間接費の配賦と原価調整の原則
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間接費の配賦と原価調整の原則
山下正喜
は じ め に
原価計算の主要手続は,製品単位原価を算定することにあり,原価計算の 目的は,これを価格決定計算とか財務諸表作成などに利用することにある。
製品単位原価を算定する場合に,一般に間接費はある配賦率によって製品 に配成されるが,これによって必ずしも妥当な製品単位原価が算定されると は考えられていない。すなわち,ある製品単位のみに消費された原価を集計 し,製品単位原価を算定するのであるが,配賊率による間接費の配賊はある 製品単位のみに消費された原価を必ずしも示さないからである。その結果,
とくに経営意思決定の領域において,このようにして算定された製品単位原 価を資料にすることは誤った意思決定を導き,これに代るものとして直接費 のみの単位原価に基礎を置く直接原価計算が用いられるようになったのは周 知のところである。
もっともある配成率による間接費の配奴が,ある製品単位のみに消費され た原価を示し,妥当な製品単位原価が算定される場合もあるが,このような 場合は実務では少なく,また多品種製品生産企業が一般的である実際におい ては妥当しない。
そこでこのような間接費の配賦に代るものとして,原価調整の原則(Das Prinzip deskalkulatorischen Ausgleichs)による間接費の配賦が主張され る。
本稿の目的は,さきの間接費配賦はどのような根拠にもとづくか,その欠 陥はどこにあるか,とくに連結生産における間接費配賦の限界はどこにあり,
原価調整の原則とはどのようなものであり,どのような根拠にもとづくもの であるかについて,リーベルの見解1)を中心に検討することにある。
2 7 6
経 営 と 経 済目 次
1 .
日]技賀配賦均等の原則2 .
原価配賦の限界3 .
原価調整の原則4 . 製品・製品グノレーフ
05]Jjの収益計算における間接資負担に対する結論
1 .
間接貨配賦均等の原則( 1 ) 原価計算において製品単位原価を算定するにあたり,一般に直接賀は 製品に直接賦課し,間接 i t l はこれを各製品に配賦率をもって配賦する
Oこのよ うに間接貨を配賦率によって各製品に配賦する方法を,ここに間接賀配賦均 等の原則 (DasP r i n z i p d e r G e m e i n k o s t e n a n t e i l s g l e i c h h e i t ) 2 ) という
O単一品種製品生産企業の場合は,製品単位原価は総原価÷生産数量によっ て,妥当に算定できるとされている。しかし乙の場合でも,在庫や減価償却 費の問題を考慮外においてのことであり,また平均原価にもとづいて初めて 算定され販売価格に依存すると乙ろの生産・販売数量が事前にわかっていな ければならない。
乙の単一品種製品生産企業以外の場合一ーたとえば多品程製品生産企業の 場合一ーには,先の間接買配賦均等の原則によって,間接賀はある配賦率に よって製品に配賦され製品単位原価が算定される
Oたとえば各製造部門の間 接賀である電力の消賀は,各製造部門に取付けられてある電力メーターによ り測定され,電力資は各製造部門の消i5:メーターに比例して配賦される o 他 の間接賀もこれに準じて,製品の間接賀消買をできるだけ正確に示す配賦基 準をさがし,それによって配賦される。
しかしながら,たとえば間接買である工場長の給料を各製造部門へ配賦す
る場合のように,その消費を正確に示す適当な配賦基準が見つからない場合
は,各製造部門の負担能力などによって配賦する
D乙の場合,工場長の給料
の各製造部門への配賦分と各製品の生成との聞には,鉄と鉄鉱石のようには
物理的・技術的な因果関係ははっきりと認められない。
間接費の配賦と原価調整の原則
277( 2 ) このように製品の原価算定の場合重要なのは,原価を製品に負担させ る物理的原則と関係である
O長い間,ある製品のために発生した原価はこれ を負担させねばならないと考えられていた
Oすなわちコジオーノレのいう原価 発生原因原則 (V
町u r s a c h u n g s p r i n z i p ) がこれである 3) 。 そ こ で 製 品 と そ のための間接費消費の関係が明らかでない場合,ある比例関係を推定し,こ の推定された比例関係‑配賦率によって消費された間接買を算定する
Dしかしながら1"最近までこの原価発生原因原則が会計においてどのよう に解沢されるか,間接費配賦率が原価発生原因原則に妥当しているかどうか をどのような規準で判断できるのかは未解決のままにされてきた。そのうち に厳密な因果関係という意味における原価発生原因原則による間接貿の配賦 は,少くとも固定間接買の場合は適用されず,また連結生産においては,変 動間接賀 ( v a r i a b l eVebund Kosten) の場合も適用できないという見解が 有力になってきた。研究開発費や広告宣伝費のようにサービスの使用部分が 測定できない場合が多いし,また経済性や便宜性の理由から測定をあきらめ ることも多い 4) 」のである。
( 3 ) このような原価発生原因原則をさらに押し進め1"生産過程の因果関 係、を正確に分析した結果,生産要宗の投入は,一定の生産過程のもとでは,
製品の生成と消費財の消滅,使用財の使用の二つをもたらすところの原因の 複合体を意味していることがわかったノ」のである 5i
Oこの説によれば「製品の生成と消費財の消滅・使用財の使用は全く別もの であり,両者の問には因果関係もなければ,目的関係もないということにな る
Oしたがって原価の製品への振替は,原価発生原因原則によって悲礎づけ られもしない
6~ 'Jことになる
O( 4 ) とのように間接買の配賦は1"価値 1 2 消と価値生成が技術的な因果関 係にある時ではなくて,経済的な閃係にある時に,とくに物理的な関係が,
たとえば累進課税のような非比例的な関係によって変更を加えられる時に認 められる
7〕」のである
Oここに経済的な関係とは,たとえば原価の不利な補完財がr j J:i見で十分な価
格を得ることができない時は,回収されない原価は仙の製品にその負担能力
2 7 8
経 営 と 経 済に応じて配賦されるような場合であり,このことはリーベ
j
レによれば,国の 財政の必要を市民や一定の組織に税金の形で負担させるのと全く同じよう に,経営政策的に目的にかなっており,必要でもあるo
この場合,どのよう な配賦率が用いられるかは政策的決定の問題であるO ここに一義的に決まる 証明可能な配賦と主観的目的志向的配賦とは,明確に区別されねばならな( 5 )
さらに間接買とくに固定間接投の配賦を困難にしているものに,固定 資そのものに対する考え方があるO 固定資は企業の本質から考えて配賦すべきものではなくて,総額として回収すべきものであるというO
これについて変動究+固定資+利益=価格とする考え方と,価格一変動資
=限界利益,限界利益‑固定資=利益とする考え方があるD もともと企業は
Unternehmung
であって,ある事を企て(固定資の投下) ,それがうまく いくかどうかは未知のことであるD 乙の本質問からするとまず市場で実現し た価格があり,企業はそれから変動買を回収し,なお残余(限界利益)がも しあればそれから固定資を回収するのであって,残余がなければ回収しない のが本来の考え方であるo
勿論変動資も回収できないのであれば,一般に企 業はその生産を中止すべきであるo
乙の考え方とは逆に固定資を先取りし て,各製品に配賦算入したものを価格と考えるのは企業の本質観からはずれ ているo
乙のことについてシュマーレンバッハは
I
二次的費用(間接費〉は利益 (限界利益)によって回収するのが正しい9
〉」と既に早くから指摘してい るI
製品の原価( S e l b s t k o s t )
は,乙の製品を生産する乙とによって発生 した原価であるD 固定資は個々の製品の生産によって発生するものではない から,個々の製品の原価ではない。製品単位の生産費を操業度のすべての段 階で帳簿から知りうると乙ろに,正しい原価計算の長所があるo
経営者は注 文を受けると,瞬間,その注文にかかる二次費用がわかるから,直ちにその 注文の引受価格を算定できるのである10)0J
また「下部経営は利益をあげる必要はなく,損失が出ていることも知って いるが,全体経営はできるだけ高い利益をあげるべきであり,固定資を回収
間接買の配賦と原価調整の原則
2 7 9
するための貢献額を各製品から得なければならない。この貢献額は常に同じ 額である必要はないが,とにかく乙の貢献額の総額で固定資を回収すべきで ある11〕」として原価調整の原則を明瞭にのべているO さらにジュマーレン バッハは商品には比例費だけを賦課し,下部経営の固定資は、商品勘定の総 売上利益を振替えるところの損益勘定に直接集計すべきであると主張してい
る12)
。
モーラーも同様に,っきのようにのべている[""経営は,製品価格によっ て固定費を回収すべきであるが,製品に算入する固定資部分は経営内部的観 点より決定すべきではなく,製品によって得られる価格,販売数量によって 決定すべきである
13)
0J
このようにして間接買配賦均等の原則について,簿記係、や法律家などの間 接費回収のための配賦率は,製品単位について同一でなければならないとす る主張は,実務では失敗の宣言を受けている。また
LSOのような国家価格
決定規定は,利益を決定するには不適当であるのみでなく,それより以上に 企業に不経済性をもたらすのであるD さらに会計の素人だけが価格を原価と 結びつけて[""妥当な価格」を具体化する望みに専念するO一定の配賦率による統一的な賦課は,正しさとは関係がない。各人への一 様の課税を誰が正しいと思い,収入,財産に比例した一定比率の課税を誰が 正しくないと拒否できるだろうカ
314
。〉2 .
原価配賦の限界間接費を合理的に配賦することは困難な場合が多いが,その原因となって いる支出の期間配分という観点からも少し,この問題を詳細に検討し,製品 単位に賦課しうる原価ばどういうものになるかを明確にしてみよう。
(1) 間接買のもっとも大きなものは建物,機械その他の経営準備賀'であ る口これらは不確実な期待にもとづいて,経営のかなり先の期間を見越して 一皮にまとめて調達されるのであって,材料のように製品をつくる皮に分割 して賊入するというわけにはいかなし
J
町。材料は製品をつくる度に問入さ れ消賀されるので nbi入と mï~ は一致するが,機械は毎年の期待使用と呉なる280
経 営 と 経 済 場合がしばしば生ずる o ここに製品生産量は少なく機械伎用も少ないが,機 械は使用しなくても減価し,償却費として計上されるので,伎用していない 減価償却賀の分まで製品に負担させねばならない不合理さが生ずる口機械の 購入原価を耐用年数 l 乙分割し製品に負担させることと製品の機械伎用分は,
製品生産数量の変動が激しければ激しいほど関係がなくなってくる。
さらに減価償却賀の配賦可能性の問題を困難にしているのは,絞械の耐用 年数である
Dこれは予想と異なり極めて不確定であり,その廃棄によって初 めて知りうるから,耐用年数が後からわかる場合は,投資支出を各期間に分 割配賦することはできないのである
D( 2 ) つぎに貯蔵できず時聞に非時力的な生産要素についても,建物の場合 と同様のことがいえる。急速な技術・経済的進歩にもとづく経営手段,研究 成果,市場関係とその経験や貯蔵できない原材料の場合は,それらを持って いて使わないでも効用は消滅していくのである口したがって既に過去に支出 したが貯蔵できず現在使用できないもの (埋没原価) は , 現在の製品単位 に配賦できないのは当然である 16) 。
人件費も貯蔵できないサービスの一つである。このことから労務買は経営 準備賀に属し,製品単位に配賦できないという見解がなお有力である
Dさら にこのことは労働力の貯蔵不能によるほかに,労働協約や市場状況にもその 原因がある 17) 。
( 3 ) 第 3は,賃貸借契約,特許権に関する契約その他サービスの受渡契約 の場合である
Oこの場合は,利用期間や法的拘束期間である一定の契約期 間が取決められ,企業はサービスを受ける代りに契約報酬の支払義務が生ず る。乙の契約代金の総額は,常に契約期間,拘束期聞に全部あるいは受けた サービスの総量に原価として賦課されるのは当然である。したがって契約期 間を細分した期間あるいはサービスを細分した部分を考えると,契約代金の 総額はこれらに対して共通賀となるから,困難な問題が生ずる 18) 口
( 4 ) 研究開発費,経営組織改善賀,市場開拓賀などの無形投資の場合は,
建物などの有形投資の場合とは逆に後から利用期間を算定することはでき
ない。したがって無形投資への支出総額が, ど の 期 聞 に ま た ど の 製 品 の た
間接買の配賦と原価調整の原則
2 8 1
めになされたかということをいうことはできない
19)
( 5 )
多品種製品生産企業では,投資支出が特に一定の製品ク勺レーフ。あるい はある製品種類のみになされることがあるD 乙の製品グノレーブ。のための特別 の投資支出は,勿論,その製品クツレープに一義的に配賦できるけれども,そ れもその支出の利用期間中に生産された製品総量に対してであるD たとえば これは一定の製品ク勺レープに対して支出された研究開発賀などであり,この 研究開発費はこの製品ク勺レープに属する製品種類という全体に対して配賦さ れるのであって,個々の製品に任意に配賦できないのである20)
。以上,期間に共通になされた支出を細分する場合の問題点を考察してきた のであるが,これまでの暦日の計算期間による伝統的な会計においては,す でにリーガーが明瞭に指摘しているように
21)
利用期間やその他多くのも のを計算上,任意に分割してきたのであるO たとえば会計の通常の計算期間 であるl
年が,原価計算では1
か月に分割されるO問題とする期間が短くなればなるほど,配賦できない期間間佐賀は大きく なる O この分割された ~JJ 問に,発生原因からみて配賦できない支出は,当 然,各製品種類,各製品単位にも配賦できない。
すでに今世紀にかけて認識されていたように一部の原価は,生産される製 品の種類と数量とは独立して発生し,したがってこの実際に生産された製品 に配賦できないという基本的な考えを首尾一貫して持ち続けることのみが主 要であったD
( 6 )
それでは最後に,製品単位に賦課しうる原価には一体,どういうもの があるのであろうか。リーベノレによれば,つぎの条件を充す場合l
こは,製品 単位へ原価を賦課できるのであるが,それは原価の中でごく限られた部分と なるD1 .
原価財がその調達時ゃれH~時に,製品一単位の 1ìlj1~ と一致するように 配量できることO2 .
製品一単位に必要な原価財の j百貨数量は,その HIllt入総額からこの消~数量分の価額が一義的に分割計算して鉱山できるかぎり,その製品ー単位の 直接民となり,製品に賦認されるO すなわち,この
1 P 1 1 1
数虫の価額が(数丑282
経 営 と 経 済割引やその他の値引などがなく)同じ仕入先から賠入された他の数量や他の 原価財と関係、がない場合である
O以上,原価を製品単位へ賦課するには,
1.2の両方の条件をともに充して いなければならない口一定単位の製品に対する原価財の消賀数去を把握でき れば,直ちに貨幣額による原価の賦課ができるという考えが,会計専門家の 問で広く浸透しているが,これは誤りである
Dさきの条件 2の価格の一義性 が欠けている場合,すなわち支出が一義的に分割できない場合は直接消賀が 測 定 で き る の み で あ っ て , 直 接 賀 は 問 題 と し て 浮 か び 上 っ て こ な い の で あ
るに
3 . 以上のほかに,つぎの場合は原価を容易に製品に賦認できる o すなわ ち支出が
① 生産数量に比例する個数または重量の特許料の場合のような製造数量
② 販売数量に比例する特許料や消賀説の場合のような販売数量
③ 取引高に比例する報酬,仲介手数料,特許料のように販売された製品 の価格
に直接結びつく場合である o
この場合,測定されるべき原価財消費は,直接製品と結びつく支出にもと づいているから,製品単位に賦課する原価の算定に対して,原価財消貨の把 握は重要でないのである 23) 。
さてさきの条件1, 2 の場合には,具体的につぎのような原価が製品単位 に賦課しうる o
単一品種製品生産,等級別製品生産の生産買の中で,材料貨と動力資だけ が,生産数量と比例する場合に限り,一義的に製品単位に賦課できる
Dこの 場合,ロット呈などに依存しないで発生するような材料究,動力安はのぞか れる
Dこれに対し,原価部門で計算上間接賀として把握される 24) と 乙 ろ の 補 助 材料費や動力賀は,使用量と密接に関連する配賦率が見つかれば,製品単位 に賦課できる原価に含めてよい。
連結生産の場合,製品種類や製品単位に賦課できる原価は,製品の分類に
間接貨の配賦と原価調整の原則
283
もとづいてグループ分けされた原価種類に限定される。.
販売買については,通常,販売数量に比例して支払われる特許料,消費 税,取引高に比例して支払われる問屋の手数料,組合の分担金などだけが,
一義的に賦課できる
o
発送荷造費および運賃は,一一比例的な場合はまれで あって一一,製品ー単位だけの輸送契約の場合にのみ賦課できるo
というの はこの発送荷造費および運賃は,一般には輸送重量や個数に比例しないから である2 5
)
。3 .
原価調整の原則( 1 )
原価計算において間接買の大部分は,製品単位に配賦できないことを やや詳細に考察してきた。このことは中でも固定間接買について,生産され る製品の種類,数量とは独立して発生することが既に今世紀の初めにかけて ドイツ,イギリス,アメリカで認識されていた。固定間接賀を製品単位に配 賦するところの全部原価計算が経営意思決定の領域で役に立たないばかり か,誤った決定に導くことがわかり,固定費配賦問題に急速に関心が集ま り,固定買を個々の製品に配賦しないで,期間で一括して差引くという形式 の直接原価計算( d i r e c tc o s t i n g )
が用いられるようになったのは周知の事 実である。ドイツでほ乙の直接原価計算の構想ばまずシュマーレンバッハによって 主張されたが
26)
つ づ い てJohannF r i e d r i c h Schar
,Herbert P e i s e r
,Kurt Rumme1 27 )
など多くの学者によって,その見解がのべられたD 彼等はさらにこの直接原価計算の基本的思考を発展させて第二次大戦後,売上から 比例直接貨を控除して固定費回収に貢献する部分(補償貢献額)を芥出する 方法や
28)
固定貨を段階的に回収していく計算システム29)
を開発した。このような計算システムはアメリカでは周知のように直接原価計 t.~ として 展開され製造直接貿,製造変動間接貨を製品原価
( p r o d u c tc o s t )
,製造固定 間接貨を期間原価( p e r i o d c o s t )
とし,売上一製品原価=限界利益,限界 利益一期間原価=利益という計算段階がとられた。2 8 4
経 営 と 経 済1952年, H. C.
P l a u t
はKurtRummel
やアメリカの直接原価計算に強 い影響を受け, 固定資を製品に配賦しない限界計画原価計算( G r e n z p l a n ‑ k o s t e n r e c h n u n g )
のシステムを発表した。このシステムはとくに H.‑H.B
りhm
やK
i1g e r 30)
によっていっそう展開れた口( 2 )
原価計算において間接貨の配賦が困難な乙とから,直接原価計算のシ ステムが考案されこの問題が克服され期間利益計算,セグメント別利益計 算,利益計画,価格決定,原価管理など様々のものに適用され経営問題の解 決に役立っているのであるが,また他方ではリーベノレによると,原価調整の 原則(DasP r i n z i p d e s k a k u l a t o r i s c h e n A u s g l e i c h s )
に よ っ て 間 接 買 を 調整して配賦し,製品単価を算定し経営問題に役立てなければならないといつO
原価調整原則は製品価格にその直接:mを賦課するから,あくまでも原価原 則を離れるものではなし」この直接賀以外の間接貨はブロックとして,販売 責任者(もしくは価格政策の責任者)に課せられるO 販売責任者だけが販売政 策の上から全体を見渡して,どの製品やどの市場が間接買を回収するに十分 の需要をもたらすかを決定するために必要とされる専門的な知識や必要な経 験を持っているからである
31)
この場合,配賦できない間接貨や希望の総利益を考察して,原価の調整計 算が行なわれる。したがって,製品ー単位の間接買を回収するのに必要な額 は決して同一額ではなく,また同一公式,同一基準で計算される必要はな い。むしろ製品生産の準的資を含めて全部の原価を回収し,利益をもたらす ことだけが問題なのであるO シュマーレンバッハが今世紀の初頭にかけてこ のことを指摘している乙とはすでにのべた
32)
。この間接資回収原則を文献 ではまた,A u s g l e i c h s k a l k u l a t i o n
,S o r t i m e n t s k a l k u l a t i o n
,Konpensa‑
t i o n s k a l k u 1 a t i o n , P r e i s p o l i t i s c h e r A u s g l e i c h , s e l e k t i v e P r e i s u n t e r b i e ‑ tung
,p r e i s p o l i t i s c h e G e w i n n d i f f e r e n z i e r u n g
,1 0 s s1 e a d e r ‑ s e l l i n g
,i n n e r b e t r i e b l i c h e r Gewinnausgleich
と呼んでいるD( 3 )
さてこのような原価の調整計算は様々の場合が考えられるがたとえば 個別にはつぎのものの問でなされるO間接買の配賦と原価調整の原則 285
1 1 .
同一製品種類の様々の販売形態や包装量の聞において2 .
同一製品種類の様々の使用目的の聞において3 .
同一製品グループの様々の製品聞において4 .
稔々の製品ク勺レープ聞において5 .
様々の注文数量(同一額の注文数量あるいは,同一得意先の総注文数 量)聞において6 .
様々の買手グループ聞において7 .
枝々の販路聞において8 .
枚々の販売領域聞においてE 継続する期間の聞において(期間的な原価計算の調整
)33)
( 4 )
乙のようなものの聞に行なわれる原価の調整あるいは収益の調整は,とくに販売市場における競争が何らかの形でなされる時には,販売政策の原 理として重要である。企業は買手に対する競争によって,単一製品のみでは なく,迫結製品によっても,企業に販売努力の成功あるいは失敗に目を向け ざるを得なし
134
〕。そこで製品に同じような配賦率を用いて原価計算をし価 格政策に用いていたのでは,市場でいろいろ適応の必要が生ずるから,競争 においても失敗するに違いないという結論に達するD同じように鉄道の賃率政策も始めから,この原価調整の原則によって支配 されていた口というのは原価の大部分を占める固定貨は,鉄道のサービスと 生産需要の両面からみても密接に結びついており,この固定資と直技賦課で きる原価部分とでは,原価計算上,この原価調整原則によるよりほかに
1 2
率政 策を推し進める解決法はなかったのである35)
。同様のことは,交通関係の 他業種,ガス,f E
気事業,その他のサービス供給事業の運賃,価格政策にも 妥当するo
この原価調整の原則はまた,高い経営準備賀,述結生産,辿結需要と関係 する他のすべての栄程の経営には,経済的側面より必要であり,また銀行業 や商業にさらには工業とくに材料究がわずかの工業や連結生産の工業にも必 要である
36)
。他方,原価の調整原則は,回定~~が原価の大部分を占める企業のみでな
2 8 6
経 営 と 経 済く,またとくに連結生産の場合に生ずるような変動間接賀が原価のかなりの 部分を占めるような企業にも妥当するロ連結需要の場合には,一製品,ー注 文に直接賦課できる原価をすべての場合において価格,売上によって全額回 収することをあきらめねばならないことが多い。この場合,その製品・注 文の直接買の回収されない部分を原価の調整の中に含めることが必要である
o
またこの原価調整原則は,二,三の学者が考えているような短期のみでは なく長期にも妥当するのである
37)
。さて以上のことから,すべての製品に間接賀を一様に負担させることは‑
経営準備の使用に応じであるいは何か他の必要な主観的な配賦率によって 一,価格を上まわる原価が算出されたりして,しばしば多くの製品の生産を あきらめさせることになるし,多くの生産要素の使用可能性をくみ出し得な いことがわかるD したがってこの原価調整原則は,最大数量の売上を達成 し,生産能力を最大限に利用し,製品単位あたりの最低資用で生産する方法 を見出す最良の手段となるのである
38)
。4 .
製 品 ・ 製 品 グ ル ー プ 別 の 収 益 計 算 に お け る 間 接 賀 負担に対する結論( 1 )
以上考察してきた原価調整原則は,一見,価格政策に適用される原則 のみのように考えられるが,同時にまた全部原価計算の領域における間接貿 配賦原則でもあるD リーベノレによれば,原価・利益計算には明らかに対立す るこつの見解があるO 乙の二つの見解は対立はするが,決して互に排除した りすることはなく,最終的には基本的に区別できないものである却に第一は間接買の配賦を原価・利益計算において拒否するグループの見解で あるO 乙の方法では周知のように,売上から比例直接賀だけを控除して補償 貢献額を算定し,間接費は一括して(直接原価計算〉あるいは補償貢献額を 数段階に分けて計上する多段階の計算システム(多段階の直接原価計算)に
おいて回収する
40)
。これに対し,固定資の客観的配賦ができないことを認識しているが,少く
間接費の配賦と原価調整の原則
2 8 7
とも一定の計算目的のためには,固定費を製品やその他の計算対象へ配賦す ることをあきらめない学者が第二の見解に属する
o
この見解では,間接費を 計算対象から得られた補償貢献額との関連で,原価の調整原則にもとづいて 配賦するのである41)
。( 2 )
さきに間接費配賦均等の原則がいろいろの観点からいかに不合理であ るかということ,原価調整原則が,いろいろの観点から考えて合理的であ り,価格政策的にも必要であることを考察したが,この原価調整原則の根拠 をも少しさぐってみようo
Kurt A l b r e c h t
によれば,連結生産の場合は連産品の利益も結合してい るから,すべての製品は売られるかぎり成果の分配にあずかるものであり,売上全体で利益を出すとしたら,たとえ二,三の製品が連結原価の負担に寄 与したとしても,他の二,三の製品がこの利益にあずからないのは正しくな いのである
42)
。同様に
HelmutWeber
はつぎのように明確にのべている。「固定資配賦 の欠点は,固定費を補償貢献額に比例して配賦することによりのぞかれるo
乙の配賦は,良い注文は多くの固定買を負担すべきであり,また負担できる という考え方にもとづいている。このようにして固定設を配賦すると,一注 文がプラスの補償貢献額を示す時には,損失は生じない。したがって企業家 がこのような乙とを知らなければ,販売計画からこの製品を除去したであろ
う危険はなくなる
43
〕」。乙れと似たような見解は,多くの学者たとえば
K l a u s Agthe
,P e t e r Heine
,Hans‑Hermann B
りhm
,F r i d r i c h W
i1le
,Wolfgang
,K
i1g e r
,Wolfgang
,O. B i s c h o f f
においてみられる叫にメレロヴイッツは補償貢献額による固定資の配賦を推めているが,つぎに 示すようにその中に直接原価計算と全部原価計算の結合として特徴のある固 定賀補償計算の本質的特徴がある
r
直接原価計算の長所は一つも示されて いない。すなわち,製品の原価負担能力を明らかにし,販売原価を市場l乙最 もよく適合させるところの限界原価や補償貢献額により固定貨を配賦するの であるD288
経 営 と 済 済配賦率によらないで直接賦課されるかぎり,製品・製品クツレープ,原価部 門に配賦される固定資の本質的に正しい処理は可能である。
他方,製品別計算が全部原価計算として可能となるようにして,しかも固 定費が補償貢献額に応じて各段階で製品へ配賦されることによって,段階的 直接原価計算は行なわれるのであるD その固定資を配賦(回収)した後の残 額が達成されたあるいは達成可能な純利益である
45)
0J
コジオーノレは,実務で大きな役割を演じ,一般に受入れられているところ の原価計算原則として,負担能力による原価の配賦をあげている
o
もっとも それは,因果原則によって製品と関連させて配賦する方法が役に立たない時 に適用されるo
コジオールはこの適用の例として,連結生産の原価計算や一 般管理販売買の配賦,さらに連結需要,補完財の場合における固定買の配賦を あげている口すなわち,原価の不利な補完財が市場で十分な価格を得ることが できない時は,回収されない原価は他の製品にその負担能力に応じて配賦さ れるのである46)
。連結生産においては,負担能力にもとづく配賦率によって連結原価を配賦 するのが長い間の習慣であった。連結製品が分離して単独で販売される時,
連結原価を売上に比例して配賦するというのはわれわれの原価計算のもっと も一般的な原則である(いわゆる市価比例計算あるいは市価による平均原 価計算
47))
。連結製品がなお加工を必要とする時は,完成原価控除売価法( S e l l i n g P r i c e L e s s C o m p l e t i o n C o s t M e t h o d )
が適用される48)
。( 3 )
このような原価調整原則による間接賀の配賦についての主張にもかか わらず,勿論,負担能力主誌による原価の配分については,全部原価計算,部分原価計算の両方の立場から批判がなされている
o
負担能力原則は価格計算,価格政策の領域に屑し,原価計算は原価発生原 因原則に従うものであり,負担能力による間接賀の配賦は必ずしも原価発生 原則に一致するものではなく,原価計算の精神とも一致しないD
そこでは使用比例原則による原価の配賦は,表面的にのみ原価発生原因原 則と一致するとみている。というのは,乙のようにして配賦された原価はそ の製品の生産数量の増減による増分原価・減分原価と一致しないからであ
間接費の配賦と原価調整の原則
289
る
o
さらに,使用比例原則による配賦率の選択は評価問題であり,配賦率の 選択には意識的にせよ無意識時にせよ政策がはいるという見解をもってい る。乙のような負担能力原則による原価の配賦に批判的な見解の人といえど も,それはいわゆる発生原因原則にもとづく配賦が困難にそうぐうすると ころで,あるいは無意味にみえるところでのみ適用されることを認めてい るo
そのような場合には,実際には負担能力の考え方のそのままの適用と実質 的にみなされていると乙ろの多くの配賦率を適用しているのであるD
たとえば,製造部門共通費や補助部門費を配賦される部門の賃金・給料総 額にもとづいて配賦したり,製品別計算において材料費,賃金の合計額によ り製造部門費の配賦率を算定する場合は,負担能力の考え方にもとづいてい るD これはたとえば等級別の運賃率算定の場合は,高価品は高い運賃率を負 担できるということから出発するが,乙の配賦率の背後には,明らかに高価 な原材料,高価な製品は高い間接費を負担できるという推測がひそんでいる ということにもとづいているのであるO
このように負担能力による間接費の配賦は,一定の問題たとえば評価問題 には役立つが,このようにして算定された製品原価や利益は企業の怠思決定 や管理には全く役に立たなし'10 この場合には,前に述べたように,間接貨を 配賦しないで,とくに固定資を一括して差引く直接原価計算のシステムが考 えられねばならなし
f 9 )
。お わ り に
以上,原価計算の最大の問題点である間接買の配賦について基本的な側面 より考察してきたのであるが,それは三つの考え方にまとめられる。(今ま で間接費と固定資を,同じ;百味に使用してきた場合もある
o
リーベノレは間接 買の阻賦問題といっているのであるが,問題点を明瞭にするために,ここで は間接費のうち固定資をとりあげることにするo )
( 1 )
固定資はすべて製品に配賦するO2 9 0
( 2 )
固定資は製品に配賦せず,一括して期聞に直課する。( 3 )
固定資は調整して製品に配賦するo
経 営 と 経 済
1.は従来の伝統的な原価計算の考え方であって,原価発生原因原則を基軸 とし,固定資をできるだけ製品のための消費との関連性を見出して製品に配 賦しようとするものである
o
2 .
はこの伝統的な原価計算が売上・利益の関係でとくに不合理な点がある ことを指摘して,固定資の貯蔵できない乙とに主点をおいて,固定買を期間 l乙一括して直接賦課しようとするものである。3 .
は従来の考え方をリーベソレがとくに改めて独自の立場から主張したもの であって,固定費そのものの性質,固定資の妥当な配賦基準が見つからない ことから原価発生原因原則によって固定資をすべて配賦しようというのは間 違いであるo
むしろ価格政策の観点などより,固定貨を負担能力によって配 賦すること乙そが経営の目的にも合い,原価計算の効果ある適用ができると するものである。さて以上三つの考え方の問題点をさぐってみようD
1. 売上,利益の関係
従来の原価計算では他の条件を一定とすると,次期へ繰越される製品数量 が多いと,製品単価に製造固定資が含まれているから,繰越される固定資も 多くなり,当期負担の固定資がその分だけ少くなり,利益が多くなるO つま り,繰越製品数量の如何によって利益が異なるのであるD これは固定資を当 期のみに負担させるか,一部今期,一部次期に負担させるかによるものであ
る 口
乙のように従来の原価計算では固定資の負担如何により,売上・利益が比 例しない場合があり不合理であったが,直接原価計算では固定資は期間で一 括して負担するので,売上・利益は比例し,利益計画その他に適用できるO
乙の売上・利益関係、の不合理さから直接原価計算が主張されるようになっ たのであるが,直接原価計算の基本的思考である固定買を当期に負担させる や否やということが,資産の本質論争にまで発展したのは,周知のところで あるD
間接賀の配賦と原価調整の原則
2 9 1
この直接原価計算の考え方は,従来の原価計算に代るものとして一般に認 められているところであり,利益計画,その他広範囲の経営問題に適用で き,それが税務など制度的に認められるかどうかが未解決の問題として残っ ている
o
2 .
直接原価計算の理由づけ( 1 )
直接原価計算の理由づけ,本質論争において固定費に関する諸々の問 題点が論じられた。その一つは固定費は製品原価とは全く別のものであっ て,企業本来の性質から限界利益があればそれから回収すべき性格のもので あるという乙とであるo
市価を一定とし,不況で生産数量が少なく,売上が少ない場合は,他の条 件を一定とすると,欠損が生ずることがある
o
つまり乙の場合欠損が生ずる ということは,この主な原因は固定資を回収しきれなかったと解釈した方が 妥当であろうO そして好況で先の例とは逆の場合,この固定賀を回収し欠損 をうめるのであるD また生産数量の増減によって商品価格が異なるというこ とは,一面では不合理であるO固定買は生産数量の増減とは無関係に発生するものであって,特l乙生産数 量が少ない場合,従来の原価計算の原価発生原因原則によると,使用してい ない固定費分まで少ない製品で負担することになり矛盾が生ずる
o
他方,政府の調弁価格の設定などの場合は,固定費をやはり配賦しなけれ ばならないからこの方法が適用されねばならない口
( 2 )
第二は固定貨の貯蔵性であるO さきに詳しくのべたように,建物から うけるサービス,人件貨などは貯蔵できない原価であるから,これを発生の 期間のみに負担させるのは当然であるO( 3 )
第一,第二が直接原価計算支持の積極的な理由とすれば,第三は原価 発生原因原則はすべての原価には適用できないという消極的な理由であるDさきにのべたように,たとえば研究開発貨や広告宣伝貨のように,製品生産 のための消!t!l分が測定できない場合もあるD また原価の消貨と製品生産とは 全く具った二つの事象であるから,原価の製品への賦認は,原価発生原因原 則によって基礎づけられないというD 乙の第三の理由も一般に認められると
2 9 2
経 営 と 経 済ころとなっているO
3 .
負担能力原則以上のような理由から従来の伝統的な原価計算に対して,新しい直接原価 計算の方法が提唱されてきたのであるが, リーベノレはこれに対して,間接賀 とくに固定資は原価調整原則によって配賦しなければならないという第三の 方法を主張するD
従来の原価計算においても,負担能力原則による原価の配賦が述産品計算 において連産品の市価に応じて総原価を配賦したり,あるいは製造部門賀を 配賦される部門の賃金・給料総額にもとづいて配賦することにおいて用いら れてきた
o
つまり従来の原価計算が原価発生原因原則による原価の配賦がどうしても できない場合に,負担能力原則を適用していたのに対し, リーベノレはさきの 固定資の性質や価格政策の目的から,固定資全般に原価調整原則を適用する のである。
リーベソレは原価調整原則による方法を第一の伝統的な原価計算方法に分類 しているのに対し,筆者は第二の直接原価計算方法に分類した方が妥当だと 考える
o
リーベノレによると原価調整原則による第三の方法は,原価発生原因原則の 否定,固定資の性質にその基本思考をおいているのであって,第一の原価発 生原因原則にその基本思考をおく伝統的な原価計算方法とは根本的に異なる のである