埼玉大学紀要 教育学部、67(1):53-60(2018)
特別支援教育の視点からみた新学習指導要領の議論
~「主体的・対話的で深い学び」を中心に
山 中 冴 子 埼玉大学教育学部特別支援教育講座
キーワード:主体的・対話的で深い学び 学びの連続性 特別支援学校学習指導要領
1.はじめに
新しい学習指導要領は、いわゆる21世紀型スキルやコンピテンシーを追求する国際動向を踏ま え、これまで注力してきた「何を学ぶのか」にとどまらず、その先に「何ができるようになるのか」、
そのために「どのように学ぶのか」までを示し、「学びの地図」を提供するとする。
2017年4月に告示された新しい特別支援学校学習指導要領では、インクルーシブ教育システム の構築を念頭に、これまで以上に小学校等の学習指導要領との「学びの連続性」が意識されている。
それに伴い、障害のある児童生徒に対しても、「何ができるようになるのか」「どのように学ぶのか」
等が共通して明示されることとなった。
従来から特別支援教育の実践においては、個別の指導計画などを通して、「何ができるようにな るのか」、「どのように学ぶのか」は常に意識されてきたし、特に後者については様々な指導方法 が存在し、子ども理解を含む教員の専門性にも関わって議論となってきた。そこで本稿では、特 別支援教育分野における「どのように学ぶのか」に注目し、それがどう受け止められているのかに ついて、「何ができるようになるのか」も念頭にレビューを行うとともに、主としてこれらが従来 から大きな論点となってきた知的障害に焦点を当てつつ、今後の議論に必要と考えられる観点や 方向性を考察する。
2.「何ができるようになるのか」(資質・能力)をめぐって
新しい学習指導要領の前提には、21世紀を知識基盤社会と捉え、子どもたちに対して、予測で きない変化に主体的に向き合って関わることや、自らの人生だけでなく社会をも幸福にしていく「創 り手」となることへの期待がある。そのために、「何を学ぶか」「教員が何を教えるか」を中心に組 み立てられてきたこれまでの学習指導要領のあり方を超えて、知っていることを活用して未来社 会を切り拓くための「何ができるようになるのか」(資質・能力)を見通すものへの転換が図られ た(文部科学省初等中等教育局教育課程課、2017)。そして、「資質・能力」を社会と共有する「社 会に開かれた教育課程」を実現させることが謳われた。「資質・能力」の規定は、OECD各国のい わゆる21世紀型スキルやコンピテンシーを追求する教育改革に沿うものと言えるが、これは日本 にとって決して新しいものではない。松尾(2014)は、1983年の「自己教育力」、1989年の「新 しい学力観」、1998年・2008年の「生きる力」などを挙げ、日本には「世界的にみても早い時期 に資質・能力目標が導入されてきたと考えることもできる」としている。文科省も、「資質・能力」
の規定を、「生きる力」の理念の具体化として捉えている(文部科学省初等中等教育局教育課程課、
2017)。
「資質・能力」には、2007年改正学校教育法にて規定された以下の「学力の三要素」がそのま ま位置付けられている。
①基礎的な知識及び技能
②知識及び技能を活用して課題を解決する力、判断力、表現力等
③主体的に学習に取り組む態度
本田由(2017)は、今回の学習指導要領改訂は、「『改正』教育基本法・学校教育法の内実が、
満を持して完全装備される」ものであり、その「旗標」が「資質・能力」であると述べている。
そして、「資質」は「態度」と同義化し、知的側面に関する「『能力』を凌駕し、それを含み込む もの」として押し出されたと指摘する。これに関わって、今回、学習指導要領総則においては、
初めて前文として教育基本法にある「わが国と郷土を愛する」ことを含む20もの徳目が教育目標 として明記された。同法において、学校教育での徳目への取り組みが義務づけられているが、今回、
学習指導要領においても示されたことをどのように考えるべきか、本田由の指摘は示唆に富む。
八木(2016)は、「今世紀以降の産業構造や就業の変化に応じる人間能力への社会的要請は情 意領域への侵食を深めている側面がある」とし、教育においてそれが引き取られると、「人格の内 面に対する圧力になりかねない」ことを指摘する。そして、今回の改訂における「資質・能力」に おいてもこの点を危惧している。また、改訂の審議において議論された「産業社会と教育のマッ チング」についても、「能力開発」にばかり目が向けられており、教育権や労働権といった「政治 的社会的問題」としての把握がないことを批判する。
関連して児美川(2016)も、「資質・能力」について、知識基盤社会を土台とした「グローバル 経済競争下で活躍する人材の選抜と育成」を狙ってのものであるとして強く批判している。
子どもの内面に立ち入って学力を規定することの危険性、また、その学力自体がどのような社 会動向や教育観に貫かれているのかについては決して新しい論点ではないが、「資質・能力」が規 定され、教育実践の場に直接影響を与える状況において、改めて大きな論点となっている。
3.「どのように学ぶのか」(主体的・対話的で深い学び)をめぐって
文科省は、「主体的・対話的で深い学び」でもって「資質・能力」の獲得や伸長を目指す必要を 述べている。「主体的・対話的で深い学び」は「学習内容を深く理解し、資質・能力を身につけ、
生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすること」であり、以下の視点を踏まえ た授業改善であると説明される(文部科学省初等中等教育局教育課程課、2017)。
①主体的な学び:自己の学習活動を振り返り次につなげる
②対話的な学び:協働や対話から自己の考えを広げる
③深い学び:知識を相互に関連づける、情報を精査して考えを形成する、問題を見出し解決策を 考える、思いや考えを基に創造する
このような視点に基づく授業改善について、田村(2017)は、学びのプロセスにおいて「主体
的な学び」や「対話的な学び」はそれ自体に意味及び価値があるとしつつも、それらが「深い学び」
に大きく関与するものとして理解されることの重要性を指摘する。
佐藤(2017)も、「深い学び」の意味することこそ重要であるとする。「知識を既存経験・知識 と関連付けて概念化したり、さまざまな知識や経験、見方・考え方との関係に位置付け構造化し たりすることこそが重要」として、教育方法の目的化を危惧している。そして、そうならないため に、「資質・能力」に照らしての「学習評価と一体的な授業改善」が求められるとともに課題であ るとした。
文科省は「主体的・対話的で深い学び」について、「特定の指導方法のことでも、学校教育にお ける教員の意図性を否定することでもない」とはしているが、教育方法として一人歩きする危険性 を指摘する声は他にもある。例えば関(2016)は、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で 深い学び)について、これまでの「言語活動や探求的な学習指導、社会とのつながりをより意識 した体験的な活動等の成果や、ICTを活用した指導」がその中身に当たると指摘する。そして、学 習指導要領が「『教育目標・内容』『学習・指導方法』『学習評価の在り方』のすべて」について縛 る状況においては、アクティブ・ラーニングが授業の「定型化」をもたらすことを危惧している。
本田伊(2017)も、「主体的・対話的で深い学び」が先述の「資質・能力」とセットで導入され ることによる「授業実践の画一化」への危惧を表明している。各学校段階、各教科の「指導計画 の作成と内容の取り扱い」にこの用語が挿入されていることがその理由の一つとされている。
さらに、「資質・能力」により関わらせて児美川(2016)は、「〈知識・技能の獲得→思考力・判 断力・表現力の育成→主体性・多様性・協働性の涵養〉へとせり上がるような学習を組織するた めに」、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)が導入されたとし、そこでの「能 動的・主体的」の意味を問い直す必要を述べている。そして、ここでの「能動的・主体的」は、
あくまでも、グローバル経済競争の土台としての知識基盤社会に対応するためのものとして追求 されるものであることを指摘している。
例えば佐藤のいうところの、「主体的・対話的で深い学び」が何か特定の方法として広がり、そ こでの狙いが曖昧になることへの危惧は、関のいう授業の「定式化」や本田伊のいう「授業実践の 画一化」への危惧とも類似しているように見える。しかしながら、関や本田伊が児美川の指摘にも あるような「資質・能力」からの問い直しを合わせて求めている点は、佐藤との大きな違いである。
4.特別支援教育の方向性
特別支援学校学習指導要領の改訂では、①学びの連続性を重視した対応、②一人一人に応じた 指導の充実、③自立と社会参加に向けた教育の充実、以上3点が主な改善事項とされた(分藤、
2017)。
特別支援教育では、障害者権利条約批准を受けて、インクルーシブ教育システムの構築に向け て多様な学びの場を確保することとされている。今回の学習指導要領改訂においては、インクルー シブ教育システムの構築に向けて学校選択を柔軟にしていくことを念頭に、小学校等と特別支援 学校の教育課程の関連性を密にすることが明確に意識されている。そのために、特別支援学校学 習指導要領でも「資質・能力」「主体的・対話的で深い学び」が同じく追求される。これが①の学 びの連続性である。これについては、「重度障害者等に関する教育課程の取り扱い」に基本的な考 え方を規定する、知的障害の児童生徒のための各教科等の目標や内容を「資質・能力」の観点か
ら整理するなどが行われた。後者について、より具体的には、小・中・高等部の各段階において 小学校等と同様に「資質・能力」が明確にされるとともに、各学部間での円滑な接続を念頭に中 学部の段階の示し方を一段階から二段階とし、内容の系統性が担保された。さらに、現行では各 教科等を合わせた指導のあり方や学習評価のあり方が曖昧になりがちなことを課題として、教科 別や領域別での指導の考え方を図り、その上で各教科等を合わせた指導を実施することの必要性 が示された(丹野、2017)。
②については、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者及び病弱者の特別支援学校において、
障害の特性等に応じた指導の配慮を充実させる、発達障害を含む多様な障害に応じた指導の充実 に向けて、自立活動の内容に「障害の特性の理解と生活環境の調整に関すること」を新設するな どが行われた。自立活動については、配慮事項としても、「個々の児童又は生徒が発達の遅れてい る側面を補うために、発達の進んでいる側面をさらに伸ばすような指導内容を取り上げること」
「個々の児童又は生徒に対し、自己選択・自己決定するきっかけを設けることによって、思考・判断・
表現する力を高めることができるような指導内容を取り上げること」「個々の児童又は生徒が、自 立活動における学習の意味を将来の自立や社会参加に必要な資質・能力との関係において理解し、
取り組めるような指導内容を取り上げること」が加えられた。自らの障害を理解すること、できる ことに目を向けて自信をもつこと、自己選択・自己決定の力をつけること、主体的に自立や社会参 加を目指すことを強調したものとなっている(萩庭、2017)。
③については、卒業後を意識したカリキュラム・マネジメント、幼稚部・小学部・中学部から のキャリア教育の充実、生涯学習やスポーツ・文化芸術活動など豊かな生活を送るための配慮、
交流及び共同学習の充実、知的障害のある児童生徒の教科の内容の充実が該当する。
学びの連続性や一人一人に応じた指導の充実に関わっては、小学校等の学習指導要領において も、各教科等での学習過程での困難に注目して指導の工夫の意図や手立てが具体的に記載された。
また、通級による指導や特別支援学級での「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の作成 も求められることとなった。交流及び共同学習の充実も大いに関わるところであるのは言うまでも ない。
5.障害のある児童生徒を念頭に置いた「主体的・対話的で深い学び」をめぐって
以前より、「原教科」をはじめとして、特別支援教育と通常教育の連続性については教科を念頭 に議論されてきた経緯があるが、近年では、名古屋(2015)が、「生きる力」「キー・コンピテンシー」
「アクティブ・ラーニング」等を通常教育から特別支援教育への教育目標レベルでの「接近」と捉え、
徳永・一木・田中(2015)は、知的障害のある子どもへの教育内容や方法について、教育目標は 通常教育と同じであること、そして、例えばよく言われる「生活経験を豊かに、具体的な場面で、
実際的・具体的な内容で」は、知的障害の子どもにとどまらず、全ての子どもに重要なものであ るとの見解を示している。
新学習指導要領は、教科などの「何を教えるか」の先に「資質・能力」を見通しているため、「資 質・能力」を正面から議論し、これまでの連続性や「接近」にまつわる議論を関連づけて、新学 習指導要領のあり方を検討せねばならない。しかしながら現時点では、この作業は十分に取り組 まれていない。先述のように、「主体的・対話的で深い学び」は、「資質・能力」とセットで問わ れる必要があるが、特別支援教育分野では、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニ
ング)に注目した議論が先行している。そして、「主体的・対話的で深い学び」は、特に新しいも のというよりは、これまでの特別支援教育実践と通ずるところがあるとして理解される傾向にある。
例えば名古屋(2017)は、特別支援教育においては、各教科等を合わせた指導を通して、生活 の実際的な場面に子どもが主体的に関わっていく姿が追求されてきたことから、「主体的・対話的 で深い学び」に合致すると指摘している。竹林地(2017)も、「『主体的・対話的で深い学び』の ために単元などの授業のまとまりの中で、習得・活用・探求のバランスを工夫することが重要であ るという考え方」は、これまでの知的障害教育の方向性と同じであること、そして、各教科等を合 わせた指導は「生活に必要なことを学ぶ」にとどまらず「生活の中でどう生かすかを学ぶ」もの であり、現在及び未来の生活に大いに関わるために、その先導的な実践として位置付けられるべ きことを述べている。
以上のような、特別支援学校を中心とした教育課程を踏まえた見解に加えて、「主体的・対話的 で深い学び」は、授業のユニバーサルデザイン(UniversalDesign;以下、UD)と関連付けて受 け止められてもいる。UDの考え方や取り組みは、「主体的・対話的で深い学び」に向けた方法の 一つとして捉えられていると言える。
授業のUDは、特別支援教育における指導技術を通常学級に取り入れたものであり、「特別支援 教育と教科教育の架け橋」(宇野、2017)とか、「教科教育と特別支援教育の連続性」(小貫・桂、
2014)と説明される。UDは、発達障害のある子どもも含め、全ての子どもが参加し、理解し、
身につけ、活用することを可能とするために、学習環境と授業の「バリア」を取り除くものである。
特に授業においては、授業をシンプルにする「焦点化」、授業の展開を論理的にする「構造化」、
目標に向けての「スモールステップ化」、情報の「視覚化」、身体を使って理解を深めさせたり新 たな発見を生じさせる「動作化」、互いの意見を伝え合ったり確認するなどの「共有化」がキーワー ドとなる。
宇野(2017)は、教員主導でUDにおける授業の「焦点化」を実施し、その先に、教員がデザ インし、子ども主体で動くアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)があるといった 連続性を捉えている。
6.障害のある児童生徒への指導に関する今後の議論に向けて
各教科等を合わせた指導については、とりわけ知的障害を対象に、児童生徒の興味・関心の幅 を広げるだけでなく、設定されたテーマを通して認識を深めさせることが求められてきた。「はい まわる経験主義」に陥らないために、「活動や経験」が児童生徒の主体性によるものでなければな らないことも指摘されてきたし(清水、2003)、「活動・体験」と「想像・思考」をどう関連させ るかが重要ともされてきた(渡邉、2010)。また、児童生徒の発達段階が特に低い場合には、教 科とは何か、教科が可能となる発達年齢はいつかなどが長く問われてきた(田中、1997)。渡邉
(2014)は、以上のような経緯を踏まえ、「国語・算数を中心とした狭い学力観から脱却し、学校 教育全体を視野に入れた学力観」を導入すること、それをもって、教科と対立しがちであった、
各教科等を合わせた指導にアプローチする必要を述べている。この議論に決着がついているわけ ではないが、児童生徒の主体性を励ましながらも、目的や身につけてほしい事柄を明確に理解し ながら取り組む、いわば深く学ぶ取り組みが求められている。新学習指導要領は、確かに、各教 科や各領域の考え方を踏まえた上で各教科等を合わせた指導を実施することとしたし、「主体的・
対話的で深い学び」を求めてはいるが、「資質・能力」を正面から議論することがなければ、その 本質を捉えることはできない。
これに関わって、先の児美川らによる「資質・能力」に対する指摘は、障害のある児童生徒にとっ ては特に重い。知的障害のある児童生徒の内面をいかにくぐるかについては、子ども理解や教員 の専門性といった観点から、学校教育の成果を労働力として求められる能力に規定することにつ いては、作業学習やキャリア教育の観点から、大いに議論となってきた。このことと、指導方法は その「資質・能力」の獲得及び伸長のために存在するものであることを踏まえれば、学びの連続 性という言葉で学力の3要素をそのまま引き受けていくことの妥当性から問わねばならない。
加えて、指導方法を検討する上での必要な観点は、「資質・能力」にとどまらない。
湯浅(2015)は授業指導について、「教師の指導と子ども(集団)の相互性において成立・展 開するものであり、教師の働きかけとそれに応じて示される子どもたちの認識・表現活動がどのよ うに関わり合っているのか、その関わり方が授業の質としてどう評価できるのかを検討すること」
こそ重要と述べている。「教師の指導と子ども(集団)の相互性」や「授業の質」に関わって、今 井(2015)は、子どもの苦悩や課題を丁寧に引き取り寄り添うことが不可欠であるとする。これ は「子どもの発達課題をその子どもの生活現実のコンテクストにおいて捉えておくこと」につなが る。さらに、「学習への参加を促す拠点」としての学級集団の存在意義を明確に把握した上で、子 どもに「授業における学習のあり方の選択と決定をめぐる議論のプロセス」への当事者としての主 体的な参加を求めている。また原田(2017)は、国語の授業を念頭に置きつつ、「授業に参加して いることにされている」(包摂されているようにみえる)子どもたちを、「他者とのかかわりを通し てきちんと学びに巻き込もうとする」こと(再包摂)を重要視する。つまり、授業のあり方を問う ということは、授業テクニックにとどまらず、子どもの自己、集団、そこでの主体、参加、以上の 内実とそれらを可能にする条件を問うことでもあると換言できよう。ちなみに参加について湯浅
(2015)は、「(ⅰ)学習の場に参加する見通しの形成、(ⅱ)遂行すべき学習活動に参加できるかど うかの見通しの形成、(ⅲ)学習活動を展開しつつ、認識や表現活動を学習集団において深める過 程に参加できるかどうか」の3局面で把握している。
UDに関しては、授業テクニックとして有効なものもあるとされる一方、様々な批判的検討がな されている。例えば吉田(2015a)は、UDが「教師の指導の『テクニック』集として位置付いて しまう危険性」を指摘する。これについては先の小貫・桂も、特別支援教育の手法を取り入れた らユニバーサルデザイン化されるわけではないとして、手法ありきに陥ることを危惧している。し かし、小貫・桂がUD「授業内容の本質」を理解するための方法であるということを強調するのと は異なり、吉田(2015b)は、授業における子どものつまずきを教育方法学的にどう捉えるべきか、
多様な子どもが集団の中で学び合うことの価値をどう考えるのか、特定の授業スタイルに「なじ まない子どもを排除してしまう可能性」があるのではないか、といったことを論点としている。
7.おわりに
本稿では、新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」の受け止められ方について、「資質・
能力」も念頭に、特別支援教育の観点から概観した。
「主体的・対話的で深い学び」はこれまでの特別支援教育における取り組みと合致するといった 見解が目立つが、今後の議論に必要な観点及び方向性としては、「資質・能力」及び子どもの自己、
集団、主体、参加とそのための条件を問うていくこと、それらを通して授業の質に迫っていくこと を通して、「主体的・対話的で深い学び」の意味するところを捉え返すことが求められよう。特に、
社会適応主義と対峙してきた知的障害教育において、これは重要な課題と考える。本稿では扱え なかったが、以上を踏まえつつ、自閉症など障害種別での指導方法を合わせて検討する作業も、
今後必要となろう。
「資質・能力」については、OECDEducation2030のキー・コンピテンシーの再定義が関わる ことも指摘されている(八木、2016)。これまでの小学校等との連続性や「接近」にまつわる議論 をどう理解するのか、その上で今日の動向をどう評価するのかに関わって、OECD諸国における 動向を特別支援教育の観点から詳細に捉え、日本の状況を相対化する作業も不可欠となろう。
引用文献
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小貫悟・桂聖『授業のユニバーサルデザイン入門 どの子も楽しく「わかる・できる」授業のつくり方』
東洋館出版社、2014年
児美川考一郎「教育内容ベースから資質・能力ベースへの転換─学習指導要領改訂と知の再編」『教育』
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竹林地毅「『各教科等を合わせた指導』の展望~これからの教育のあり方を示す先導的な実践としての位 置付け~」『特別支援教育研究』No.717、2017年、6−9頁
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本田伊克「改訂学習指導要領の性格分析─私たちの教育課程作りをめざして」『教育』No.859、2017年、
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吉田茂孝「第5章 すべての子どもが『わかる』授業づくりの方法論」インクルーシブ授業研究会編『イ ンクルーシブ授業をつくる』ミネルヴァ書房、2015年(a)、48-59頁
吉田茂考「『授業のユニバーサルデザイン』の教育方法学的検討」『障害者問題研究』第43巻第1号、
2015年(b)、18-25頁
渡邉健治「第11章 生活単元学習の展開と課題」渡邉健治・新井英靖編著『特別支援教育における子ど もの発達と教育方法』田研出版、2010年、137-148頁
渡邉健治「知的障害教育における学力問題を問う」渡邉健治監修『知的障害教育における学力問題』ジアー ス教育新社、2014年、8-27頁
(2017年10月30日提出)
(2017年11月18日受理)