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第 5 章国際紛争及び投資紛争の国際法的解決方法

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(1)

第 5章 国際紛争及 び投資紛争 の国際法的解決方法

企業法学科 佐古 田 彰

第 1 節 序

1.本研究会法律部門の役割分担

本研 究会の法律部門が対象 とす る法律問題 は、大き く分けて、サハ リン大陸棚 にお ける 石油 ・天然ガスの開発 に直接 に関わる部分 と、 ロシア国内における 日本企業の事業活動に 関わる部分 とがある。その両者 とも国際法 と国内法が関係 して くるが、実際には石油 ・天 然ガスの開発 に直接 に関わる部分は、小樽 ・北海道の企業が直接携わ ることはない ことか ら主 として国際法の観点か ら取 り上げることとし、 ロシア国内にお ける 日本企業の事業活 動 に関す る部分は、国際法 と国内法 ( ロシア法、国際取引法)の両方 の観点か ら取 り上げ ることとする。

その担 当は、研究担当者 の専門に応 じて、国際法を佐古 田が、国内法、特に国際取引法 を桑原が担 うこととす る。

2. 本研究調査報告書国際法部門の意義

国際法は基本的に国家間関係 を規律する法、言い換 えれ ば国家間紛争を取 り扱 う法で あ って、 よ り直裁的に言 えば、 ロシアあるいはその他の関係 国 との間で紛 争が発生 した場合 に、 日本政府が 日本の国益 を守 るためにいかに効果的にこれ らの法を用いるか、 とい う観 点か ら国際法を理解 しなければな らないっそのため、我々のよ うな外交担 当でない者 に と っては、 これ ら国際法を適切に活用 させ るよ ういかに政府 を動か してい くかが、問題 の焦 点 となる。 したがって、 この研究調査報告書は、我々の利益 を確保す るために政府が用い ることのできる ( 政府 に利用 させ る ことのできる)法的手段 として どの よ うな ものがある か、 とい う観点か ら読んで もらいたい。言い換えるな ら、政府 ・外務省 が果た して これ ら 有効な国際法上の手段 を適切 に用いてい るか どうか、厳 しく監視す るための材料 として こ の報告書 を用いることができるO 更に、政府 ・外務省が適切な行動 を とっていない場合、

その不適切な行動 を非難 し国際法を適切 に利用 させ るよ う働 きかけるた めの指針 として位 置づけることもで きよ う。私は、 中央 と地方、政府 と国民の関係 はその ような緊張状態 の 中で形作 られ るべきもの と思 う。

ただ し、後に詳 しく触れ るよ うに、国際法は、国家だけが利用できる法である とは限 ら

ない。我 々が間接 にあるいは直接 に利用 可能な法規則 も少な くない。特 に国際経済関係 に

関 してはそ うである。例 えば、国家間で、相互に 自国民が相手国で事業活動を行 うことが

(2)

できるよ う約束を取 り交わ し ( 条約 の締結)、またその 自国民の事業活動に対 して相手国の 国内法制 を用いて一定の保護を与えるよ う定められ ることがある ( 二国間通商条約 な ど) 0 また、特 に外 国政府 と民間企業 との間の投資紛争 に関 しては、紛争の よ り公平な解決 をめ ざ して、国家間の条約 に基づいて特別の国際仲裁裁判制度が設け られてお り ( 投資紛争解 決国際センター : I CSI Dl ) 、これE韓日手国国内法制によらずに民間企業が政府を相手に直接 に裁判 を提起す ることができるとい う極 めて画期的な投資紛争解決制度である。

この よ うに、 この研 究調査報告書は、第‑に政府 ・外務省 の行動 に対す る評価基準 と し て、第二に我 々 自身が直接 ・間接 に利用 しうる国際法制度の知識 として、活用 していただ けれ ば幸いである。

3. 本研究調査の対象 と今後の計画

本研究会の扱 う国際法問題 は、上 に記 した よ うに、大きく (1)大陸棚開発 に関す る国 際法制度 、( 2 )ロシア国内における 日本企業の事業活動の法的保護 ( 国際投資の法的保護) の 2 点に分け られ るが、これに関連 して 、 (3) 大陸棚石油 ・天然ガスの運搬 に関わる国際 法的枠組み、具体的にはサハ リンか ら日本国内にパイプライ ンを敷設 して天然ガスを運搬 す る場 合の国家間の枠組み (これ は更に陸上パイプラインに関す る もの と海底パイプ ライ ンに関す るものに分 け られ る)が挙 げられ、 また こ ういった二国間 ・関係国間での個別 の 枠組み とは別に 、( 4)1 99 4 年エネルギー憲章条約 のよ うな多数国間での法的枠組み ( 投資 保護 を含む) も、今後重要な意味を持って くることになろ う。 この条約 は、元々ロシア ・ 東欧諸国の石油 ・石炭等のエネ ′ レギー資源 を先進 国企業が投資 ・開発 しうるための国際法 的枠組み を構築す ることを 目的 として作成 された多数国間条約であ り 、5 0 カ国に上る国 ・ 機 関 (日本 ・ロシアを含む)が交渉に参加 している。 更に ( 5) 石油 ・天然ガスの開発 ・ 運搬 に際 しての事故による損害 ・環境汚染について も、特に北海道の近海で発生す ること か ら、我 々に とって無視できない重要な問題である

C

その他 に も、国際法上の問題 と しては、例 えば 目口間での貿易 に関す る国際法制度 ( 世 界貿易機 関 ( WTO、ただ しロシアは未加盟)な ど、 )が挙げ られ よ う。また、目口漁業問題 、 北方領土問題 も、その解決如何では 目口間関係 に大きな影響 を与 えることか ら、全 く無関 係 とい うことはで きない。更には、サハ リン在留邦人 ・朝鮮人の問題、サハ リン ( 樺太) をめぐる歴史的な領土関係 も、国際法上の問題である, ,サハ リン と北海道の間の大陸棚の 境界画定 もまだ行われてお らず、 もし宗谷海峡で何 らかの鉱物資源が埋蔵 されてい ること が発見 されれ ば、大問題が発生す ることは想像に難 くない。

この よ うに、サハ リン大陸棚石油 ・天然ガス開発 に関連す る国際法上の問題 は、直接 ・ 間接 を含 む と、際限な く拡大 してい く。 これ らはいずれ もそれぞれの立場の者 にとって重 要な問題 ではあるが、本研究会 に とっては軽重がある。そ こで、本研究会 と しては、上記

1

「 イ クシッ ド」 と読むC

(3)

の (1) 〜 (5) を主軸 として漸次研究調査 を行お うと考 えてい る。 もとよ りこれは最終 的な決定ではな く、研究調査の進行の度合いによ り、また 目口間の情勢の変化 に合わせ て、

柔軟 に対処 してい こうと思 う0

4. 今年度研究調査の対象

「3. 」で本研究会が今後扱 う国際法問題 として (1) 〜 (5) を紹介 したが、 これ らに 関す る国際法規則 は、いずれ も実体規則 と紛争解決方法の両方を含む

L

,今年度調査は、 ま ず紛争解決方法に関す る国際法上の枠組みを取 り上げ、各実体規則 の個別具体的な内容 は、

次年度以降扱 うこととす る。

(1)実体規則 と紛争解決方法

一般 に、法上の規則は、権利義務 に関す る部分 と、紛争が発生 した場合の手続 に関す る 部分 とに分けることがで きる。前者 を実体法 ・実体規則 といい、後者 を手続法あるいは広

く紛争解決方法 とい うことがある。

本研究調査に即 して説明す る と、国際法上の規則 は、 目口間の国際法上の権利義務 を規 律す る実体規則 と、 目口間で国際紛争が発生 した場合 の紛争解決方法 とに分 け られ ること になる。 更に具体的にい うと、我が国企業が ロシア国内で事業活動 をす るに当た り、 日本 が ロシアに対 して、その保護を法的に要求す ることができる権利 (ロシアか ら見れ ば義務) が実体規則 に関係す る部分であ り、保護が不十分であった りして 目口間で紛争が発生 した 場合 の、例 えば国際裁判 な どの利用 に関す る国際法規則 に関す る部分が、紛争解決方法 と い うことができる。

通常は、紛争解決方法の発達に応 じて実体規則 ( 権利義務 関係)が設定 され るため、 こ れ ら実体規則 と紛争解決方法を無 関係に別 々に理解す ることはできない。い くら実体規則 を精微かつ厳格 に定めて も、それ を担保す る紛争解決方法が未発達ではその実体規則 は画 餅で しかな く、逆 にい くら紛争解決方法 を充実 させた ところで、紛争解 決の基準 として適 用 され るべき実体規則が不十分では、その紛争解決方法は現実に機能 しえない。 この よ う に両者は相互 に密接 な関係 を有 しているため、単純 に両者 を切 り離 して理解す ることは不 可能である。

したがって、今年度報告書では、便宜上紛争解決方法を取 り上げるが、最小限必要な範 囲で実体規則 について も簡単に取 り上げることとす るCその実体規則 の詳細は次年度以 降

とい うことになる。

(2 )一般的紛争解決方法 と分野別紛争解決方法

この紛争解決方法については、更に、 どの国際法分野に も共通す る一般 的な紛争解決方

(4)

法 と、個別の分野 ごとに発達 している分野別の紛争解決方法 とがある。例えば、オランダ ・ ハー グにある国際司法裁判所は前者 の‑ 一般的な紛争解決方法であるが、貿易紛争を扱 う世 界貿易機 関 ( WTO)や海洋紛争を扱 う国際海洋法裁判所は、後者の個別の紛争解決方法で ある。

投資紛争に関 しては、上記のよ うな WTOや国際海洋法裁判所のよ うな国家間の投資紛争 を専門に扱 う紛争解決方法は現在 の ところ存在 しない。実際には、ハー グの国際司法裁判 所で争われ る例が多いが、後に述べ るよ うに、投資紛争は本来的に国内法上の紛争 ( 民間 人を当事者 とす る紛争)であるため、当然には、国際法が扱 うべき国家間紛争 とはな りに くい側面を有す る。 しか し、今 日では、上述 した ように、投資受入国政府を相手に、民間 人が直接 に裁判を起 こす ことの出来 る投資紛争解決国際センター ( I CS I D) が設け られてお

り、 これ は我 々の研究調査に とって重要な意味を持つ。 これは、正確 には国家間紛争の解 決方法ではないが、単純 に実体規則 に含 めて考察す ることも無理があるため、本報告書で は、広 く投資紛争の国際的解決方法 として、今年度報告書で紹介す ることとしたいC .

(3 )本年度報告書の構成

今年度は、以 下 「 第 2 節 紛争の国際法的解決方法」において、「 ‑.国際紛争の平和的

解決」で、国家間紛争が生 じた場合に政府が用いることの出来 る国際法的手段 ・枠組み と

して どのような ものがあるか とい う一般的な国際紛争解決方法について、「 二.投資紛争の

国際法的解決方法」で、国家間の投資問題 に適用 され る国際法規則の概要 とともに投資紛

争の国際的解決方法について、説明す ることとす る。その上で、「 三. 目口間国際紛争の平

和的解決 と目口間投資紛争の国際法的解決方法」で、 目口間で生 じる国家間紛争及び投資

紛争の場合に利用可能な紛争解決方法を具体的に示す こととす る。

(5)

第 2 節 紛争の国際法的解決方法

‑.国際紛争の平和的解決

1.国際法上の紛争 と国内法上の紛争

(1)国際法 と国内法

法 ( 厳密 には実定法 t p o s i t i v el a w) )は、国際法 と国内法に分け られ るO例 えば、法的 な意 味で権利 とか義務 とい う場合、その権利 ・義務 は、正確 には、国際法上の権利 ・義務 ( 国際法上の実体規則) といずれ かの国の国内法上の権利 ・義務 ( 国内法上の実体規則) とに分 け られ る。 したが って、法的な意味での紛争は、法上の権利義務 関係 をめぐる紛争 と して理解 され る場合、国際法上の権利義務 に関す る紛争なのか、国内法上のそれ に関す る紛争なのか によって、国際法上 の紛争 と国内法上の紛争 に分け られ ることになる。 同様 に、 「 法的」保護 とい う場合、国際法による保護かいずれかの国の国内法による保護かを区 別 しなければな らない。 このよ うな区別 は、理論的にそ うである とい うことよ りも、実際 上極 めて大きな意味がある。簡単 にいえば、国際事業活動 に関 して紛争が発生 した場合、

その紛争は国際法上の紛争なのそれ とも国内法上の紛争なのかによって、その紛争 に対 し、

いかなる法が適用 されいかなる手続 によ りいかなる裁判所で、誰を当事者 と して解決が図 られ るのかが、異なるた めである。言い換 えると、その紛争 を国際法上の紛争 として とら えるか、国内法上の紛争 として とらえるかによって、その とるべ き法戦 略が異なるとい う ことである。

(2) 国際事業活動 をめぐる紛争

( a)国際法上の紛争 と国内法上の紛争の違い

上に述べた よ うに、法的紛争 は国内法上の紛争 と国際法上の紛争に分 け られ る。国内法 は、民間人同士 ( 例 えば民法、商法)、民間人 と国 ( 例 えば刑法)及び国家機 関相互の関係 ( 例 えば内閣法、国会法)を規律す る法であ り、かか る法の成立は、その国一国のみの意 思で成 立す る (日本国憲法 41条参照) 。それ に対 し、国際法は、原則 として国家間関係 を 規律す る法であ り、その成立は国の合意 ( 条約) あるいは諸国の慣行 ( 国際慣習法) に基 づ く ( 国際司法裁判所規程 3 8 条 1 項 a .b

2

参照、また 日本国憲法 98 条 2 項参照)O言い換

23 8 条 1 項 「 裁判所は、付託 され る紛争を国際法に従 って裁判す ることを任務 とし、次の ものを適用す る。

a 一般又は特別の国際条約で係争国が明 らかに認 めた規則 を確 立 しているもの

b 法 として認 め られた一般慣行 としての証拠 としての国際慣習 ( 以下略 )」

(6)

えると、国 と国の間で適用‑ され るルールが国際法 とい うことができる。

本来的に国家 間紛争、つ ま り国際法上の紛争 として考え られ る紛争 は、例 えば、領 土紛 争 ・国産紛争 ( 北方領 土、竹島の紛 争な ど)、武力紛争 ( フォー クラン ド紛争、湾岸戦争 な ど)、外交関係 に関わる紛争 ( 在キ‑ ラン米国大使館 占拠人質事件 な ど) といった ものがあ る。 これ ら場合は、民間人が巻 き込まれればそれ に関連 して国内法上の紛争 もあ りうるが、

本来的には国際法上の紛争である。

それ に対 し、本研究会の研究調査対象の一つである国際事業活動 ( 投資)をめ ぐる紛争 の場合は、様 々な場面が あ り、国際法上の紛争 と国内法上の紛争が密接 に絡み合 うとい う 性格 を有す る。

国際事業活動をめ ぐる紛争 としては、典型 的には、取引先が契約 を十分 に履行 しない ( 代 金 を支払 わない、期 日を守 らない、定め られ た品質の製品を納入 しないな ど) とい うこ と が多いであろ うが、その他 に も相手 国政府 ・州政府 あるいは裁判所が憲法 ・法律 に違反 し て悉意的に法 を運用 しあるいは法 を遵守 しない といった場合 も考 え られ る。 また、相手 国 国が外 国企業所有 の資産 ・工場 ・不動産等 を法律 に基づ き合法的に収用 ない し国有化す る こともあ り、外国企業の本国がそ ういった 自国民の被害について受入れ 国に外交的な手段 を用い る ことによって、紛争が国家 間紛争へ と激化す ることもある。そ うなると、国際法 上の紛争が生 じることになる。

この よ うに、国際事業活動 をめ ぐる紛争 は国内法上の紛争 と国際法上の紛争の両方が密 接 に絡み あ うとい う性格 を有す るた め、その紛争 の うち どの部分が国内法上の紛争で あ り

どの部分が国際法上の紛争であるのかを見定めなければ、適切な解決 に至 らないばか りか、

いたず らに事態 を悪化 させかねない。

O ) )国際事業活動をめぐる紛争の分類

この よ うな区別 を踏 まえた上で、国際事業活動をめ ぐる紛争 を分類す ると、

①民間人同士の紛争、

② 国 ・政府機 関 と民間人の間の紛争

( a) 国 ・政府機 関が契約の相手方である場合の紛争

( b)課税 ・国有化な ど国 ・政府機 関が公権力の行使の主体である場合の紛争

③ 国家間紛争 に分け られ る

3

これ らの うち、① と②が国内法上の紛争であ り

4

、③が国際法上の紛争 とい うことが理解 され よ う

.二

.外 国企業の行 う事業活動 をめ ぐる紛争は、元々は国内法上の紛争であるが、 こ れ を企業本国が、受入れ 国に対 し、 自国民の生命 ・身体 ・財産 を保護すべき国際法上 の義

3

樫井雅夫 『国際経済法 ( 新版 ) 』( 成文堂 、1 997 年) 1 1 2 頁参照。

4

これ ら国内法上の紛争の うち、① と② ( a) が私法上の紛争、②仲) が公法上の紛争 とい うこ

とができる。

(7)

務 に違反 した とい うことを理 由に外交的手段 を用いる ( 外交的保護権 ( r i ghto fdi pl o mat i c pr o t e c t i on) の行使 とい う) ことによって、国際紛争、つま り国際法上の紛争‑ と転化す る

ことにな る。言い換 える と、元々の国内法上の紛争をいかなる理屈を用いて国家間紛争 、 つ ま り国際法上の紛争 として捉 え直すかが、法律上のテ クニ ックとい うことになる。詳 し

くは後述す るが、民間人 を当事者 とす る紛争 を国家間紛争へ と転化 させ るためには、つ ま り 「 外交的保護権」を行使す るためには、国際法上の特別の要件 ( 特 に国内的救済の原則) が必要で あるOつ まり、国内法上のすべての救済手続 を尽 くさない限 り、被害者 の本 国は 受 け入れ 国に対 して外交的保護権 を行使す ることはで きない

,

J したが って、①② の紛争が 紛争 当事者 の間で解決 されたな らば、③ の紛争は、少 な くとも国際法上 は認 め られ ない と い うことになる。その意味で、国際事業活動に関す る紛争 ( 私企業の関係す る紛争)には、

段階的構造がある とい うことが理解 され よ う。国内法上の紛争 と国際法上の紛争の区別 は、

こ ういった意味で も重要である。

①② の紛 争が国内的手段 によ り解決 され る ことが望 ま しい ことはい うまで もないが、 し か し実際 には、外 国企業受入れ国の法制度 に不備があった り、国家機 関の怠慢 ・訓練 不足 を原 因 とするよ うな場合 あるいは法 を遵守 しない とい った理 由で解決 されない ことが少 な か らずある。特 にロシア国内法制については、その危倶は払拭できない。そのよ うな場合、

企業本国の政治的 ・外交的判断によ り、③の国家間紛争、つ ま り匡日 舞法上の紛争への転 化 に踏み切 ることがある。

以下 「2. 」では、事態が この③の国際法上の紛争 に至った場 合の紛争の解決方法の一般 原則 を紹介す る。

なお 、 ここで注意 しなければな らない ことは、① と② の紛争は国内法 上の紛争であ り、

その紛争の解決それ 自体 には国際法は直接関与 しない とい うことである。 この紛争の解決 は、本来的に相手国の国内法制度 に委ね られ るべ き事項であ り、安易 に他国が 口出 しをす る と場合 によっては内政干渉 として国際違法行為 とな りうる。本稿 は、 この① と② の紛争 の解決方法、具体的には ロシアの国内法制度それ 自体は対象 としていない ことに留意 して もらいたい。ただ し、すでに何度か触れてい る投資紛争解決国際セ ンター ( I CSI D) は、② の国 ・政府機 関 と民間人の間の紛争の うち、特に投資紛争 を扱 う紛争解決制度であ り、

れ は国際法上の制度であることか ら、本稿 で取 り上げているL 。

2. 国際紛争の平和的解決方法

国際紛争 ( 国家間の紛争)の解 決方法は、大きく 2 つに分 け られ るo lつは、交渉 ・裁

判な どによる平和的解決方法であ り、 もう 1 つは、武力 な ど強制手段 を用いた解決方法で

ある。今 日では、国際法は、各国に対 し、武力による威嚇 ・武力の行使 を禁止 しつつ ( 国

(8)

連憲章 2 条 4 項5 ) 、国際紛争 を平和的手段 を用いて解 決すべき義務 を課 してい る ( 同条 3 項 、33 条 1項6 ) 。 国際紛争が発生 した場合、国連安全保 障理事会 の決議 に基づ く軍事的措 置 の可能性 は今 日で も否定できない ( イ ラクによるク ウェー ト侵攻 に対す る 1 990 年安保理 決議 67 8 号)が、 日本側 を被害考 とす る 目口間の紛争 に国連安保理に よる軍事的措置を想 定す るこ とは現実 には考 え られす 、仮 に これ を仮定 した ところで本研 究調査 にほ とん ど実 益 はない (日本政府 にかか る措置 を要請す る とい う意味において) こ とか ら、 ここでは国 際紛争 の平和的解決について説 明す る。

国際紛争 の平和的解 決は、紛 争 当事 国間での方法、第三 国 ・国際組 織が介入す る方 法及 び国際裁判 に よる方法 とが ある。 これ らの うちいずれ を選定す るかは紛争 当事 国の合意 に よって 自由に決 めることが できる7 。それ は、実際 には、当該紛 争の性格、当事 国の紛 争解 決 に向けての意思 の程度 は もとよ り、紛争 当事国の力 関係 ・友好 関係 の程度 な どを考慮 し て紛争 当事 国が決定す ることになる。

(1)紛 争 当事国間の手段 一 交渉 と協議

国際紛争 を解決す る方法 の中で最 も基本的かつ重要な ものは、紛争 当事国の間で行 われ る交渉 t ne g o t l a t l O n) である

80

紛争が発 生 した場合 は、 まずは話 し合 って解決す るのが最 も好 ま しい「 今 日の よ うに国家 間関係が密接 になれ ばな るほ ど 日常的 に国際紛争は発 生す るが、それ だ け交渉の持 つ意義 は小 さくない。実際上、 ほ とん どの国際紛争 は交渉 に よ り 解決 され る 9 「 .

交渉 の長所 は、簡易性 、経費の軽減、相互信頼性 が挙 げ られ るが、欠 点 としては、紛 争 当事 国の実力 関係や交渉力の差が反 映 され 、必ず しも公 平な解決が得 られない可能性 が指

5

国連憲章 2 条 4 項 「 すべての加盟 国は、その国際関係 において、武力 による威嚇又は武力 の行使 を、いかな る国の領 土保全又は政治的独立に対す る もの も、 また、国際連合 の 目的

と両立 しない他 のいかな る方法 に よるもの も慎 まなければな らない。」

62 条 3 項 「 す べての加盟国は、その国際紛争 を平和的手段 によって国際の平和及び安全並 び に正義 を危 うく しない よ うに解決 しなけれ ばな らない。」

33 条 1 項 「 いかな る紛争で もその継続が国際の平和及び安全の維持 を危 うくす る虞 のある ものについては、その当事者 は、まず第‑に、交渉、審査 、仲介、調停 、仲裁裁判、司法 的解決 、地域的機 関又 は地域的取極 の利用その他 当事者が選ぶ平和的手段 による解決 を求 めなけれ ばな らないっ」

7

山本章二 『国際法 ( 新版 ) 』( 有斐 閣 、1 994 年) 678 頁。

8

J. G. Me r r i l l s , Z nt e T nat l ' o na lDI s put eSet t l e me nt , 2

nd

e d. ( 1 991 ) , a t 2 ( 邦訳 、J. G. メ リ/ レス ( 長谷川 正国訳)『新版 国際紛争の平和的解決』 ( 敏文堂 、1 9 93 年) 2‑3 貢) 。

9

A m e r i c a nLa wl ns t l t u t e , Re s t at e me nto ft beLaw , 3 d . T heFo L T e l gnRe l at l ' at 2 3Lawo f

t heUDl ' t e dSt at e s ,vo l . 2( 1 9 8 7 ) . a t 346.

(9)

摘 され る

1

0 。特 に、紛争 当事国の一方が交渉 を拒絶す る場合には交渉は不可能であ り、その 場合、紛争の存在 自体が否定 され ることもある1 1 。なお、交渉を尽 くす ことが、以下に述べ

るその他 の紛争解決方法を利用す るための前提条件 とされ ることもある

12。

なお、協議 ( c o ns ul t at i o n) は、ある問題 に関す る二国間の話合い とい う点で広義の交渉 に含 まれ うるが、交渉が紛争解決方法の一つ として位置づけ られ るのに対 し、協議が紛争 回避方法 として紛争が生 じる前に行 われ る当事国間の手続である点で、通常の交渉 と区別 され る独 自の機能 を有す るもの として論 じられ ることがある

13。

(2) 第三国または国際組織の介入 による方法

紛争が交渉 によ り解決 にいた らない場合、第三国あるいは国際組織 が、紛争 当事 国の事 前の合意 に基づ き、紛争発生後 の要請によ りあるいはその第三国 ・国際組織 の 自発的な 申 し出によ り、その紛争の解決 を 目的 として介入す ることがある。その方式 として、周旋 ・ 仲介、国際審査、国際調停 といった ものが挙げ られ る。

( a) 周旋 と仲介

国際紛争 の解決 を 目的 と して、第三国 ・国際組織 が間に入 って紛争 当事国の交渉 を促 し た りあるいは交渉 に介入す ることが ある。その第三者 の関与の程度 によ り、単に当事 国の 交渉のた めの場所 な ど便宜の提供 に とどま り交渉 の内容 には立ち入 らない方法である周旋 ( g o o d o f Bc es ) と、紛争解決のための具体的条件 を提案す るな ど実質問題 に立ち入る方法 である仲介 ( me d i a t i o n) とに一応は区別 され るO仲介の場合に第三国 ・国際組織が提案す る具体的条件 は、それ 自体 として紛争当事国を拘束せず これ を受 け入れ るか どうかは最終 的には当事国の合意 による点が、後 に述べ る国際裁判 と本質的に異な る。我が国が関係 し た もの として 、1 905 年に 日露戦争の終結のためのポー ツマス講和会議 に関す る米国大統領 の介入が、周旋の例 と して挙げ られ る 1 4 。

周旋 または仲 介に関 して何 よ りも重要な点 は、 こ うい った困難 な仕 事 を引き受 ける周

1

0山本 『前掲書 』 ( 注 7)67 9 頁。

l

l Me m i l l s , sz L pL T anOt e8. a t22 ( 邦訳 、25 頁) 。例えば、北方領土問題 について、旧ソ連は、

一時期、領土紛争の存在 自体を否定 してお り、交渉の余地は全 くなかった ことがあるO 国 際法事例研究会 『日本の国際法事例研究 ( 3 ) 領 土』 ( 慶鷹通信 、1 990 年) 1 1 0‑1 1 6 頁⊂ 、

12

Re s t at e me nt ,3 d .s u pL T anot e9. at34 61 3 47. 352‑ 3 53.

13

山本章二 「 国際紛争における協議制度の変質 」 『 紛争の平和的解決 と国際法 ( 皆川洗先生 還暦記念 ) 』( 北樹 出版 、1 9 81 年) 21 5 貢以下 ; Me r r i1 l s , s u pt T anOt e 8, a t3 ‑ 7 ( 邦訳 、3‑9 育) 0

14

高野雄一 『 全訂新版 国際法概論 下』 ( 弘文堂 、1 98 6 年) 1 85 頁。

(10)

旋 ・仲介人の存在である

15

。̲ これは、単独の国家であることが多い ( 大国に限 らず、小国の 例 もある)が、複数国の場合 もあ り、また個人 ・非政府組織 ( NGO) の場合 もある

16

。近 年では、国連事務総長が このよ うな役回 りを演 じることが多 くなってお り、その意義が強

く注 目されている

17C.

仲)国際審査

国際紛争は、事実関係が不明瞭であるために生 じることがある。そ ういった場合に、事 実関係 を明 らかす ることを 目的 として、「 国際審査 ( i nt e r na t i o na li nq u i r y) 」が行われ るこ とによって、紛争が解決 されることがある。それを制度化 した ものが 、1 9 07 年の 「 国際紛 争平和的処理条約 」9 条以下であ り、これに基づき紛争 当事国は国際審査委員会を設けるこ とができる 1 8 C著名な例 としては 、1 9 05 年の英露間の ドッガ一 ・バ ンク事件 に関す る国際 審査がある

19

が、この条約 に基づ く国際審査は、この事件 を含め戦前に 4 件、戦後に 1 件 し か行われていな

い 20.

。ただ し、この条約基づ く場合以外でも国際審査は行われてお り、例 え ば 、1 9 83 年 にサハ リン上空で発生 した ソ連軍用機 による大韓航空機撃墜事件に関 して同年 に国際民間航空機 関 ( I C AO) が提出 した調査報告書が これ に当たるとされ る

21

。また 、1 9 82 年国連海洋法条約 で も、特別仲裁裁判所が審査を行 うことが規定 されている ( 付属書Ⅷ、

15

Me m il l s ,su pE T Bn

Ot

e8, a t2 8 ( 邦訳 、3 6 頁)0

16

z b L ' d .

17

林司宣 「 国連事務総長の周旋活動 ( 1) 」 『国際法外交雑誌 』9 0 巻 1 号 ( 1 9 91 年) 1 貢以 下c

l8

9 条 「 締約国は、名誉又は重大なる利益 に関係せず、単に事実上の見解の異なるより生 じ たる国際紛争に関 し、外交上の手段 に依 り妥協を遂 ぐること能わざりし当事者が事情の許 す限国際審査委員会を設け、之を して公平誠実なる審理に依 りて事実問題 を明に し、右紛 争の解決を容易にするの任 に当た らしむるを以て、有益に して且希望すべきことと認む。」

( 平仮名及び濁点は筆者)

19

この事件は 、1 9 0 4 年、 日露戦争の際の ロシアパルチ ック艦隊が、 日本海軍 との戦いに向 けて北海近海 を航行中、 ドッガ一 ・バンク沖合で換業中の英国漁船団を 日本軍 と誤認 して 砲撃、死者 を出 した とい う事件である。 フランスの周旋により英露協定が締結 され、国際 審査委員会が設置 され、 ロシア側の責任が認定 された。菊地正 「ドッガ一 ・バンク事件」

国際法学会編 『国際関係法辞典』 ( 三省堂 、1 9 9 5 年) 5 8 9 頁。

20

Me r r i l l s , su pz T a nO t e8, a t4 4‑ 5 5 ( 邦訳 、5 7‑6 9 頁);牧 田幸人 「 国際審査 」 『国際関係法 辞典 』 ( 同上書) 2 6 9 頁0

21

Me r r i l l s , ) ' b l d . , a t5 6‑ 5 7 ( 邦訳 、7 0‑7 1頁)。なお、この事件 については、 ソ連崩壊後 ロ

シアの協力により 、1 9 93 年 に I C AO において最終報告書が作成 されている ( 詳 しくは、城

戸正彦 「 大韓航空機事件 ( 1 9 83 年) とその後の措置 ( その 1 、その 2 ・完 ) 」 『 松 山大学論

集 』8 巻 3 号 4 号 ( 1 9 9 6 年)参照)が、これ も国際審査の一種 とい うことができよう。

(11)

5 条

22)

な ど、今 日で も審査 は有益で ある

( C )国際調停

国際調停 ( i nt e r na t i o na l c o nc i l i a t i o n) とは、審査その他 の方法 に よ りすべての有益 な情 報 を収集 し、適 当な紛争解決条件 を紛争 当事 国に提示す ることをいい ( 1 928 年 国際紛 争平 和的処理 一般議定書 ( 1 950 年 改正) 1 5 条 1 項

23

参照)、その意味で審査 と仲介 の機 能が結 合 した紛 争解 決方法である

24

。国際調停 は、通常は独 立 した委員会 または国際組織 に よ り行 われ 、そ の独 立の度合いは周旋や仲介 よ りも高いが、 この紛 争解決条件 は紛 争 当事 国 を拘 束せず 、 これ を受諾す るか どうかは当事 国の合意 に よる点で、国際裁判 とは異なる

25。

国際調停は、実際の利用例は 20 件 に満 たないが 、200 以上の二国間 ・多数 国間条約 で、

紛争解決方法 として規定 されてい ることに注意 しなけれ ばな らない

260

( d)国際組織 に よる周旋 ・仲介その他 の紛争解決方法

上に示 した よ うに、国だ けでな く国際組織 も、国際紛争 の解決 に対 し様 々な形 で介 入す る。 その代表 は国連であ り、そ もそ も国連は国際の平和 と安全 の維持 を 目的 として設 立 さ れ 、国際紛争 の平和的解決 を実現す ることが意図 され てい る ( 国連憲章 1 条 1 項

27

、33条 以 下), そのための主要 な機 関が安全保障理事会であ り ( 24 条 1 項2 8 )、 また国連総会 もそ

22

付属書Ⅷ 、5 条 ( 事実の認定) 1 項 「この条約 の解釈又 は適用 に関す る紛争であって 、( 1 ) 漁獲、( 2) 海洋環境 の保護及び保全 、( 3) 海洋の科学的調査又は( 4) 航行 ( 船舶か らの汚染及 び 投棄 に よる汚染 を含む。) に係 る ものの当事者 は、第 3 条 の規定に従 って構成 され る特別仲 裁裁判所 に対 し、 当該紛争 を生 じさせてい る事実について審査 し及 び認 定す るよ う要請す

るこ とをいつで も合意す ることがで きる 。 」 ( 以下略)

23

1 5 条 1 項 「 調停委員会 は、紛争 問題 を明 らか にす るこ と、そのために事実審査又はその 他 の方法 によってすべての有益な情報 を集 めること、及び 当事 国を調停す るのに努 める こ

とを任務 とす る〔委員会 は、事件 の審査後、適 当 と認 める協定条件 を当事国に提示 し、且 つ、 当事 国が意 見を表示すべ き期 限を定 めることが出来 る。 」 ( 小 田滋 ‑石本泰雄編集代表

『解説条約集 第 7 版』 ( 三省堂 、1 997 年) 567 頁 よ り)。

24

山本 『前掲書』 ( 注 7)682 頁C

25

高野 『前掲書』 ( 注 1 4)1 88‑1 89 頁

26

Me m il l s . s u pE T a n Ot e8, at 76 ( 邦訳 、93 頁)C

27

1 条 「 国際連合の 目的は、次の通 りである

c

l項 国際の平和及び安全 を維持す ること。そのために、平和 に対す る脅威 の防止及び除去 と侵 略行為その他 の平和 の破壊 の鎮圧 とのため有効 な集 団的措置 を とる こと並びに平和 を 破壊す るに至 る虞 のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決 を平和的手段 に よって且つ 正義及 び国際法に原則 に従 って実現す るこ と。」

28

24 条 1 項 r 国際連合 の迅速且つ有効 な行動を確保す るために、国際連合加盟国は、国際

(12)

の任務 を負 う ( 1 0 、1 1条 2 9 ほか) 。国連が これ まで国際紛争に介入 してきた事例は数多 くあ るが、 ここで改めて取 り上げるまで もない。前述 した よ うに、今 日では、国連事務総長 の 果た した役割が高 く評価 されてい る

。.

国連 とい った国際社会のほとん どの国が加盟す る国際組織ではなく、一定の地域内の限 定 された国のみが加盟す る地域的国際組織がその地域 内の国際紛争の解決に重要な役割 を 果たす ことは、少 なくない3 0 。 こ ういった地域的国際組織の加盟国は、歴史的 ・文化的に類 似 し友好関係 にあることが多いため、地域的国際組織が、紛争 当事国のそれぞれの利害 を 十分 に考慮 した 上でよ り当事国双方が納得 しやすい解決方法を兄いだす ことが期待 され る ためである。 国連 は、国際紛争の解決に対す る地域的国際組織 の有用性 を認 め、国連 によ る紛争解決方法 との整合性 を図っている ( 国連憲章 5 2 条

31

以下) 。紛争解決機能 を有す る地 域的国際組織 の例 として、例えば、 ヨー ロッパ地域 (ヨー ロッパ理事会、 ヨー ロッパ共 同 体 ・連合、全欧安全保障協力会議)、北大西洋条約機構 ( N〟r °) 、米州機構、アフ リカ統一 機構 、アラブ連盟、東南アジア諸国連合 ( ASEAN)な どが挙 げられ る

32。

(3) 国際裁判

上記の 日 ) (2)

i)

方法は、最終的には紛争 当事国の合意により紛争の解決を図るもの であるのに対 し、国際裁判は、国際裁判所 の判決 によ り、当事国の新 たな合意を必要 とす ることな く紛争 当事国に対 して強制 され る紛争解決方法である。国際裁判は 1 8 世紀末か ら、

の平和及び安全の維持に関する主要な責任 を安全保障理事会に負わせ るもの とし、且つ、

安全保障理事会が この責任 に基づ く義務を果すに当って加盟国に代 って行動す ることに同 意す る 。」

2 9 1 0条 「 総会は、 この憲章の範囲内にある問題若 しくは事項又は この憲章に規定す る機 関 の権 限及び任務 に関す る問題若 しくは事項を討議 し、並びに、第 12 条に規定す る場合 を 除 く外、 この ような問題又は事項について国際連合加盟国若 しくは安全保障理事会又 はこ の両者 に対 して勧告をす ることができる 。」

1 1 条 1 項 「 総会は、国際の平和及び安全の維持についての協力に関す る一般原則 を、軍備 縮小及び軍備規制 を律す る原則 も含 めて、審議 し、並びにこのような原則について加盟国 若 しくは安全保障理事会又はこの両者に対 して勧告をすることができる 。 」 ( 以下略)

3

OMe r r i l l s ,su py a no t e8. a t2 07 . 21 3 ‑ 21 8 ( 邦訳 、2 6 5、2 71‑27 7頁) .

3 152条 1 項 「この憲章のいか7 , 'る規定 も、国際の平和及び安全の維持に関す る事項で地域 . 的行動に適 当な ものを処理す るための地域的取極又は地域的機 関が存在す ることを妨げる

ものではない

,̲

但 し、 この取極又は機関及びその行動が国際連合の 目的及び原則 と一致す ることを条件 とす る 。 」 ( 以下略)

32

Me r r i l l s . su pL T a nO t e8 . a t2 0 7 ‑ 21 3 ( 邦訳 、2 6 5‑27 1頁):山本 『前掲書』 ( 注 7 )6 86‑

6 87 頁。

(13)

国際法 に基づいてな され る国家 間紛 争の解決方法 と して利用 され るよ うにな り、今 日では オ ランダ ・ハー グにある国際司法裁判所 ( I nt e r na t i o na lCo t l r tO fJus t i c e;I CJ) の他 、多 くの種類 がある。 国際裁判所 の判決 は、国際法規 の解釈 の指針 とな るだ けでな く、そ の判 決 の膨大 な量 の蓄積 は、国際慣習 法 を形成 し、または条約規則 に反映 され るな ど、国際法 の形 式的法源 ( ‑法の存在形式 :国際慣 習法 と条約) の形成要因 と して の実質的法源 と し て、極 めて重要である3 3 , ̲

国際裁判の判決 は紛争 当事 国を法的 に拘束す る ( 国際 司法裁判所規程 5 9 条

34

参照)。つ ま り、 当事国が判決 を受 け入れ るか どうかの意思の確認 は、改めて必要 とされ ない。 しか し、

当該紛争 を国際裁 判 に付す るか ど うかは、紛 争 当事国の合意が必要で あ り、裁判所 は、紛 争 当事国の合意な く裁判 を行 う権 限を有 さない。 つ ま り、判決 に拘束 され る ことにつ いて の事 前の同意が必 要なのである。 このよ うに、国際裁 判所 には強制管轄権が認 め られ てい ないので あ り、一方 の 当事国が裁判‑の付託 を同意 しない限 り、裁判所 は管轄権 がない と して これ を却 下す るこ とになる3 5 ・ 3 6 0 これ は、裁 判所 の強制管轄権 が認 め られ てい る国 内 裁判所 と根本的に異な る点である。

国際裁判 は、国際仲裁裁判 と国際司法裁判 に分 け られ る。 匡日 舞裁判 の初期 ( 1 8 世紀末) 以降、地域的国際裁判所 である中米司法裁判所が 1 907 年に設立 され る ( 1 91 8 年廃止) ま で、国際裁判 の種類は この国際仲裁裁判のみ であったO現在 は、国際 司法裁 判が国際裁 判

33

山本 『同上書 』68‑7 0 頁。

34

5 9 条 「 裁判所 の裁判は、 当事者 間において且つその特定の事件 に関 してのみ拘束力 を有 す る。」

35

その よ うな事例 は多いが、国際投資 に関 して有名な もの として 、1 95 2 年 「 アングロ ・イ ラニアン石油会社事件 」 ( イ ギ リス対イ ラン)国際司法裁判所判決 ( JC. JRe po Tt S1 9 5 2, 93 ) が ある。この事件 は、イ ランが 1 951 年 の石油産業国有化 法によ りイ ギ リス系のア ングロ ・ イ ラニアン石油会社を接収 した ことに対 し、その本 国であるイ ギ リスが外交的保護権 を行 使 し、イランを被告 と して損害賠償 を求めて国際司法裁判所 に提訴 した事件で ある̲裁判 所 は、両当事国の合意がない ことな どを理 由に管轄権 を否定 し審理 を行わなか った ( L b l ' d. . a t1 1 5 ) 。 この事件 の紹介 として、 田畑茂二郎‑太寿堂鼎編 『ケースブ ック国際法 ( 新版)』

( 有信 堂高文社 、1 9 87 年) 241‑2 46 頁 ( 安藤仁介担 当)参照

36

よ り正確 に言 うと、裁判所 の管轄権は、 当事国のその事件 ことの個別の合意の他に、多 数 国間条約 によ りその条約 上の紛争 を国際司法裁判所な どの裁判所 に付託す る旨の事前の

項 の受諾宣言」 とい うJ に基づ く場合が ある ( 国際司法裁判所規程 3 6 条 2 項). ̲ l しか し、

この宣言 には裁判所の管轄権 を受 け入れ るための条件 を付す ることが多 く、実際には この

受諾 宣言 に基づ く提訴は、被告側 ( 宣言 を行 った側 の国) が この条件 を盾 に裁判所 の管轄

権 を争 うことが多い

,

二上記の 「 ア ングロ ・イ ラニアン石油事件」での最 大の争点 も、 この

受諾宣言 に付 され た条件 の解釈 であったC この宣言 に関 しては、後 に も何度か触れ るC

(14)

の主流 を 占めてい るが、今 日で も国際仲裁裁 判の利用例 は少な くない。 以下それぞれ につ いて説 明す る。

( a) 国際仲裁裁判

37

国際仲裁裁判 ( i nt e r nat i o na la l l bi t r a t i o n) は、一般 に、事件 ごとに、 当事 国の合意 によ り裁 判所 を設 立 して 当事 国の選任 した裁 判官 によ り行 われ る国際裁判で あ り、その裁 判 手 続 き及 び適用 され る裁判準則、判決 の効力 に至 るまで、当事国が決定す るこ とがで きる

38。

つ ま り、裁判 に関す るす べての事項 をその事件 ご とに紛争 当事国が決 め るこ とがで き、 当 事 国の意思が最大 限に尊重 され る。

国際仲裁裁判 は、事件 ご とに設立 され る裁判所 に よ り行われ 、 当該事件の判決 が出 され る と直 ちに解 散す る。そ のため裁判所の数 と しては極 めて多 く、それ だ け裁判所 の内実 は 多種多様 であるで裁判官 と して、有力国の国家元首が選 ばれ ることも多い

39。

こ ういった通常の国際仲裁裁判 と異 な り、 「 常設」の仲裁裁判所 と して 、 1 899 年及 び 1 907 年の 「 国際紛争平和的処理条約」 によ り設立 された常設仲裁裁判所 ( Pe r ma ne ntCo ur to f Ar b i t r at i o n) があるC これ は、 当事 国が、あ らか じめ作成 され てい る裁判官名簿の中か ら 裁判官 を選任 す る もので あ り、そ の組織構成等 も当事 国が決 定す るものであ り、正確 には

「 常設」裁判所 ではな く個別 に設立 され る裁判所 であるO この裁判所 は、現在 も存続 して お り、 日本 人裁判所 は 4 人が名簿 に記載 され てい る。設立初期 は重要な役割 を果た したが、

後述 の常設 国際 司法裁判所 ・国際 司法裁判所 の活躍 もあって、戦後 は 2 件 の付託があるに とどまる

40。

国際仲裁裁判 の特殊 な形態 と して、世界大戦や革命 といった大規模 な混乱の際 に国が 国 際法 に違反 したた めに生 じた個人の損害 について、そ の被害者本 国 と違反 国の合意 に よ り 国際裁判所 を設立 し、個 人が直接 に提訴 して個別 に処理す る とい う国際仲裁裁判があ る。

37

本文 で述べてい るよ うに、国際仲裁裁判は、その当該事件 のみの解決 を 目的 と し判決後 にその裁判所 が解散す ることか ら、判決文 の入手は困難で あった。 しか し、現在 国連法務 部 に よ りその判決集が順次編集 ・出版 され てお り ( 国際仲裁裁判判決集 ( Re po r t so f l nt e l ・ nat i o na lAr b i t r a l Awa r ds ; R. I . A. A. )、現在 2 0 巻 を数 えるO この判決集 は、 これ ら国 際仲裁裁判で取 り上げ られた事例 のほ とん どが、外国人の生命 ・身体 ・財産及び投資の保 護 に関す るものであることか ら、本研究会での研 究調査 を進 めるにあたって必須の資料 で あ り、今 回報告書で もい くつか引用 され てい る。 この判決集 は本学 には一部 しか所蔵 され ていなか ったが、今回研 究会研 究費 よ り全巻 を揃 えることが出来た。 なお、 この判決集 の 判決 の うち、特 に重要 な ものが、波多野里望 ‑東寿太 郎編 『国際判例研 究 国家責任 』 ( ≡ 省堂 、1 990 年)で詳細 に紹介 されてい る

o

3

8Me r r il l s ,su pE T anot e8, at80‑ 1 0 0 ( 邦訳、 1 01‑1 24 頁 ) 0

39

高野 『前掲書』 ( 注 1 4)243 頁。

40

杉原 高嶺 『国際司法裁判制度』 ( 有斐閣 、1 99 6 年) 1 8 頁。

(15)

例 えば、第一次世界大戦後の、米 国‑ ドイツ混合仲裁裁判所 、英 国‑ ドイツ混合仲裁裁判 所、第二次世界大戦後の仏 ‑伊調停委員会 、1 979 年のイ ランのイスラム革命後のイ ラン‑

米国請求裁判所 ( I r a n‑ Uni t edSt at x ) sCl a i msT ri buna l )な どがそ うである。 これ らは、通 常の国際裁判 とは異な り、個人が国家を相手 として国際裁判所で行われ る国際裁判で ある 点 に留意 しなければな らない

41

。最近では、世界大戦 ・革命後の混乱の収拾ではな く、個人 と国家 との間の経済紛争 について も、 こ うい った国際仲裁裁判が利用 され るよ うにな って い る ( 投資紛争解決国際セ ンター ( I CSI D) 、 日中投資保護協定 1 1条な ど) 。 これ らは、我 が国企業が ロシアで事業活動を行 うにあた り、重要な意味を持つ投資保護制度である。

なお 、私企業間の国際取引紛争 を対象 とす る国際商事仲裁や 国際仲裁裁判所は、上記 国 際仲裁裁判、常設仲裁裁判所 とは、本質的に別の ものである。国際商事仲裁 は、国家 に よ る紛争解決方法である訴訟 と区別 され、私人 による仲裁人に解決 を委ね るものであ り、そ の仲裁判断に、国家の設立す る裁判所の判決 と同一の効力 を国内法が認 めるとす る 「 仲裁 」 の一種であるOつ ま り、国内法上の制度である。

O) )国際司法裁判

国際司法裁判 は、常設の国際裁判所 において行われ る国際裁判で、裁判官 も基本的 にあ らか じめ選定 され てい るほか、その裁判手続 き、裁判準則、判決の効 力な ど、裁判 に関す る事項 も当事国の個別 の合意によらずあ らか じめ定め られている,その限 りで国内裁判 と 同様 であるが、国内裁判 と異な り、紛争 当事 国が、 これ らの事項 を規定す る条約 ( 裁判所 規程) の当事 国であるか あ らか じめ この条約 の内容 を受 け入れ る必要がある。 また、裁判 に付託す るか どうかは紛争 当事国の合意 または前述 した 「 選択条項の受諾宣言」が必要 で ある。

前述 した ように、司法裁判所は 、1 907 年 の中米司法裁判所が史上初の ものであるが、多 くの国に開放 され る一般的な司法裁判所 と しては 、1 921 年 に創設 され た常設国際司法裁判 所 ( Pe r ma ne ntCo u r to fl nt e r nat i o na lJus t i c e: PCI J) が最初である

42

7 .今 日の代表的な司

41

これ らの裁判所は、その性質上、外国人の生命 ・身体 ・財産及び国際事業活動の法的保 護の問題 を扱 ってお り、我 々の研 究にとって直接重要である

.

I ,これ らの先例 に基づいて、

ロシア国内における我が国企業の事業活動の法的保護の国際基準を導 き出す ことが出来 る. ∩ これ らの判決は、前記 Re po r t so fl nt e r nat i o na l Ar bi t r a l Awa r ds によ り入手できるOただ し、イ ラン‑米国請求裁判所は数千件の事件が係 属 してお り現在 も活動 中であ り、その判 決は別個 に l r a n‑ Uni t edSt at esCl a i msTr i buna lRe po r t s と して順次公刊 されている。現在 2 8 巻 を数 えるが、 これは本学に所蔵 されていないっ

42

この常設国際司法裁判所の判決は 、PCI J. Se r i esA と Se r i esB 及び Se r ie s AJ Bで入手で

きる。 これ らは商大に所蔵 され てお り、 この報告書で もい くつか引用 されてい る。その他

口頭弁論記録 ( Se r i esC) の他 、Se r i esD, E があるが、本学図書館 には所蔵 されていない。

(16)

法裁判所である国際司法裁判所 ( I CJ)

43

は、第二次大戦後国連の主要機 関 として設立 され た ( 国連憲章 7 条 、92 条

44

以下)が、実質的には常設国際司法裁判所 ( PCI J) を引き継い だ ものである ( 同 9 2 条参照) 。 この国際司法裁判所における裁判手続 き等を定めた条約 を、

国際司法裁判所規程 ( l CJ 規程) といい、更にその内部規則の細 目を定めた条約 を、裁判所 規則 ( I CJ 規則」 ) とい うO

国際司法裁判所の裁判官は 1 5 人で、任期は 9 年であ り 、3 年 ごとに 5 人を、国連総会 と 安全保障理事会の選挙で選ぶ ( I CJ 規程 3 条 1 項 、1 3 条 、8 条

45)

。 同一の国籍を持つ 2 人 以上が裁判官 となることはできない ( 規程 3 条 1 項) 。現在 日本人裁判官がお り ( 小 田滋判 辛)、在職 2 2 年で現職 の裁判官 としては最古参であ り ( 任期 2003 年 まで)、各国政府か ら の信頼 も厚い .5 大国出身判事 も常に選挙で選ばれてお り、現在の ロシア人判事は、 Vl adl e n S.Ve r e s hc he t in である ( 任期 2006 年まで)

46147

。なお、ここで留意 しなければな らない

ことは、国際司法裁判所 に係属す る事件の当事者 となることができるのは、国のみである

43

この国際司法裁判所の判決集は毎年公刊 されてお り、例 えば 1 9 49 年版であれば Ⅰ . C. J.

Re po r t s1 949 として引用 される。 これ もこの報告書でい くつか引用 している。 これはすべ て本学図書館に所蔵 されている。しか し、この Ⅰ . C. J. Re po r t s が公刊 され るまで数年かか り、

今 まで判決文の入手は、特に重要な ものは I nt er nat l O na ILe galMat e r ial sqL M)とい う商 業雑誌で入手できる場合を除き、困難であった。 しか し、最近では、国際司法裁判所 自身 がインターネ ッ トを通 じて判決文を公表 している。< ht t p: / / www. i 由一 c i j , o r g / i de c i s . ht m >

447

条 1 項 「 匡l 際連合の主要機 関として、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統 治理事会、国際司法裁判所及び事務局を設ける。」

92 条 「 国際司法裁判所は、国際連合の主要な司法機 関である。 この裁判所は、附属の規程 に従 って任務 を行 う , ‑この規程は、常設国際司法裁判所規程を基礎 とし、且つ、この憲章 と不可分の一体をなす ,」

45

3 条 1 項 「 裁判所は 、1 5 人の裁判官で構成 し、その うちのいずれの 2 人 も同一国の国民 であってはな らない 。」

1 3 条 1 項 「 裁判所の裁判官は 、9 年の任期で選挙 され、再選 され ることができる。( 以下略) 」 8 条 「 総会及び安全保障理事会は、各別に裁判所の裁判官の選挙 を行 う 。」

46

1 5 人の裁判官の中に紛争 当事国出身者がいない場合は、その事件に限 り特別 に裁判官を 選ぶ ことができる ( 規程 31 条) 。その場合は、その事件 に限 り裁判官の数が増 えることに なる。現在の ところ、 日ロとの関係では、いずれ も自国出身者がいるためこの制度は利用 され えないが、仮に小 田判事の任期が終了 しその後 日本人裁判官が選挙で選ばれなかった ような場合は、重要な意味を持つ0

47

国際司法裁判所の歴史、実態、実際の運用 ・事件等についての小 田判事による紹介 とし

て、『国際司法裁判所』 (日本評論社 、1 9 87 年)、「 裁判官ベ ンチか らみた国際司法裁判所の

20 年」杉原高嶺編 『 紛争解決の国際法 ( 小 田滋先生古稀祝賀) 』 ( 三省堂 、1 9 98 年)があ

る「

(17)

とい うこ とである ( I CJ 規定 3 4 条 1 項4 8 ) 。つ ま り、個人 ・民間人は、国際司法裁 判所 に提 訴す る資格が ない。先 に述べた国際法上 の紛争 と国内法上 の紛争 の区別 は、 この点で決定 的な意味 を持つ。

こ うい った世界的な司法裁判所 の他 に、地域的裁 判所 ( 1 9 07 年 中米 司法裁 判所 ( 1 91 8

年 に解散)、 ヨー ロッパ共 同体裁判所)や、機能別裁判所 ( 人権裁判所 (ヨー ロッパ人権裁 判所 、米州人権裁判所)、国際海洋法裁判所 (日本人判事 1 名 :山本草二判事)、国際刑事 裁判所 ( 極東 軍事裁判所 、 旧ユー ゴスラ ビア国際刑事裁判所 な ど) な ど)が ある。 これ ら の 中には、加盟 国が限 られ る ものや 、強制管轄権 が認 め られ る もの、個 人に出訴権 ・当事 者 能 力 を認 め る もの もあ る

49

。 なお 、1 9 9 5 年 に発 足 した世 界 貿 易機 関 ( Wo r l dT ra d e Or gani z a t i o n;WTO) も紛争処理 手続 を用意 してい るが、通常の国際裁 判 とは異 なる面 を 強 く持つ ことか ら、独特の紛争処理方法 といわれ る5 0 0

この よ うに、今 日では、国際裁判 は、国際 司法裁判所 を中核 と しつつ 、個別 に分化 した 形 で地域的裁 判所 ・機 能別裁判所 が存在 し、他方 で伝 統的な国際仲裁裁 判 も行 われてい る とい う状況 にある。 これ らのいずれ を利用す るかは、その紛争 の性格や相手国 との合意 の 上で決せ られ る ことにな る。

なお 、これ まで 日本が 当事 国 となった国際裁判は 2 例 しかない 。1 つは 1 87 5 年 「 マ リア ・ ルース号事件」 ( 対ペルー)仲裁裁判所判決 ( 裁判官 ロシア皇帝 ;日本勝訴)で、 も う 1つ は 1 9 05 年 「 家屋税事件」 ( 対イ ギ リス、 フランス、 ドイ ツ)常設仲裁裁判所判決 (日本敗 訴)である

51

。 これ ら以降は例がな く、この家屋税事件 の敗訴のため 日本 は国際裁判‑の事 件付託 に消極 的 になった ともいわれ るが、戦後 に 2 件 ほ ど 、 IC J への付託の準備 が具体 的に進 め られ た こ とがあ る。 これ らはいずれ も外交交渉 に よって決着 したた め、裁判所 へ の付託 に至 らなか った

52C

4 834 条 1 項 「 国のみが、裁判所 に係属す る事件 の当事者 となることがで きる。」

49

これ らの地域 的 ・機能別裁判所 の うち、国際海洋法裁判所 は、サハ リン資源 開発 に関連 して利用 され る可能性 がわずかなが らある。 これ は、資源 開発 が大陸棚上であること、及 び海底パイプライ ンが敷設 され る場合があること、及び事故 によ り海洋汚染が発生 した よ

うな場合な どによ り、 目口間の国際海洋法裁判所の管轄 下の紛争 とな りうるためである。

それ以外 の裁判所 は、本研 究会 の研 究調査の対象 にはな らないL ,

50

岩沢雄 司 『 w TOの紛争処理』 ( 三省堂 、1 9 95 年) 2 06 頁以下、特 に 21 1頁。

51

事件 の概 要について、 田畑 ‑太寿堂編 『前掲書』 ( 注 3 5 )3 3 9‑ ‑ 3 4 4 頁 ( 石本泰雄担 当) 参照. ⊃

52

小 田 『前掲書』 ( 注 47)83 頁以 下参照。なお、韓 国 との間の領 土紛争である竹島に関 し て、 日本政府 は 、1 95 4年 に韓 国政府 に対 して国際司法裁判所 ‑の紛争付託 を提案 したが、

韓 国政府 は これ を拒否 してい る ( 国際法事例研究会 『前掲 書 』 ( 注 1 1 )1 7 8 頁)。 また、 ロ

シア との間の北方領土問題 に関 して 、1 9 9 2 年 に ロシア政府高官が国際司法裁判所‑の紛争

付託 の非公式見解 を出 した ことが報 じられ それ に対 して外務省 当局者 は拒否す る姿勢 を見

(18)

二.投資紛争の国際法的解決方法

「 ‑ . 」で説明 したことは、国際紛争の平和的解決に関す る一般的な枠組みについてであ り、軍事紛争、領 土紛争、漁業紛争等、国際紛争のすべての分野に関わる問題である。 し たが って、これ らの紛争解決方私は、いかなる種類の紛争であれ今後 日本 とロシア との間 で国家間紛争が発生 した場合に、その利用が検討 され るべき原則的な紛争解決方法であるo

Lか し、 これ ら一般的な紛争解決方法に加 えて、個別の国際法分野 ごとに紛争解決方法 が発達 している5 3 。それは、関係各国が、上記のような一般的な紛争解決方法だけでは十分 な紛争解決が図れ ない と判断 して、あるいは より適切な紛争解決を 目指 して、個別 に紛争 解決方法を模索 した結果 に他な らない. したがって、一般的な紛争解決方法を基礎 と しつ つ も、個別の分野のみで用い られ る紛争解決方法 も含 めて両者 を複合的に検討 しなけれ ば 実際の紛争解決方法は理解できないことになる。

しか し、前述 したよ うに、本来、実体規則 と紛争解決方法は密接に関係 してお り、特 に 個別分野であればあるほ どその関係は強い。実際にも、国際法上の制度 ・規則は、実体規 則 と紛争解決方法の両方 を、個別の条約制度 ごとに縦割 り的に説明 され るのが一般である

54。

本稿 では、実体規則の詳細は次年度以降で取 り上げることと しているが、そ ういった実体 規則 を全 く無視 して紛争解決方法を説明す ることは困難であ り、特 にその分野固有の問題 点が関係 している場合には、そ うである。

そのよ うなことに鑑み、ここでは、国際投資紛争に関する特別 の紛争解決方法について、

必要な範囲で実体規則 にも言及 しつつ、説明 しよ うと思 う。

せた との報道がな されているが、事実関係 自体疑わ しい部分があるよ うである ( 塚本孝 「日 本 と領土問題 一北方領土問題の国際司法裁判所‑の付詑 ( 上 ) 」『リファレンスJ l 5 04 号

( 1 9 93 )5 2‑53 頁) 。いずれにせ よ、 日本政府が、一般 に国際紛争 を国際司法裁判所 に付 託す ることを一切否定す るとい う考え方を有 しているわけではない ようである。

53

例 えば、貿易に関す る紛争については、世界貿易機 関 ( wワo) が詳細な紛争処理手続を 用意 している ( 岩沢 『前掲書』 ( 注 5 0) 参照) 。国際紛争 とは言い難いが、人権侵害につい ては、例 えば 1 966 年 「 国際人権規約 B 規約」な どの人権委員会が問題を取 り扱 う権限を与 えられている

L

‑また、環境分野であるが、オゾン層保護に関す る条約制度が、一方で通常 の紛争解決手続 を用意 しつつ ( 1 985 年オゾン層保護 ウィーン条約 11条)、他方で義務の不 遵守があ/ ̲ 'た場合の不遵守手続 ( no n‑ c o mpl i a nc epr o c e dur e ) を作成 してお り ( 1 987 年モ ン トリオ‑/ レ議定書 8 条に基づ く不遵守手続規則)、地球環境保護 とい う特別な 目的のため の特殊 な紛争解決方法 として注 目されている ( 臼木知史 「 地球環境保護条約 における紛争 解決手続の発展‑オゾン層議定書の 『不遵守手続 J ]の機能を中心に ‑ 」杉原編 『前掲書』( 荏 47 )1 67 頁以 F 参照 )。 .

5

4例 えば、投資に関 して樫井 『前掲書』 ( 注 3 )209‑25 2 頁参照。

(19)

1.外交的保護権

私企業 に よる国際事業活動 をめ ぐる紛争 は、武力紛争 ・国境紛争な どの よ うな通常の国 家間紛争 とは異な り、前述 した よ うに元来的に国内法上の紛争である。 しか し、相手 国が 外国人の行 う事業活動等 に関 して国際法の要求す る一定水準の保護 を与 えない ( 国内法上 の紛争 を適切 に解決 しない) よ うな場合、その本 国は、相手国に対 しその保護 を求めて外 交的な手段 を取ることがある. これ を 「 外交的保護権 ( r ig h tofdi pl omat i cpr ot ec t i o n) 」 とい う。つま り、外国事業者 ・投資家の本国は、元来的には国内法上 の紛争 を、外交的保 護権 を行使す ることによって、国家間紛争へ切 り替 えることができる。言い換 えるな らば、

こ うい った国内法上の紛争 を国際法の土俵 に置き換 えるための特別 の制度が、外交的保護 権である、 とい うことができる。

この外交的保護権 をめ ぐっては 、1 9 世紀以来、 自国民の保護 を要求す る投資母 国 と、本 国の干渉 を排 除 し当該紛争 を国内紛争に押 しとどめよ うとす る投資受入 国 との主張のぶっ か り合い と、国際判決の積み重ね により、その保護の内容 と程度 に関す る実休規則 と外交 的保護権 に関す る詳細な規則が形成 されてきた。通常の国家間紛争の解決方法 とは異 な る 特別 の仕組み として、 ここで この外交的保護権の問題 について触れ ておかなけれ ばな らな い。

(1)外交的保護権 の国家性

国内法上の紛争 を国際法上の紛争‑ と転化 させ るための論理 としての外交的保護権 を行 使す ることは、国際法の観点か ら見てい くつか注意 しなけれ ばな らない点がある。

第‑ に、 自国民が相手国の国際法上 の違法行為によ り損害 を受 けた場合であって も、そ の被害者 は国際法上は国であ り、 当該 自国民ではない とい うことである。 .つ ま り、国が主 張 しうることは、 自国 自身の国際法上の権利 について とい うことである 5 5 L l

5 51 924 年 「 マ グロマチス特許事件 ( 管轄権)」 ( ギ リシャ対イギ リス)常設国際司法裁判所 判決 ( P C. Z JSe T l ' e sA, No . 2, at1 2);1 929 年 「 セル ビア公債事件」( フランス対セ / レビア) 同裁判所判決 ( P C . Z JSe y l ' e sA No . 2 0 .at1 7‑ 1 8);1 939 年 「 バネ ヴェジス ・サルヅテ イ スキス鉄道事件」 ( エ ス トニア対 リ トアニア)同裁判所判決 ( P C. I . J. Se T l ' e s A, B . No . 7 6 . at 1 6) な どを参照で

「 マ グロマチ ス特許事件」は、ギ リシャ人マプロマチス氏が 1 91 4 年にオスマ ン ト′ レコ政府

か ら与え られ た鉄道 ・水道事業の特許等の効力を、第一次大戦後に現地 を委任統治下に置

いたイ ギ リス政府及びパ レスチナ行政庁が否認 した ことについて、その本国のギ リシャが

イギ リスを相手に損害賠償 を求めて一方的に ( 合意 によらず)訴 えた事件である。上記判

決 ( 管轄権)では裁判所 は一部 について管轄権を認 め、後 日な された本案判決では損害が

(20)

第二 に、 したが って、外交的保護権 を行使す るか ど うか、つま りその国家 自身 の被 った 損害 について の賠償 を相 手国に求 めるか ど うかは、その被害国の判断 による ものである。

つ ま り、損害 を被 った民間人が希 望 しな くて もその本 国政府 は相手国 に対 し責任 を追及 し うる し、逆 に民間人が希望 して も、政府 の政治的判 断 に よ り相手国に責任 を追及 しない と い う選択 も可能 である 5 6 L l

第三 に、国が相 手国に対 して要求す る賠償 責任 は、 あ くまで も国が被 った損害 につ いて であるか ら、仮 に勝訴 して賠償金 を受 け取 って も、それは 当然 に国有財産 となる

57

。実際上 は、その請求額 は、 当該個人の被 った損害額 と同額 で あるが多いが、あ くまで もそれ は便 宜的な ものにす ぎな

い 58。

生 じた事実はない と して、ギ リシャの主張を退けた。

「 セル ビア公債事件」は、セル ビア政府 が 1 895 年か ら 1 91 3 年 にかけて発行 した公債 の支 払い条件 をめ ぐる公債所持者 ( フランス人) とセ ル ビア政府 との間の紛争 を、 フランス政 府 が取 り上げ、セル ビア政府 と合意の上常設国際司法裁判所 に紛争付託 した事件である。

裁判所 は フランスの主張 を支持 した, ,

「 バネ ヴェジス ・サルヅテ イスキス鉄道事件」は、エ ス トニアが 自国企業の被 った損害の 賠償 を求 めて リス トニアを 「 選択条項の受諾宣言」 に基づ き一方的に常設国際司法裁判所 に提訴 した事件 で ある。 この事件 の経緯 は複雑 である。バネ ヴェジス ・サル ヅテ イスキス の路線 を所有 していた鉄道会社 (ロシア法人)が 、1 91 7 年 の ロシア革命 によ りソ連 に よ り 国有化 されたが 、1 91 8 年に独 立 したエス トニア とソ連 との 1 92 0 年 の条約 によ り、 ソ連に よ り国有化 され た上記鉄道会社 を含むい くつかの株 式会社 の株式 をエス トニア政府 に引き 渡す ことが約 束 され たO この条約 を受 けて、上記鉄道会社 は 、1 9 23 年 に株 主総会 を開きエ ス トニア法人 と して登記 され ることを決定 した。 ところが、上記路線 は リス トニア領 内に あ り 、1 91 8 年 に リス トニアは これ を接収 していたため、上記新会社 は リス トニア政府 を相 手にそL J ) 路線 の返還 ( 後 に補償)を求めたが、 リス トニア政府 は 1 93 3 年 にこれ を拒絶 した

そのためエス トニア政府が、 リス トニア政府 を相手に提訴 したのであるO結局、裁判所 は、

リス トニア国内での救済が尽 くされ ていない として、エス トニアの請求 を退 けた。

これ らの事件 につ いては、田畑 ‑太寿堂編 『前掲書』 ( 注 3 5 )22 9‑23 3 頁 ( 土屋茂樹担 当)、

23 4‑236 頁 ( 竹本正幸担 当) 、3 05‑‑ 3 0 8 頁 ( 芹 田健太郎担当)参照。

56

田畑茂二郎 『国際法 Ⅰ ( 新版)』 ( 有斐閣 、1 97 3年) 47 4 頁(

57

田畑 『同上書 』475 頁O実際には多 くの場合被害者個人に補償金が与 え られ てい る。

58

1 928 年 「 ホ′ レジ ョウ工場事件」 (ドイツ対ポー ラン ド)常設国際司法裁判所判決 ( P C. I . J Se T l ' e sA,No.1 7. at 28) 。 この事件 は、第一次大戦後 ドイ ツ領 土の一部が、条約 に基づ きポ ー ラン ドに割譲 されたが、その条約 に違反 してポー ラン ドが同地域 内の ドイ ツ人財産で あ るホルジ ョウ工場 を収 用 した事件 である。 この事件 に関 してい くつかの判決が下 され たが、

上記 1 9 28 年判決 は、ポー ラン ドが負 うべ き賠償 の金額 と方法に関す る ものである。この事

件 の概 要について、田畑 ‑太寿堂編 『前掲書』 ( 注 35 )2 97‑3 01 頁 ( 石本泰雄担 当)参照。

参照

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