• 検索結果がありません。

秘 密 に 収 集 さ れ た D N A 鑑 定 の 訴 訟 上 の 利 用

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "秘 密 に 収 集 さ れ た D N A 鑑 定 の 訴 訟 上 の 利 用"

Copied!
76
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

 

   

 

 

   

 

   

   

 

   

   

 

 

   

 

     

秘 密 に 収 集 さ れ た D N A 鑑 定 の 訴 訟 上 の 利 用

( 五

・ 完

─ 最 近 の ド イ ツ 連 邦 裁 判 所 判 決 を 手 掛 か り に

─ 豊 ─

   田  博 

   昭

(2)

   

   

   

 

 

 

   

   

   

   

 

1  ドイ ツ法 の現 在と その 動向  

⑴  本稿 は、 連邦 裁〇 五年 判決 以降 の法 改革 の概 要も 取り 込み

、筆 者の 執筆 途中 の個 人的 事情 もあ って

、長 期で きわ め て 冗長 なも のに なっ てし まっ た。 お読 み頂 いた 先生 方に は、 お詫 び申 し上 げな けれ ばな りま せん

。本 稿で 検討 して きた 問 題 状況 と、 その 後の 法改 革に つい て、 筆者 が認 識で きた 限り で最 後に まと めて おく と、 おお よそ つぎ のよ うに なる ので は な いか と思 われ る。  

⑴  連邦 裁二

〇〇 五年 一月 一二 日判 決は

、法 律上 父子 関係 にあ る子 また はそ の監 護権 者で ある 母に 対し て秘 密に

、そ の 同 意を 得る こと なく

、子 の法 律上 の父 たる 男性 から 依頼 を受 けた 民間 業者 によ って 実施 され た、 裁判 外の 私的 なD NA 鑑

   

   

     

(3)

定 結果 に基 づき

、当 該父 が当 該子 に対 して 父子 関係 否認 の訴 え( 民法 旧一 六〇

〇条 以下

)を 提起 した とい う二 つの 事件 で、 そ のよ うな 秘密 に収 集さ れた DN A鑑 定に 基づ く否 認原 告( 父) の請 求を 棄却 した 原判 決を それ ぞれ 維持 して

、否 認原 告 の 上告 を棄 却し た(BGHZ162,S.1ff.=FamRZ2005,S.340ff.=NJW2004,S.449ff.;ders.,FamRZ2005,S.342ff.

)。  

⒜  連邦 裁は

、第 一事 件( 原審

・ツ ェレ ェ高 裁二

〇〇 三年 の事 件) は同 一原 告か らの 再訴 事件 であ った が、 連邦 裁判 例 の 採る 訴訟 物論

・二 分肢 説に よれ ば、 前訴 判決 の既 判力 は、 当時 の原 告の 脆弱 な生 殖能 力と いう 事実 は、 否認 の訴 え提 起 に つき 必要 な「 最初 の疑 い」 を基 礎づ ける のに 適さ ない とい う判 断に 及ぶ のみ で、 本件 のよ うな 相手 方の 人格 権を 侵害 し た 違法 収集 DN A鑑 定で あっ ても

、そ れに より 判明 した 父子 関係 を否 定す る事 実は 前訴 の父 子関 係否 認訴 訟の 訴訟 物を 基 礎 づけ た「 生活 上の 事実 関係

」と は「 別の 生活 上の 事実 関係

」で ある とし て、 原告 の再 訴を 適法 とし た原 審の 判断 に問 題 は ない とす る。  

⒝  つ いで 連 邦 裁 は、 父 子 関 係の 否 認 の訴 え 提 起に つ い て、 有 理 性 審 査に お い てい わ ゆ る詳 細 説 を 採る 連 邦 裁の 先 例

(一 九九 八 年四 月二 二 日判 決と 二

〇〇 二年 一〇 月 三〇 日判 決

) に従 っ て、 原 告は

、 客 観的 にみ る と、 原 告と 被 告の 血縁 関 係に 疑問 を生 じさ せ、 かつ

、他 男と 被告 の血 縁関 係の 可能 性を まっ たく あり えな いこ とも ない と思 わせ るに 足り るだ けの

「最 初 の疑 い」 の 事 情を 申し 立 てな けれ ば なら な いが

、 秘密 に 収集 され た 本件 D NA 鑑定 は その よう な 事情 を示 す 主張 と は いえ ない

。右 鑑定 は、 父子 関係 の否 認手 続に おい て、 証拠 方法 とし てだ けで なく

、当 事者 の申 立て とし ても 利用 でき な い

。そ の法 的根 拠と して

、連 邦裁 は、 本件 DN A鑑 定は

、被 告の 情報 に関 する 自己 決定 権の 形で 現れ る人 格権

(基 本法 一 条 一項

、二 条一 項) を侵 害し てい ると みな す。 基本 権の 保護 は裁 判手 続で も尊 重さ れな けれ ばな らず

、連 邦裁 は違 法収 集 証 拠に 関す る先 例に 従っ て、 本件 DN A鑑 定は 違法 であ り、 否認 手続 にお いて それ を利 用す るこ とは でき ない とす る。 有

     

(4)

理 性審 査の ため の利 用は

、子 の人 格権 およ び情 報に 関す る自 己決 定権 に対 する 新た な違 反に なる

。こ れは

、そ の後 に制 定 さ れ た二

〇〇 九 年七 月 三一 日の

「人 間の 遺伝 子 検査 に関 す る診 断 法

(遺 伝子 診 断法

)」 で示 さ れた 連邦 政 府の 考え 方 とも に一 致し

、国 際法 レヴ ェル の人 権規 定等 でも 支持 され る。

⒞  他  方で

、 父 子関 係を 知 る父 の権 利 は、 否 認の 訴 えの 提訴 期 間の 制限

(民 法旧 一六

〇条 二項

)、 子の 福 祉に 重き を おく 父子 関係 改革 法( 九七 年) の立 法者 意思 から みて も、 子の 情報 に関 する 自己 決定 権よ りも 高い 価値 があ ると みな すこ とは でき ない

。そ の権 利は

、自 己の 血縁 関係 につ いて の知 識を 獲得 しよ うと する 権利 まで も付 与す るも ので はな い。

⑵  右  連邦 裁〇 五年 判決 以降

、本 稿の テー マ領 域に おけ る法 改革 が進 めら れた

。⒜ 第  一事 件で 原告 から 連邦 憲法 裁に 憲法 訴願 が申 し立 てら れて いた が、 連邦 憲法 裁〇 七年 判決 は、 相手 方に 秘密 に収 集さ れた DN A鑑 定の 訴訟 上の 利用 を 禁 じ た連 邦裁

〇五 年判 決は 正当 とし たが

、基 本法 二条 一項

・一 条一 項は

、一 般的 人格 権の 形成 物と して

、夫 につ いて

、法 律 上 の子 との 血縁 関係 を知 る権 利だ けで なく

、知 る権 利を 実現 する ため の権 利に つい ても 保障 して おり

、法 律上 の父 と子 と の 血縁 関係 を確 認す るた めの 法的 規制 がお かれ てい ない 点に つい ては 憲法 違反 があ ると 判示 して

、血 縁関 係を 解明 し確 認 す るた めの 法律 上の 手続 を創 設す るよ うに 期限 付き

(二

〇〇 八年 三月 三一 日ま で) で立 法者 に命 じた

。こ れを 受け て、 立 法 者は

、二

〇〇 八年 三月 二六 日の

「父 子関 係否 認手 続と 独 立し た父 子関 係の 解明 につ いて の法 律(GesetzeszurKlärungder

VaterschaftunabhängigvomAnfechtungsverfahren

)」

(BGBlI2008,S.441ff.

) を制 定し

、生 物学 上の 父子 関係 を解 明す る た めの 手続 規定

(民 法一 五九 八条 a) を民 法典 中に 導入 した

。  

⒝  それ とと もに

、立 法者 は、 人間 の遺 伝子 検査 に伴 う差 別的 扱い を防 止し

、個 々人 に遺 伝子 検査 の機 会を 保障 する 目 的 で、 二〇

〇九 年七 月三 一日 の「 人間 の遺 伝子 検査 に関 する 法律

( いわ ゆる 遺伝 子診 断法

(Gendiagnostikgesetz-GenDG

   

   

     

(5)

BGBl1,S.2529ff.

〇一

〇年 二月 一日 施行

」を 制 定し た。 こ の法 律に より 遺伝 子検 査の 実務 を良 好な もの にし て、 本件 の よ うな 民間 機関 によ る秘 密の

(同 意の ない

)D NA 鑑定 の実 施に 対し ては

、関 係者 に刑 事罰 を科 する 規定 を導 入す るな ど の 法規 制が なさ れた

。  

⒞  ま た、 立 法 者 は、 二

〇 八 年 一 二 月 一 七 日 の

「 家 庭 事 件 お よ び 非 訟 事 件 の 手 続 に 関 す る 法律

(Gesetzüberdas

VerfahreninFamiliensachenundindenAngelegenheitenderfreiwilligenGerichtsbarkeit.

い わゆ る家 庭非 訟事 件手 続改 革 法

(FGG-Reformgesetz

),BGBl2008IS.2586ff.

二〇

〇九 年九 月一 日施 行)

」 を 新し く制 定し

、本 件の 父子 関係 の否 認訴 訟

(民 法一 五 九九 条か ら 一六

〇〇 条 c) は いま や

「 父子 関係 の 否認 手続

」 と 呼ば れて

、 同 法が 適 用さ れる 事件 と して 再構 成 する

、い わゆ る訴 訟の 非訟 化の 途を 採用 して いる

⑵  右  に述 べた 迅速 な法 改革 に面 して

、引 用 デー タは いま や古 臭く 感じ られ るが

、筆 者の 参照 した オレ ル(S.Orel

)の 研

従っ て、 秘密 の父 子関 係テ スト の背 景に ある ドイ ツの 社会

・家 族に 関連 する 事情 を一 瞥す ると

、① ドイ ツ法 上、 D N A鑑 定は 一九 九〇 年台 の初 頭か ら父 子関 係の 解明 に改 革を もた らし てい ると いわ れる

。父 子関 係テ スト は当 初は アメ リ カ 合衆 国に おい てビ ジネ ス業 務と して 注目 され るよ うに なり

、九

〇年 代終 わり にド イツ 国内 でも 民間 の検 査機 関が 設立 さ れ た。 二〇

〇四 年当 時、 一二 の大 手の 検査 機関 を含 めて 一〇

〇か ら一 二〇 の検 査機 関が 乱立 して いた

。② そし て、 私的 な 父 子関 係テ スト は儲 かる ビジ ネス 市場 とし て発 展し たが

、被 検査 者の 同意 なし に検 査依 頼が でき るこ とも その 一因 とみ ら れ てい る。 秘密 の父 子関 係テ スト に関 する 正確 な統 計数 値は 存在 しな いが

、推 計さ れた 実施 件数 は一

・五 万件 ない し五 万 件 とみ られ てお り( 二〇

〇五 年当 時の 出生 児は 六 八・ 五万 人

)、 その 市 場収 益の 総額 は三

〇〇

〇万 ユー ロか ら四

〇〇

〇万 ユ ー ロ であ る。 当時 の連 邦司 法大 臣( ブリ ギッ ト・ ツィ プリ ス) は、 実施 件数 を二 万件 と推 計し てい る。

177

     

(6)

 

③と ころ で、 裁判 上実 施さ れた 父子 関係 の鑑 定件 数( 二〇 一〇 年) は、 一年 当た りで 一万 五〇

〇〇 件と 推計 され

(二

〇 五年 当時 は八

〇〇

〇件

)、 裁 判上 の父 子関 係の 検査 費用 は一 二五

〇ユ ーロ であ るが

、民 間業 者に よる 私的 検査 の費 用は

、 二

〇〇 三年 以降 の価 格競 争も 影響 して より 廉価 にな り、 二〇

〇な いし 八〇

〇ユ ーロ であ る。

④父 子関 係の 否認 事件 につ い て も正 式な 司法 統計 はな いが

、一 説に よる と一 年平 均で 約一

・四 万件

、そ の大 部分 が民 法一 五九 二条 一号 関係

(子 の母 と の 婚姻 に基 づく 父子 関係 の成 立) の事 件で ある

。ま た裁 判上 の父 子関 係確 認訴 訟( 民法 一六

〇〇 条d 第一 項) にお いて

、 妻 が子 の父 であ ると 主張 する 男性 の約 四分 の一 は、 本当 の父 では なか った とす る研 究結 果も あ

⑤ 私的 な父 子関 係テ ス ト の結 果を みる と、 圧倒 的ケ ース は父 子関 係の 存在 が確 認さ れる 結果 とな って いる

。検 査機 関は

、検 査事 例中 の七 五% か ら 九〇

%が そう した ケー スと みて おり

、連 邦司 法省 は八

〇% から 九〇

%以 上と みて いる

。⑥ 検査 によ り自 分の 子が 実は 真 実 の 子で はな かっ たと いう

、 いわ ゆ る

「カ ッコ ウの 子

(Kuckuckskinde

の 存在 は、 一% から 二一

%あ ると 予測 され て い る。 平均 三・ 七% ある とみ る研 究が ある が、 それ によ れば

、二

〇〇 五年 の新 生児 六八

・五 万人 のう ち、 ドイ ツ全 体で 一 年 間に 二・ 五万 人の

「カ ッコ ウの 子」 がい るこ とに なる

。こ の推 計に 基づ くと

、毎 日七

〇人 の新 生児 が違 う父 のも とで 生 ま れる とい う計 算に なろ う。  

⑶  冒頭 で引 用し た内 閣府 経済 社会 総合 研究 所編

『フ ラン ス・ ドイ ツの 家族 生活

』の 分

ら は、 ドイ ツ人 一般 の家 族 生 活や 婚姻 生活

、夫 婦 関

そし て親 子関 係は

、わ が国 社 会の それ とは 相当 異な っ たも の に感 じら れる

。筆 者 の眼 にと まっ た最 近の 小 稿の タイ ト ル、

「二 組の 夫 婦の うち 一 組が 離婚 す ると いう 話 しの ウ ソ」

( D. へ ーベ

ある い は、

「子 は複 数 の 父を 持つ こと がで きる か」

( B. ハイ ダー ホ

自 体お よび その 内容 から も、 それ はう かが うこ とが でき る。 また 父子 関 係 の否 認権 限に つい て、 役所 もそ れを 有す る法 制度

(民 法一 六〇

〇条 一項 五号

)も 筆者 は少 なか らず 違和 感を 覚え る。 こ

178

179

r

)」

180

181

182

)、

183

   

   

     

(7)

の 国の 抱え る複 雑で 難し い国 情が 想像 され る

残 念な がら

、事 件の 背景 にあ るで あろ うド イツ 社会

・ド イツ 人の 血縁 関 係 につ いて の基 本的 な考 え方 まで も踏 み込 んだ 考察 は、 筆者 の能 力の 及ぶ とこ ろで はな い。   ドイ ツ連 邦裁

〇五 年判 決は

、関 係者 の同 意の ない DN A解 析を 禁止 して いる ヨー ロッ パの 国家 とし て、 イギ リス

、フ ラ ン ス およ びス イ スを あ げて いる

(修 道三

〇巻 一 号九 五頁 参 照)

。 主 要国 の DN A鑑 定 の実 情に つ いて はす で にわ が 国で も 研

行わ れて いる が、 フラ ンス 法の 状

つ いて ここ で若 干に みて おき たい

。フ ラン スの 研究 者に よれ ば、 隣国 フラ ン ス にお いて はド イツ でみ られ た秘 密の 父子 関係 テス トの 問題 は生 じて いな いと い

こ れは 注目 され る。 同国 でも 一九 八 九 年に スト ラス ブル クで 父子 関係 テス トを 販売 する 動き もあ った が、 医師 会、 上級 行政 裁判 所、 国家 倫理 委員 会の それ ぞ れ 働き かけ によ って それ は挫 折し た。  

⒜  フラ ンス 法は

、民 事法 およ び刑 事法 の両 面か らD NA 鑑定 の実 施に 関し て法 規制 をし てい る。 まず 民事 法の 分野 か ら みる と、 すで に一 九九 四年

、フ ラン ス議 会は

、人 のD NA 解析 はも っぱ ら医 療お よび 学術 研究 の目 的で のみ 実施 する こ と が で きる

、 か つ、 解析 の 実 施に 先 立 ち関 係 者 の同 意 を 得な け れ ばな ら な いと 規 定 する 生 命 倫 理に 関 す る法 文 を おい た

(民 法一 六条 の一

〇)

。 二〇

〇四 年八 月六 日の 法律 によ り、 右規 定は DN A解 析を 受け る者 をさ らに 保護 する 狙い で改 正さ れた

。第 一に

、民 法一 六条 の一 一の 新し い法 文に よる と、 人の 遺伝 子標 識の 解析 は、 医療 ない し学 術研 究の 目的 のた めに のみ 実施 す るこ とが で きる

( 一項

)、 およ び

、 解析 の実 施 に先 立ち

、 関 係者 は解 析 の性 質お よ び目 的に つ いて 説明 を 受け た後 に、 書面 によ り 明示 的な 同意 が 与え られ な けれ ばな ら ない

( 二項

)、 と 規定 され た。 濫用 的な 父 子関 係テ ス トと 誤っ た情 報に 基づ く拙 速な 同意 を避 ける 立法 趣旨 であ るこ とが 明ら かで ある

。 第  二に

、民 法一 六条 の一 一 第一 項は

、人 の遺 伝子 メル クマ ール によ る識 別化 は、 裁判 手続 で裁 判所 によ って 命じ られ た

184

185

186

187

     

(8)

捜 査な いし 検査 措置 の枠 内で のみ

、ま たは 医術 ない し学 術研 究の 目的 のた めに 実施 する こと がで きる

、ま た第 二項 は、 民 事 事件 にお いて は、 親子 関係 の確 認・ 否認 を求 める 訴え

、ま たは 扶養 料の 支払 い・ 停止 を求 める 訴え につ き、 裁判 官の 命 じ た証 拠調 べを 実施 する 際に のみ

、遺 伝子 によ る識 別化 がで きる と規 定し た。   以上 によ ると

、フ ラン ス法 では

、遺 伝子 テス トは

、裁 判手 続の 枠内 での み、 有効 かつ 適法 に行 うこ とが でき る。 また 関 係 者の 同意 がな けれ ば、 DN A解 析は 実施 する こと がで きな い。 では 関係 者が 同意 を拒 否す る場 合に どう 考え るべ きか

。 民 事裁 判官 は、 血液 採取 ない しD NA 試料 の採 取を 拒否 する 関係 者の 態度 は、 親子 関係 の蓋 然性 を推 認さ せる

、ま たは 父 子 関係 の自 白と 解釈 でき ると 考え てい る。 これ は、 当事 者に 証拠 調べ に協 力す べき 旨義 務づ けて いる フラ ンス 民訴 法一 一 条 一項 と一 致す る。  

⒝  つぎ に刑 事法 の分 野を みる と、 フラ ンス 刑法 典は

、医 療ま たは 学術 研究 以外 の目 的で 人の DN A解 析の 実施

、ま た は 民法 一六 条の 一一 所定 の要 件が ない のに 関係 者の 同意 を得 た行 為に つい ては

、刑 事罰 を科 して いる

。フ ラン ス刑 法二 二 六 条の 二五 は、 行為 者は 一年 まで の禁 固刑 およ び一 万五

〇〇

〇ユ ーロ の過 料に 処せ られ る旨 規定 する

。同 様に フラ ンス 刑 法 二二 六条 の二 七は

、医 療・ 学術 研究 以外 の目 的で DN Aメ ルク マー ルに より 人の 識別 化を 行っ た行 為、 また は、 民法 一 六 条の 一一 所定 の要 件が ない のに 関係 者の 同意 を得 た行 為に つい ては

、一 年ま での 禁固 刑お よび 一万 五〇

〇〇 ユー ロの 過 料 の刑 罰を 規定 する

。   さら にフ ラン ス刑 法二 二六 条の 二八 は、 医療 また は学 術研 究以 外の 目的 でな され たD NA 解析 で、 裁判 所の 捜査

・検 査 手 続の 枠内 で命 じら れた もの では ない もの につ いて

、同 様の 刑罰 を規 定す る。  

⒞  破棄 院は 伝統 的に

、生 物学 鑑定 は証 拠方 法の 一つ であ り、 裁判 官は 自由 に選 択す るこ とが でき

、重 大な 最初 の疑 い

   

   

     

(9)

が なけ れば

、そ の鑑 定を 命ず るこ とは 強制 され ない とい う見 解で あっ た。 しか し、 二〇

〇〇 年三 月二 八日 およ び五 月三

〇 日 の破 棄院 判決 は注 目す べき 判例 変更 を行 った

。破 棄院 は、 父子 関係 法に おい て生 物学 的鑑 定は 原則 とし て命 じな けれ ば な らな い、 と判 示し た。 これ は、 原告 に対 して 生物 学的 な証 明を 求め る真 の権 利を 認め たも ので ある

。民 事裁 判官 が証 拠 調 べを 拒否 して よい 特別 な正 当事 由と して は、 例え ば、 フラ ンス 法が 親に 対し て親 子関 係の 確認 を禁 じて いる 場合

(近 親 相 姦ケ ース

)や

、す でに 十分 な証 明力 を備 えた 鑑定 結果 のあ る鑑 定が 存在 して いる 場合 であ る。 他方 で、 判例 は、 親子 関 係 を維 持す る子 の利 益は それ に該 当し ない と解 して いる

。パ リ控 訴院 は、 二〇

〇〇 年の 破棄 院の 判旨 を、 母の 懐胎 中に 性 的 交渉 を行 った 男性 に対 する 子か らの 扶養 料請 求訴 訟に 拡大 した

。他 方、 破棄 院は 身分 占有 の取 消し を求 める 訴え にお い て は、 生物 学的 鑑定 を命 ずる 必要 はな いと 判示 した

。   フ ラン スの 裁 判所 は、 証 拠 調べ は、 そ の 対象 とな る 人物 の同 意 を得 て行 う よう に要 求 して いる

。( 従前 の) ドイ ツ法 と 異 なる こう した 方法 は、 人間 の身 体の 不可 侵と いう 一般 的な 原則 に基 づく もの であ り、 民法 中の DN A解 析に 関す る規 定 中 に現 れて いる

。 2  カッ コウ の子 に関 する わが 国の 法的 紛争  

⑴  最高 裁の 司法 統計 によ れば 親子 関係 不存 在確 認訴 訟や 嫡出 否認 訴訟 にお いて 請求

「認 容」 判決 で終 結す る事 件が

、 毎 年、 一定 件数 存在 して いる

。こ の事 実は

、法 律上 の親 子関 係と 真実 の親 子関 係が 乖離 して いる ケー スが わが 国で もそ れ な りに 存在 して いる こと を示 唆す るも ので ある

。た とえ ば家 族法 の古 典的 なテ ーマ であ る「 藁の 上か らの 養子

」と いう 事 案 も、 法律 上の 親子 関係 と生 物学 上の 親子 関係 が異 なる ケー スで あり

、そ の種 の事 件を 扱っ た最 近の 最高 裁も

、当 該親 子

     

(10)

関 係存 否確 認訴 訟で 問題 にな るの は「 実親 子関 係と いう 基本 的な 親族 関係 の存 否」 であ る旨 指摘 して いる

(最 判平 成一 八 年 七月 七日 民集 六〇 巻六 号二 三〇 七頁

、家 月五 九巻 一号 九二  

⒜  わが 国で いわ ゆる

「カ ッコ ウの 子」 とい える 事件 がど の程 度に 存在 し、 現に どの よう な問 題が 発生 また は潜 在し て い るの か、 筆者 はそ の問 題に 通じ ない

。し かし 最近 のわ が国 の民 事事 件に おい ても

、D NA 鑑定 によ り実 親子 関係 の不 存 在 が判 明し

、法 的紛 争が 発生 した とい うケ ース は現 れて いる

。さ しあ たり 筆者 が気 づい た事 例と して

、た とえ ば、

ⅰ東 京 高 判平 成二 一年 一二 月二 一日 判時 二一

〇〇 号四 三頁 があ る。 当事 者は

、前 訴・ 離婚 訴訟 で裁 判離 婚し た元 夫婦

・X 男と Y 女 であ る。 前訴 は、 本訴 被告 のY 女が 本訴 原告 のX 男に 対し 離婚 訴訟 と不 法行 為に 基づ く慰 謝料 請求 を行 い、 Xが 反訴 に よ り、 Yに 対し 離婚 請求 と慰 謝料 請求 をそ れぞ れ行 った とい う事 件で

、第 一審 が実 施し たD NA 鑑定 によ って

、X Y間 の 嫡 出子 Zと その 父X との 間に 生物 学的 な親 子関 係は 存在 しな いと いう 鑑定 結果 が出 た。 第一 審は Xお よび Yの 各離 婚請 求 を 認容 し、 Yに 慰謝 料四

〇〇 万円 の支 払い を命 ずる 判決 を下 した

。控 訴審 は、 Yに 慰謝 料六

〇〇 万円 の支 払い を命 ずる 判 決 を下 し、 同判 決は 確定 しX とY は裁 判離 婚し た。 そこ で、 Xは Zに 対し 親子 関係 不存 在確 認申 立て を行 い、 Xと Zと の 間 に親 子関 係が 存在 しな いこ とを 確認 する 旨の 審判

(合 意に 相当 する 審判

、家 審二 三条 二項

)が なさ れ確 定し た。 これ を う けて Xは Yに 対し

、X Y間 で実 子と して 養育 して きた Zが Xの 子で なく

、不 倫相 手の 子で あっ たと 主張 して

、不 法行 為 に 基づ き慰 謝料 請求

、お よび 不当 利得 返還 請求 権と して

、Z の出 生か ら二

〇歳 にな るま での 間に Xが 負担 して きた 養育 費 相 当額 の返 還を 請求 した

。   第一 審は

、慰 謝料 請求 部分 につ いて は、 前訴 と本 訴の 慰謝 料請 求は それ ぞれ 訴訟 物が 同一 であ り、 また 不当 利得 請求 部 分 につ いて は、 権利 の濫 用と して 許さ れな いと して

、い ずれ も請 求を 棄却 した

。X の控 訴に 対し

、東 京高 裁は

、① まず 前

188

)。

   

   

     

(11)

者 の慰 謝料 請求 部分 につ いて は、 前訴 で主 張さ れ評 価が 尽く され た事 実に 基づ き慰 謝料 を再 度請 求す るも ので あり

、Y の 保 護す べき 紛争 決着 の信 頼関 係を 侵害 する

、前 訴の 慰謝 料請 求と 訴訟 物が 同一 で既 判力 に抵 触す るだ けで なく

、信 義則 に も 反す ると して 訴え を不 適法 却下 し、

②ま た不 当利 得返 還請 求部 分に つい ては

、X が支 出し た養 育費 はY との 婚姻 継続 中 の 婚姻 費用 の一 部と して 支払 われ たも ので

、不 当利 得の 観念 を入 れる 余地 はな く、 法律 上の 原因 に基 づい て支 払わ れて い た

、X とZ の関 係は

、少 なく とも Zが Xの 子で ない こと が発 覚す るま では 良好 な父 と息 子の 関係 が形 成さ れ、 その 間X は Z を一 人の 人間 とし て育 て上 げ、 その 過程 で経 済的 費用 や様 々な 親と して の悩 み・ 苦労 の対 価と して

、Z の誕 生か ら大 人 へ と育 って いく 過程 で子 を愛 しみ 監護 し養 育す る者 とし て関 わり なが ら、 金銭 には 代え がた い無 上の 喜び や感 動を Zか ら 与 えら れた

、ま た養 育を 受け たZ に何 らの 責任 もな いの であ って

、X の養 育費 支払 いに 是正 すべ き法 規範 の許 容し えな い 違 法な 不均 衡状 態が ある とは 解せ ない とし て、 Xの 請求 を棄 却し た。   この 事件 で前 訴・ 離婚 訴訟 でD NA 鑑定 が実 施さ れ、 Zは Xの 子で はな いこ とが 判明 した

。そ れに 続く 親子 関係 不存 在 確 認の 調停

・審 判手 続で のい わゆ る二 三条 審判 が確 定し たこ とに より

、同 審判 は確 定判 決と 同一 の効 力を 有し たこ とに な る

(家 審二 五条 三 項、 家 事二 八 一条

)。 この 事件 に おけ るD NA 鑑 定の 働き を考 え ると

、 前訴

・ 離 婚訴 訟に お ける DN A 鑑 定結 果が

、本 訴の 請求 原因 事実 を形 成し 基礎 づけ たも のと いえ よう

。若 干の 感想 にと どま るが

、右 事件 の損 害賠 償請 求 部 分に つい ての 裁判 所の 判示 は、 明示 的な 金銭 債権 の一 部請 求に つい て請 求棄 却判 決確 定後 の残 部請 求に つい て、 実質 的 に は前 訴の 蒸し 返し であ り、 同判 決に より 当該 債権 の全 物に つき 紛争 が解 決さ れた との 相手 方の 合理 的期 待を 裏切 るも の で あっ て、 信義 則に 反し 許さ れな い旨 判示 して 訴え を不 適法 却下 した

、最 判平 成一

〇年 六月 一二 日民 集五 二巻 四号 一一 四 七 頁の 判旨 に通 ずる 考え 方を 思わ せる

。ま たX の不 当利 得返 還請 求権 が成 立す るた めに は、 多数 説に よる と、 要件 事実 と

     

(12)

し て法 律上 の原 因が なか った こと

(民 法七

〇三 条) につ いて Xは 主張 立証 しな けれ ばな らな いは ずで あ

法 律上 の夫 婦 間 で は婚 姻 費用 の分 担 義務 が あり

( 民法 七 六〇 条)

、 こ れ には 未成 年 の子 に 対す る養 育 費も 含 まれ

ま た親 子間 で も、 親の 子に 対す る監 護義 務( 民法 八二

〇条

)の 主た る内 容と して 養育 費の 支払 いが あ

右 事件 の当 事者 間の 法律 関係

、す なわ ちX Y間 の婚 姻関 係は 離婚 判決 の確 定と とも に、 また XZ の親 子関 係は 二三 条審 判の 確定 とと もに それ ぞれ 消滅 した もの と考 える こと がで きよ うが

、仮 りに Xの 不当 利得 返還 請求 権の 右要 件事 実を 認定 しよ うと する ため には

、離 婚訴 訟の 確定 判決 の 形成 力な い し対 世 効

(人 訴二 四 条一 項)

、 ま たは 確 定し た 親子 関係 の 存否 確認 の 二三 条審 判 の効 力

( 対世 効で あろ

がZ の誕 生時 まで 遡っ て生 じ、 それ まで の法 律上 の親 子関 係は 遡及 的に 消滅 する もの と考 える 必要 があ るの では なか ろう か。 しか し嫡 出否 認訴 訟の 請求 認容 判決 の遡 及的 な 効

同 様の 効力 がそ れに 認め られ るか とな ると

、む しろ 消 極 説が 支配 的で あろ う。 さら に当 事者 につ いて

、X の損 失に おい て養 育費 の支 払い を免 れた のは Zの 真実 の父 であ って

、 本 来被 告と なる べき はこ の父 とす べき では なか ろう か、 など 訴訟 法上 も興 味あ る問 題を 提示 して いる が、 いま 本稿 の及 ぶ と ころ では ない

。  

ⅱつ ぎに すで に別 稿で 触れ たこ とが ある

東京 地判 平成 一七 年五 月二 七日 判時 一九 一七 号七

〇頁 は産 院で の新 生児 取 違 え事 件で ある

。こ の種 の事 件は

、ド イツ 法で は後 述す るよ うに 親子 関係 の不 存在 確認 訴訟

(民 法一 六〇

〇条 d、 民訴 法 六 四〇 条二 項一 号) の対 象事 件と され てい る。 その 事案 をみ ると

、昭 和三 三年 四月 一〇 日に 新生 児を 分娩 した 母A

、そ の 夫 B、 戸籍 上両 名の 子と して 届け 出が され てい るX が、 約四 六年 後に

、九 州大 学大 学院 医学 研究 院I 教授 の申 出に 応じ て D N A鑑 定を 受 けた とこ ろ、 親子 関係 の 存在 を否 定 する 結果 が 出た

( 平成 一 六年 五月 七 日に 結果 の通 知

)。 X ら は、 被 告 Y

(東 京都

)が 設置 して いた 産院 の医 師ま たは 看護 師が 新生 児同 士を 取り 違え

、A 分娩 の新 生児 とX が入 れ替 わっ たた め

189

190

191

192

193

194

   

   

     

(13)

で ある と主 張し

、Y に対 し、 右鑑 定結 果を 知っ てか ら約 五ヵ 月後

(平 成一 六年 一〇 月一 九日

)に 不法 行為

(使 用者 責任

) ま たは 分娩 助産 契約 の債 務不 履行 に基 づき

、そ れぞ れ一 億円

、総 額三 億円 の損 害賠 償請 求訴 訟を 提起 した

。   第一 審は

、① Aが 昭和 三三 年四 月一

〇日 産院 内で 分娩 した A・ B間 の男 児は その 数日 後X と入 れ替 わっ た、 本件 の血 液 鑑 定と DN A鑑 定に つい て、 専門 家に よっ て適 切な 方法 で実 施さ れ、 内容 も合 理的 で信 用性 は高 い、 その 鑑定 結果 から す る と、 Aが 分娩 した 子は Xで はな いと 認定 した

。② しか し不 法行 為に 基づ く損 害賠 償請 求権 は、 不法 行為 があ った 時か ら 二

〇年 後( 昭和 五三 年四 月一 四日 頃) に除 斥期 間( 民法 七二 四条 後段

)の 経過 によ り消 滅し てお り、 また 債務 不履 行に 基 づ く損 害賠 償請 求権 も、 その 消滅 時効 はA の退 院時

(昭 和三 三年 四月 一七 日) に進 行を 開始 し、 本件 訴え の提 起日 であ る 平 成一

〇年 一〇 月一 九日 まで に一

〇年 以上 が経 過し 消滅 した とし て、 Xら の請 求を 棄却 した

。   Xら の控 訴に より

、控 訴審

・東 京高 裁平 成一 八年 一〇 月一 二日 判決 判時 二〇 九五 号四 九頁 は、 第一 審判 決を 取り 消し

、 X に対 し一

〇〇

〇万 円、 Aお よび Bに 対し それ ぞれ 五〇

〇万 円の 損害 賠償 の支 払い を命 ずる 判決 を下 した

。① 控訴 審は

、 D NA 鑑定 の結 果に 基づ き、 Aの 分娩 した 新生 児は Xで はな く、 同時 期に 産院 で出 生し たX と入 れ替 わっ た蓋 然性 は相 当 高 い、 Xら 主張 の取 違え の事 実を 推認 でき ると した

。② その うえ で控 訴審 は、 債務 不履 行に 基づ く損 害賠 償請 求権 の消 滅 時 効 は、

「権 利 を 行使 す る こと が で きる 時 か ら進 行

」( 民法 一 六 六条 一 項) し、 一

〇 年 間行 使 し ない と き に時 効 消 滅す る

(民 法一 六七 条一 項)

、 そし て右

「権 利を 行使 する こと がで きる 時」 とは

、原 則と して

、権 利行 使に つい ての 法律 上の 障害 のな い状 態を いい

、債 務不 履行 に基 づく 損害 賠償 請求 権の 消滅 時効 につ いて も、 本来 の債 務の 履行 を請 求し 得る 時か ら進 行を 開始 する

。③ た だし

、新 生児 の取 り違 えの 場合 は損 害の 発生 が潜 在化 して おり

、分 娩助 産契 約の 当事 者で ある 両親

・ 子 が取 り違 えの 事実 を知 るこ との でき る客 観的 な事 情が 生ず るこ とに より

、そ の損 害が 顕在 化し て初 めて 権利 行使 を期 待

     

(14)

す るこ とが 可能 にな ると 解さ れる

。そ して

、X らが 親子 関係 の不 存在 を明 確に 知っ たの は、 DN A鑑 定の 結果 を知 らさ れ た 平成 一六 年五 月七 日頃 であ るが

、権 利行 使の 可能 性と いう 観点 から する と、 AB O式 血液 型の 不適 合が 明確 とな った 時 点

(平 成九 年一

〇月 七日

)と 解す るの が相 当で

、X らが 債務 不履 行に 基づ く損 害賠 償請 求を した のは 平成 一七 年三 月二 八 日 であ り、 債務 不履 行に 基づ く損 害賠 償請 求権 の消 滅時 効は 完成 して いな い、 と判 示し た。   右事 件で は訴 訟外 で実 施さ れた DN A鑑 定結 果が

、そ の後 の損 害賠 償請 求訴 訟の 請求 原因 事実 とし て援 用さ れて いる

。 右 DN A鑑 定は 私鑑 定で ある が、 第一 審は

、専 門家 によ って 適切 な方 法で 実施 され

、内 容も 合理 的で 信用 性は 高い と評 価 し て、 その 鑑定 結果 に基 づき A分 娩の 子は Xで はな いと 認定 して いる

。私 鑑定 の法 的性 質を どう みる かは 議論 があ る 右 事件 では すで に産 院は 閉鎖 され て当 時の 出産 記録 もこ の年 度に 限り 存在 しな い状 況で あり

、X らに とっ て代 替証 拠は 入 手 しが たい ケー スで ある

。裁 判所 は改 めて 正規 の鑑 定人 によ るD NA 鑑定 を実 施す る方 法も 考え られ るが

、判 旨に 述べ ら れ た私 鑑定 人で ある 教授 の肩 書や 所属 機関 の検 査水 準か ら推 測し うる 限り

、裁 判所 は、 実務 でと られ てい る書 証説 の立 場 で

、右 DN A鑑 定の 証拠 能力 およ び証 拠価 値を 肯定 的に 認定 した もの と解 して おき たい

。  

⒝  上述 した フラ ンス 法や 最近 のド イツ 立法

(遺 伝子 診断 法) のよ うに DN A鑑 定の 実施 自体 に関 する 基本 的な 法律 は、 現 在の とこ ろわ が国 では まだ 制定 され ず、 この よう な状 況に 対す る批 判も みら れる

。D NA 鑑定 に関 する わが 国の 規制 で 筆 者が 知り えた もの をみ ると

、① まず 経済 産業 省は

、個 人遺 伝情 報取 扱事 業者 に対 し、 自ら 遵守 すべ き自 主的 ルー ルと し て

「経 済産 業分 野の うち 個人 遺伝 情報 を用 いた 事業 分野 にお ける 個人 情報 保護 ガイ ドラ イン

」( 平 成一 六年 一二 月一 七日

) を 示し

、D NA 鑑定 の実 施に あた り、 鑑定 の効 果が 直接 に及 ぶ者 の間 で鑑 定実 施に つい て異 論が ない こと に留 意す るよ う に 求め てい る。

②ま た文 部科 学省

・厚 生労 働省

・経 済産 業省 の公 示で ある

「ヒ トゲ ノム

・遺 伝子 解析 研究 に関 する 倫理 指

195

   

   

     

(15)

」( 平成 一 三年 三月 二 九日

、 最終 改 正平 成二

〇年 一 二月 一日

。 平 成一 七年 四月 一 日施

は、 ヒト ゲノ ム

・遺 伝 子解 析 研 究に 携わ るす べて の関 係者 を対 象に

、研 究責 任者 は、 提供 者に

、自 由意 思に 基づ く文 書に よる 同意

(イ ンフ ォー ムド

・ コ ンセ ント

)を 受け て、 試料 の提 供を 受け なけ れば なら ない

(第 3  提供 者対 する 基本 姿勢    イン フォ ーム ド・ コン セ 10 ン ト( 3)

)、 ま た研 究責 任者 は、 提供 者が 自ら の遺 伝情 報の 開示 を希 望し てい ない 場合 には

、開 示し ては なら ない し、 提 供 者の 同意 がな い場 合に は、 提供 者の 遺伝 情報 を提 供者 以外 の人 に対 し、 原則 とし て開 示し ては なら ない

(  遺  伝情 報 11 の 開示

(2

)、

( 3)

) 旨定 めて いる

。  

③さ らに 個人 遺伝 情報 を取 扱う 事業 者自 らが 自主 的な ルー ルと して 定め た「 個人 遺伝 情報 を取 扱う 企業 が遵 守す べき 自 主 基準

(個 人遺 伝 情報 取扱 事 業者 自主 基 準)

」( NP O 個人 遺伝 情 報取 扱 協議 会  平成 二

〇年 三月

) は

、「 第2 基  本的 な 考 え 方」 とし て

、 個人 遺 伝 情報 を 利 用す る 消 費者

・ 家 族・ 血 縁 者の 人 権 の保 障

、 個 人情 報

・ 個人 遺 伝 情報 の 保 護の 徹 底

(関 連法 規等 の遵 守)

、事 前の 十分 な説 明と 消費 者の 自由 意思 によ る同 意( イン フォ ーム ドコ ンセ ント

)お よび 契約 等の 確 認 など をあ げ、 DN A鑑 定分 野( 親子

・血 縁 鑑定 事業

)の

「 基本 的な 考え 方」 とし て、

「個 人や 家族 等、 鑑定 対象 者の 人権

、 福祉 及び 関係 者の 合意 に留 意」 し、 未成 年者 等に つい ては

「本 人の 利益 を代 表で きる 者か ら代 理で 同意 を求 め」

、「 十 分な 法的 知識

・経 験を 有す る弁 護士

、裁 判所 職員 等に よる カウ ンセ リン グを 実施 する とと もに

、鑑 定対 象者 間に おけ る鑑 定同 意を 前提 とす る」

、「 親 子・ 血縁 鑑定 を受 託す る場 合は

、試 料採 取対 象者 から 対面 で同 意を 得る こと

」な どを 定め てい る。

④前 掲① の経 済産 業省 個人 情報 保護 ガイ ドラ イン の規 定に 従っ て、 バイ オイ ンダ スト リー 協会

(J BA

)に

「個 人遺 伝情 報取 扱 審査 委員 会

」が 設置 され

( 平成 一 七年 六 月三

〇日

)、 個人 遺伝 情報 取 扱事 業者 に よる 事業 内 容の 適否 等 の審 査を 行 っ て い る。 ま た個 人 遺伝 情報 取 扱事 業者 自 身が N PO 個人 遺 伝情 報取 扱 協議 会を 設 立し

( 平 成一 八年 四 月)

、 経 済産 業省 個

196

     

(16)

人 情報 保護 ガイ ドラ イン に即 した 前掲 自主 基準 を策 定し て適 正な 事業 遂行 をす るよ うに 努め

、ま た同 協議 会に 参加 して い な い事 業者 にも 同自 主基 準の 遵守 を呼 びか けて いる

。   そう する と、 わが 国で もD NA 鑑定 を実 施す るに あた って は、 当事 者本 人か

、未 成年 者で あれ ば法 定代 理人 の同 意が あ る こと が前 提で あり

、そ の同 意な く実 施さ れた DN A鑑 定は 右ガ イド ライ ンな いし 倫理 指針 に違 反し たも のと 評す るこ と が でき よう し、 その よう なD NA 鑑定 を実 施し た企 業等 は自 主基 準に 違反 した 不適 格事 業者 と判 定さ れる こと が予 想さ れ る

。た だし

、ド イツ の遺 伝子 診断 法の 刑事 罰に つい ては 賛否 両論 があ るよ うで ある

わが 国で は制 定法 レヴ ェル にお い て 法規 制が ない 以上

、自 主基 準破 りの 事業 者が 刑事 罰を 課さ るこ とは ない

。調 停・ 審判 手続 にお ける

「合 意に よる 審判

」 制 度を 知ら ない ドイ ツ法 に対 して

、わ が国 では 調停

・審 判手 続の 段階 で当 事者 間に DN A鑑 定実 施に つい て合 意が 成立 す れ ば、 事件 の多 くは DN A鑑 定結 果に 従っ て解 決さ れる こと が期 待で きる

。問 題は

、D NA 鑑定 の実 施に つい て当 事者 間 に 合意 がで きな いケ ース であ る。 現行 法の 下で は、 DN A鑑 定を 拒否 する 当事 者の 態度 をど う評 価す るか とい う問 題が 議 論 され てい るが

、筆 者は 自由 心証 説に 従っ てい 3  父子 関係 の存 否を 確認 する ため の法 的手 続  

⑴  連邦 裁〇 五年 判決 は、 第一 事件

、第 二事 件と も、 子を 認知 した 法律 上の 父か ら、 認知 した 子に 対す る父 子関 係の 否 認 訴訟

(民 法一 六〇

〇条 b) とい う事 案で あっ た。 なぜ 両事 件の 父は この よう な秘 密の 父子 関係 テス トに 走っ たの だろ う か

。こ れを 事件 当時 の法 制面 から みる

法律 上の 父が 自ら の生 物学 的な 父子 関係 の正 当性 につ いて 確認

・解 明す る手 段 と し て、 民 法上 は

①父 子関 係 の否 認手 続

( 民法 一六

〇条 から 同法 一 六〇

〇条 c)

② 親子 関 係の 存否 確 認の 訴え

( 民

197

198

199

   

   

     

参照

関連したドキュメント

ASEANにおける規範の変容 (特集 地域制度としての ASEAN).

1    このような例としては,大阪地決平成19年8月10日賃金と社会保障1451号38頁及

は認められるとしながら, 「本案上理由があるとみえるとき」にあたらないとして,申 立てを却下した。また,名古屋地決平成 18 年9月

23 る刑事事件の処理についての具体的な法律適用に関する若干問題の解釈(以下、「刑事司法

[r]

[r]

[r]

(W ollensd ürfen) レーゲルスベルガーは︑ ﹁権利を︑意欲できること という空虚な領域から︑現実的な基盤へ 107   Jh ering , Rudolph von: Geist des rö mischen Rechts auf