子どもの死の判断における年齢ごとのカテゴリの類似性
上 薗 恒太郎
Age‑related Categorical Similarities seen in Children's Judgements about Death
:Kohtaro KAMIZONO
工.はじめに
1−1.カテゴリの類似性
一定の対象が死ぬものであるか否かの判断はいかにして為されるのであろうか。さまざ まな対象に対して,いずれは死ぬものであるとの判断がなされようし,またそのようなも のではないとの判断もなされる。その際,ある対象に対する死の判断と,他の対象に対す る死の判断に類似性があるかどうかを見ることは,死に関する判断のなされ方を知る手が かりとなる。
どのように判断されたかを知る一つの直接的な方法は,判断者に理由を語ってもらうこ とである。しかし本論文では,次の二点によって,判断者の理由づけに頼らず,それぞれ の対象に対して下された判断のみによって類似性を確認する。
第一に判断は,理由を説明できないような仕方でもなされる。理由説明は,例えば直感 的な判断の後に反省的に付け加えられ得る。また言葉による理由の開陳を求めるこどは,
判断者が使うことのできる説明のパラダイムを開示するように要求することになる。説明 を求めることは,聞き手と語り手相互に理解可能と思われる表現を要求する意味あいを持 つ。その要求に応える一つのやり方は,手持ちの合理的な説明体系を答として持ち出すこ とであろう。すると,理由の説明は必ずしも判断の過程を表示しないことになる。説明可 能な理由が,判断時点での諸要素,判断を支えた要素の全体とはずれを生じ得るという点 は,留意されていいだろう。
タブー視されがちなテーマについては,なおさらこのずれが生じ得る。タブー視がっく りだす状況のなかでは,説明のための合理的な言表体系は学習され難い。死の理由に答え ることは,とまどいやためらいを多少とも伴うという事情が,なぜなのかという問いがオー プンに話されにくいところで説明を試みる難しさを物語っている。
タブー視という点については,子どもたちは大人ほどは死をタブー視していない。子ど もたちとは,死について比較的オープンな話が可能であるとの印象を受ける。とはいえ,
理由の説明を子どもたちは一人で構築していくわけではない。何が死ぬかは知っていくと しても,周囲の人々の口の重さに囲まれては,なぜなのかについて説明する言葉の獲得は やはり難しい。
第二に,子どもに判断を求める場合には特に,判断と理由との距離に注意深くなければ なるまい。第一点はとくに子どもたちの場合に当てはまる。子どもたちに判断を求めるこ
とはできても,その理由を説明する十分な言語体系をもちあわせていると前提してかかる ことはできない。質問者に対する好意によって判断をしてみせても,それは子ども独自の 根拠づけに基づく判断とは限らない。
判断相互の類似性を,説明された理由とは別に見ておく必要がある。
1−2.多様な判断がありうる
命あるものいっかは死ぬ,とは自明であるように思われる。しかし一義的ではない。ま してわれわれは,命あるものについての死を意識して暮らしているわけではない。死には,
意識される程度に濃淡がある。
一枚の葉について,枯れる,と言う。枯れるとは,死である。その葉にとっては確かに,
死である。枯葉が舞い落ちることをしかし,死の乱舞とは意識しない。それは葉をつけて いたもとの株が生き残っているからであろう。植物は季節によって姿形を変える,その変 化の様子が枯葉,という意識で見れば,枯葉を踏むことは死骸を踏むことにならない。抜 けた毛は,死んだとは意識されないように。毛髪はすでにモノに属し,植物は生命体との 意識が薄く,葉などのわずかな部分に至っては限りなくモノに近い。
死せるものは生き返らない,との台詞も,再生,転生を信じることを妨げない。木はま た葉をつける,すなわちその葉は戻らなくても,その木の葉は戻る。さらに,地下茎で繋 がった植物群は,葉の一枚,株の一つ,群全体,どのレベルでも死を語り得る。死は定義 の問題になる。死には多様な考え方が入り込んでいる。
そもそも問いと答が概念によって行われる以上,概念には定義の問題が付きまとう。ま た,概念が指し示す一定の対象群についての判断と,個体とは,異なる判断がくだされ得 る。植物群とはまた異なった意味で,概念が指し示すもの全体の死滅を考えることができ
る。
死はメタファとしても語られる。そこでは全てが死に,また不死であり得る。
一人の人間の死であっても,交通事故死亡者数の1である死もあれば,長崎からは地理 的に近い朝鮮半島での一人の死は,日本全国の統計から外され,報道されなければ,何ら 意識に上らないであろうが,社会問題として劇的に報道された一人のアメリカ人の死は強
く意識されることもあろう。ペットとして飼われたひよこの死は強く意識されても,一羽 のブロイラーは死を意識されない。
すると,一定の対象が死ぬものであるか否かの子どもたちの判断結果は,正しいかどう か判定される筋合いではないことになる。一つの定義から発達の度合を計ってみせるよう なものでもない。むしろ生死にかかわる世界観がどのように形成されているかの問題であ る。その際,形成された世界観の中においても,一定の対象に対して複数の判断が下され 得る。そして複数の判断が可能なものをどのように統合するかは,再び世界観の問題,生 死についてどのような意識世界が構成されるかであろう。
モノ,植物,動物,人望の順にならぶ生命の階層構造は,じつは死の意識構造であり,
階層内部にも多義性を含んだ世界観である。それでもなお多くの人々の判断を集約したと きに,何が死ぬものかについて,常識的な線というものがあるとすれば,死の意識が統合 された結果であり,統合のしかたは文化であろう。
1−3.調査・分析方法
本論文では,7つの対象を取り上げる:石,タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分。
それぞれについて,fいっか死ぬとおもいますか」と尋ねた場合の答え,「はい」,「いい え」をそれぞれ一つのカテゴリとして扱う。そのうえで集団のなかでの各カテゴリの類似 性をみる。
集団とは・長崎を中心とした子どもたちの年齢表1
別の集団である1)。また全ての回答者である。年 年齢別の子どもの数,分散,標準偏差 年別集団としては,3歳から15歳までを順に扱い, (小数点第3位以下四捨五入)
カテゴリの,すなわち一定の対象についての死の 年齢 解1 解2 判断の動向をみる。またその動向の一つの到達点
である成人の意識として20歳を扱う2)。
子どもたちが一つひとつの対象にどのような判 断を下し,それが年齢段階としてどのような意味 をもつかを見るためには,多変量解析の一つであ る林の数量化分析皿類が有効であろう。そこでは,
判断のされ方が似通っているカテゴリに似た数値 を与え,また判断パタンの似た回答をした子ども に似た数値を与えようとする。したがって類似し たカテゴリを寄せ集めることによってどのような まとまりができるか,カテゴリ全体の分布を数量 化し,また視覚化することができる。一つの数量 化では,つまり1次元的には,データ全体の説明 として十分ではない場合,多次元の数量化をおこ なう。数量化分析の作業は,長崎大学総合情報処 理センターで,富士通のANALYSTによった。
本論では,2種類の第3類の数量化分析結果を 使用した。第1分析,第2分半と呼びたい。
第1分析では,総計3,384名分の全ての回答を 一つのまとまりとして数量化理論第皿類の分析を おこなった。回答を,「はい」 「わからない」
「いいえ」について数量化分析挙挙によるグルー ピングを試みた。無回答については欠損値として 処理したが,ケース数には入れた。得られた解を みると,全情報量に対する解1の寄与率は19.1%,
解2の寄与率は16.5%で,解3(7.9%)以下の寄 与率とはけた違いである。そこで,主に解1と解
2をとりあげて,2次元的に考察する。
第2分析では,各年齢グループ毎に分析をおこ なった。その際,各年齢グループの特徴を見るた めに,「はい」と「いいえ」にしぼって,数量化
3歳 57人 分 散
、標準偏差一一一一一
4歳 161人 分 散
.標準偏差一一.一
5歳 211人 分 散
_標準偏差一一一一一.
ぢ歳 247人 分 散
.一一一_..一一一標準偏差一一一一一
7歳 339人 分 散
..標準偏差一_.
8歳 341人 分 散 標準偏差
9歳… 199人 分 散
一一標1笙偏差一一一一
10歳 211人 分 散
..標準偏差.一一...
ll歳 167人 分 散 標準偏差
1を}義 一 178人
分 散
..標準偏差.、.。
13歳 408人 分 散
一一標婆偏差一一一一
14歳 297人 分 散
.標準偏差一.。_
15歳 303人 分 散
一一標準偏差_.一.
26箴 265人 分 散 標準偏差
1.62 1.27
3.68 1.92
2.17 3.68 L47 1.92
1,63 1.85 1。28 1.36
!.Ol l.00
0.64 0.80
0.38 0.62
0.89 0,24
0.52 0.72
0.48 0.69
0.22 0。25 0.47 0.50
0.41 0.32 0.64 0.56
0.67 0.62 0.82 0.79
1.05 0.67 1.02 0.82
1.09 0.80 1.04 0.90
1.29 0.80 1.14 0.89
0.39 0.70 0.63 0.84
0.28 0.53
0,47 0.69
理論第皿類の分析をおこなった。無記載,および,わからない,の回答を欠損値として扱っ たが,ケース数には含めた。図は解1と解2の2次元で示したが,考察では他の次元も考 慮した。寄与率は各年齢の説明中で適宜述べる。
II.収束する
第1分析の解1と解2によって各年齢ごとの標準偏差と分散をみる(表1)。子どもた ち一人ずつに,7つの対象についての答の型による数値を解1の場合,解2の場合それぞ れに付与し(一人ひとりの子どもごとのスコア),それを年齢別にまとめてある。なお解
1と解2の累積寄与率は2つで35.6%である。
図1は,表1を二次元に視覚化した「年齢別の標準偏差および分散」である。標準偏差 を+でプロットした。付した数字は年齢である。+を中心に分散を,左右,上下に線で示 した。点線か実線かは見やすくする意味だけである。3歳,4歳の分散の上と右は,下や 左と同じ長さで広がっているが,途中で切ってある。
図1から以下の様子が読み取れよう。
1.年齢にしたがって標準偏差,分散ともに収束する傾向を示すが,13,14歳を中心に逆 行が見られる。
2.成人である20歳が,標準偏差,分散ともに一番小さいわけではなく,9歳が最も小さ
1
分散 1
0
1.5
標準 偏差
1.0
0.5
0
解1
}
躍蔽
_↓_蒲1+『
gi
1 ヨ
i 、1 一一一一十一一一一一一一
,i ,1
ロ
ー一一噂応一一一一一一一¥一一一一輌_ 十
0.5 1.0 1.5
一一「分散
0 1
図1 年齢別標準偏差および分散
標準偏差2.0解2
い。9歳が最小で,20歳,10歳,そして8歳と大きくなる。
3.特に3歳,4歳,5歳あたりまで標準偏差,分散の数値が大きい。
なぜこのようになるかは,後に述べる。
皿.カテゴリの年齢による動向
第2分析によって各年齢それぞれの14種類の結果がえられる。ここではまず第2分析に よってえられる解1,解2の2次元図に解3を加味しながら考察する。以下に示す図2,
3,4,5は,各カテゴリを縦軸の解1と横軸の解2によってプロットした,5,7,U,
20歳の図である。「石,いいえ」 「タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分,はい」のつ ながりを示すために(0,0)点付近の図を各図の空白部分につけた。付け加えた図の縮 尺は各年齢揃えてある。図中各カテゴリは,次のように省略形で示してある。#は,複数の
カテゴリの重なりを現す。何が重なっているかは点線で引き出してカテゴリを示した。
Y:「はい」, N:「いいえ」,
石:「石」, タ:「タンポポ」, 木:「木」, イ:「イヌ」,
ク:「クジラ」, 大:「大人」, 自:「自分」
解1と解2の累積寄与率,つまり一つの図に全情報量のうちどれくらいが示されているか は,図2(5歳)で44.9%,図3(7歳)で42.9%,図4(11歳)で47.6%,図5(20歳)
で54.6%である。
3歳: 解1の寄与率が50.7%と高く,「はい」と「いいえ」のカテゴリがくっきりと二
300
2.50
2.00
150 解
! l.00
0。50
0.0
一〇.50
一1.00 木N
タN クN
石N
自Y 大エイY
一150 −0.75 00
図2
夕Y クY 木Y
イN
自N
大N
解1 石N
0.5
o 解2
一i 0∫
大Y イY
タY 自Y
ク
石Y
一1 木Y
075 1.50 2.25 3.00
解2
カテゴリのプロット図 5歳
クY
3.75 4.50
12.25
10.50
8.75
7.00
解 15.25
3.50
L75
0.0
一1.75.
大N
イN ・
石IY 自曹N
解1
石N o A.一で二 解2
曽1 クY, /蛯x/ク! F . 「 1
、、、.
\ イY
/一/ ^Y・/ 木Y 一〇5 自Y
タN
ク Y大Y石:N 木・Y潔\
\」タY.
しイソ 1自Y
木N
クN
一8.00 −6.00 −4.00 −2.00 0.0 2.00 4.00 解2
図3 カテゴリのプロット図 7歳
6.00 8.00
7 00 P・
、.。。!
i
oo
P
4.ooi
解 13.00 1 ・ i
2・001 i 1・001 1 0・叶 一1.。詐
ク凋 イN
解し 05
石N 0 石Y
一1
@ / 「
D/! ゥYl
、、.. \
クY
0.5
木Y!4乙/// .
〆 イY
.∠ 大Y
タY 7(緬
解2
大N
石N石Y
ノだ ぷみし イソ ゴ
三篠 クY
タ N
自N
木N
一6.25 −5.00 −3.75
図4
一2.50 −1.25 0.0
解2
カテゴリのプロット図 L25
11歳
2.50 3.75
8.75
7.50
6.25
5.00
解・.75
2.50
1・25 P
1
0.0
一1.25
イN
ズN
;ζ:・
クN
石1.N 自Y
・・… T大Y
タ「Y;木Y 木N
艀r
石N
自Y o 解2
一1 \ \ \
イY o・5 クY
大Y
^Y 木Y 一〇・5
タN
石Y
自N
一6.00 −4.00 −2.00 0.0 2.00 4.00
解2
図5 カテゴリのプロット図
6.00 8.00 10.00
20歳
つに分かれる。解2では(寄与率13.1%),「自分」についての「はい」か「いいえ」が 両極に特徴的であり,「自分,はい」に連れて「大人,はい」,また「自分,いいえ」に 連れて「大人,いいえ」が動き,「クジラ」は解3(寄与率8.6%)まで見てもほかの判断
に連動しない。
3歳では判断対象となったものの性質が判断に現れるのではなく,「はい」は全てに
「はい」,「いいえ」は「いいえ」と答える傾向がある。あえて言えば「自分」についての 判断が全体をリードする形である。
4歳: 「はい」と「いいえ」のカテゴリの二分傾向は変わらないが,この傾向によって 特徴づけられる解1の寄与率は26.9%に減少する。また,「石,いいえ」が「いいえ」の 群れから離れ「はい」の方に近づく。解1(16.2%),解2(12.4%)では,「石」と
「タンポポ」が両極にあり,全体をリードするが,各カテゴリはばらばらに位置する。
3,4歳は年齢集団全体としてみれば,何が死ぬものであるかを対象によって判断し分 けていない。
5歳: 「はい」と「いいえ」の二分傾向はそのまま(解1の寄与率は28.2%)である。
しかし,「石,いいえ」が「タンポポ,木,クジラ,大人,自分,はい」とグルーピングで きるような位置に動いてくる。死ぬもの死なないものの対象世界が分化してくる年齢なの であろう。これらのカテゴリ問を線で結んでみると,概略,石を頂点とする三角形になる が,カテゴリ間の距離が遠いために,図2中のような大きな三角形になる。もっとも,3,
4歳よりは三角形は小さく,6歳では頂点の「石」が低くなるが。死ぬもの死なないもの を仕分けするようになるといっても,5歳全体として判断が収束するところがみられるわ
けではなく,全体のバラバラ状態は,表4からも推し量られる。
個別にカテゴリを見ると,「クジラ,はい」は,「イヌ,はい」と共に動くのではなく,
「タンポポ,木,はい」と共にある。クジラとイヌがほ乳類という概念で結ばれてはいな いのだろう。
「大人,いいえ」や「イヌ,いいえ」が他のカテゴリから大きく距離をとり始めるが,5 歳までは3,4歳からの傾向を受け継いでいる。解2,解3による二次元図をみると,先 の二つのカテゴリと,中間に位置する「自分,いいえ」と「石,はい」を除けば,後のカ テゴリは団塊状態である。5歳のカテゴリのプロット図では,挙げた4つのカテゴリ以外 がまとまりをつくっているかのような様子である。
この状態が変化するのは6歳からである。6歳の変化は,図1で6歳が,3,4,5歳 以外が形作るグループに入ってきている点にみてとれる。この点は,「大人,いいえ」と 答える子どもの割合を,高い順に並べてみるとくっきりと現れる。6歳は,20歳や15歳以 上にく大人はいっか死ぬとおもうか〉に「いいえ」と答えることはない。
表2 〈大人はいっか死ぬとおもうか〉に「いいえ」と答える子どもの各年齢内の割合 年齢 3 4 520●1511 6 14 12・10 8 13 7 9
% 47.4 24.8 10.4 7.9 4.8 3.6 3.0 2.8 2.3 2.2 1.2 0.5
6歳二解1(寄与率23.8%),解2(寄与率16.7%)によるカテゴリのプロット図は5 歳のものと似通っている。しかし「はい」,「いいえ」の二分化が崩れ, [大人,自分,
イヌ,「いいえ」],[タンポポ,木,クジラ「いいえ」],[「石,いいえ」,タンポポ,
木,イヌ,クジラ,大人,自分「はい」],[石,はい]の各グループがはっきりする。
「石,いいえ」と「自分,はい」の距離が近くなり,「クジラ,いいえ」と遠くなる。「石,
いいえ」について「クジラ,いいえ」および「自分,はい」のカテゴリ間の距離を二次元でみ ると,5歳で0.80および1.36であったものが,6歳で1.39および0.82に,いわば逆転する。
解2と解3(寄与率15.2%)の図でも[「石,いいえ」,タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,
自分「はい」]が(0,0)の点を周囲に点在する布置であり,グループ化が進行してい ることをうかがわせる。このグループに最も近接しているのは「クジラ,いいえ」である。
「クジラ,はい」は依然「タンポポ,はい」「木,はい」の側にあるが,「犬,はい」と の距離が近くなってきている。カテゴリ問の距離としては「大人,はい」と「自分,はい」
が近く(解3まで含めた三次元で0,24),「大人,はい」と「イヌ,はい」(三次元で0.54)
がこれに次ぐ。
7歳; 「イヌ,はい」と「大人,はい」のカテゴリ間の距離が近く(三次元で0.13),
「大人,はい」と「自分,はい」の距離が(0.25),「自分,ほい」と「イヌ,はい」の距 離が(0.26)と近い。
「クジラ,はい」は「木,はい」と依然近い(0.32)。未知の部分が大きかったり,どこ で判定するかいろいろ考えたり,死の判断がつきかねる点で二つのカテゴリは同様なので あろう。「クジラ,わからない」は,6歳と7歳の間で大いに減少する。 「木,わからな い」も5.3%から2.7%へと同様の傾向を示す。
表3 〈クジラはいっか死ぬとおもうか〉に「わからない」と答える子どもの割合 年齢 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 20
% 5.3 11.8 8.5 11.3 3.8 1.8 1.5 1.9 6.6 5.1 4.2 8。l l.0 0.4
表3から読み取れるのは,3歳では,「はい」と「いいえ」に二分されて「わからない」
が少なく,9歳で少ない割合を示した後,ll歳からはいろいろと考え,迷う時期になり,
!5歳,20歳では判断がはっきりしてくるということであろう。
カテゴリ問の距離はほぼ4層に分かれる。「クジラ,はい」と「イヌ,はい」のカテゴ リ間の距離は0.56で,「大人,はい」 「自分,はい」との距離,「木,はい」とイヌ,大人,
自分の「はい」の距離が0.52から0.66の間にある。「難いいえ」と「イヌ,はい」の距離 は0.76であるが,そのほかのカテゴリ間の距離は0.94から1.39の間にある。
6歳全体として,[石「いいえ」,タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分「はい」]
のカテゴリの組合せ,いわば最も常識的な組合せが形成されている。解1(寄与率24.7%),
解2(寄与率18.2%)の二次元図で最大多数の子どもたちの判断が集まる点がはっきりす
る。
カテゴリのプロット図のなかでも多くの子どもたちの回答が集まる場所があり,それは 7歳以上ではっきりする。この場所は,いわゆる常識的な答の場所になる。表4がそれを 示す。4,5歳では多数が集まる点がいわゆる常識的な位置とは異なるところがら,二つ の数値を並べた。表4からは7歳以上でおお
むね4割を超える子どもの回答がこの場所に 表4
集まっていることがわかる。7歳の場合のい 各年齢の解1・解2による二次元図で わば年齢集団の重心とも言えるこの場所は, 最大多数が集まる点の人数と年齢内に 占める割合
図3の,大Y,イY,タYで囲まれた三角形
の辺りにある。
図1の標準偏差および分散からは9歳のま とまりぶりが目を引いたが,常識的な線の回 答という意味からは20歳が多いことも表4か
ら読み取れる。
8歳: 8歳になると,[イヌ,クジラ「は い」],[大人,自分「はい」]それぞれの組 合せがはっきりしてくる。解1(寄与率25.5
%)と解2(17.8%)の二次元図だけでなく,
解3(14.9%)との図でもその様子は見て取 れる。三次元での(解3まで含めた累積寄与 率は58.2%)カテゴリ間の距離では,「イヌ,
はい」と「クジラ,はい」の問が0.26,「大 人,はい」と「自分,はい」の間が0.29と接 近している。「クジラ,はい」と「木,はい」
3歳 4歳 5歳 6歳 7歳 8歳 9歳 10歳 ll歳 12歳 13歳 14歳 15歳 20歳
人 13 4 18 70 157 160 107 106 81 67 187
ユユ9
149 159
22.8 2.5 8.5 28.3 46.3 46.9 53.8 50.2 48.5 37.6 45.8 40.エ
49.2 60.0
% 人
8 5.0 25 11.8
%
の間は0.49と開いてくる。
[石「いいえ」,タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分「はい」]がはっきりとした一 つのまとまりとなっている。
9歳: [石「いいえ」,タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分「はい」]のまとまりは,
以後の年齢で崩れることなく続く。
「タンポポ,はい」と「木,はい」のカテゴリ問の距離は三次元(累積寄与率71.8%)
で0.29と小さくなり,「大人,はい」と「自分,はい」は0.Olになる。つまり,199人中197 人が「自分,はい」と答え,その全員が「大人,はい」の答をする。「大人,はい」と答え たのは総数198人であるが,そのうち一人だけが「自分,わからない」と答える。
9歳が最もまとまりのいい答を出し(図1),死について「わかっている」ように見え るのは,3,4,5歳の「はい」 「いいえ」二分状態から離れて,13,14歳のようにいろ いろ考え迷うまでの間,死の判断の安定した状態にあるのであろう。
10歳: 解1(寄与率34.9%),解2(寄与率17.9%),解3 (寄与率14.8%)それぞれ の二次元図から「いいえ」に関しても (「イヌ」「クジラ」),(「タンポポ」「木」),
(「自分」「大人」)の組合せがはっきりする。これらは[石「いいえ」,タンポポ,木,
イヌ,クジラ,大人,自分「はい」]のまとまりからの距離も比較的に遠いが,「石,はい」
はまとまりの近くに位置する。10歳で「石,はい」と答える子どもが28.9%いることが原 因であろうが,これは低い数値から数えて10番目にあたる。最も低い割合を示すのは14歳 で,14.1%,つぎに低いのが!3歳である3)。石は,無機物だから死なないということで大 多数の一致がみられることはないカテゴリである。20歳でも22.3%が「石,はい」と答え
る。
11,12歳についてみてみる。1!歳の解1(寄与率28.9%)と解2(寄与率18.7%,二つの 解の累積寄与率47.6%)の二次元図,図3で,カテゴリ間の距離は次のようである。
(「クジラ,はい」 「イヌ,はい」 0.06)
(「イヌ,はい」 「大人,はい」 0.!6)
(「石,いいえ」 「木,はい」 0.94)
図4に現れる傾向は10歳と大差ない。
12歳の解1(寄与率26.0%),解2
(「自分,はい」 「大人,はい」 0.15)
(「石,いいえ」 「クジラ,はい」 0.30)
(「石,はい」 「クジラ,はい」 0.25)
(寄与率20.5%),解3(寄与率14.4%)の二次元 図で特徴となるのは「石,はい」が[石「いいえ」,タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,
自分「はい」]のまとまりから離れていくことであり,14歳を除くと,13,15,20歳の距 離は4.1から4.8と大きい。ll,12歳は,図!,また図6,7の型からも,中間的な様相を示
す。
図6,7は第1分析による子どもたちのスコアの分布図である。3歳から15歳のスコア の分布図は,二つの型に分けることができる。直角三角形の直角をはさむ両辺V字状に分 布する15歳型と,直角三角形V字の中間にも分布する14歳型である。8,9,20歳は,15 歳型であり,4,5,6,7,13歳は,14歳型と言える。
13,14歳が9歳や15歳の間にあって両者と異なる点について図1を見るところがら考えた い。図1でみられた点,なぜ13,14歳を中心に収束傾向に逆行するゆれが見られるのだろ うか。標準偏差,分散ともに一番小さい9歳と14歳を中心に,特徴となっている点を取り 上げる。
7
6 解1 5
4
3
2
1
0
一1
oφo 解2
一5 一2.5 0 2.5
図6 第1分析による子どもたちのスコアの分布図 14歳
5
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
一〇,5
一1 解1
義
解2
一2.5 0 2.5
図7 第1分析による子どもたちもスコアの分析図 15歳
5
9歳が標準偏差,分散とも最も小さい数値を示す点は,第一分析の累積寄与率が57.5%
になる解5まで見た場合でも,変わらない。2番目が20歳であり,さらに10歳,8歳と並 ぶ。これは9歳の子どもたちが,年齢グループとしてみた場合,回答が最もまとまってお り,答のパタンとして[石,「いいえ」,タンポポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分,「はい」
]という常識的と考えられる答え方に近いことを示す。この点は20歳については理解しや すいとしても,9歳の場合の内容を見てみよう。
9歳の場合,大人「いいえ」,自分「いいえ」という回答が高い数値を示し,情報量全体 への寄与率の高い解1(38.0%)で大きな特徴となっている。しかし,その内実は一人の 子どもが高い数値を示し,残る子どもたちは解1ではフラットな,あまり差のない分布状 況を示している。別言すれば,大人と自分双方について「いいえ」と答えている子どもが
1人(0.5%)で,大人「はい」,自分「わからない」と答えている子どもが1人,残り全 部の子どもたち197人が大人「はい」,自分「はい」と答えている。
20歳については,イヌ「いいえ」が,高い寄与率を示す解1(39.2%〉において高い数 値を示すが,イヌ「いいえ」と答える者の割合は9歳(1.5%)に次いで低く,1.9%であ
る。イヌ「いいえ」と答える者の割合が低いのは10歳においても同じで,L9%である。
また20歳の解2(寄与率15.4%)においては,自分「いいえ」が高い数値を示すのだが,
その回答率が9歳(0.5%)に次いで低い。(1.9%)
14歳では,解1,解2双方において,大人「いいえ」が高い数値として特徴的であるが,
大人「いいえ」と答える子どもの割合は3.0%で,全年齢総計の5.7%よりは低いものの,
7番目の低さである。一番低いのは9歳(0.5%),次に7歳(1.2%),13歳(2.2%),8歳
(2.3%)と並ぶ。5歳,4歳3歳は,(10.4%),(24.8%),(47.4%)と高い。
また14歳の場合のイヌ「いいえ」は解1,解3の特徴となっているが,全年齢中では4 番目,3.7%である。これは13歳も同じく4番目,3.7%である。13歳の場合,イヌ「いい
え」が大人「いいえ」と並んで解1の特徴となっている。
さらに14歳と9歳との比較のために挙げれば,大人と自分双方について「いいえ」と答 えている子どもは14歳では(1.7%)である。同じく,13歳では1%になっている。それ ぞれの数値は9歳より格段に高いと言うほどではないが,大人,自分のうちどれかを「わ からない」,ないし「いいえ」と答えている子どもが,双方「いいえ」を除いて,14歳で 10.5%,13歳で7.2%おり,9歳の場合と違って,双方「はい」と答える子どもとの間隙を 多様に埋めている。
図6と7,第1分半によるそれぞれの子どもの解1・解2の数値,サンプルスコアを二 次元分布図にし,年齢別に分けてみると,[「石,いいえ」,タンポポ,木,イヌ,クジラ,
大人,自分「はい」]パタンをV字形の底にした形状に分布するが,9歳,20歳はV字形の 底に厚く,またV字の文字の線上に沿って分布するのに対して,14歳,13歳はV字の中空 部分にもばらばらと広がっている。V字の中空部分にも多く分布する点は,4,5,6歳
とも同様で,それが分散の数値の高さとして現れているし,また14歳なりがそれぞれの対 象について,散らばりの大きい,さまざまな答え方をしているということである。
さまざまな答え方のなかには,「わからない」が含まれており,ここに特徴が現れる。
9歳と14歳を比べると,全7判断対象についての回答を合わせて,「わからない」が,9歳 では0.7%であるのに対して,14歳では8%と多い。8歳では1.4%,10歳では2.0%,11歳
では5.ユ%,12歳,13歳では同じ5.6%,15歳では1.3%,20歳では0.8%。いろんなことを考 えるという意味では,20歳や!5歳も考えていることは,先に示した表2の「大人,いいえ」
にみてとれるが,「わからない」の多さと,図1のまとまりぐあいを併せて考えれば,12,
13,14歳は死の判断についてあれこれ考えて迷っている年齢と言えそうである。
15歳: この年齢では,20歳と同じカテゴリーの分布構造を示す。[石「いいえ」,タンポ ポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分「はい」]の構造,図1においても,最も20歳に近い。
]V.まとめ
対象が何であるかによらず「はい」は「はい」,「いいえ」は「いいえ」と判断する3,
4歳の思考は,年齢を追うとともに収束していくが,9歳で最も迷いの少ない,まとまっ た判断をする時期に至り,13,14歳では逆に迷い,「わからない」が多くなる。しかし,15 歳ではふたたび収束へと向い,20歳と同型の判断をするようになり,[石「いいえ」,タン ポポ,木,イヌ,クジラ,大人,自分「はい」]という答が半ばほどの比重を占めるよう
になる。
なお本研究の遂行には,本学部人文地理学専攻の西原 純助教授の援助を得た。記して 感謝申し上げる。その援助は,「林の数量化分析法」の適用の示唆と,長崎大学情報処理 センターの統計パッケージANALYSTの利用方法に関するものであり,本論文に対する 責任は,もちろん著者が負うべきものである。
註
1)調査は質問紙票によっておこなわれ,それぞれの質問は,「石ころは,いっか死ぬとおもいます か」という形でなされた。8歳の一部までを面接法によったが,ほかは書き込んでもらうやり方で 行った。回答は,(はい・いいえ)の形で求め,わからない場合は中黒の丸に印をつけるように,
最初に口頭で指示された。面接の場合は,本人の判断を確認して,面接者が質問紙票に記入した。
調査は,長崎市,佐世保市,東彼杵郡,時津町,五島および熊本市の,保育園,幼稚園,学童保育所,
小学校および中学校で,1991年から1993年におこなわれた。調査対象者数は,本文の表1に各年齢 の度数として示した。総数3,384名。
2) ここでの20歳には19歳から24歳を含めており,長崎市内の大学,短期大学生,看護学校生計265 名,平均年齢は19.95歳である。
3)13,14歳の「石」については,しかし,「わからない」が多く,この二つの合計では,割合の少 ない方から7番目と9番目になる。