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III族窒化物による可視光光触媒の実現と応用

著者 中野 貴之

雑誌名 財団ニュース

巻 13

ページ 38‑40

発行年 2012‑01‑10

出版者 浜松科学技術研究振興会

URL http://hdl.handle.net/10297/6417

(2)

38 はじめに

光触媒材料は光に照射されることによって光励起された励起電子や正孔が、触媒表面に吸着した分子 を酸化や還元することにより、原子状酸素などの活性酸素を生成する。この活性酸素が触媒表面の有機 物を酸化して、水や二酸化炭素などの無機物にまで分解するといった現象を光触媒効果といい、この仕 組みを応用することでNOxの除去などの空気浄化、有機物分解による水の浄化や滅菌・抗菌などに利用 することが可能である。このような光触媒材料には一般的にはTiO2が用いられており、TiO2のバンド ギャップとなる3.2eVに相当する紫外線を照射することによって光触媒効果が発現することが明らかに なっている。しかしながら、紫外領域の光しか吸収できないため蛍光灯などの室内灯を用いた場合には 光触媒効果が発生しないため、室内でも光触媒効果を得るためには可視光領域における光触媒材料の開 発が必要である。

Ⅲ族窒化物材料は青色発光ダイオード(LED)の材料にも用いられているワイドギャップ半導体材料 であり、多くの研究開発が行われている。近年においては、InNとGaNの混晶材料であるInGaNにおい て光触媒効果が確認されており、新しい光触媒材料として期待されている。InGaNはInNとGaNがそれ ぞれ0.65eVと3.4eVといったバンドギャップを持っており、理論上は混晶させることによって0.65〜

3.4eVの任意のバンドギャップ材料を作製することが可能である。このため、可視光領域での光触媒材 料と有望な材料といえる。可視光光触媒が可能となれば、室内灯での光触媒効果の発現によりハウスダ スト対策などへの応用が可能となる。しかしながら、GaNやInGaNといったⅢ族窒化物の光触媒効果は 薄膜状態での発現しか確認されていないのが現状であ

る。光触媒効果は表面反応であることから表面積の増 加が光触媒機能の増大へと直接結び付くことや、実用 例が粉末を塗布やコーティングによって用いられてい ることから粉末状態での光触媒効果が必要となってく る。本研究においては粉末GaNおよび粉末InGaNの作 製を試みると共に粉末GaNなどにおける光触媒効果を 評価した。

GaN粉末の作製と評価

Ⅲ族窒化物の作製には管状型電気炉を用いてアンモ ニアガスを用いた高温窒化により合成を行った。GaN 粉末の作製条件は反応温度を900〜1100℃と変化させ、

Ⅲ族窒化物による可視光光触媒の実現と応用

静岡大学工学部電気電子工学科 中野 貴之 [email protected]

LEDなどで注目されているⅢ族窒化物

(GaNやInGaN)を用いて、光触媒機 能を持った新しい粉末材料を創出 

可視光領域で光触媒機能を利用する ことによって室内灯での光触媒反応 を実現 

応  用  課  題 

〔村田基金研究助成〕

図1 各窒化温度にて合成した GaN粉末のXRD測定結果

(3)

39

初 期 材 料 に は G a 2 O 3 粉 末 お よ び 硝 酸 ガ リ ウ ム : G a

(NO3)3を用いて検討を行った。図1に初期材料に Ga2O3粉末を用いて窒化温度を変化させた場合に生成 されたGaN粉末のX線回折測定結果を示す。窒化温度が 900℃の場合には初期材料であるGa2O3が見られること から窒化が十分ではなくGaNとGa2O3が混在した回折 ピークが見られたと考えられる。窒化温度を1000℃以 上と高温にしたところ、Ga2O3のピークが確認できず GaNのピークのみとなったことから温度エネルギーが 十分に得られたことで窒化プロセスが進行してGa2O3 が全てGaNになったと考えられる。さらに高温にする ことによって、ピークの半値幅が狭くなっていること から結晶性の高いGaNが生成されていることが確認で きた。

さらに、これらの試料を用いて光触媒効果の実験を 行った。有機物(メチレンブルー)を溶解させた水溶 液中に作製したGaN粉末を混入し、紫外線照射によっ て光触媒反応による有機物の分解を検討した。図2に紫 外線照射時間と有機物の初期濃度に対する濃度変化を 示す。比較として購入した市販のGaN粉末も同時に評 価を行った。窒化温度が高い試料の方が有機物の分解 反応が早く、急激に分解されていることがわかる。ま た、これらの試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観 察したところ図3に示すような像を得ることができた。

窒化温度が上がるにつれて初期材料であるGa2O3の形 状から徐々に変化しており、粒径も小さくなっている ことがわかる。これらの結果から窒化温度の上昇によ

りGaN粉末の結晶性の向上と粒径の微小化によって光触媒機能の高いGaNが作製することが可能である ことがわかった。さらに、初期材料を変化させて検討を行うことにより表面積依存性を検討している。

初期材料をGa2O3粉末からGa(NO3)3に変えてGaN粉末の作製を行った。Ga(NO3)3をそのまま初期材 料に用いた場合とゾルゲル法による処理を行った場合で検討を行っている。SEM観察による評価によっ て粒径は小さい方から順に、ゾルゲル法・Ga2O3・Ga(NO3)3となっており、これらに紫外線照射実験を 行った結果が図4となっている。粒径が小さいゾルゲル法により作製されたGaN粉末が最も反応速度が

図2 各GaN粉末の紫外線照射による 有機物の分解速度測定結果

図4 初期材料の異なる各GaN粉末の 紫外線照射による有機物の分解速度測定結果

(a)

10μm

(b)

H10μm

(c)

H10μm H10μm

H H10μm H10μm

(a) (b) (c)

図3 作製したGaN粉末のSEM像;

窒化温度(a)900℃ (b)1000℃ (c)1100℃

(4)

40 速く、窒化温度が同じであることを考えると表面積が

光触媒効果に大きく影響していることが示唆された。

また、ゾルゲル法によって作製した場合が最も粒径が 小さい試料を作製できることも示唆された。

InGaN粉末の作製と評価

光触媒効果を持つGaN粉末の合成を実現したため、

可視光光触媒材料として重要となるInGaN混晶材料の 粉末化を検討した。作製方法について検討を行ったと ころ、初期材料にGa(NO3)3とIn(NO3)3を用いてゾル ゲル法にてGa原料とIn原料が混合した状態で窒化処理 を行った場合にInGaN粉末の合成に成功した。図5に前 駆 体 の 混 合 比 を I n : G a = 4 : 1 に 設 定 し て 作 製 し た InGaN粉末のX線回折測定結果を示す。比較としてGaN

粉末の回折ピークも示してある。InGaN粉末のピークがGaNのピークよりも低角側にシフトしているこ とが確認できる。このピーク位置を用いてInGaNの格子定数を算出しべガード則からIn組成比を導出し たところ作製したInGaNの組成比はIn0.06Ga0.94NとInNの混晶比が6%であることが確認できた。光触媒効 果について検討を行ったところ、十分な反応速度定数を得ることができなかったことから、酸素などの 不純物の混入が多く十分な結晶性が得られていないと考えられる。

まとめと今後の展望

本研究により、Ⅲ族窒化物粉末の作製には窒化温度が非常に重要であり、結晶性の向上と粒径の微小 化が光触媒効果に大きく寄与することが確認できた。高効率な窒化処理を満たすための条件を更に探索 することによってⅢ族窒化物粉末が光触媒材料として実用化可能であると考えられる。また、可視光光 触媒材料として期待されるInGaN粉末の合成に関してもゾルゲル法を用いた合成により作製が可能であ ることが示唆された。しかしながら、InNの蒸発温度が低く、In濃度の高いInGaN粉末を作製する方法 を更に検討する必要があると考えられる。反応性の高いガスや装置の構成によって窒化温度の低減や InNの蒸発を抑制することによってIn濃度の高いInGaN粉末の作製が実現することが期待される。

謝辞

本研究の一部は、財団法人浜松科学技術研究振興会からの助成金によって行われました。ここに感謝 の意を表します。

図5 作製したInGaN粉末および GaN粉末のXRD測定結果

参照

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