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ウi授・学習過程の実験的分析(3)
プログラム学習を屠いた英文文型学習と変形文法学習D
馬場 道夫*・植田喜恵子**
(1983年9月30日受理)
Experimental Analyses of Teaching−Learning Processes皿:
English Transformation−Grammar Learning and Pattem Practice through『Programmed Learning
Mchio BABA and Kieko UED入
(Received September 30,1983)
Abstract
This report examined the relative effectiveness of a transformation一 grammar method and a pattern practice in English sentence production to students in a preparatory school for senior high schools. The 48 students were divided into three groups and given one of the 3 kinds of booklets for
programmed learning respectively. One was made in a forln of pattern prac− . tice, the other in a form of transformation−grammar・method, and another
in the same form as the latter except in adding illustrations to sentences.
The learners received pre−and post−tests, both of which contained the same senもence−connection and composition questions. It was found that the trans一 formation−grammar methods were more effective in the learning than the
・pattern practice and that the addition of illustrations to seIltences had some一 what facilitative effect on the learning. These results were discussed in terms of the theories of language production. It remains to be determined what factors are crucial to the effects.
は じ め に
我国における英語教育は極めて盛んであり,英語教育研究も非常に進歩してきているといえるの
1)本論文は,植田の昭和56年度卒業論文を馬場の見解の下に修正・加筆したものである。
*茨城大学教育学部教育心理学研究室 Department of Educational Psychology, Ibaraki University.
**筑波西中学校 Tsukuba−Nishi Junior High School.
であろうが,厳密な科学的手続きをとった研究は比較的少ないようである。文型学習に関する永沢 の研究(1967,1968),中島・佐伯(1967,1968)の私熟における教育法の分析,小町谷(1974)の 英文要約の効果についての研究,村上(1981)の英文英答の効果の研究などがある。いずれも,そ れそれの方法で効果を示したものであるが,言語心理学的観点から分析,研究を行ったものではな
い。
最近の言語心理学の発展は著しいものがあり,特に米国において活発に行われている。しかし,
それも,言語理解を中心とするものであり,言語産出の過程が問題にされてきたのは,比較的最近 のことである。それらの概略については,馬場・羽沢(1983)の先行論文で述べておいた。今回の 研究では,英文産出の過程を取りあげ,その心理学的過程を想定し,それに基づいた英語教育法を 行い,その効果を実験的に明らかにすることによって,その想定された心理学的過程を明らかに
し,かつ英語教育法にも示唆を得ようとするものである。
先の馬場・羽沢の論文では,文産出に関する8つの過程が想定された。1.文法の獲得,2.文 法の無意識的学習,3.学齢以後の文法の意識的学習,4.対人場面の重視,5.文法学習はある 種の規則学習であること,6。単語の意味獲得の前提,7.文法規則及びその例示の有効性,8.
変形方法の有効性,である。日本人の英文産出は,これらの過程の上に更に第2言語学習の過程が 考慮されねばならないという極めて複雑なものである。第2言語の獲得については,McLaughlip
(1978)によって概括されているが,その論は,学齢前の言語獲得と学齢以後の学習が異質であり,
学齢前の獲得が容易であるかどうかといった,比較的巨視的な論点に留まっており,その微細な獲 得の心理学的過程にまでは,立ち入っていないようである。筆者は,学齢前後では,その言話獲得 の過程は異質であるという立場に立っているが,McLaughlinによれば,必ずしもその仮定すらも 明確にされているとは言えない。
第2言語学習がどのような心理学的過程をとるかは,従って,全くの推測を出ない。しかし,お およそ次のような過程が問題になるであろう。
1.第1言語の獲得が第2言語学習に多くの関係を示すだろう。
その1は,第1言語を利用して第2言語を学習しようとする促進的関係である。
その2は,第2言語の習得に第1言語の矛盾,対立する過程が妨害的関係を示すことである。
2.第2言語の学齢以後の学習には意識的規則学習が含まれるであろう。ただし,このことは,無 意識的習熟の過程が含まれないということではない。むしろ,完全な第2言語の習得には無意識的 ななかば自動化した習熟の過程が予想されるだろう。ただし,本研究では,中学校段階の英語教 育を問題にしているので,この無意識的自動的習熟の段階は取り扱わない。
3.第2言語学習も言語の習得であるから,規則学習に属する文型学習は有効であろう。
4.日本語についての馬場・羽沢(1983)の研究で,変形文法学習が有効であったことから,英語 学習ではその一層の有効性が期待される。
5.第1言語の習得において仮定されたように,文についての場面を見せることは,文法獲得に有 効であろう。それ故,第2言語の習得にも場面の呈示は有効に作用するだろう。
上記の過程のうち本研究では3,,4,5の過程を取り上げ,実験的に確認しようとする。学習者 、
ヘ種々の事情から高校予備校生が選ばれ,それによって学習課題が決定された。課題としては,変
形文法的学習と文型的学習を比較するために,後置修飾用法が選ばれた。後置修飾用法は,関係代
名詞,分詞による形容詞用法であり,日本語における修飾法と逆の語順となり,この用法の習得に は日本語からの負の転移(干渉的効果)が予想されるところである。そこで以下のような仮説が設 定できるであろう。
1.直接に文法規則を説明し,その事例を示す文型学習的方法より,変形操作を具体化した学習法 が有効であるだろう。前者の場合には,日本語の順と逆に英文を産出することを学習するが,後 者の変形操作では直接英文の産出規則を学習するからである。
2.変形操作を行わせる方法に更に文意を表現する場面をさし絵として入れた方が,入れないより も学習成績がよいであろう。これは,さし絵によって意味構造が直接,日本語の媒介なしに示さ れ,日本語文法の干渉を少なくして,英文産出を可能にするためである。
方 法
学習者:水戸予備校高校受験生,男子40名,女子8名,計48名。いずれも中学卒業者。
用 具:自作の事前・事後テスト。内容は,関係代名詞を用いる文結合問題12題,関係代名詞を 用いる和英作文6題,分詞による空所補充問題2題,和英作文2題の合計22題,論文末尾資料1に 示す。プログラム学習冊子3種,いずれも自作,36フレーム。冊子AはFries(1961)の文型練習法 の中の代入方式を用いた指導法によるプログラム学習。冊子BはChomsky(1973)の変形文法に基 づき構成されたプログラム学習。冊子Cは,この変形操作的プログラム学習に文意を表すさし絵16 枚を加えたものである。プログラム学習で使われた文を資料2に示す。
10x〜月ζ 表1 分散分析表
変動因 平方和 自由度平均平方 F
50 ノコc
^ 学習法S 396.1912 2 198.0956 0.953
40
/
@ / ρB / /
@ / ノ1
@ / /! A
宴潤^ 群 !
テ ス ト i事前・事
縺j T
iSXT) 互作用
1828.7641 1 1828.7641 120.628**
Q64.5172 2 132.2586 8.724**
個人差 1 9356.219 45 207.9160
誤 差
30 (TxI) 682.2185 45 15,1604
全 体 12527.91 95
事前 事後 料P〈.01
図1 プログラム別テスト成績
手続き:事前テストの結果に基づき,等質な3群に学習者を分ける。次いで,文型学習冊子Aを 与えた群をA群,変形操作を含んだ冊子Bを与えられた群をB群,さし絵を含んだものを学習した 群をC群とする。各群の構成は,A群男子13人女子3人, B群男子14人女子2人, C群男子13人 女子3人で,いずれも16人であった。実験は,昭和56年10月2日11時40分〜30分に事前テスト,同 年10月20日13時20分〜14時20分プログラム学習を実施,10月24日事後テストを10時40分〜11時30分 に実施。水戸予備校高校受験科生教室で全員一斉に行われた。
結 果
事前・事後テストは,2の和英作文6題,3の和英作文2題を3点とし,他はすべて1点,計38 点満点として採点した。結果は図1のようであるが,得点分布に歪みが見られたので,各得点Xは 10採の変換をされ,統計的検定が行われた。見られるように,事前テストの成績には,群間に有 意な差がなく(F(2,45)−1.232,P>.05),各群等質であると認められた。事前・事後テス
トを含めた全体の分散分析表は,表1である。見られるように学習の前後で有意差があり,全体と して学習効果を示している。全体としての指導法の違いによる効果は見られない。また,事後テス トのみについて分散分析するとF−3.141P>05で有意な差が見られず,指導プログラムの違 いによって学習成績が異ならないことを示している。しかし,表1の交互作用に有意な効果の見ら れることで,学習法によって学習効果が異なることを確認している。A−B, A−C, B−C,各
2群ごとの分散分析を行ったところ,それぞれの群x学習の交互作用は,F(1,30)=7.74,
16.70,1.61で,A−B, A−Cの分析で1%水準で有意差が見られ, B−Cでは見られなか った。以上のことから,文型学習のA群が最も学習効果が少なく,次いで,B群変形操作群がよく,
C群のさし絵を加えた群は最も良い学習効果を示したものの,そのさし絵を加えた効果は,有意で はなく,十分に確認されなかった。
考 察
以上の結果は,ほぼ仮説通りのものであり,文型学習によるプログラム学習は,変形文法に基づ くプログラム学習に劣るという結果を示した。また,文の意味を場面と結びつけるため,さし絵が 加えられたが,その効果は期待された方向にあったものの,十分には確認されなかった。これらの 結果を詳細に検討するために,事前テストと事後テストの各問ごとの成績を各群ごとに比較してみ
ると,表2のようである。
初めに仮定されたように,文型学習は文法規則を教示するので,この点,英文和訳には,変形学 習とは大きな違いは見られない筈である。これに対して結合問題は変形操作の直接的適用ですみ,
最もその操作の効果のあがる項目であると考え られる。和英作文では,意味から直接英文産が可能
であれば,変形操作が有利になるであろう。また,さし絵の効果は文の意味から直接英文産出を生
じさせるであろうから,和英作文に特にその効果が見られる筈である。人数が少ないために,傾向
としてのみしか言及できないが,結合問題が特に変形操作によって改善されているようには見えな い。むしろC群の改善が著しく12項中20%以上正答率の上昇した項目(表2中キ印)は10項目に及 帆これは,〆=5.333df=1 P〈.025で有意な傾向であった。また,今考えられたように,
さし絵を用いたC群が特に和英作文で特に良い成績を示した訳でもない。ただし,A群の和英作文 の成績には大きな改善は見られ凱この点が多少先の推論と一致している。全体として見ると,C 群は,全般にどの項も改善されており,さし絵が学習興味を増加させたと見る方が適切な解釈であ るかもしれない。
結局,事後テストでの成績の向上という点から見ると,最初の仮説はほぼ確認されたように思わ れたが,多少の検討を加えると,そのことは必ずしも明確でなく,色々な解釈が可能のようである。
変形操作の例題にしても,変形文法に基づくとはいいながら,w廿it→whichのような変形は,記 号レベルの変形であって,変形文法の持つ構造的性格を的確に表現しているかどうかには疑問も残 るようである。ただし,英語の文法的学習においてプログラム学習は有効であり,その方法として は,単なる文型学習よりも,変形文法的方法がより効果的で,この点は更に追究すべき問題のよう に思われる。
表2 A,B, Cグループ事前事後テストの問別正答率(単位%)
問題 ク)トプ A B C 全 体
形式 テスト PRE POST PRE POST PRE POST PRE POST
文
1. 1
43.8 75 キ 56.3 68.8 37.5 75 キ 45.8 72.9
結 2 75 100 キ 93.8 87.5 87.5 100 85.4 95.8
合 3 6.3 18.8 6.3 18.8 6.3 43.8キ 6.3 27.1
問 4 12.5 18.8 0 25 キ 0 31.3キ 4.2 25
題 5 25 43.8 25 31.3 43.8 75 キ 31.3 50
(関係
67 31.3
Q5
50
T0 キ
31.3 R1.3
56.3キ
T0
37.5 P8.8
87.5キ T6.3キ
33.3
Q5
64.6 T2.1 代 8 12.5 18.8 12.5 31.3 6.3 50 キ 10.4 33.3
名 9 50 62.5 37.5 62.5 37.5 81.3キ 41.7 68.7
琶 10 25 12.5 6.3 37.5キ 0 37.5キ 10.4 29.2
11 25 56.3キ 25 50 キ 37.5 81.3キ 29.2 62.5
12 75 100 キ 75 100 キ 81.3 93.8 77.1 97.9
(和
2. 1
56.3 56.3 31.3 56.3キ 50 81.3キ 45.8 64.6
関係英 2 6.3 18.8 12.5 25 18.8 25 12.5 22.9
代 3 12.5 25 25 50 キ 18.8 56.3キ 18.8 43.8
名作 4 37.5 56.3 37.5 75 キ 43.8 81.3キ 39.6 70.8
詞)文 5 12.5 18.8 12.5 25 25 37.5 16.7 27.1
6 0 12.5 0 12.5 0 18.8 0 14.6
(和
3. 1
93.8 93.8 100 100 100 100 97.9 97.9
分英
訣?j文
23 56.3
T0
81.3キ
T0
56.3 R7.5
81.3キ W7.5キ
81.3 R7.5
93.8 V5 キ
85.4 S1.7
89.6 V0.8
4 50 62.5 43.8 75 キ 68.8 87.5 54.2 75
要 約
高校予備校生48名に対して英文の結合及び和英作文のプログラム学習が与えられた。プログラム 冊子は,文型学習によって構成された冊子A,変形文法に基づいた冊子B,それにさし絵の加えら れた冊子Cの3種類が作られた。各冊子を各16名が学習した。同一の事前・事後テストが与えら礼 学習効果が調べられたところ,いずれも事前テストに対して成績が向上したものの,その効果は冊 子Aの文型学習が最も少なく,次いで冊子Bの変形操作によるもの,最も成績のよかったのは冊子
Cのさし絵の加わったものであった。ただし,冊子Aより冊子Bの方が有意に多くの効果があった ものの,冊子Bと冊子Cの効果の間には有意な差は検出されなかった。各設問ごとの検討の結果,
これらの効果の要因については更に検討されるべきものを多く残していることが明らかになった。
引 用 文 献
1)馬場道夫・羽沢淑美 1983.「教授・学習過程の実験的分析(2)小学校児童における変型文法学習と文 型指導」『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』32,p.119−128.
2)Chomsky, N.(安井 稔訳)1973.『文法理論の諸相』(研究社).
3)Fries, C.C.(太田 朗訳)1961.『外国語としての英語の教授と学習』(研究社).
4)小町谷 恩 1974.「直接教授法によ る英語多読教材の要約に関する一研究」22,p.91−99,
5)McLaughlin,B.1978. Second−Language Acquisition in Childhood, Hilsdale, New Jersey,
LEA.
6)永沢幸七 1967.「文型学習に関する心理学的研究:1一呈示のしかたによる差異一」『教育心理学研究』
15,P.236−247.
7)永沢幸七 1968.「文型学習に関する心理学的研究:H一呈示の仕方による差異一」『教育心理学研究』
16,P.142−156.
8)中島 誠・佐伯 治 1967.「日本語・英語の比較研究に基づく英語教育法に関する研究」『教育心理学 研究』15,P.103−118.
9)中島 誠・佐伯 治 1968,「日本語・英語の比較研究に基づく英語教育法:H」『教育心理学研究』16,
P.127−141.
10)村上安則 1981.「英語学習法に関する研究一暗唱と英問英答の効果の比較一」『教育心理学研究』29,
o.30−37.
11)植田喜恵子 1982.「英文産出の心理過程の研究と英文産出指導」茨城大学教育学部卒業論文。
資料1 事前・事後テストで使われた問と解答(1)
1.SENTENCE−−COMBINING(RELATIVE PRONOUN)
1.Ido not know the man. We met him at the airport.
(00)Id。n tkn。wth・man囮w・m・t・tth・ai・p・・t.
2. Seiko has a radio. It is better than mine.
(OS)Seiko has a radio which is better than mine.
3.The American is coming to see us. I know his son very we11.
(SRPO)Th・Ameri・an國・・n l kn・w very w・11 is c・mi・g t・see u・・
4.Iwill tell them about the man. I love his poem best.
(ORPO)Iwill t,11 th・m・b・ut th・man一圃P・・m I 1・v・best.
5.The boy is my brother. He is playing the guitar.
(SS)Th・b・y国i・pl・yi・g th・g・it・・i・my b・・ther・
6.The doll is Jane s. It has brown hair.
(SS)The doll which has brown hair is Jane s.
7,The man was my uncle. You met him at the store.
(SO)Th・man囮y・u m・t・t the st…w・・my un・1・・
8.We were sitting under a tree. The shade of it was very cool.
(OW)We were sitting under a tree of which the shade was very cool.
9.1 mgoing to give you the book. You want to read it again.
(00)rm going to give you the book which you want to read again.
10.The house is my aunガs. The window of it is very big.
(SW)The house of which the window is very big is my aunt s.
11. The house is Bill s. You see it near the river.
(SO)The house which you see near the river is Bi11 s.
12. Iknow a college student. He is studying to be a doctor.
(OS)Ik・・w…11・g・st・d・nt國is st・dying t・b・ad・・t。・・
資料1 事前・事後テストで使われた問と解答(2)
2.JAPANESE−−ENGLISH COMPOSITION(RELATIVE PRONOUN)
1.(ORPS)私には,おとうさんが医者をしている友達がいます。
Ihave a friend whose father is a doctor.
2.(SO)私が愛したその少女は,英語を話すことができた。
The girl whom I loved could speak English.
3.(00)きのう,あなたが私に紹介した少年に会いたい。
Iwant to see the boy whom you introduced to me yesterday.
4.(OS)私は,私のリンゴを食べたその犬を好きではありません。
Ido not like the dog 翌?奄モ?@ate my apple.
■