ツル ウバ ウ オ の産 卵 ・幼 生 飼 育 お よ び ウバ ウオ の産 卵
塩 垣 優 ・道 津 喜 衛
The Spawning and the Larva Rearing of the Clingfish, Aspasmichthys ciconiae and the Spawning of the Clingfish,
Aspasma minima*
Masaru SHIOGAKI and Yoshie DOTSU
An egg mass of the clingfish, Aspasmichthys ciconiae (Jordan and Fowler) and that of Aspasma minima (Döderlein) were collected from the rocky shore of Nomo (Lat. 32° 35.3' N, Long. 129° 45.5' E) near Nagasaki on April 14, 1972.
The egg mass of A. ciconiae was deposited on the underside of a piece of roof tile underlying the stone on the pebble deposit in the lower intertidal zone.
The egg mass was laid in a dense single layer and comprised 335 eggs in the same developmental stage and was guarded by the male parent being 78 mm in total length.
The egg mass of another clingfish, A. minima was also collected near the spawning site of the former. The egg mass was deposited on the underside of the stone being 27 cm by 34 cm in the same manner as the former spawning, but the latter comprised about 130 eggs in two different developmental stages and was guarded by the 42.3 mm male parent.
About 200 larvae of A. ciconiae hatched out from the egg mass collected were reared in a 30 liter plastic vessel for 55 days. The larvae were fed with the nauplii of the brine shrimp, Artemia salina as the first food and next with the splash copepod, Tigriopus japonicus. They first spent the planktonic life for about 10 days and entered into the clinging life on the vessel bottom at the 9 mm young stage. One of the larvae grew to a 20.1 mm young in 55 days after hatching.
The rudiments of the ventral discs developed at the about 7 mm early post- larval stage. The discs were almost completed at the 10 mm young stage.
ツ ル ウ バ ウ オ Aspasmichthys ciconiae(Jordan et Fowler)お よ び ウ バ ゥ ォ Aspasma
minima (Döderlein) の産 卵 お よび 幼 期 に つ い て は,筆 著 ら1,2,3)が 既 に 報 告 した が,今
回 新 た に,長 崎県 西 彼 杵 郡 野 母 崎 町 野 母 の海 岸 で,1972年4月14日 に ツ ル ウバ ウオ と ウバ
* Contributions from the Fisheries Experimental Station of Nagasaki University
, No. 41
ウオの天然卵群を1二二ずつ採集し,それらの産卵習性についての新しい知見を加えるこ とができた。 さらに,ツルウバウオについては,この採集卵群からふ化した仔魚を飼育し て若魚まで育てることができたのでこれらについて報告する。
はじめに,本研究を行なうに当って研究材料の採集に協力をいただいた本学部の三浦信 男氏に深謝するとともに, 本研究の一部は塩垣に対して与えられた伊藤魚学研究振興財団 の研究助成金によったことを記して,財団の各位に対して深く謝意を表する。
ツルウバウオの産卵
ツルウバウオの卵群は,春の大潮日に当っていた1972年4月14日の昼間の干潮時に,野 母崎町野母赤瀬の岩礁海岸の最干潮線付近の浅所で採集された(Fig.1, A)。この卵群は 岩盤が谷状をなしてくぼんだところの上に堆積していた小石層の上にあった底面が径30 cmほどの転石の下になっていた黒い屋根瓦の破片(8 cm×17 cm)の下面に,一層の 密な矩形状(2.4cm×4.6 cm)の広がりをなして付着しており,(Fig.1, B),瓦の下
灘急難〆
鰍騰護鼠磁艇。
Fig. 1. Spawnings of the clingfishes.
A: spawning ground of the clingfishes in the coast of Nomo at low tide. sp:
spawning place.
B : the egg mass of A. ciconiae attached on the underside of a piece of roof tile as turned over.
C : the male parent flsh of A. ciconiae having guarded the egg mass.
D : top side view of the developing egg of A. c: coniae. ap, adhesive pedestal.
には全長78mmの雄親魚がとどまって卵を守っていた。卵群は335卵からなり,各卵は 胚体形成初期にあり,ほぼ同じ発生段階にあった。 なお,卵を守っていた雄犬魚の前妻蓋 部の筋肉は著しく肥厚して左右に張り出しており,本種でもウバウオ32)およびアンコウ ウバウオConiaens lαticePhalus4)で既に知られているように,鯉蓋部の形態差に第二次 性徴がみられることを示している。
ウバウオの産卵
前述のツルウバウオの卵群を採集した所に隣接した場所で,同じ日にウバウオの1民話 を採集した。 この卵群は小石の堆積層の上にあった底面の広さが27cm×34 cmの石の 下面に,直径約2cmの円形の広がりをなして一層に密に産みつけられており,石の下に は全長42.3mmの雄親心がとどまり,卵群を守っていた。訓諭中には桑実胚期と胚体形 成初期の発生段階の違った2卵群がみられ,卵の総数は約130を数えた。
野母海岸では, ウバウオは海岸近くの浅所に繁茂するホンダワラ類やカジメの藻体に吸 着している場合が多く, 5月から6月の本種の産卵期にこの藻体に吸着しているウバウオ の成魚を採集すると,その大多数は雌であって雄はごく少ないことは先に筆老3)が報告し たが,上述の並幅の産卵習性からみると,産卵期になるとさきに雄蕊は海藻を離れて付近 の海底の石の下に入り,そこに産卵巣を準備し, さらに産卵後はそこに留って卵を守るた めに海藻上のウバウオのなかには雄が少なくなるものと思われる。
ツルウバウオの幼生飼育
前述の採集玉総からふ化したツルウバウオの仔魚約200尾を30 2容量の円筒型,半透明 のパソライト水槽1個に収容し,飼育海水を止水として,仔魚の捕食開始時の餌としてブ ラインシュリンプのふ化幼生を与え,その後にはシオダマリミジソコを与えて55日間飼育 し,生時の全長*が20.9mmの若魚1尾を得た。ここでは,この飼育実験で得た発育各 期の幼生について述べる。なお,本種の仔魚期については前述のように筆者ら1・2)が既に 報告しているが,それらに補足して記述を加える。
ふ化直後の前官(Fig.2, B)は5尾につき全長5.34−5.47 mmで,体は尾部後半を 除いて淡黄色を呈する。背面の黒色素胞間には7個前後の黄色素胞がある。 胸部より尾部 後方にかけての体腹面には小点状の赤色の色素が多数みられ,体腹面は淡紅色を呈する。
標は認められない。筋肉節義基数は20−21+14 ・= 34 一一 35(成魚の脊椎骨数は33−34)で ある。
ふ化後5日の卵黄を吸収し終った後期仔魚初期のものは(Hg.2, B)全長6.89 mm で,その胸部腹面には既に腹吸盤の原基が現われている(Fig.2, VI)。標はやや発達し て腹腔背部に小さな空室として認められる。体背部の黄色素胞は色がくすんできてこりあ
と成長に従って消失していく。
ふ化後10日の稚魚は全長9・04mmとなり,(Fig.2,C),腹吸盤が発達し(Fig.2,
V2),それまでの浮遊生活から,腹吸盤を用いて水槽壁に吸着し始めるようになる。 脇塞
*第三アミールアルコールで麻酔し,静止させたのちに,固定前に外形を描き,全長の測定を行った。
以下の仔,稚魚についても同様である。
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Fig. 2. The larval developmet of Aspasmichthys ciconiae in the rearing experiment and the development of the ventral discs.
A:newly hatched prolarva, 5.34 mm in total tength. B:6.89 mm postlarva, 5 days after hatching. C : 9.04 mm juvenile at the early clinging life, 10 days after hatching. D : 9.12 mm juvenile, one day after the commencement of the clinging life, 10 days after hatching. E : 8.88 mm juvenile, 15 days after hatching. F : 8.01 mm at the early young stage, 19 days after hatching. G : 10.0 mm young, 22 days after. H:dorsal view of G. Vl: ventral disc of the 6.81 mm postlarva.
V2 : disc of B. V3: disc of the 8.35 mm postlarva. V4: disc of D. V5 : disc of G.
The figures of the larval stages were drawn from the anesthetized living specimens before fixation, but the discs from the preserved specimens.
にはほぼ定数の鰭条がそろい,鰭式はD.12,A.9, P.ll 18, V.1,4で示される。
吻は長くのび頭部はやや縦扁している。標は縮少して認めがたい。腹吸盤にはまだ乳頭突 起はみられない。
成長のよい個体で,ふ化後10日で全長9.12mmになった稚魚(Fig.2, D)は,水槽壁 面で吸着生活を始めて1日を経たものであるが,その体側にあった黒色素胞は小型となり,
頭側部には眼を通る赤褐色縦帯がある。なお,これと同色の淡色斑が背,轡両鰭の基底部,
尾柄部の背,腹縁部にみられる。 腹吸盤はその大きさを増し,多数の乳頭突起が形成され ている(Fig.2, V4)。
ふ化後15日の全長8.88mmの稚魚(Fig,2, E)では体表に微小な赤褐色の色素胞が 多数みられ,体背面には同色の横帯の形成が始っている。 尾鰭および背鰭基底部は鮮黄色 を呈する。左右の鯉膜はゆ合しているがまだ喉部に付着していない。
ふ化後19日の全長8.Ol mmの初期弊誌は(Fig.2, F),体の斑紋の形成がより進み,
体背面に11個前後の赤褐色の横帯が認められる。仔魚期にみられた体表の黒色素胞は縮少 して小点状となり,このあと次第に消失していく。
ふ化後22日を経た全長10.O mmの若魚は(Fig.2, G, H)体の斑紋がさらに明瞭に なり,体背面の淡色斑部には微小な黄色素胞が密に分布しているが, 肉眼ではその部分は 白色にみえる。 このあと,成長に従ってこの淡色斑部にも赤褐色の色素が現われ,暗色横 帯との境が不明瞭になってくる。なお,本種の成魚ではときどき頭背面に数条の狭い横帯 を, また,体部に幅広い暗色白帯が現われることがあるが,これらは前述の若魚期にみら れた斑紋の再演現象と思われる。
七海はこの若魚段階で既に喉部に付着している。腹吸盤はよく形が整いその第4軟条の 鰭膜後縁は胸鰭基底に付着している(Fig.2, v5)。
この直販はもっぱら飼育水槽の底面に吸着して静止していたが, ときどき水槽の壁面沿 いに泳ぎ上り,餌として与えておいたほふく性のシオダマリミジンコを捕食していた。
参 考 文 献 1)藤田矢郎・道津喜衛:
2) 塩垣 優・津津喜衛:
(1971)
3) 塩垣 優・道津喜衛:
4)塩垣 優・道心喜衛:
ツルウバウオの産卵。動因,74(4),105−111(1965)
ミサキウバウオとツルウバウオの仔,稚魚。魚雑,18(2),85−89 ウバウオの生活史。旧式,18(2),76−84(1971)
アンコウウバウオの生活史。本誌,32,7−16(1971)