ユニバーサルデザインの具現化を目指す校内研修の 効果 : 特別支援教育の視点からの授業改善
著者 山元 薫
雑誌名 静岡大学教育実践総合センター紀要
巻 25
ページ 1‑9
発行年 2016‑03‑31
出版者 静岡大学教育学部附属教育実践総合センター
URL http://doi.org/10.14945/00009426
ユニバーサルデザインの具現化を目指す校内研修の効果
―特別支援教育の視点か らの授業改善―
山元 薫 ・
Effect of the school training aiming at embodiment of the univercal desigp
Class improv€rn€ot ftom special
needsedrcation Yamlmoto lcaoru
姜ロ
通常の学級では
,「
学習 面J「
行動面J「
コミュニケーション面]に
困難 きのある児童生徒の在籍率が増カロ傾 向にあり,個
別の支援の必要性 と共に集団における指導・ 支援の方法の確立が喫緊の際題 となっている。その中 で全国的にも全ての児童生徒の授業参加を目的 とした授業のユニパーサルデザインに関す る実践が数多く報告 さ れている。本研究は,授
業のユニパーサルデザインの実践を推進す る校内研修について,カ
ーク・パ トリックの 効果測定 レベルを用いて研修の効果を測定 し,そ
の効果を検証 した研究である。その結果,校
内研修直後のアン ケー ト調査において,研
修参カロ者が具体策を得て実践意欲が高ま り,ユ
ニパーサルデザインの有効性を r大いに 感 じる」 「ある程度感 じる」を合わせて1∞
o%と高い評価を得たもまた,3か月後のアンケー ト調査から参カロした教員全てがユ■バーサルデザインを意識 した生活づくりと授業づ くりを実践 し
,児
童生徒の授業参加 も促進 していると評価 していることも分かつた。 このことか ら本研究におけるユニパーサルデザイ ンに関する校内研修 の実施は,「
学習面」 「行lb面 J「
コミュ‐ケーション面」に困難 さのある児童生徒も含め,全
ての児童生徒の 授業参カロを促進する指導・支援を提供する研修 として有効であることが明 らかになつた。キーワー ド: ユニバーサルデザイ ン 特別支援教育
1 :ま じめに
11
研究の背景「共生社会の形成に向けたインクルーシプ教育シス テム構築のための特別支援教育の推進 (報告)J(文
部科学省
,2012)で
は,「
共生社会 の形成に向けてJ「就学相談・就学先決定の在 り方
J「
障害のある子 ど もが十分に教育を受けられ るための合理的配慮及びそ の基礎 となる環境整備J「
多様な学びの場の整備 と学 校関連携等の推進J「
特別支援教育 を充実させるため の教職員の専門性の向上Jの
5つの項 目について報告 がされ,通
常の学級における発達障害等のある特lllな教育的ニーズのある児童生徒を包括する就学や競学後 の指導方法の開発を含め
,教
員 の特別支援教育 を充実 させ るための専門性の向上が急務 となつている。そこ で,注目されているのがユ‐パーサルデザインの教育 への活用である。柘植(201411ま ,ユ
ニパーサルデザ インは,わ
が国が 目指す共生社会の具現化に関わる重 要な考えであり手法 とも言えると述べている。現在ユ ニバーサルデザインの考え方を学校経営や犠 菅, 授業改善に活用する取 り組みが全目的に報告 されるようになつてきている。石塚 ら(201のは
,学
校 における 基礎的環境滋備の考え方 としてユニパーサルデザイン を挙げ,学
校経営,学級経営,授
業づ くりに言及 して発達障害 個別の支援
゛
いる。ユ■パーサルデザインに関する実践は小学校,
中学校
,高
等学校 と広が りを見せ,授
業のユニパ■サ ルデザイン研究会の実践を中心に成果も報告されてき ている (花熊,20141。 同時に,ユ
ニパーサルデザイ ンの考え方を活用 した授業づくりの課題,つ
まりつま ずきに寄 り添 うあまり安易な授業になる危険性があることも指摘 され始めている (吉田,2015)。
静岡県においても
,学
力向上や通常の学級に在籍す る発達障害等のある児童生徒を包括 した学級経営や授 業づ くりのひ とつの考え として静岡県総合教育セン ターからリーフレット『 ユ‐パーサルデザインでみん な楽 しい !みんな分かる !みんなできる!』 (以下, リーフレット)力
=発出され,各
校で活用 され始めてい る。同センターの研究報告では,学
級全体の授業参加 率の向上や授業改善への効果が報告 されている (静岡 県,201→ 。 しか しながら,校
内研修に基づいた学校 規模での授業改善の具体や児童生徒の変容に関する成 果報告はまだ出されていなし、 全国的にも同様で,授
業者の実践報告はあるが
,学
級や学校規模でユニパー サルデザインに関する校内研修 とその効果について言 及 している報告はない。そこで,本
研究においては,筆者が校内研修に関わ り追跡調査に同意を得 られた学 校 を調査対象 とし
,校
内研修の成果から,教
員の行動 変客 と児童生徒の授業参加の変容を中心 とした組織ヘ の効果について明らかにする。3静岡大学教育学部
山元 薫
12目
的本研究で1ま
,ュ
‐パーサルデザインの活用に関する 校 内研 修 を調査 対象 と し,カ
ー ク・ パ トリック(Kirkpatrit D L 1959)の
効果測定 レベルに基づ く効果測定を用いて教員の意識変化と具体的な行動の変 容 ,組 織への効果を評価し ,研 修の効果を検証するこ
とを目的とする。
2 方法
2.1
校内研修の概要研修の内容は
,主
に,ユ
ニパーサルデザインの必要 性の理解 と社会的背景,発
達障害等の特性理解,生
活 に活用するユ‐パ=サ
ルデザインの理解,授
業づ くり に活用するユ‐パーサルデザインの理解,実
践例をと お したユニ′`―サルデザインの具体の理解 とした (表 1)。 これは,学
級 に在籍する「学習面1『
行動面」「コミュニケーション面
Jに
困難さのある児童生徒理 解を基盤 としてユニパーサルデザインを実践す るため, 発達障害等の困難 さの理解,生
活上の困難 さや学習上 の困難 さを教員 に理解を促すためのプログラムとした。また
,必
要性 と社会的背景の理解 としては,障
害者のIEFlに
関す る条約の批准や平成28年 4月1日
から施 行 される「障害を理由とする差別解消に関する法律Jも説明 し
,今
後教育現場においては障害のある児童生 徒が十分な数育を受けるためには基礎的環境整備 と合 理的配慮が必要であることの説明も同時に行つた。表1 校内研修の概要
2.2
対象の学校A小
学校 (アンケー ト回答教員数23人)平成
27年
度より研修内容にユニバーサル7‐ザイン の考えを取 り入れて実践 し始めたばか りの小学校3小
学校 (アンケー ト回答教員数 15人)平成
19年
度 より特別支援教育の市の指定研究に取 り組み,以
来継続 して通常の学級に在籍する特別な教 育的■‐ズのある児童を包括する指導・ 支援の研究に取 り組んでいる小学校
C中学校 (アンケー ト回答教員数 1人)
平成
27年
度 8月 より校内研修 をスター トとしてユ‐パーサルデザインの取組を始めた中学校
23 研修後の評価方法
研修後のアンケー トの構成については
,研
修直後の 質問項 目として,プ
ロフィール,チ
ェックリス ト,研
修内容に関する項 目である。
3か
月後の質問項 目は,ユニパーサルデザインに関する実施状況
,児
童生徒の 授業の参加状況,チ
エックリス トに関する項 目である。研修効果測定の指標 として
,カ
ーク・パ トリックの 効果測定 レベルを使用する。 レベルごとに研修後 の教 員の行動変容や授業改善,組
織への効果についてアン ケー トの回答を基に分析することする。カーク・ パ トリックの効果測定レベルについては
,表
2に示す。最2 カーク・ パ トリックの効果測定 レベル
行 動 の変容 には静 岡県総 合教 育セ ンターの リー ア レッ トのチェックリス ト
(以下 ,チ ェック リス ト )を
用いて行 う
(表 3)。合 わせ て行 うアンケー ト調査 については ,「
1:大い に感 じてい る J「 2:あ る程度感 じている」 「
3:あま り感 じない J「
4:全く感 じない」 の 4件 法で回 答 を得 ることに した。分析では ,こ れ らの評価膳 を等 間隔 とみな して平均す ることに した。
表3 チェック リス ト
gor tlle del6gstos f6lt about tho training or
Ih6 extend of sDplied
Iearning back on the Jot-
インの具体の理解
150‑165 1ア ンケー
生活 づ くリチ ェ ック リス ト
学習 環
境
1教
室 環 境 整 備
1教
室の整理整頓2.前
面の黒板 と周囲の整理磐頼3机の中やロッカーの使い方
4フ
ァイルや資料の置き場所5机の周囲の整理整頓
6月
や週の予定の提示7.今
日一 日のスケジュールの提示8座
席配置2学
習 の準備
9授業前に黒板 をきれいにしている
10.忘
れ物の対処方法11授
業開始時の過ごし方12授
業前の学習準備13.授
業開始時刻の厳守とあい さつ14机
上の整理整頓15筆
箱の管理学 級 環 境
3ル
ール
16学
校の生活の仕方やル17.学
級内のルール=ル 18児
童生徒の称揚19個
別の支援についての理解20学
級の役割 の明確化21宿
題等の提出方法の理解 22.TTの 役割分担4
温 か0ヽ学 級
23.児
童生徒の困 り感の把握24居
場所や安心感のある学級25.児
童生徒同士の諄め合い26‑人一人の良きの共有
27不
適切な発言の指導28児
童生徒の長所の活用29.ト
ラブルの対処方法の指導30学
級のテーマ設定授業づ くリチェ ッタ リス ト
基礎 技 術
1教
員 の 話 し方 ・ 発 問 や 指 示
■肯定的な話 し方
2指 示 の板書 3.具 体的な表現
4全
体へ の発間や個別 の超 えかけ での確認
ノ ト
2板書 や
ファイル
5.授
業の流れ と内容の分かる板書6後
ろからでも見える板書7ノ
ー トに取 りやすい板書8ノ
ー トの取 り方やファィルの管 理方法の指導3教材・
教具
9.具体物・ 写真・
ICTの活用
10.ワー クシー ト等の工夫
授業
の 工 夫
4焦
点 化・ 視 覚 化・ 共 有 化
1■単元 と本時の見通 し
12授
業の焦点化13授
業の視党化14展
開における活動時間の確保15.学
習形 態 の 工夫(ペ
ア・ 集 団・一斉)16全
ての児童生徒が発表できる 機会の設定個
口刀
の 支 援
5.個
別 の 支援
17つ
まずきの把握18.つ
まずきに対する指導 :支援19つ
まずきに対す る指導・支援 についての評価・改善233 評価3(行動レベル)
研 修直後のチ ェ ック リス トの結果 と
3ヵ
月後 の チェックリス トとアンター トを比較することにより変 容を明らかにすることを具体的な実践 として評価 した。2.3.4
評価4(行動壼害 レベル)3ヵ
月後のアンケー トにおける児童生徒の授業の参 加状況及び発達障害等の困り感のある児童生徒の授業 参加状況,教員の授業改善の状況により評価 した。3 錯果と考察
結果及び考察については
,評
価 レベル ごとに述べる。31 評価 レベル
1(反
応 レベル)研修直後のアンケー トより
,表
4の結果が得 られた。全ての項 目において
,平
均の25を
大きく上回る高い 評価 を得ていることから,研
修 内容 については高い満 足度 を得 られたと判断する。 これは,A小学校,3小学校,C中学校 ともに
,も
ともと課題意識が高くユニ パーサルデザインを実践 していく意思のある学校で あつたことも高評価に影響 していると思われる。表4 評価 レベル1のアケー ト結果
項 目
A
BC
課題意識をもつ ことができた
ユ‐パーナルデザインの考え 方は有効であると思った総 合 的 に考 えて 有効 な研修 で あつた
、
32
評価
2(学習 レベル
)321生
活チ ェック リス トの構果
教室環境整備 では
,A小学校 では ,3,4,5,B4ヽ 学 校 では
,1,■8,C中 学校 では
2,6が多 く実践 され てい る。■
8については
A小学校
B小学校
C中学校共通 で
800%以
上 の教 員 が実践 してい るこ とが明 らか に なつた
(図 1)。5
-A
--- B -c
231 評価1(反応 レベル)評価1では
,社
会的背景を含む課題意識,ユ
‐パー サルデザインの必要性,総
合的満足度の3項目か ら満 足度を評価 した。232 評価2(学習 レベル)
チェックリス トを用いて現在行つている実践状況を チェッタした結果を知識 として評価 した。
図
1
教童環境整備学習準備では,A小学校では
10,15を
重点的に取 り組んでいることが分かる。特に 15については,学
山元 薫
校全体で筆箱に入れる筆記用具の見直 しを共通理解 し 全学年で取 り組みを始めたばか りとい うこともあ り
10●
0%あ
実施率であつた。B小
学校では,7項
目全て に渡つて,700%以上の教員が実施 してお り,特
に9, 10に ついては93.0%以上が実施 し,従
前より指導が 徹底 していたと推測 される。C中 学校は,1415と実施率
200%以
下と低 く,小
学校に比べ意識が非常に 低いことが分かる。13に
ついては指導を徹底 していることが明らかになつた (図
"。
一
A
‐ ‐B
一
C
国2 学習の準備
ルールは,A4囃 ,B小学校,C中学校ともに似 たような傾向を示しているが,19については
AJヽ
学校では
,校
内委員会を充実させ特別な支援要する児童 に関する情報共有等をしていることが分かつた (図̲¨…‐A ‐
̲‐
″ D ‐‐…̲C 回4 温かい学餞3.22
授 業づ くリチ ェック リス トの結果
教員の発 間や指 示 の出 し方 については
,3校ともに
平均 70%以 上 の実践が されていることが分かつた。
特 に B小 学校 では ,従 前 よ り研修 にユニパーサルデザ イ ンの授業づ くりに取 り組 んできているこ とか ら ,授
業の基礎技術 の意織 化 と技術の徹底 が図 られてい るも の と思われ る
(図5)。奪バ
夕
1・ 1・
・
・
11
ξ″
-a
--- I -c
3).
国 3 ルール
温 かい学級づ くりでは
,A小学校
,3小学校
,C中学校 ともに似た よ うな傾 向を示 してい る。特に B小 学 校 については ,27で
100%実施 してお り指導 を徹底 し
,相手 を傷つける言葉の減少 に力 を入れていることが明 白になつた
(図り 。
目5 教員の話 し方 ヽ発同や指示
板書の工夫や ノー ト指導,数材教具の工夫では
,A
小学校で10,3ガヽ学校で
5 C中
学校 では 9と 特徴的 な取組をしていることが分かつた。目6 板書のやノー ト・ ファイル
「 j :│
特 に
C中学 佼では全款室に
E黒板 を設置 していること か ら
ICrの活用へ の意臓が高いのではないか と考 えら れ る
(図 6)。33̲1生
活づくりにおける責害教室環境の整備については,A小学校では研修直後 のアンケー トで実施率が低からた 1,2,6,7の項 目
で4入以上が増加 をしている。逆に実施率が高かつた
3,4については
,児
童に定着 してきてい ることから 教員が積極的に働 きかけを しな くてもできるように なっていることが推測 される。B小
学校では,全
ての 項 目において増カロしてお り,児
童が定着 していても教 員が働きかけを続けていることが分かる。C中
学校で は,研
修直後に実施率が低かつた 7の 増加が4人と多 く,生
徒に見通 しをもたせ る指導がされ るようになつ たことが分かる。見通 しをもたせることの効果どして,「生徒が主体的に生活できるようになる
Jや
「何回も質問をしにこなくなつた」
,「
一々指示をださなくて も生徒同士で行動できるようになつたJと
記述している教員 がい た
(図9).
I
‐
5 0 6日9 研修菫後 と3ヶ 月後の生活づくリチェック リス トの塾
日7 指導の工夫
指導の工夫では,3校とも焦点化 とペア学習等の学 習形態の工夫については実施がされているものの実施 率が授業づ くりにおける― 術の実施率に比べ低い。
また
,単
元 と本時の見通 しをもたせ ることや授業の視 党化や展開における活動時間の確保については実施率 が低い傾向があることが明らかになつた (図7)。個別の支援では,3校ともにつまずきの把握はされ ていて
,つ
ますきに対する指導や支援 も実施 されてい ることが分かつた。 しかしながら,B小学校において は指導・ 支援の評価・改善の実施率が低 く, さらにC
中学校では,評
価 。改善がされていないことが明らか になつた (図8)。一
A‐― …B… ‥―C
国8 口別の支援
33 評価3(行動レベル)
評価3については
,学
校 ごと研修直後のチェックリ ス トの集計結果 と3ヵ
月後のチェックリス ト集計結果 を比べ ることでその行動の変容の傾向を評価する。次 に日々のチェックリス トの変化か ら個人 レベルでも評 価 し表5にまとめた。16 200
山元 薫
学習の準備については,A小学校では研修直後に実 施率が低かつた
9,13,14の
人数が増加 してお り,実
施率の高かった
12,15に
ついては,定
着が図 られた として積極的な指導をしない教員が増えたと考えられ る。B小
学校では,研
修直後に実施率が低かつた項 目 について増加が見 られ,特
に低学年において今 日一 日 のスケジュールの提示がされるようになつた。C中 学 校については,9,10は増加 しているものの,11,12, 13,14,15に
ついては実施者が減少 している。 これ は生徒の中で定着 してきてお り,教
員が意識 して取 り 組まなくても良い状況になつたことが予想 され る。ルールは,A小学校では
17,C中
学校では 19と 学 校によつて特徴的な増え方をしている。A小学校では学校で統一 して生活のルールを確認 し
,誰
もが生活 し やすい学校づ くりを目指 している。B小
学校は,今
年 度赴任 してきた教員の中でルールの実施 が増 えている。C中
学校は,個
別の支援についてえこひいきではなく 必要な支援であることを学級指導の機会を利用して指 導する機会が増えている。温かい学級づ くりでは
,A小
学校では特別な支援を 要する児童のIEEと対応が充実 してきていることから23,24,29が
増加 し27が
減少 したと考えられる。3
小学校では,22,23,24については5年経験未満の職員の増加が多い。
C中
学校は,一
人一人の困 り感の 把握に努める等,困
つている状態への気付きから,何
に困つているのかといつた生徒に寄 り添 う意識が芽生 え
24の
増加や,結
果的に不登校の生徒の減少につな がつていると考えられる。332授業づくりにおける壼害
授業の基礎技術
(1〜 10)に
含まれ る教員 の話 し 方・発問や指示,板
書やノー ト指導・ ファイルの管理, 教材・教具の工夫では,A4ヽ学校,B小学校,C中学 校で増加傾向にあることが分かる:特
にAガヽ学校では 教員の肯定的な表現の使用や指示の板書化に重点をお いて授業改善 している様子が分かる。 しか し,6の後 ろからでも見える板書の減少の理由としては,意
識を 特別にしなくてもできている状況か ら敢えて意識 して 取 り組む必要がなくなつたと考える。B小学校では,これまでも研修で授業の基礎技術の徹底を図つてきて いることからあまり変化は見られない。
C中
学校は授 業の流れの分かる板書に取 り組んでぃる教員 が増加 し, 生徒が活動にす ぐに取 り掛かるなどの行動が早 くなつ てきていることを実感 している教員 も多い。8の
減少 は,生
徒が安定 してノー トやフアイルの管理ができる ようになつてきたためと考える。授業の工夫 (11〜16)についても
A小
学校,B4ヽ学 校,C中
学校で増加傾向にあ り,特
に11,13,16は
3校 ともに増加 している。中でも視覚化は
,A4ヽ
学校 と B小学校では,板
書の構造化,指
示の板書,挿陰など15
口
A口
B口 C図 10 研修直後 と 3ヶ 月後の授業づ くリチェック リス トの差
のイ ラス トの活用 ,実 物の提示 な どが共通で実践 され
,何度 も説明を しな くて も児童が進 んで活用できるよ う になつた ,注 意 を向けることができるよ うになつた
,児童 が課題解決できるよ うになつた と回答す る教員 が 多 かった。また
,B小学校 では ,全 ての教員がペア学 習や グループ学習 を取 り入 れた と回答 し ,そ の効果 と
して,自 信をもつて発表できるようになつた ,一 人で は解決できない課題でも友達の意見を開くことによっ
. 6
て解決できることが増 えた ,人 間関係 を築 くことがで きるよ うになつた との回答があつた。
個別 の支援 については
,A小学校で指導・支援 の増 加
,B小学校では指導・支援の評価
改善の増加 があ る。 C中 学校では指導の工夫を図ることによ り ,個 別
の支援の減少があつたことが分かる。 これは ,個 別 の 支援 を全体の支援 として指導の工夫に取 り入れ
,全て
の生徒を対象 とした支援 としていることか ら実際的に は支援 の減少ではない
(図 10)。33̲3生
活づ くりと授業づ くりにお ける個人の取組 傾 向
教員の行動変容 を明 らかにす るた めに ,生 活づ くり
と授業づ くりに関す る変化の有無に関す るアンケー ト 調査結果
(図 11,図 12)とチ ェ ックリス ト項 目の実 施状況の変容か ら表
5のよ うに分類 した。分類方法は
,研 修直後 のチ ェ ック リス トの結果 に比べ 3夕 月後 の チ ェック リスの結果が
6以上増 えている場合 を行動強 化 群
,2から 5増 えてい る場合を行動変容群
,1滅か
ら
1増を行動停滞群
,2以上減 を減退群の
4つに分類 した。
生活づ くりと授業づ くりの変化 に関す る自己理解 と して は図
11と図
12となつてい る。生活づ くりでは
「 1大 いにあつた J「2あ る程度 あった Jを 合計す る と
950%,授業づ くりでは ,1000%と なつてい る。
=1尽 ヽ■●った
,お
う程度うo= 蒟 まり颯)
感 ない国
:1
生活づ くりに変化があつた,ラに1にもった ,妨痴 った ,転IJれヽ 織 ぐヽヽ
図 12 授業づ くりに変化が あつた
群 ご とに特徴 をみてい くと ,行 動強化群 は研修直後 にチ ェックしなかつた項 目について意識 をもち実践 し た教員が多い傾向にある。また ,行 動強化群 が共通 し てチ ェ ックした項 目として ,生 活チ ェックリス トでは 1,2,3,24,26と 教室環境の整備 と温かい学級づくりを あげてい る。
行動変容群は ,も ともとチェック項 目が生活チェ ッ ク リス トで平均 18項 目以上 ,授 業チ ェック リス トで
9項 目以上の意識が高い教員が多い。 これまでの実践 に加 え生活づ くりと授業づ くりで
1っか ら
2つの項 目 を意識的に取 り組んだ教員である。
行動停滞群は ,定 着 してきた学習の準備 をす ること や学級のルール を守 ることな どについてできてい る と 判断 し
,教員 が意識 して実践 しな くなることが分 かっ た。 この群の教員の記述に多かつたのが ,定 着 して き たか ら指導・ 支援は しない との記述である。
減退群 の
7人は ,教 員 経験 年数
30年以上が
6人,1人が
20年以上
30年未満 の職員 で経験豊富な教員 が多 い。 この群は ,す でに取 り組みを実践 してお り ,敢 え
て意識 していると回答する必要がない と判断 している 可能性 があると考 え られ る。
表
5チ ェック リス ト項 目の実施状況の変容
分 類教員数 生活チェック
リスト
授業チェッ タリスト 行動強化群
19人A:8,B:6,C:5
1,2,3,24 ,26
1,5,9,1 1,15
行動変容群 20人A:7,B:8,C15
3,16,24 5,9,13
行動停滞群
11人A:7,B:1,C:3
3,24,26 9,11
減退群 9人
A:2,C:5)
共 通 項 目 無 し
9
34
評価
4(成果 レベル
)全 ての児量生徒が授業に参加できる場面が増 えてい るとの質
F.5に,Aガ ヽ 学校では ,「 大いに感 じている」
と 「ある程度感 じている」を合 わせ ると 1000%で
あった。また ,全 教員が全ての児意が授業に参加でき るよ うに意識 して指導の工夫を行っていること ,全 て
の児童が 自分の力 を発揮 してい ると感 じていることも 明 らかになつた。困難 きのある児童の授業参加 につい て も
,960%以上の教員が参加 していると回答 してい る。 しか しなが ら ,困 難 さのあ る児童 の単元テス トの 成績や授業での発表内容等か らの学習面での育ちにつ い ては約 35%の 教員 が あま り効果 を感 じていない こ
とが分かつた。
B小
学校 では ,全 教 員が全ての児童が授業 に参カロで
きるよ うに授 業で指導 の工夫 を行 つてい ること ,全 て
山元 薫
の児童が学級で自分の力を発揮 していると感 じている ことが分かつた。また
,困
難 さのある児童も授業に参 加できる場面が増えてきてお り,800%以上の教員が授業のあらわれや単元テス ト等からも学習面での育ち があると感 じている。
c中
学校でも全教員が全ての生徒が参加できる授業 を意識 し指導を工夫 していることが分かつた。合わせ て,約 90%以
上の教員が全ての生徒が授業に参加す るようになつた, 自分の力を出していると感 じている。しかしながら
,約 26%の
教員が困難 さのある生徒の 授業参加は増えているものの,単
元テス トや ノー ト指 導,発
表内容等から学習面での青ちは難 しいと感 じて いることも明らかになつた。評価
4に関す る質問事項
(図 13,図 14,図 15共通
)1:全
ての児童生徒が授業に参加できるよ うに意 識 して指導 を工夫 してい る
2:学
級 の全ての児童生徒 は ,自 分の力 を発揮 し
3:学
ている 習面や行動面 ,コ ミュニケー シ ョン面 で困 難 さのあ る児童生徒 が授業 に参加 で きる場 面 が増えてきている
4:学
習面や行動面 ,コ ミュニケー シ ョン面 で困 難 さのある児童生徒 の学力が伸び ている
4 まとめ
本研究では
,小
中学校におけるユニバーサルデザイ ンに関する校 内研修 を実施 し,そ
の研修成果 をカー ク・パ トリックの効果測定 レベルに基づいて,ア
ン ター ト結果を分析することで明らかにした。その結果
,校
内研修 を実施することでユニバーサル デザインに関する必要性や社会的な背景,発
達障害の 特性の理解や具体的な指導・支援方法,個
Bllの支援の 具体策について高い満足を得 られることができ,教
員 の意識化を図ることが可能であることが分かつた。ま た,学
習 レベルや行動 レベルの評価 としてチェックリ ス トを用いることで,教
員 の一人一人の実践状況をjEI 握することができ,個
人として,組
織 として評価することもできることが分かつた。現状 を客観的に把握す ることによつて
,児
童生徒の実態や学校の 目的に応 じ て,研
修の推進の方向性をもつことができることも明 らかになつた。加 えて,同
じチェックリス トを用いて ることで、教員の実践の変容について経過を追って評 価することが可能であつた。今回の研究では
,全
ての教員が生活づくりと授業づ くりにおいて意識の変イヒとともに具体的な行動 レベル での変化があつた。また,949%の教員 が困難 きのあ る児童生徒を含めて全ての児童生徒が授業への参加状 況が良好 となつたと評価 している。 しか しながら困難 さのある児童生徒の学習面での育ち (単元テス トでの 成績の伸びや ノー ト記述の質の向上等)に
ついては,288%の
教員が変容がみ られないと判断 している。こ のことは本研究の成果 として,教
員の意識の変化 と指導・支援の具体的な変化は児童生徒の授業参加を促進 することは可能だが ,困難きのある児童生徒の学習面
での育ちについてはまだ成果を出していないことを示 している。ただ,生
活面においても授業面においても 支援を継続 しているB4ヽ
学校については80.0%の教 員が困難 さのある児童に学習面の育ちがあると評価 し ていることか ら,学
級環境が整った り,授
業参加が促 進 された りしたとしても,適
切な指導と必要な支援を 継続することが大事ではないか と考える。あわせて,3小
学校は学級全体への支援も継続 しつつ個別の支援 も実態把握か ら支援・指導の実施,評
価 を計画的に 行つていることか ら,個
別の支援の充実も重要であるユ
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13
児童の変害(A小
学校),
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児童の変容(B小
学校)̀ 2
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図
15
生徒の変容(0中
学校)と考える。
本研究の限界 としては
,実
践校が3校
と小規模であ ること,教員 の主観を中心に したアンケー ト調査 と なつている点である。今後は,規模の拡大 と学力に関 する評価方法,児
童生徒側からのユニバーサルデザイ ンの実施に関する評価を得たいと考える。翻辞
本研究を進めるにあた り,A小学校
,Bガ
ヽ学校,C中学校の校長先生
,研
修主任の先生方には多大なるご 協力を頂戴いたしました。ここに深く感謝の意を表し ます。引用文献
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の視点を活かした指導と学級づくり』
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,研
究紀要 19号http://w,■ center shizuokB
c.ed
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2015 1 4)
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業のユ‐パーサルデザインの教育方法学的検討