額を減少させなければならない。
しかし、 そもそも優良行同士の合併自身が貸出額を大きく減少させるため、 銀行が調達金利の上昇 により追加的に貸出額を減少させる金額は微少で済むのである。
以上2点が、 全ての銀行がコール市場における資金調達に障害のないケースで得られる含意であ る。
本項では2において、 銀行間の競争度が低下すると貸出市場に如何なる影響が生じるかを 分析してゆく。 分析の結果は下記となる。
①銀行の統合は、 信用収縮を発生させる。
より、 銀行の統合 (↓) は総貸出額を減少させる。 また、 である。
優良な銀行とそうではない銀行が混在する2においても銀行間の統合は総貸出を減少させる。
しかも、 1と同様に、 銀行統合の進展は、 総貸出額の減少率を拡大させる。
②タイプ1銀行間での統合の進行は、 金融政策の効果を抑制させる。
タイプ2銀行間での統合の進行は、 金融政策の効果を拡大する。
より、 コールレートの上昇は総貸出額を減少させる。 また、 及び
により、 銀行の統合 (↓) は金利上昇による総貸出の減少額 と減少率
を下落させる。 つまり、 タイプ1銀行間での統合の進行は、 金融政策の効果を抑制させ
る。 2においてタイプ1銀行間の統合が金融政策の効果を減少させる理由は、 1と同 様に、 優良行同士の合併はより大きな信用収縮が発生する。 従って、 コールレートの引上げに伴う
銀行貸出の減少額は小幅になる。 また、2では銀行統合の進行が、貸出額の減少率
をも下落させると言う意味で、 1よりも、 銀行の統合は金融政策の効果をより抑制する。
また、 、 及び より、 タイプ2銀行内での統合の進行 (↓) は、
貸出減少額 と貸出減少率 を上昇させる。 よって、 タイプ2銀行内での統合の進行
は、 金融政策の効果を拡大する。 この結果は、 優良行同士の合併とは異なる結果である。
優良ではない銀行同士の合併は、 総貸出額に及ばす効果を正とするか負とするかは明確ではな い5。 よって、 このケースでは、 優良行同士の合併とは異なり、 コールレートの引き上げによる総 貸出額の減少は、 銀行統合による貸出額の減少にて補われる事がない可能性がある。
銀行貸出市場に優良な銀行とそうではない銀行が混在する状況下では、 銀行統合のありかたで、
金融政策の効果は異なってしまう。 例えばコールレートの引き上げは、 貸出供給量を減少させるが、
その減少額は、 優良な銀行間の統合であれば、 抑制される。 つまり、 タイプ1銀行同士の合併は金 融政策の効果を抑制する。 しかし、 優良ではない銀行間の統合であれば、 貸出供給量の減少額と減 少率は拡大し、 コールレートの上昇はより大きな信用収縮を招いてしまうのである。 このケースの
5補論 (3)
銀行統合は金融政策の効果を拡大させる。
銀行貸出市場の競争度が変動する事の意味を、 2節で導出したクールノー・ナッシュ均衡解を3 節で比較静学する事で提示した。
銀行統合の効果に関しては、 である。 この事は、 銀行統合は、 貸出
供給量を減少させ、 その進行と共に貸出供給量の減少率が大きくなる事を意味する。 つまり銀行統 合の進行は大きな信用収縮を発生させる。
また、 コールレートの上昇は、 全てのケースで であり、 総貸出額を減少させる。 しかし、
銀行統合が、 このコールレートの変化による総貸出額の変動額 と変動率 にいかな
る影響を与えるかはケースバイケースである。 全ての銀行がコール市場における資金調達に障害の
ない1では、 であり、 銀行統合は、 金利変動による総貸出額の
変化額を減少させるが、 その変化率には影響を与えない。
また、 コール市場における資金調達に障害のないタイプ1銀行と資金調達に上限のあるタイプ2 銀行が混在する2においては銀行統合の金融政策に与える効果は以下となる。 銀行統合がタ
イプ1銀行間で行われるなら、 変動額は で あ り1 と 同 様 で あ る が 、 変 動 率
であり、 1とは異なっている。 つまりこのケースの銀行間の統合は、 金利
上昇による貸出の減少額及び減少率を抑制する。 よって、 銀行間の統合が貸出額の減少率を引下げ るという意味で、 このケースの銀行統合は、 金融政策の効果をより大きく抑制する。 この結果は、
「銀行の競争度↑ (↓) →金融政策の有効性↑ (↓) 」 としている (1985 ) と整合的で ある。
2において銀行統合がタイプ2銀行間で実行されるケースでは、 金融政策の効果は上記の
結果と異なっている。 このケースの銀行統合は、 、 及び で あ り 、
金利上昇による総貸出額の減少額及び減少率を拡大させる。 この事は、 優良とはいえない銀行間の 統合は、 金融政策の効果を拡大させる事を意味し、 スティグリッツ・グリーンワルド (2003) の分 析結果である 「銀行の競争度↑ (↓) →金融政策の有効性↓ (↑) 」 と合致する。
上記を鑑みると、 銀行の競争度の変化は、 貸出市場において様々な結果をもたらしうる。 例えば、
優良とは言い難いタイプ2銀行間の合併とコールレートの引下げは大きな信用拡大を生じさせる可 能性がある。 一方、 優良である銀行間の統合の進行は、 コールレートの引下げにより信用拡大を生 じさせが、 貸出額の上昇額及び上昇率は緩和させると考えられる。 これは、 優良行同士の合併は大 きな信用収縮を発生させるため、 コールレート引き下げの効果を弱めてしまうからであろう。
1と2の分析結果から、 銀行の資金調達に関わる制約を明示的に考慮すれば、 貸出 市場の競争度の低下が、 如何なる時に、 金融政策の効果を減少させ、 又は増大させうるかを提示で きる。 この事は、 本論の分析がより包括的な含意を持ちうる事を意味するであろう。
上記の分析から、 まず銀行統合の進行が大きな信用収縮を生む可能性は十分考慮されるべきであ ろう。 また、 銀行が置かれている資金制約を考慮せず、 その競争度を変更すれば、 金融政策におい て予想外の結果が生じる可能性がある。 よって、 オーバーバンキングの解消のために銀行の統合を 進行させるなら、 中央銀行及び金融監督当局は、 個々の銀行が直面している資金調達環境を明確に 把握し、 そのショックを減殺するようケースバイケースで慎重な対応をすべきであろう。
本論においては、 自己資本比率を規制によるものと考え、 外生的に扱っている。 しかし、 自己資 本比率は貸出額と同時決定され得るものであろう。 より詳細な分析を行うためには、 自己資本比率 は内生変数として定式化されるべきであろうと思料する。 また、 銀行間の統合が銀行主導で行われ る場合、 銀行経営者が将来時点の収益性を考慮した結果が合併・統合につながるのであろう。 よっ て、 動学的分析も必要となる。 そして、 本論においては、 同一タイプの銀行間における合併のみを 分析対象としている。 より精緻な分析を行うためには、 優良行と不良行間の統合をも含めて議論す る必要がある。 これらは、 残された課題といたしたい。
(1) 1の総貸出額1の導出 タイプ1銀行の反応関数
両辺を回足し合わせると、
(2) 2の総貸出額2の導出 タイプ1の反応関数より
(12)
ここで、 とおき、 両辺を−回足し合わせる
(13)
(3) 比較静学の結果
・1の比較静学
・2の比較静学
「 」 は2の分子より正である。
分子第1項は、 >、 >という仮定より符号は負であり、 第2項の符号は正より、 分数全体の 符号が正か負か決定できない。
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/ (1985 ) !!$#
.!$ # /17)3++298"311
/ (1985 1) #+ ,+$ %!' ' ! .!/7 )4 ++537"552
岩田一政・浜田宏一 (1980) 金融政策と銀行行動 東洋経済新報社 黒田晃生 (2006) 入門 金融 第4版 東洋経済新報社
鹿野嘉昭 (2006) 日本の金融制度 第2版 東洋経済新報社
.スティグリッツ・グリーンワルド著・内藤純一・家森信善 訳 (2003) 新しい金融理論 ―信用と情報の経済学― 東京大学出版会
筒井義郎・佐竹光彦・内田浩史 「都市銀行における効率性仮説」
独立行政法人 経済産業研究所 05027 日本銀行金融研究所 (2004) 新しい日本銀行【増補版】 その機能と業務 有斐閣
星岳雄・・カシャップ著・鯉渕 賢 訳 (2006) 日本金融システム進化論 日本経済新聞社 渡辺努・澤田充 「銀行統合と企業向け融資」 齋藤誠 編 日本の金融再生戦略 中央経済社、 237276