〔
総 合
講座
な
が れ よ り〕
長 大 橋
の
風
に
よ
る
振 動
と そ
の
制 振 対 策
Aerodynamic
Response
ofLarge
−
Span
B
!idges
andIts
Stabilizations
’ 石 川 島播 磨 重工業 (株 )技 術 開 発本 部
・
総合開 発セ ン ター
松
田一
俊
†Kazutoshi
MATSUDA
1
は じ め に現
在 ,長大橋
と呼
ば れる中 央 支 間が比較的長
い橋梁
は ,風による振 動 な どの 問 題 点が ない か ど う か,
風 洞試 験
に よっ て そ の耐 風 安 定 性 を 確 認 す る こと が一
般 的に行 わ れてい る.
し か し,風
洞 試 験 に よ る耐 風安
定性
の 確 認 が実 際に行 わ れ る よ う に な る ま で に は,
風 による多
くの橋 梁 被 害 を経 験 しな け れば
な らな か っ た,
これらの うち,橋
梁の耐
風 設 計に大
き な影響 を与
え た代表
的 な被
害 は,
次に挙 げる2
つ で ある.
ま
ず ,静 的
な風 圧であ る風 荷 重の 重要
性が広
く 認 識 されるよ うに なっ た代表
的 な被
害 は ,1879
年スコ ッ ト ラ ン ドに お け る全長
3
,
85
径 問の錬鉄 製
ラ テ ィ ス ト ラ ス鉄 道橋
で ある テ イ橋
の 落橋
で ある.
落 橋 したの は,
85
径 間の う ち13 径間
連続
ト ラス部
で あ り,
こ の 落 橋の原 因には諸 説が あ るが,
設計段 階
で風荷重
の見積
も り が 不 十 分で あっ たこ と は 間 違いない と言 わ れて い る.
残
念な が ら,
風の 静 的 作 用である風荷
重の み を 設計
に考慮す
れば橋
梁の 風に対 する検討
は十 分で ある とい う考
え方
は,
図1
に示 す1940
年 米 国シ ア トル近 郊で起こ っ た タコ マ・
ナ ロ ウ ズ吊 橋の落橋 事
故 によっ て覆
さ れた.当時
853m
の世界 第
3
位
の中央 径
間 長 を 有す
る本 橋は ,風 速 約60m
!
s に相 当 する風荷重
に耐
え られるよ うに設計
されて い た が,完成後 4
ヶ月後 ,
わず
か19m
!
s とい わ れる風 速に達し た と き,激
しい ね じれ振動
によっ 図1
タ コマ橋の落 橋
D
て落橋
した.
こ の 事 故 を 契 機に,
風の静 的 作 用で ある風荷
重だ け で な く,
風の 動 的 作 用の重要性 も
認 識 される こと に なっ た.
こ の よ う な 橋 梁 被
害
を経
て,橋梁
の耐
風 設 計 技術
が向 上,
確 立 さ れて きた.
こ こで は,長大橋
を対象
に,
風 によっ て発 生 する振 動 現 象,
耐 風 設計
の 概要 ,振動
現象
に対す
る制 振
対 策につ い て 簡単
に述べ る。
また , 具 体 的な制振対 策
の事例
と し て,
明 石 海 峡大
橋 と白鳥大橋
の2 橋
に対
し て施
さ れ た制振
対 策 を取 り上 げ,
その概 要 につ い て も述
べ る.
2
風によっ て 生 じる
振動
現象
2)゜
〒235−
8501 横 浜 市 磯 子 区 新 中 原 町 1番 地 †E −
mai1:kazu【oshi 」natsuda @jhi
.
co.
jp
タコ マ
・
ナ ロ ウズ吊橋
は, 風の動的作
用に起因
し たねじれ振
動で落 橋 し た が,
風によ る振
動 現象
の種 類は こ れ ばか り で は ない.
こ こで は文 献2
) の定 義に基づ いて,
風に よっ て主
と し て橋桁
に生 じ る振 動 現 象に つ い て述べ る.
・渦励振
比
較
的低
風速
の限
られた風 速領域
で発
現 する270
長 大 橋の 風によ る 振 動 と その制 振 対 策規 則 性の 強い 振 動
.
風 琴振
動 と もい う.
・
ガス ト応 答特 定
の発 現 領域
を もた ない,自然
風の風速
変 動に起 因 する不 規 則 性の 強い振 動 をい う。
パ フェ ッ テ ィ ン グ とも
呼
ば れ る.
発散振
動ある風 速に達
す
る と振 幅が急 激に大 きく なる 振 動 をい う.
ギヤロ ツ ピン グ気 流
に直 角
なた わ み1
自由
度の発 散 振 動 をい う
.
橋 桁で は鉛直
たわみの振 動 と なる.
・
フ ラ ッ ター
ね じれ
1
自由度
あ るい は鉛 直
たわ
み と ね じれ
2
自由
度連
成の 発 散振
動 をい う.
3
橋梁
の耐
風 設計
基本 的
に風に よっ て長大橋
に は,
前 章に示 し た よ うな振 動 現 象が発 生 する可 能 性 が ある.
これ らの 振 動 現 象に対す
る安
全性
を確 保
し,橋梁
の構
造 諸 元 や橋 桁・
主 塔の断
面形状
を 決 定す
る こ と が(
動 的)
耐風設 計で あ る.
一
方 ,(
静
的)
耐 風 設 計 は,道路橋
示方
書で規 定 されて い る風 荷 重 を 考 慮 し た静 的 設 計で ある.
こ れは橋
軸直
角 水 平方
向 に吹 く風による抗
力 を基本
と し て,
これに風速変
動の効 果 を考 慮 した 風荷
重を
用い た設計
である.
橋
梁架
設周
辺の風 環境
や橋 梁の構 造 特 性に よっ て は,抗力
だけで な く,
揚 力 や 空 力モー
メ ン トも静
的 耐 風 設 計に適 切に配 慮す
る こ と が 必要
で あ る.
支 問 長 が
200m
まで の道路橋
につ いて は,
道 路橋耐
風設計便覧
2)に従
っ て 耐 風 設 計 を 実 施 する こ と に なっ て いる.
ま た,
支 間 長が300m
程度
ま で の道 路 橋につ い て も,
内容
を 吟 味 した 上で こ の 便 覧 を 準 用し て も よい と便 覧
に規
定 されてい る.
支 間 長が さ ら に長
い長 大 橋の 耐 風 設 計は,
主 と し て風 洞試
験によっ て実 施 され ること が多
い.実橋
の縮
尺模
型 を風 洞内
に設置
し て 風 に よ る応答
や作 用 空 気 力 を計 測 す るこ とに よっ て ,実橋
の応答 を
推 測す
る.推
測す
る方 法
に は大
別 し て2
種 類 あ る.一
つ は,
図2
に示 す よ うに実 橋の形 状,構
造特性
お よ び振
動 特 性 を相 似則
に基
づい て縮
尺 し た 図 23
次元 弾 性 模型に よる風 洞 試 験の例 (広島 県 道 路公社ご提 供 )3
次元弾性 模型
に風を作
用さ せ るこ と によっ て ,直接的
に模型
の振 動応答 を計測 す
る方法
で ある.
他
方は,2
次 元 剛 体 模 型 を 用い て橋 桁に作 用す
る 静 的 空 気 力(
三 分力)
お よ び動 的空気 力 (
非定 常
空気 力)
を 風洞試
験 3)に よっ て計 測 し,
そ れ らを実橋
3
次 元 解 析モ デル に よ るフ ラ ッ ター
解析 ,
ガス ト応
答 解 析プ ロ グ ラ ム等
に外 力
と し て 入力す
るこ と よっ て,
間 接 的に実橋
の振動
応答 を推測
す る方
法である.最 近
で は,
CFD
(
Computational
Fluid
Dynamics )
によっ て静 的およ び 動 的 空 気 力 を 予 測 す る 試 み 4〕も活 発 に行 わ れ るよう に なっ て き た.
4
制 振 対 策の方 法構 造 物の 制 振 対 策につ い て は
,
これ まで多
くの 論 文 例えば5−
13} におい て,詳細
な記述
が な されて い る.
こ こ で は,紙面
の都 合
上 制振
対 策 方 法の大 ま か な分類
のみ述べ ることに し ,詳 細につ いて は それらの論 文 を 参 照 されたい.
空 気 力によ る加 振 力 お よ び 制 振
装置
に よ る振動
抑 制 力が作用す
る構
造物
の運 動 方 程 式は一
般 的に次 式
で表
現 され る.
MX
+C
オ+Kx
=
F
.一
」Fc
こ こ で
,
x は振 動変位 ,
M
,
C
,
K
はそ れ ぞ れ質
量,減衰 ,剛性
に関す
る項 ,
Fw
は空
気 力による 加 振 力,
Fc
は制振装置
に よ る振
動 抑 制 力で ある.
し た が っ て
,
この式か ら構 造 物の制 振 対 策方
法 は,
次の5
つ に分 類で きる.す
な わ ち,
質
量 を付
加 す る 方 法構
造減衰
を付
加す
る方
法剛
性 を付
加す
る方 法
空 気 力によ る 加 振 力 を 低 減 させ る 方
法
制振 装置
に よる抑 制力
を付
加す
る方 法 で あ る.
これらの うち,
の みが 空気 力学 的制振
対 策と言 わ れる方法
であ り,耐
風部材 を構造物
に 添 加 す ることに よ り,
断 面 ま わ りの風の流 れ をコ ン トロー
ル し て,
空気 力
に よる加振 力
を低
減 さ せ る もの で ある.箱桁 断面
の両 端部
の フ ェ ア リ ング や断面 中央 部
に設置
される鉛直
ス タ ビライ ザー
等が これに該 当 す る.耐
風部材
は,橋桁
の断
面 形 状や制 振 対 象 と なる振 動の種 類によっ て選 択 され,
風 洞 試 験 によっ て そ の有効性
を確
認す
る.
一方 ,
〜
お よ び は構 造 力 学的 制振 対 策
に 分 類 され , 同 調 系 質 量ダ ン パTMD
(Tuned
Mass
Damper
)
や ア ク テ ィ ブ質
量ダ ン パAMD
(
Active
Mass
Damper )
が代表 的
方 法で ある.
5
制 振 対 策の事 例こ こで は
,
橋 桁 お よ び 主 塔に対 し てそ れ ぞ れ 制振対策
が施
さ れ た例
と し て,
明石海峡大橋補 剛
ト ラス の空気力学 的制振対策 ,白鳥大橋 独
立時主塔
(
3P )
の 構 造 力 学 的 制振
対 策の2
つ につ いて述べ るこ とにする.
5.
1
明 石 海 峡 大 橋 補 剛 トラスの空 気 力 学 的 制 振 対 策明石 海峡 大橋
は,本州
四国
連絡 橋神 戸
・
鳴 門
ルー
トの本
州 と淡
路 島 を 結ぶ 中央支
間 長1991m
を有す
る世
界 最長
の吊橋
で ある.長年
に渡
っ て数
多 くの 風 洞 試 験 等に よ る 技 術 的 検 討がな された.
その 過 程で い くつ か の 制 振 対 策 が 必要
で あるこ と が判 明
した.最終 的
に は,本州
四国連絡 橋
公団
が行
っ た模
型 全長
が約 40m
と な る縮
尺11100
の3
次 元 弾 性模
型に よ る 風 洞試
験 14)に よっ て本 橋 の 耐 風 安 定 性の確 認がな さ れた.
補 剛 桁に対し て施
された空気
力学的制振対策
は次
の よ う な もの で ある.
ま
ず
, 道 路 面の 中 央 分 離 帯 お よ び 路 肩につ い 図3
路 肩の オー
プング レー
チ ング (本 州 四 国 連 絡 橋 公 団 ご提 供 ) 図4
鉛 直ス タ ビラ イザー
(本 州四国連絡 橋公 団 ご提 供 ) て は,
耐 風安
定性
を 向 上 させ るた め,
オー
プング レー
チ ング構造 (
図3
)
と して い る.
さ ら に,耐
風安 定化対策
と し て高
さ215cm
の鉛直
ス タ ビラ イ ザー(
図4
)と呼ばれる板 を中
央 分 離 帯 直 下に設 置 す るこ とに よ りフ ラ ッ ター
照 査 風 速78m
!s を 満足
させ た.
な お,
こ の鉛直
ス タビラ イ ザー
の設置
範 囲
は,上述
の縮
尺11100
の3
次元
弾性模
型 風 洞試験結
果か ら,側径
間に つ い て は鉛直
ス タ ビラ イ ザー
がな くて も耐 風安
定 性が確
保で き るこ とが確
認で きたの で,
中 央 径 問の みの 設 置 と なっ た.
5
.
2
白
鳥
大橋
主塔 (
3P
)
独 立時
の構造 力学的
制 振
対
策白 鳥 大 橋 は
,
室 蘭 港の 湾口 部に位 置す
る中央
支
間720m
の吊橋
で ある.事前
の風洞試験
の結
果,
主塔独
立状
態の架
設段階
に おいて,
渦 励振
が 発 現 す ることが予 測 された.
その ため,
塔 頂 加 速272
長 大 橋の風による振 動と その制 振 対 策度
を10ga1
程 度 に低 減 し て建 設 作 業 員の作 業 環境 を確保 す
る こ と が 必要
と な り,
ア ク ティ ブ制
振 装 置 15)が主 塔 上に設 置 さ れた.
図5
に本 主 塔 およ び制振装置
の設置状況
を示す .
ま た,制振装
置の 写真
およ び機 構 を そ れ ぞ れ 図6
お よ び 図7
に示 す.
別 途,実
施 さ れ た本
主 塔の風 に対す
る動 態観測
16)の結
果,
渦励振
に よっ て生 じ た最大 約
15ga
且の塔頂加速度
が ,制振装置 を作動
させ るこ とによ り,
約112
〜
113
に低 減 させ るこ と が で き る こ と がわか っ た.
図5
白鳥 大 橋 主 塔 (3P
)独 立 状 態 お よ び 制 振 装 置設 置 状 況 図6
白 鳥大 橋主 塔(3P
)制振装置 32400 21 蓑 》’
,
「
試
○ ◎巳
o 4 r’
一[:コ[コ
[= ]
Weight
of moving massMaximum
strokeMotor
outputOveral
weight9
.
Ot
±0.
3mAC
45
kW
15t
2890
蹄
ht
}
瞥
・Buffer
Roller
図7
白 鳥 大 橋 主塔 (3P
)制振 装置の機 構P
血ion
Rack
Reduction
gear
Motor
6
ま とめ長
大橋
を 対象
に,
風による振 動 現 象,
耐 風 設計 ・制振対策
の概要 ,制 振対 策
の事
例につ い て簡単
に述べ た.
風の影 響 を 受 け る構 造物
は,橋 梁
だ け で な く高 層ビル や高 層マ ン シ ョ ン , さ らに は , ス キー
場
の ゴ ン ドラや リフ ト,
ロー
プウェ イな ど 数多
く存在 す
る が , これ ら に対す
る制
振 対 策 も実 施 例が多い.
今後 ,構
造物
の設 計 は性 能 照 査 型 設 計に移 行す
る傾向
に あ る こ と か ら,制
振 対 策の メ ンテ ナ ン ス コ ス トも勘案
し たラ イフ サ イ クル コ ス トに基
づ く 設 計の中
で , 如何
に適
切な制振対 策
を対象構
造 物 に反 映 させて い くか とい う設計技術力
が ます
ます
重要 視
される であ ろ う.
引 用 文 献1
)http
://maclab.
alfred.
edu/students /harttm
/default .
htm12
)社 団法人 日本 道 路 協 会 : 道 路 橋 耐 風 設計便覧,
(1991 >.
3
) 例 え ばK .Matsuda
,K ,
R .
Cooper ,
H .
Tanaka,
M ,
Tokushige
& T.
lwasaki : An investigation ofReyno
且ds
number effects on 【he steady and un−
steady aerodynamicforces
on al
:10sca
】ebridge
deck
section mode1,
Journal ofWind
Engineer−
ing
andIndustrial
Aerodynamics89,
Issues
7−8,
(