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児童の自己統制タイプと学習習慣

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

児童の自己統制タイプと学習習慣

著者 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

28

ページ 75‑79

発行年 1992‑03‑01

その他のタイトル The Relation of Locus of Control and Learning Habits in Children

URL http://hdl.handle.net/10105/6800

(2)

児童の自己統制タイプと学習習慣‡

藤 田   正n

(心理学教室)

要旨:小学校5年生を対象に、自己統制尺度と学習習慣調査を実施し、児童の 自己統制のタイプと学校や家庭における学習習慣の関係について検討した。そ の結果、内的統制タイプの児童は外的統制タイプの児童よりも、学校の学習習 慣では・登校の意欲・授業の受け方・ノートの取り方において望ましい学習習 慣であった。しかし、家庭の学習習慣では自己統制のタイプによる顕著な違い は見られなかった。学校の学習習慣については、これまでの研究結果からの予 想をほぼ支持するものであった。

キーワード:自己統制タイプ(内的・外的統制型)、学校と家庭の学習習慣

 最近の教育改革では・自己教育力の育成が重要視されるようになってき㍍そこでは、学習者 が自己の学習に対して責任を持ち、また自分の行動をどのように制御していくのかということが 大変重要になっている。この問題と関連する最近の心理学の領域は、「自己統制(Locus of oon−

tro1)」の研究である。

 Rotter(1966)は・自己統制の仕方には2つのタイプがあることを提唱した。それらは・日 常のさまざまな行為が、自分自身の能力や努力によって決定されるという信念をもつ内的統制

(intema1COntrO1)タイプと、運や偶然などの自分以外のものによって決定されているという信 念をもつ外的統制(externa1contro1)タイプである。また、内的統制タイプの人は、外的統制

タイプの人に比べて成功や失敗を自分の能力や努力によって生じるものとしてとらえるので、自 分の力によって周囲の環境に働きかけることにより行為や出来事を変えることができるという統 制可能感を強く感じている。

 これまでの研究では、内的統制タイプの児童が外的統制タイプの児童よりも学校の成績が優れ ている(Messer,1972:Nowicki&Wa1ker,1974:神田,1991)こと、知的学習場面や技能場面 における学習動機が高く、特性不安や場面不安が低い(次郎丸,1984:藤田,1987)ことなど、

学校での学習成績や学習適応性が優れていることなどが明らかにされている。しかしながら、児 童の自己統制と学習適応性の関係については、まだ十分な検討がなされていないのが現状であ

る。

.The Re1ation of Locus of Contro1and Leaming Habits in Chi1dren

Tadasi FUJITA(Dεραr亡㎜e耐。∫Psツ。ん。王。8ツ,Nαrασπ沁ersj妙。ゾ厄ぬ。α土{0π,Mαrα)

(3)

 そこで本研究では、学習適応性のひとつである学習習慣を取り上げ、児童の自己統制タイプと 家庭における学習習慣の関係について検討することを目的とした。これまでの研究の結果からは、

内的統制タイプの児童は外的統制タイプの児童よりも学習習慣が良い状態にあることが予想され

る。

 なお、学習習慣は杉村・井上・豊田(1986)によって作成された学習習慣調査を用いることに した。この調査は、学校の学習習慣(登校意欲、授業の受け方、ノートの取り方、テストの受け 方)と家庭の学習習慣(生活習慣、学習環境、宿題・復習・予習、計画と実行、勉強の仕方)の

2つの領域から構成されているので、学習習慣について分析的にとらえることができる。

方    法

 調査対象  公立小学校5年生 122名(男児74名、女児48名)

 調査内容  1 児童用自己統制尺度  Now1ck1and Str1ck1and(1973)の尺度を次郎丸

(1984)が日本語訳したものを修正(藤田、1987)して使用した。40貫目から成り、得点が高い 程外的統制傾向を示す。

2 学習習慣調査  杉村・井上・豊田(1986)の作成した項目から、学校の学習習慣(25貫目)

と家庭の学習習慣(25貫目)を調べる項目50項目を使用した。なお、それぞれの領域は次のよう な内容で構成されている。「(1)学校の学習習慣=①登校意欲(5項目)、②授業の受け方(10 項目)、③ノートの取り方(5項目)、④テストの受け方(5項目):(2)家庭の学習習慣=① 生活習慣(6項目)、②学習環境(5項目)、③宿題・復習・予習(4項目)、④計画と実行(5 項目)、⑤勉強の仕方(5項目)」 この調査では、得点の高い程、学習習慣が良い状態にあるこ

とを示す。

 実施手続き  調査は筆者らが小学校へ出向いてクラス単位で集団実施した。最初に項目番号 が印刷してある回答用紙を配布し、学年、氏名などを書かせた後、回答の仕方について説明し、

よく理解させたうえで質問項目を読み上げて回答させた。自己統制尺度については、「はい、い いえ」の2件法で、学習習慣調査については、「はい・いつも、はい・ときどき、いいえ」の3 件法で回答させた。

 採点法  自己統制尺度は2点評価尺度になっており、外的統制を示す反応に対して1点、内 的反応を示す反応に対してはO点が与えられる。得点は、最低0点から最高40点の範囲で分布す

る。したがって、得点が高くなるにつれて外的統制が強いことを表している。

 学習習慣調査では、学校の学習習慣の内、「登校意欲」の5番と「授業の受け方」の7番から 1O番までの5項目については、■はい、いつも を0点、 はい、ときどき を1点・ いいえ を2点とし、それ以外の20項目については、 はい、いつも を2点、 はい、ときどき を1 点、  いいえ を0点として採点した。したがって、得点が高いほど、登校意欲が強く、授業の 受け方が積極的であり、ノートの取り方とテストの受け方が望ましいことを示す。また、家庭の 学習習慣の内、「生活習慣」の2番と6番については、 凹はい、いつも をO点、  はい、とき

(4)

どき を1点、  いいえ を2点とし、それ以外の項目については、  はい、いつも を2点、

はい、ときどき を1点、  いいえ を0点として採点した。したがって、得点が高いほど、

望ましい生活習慣が身についており、適切な学習環境であり、宿題・復習・予習の習慣がついて おり、計画を立てて実行し、望ましい勉強の仕方が身にづいていることを示す。

結 果 と 考 察

 自己統制と学習習慣の関係(相関による分析)  表1は全員の自己統制得点と領域ごとの学 習習慣得点の平均とsDを示したものである。両者についてピアソンの相関係数を算出し、まと めたものが表2である。予想どおり、多くの領域で負の相関がみられた。これは、自己統制尺度 得点が低い程、学習習慣の得点が高いという関係を表しており、内的統制タイプの児童が外的統 制タイプの児童に比べて学習習慣が良い状態にあることを示している。しかしながら、いずれも 相関関係は低いものでしかなかった。なお有意な負の相関が見られたのは、学校の学習習慣の 登校の意欲 、  授業の受け方 、凹ノートの取り方 のみであった。これらの学習習慣にお いては、内的統制タイプの児童が外的統制タイプの児童よりも学習習慣が良い状態にあることを 示している。それに対して、家庭の学習習慣においては有意な相関は見られなかった。

表1 全員の自己統制得点と学習習慣得点の平均と∫D        学校      家庭

向己統制     登校  授業  ノート テスト 生活 環境 宿題 計画 勉強 平均 15.0  6.5 815  5.6  6−3  7.I 5−6 3.1 2−9 4−2

(∫D)(318) (2.1)(3.4) (2.3) (2.0) (2.5)(2.2)(1−8)(2−6)(2−3)

表2 自己統制と学習習債の関係

学校 家庭

登校  授業 ノート テスト 生活 堀境 宿題 計画 勉強

相関係数(7)一0.18+一一0.15+一0.29紙一0.02 −0−02−0−m −0.01−0.05−0−08 そρ〈.10 榊力く一01

 自己統制タイプによる学習習情の差異  自己統制得点の上位25%(18〜23点)、30名(男児 22名、女児8名)を外的統制者、下位25%(6〜12点)、30名(男児13名、女児17名)を内的統 制者として抽出し、学習習慣の領域ごとに平均値を比較した。表3ならびに表4は、内的統制者 と外的統制者における学校と家庭の学習習慣得点の平均とSDをそれぞれ示したものであ孔領 域ごとに内的統制者と外的統制者の学習習慣得点の平均値についてt検定を行った。その結果、

学校の学習習慣では、  登校の意欲 (t(58):1.39,ρ<.10)、  ノートの取り方 (土(58)=

3.08,一 マ<。O1)、  授業の受け方 (f(58)=1.32,ρ<.10)にそれぞれ有意な傾向、または有

(5)

意差が見られた。

 しかしながら、家庭の学習習慣では統制型による有意な差異は見られなかった。これらの結果 は、相関による分析の結果とほぼ同様であり、学校の学習習慣においてのみ、内的統制タイプの 児童は外的統制タイプの児童よりも良い学習習慣の状態にあることを示している。

      表3 学校の学習習慣得点の平均と3D

 学習習慣  登校意欲   授業の隻け方  ノートの取り方  テストの受け方 自己統制型  平均  8D   平均 8ρ   平均  ∫D    平均  ∫D

内的腕制   7.1 (1.6)

外的腕制   6.4 (2.2)

差    0.7 1値  1.39+

9.2(2.5)   6.3(1.6)

8.0 (4.2)      416  (2.5)

1.2       1.7 1132+   3,08■■・

6.2  (】.7)

6,0  (2.7)

0.2

0.33

十ρく.m 淋クく一01

表4 家庭の学習習慣得点の平均と∫D

 学習習慣  生活習慣  学習環境  宿題はか  計画と実行  勉強の仕方 自己統制型  平均∫D 平均 ∫D  平均 ∫D 平均 ∫D 平均 8D

内的統制   6.1(2.2) 6.0 (2.2) 3.8 (1.5) 3.1 (2.5) 4.5 (2.1)

外的統制  6.4(1.9) 5.5 (2.4) 3.8 (2.5) 3.3 (2.8) 4.5 (2.6)

差一0.30.5

値     一0,56      0.83

0.0       −0.2         0.0 0.00      −0,00        0.00

 項目ごとの分析  内的統制者と外的統制者のデータについて学校および家庭の学習習慣の項 目ごとに2(内的、外的)×3(2点、1点、0点)のパ検定を行った。その結果、予想どお り内的統制者の方が外的統制者よりも望ましい学習習憤を示した項目は、次の通りであった。学 校の学習習慣では、「登校意欲」(学校へ行くのが楽しい1少しくらい体の調子が悪くても、学校 へ行きたい)、「授業の受け方」(授業中、先生の話をよく聞いている;授業中、先生の質問に自 分から進んで答える)、「ノートの取り方」(先生が黒板に書いたことをノートに書く;先生に言 われなくてもノートに書く:ノートはきちんとていねいに書く)・rテストの受け方」(テストの

とき、問題をよく読む;テストの答えを書き終わったとき、見直す)の項目であった。また、家 庭の学習習慣では、「生活習慣」(朝寝ぼうをして遅刻することがない;忘れ物をしないように気 をつけている)・「学習環境」(家では決まった場所で勉強している)、r勉強の仕方」(どこが大切 かを考えながら教科書を読んでいる)の項目であった。これらの結果から、内的統制タイプの児 童の学習習慣を特徴づけてみると、彼らは学校を楽しい所と認識しており、少しくらい体調が悪

くても、それを乗り越えて登校しようとする意欲が高い。授業中は教師の話をよく聞いており、

積極的に教師の質問に答えているなどの学習態度の良さがある。また、ノートの取り方において も自発性、ていねいさが見られる。テストの際には、問題の精読、答えの点検がきちんとなされ ている。家庭においては、毎日だし.、たい決まった場所で勉強し、忘れ物をしないように注意し、

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規則正しい毎日の時間の使い方がされている。また、勉強の仕方においてもポイントを考えたや り方がなされていると言った特徴がある。

 ところで本研究では、従来の研究結果から予想した内的統制型と外的統制型の差は、学校の学 習習慣の領域で多く見られたのに対して、家庭の学習習慣の領域ではほとんど差は見られなかっ

た。この差異について明確な説明はできないが、学校と家庭の学習習慣の内容に違いがあること が影響している可能性がある。すなわち、学校の学習習慣の内容は、学習意欲、学習技術などの、

いわゆる学習適応能力、学力向上要因と言われるものであるのに対し、家庭の学習習慣の内容は 日常の基礎的な学習習慣にかかわるものが多い点である。

引 用 文 献

藤田 正 1987児童の自己統制型と不安に関する研究 奈良教育大学教育研究所紀要,23,71−

    80.

樋ロー展・清水直治・鎌原雅彦 1979Locus of Contro1に関する文献的研究 東京工業大学     人文論叢,5,95−132.

次郎丸睦子 1984 児童におけるNowicki−StrickIand I−E sca1eと他つ行動特性との関係 芽     波大学医療技術短期大学部研究報告,5,39−45.

神田伸彦 1991子どものLocus of contro1と学業成績の関係に関する研究 日本心理学会第55     回大会発表論文集,574.

Messer,S.B.1972 The reユation of internaトexterna1contro1to academic performance.

    Cん{〜d 工)eueエ。ρητeπ亡,43,145−146

Nowicki,Jr.S.,&Strick1and,B.R. 1973 A1ocus of contro!sca1e for chi1dren.Jo〃πα王

    o/ Couηse王三π8 απd c脆η三。α王P8ツ。ゐ0JOgツ,40,148−154,

Rotter,J.B− 1966 Genera1ized expectancies for intemaI versus externa1contro1of rein−

    forcement.P8ツ。ん。工。釦。α王Moπo8rαρ加,80(Wゐ。−e No.609),1−28.

杉村健・井上登世子・豊田弘司 1986小学校における学習習慣と学業成績の関係 奈良教育大     学教育研究所紀要,22,43−57.

 [付記コ本研究を行うにあたり、大和郡山市立郡山西小学校の校長先生ならびに諸先生方、児 童の皆さんのご協力を得、資料の整理、分析に際しては東111卓司、坪井百合、森本仁美、吉田郁 子さんらのご協力を得ました。ここに記して厚く感謝の意を表します。

参照

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