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へき地における小学生の学習習慣

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

へき地における小学生の学習習慣

著者 杉村 健, 清水 益治, 井上 登世子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

23

ページ 63‑70

発行年 1987‑03‑01

その他のタイトル School Children's Study Habits in a Remote Mountain Area

URL http://hdl.handle.net/10105/6623

(2)

へき地における小学生の学習習慣*

杉村 健・清水益治・井上登世子榊

       (心理学教室)

要旨:へき他校と平担校の2,4,6年生について、登校意欲、授業の受け方、

ノートの取り方、テストの受け方を調べた。登校意欲ではどの学年も有意差が なかった。授業の受け方では2年生と6年生でへき他校の方が平坦校よりも有 意によく、積極的に授業を受けていた。ノートの取り方とテストの受け方では 2年生はへき他校の方がよい傾向を示したが、4年生と6年生は平坦校の方が

よかった。

キーワード:へき地、授業の受け方、ノートの取り方、テストの受け方

 先の研究(杉村・井上・豊田、1986)では、市販の諸検査を参考にして子どもの学習習慣を 査定する調査項目を作成し、小学生における学習習慣の実態を調べるとともに、学業成績と学習 習慣との関係を検討した。その研究の調査対象は平坦部の小学校の子どもであったが、へき地の 子どもたちの学習習慣は平坦部の子どもたちとどのような違いがあるだろうか。本研究の目的は、

先に作成した家庭の学習習慣、学習意欲、学校の学習習慣を調べる62項目のうち、学校の学習習 慣を調べる25項目(登校意欲5項目、授業の受け方10項目、ノートの取り方5項目、テストの受 け方5項目)について、へき地の子どもと平坦部の子どもの応答を比べることである。杉村(1973)

の研究によると、へき地の子どもは平垣部の子どもと比べて}先生にほめられたいから勉強する}

と答えている者が多いことからみて、r授業の受け方」がより積極的ではないかと予想される。

また、へき地の学級は平坦部の学級と比べて人数が非常に少ないことからも同じことが予想され る。別の研究で上田・杉村・玉瀬(1977)は、へき地の3,4年生は学習適応性検査(辰野、

1973)の中の「勉強の技術」で、また、5,6年生は学力向上要因診断検査(松原、1967)

の中の「勉強の方法」で、それぞれ標準化標本よりも低い得点であることを見出している。この 結果からみて、rノートの取り方」と「テストの受け方」は平坦部の子どもの方が望ましいこと が予想される。

方      法

田査対象  表1に示したように、へき地の子ども95名と平坦部の子ども212名である。へ

* School ChildrenIs Study Habits in a Remote Momtain Area

** Takeshi Sugimura,Masuharu Shimizu,and Toyoko Inoue (D砂0 mm 0∫

   戸5ツC伽!0〃,〃mσ舳e7S〃0∫〃ωC0〃0n,M〃0)

(3)

き地は吉野郡天川村の天之川小学校、天之川西小学校および洞川小学校の子どもであり、平坦部 は磯城郡川西町の結崎小学校の子ども(各学年2学級)である。

表1調査対象の内訳(人数)

学   年          2  4  6

     男児26 14 10

へき地  女 児 12 18 15

50 45

    葺一ガ1ゴ音%・

二一二を立込

調査項目  杉村・井上・豊田(1986)が作成した62項目のうち、学校の学習習慣を調べ ることができる次の25項目である。

登校意欲(5項目)

学校へ行くのが楽しいですか。

休みの日よりも学校がある日の方が楽しいですか。

少しくらい体の調子が悪くても、学校へ行きたいと思いますか。

学校で友達と遊ぶのが楽しいですか。

朝起きて、学校へ行きたくないと思うことがありますか。

授業の受け方(10項目)

1 チャイムが鳴ったら、すぐ席に着きますか。

2 チャイムが鳴ったら、すぐ勉強の用意をしますか。

3 授業中、先生の話をよく聞いていますか。

4 授業中、先生の質問に自分から進んで答えますか。

5 授業中、自分から進んで意見を言いますか。

6 授業中、分からないところがあったら、質問しますか。

7 授業中、ぼんやりしていることがありますか。

8 授業中、よそ見をすることがありますか。

9 授業中、落書きをすることがありますか。

ユO授業中、おしゃべりをすることがありますか。

ノートの取り方(5項目)

 1 先生が黒板に書いたことを、ノートに書きますか。

 2 先生に言われなくてもノートに書きますか。

(4)

 3 ノートはきちんと、ていねいに書いていますか。

 4 勉強したことをノートにまとめて書いていますか。

 5 ノートの書き方を工夫していますか。

テストの受け方(5項目)

テストの前に、計画を立てて勉強していますか。

テストのとき、問題をよく読みますか。

テストのとき、分かる問題からしますか。

テストの答えを書き終わったとき、見直しますか。

テストを返してもらったとき、間違ったところをやり直しますか。

 手続き  調査は著者と心理学専攻の大学院生および4回生により、午前中にそれぞれの教室 で実施した。へき他校は昭和61年1工月4日、平担校は1O月20日(2,6年生)と21日

(4年生)に実施した。回答用紙には、上部に はい、いつも はO、 はい、ときどき は△、

皿いいえ は×という答え方が印刷してあり、その下に1番から25番までの項目番号が印刷し てある。答え方を板書してよく理解させてから、1番から順に質問項目を読みあげ、○、△、X のいずれかで回答させた。

結果と考察

 「登校意欲」の5番と「授業の受け方」の7番から10番までの5項目については..はい、い つも を0点、 はい、ときどき を工点、}いいえ を2点とし、それ以外の20項目につい ては一一はい、いつも を2点、 はい、ときどき を1点、 いいえ を0点として採点した。

したがって、得点が高いほど、登校意欲が強く、授業の受け方が積極的であり、ノートの取り方 とテストの受け方が望ましいことを示す。

 平均値の比較  表2は、学年別にへき地と平坦部の平均と∫D、およびその差とt検定の結 果を示したものである。差の値はへき地から平坦部を引いてあるので、正の場合はへき地の方が 望ましいことを示し、負の場合は平坦部の方が望ましいことを示す。表からわかるように、登校 意欲ではどの学年も有意差がなかったが、授業の受け方では2年生と6年生で有意差があり、と もにへき地の子どもの方が積極的に授業を受けていることを示している。ノートの取り方では4 年生と6年生で有意差があり、テストの受け方では6年生で有意差があった。いずれも平坦部の 子どもの方が望ましい状態を示している。

 授業の受け方について、4年生では有意差がなかったが、2年生と6年生でへき地の子どもの 方が明らかに良かったという結果は、先の予想と一致するものであった。へき他校では1学級の 人数が少なく(3校を通じて最高17名、最低7名)、授業中に教師の目が行きわたるとともに、

ひとりひとりの子どもと教師とが親密な関係にあることも、授業への積極的な参加を助長するの

(5)

表2 へき地と平担部の平均と80

登校意欲 授業の受け方丁フこ両方 テストの受け方 支  ∫o  交  ∫D    へ一き 地  7,05 1.67 11,60 2,98 6,26 2,37 6,92 2,14

 2

   平坦部 6,581,78 9,192,71 5,602,206,371.90

 年一・一一一一一一一…一一一…一一 一トー

     差0,47 2,410,60 0.55生to/;1㌶)、∴、ユぽ・∵、ゴ、花、∴

 4

   平坦部 6,622.00iO,993、工06,582.31.7.71 工.74

 年     差O.44 0.13−1.08−0.58

 生   亡(∂∫三g5)  1,05   0,21   2.31*   1.51

   へき地 6.44・1.6311,283,274,962,626,161,67

 6

   平・坦」部  7.ユ4 1,89 8,68 2,64 7,14 1,89 6,96 1.59

 年一…一・一一一・・一…一…一一・一一・…一・一一一

     差一〇.70 2.60−2.18 −O,80

 生   f(a∫=92)  1,63    3.91**   4.38**   2.工O*一

      *」D <〔  05   **∫〕<  01

であろう。ノートの取り方とテストの受け方では4年生と6年生でへき地の方が低い得点であり、

これは先の研究(上田・杉村・玉瀬、1977)で得られた「勉強の技術」..と「勉強の方法」で標 準化標本よりも得点が低いことξ対応してい乱この結果は、へき地の教師は平坦部の教師と比 べて、本研究で取り上げたノートの取り方やテストの受け方をあまり指導していないのかもしれ ないし、あるいは平坦部の子どもは学習塾などでノートの取り方やテストの受け方を指導されて いることによるのかもしれない。

 項目ごとの比較  表3は、項目ごとにへき地と平坦部の得点の分布と2(へき地、平坦)×

      2

3(2点、1・点、0点)のγ検定の結果を示したものである。どの学年も登校意欲については 有意差がなかったが、授業の受け方では3学年とも3項目、ノートの放り方では2年生が3項目、

、4年生と6年生が2項目、テストの受け方では2年生が3項目、4年生と6年生が2項目につい て、それぞれ有意差があった。

 授業の受け方では、項目1のrチャイムが鳴ったら、すぐ席に着く者」と項目2のrチャイム が鳴ったら、すぐ勉強の用意をする者」が、2年生と6年生ではへき地の子どもの方が有意に多

く、着席と勉強の準備の習慣ができている。2年生では項目5の「授業中、自分から進んで意見を 言う者」、4年生では項目6のr授業中、分からないところがあったら質問する者」、6年生で は項目4のr授業中、先生の質問に自分から進んで答える者」が平坦部よりもへき地の方が多く、

へき地の子どもの方が授業に積極的に参加している。4年生では項目8のr授業中、よそ見をす る者」と項目10のrおしゃべりをする者」が平坦部よりもへき地の子どもの方が多くなってい るが、6年生ではむしろ逆の傾向になっている。

(6)

 ノートの取り方では、項目1のr先生が黒板に書いたことをノートに書く者」はどの学年もへ き地より平坦部の方が多く、特に6年生では、平坦部では90%の者が}いつも}ノートに書い ているのに、へき地ではわずかに28%に過ぎない。このことから、平坦部の子どもの方が、教 師が板書したことをノートする習慣を身につけているといえる。項目2の「先生に言われなくて

もノートに書く者」は2年生ではへき地の方が多いが、4年生と6年生では平坦部の方が多くな

表3 へき地と平坦部の得点の分布(%) (括弧内は平坦部)

2 4 6

2点 1点 ○点

π2

2点 1点 ○点

κ2

2点 1点 ○点 72

検定 検定 検定

1 79(73) 18(22) 3(5) 53(48) 47(46) 0(6) 28(52) 72(46) O(

1)

2 32(18) 18(31) 50(51) 31(20) 41(44) 28(46) 12(17) 44(42) 似(41)

3 68(58) 18(29)

.13(13)

69(54) 22(35) 9(11) 36(57) 44(38)

20(6)

4

92(90)

8(5)

O(5) 88(89) 13(11) 0(0) 96(94) 4(4) O(

1)

5 26(14) 47(65) 26(21) 25(31) 53(51) 22(18) 40(51) 56(42) 4(7)

1

55(4)

39(40) 55(56)

**

16(17) 69(48) 16(35)

28(6)

36(48) 36(46)

2 45(10)

42(56).

13(33)

**

25(20) 63(54)

且3(26) 44(9)

44(38) 12(54)

**

3 47(56) 47(36) 5(8) 66(68) 31(31) 3(2) 36(35) 64(59) 0(6)

4

32(17) 50(55) 18(28)

4王(28)

50(60) 9(12) 20(14) 72(46) 8(39)

5

29(13) 55(44) 16(44)

**

22(25) 56(49) 22(26) 16(1O) 52(43) 32(46)

6

29(31) 37(35) 34(35) 56(28) 41(29)

3(43) **

20(19) 60(42) 20(39)

7 24(22) 61(55) 16(23) 9(20) 75(72) 16(8) 28(20) 72(74) O(6)

8

13(10) 66(69) 21(21) 0(15) 69(75) 31(9)

**

12(7) 76(80) 12(13)

9

50(41) 26(40) 24(19) 53(51) 28(38) 19(11) 52(36) 40(54) 8(10)

10

24(13) 42(60) 34(27)

3(ll)

63(75) 34(14)

16(9) 68(57) 16(35)

1 58(77) 32(13) 11(10)

69(86) 31(8) 0(6)

**

28(90) 60(10) 12(0)

**

2 29(14) 42(29) 29(56)

6(37) 38(32) 56(31)

**

16(68) 56(22) 28(10)

**

1 3 68(37) 24(49) 8(14)

**

31(52) 50(32) 19(15) 幽(49) 40(36) 16(14)

4

32(27) 39(44) 29(29) 22(26) 47(42) 31(32) 20(45) 40(29) 40(26)

5

45(38) 26(36) 29(26) 47(55) 34(28) 19(17) 20(32) 坐(46) 36(22)

1 18(15) 53(24) 29(60)

**

25(25) 44(45) 31(31) O(9) 44(65) 56(26)

2

76(59)

24(3ユ)

0(10) 66(80) 34(15) O(5) 60(78) 40(19) o(

3)

3

58(41) 13(24) 29(35) 69(69) 19(15) 13(15) 44(59) 24(30) 32(lO)

4

76(55) 16(40) 8(5)

**

56(69) 44(15) 0(15)

**

60(61) 36(33) 4(

6)

5

55(82) 18(10)

26(8) **

50(85) 41(14) 9(2)

**

48(49) 48(35) 4(16)

*P<.05  **P<.01

(7)

っており、特に6年生では、平坦部では。いつも.書いている者が68%もいるのに、へき地で はわずかに16%であって、へき地の2年生(29%)よりも少ない。項目1と項目2で}いつ ノートに書いている者は平坦部では学年とともに増加し、望ましい習慣が形成されていくが、

へき地では6年生で少なくなっている点が問題であろう。項目3の「ノートをきちんと、ていね いに書いている者」はへき地の2年生では68%もおり、平坦部の2倍に近い。表2からもわか るように、全体としてノートの取り方は2年生ではへき地の方が望ましいが、学年が進むにつれ て平坦部の方が望ましくなる。へき地では学年とともに得点が減少するが、平坦部では逆に増加

しており、へき地における減少傾向についてはその原因を調べてみる必要がある。

 テストの受け方では、項目1の「テストの前に、計画を立てて勉強していない者」は、2年生 ではへき地が29%、平坦部が60%で平坦部の子どもの方が多いが、6年生ではへき地56%、

平坦部26%でへき地の子どもの方が多い。項目4の「テストの答えを書き終ったとき、見直し ている者」は、2年生ではへき地(76%)の方が平坦部(55%)よりも多いが、4年生では 平坦部(69%)の方がへき地(56%)よりも多い。項目2の「テストのとき、問題をよく読 む者」も2年生ではへき地が多いが、4年生、6年生では平坦部が多くなっている。これら3項 目におけるへき地と平坦部の学年による違いが、表2の平均値におけるへき地と平坦部の学年に よる違いをもたらしている。項目5の「テストを返してもらったとき、間違ったところをやり直 す者」は2年生と4年生では平坦部で80%をこえているが、6年生になると50%程度に減少

している。

要      約

 へき他校の2,4,6年生合計95名と、平坦校の2,4,6年生212名に、登校意欲、授業 の受け方、ノートの取り方、テストの受け方に関する25項目について調査し、要因ごとの平均 値および項目ごとに比較した。主な結果は次の通りである。

 11燈校意欲一との学年でもへき地と平坦部の間に有意差がなかった。

 12授業の受け方一平均値の比較では、2年生と6年生でへき地の方が有意に高かった。項目 ごとの比較では、始業時の着席と勉強の準備を速くし、授業中に進んで先生の質問に答えたり、

意見を言ったり、分からないところを質問したりする点で、へき地の子どもの方が授業に積極的 に参加している。

 13〕ノートの取り方一平均値の比較では、2年生はへき地の方が高い傾向があるが、4年生と 6年生では平坦部の方が有意に高かった。へき地では学年とともに平均値が減少するが、平坦部 では増加する傾向があった。項目ごとの比較では、教師の板書をノートに書く者はどの学年でも 平坦部が多かったが、2年生では先生に言われなくてもノートに書く者、ノートをきちんとてい ねいに書く者が、へき地の方が多かった。

 14〕テストの受け方一平均値の比較では、2年生はへき地の方が高い傾向があるが、6年生で は平坦部の方が有意に高かった。項目ごとの比較では、答案を見直す者は2年生ではへき地が多

(8)

いが4年生では平坦部が多く、テスト問題をよく読む者も2年生ではへき地が多いが、4年生と 6年生では平坦部が多かった。

引 用 文 献

松原達哉 1967 学力向上要因診断検査(F AT)  東京:日本文化科学社

杉村 健 1973 へき地における小学生の学習動機  奈良教育大学教育研究所紀要,9,

  91−g8.

杉村 健・井上登世子・豊田弘司 1986 小学生における学習習慣と学業成績の関係  奈良   教育大学教育研究所紀要,22, 43−57.

辰野千寿 1973 改訂学習適応性検査(AAI)  東京:日本図書文化協会

上田敏見・杉村健・玉瀬耕治 1977 へき地における児童・生徒の学習意欲と学習適性   奈良教育大学教育研究所紀要, 13,63−70.

<付記〉 資料の収集にあたり、吉野郡天川村天之川小学校、天之川西小学校、側11小学校およ  び磯城郡川西町結崎小学校の協力を得ました。資料の収集には本学心理学専攻大学院生および  4回生、集計には心理学専攻3回生東畑年昭、森田さっきの諸君の協力を得た。心から感謝し  ます。

(9)

参照

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