イ
ン
タ
フ
ェー
ス
デ ザ
イ
ン
に
お
け
る
メ
タ
フ
ァ
:デ
ス
ク ト
ップ
か ら
仮 想
空
間
、そ
し
て
言
語
への
回
帰
The Role of Metaphors in User lnterface Design :Going from the Desktop to Virtual Space and Returning te Language
楠見孝 KUSUMI Takashi 京 都 大 学
Kyoto
University
1.
は じめ に 私た ちは,
見慣れ ない 機器 に直面 し た時,
どのように 操 作 すれ ば良い のか わ か ら ない た め不 安を感 じる こ と がある。 し か し,
類 似した機 器を扱っ た経 験 を思い 出せ ば,
操 作して み る こと がで きる。
この よ うに,
人 が あ ら か じ め もっ てい る 知 識 や経験 を 生 か す 方法の一
つ が,
メ タフ ァ の利用である。メ タ フ ァ の利用 は,
ユー
ザの もつ 過 去の知 識や経 験を,
現 在の状 況に橋 渡 しをする。そ して,
新しい 機器へ の 親 近 性を高め,
機器の操 作の 学 習 を容 易に する。
そ し て,
機器の 構 造 と機 能 を頭の 中に描 く表 象(
メ ン タ ル・
モ デル)
の形 成 を 助 ける。 この ように,
人 と機 械 の橋 渡しを するヒ ュー
マ ン・
イン タフ ェー
ス は,物理 的・
身 体 的イン タフ ェー
ス に加えて, 認 知 的イ ン タ フ ェー
ス を考 慮 し なけれ ばな らない L。 こ こ で,
物 理 的・
身 体 的イ ン タフ ェー
ス は,
機 械や身 体の 制約(例: キー
の 大 き さや 配 列 )を解明 す る人 間工学(従 来の ergonomics )の 研究 領域で ある。一
方,
認 知 的イ ン タ フ ェー
ス は,
人の 認 知 過 程や知 識 構 造の制 約(例:画 面 の メ ニ ュー
表 示)に焦 点を当て る認知工学 (cognitive engineering2 )や認 知人 間工 学 (Cegnitive ergonomics3 )の 研 究 領 域であ り, ユー
ザ(
人)
中 心 デ ザ イン と して,
1980 年代中 頃 か ら盛 んに研 究さ れ る ようになっ て き た。 認 知 工 学 の提 唱者であ るNorman4
は,
物 理 的な人 工 物 が,
人の 認 知活 動に影 響 する点を強調 して認知 的 人工物(cognitive artifact )とい う概 念を提起 した。認 知 的人工物とは,
情 報を保持,
表現,
操 作 す る た めの 人工 物であ り,
コ ン ピュー
タ に代 表 さ れ る。認 知 的 人 工物に は,
二つ の視 点,
シ ス テ ム 的 視 点 とパー
ソ ナル 視 点 が あ る。 シス テム 的視 点では,
認 知 的 人工物は,
人の認 知 能力(処 理能 力や知 識)を拡 大 する。こ れ は た と え ば,
コ ン ピュー
タを使っ た計 算の速 さがあた る。
一
方,
パー
ソナ ル視 点で は,
認 知 的人 工物は,
人に,
新 た な 課 題 を導入 して,
これ まで の手 続 きや知識 を 役に立た な くして しま う。 先の たとえで は,
コ ン ピュー
タを使っ て計 算す る た め に 新 たに操 作手順 を 学 習 し な け れ ば な ら な く な る。 ここで主 に取 り上 げるコ ン ピュー
タ で代 表され る情 報 機 器 (認 知 的人工物 )は,
直 接 知 覚で き操 作可能な 画 面 表 示をイ ン タフ ェー
ス として,
知 覚で き ない 内 的な プロ セス を 操 作,
修 正 し な け れば な ら ない。
こ の 点で,
玉 を 動 か す ソ ロ バ ン とは違 う。
そこで,
認知的 人工 物の イン タフ ェー
ス を,
ユー
ザ に とっ て理 解・
操 作し やすい ようにする必 要がある こ とを,Nomman は 強 調 し てい る。 ユー
ザ と機器の 橋 渡し を す る認 知 的イン タ フェー
ス に おい て,
メ タフ ァは,
二 つ の側 面で大 きな役 割を 果 た してい る。すな わ ち,
(a)機 器や シス テム に おける タ ス ク,
ツー
ル,
操 作な どの デザイ ン に よっ て, ユー
ザ の認知過程を支 援 する こ と と,(b)マ ニ ュ アルや 教 育に おい て提供す る こ と である。 こ こで は,
(a)に焦 点 を 当 て,多 くの研 究 が 行 わ れて い る,
人 間 とコ ン ピュー
タの相 互 作 用 (
HCI
二Human −Computer
lnteraction
)の認 知 科 学 研 究に基づい て検 討 してい く。 そこ で本 稿で は,
まず,
イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァの 種 類を,
その 理解を支 える メ タフ ァ の 認 知 過 程 に 基 づ い て,
五つ に分 けて考 察す る。 そ して,
な ぜ,
イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァが 導 入 さ れ,
ユー
ザに急速に浸 透 した 結 果,
メ タフ ァ と して意識さ れ ない・
死 喩(dead metaphor )になっ たのか,
さ ら に,
ア ンチ・
メ タフ ァ・
イン タフ ェー
ス に よ る言 語中心イン タフ ェー
ス へ の 回帰の 動き5 につ い て 検 討 して い く。
2 .
ヒュー
マ ン・
イ ン タフ ェー
ス にお け るメ タフ ァ の種 類2,
1
直 喩・
隠 喩広 義の メ タ フ ァ に は
,
さ まざま な種類 が あ る が,
その 基 本形である直 喩(simile)と 隠喩(metaphor )は,
二つ の 異 な る 知 識 領 域,
主 題(topic )を含む 目標 領 域(targetdomain
)と,
た と える対 象(vehicle )を 含 む 基 底 領 域 (base domain )に支えら れ て い る 点で共 通 し てい る。 説 明に おい て用い るメ タ フ ァは,
未 知の主題 A を既 知の 対象B
で た と える ことが一
般的である。 こ こ で は,
B
に関 する豊富で構 造 化され た知 識 がA
へ 転移 さ れる こ とになる。その結 果,主 題 とた と える対 象 間に 成 立する共通性の レベ ル に は,
属 性,
属 性 問関係 , 構 造がある。 た と え ば,
DVD を知 らない 人につ ぎの よ うに メ タ フ ァを 用 い て説 明が で きる。 「DVD
+RW
の デ ィ ス ク は ビ デ オ テー
プの ようだ 」とい う 説 明 は,
比喩である こ と を 示す 指標 「よう だ」が あるため直 喩とい う (一
方, そ うし た 比喩である こと を示 す 指 標が ない もの が隠喩であ り,
後で述べ るイ ン タ フ ェー
ス 上の メタ フ ァには 比喩 指 標がない )。 こ こ で,
メ タフ ァ を 成 立 さ せてい る共 通 性は,
DVD の1
再 生,
書き込み,
書 き換え,
…
}機 能と ビデ オテー
プの1
再生,
録 画,
重 ねて録画,
…
}機 能の 対 応や,
IDVD
+RW ディ ス ク と ドラ イ ブは規 格 が 違 う と使え ない の は ビデ オテー
プ とデ ッ キの関係と同じである}とい っ た二 つ の 領 域 (こ こではDVD と ビデ オ)の 高 次な 関 係 同 士の対応であ る。 こ うし た高 次の 関 係 が 対 応 す る推 論をア ナロ ジー
(類 推)と呼ぶ こ と が ある。イン タフ ェ
ー
ス上の メ タフ ァは , た とえ る領域の 知識(特 徴 問 関係や構 造)をた とえら れる領域に転 移・
写 像 する ア ナ ロ ジー
の 働 き を もつ 。 そ し て,
イン タ フ ェー
ス上 に比 喩 的 世界を構 築する。 た と え ば, コ ン ピュー
タ の イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァ と して一
般 的 なデス ク トッ プ・
メ タフ ァ は,初 心 者に とっ て未 知の コ ン ピュー
タ操作の 領 域 を経 験 豊 富な デス ク ワー
ク の領 域で た と え た もの である。 コ ン ピュー
タ に お け るデス ク トップ・
メ タフ ァ を利 用 し たGUI
は,1981
年に,
Xerox
社の ワー
クス テー
ショ ンStar6
を 起源とする。 こ こ で は,
画 面 が あ た か も机の上である か の よ うに,
文 書,
フ ォ ル ダ,
プリン タ な ど が ア イ コ ン で 表示 さ れ て い る 。 そ し てWYSIWYG
(Whal You See Is WhatYou
Get
)「画面表示さ れ た対 象を直 接 操 作 し
,
その 結 果が 目で見 える 」よ うにする た め に,
WIMP (Windows , Icons,Menus ,
Pointer)を 用い てい る。 この原 則 は,1980
年 代 後 半に,
ユー
ザ フ レン ドリ なパ ソ コ ン と して普 及 した Apple 社のMacintosh に お け る10
項目の デザ イン原 則の根 幹 を成してい る 7。 その筆 頭 項 目には,
(デ ス ク トッ プ)
メタフ ァの 利用 が ある。 以 下,
直 接 操 作,
見 え る もの の 選 択,
一
貫 性,
WYSIWYG,
ユー
ザに よるコ ン ト ロー
ル,
フ ィー
ドバ ッ クと対 話,
操作ミス の容 易な取 り消し,
安 定性,
美 的 完 成 度 が続 く。 さら に,
こ うし たデス ク トッ プ・
メ タフ ァ を用い た イン タフ ェ
ー
ス は,
Microsoft 社のOS
(Operating
System
)の
MS −
Windows (1985),
Windows3.
0
(1990)に よっ て 普 及 し,
1990 年代に は,
こ のWindows
のGUI 環境が 事 実上の 標 準 仕 様と なっ た。こ の時 期は,コ ン ピュー
タの ユー
ザ が 技 術 者 か ら会 社や家 庭 , 学 校 の一
般 ユ L ザに拡 大 し た 時 期にあた る。 その 結 果,
現 在,
一
般ユー
ザは,
画 面上 の デス ク トップや ウイン ド ウ に 馴 れ,
これ ら をメ タフ ァ だ と は意 識 せずに,
文 字通 り の対 象と して 操 作 して い る。ま た
,
フ ァイ ル を 「開 く」,「移動する」などの操 作の言語表現 も慣 用 化 して メ タフ ァ と しては意 識され な く なっ てい る。 こ うし た現 実 世 界に依拠 し た デス ク トッ プ・
メ タ フ ァに お ける空間表現 が慣用化さ れやすい ことの背 景に は,知 覚的・
身
体的 な反復 経.
験に基づ い て成立 し たイメー
ジス キー
マ が大き な役 割を 果た してい る。 イメー
ジス キー
マ に は,
上 下,
内 外,
容 器 な ど方位 や 空 間に関 するもの があるS。 日常 経 験 を 基 盤 にしてい る た め,
学 習は容 易である。た と え ば,
デ ィス プレ イ 上の フ ォル ダやゴ ミ箱の アイコ ンに文 書を 入れた り, 出 し た りす ることにす ぐ慣れる の は,
容器 と内 外の イメー
ジス キー
マ に合 致 する か らであ る。
新 し く 開い たウイ ン ドウ(窓)が作 成中の文 書 の上に来るの は,
「新 しく広 げた資 料 」と し て,
重 ね合わ せの イメー
ジス キー
マ に基づい て 理 解で きる9。2.
2
擬 人化 擬人化(personification)は,
アニ ミス ム(animism )に基づ くメ タフ ァ の一
種である。私た ちは,機器や シス テム を 人に見立て る こ と が多
い 。誰で も,人 に関 す る知 識 や経 験を誰で も豊 富に もっ てい て,
親 近 感も高い。そ して,機 器やシス テム と親し む過 程は,
人と親 しくな る 過 程 と 類 似 してい る。た とえば,は じめ は ぎこちな くても,
相 手の こ と が わ かっ て く る と付 き合い や す くなる。 あるい は,
接 触 頻 度が大切 とい うこ と は,
誰 で も経 験を もっ てい る。 1970 年代 以 前の,
「コ ンピュー
タは 石頭 」メ タ フ ァは 別 と して,
第一
の 擬 人化メ タフ ァ は,
コ マ ン ド入力 型 のCUI
(Character
User
interface
)の コ ン ピュー
タ に おける 「対 話メ タフ ァ」であ るle
。
ユー
ザ が コ ン ピュー
タ に命 令し,
エ ラー
メ ッセー
ジでコ ン ピュー
タが 応 答 する とい う関係で あっ た。、
こ こ で,
ユー
ザは コ ン ピュー
タに対 して , 人相 手 と同 じ よ うな会 話規 則 を 暗 黙の う ちにもっ て い る。
た とえば,
入 力に対 して,
期 待 した 応 答 が あ れば,
入 力 が 適 切で あ り,
一
方,
応 答がな けれ ば,
入力が不 適 切であっ た と 推 論 す る。
後 者の場合は, 別の や り方で再入力をお こ な うこ とに な る。 現在の GUI (Graphical User interface)の コ ン ピュー
タ で は ,ダ イア ロ グ・
ボ ッ クス でエ ラー
の 原 因 を説明 し,
適 切 な 入力 法を 指 示 して くれ る点で,対 話 性は向上 してい る。 第二 の擬 人化メ タフ ァは,
コ ン ピュー
タ に よる親近 性や応 答 性に加えて,
言 語 能 力を もち,
仕 事を代 行や 支 援 する能 力をもつ エー
ジェ ン ト・
メ タフ ァ である。 こ こ で は , 機 能だ けで なく,GUI
に よっ て イ ン タ フ ェー
ス・
エー
ジェ ン トと して実 体 化 さ れ るように なっ て きてい る。た と え ば,
エー
ジェ ン ト指向型 イ ン タ フ ェー
ス には,
「秘書 」,
「代理 人」,
「教師 」,
「ア ド バ イ ザ」,
「友 達 」 (と きにはペ ッ ト)が登 場して,
人 の ような外 見(顔,
身 体)と個 性を もつ キャ ラ ク タ が,
人の命 令を 理解し,
(音 声,
視 線,
表 情,
身振 りで)応 答した り,
タス ク を 実 行 した りする もの がある。こ う し た 外 見 上の 人 との 類 似 性は,
擬 人 化 を促 進 し,
エー
ジェ ン トに対 して親 しみ を 増 す きっ か け な る。 さ ら66 SpECIAL
・
ISSUE・
OF・
JSSD・
Vol」ONo.
12002 デ ザイン学研究 特 集 号に
,
エー
ジェ ン トに よ るヒ ュー
マ ン・
コ ン ピュー
タ・
ア ク テ ィ ビ テ ィ は 「演 劇」の メ タフ ァで と ら えるこ と が で きる 匡1 。 なお, コ ン ピュー
タ に感 染を起 こす コ ン ピュー
タ ウ イル ス,
ワー
ム や不正ア クセ ス による侵入者は一
種 のエー
ジェ ン ト・
メ タ ファ であ り,
それ らは ワ ク チ ン ソ フ トやフ ァ イア・
ウォー
ル (防 御 壁 〉で対処 すると い うよ う にメ タフ ァが 拡 張 さ れ てい る。2 .
3
共感 覚に基づ くメタフ ァ 共 感 覚は,
ある感 覚 領 域の経 験を他の感 覚 領 域を用 い て表現する ことである。こ こ で は,
感 覚 領 域間を越 え た 情 緒・
感 覚 的意味の 共 通 性 が 基 盤 に なっ てい る。 こ れ は,
人に普 遍 的 な感 覚経 験に支え ら れてい る た め,
誰に で も共通 して お り,
学 習 する部 分は 小 さい 12。 た と え ば,
「柔ら か い1
とい う触 覚 形 容 語は,
形,
味,
音,
色,
性 格などの 表現 に転用で きる。 い ずれも強 度 が 弱 く快 適 な 刺激で あ るこ とを 示 して い る(「鋭い 」は 逆の 意 味 を 示 す )。
たとえば,
一
般ユー
ザ が 扱 う 機 器 は,
丸みを 帯 び た 柔 ら かい フ ォ ル ム と色 を も ち,
柔 ら かい 音を 発 する方が,
機械 を 意 識さ せ ず,
フ レ ン ド リ な印 象を与える (た と え ばi−
Mac )。 逆に, 工 場に お ける専 門 家ユー
ザ が使 う機 器は,固い フ ォ ル ム と濃い 色で緊 張 を高め, 時に は鋭い警 告 音が必 要 とされ る。 ま た,
共感 覚の一
種で ある色彩 象 徴(color symbolism ) は,
色 表 示の 効 果を支えてい る。 た と えば,
コ ン ピュー
タの 視 覚 的イ ン タ フェー
ス におい て用い る も の に は,
[赤1
表 示で 「停 止,
エ ラー,
失 敗 」,
[黄 ]表 示で 「警 告, 注 意 」,[緑]表 示で 「OK
, GO 」を示 す 14 の は,
色 刺 激の もつ 心 理 的効果 (例 :黄 色は目 立つ )と, つ ぎ に述べ る 換 喩 的 連 合 (例:火一
赤一
危 険一
信 号 )に よっ て支え ら れてい る。
ま た,
現 実世界の物 音を 比喩的に表 現し た音ア イコ ン(earcon )は,
視 覚 中心のイン タフ ェー
ス に,
聴 覚 情 報 (メー
ル の到 着 する音,
フ ァ イ ル削 除 時の ゴ ミを捨 て る音 など)を加え,
コ ン ピュー
タ の操 作に お い て,
迫 真性 を高め てい る )。 こ れ は,
Macintosh の デ ス ク トッ プ・
メ タフ ァが導入 さ れ た 頃 には,
新 鮮 で,
比 喩的世界の構築を支 えるパ ワ
ー
をもっ てい た。 し か し,
現 在は,
警 告時 や 子 どもや視 覚 障 害 者 向 けの イン タ フ ェー
スへ の応 用 は別と し て,
音 を煩わ しい と感じ るユー
ザ も多い。 聴 覚と 次 元の 共 感 覚 的メ タフ ァ とし て は,
文 書の厚 みを 示 す 音アイコ ン を 作 り,
大 きい フ ァ イル には低 音を,
小 さい ファ イル には 高 音 を 対応させ ,量の次元 を 聴 覚 領域の音の大き さ次元に写像 す る もの がある 15。
また,
画面の 小さな機 器の 操 作におい て,
メニ ュー
の階 層の 深 さやモー
ドをユー
ザが把 握 し や すい よう に,
音の高 低の次 元や音 色の 和 音で 表現 して ,階 層 次 元 を音の次 元や質に写 像する試み も あ るt6・
n )。
こ の ように, 共感 覚に基づ く イン タ フェー
ス・
メ タ フ ァは,
視覚モ ダ リテ ィ だけで な く,
聴 覚モ ダ リ テ ィ を加えて,
仮想 的 な 比喩世界の リア リ ティ を高め て い る。 さ らに,
デー
タグロー
ブ・
スー
ッ, ヘ ッ ドマ ウ ン トデ ィスプレ イなど触 覚や力 覚の フ ィー
ドバ ッ ク や全身を利 用 した ジェ ス チ ャが 利 用で きるようにな る と イン タフ ェー
ス の 比 喩 性は薄れ,
仮 想現実に近 づ くことに な る18・
]9 。 こ う し た 仮 想 現 実 につ い て は 3.
5で述べ る。2.
4
換 喩 に支え ら れた ア イ コ ン 換喩(metonymy )は 「赤 ず きん」(部 分 )で 「赤 ず きんを かぶ っ た少 女 」(全体)を示し た り,
「ペ ン を 取 る」で 「書 く」行 為を示し た りする表 現であ る。 こ の ように 換 喩にお ける,
たと える事 象と た と え ら れ る事 象は,
空 間 的 隣 接 関 係や時 間 的 隣接関係や 因 果関係に依 拠 し てい る。こ う し た 関 係は,
場 面 イメー
ジ やその 連 続 であるス ク リプ ト(台 本 )と して知 識の 中に貯 えら れて い る。 こ こ で, たと える事 象 A は た と え ら れる事象
B より も認知 しやすい 。 さ ら に,文 脈や 目的が加 われ ば,A か
らB
へ の 関 係の一
義 性 は高ま る20。 換 喩は,
ピ ク トグラム(pictogram
)や アイコ ン(icon)の よ うな図記 号の生 成や理 解を支えて い る。 街の 案 内 板 で は,[ナ イフ とフ t一
ク 】の ピ ク トグ ラム で 「レ ス ト ラン」を 示 す。 コ ン ピュー
タ画 面 上に おい て は,
【ブ ラ シ]の アイコ ンで 「画 面 上の 特定領 域の 塗 りつ ぶ し」 を 示 す もの が あ る。 こ こ で, 図 記号(た と える対 象)と た と え ら れ る事 象との 関 係は,一
義性 が高い 。 た と え ば,
【ブラ シ1
は,「
ペ ンキ を 塗 る」場面におい て, 不 可 欠で,
かつ 目立つ 対 象で ある。 し た がっ て[ブラ シ 】ア イコ ン は,
あ ら か じめ学習 してい な くて も,
一
目で 「塗 りつ ぶ し」と して理 解 す るこ とがで きる。 こ の よ うに,
アイコ ンは,
換 喩に基づい て作 成 す るこ と に よっ て,
時 間 的に隣 接 する場面 を容 易に呼び 起こす こ と ができる。 コ ン ピュー
タの多
機 能 化は, 目標とする操 作に達 す る まで の選 択ス テ ッ プ を 増 や す こ とに な り,
ユー
ザ が操 作で迷い やす くなる。 そこで,
ピ ク トグラム が,
人 を街で目的 地に導 くように,
アイコ ンは,
ユー
ザ を 適 切 な 操 作に導く働 きをもっ て い る。 こ こ で,
ア イコ ン は デ ィ ス プレ イ 上の オ ブジェ ク トと して マ ウス な ど に よ る直 接 操 作を可能に してい る 21。
2 .
5
提 喩に支え ら れ た ア イコ ン 提 喩(synecdoche )は,
下 位 カテ ゴ リ 「パ ン」で 上位カ テ ゴ リ[食 物L
さ らに は[物質的 満 足 ]を示 した り(例 : 「人はパ ンの み に て生 きる にあらず 」),「
花 見 」の よう に,[花 亅とい うカテゴ リ名で典 型 的 成 員 「桜 」を示し た りす る表現であ る。 こ のように,
提喩は,
カ テ ゴ リの 上 位一
下位概念の包 含関係と典 型 性に支え ら れ たメ タフ ァで あ る。 す な わち,
典 型 的 な下位カ テ ゴ リ や成 員A
を 用い て,
全 体 と しての カテゴ リB を表 現し た り,
逆に,
上位カ テ ゴ リB で典 型 的 な 下位カテゴ リ や成 員 A を表現 し た りする。 提 喩は,
カテ ゴ リの 構 造 に依拠 してい る。 し たが っ て,
慣 用 化さ れてい る場 合が多 く,
その生 成 や 理解は自動 的である22。 提 喩は,
概 念 や カ テ ゴ リ をイメー
ジ化 する場 合に し ば しば 用い ら れる。
たとえば,
コ ン ピュー
タ・
デ ィ ス プレ イ 上 に おい て,
1
棒グ ラ フ】の アイコ ン で「グラフ」 を 示 すこ と がある。 こ れ ら は,
1
円グ ラ フ,
帯グラフ,
柱状 グラフ,
…
1
など 「グ ラフ」カ テゴ リ全体を,
典 型 事例 の絵で 示 した もの で ある。 こ こ で,カ テ ゴ リ全 体を表 現 する一
つ の 絵はない 。 した が っ て ,典 型 例の絵で表現 す るこ と が
,
伝 達 過 程,
認 知 過 程におい て効 率が 良い 。 こ の ように言 語 表現 にお け る換 喩と提 喩は , 隣 接 性 や典 型 性な どの 知 識 構 造に依 拠 し てい るた め 理 解 が 容 易であっ た23。 した が っ て,
こ うし た 換喩や提 喩に 基づい て設計 し たアイコ ン は,
わか りや すい もの に な る。 さ らに,
相互 関連 性の あ るアイコ ン を使 用 する こ と が,
比喩 的世 界の 成 立 を 支 える ことになる24。
一
方,
ア イ コ ン の 限 界 も 指 摘 さ れてい る。機 能の 増 加 に対 応 して ア イコ ン を 増やすことは,
弁別 が 難 し く なる た め,
デ ザ イ ナ とユー
ザの 双 方に とっ て,
作成 あ るい は学 習の 負 担 が大きい 。現在,
アイコ ンの 下 に は 言 語 ラベ ル が加わる こ とも多い。
し たがっ て、
む し ろ,
新 たに アイコ ン を作る よ り も,
言 語 表示 中 心の イ ン タフ ェー
ス の 方が、
自然で、
豊富で 正確な表 現 が 可 能で ある とい う主 張 も ある2S 。 この こ とにつ い て は 4.
2で論 じ る。
3.
コ ン ピュー
タに お け るメタフ ァの進 化 コ ン ピュー
タの イン タフ ェー
ス・
メ タ フ ァは,
1980年 代に ロー
カル な個人環 境か ら出 発 し,1990
年 代の 半 ばに は,
イン ター
ネッ トの急 速 な 進歩に ともない グ ロー
バ ル なサ イバー
環 境に拡大してい る。3.
1単一
機能メ タフ ァ コ ン ピュー
タの イ ン タ フェー
ス・
メ タフ ァ と して早 い 時 期か ら用い ら れ たの は,
「タイ プラ イタ」メ タ ファ で入 出 力 機能や清 書 機 能 (マー
ジン,
ヘ ッ ダー
な ど)を,「電 卓」メ タフ ァで計 算 機能 を, 「カレ ンダー
」 メ タフ ァ で ス ケ ジュー
ル 管理 機 能 な ど,
特 定の装 置 でその 機能を表 現 する た め であっ た26。 3.
2 メデ ィア・
オブ ジェ ク ト・
メ タファ 「ノー
ト」や 「書類 」,「本」な どの メ デ ィア・
オ ブ ジェ ク ト・
メ タフ ァ の出 現は,
情 報をアイコ ンと し て 可 視 化 し,
メ ディ アの 保 存や整 理機 能に着目 した もの で ある。 と くに, 本メ タファ は,
文 書の形態としてもっ ともな じ みの あ る表 現で ある。さ らに,
文 書の閲覧を68
SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
.
10 No.
12002デ ザイン学研究特集 号
トラッ クボ
ー
ル の ペー
ジめ く り動 作に よっ て お こな うジェ ス チ ャ・
イン タフ ェー
ス を加 えるこ と に よっ て,
リア リティ を高め る試みも あ る27。一
方で,
ハ イ パー
テ キス ト上の相互 参照 や 検索ツー
ル の利 用 は, 本メ タフ ァ に現 実 世界に ない 特 徴を加 えたもの であ る2B。
こ れ につ い ては4.
2
で も述べ る。 また, 「CD プ レ イヤー
」,
厂ビデ オ デッ キ」,
「TV
」な どのAV 機 器 メ タフ ァ は,
マ ル チ メ デ ィ ア・
ドキュ メ ン トの 作 成,
編 集,
保 存, 利 用 機能を表 現 する時 に 用い ら れる。 とくに,CD
プ レイ ヤー
や ビデ オ デッ キ・
メ タ ファ は,
操 作パ ネル をディスプレイ 表 示 し て,
「早 送 り」や 「巻 戻 し」を示 すことが で き る。
こ れ は,
音 楽, ビ デオ,
パ ワー
ポイン トス ライ ドや HyperCard
に お け る時 間操 作 を示 す 場 合に用い られ てい る。3.
3
複 合メタファ 複 合メ タ フ ァは,
多くの 機 能 を単一
のメ タフ ァで は 表 現す る に は限 界 が あ る た め,
複 数の メ タフ ァを 組 み合わせ て表現 した もの である。 実 際、
Windows の 標 準 的なGUI で は、
「デ ス ク トップ」上 に,
「ウイン ドウ」を 開き,
そこ にある 「フ ォル ダ」 が 「ツ リー
構 造 」をもっ てい る。
さ らに,
「ス プ レ ッ ドシー
ト」 , 「パ ッ ド」,
「道 具箱 」もある。 それらは,
「オフ ィ ス」 や 「教 室,
学校 」の中にある。 こ うし たメ タフ ァ は, 3.
1,
3.
2の 複 数の メ タ フ ァ を統合 し,
デス ク ワー
ク, オ フ ィ ス ワー
クな どの タス ク として,
表現 し ようとす るもの である。 こうした複合メ タフ ァ に は当初は整 合 性 が 欠 けて い るとの 批 判 が あっ た が、
標 準 化が進 ん だ た め、
現 在の ユー
ザに は違和 感は な く なっ て い る。 1990 年代前 半に は,
統 合的な メ タフ ァ を 目指 す 試み の一
つ として,
駅IEND21
(未 来型 分 散 情 報 処 理環 境 基 盤 開 発)プロ ジェ ク ト に お い て メタウ ェ ア(metaware ) と呼ば れ る,
複 数の メ タ フ ァ を統 合し た イ ン タ フ ェー
スが 開 発 さ れ た29。 こ れ は,
ユー
ザの タス クの 推 移に 応じて,
適切 なメ タフ ァ に切 り替わる多重メ タフ ァ環 境である。 こ れ はメ タフ ァ 理論に立 脚 し た先 進的試みで はあっ たが
,
現 実には,Windows
のGUI
の 標 準化 が 進 む と と も に,
つ ぎに述べ るネッ トメ タ フ ァ に よる多 様化 が急速に進 むこ とになっ た。
3.
4
ネッ トメ タフ ァ と都 市メ タ フ ァ コ ン ピュー
タ の作業環 境 が 個 人の 机か らオフ ィ ス そ し て.
ネッ トワー
クを 介 して,
世界を お お う 蜘 蛛の 巣(World Wide Web :WWW )の ように拡 大するこ とに よっ て , ネッ ト メ タフ ァ(netaphor )が 出 現 し た 3e 。 その 代 表で ある 「都市 」メ タフ ァ は
,
ネッ トワー
ク 上 で相互接 続 さ れ たコ ン ピュー
タ に よっ て 提 供 され る サー
ビス 環 境を表 現 するの に適し て い る。 「都 市 」の 中に は,
「図書 館 」や 「博 物 館,
美 術 館 」,
「学 校 」,
「モー
ル , デパー
ト」 などが あ り, こ れ ら を 利 用する た め に あ た か も街を歩き 回 り,施設 を利用 す るよう に表現 す る メ タ フ ァ であ る。 これ は,
分 散 環 境のた めのユー
ザ・
イン タ フェー
ス の メ タ ファ と して適してい る た め,
イ ン ター
ネッ ト の普及 と ともに,
急 速にユー
ザに 浸透した31)。 「都 市 」メ タフ ァ に は,
入れ子構 造で,
3.
1 か ら3.
3
の 下 位 メ タフ ァを 含 むこと がで き る。都 市メ タフ ァ は,
こ う し た 下 位 メ タ フ ァ を 「学 校,
家 庭,
オ フ ィ ス 」を中心 に,
都 市 を建 設す るように容 易に 「ネッ ト タ ウ ン」を 「建設 し て」い くこ とが可能であ る。 こ う した ネ ッ トワー
クの拡 大は,
「ハ イウェ イ」,
「サ イバー
ス ペー
ス(
電脳空 間)」32とい っ た 空 間 的 広 が りで表現できる。 そ れ は, 「宇 宙 」や 「海 」の よ うに 広 く, 「サー
フ ィ ング」を越 えて 「クルー
ジ ング」 , そ い て,
ユー
ザ が 迷 わない よう な 「ナビゲー
シ ョ ン」や 「探 索 」が必 要と なる。一
方で,
ネ ッ トメ タ フ ァ に お い て,
起 点は 「ホー
ム」 である。 ホー
ム は,
自分の家の ように,
「書 斎 」,
「台 所」
, 「書 庫」, 「ガ レー
ジ」
が あ り , 訪問者が 「玄 関・
入 り口」を 入 る と よ うこ そ と 歓 迎 して くれて,
「来 客 名 簿 」が備えてある とこ ろもある。 ま た,
他の関連 す るサ イ トへ 入 り口 (リン ク集 )と なるポー
タ ル (玄 関 ) サイ トもある。 さ ら に,
「談 話 室 」「会 議 室 」 な どは,
協調 活 動 (CSCW
) の場を表 現 する際に用い ら れる。 これ は,
オフィスや 学校な どにお ける共 同作 業の支 援の た め の組 織イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァ と し て 有 効であ る。
3.
5
仮 想 空 間 こ うした イ ン タフ ェー
ス・
メ タフ ァ の 進 化は,
コ ン ピュー
タの 利 用やサー
ビス の 環境が, 個人 環境か ら 部 屋 やオフ ィ ス,
さ らに,
都市環 境 に拡 大,
遍在,
分 散し た ことに対応する。 さ ら に,3
次 元コ ン ピュー
タ グ ラフ ィ ッ クス やマ ル チ モー
ダ ル イ ン タ フ ェー
ス の 進歩に よっ て,
迫真性 をもつ 仮 想 空 間が実 現できる ようになっ て き た3 コ ン ピュー
タ内のメ タ ファ は,
仮 想 性の 現 実に近づ くことで,
ユー
ザは イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァ を意 識 し ない で, 現 実の 世 界で ある か の ように活 動できる こ とにな る。た と え ば,
イン ター
ネッ ト上の 仮 想3
次 元空間を利 用 し た教 育シス テム3D
−IES
(3−dimen −
sionalInteractive
Educational
System,
野 村 総 合 研 究 所)で は
,
図1の よ うに ドイツの町並み や キ ャ ンパ ス の仮 想 空 間 を 実 現 し,
学 習者は アバ ター
とい う仮想人物 図 1 3次 元 仮 想 空 間 を用い た遠 隔 教 育シス テム の例 (野村 総 合研究 所 ) 左 画 面 は 仮 想 空 間.
人 物(アバター
)は 会 話の参加 者 を 示 す。
右 画 面 は チャッ トの履歴を表示 する (上部に は表情動 作の ア イコ ンが あ る )。 デ ザイン学研究 特 集 号 SPECIALISSUEOFJSSDVol.
10No,
120D2 69になっ て
,
失敗 を おそれず,
遠隔 地の相 手 と外国語 会 話 を おこ な うこ との で きるバー
チ ャ ル・
ユ ニ バー
シ ティ に よる遠隔 教 育シ ス テム である34。 4.
イン タフェー
ス・
メタフ ァ の 効 用 と限 界4 .
1
初心 者の た め の イ ン タフ ェー
ス・
メ タ ファ 新しい テ ク ノロ ジ が一
般ユー
ザに普 及 する た めには , イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァが 重要な役 割を 果たして い る。 と くに, コ ン ピュー
タ は,
キー
が多 く, 内 部構造 が見 え ない ため,
未 経 験 者に は, 操 作 が 分 か りにく い 。 パー
ソ ナル・
コ ン ピュー
タ が 普 及 しは じめた頃に は,
ユー
ザに おげ
る未経 験 者の 比率は現 在より も高 かっ た。彼らはコ ン ピュー
タ領域では初 心 者であっ て も,
デ ス クワー
クの領 域では,
熟 達 者であっ た。 し た が っ て ,初 心 者 が,
効 率よく操 作を 習得できる よ うに す る た めに,
デス ク ワー
ク の メ タ フ ァ に よっ て,
ユー
ザの知 識や経 験が豊 富 な領 域か らの転 移 を は かっ たの である。 こ こ で,
メ タフ ァの 利 用 は,
学 習の初 期に お い て,
ユー
ザの親近性を増 し,
既有の知 識の利 用を促 進 する た め の認 知 的 足 場 (cognitive scaffolding )になっ てい た3し か し
,
現 在,
コ ン ピュー
タがオ フ ィ ス から家 庭に まで普及 し,
コ ン ピュー
タ活 用 教 育が小 学 校 か ら 始 まっ た た め,
一
般ユー
ザのコ ン ピュー
タス キル や知 識 は向上 してい る。 た と え ば,
紙フ ァイル とファ イル キャ ビネッ トの管理な どの デス ク ワー
クよ り も先にコ ン ピュー
タ自体に習 熟 するユー
ザ が 増 えて きてい る。 彼らに とっ て は,
デス ク トッ プ・
メ タフ ァの 「フ ァ イ ル」はメ タフ ァ で はな く,
「文 書 フ ァ イ ル」その もの で ある。 この ように一
般ユー
ザの経 験や学 習が深 ま り,
熟 達 化が 進ん だ時に,
デス ク トッ プ・
メ タフ ァは,
比喩で は な く,
字義通 り(literal)の 意味 を もつ ように なっ て い る。
メ タ フ ァが 意 識 さ れ なく なるこ と は,
比 喩 が 慣 用 化 し て 死喩に な る こ と と同 じように,
一
義 性 や理解 容 易 性は高まる こ とに なる。
し かし,
一
方,
日 常世界の既知領域か ら未 知 領 域に知識を転 移 するとい うメ タフ ァの パ ワー
が失われてい る。 したが っ て, コ ン ピュー
タ未 経 験 者 向 けの デス ク トッ プ・
メ タ フ ァ70 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
.
10No,
12002 デ ザイン学 研 究 特 集 号が,GUI の 事 実上の標 準となっ て い る とはい え, イン タフ ェ
ー
ス の デザ インや操 作におい て, 制 限 を加え るもの になっ てい ない かは検討する必要がある36。 なお,
デス ク トッ プ・
メ タファ における内外や 上 下 な どの 空 間 的,方位
的メ タ ファ は,
身体的 経 験 を 基 盤 領 域に して い る た めパ ワー
を失 うことはな く,
多くの ユー
ザに とっ て,
容 易な学習 や 操 作 を支えてい る。 ま た,
拡大.
し多 様 化 する ネッ トメ タフ ァ におい て も空 間 的メ タフ ァ は今 後 も 変 わ ら ない パ ワー
を持 ち続け ると考 えられ る。4.
2
アン チ・
インタフ ェー
ス・
メ タフ ァ :言 語中心 インタフ ェー
スGenmer
とNielsenは,
イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァ に か わる言 語中 心 イン タ フ ェー
ス の重 要 性 (Anti−
Mac Interface)を主 張 してい る37。 そ の議 論は, デス ク トッ プ・
メ タフ ァが 普 及 し は じ め た1980 年 後 半 か ら現 在 へ の 大 きな 変 化 が背 景に な る。す なわち,
ユー
ザの コ ン ピュー
タ の利用経 験は豊 富にな り,
コ ン ピュー
タ の 利 用はス タン ド・
ア ロ ン で の変化 の少ない デス ク ワー
ク か ら,
変 化の多
い イ ン ター
ネッ トを介 し た協 調作 業や ゲー
ム,趣 味 など に拡大し,
コ ン ピュー
タ は 至 る と こ ろに ある (ubiquitous )。 コ ン ピ ュー
タの パ ワー
は向上 し,
画 面 も大きく高 解 像 度に な り, キー
ボー
ドやマ ウス 以外の入 力 装 置 も利用 可 能 に なっ た。 こ れ らに と も ない,
デス ク トッ プ に よる 整 合 的 イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァか ら,
多 様で豊 富 な 情報を表 現 で きる言 語 中心の イ ン タフ ェー
ス へ の転換の必要 性 が強 調さ れ てい る。 これは,WEB
ペー
ジの デザイン な どで すで に多 く取 り 入 れ ら れてい る。 た と え ば,
WWW
に おけ る 図2
のホー
ムペ一
ジ (Web
page)に は,
アイ コ ンや ボ タン はない 。 し か し,
そ こ で表現 さ れてい る
HTML
(Hyper Texl Markup Language )によっ て作成 さ れ た テ キス ト中 心の ペー
ジは,豊 富 な 言語 情 報を構 造 的に表示 し
,
読 み 手に伝 え ること がで きる。 さら に,
リンク がは ら れ たテキス ト を ク リッ クする ことに よっ て,
詳 細 なテキス トや関パ
ー
テ キス ト構 造 をもっ て いる。 こ こ では,
メ タフ ァ を必 要と せず,
字 義通 りの 言葉で,
現 実が記述 さ れて い る。 こ こ で , ホー
ム ペー
ジの 作成 者は,
ホー
ム ペー
ジの内 容に関 して は豊 富な知識 を もつ が,
WEB (ホー
ムペー
ジ)デザ インやコ ン ピュー
タ に関する知 識をさ ほ どもっ て い ない こと も多い 。一
方, ホー
ム ペー
ジの 訪問 者 (ユー
ザ )も,
特 定の コ ン ピュー
タ に関する知 識や経験 な しに,
さ らに,
日常 経験の メ タフ ァ な し に,
日常言 語で豊 富な情 報の交 換がで きるの で ある。 こ こ で,
よ りユー
ザフ レン ド リなペー
ジ を作る時に必 要 なこと は,WEB
の デ ザ イン であ り,
こ こに は,
ハ イパー
テ キ ス トの作成 法 や 知 識ベー
ス の管理法3S,
古 くか らある タ イポグ ラ フ ィや レイア ウ トの デザインコ9 が 含 ま れてい る。 とくに,
漢 字 表示 は, ア イコ ン と類 似 した 視 認 性 と簡 潔 性をもつ 。 しか し,
言語 中 心の イン タ フ ェー
ス では,
ア イコ ンや ピク ト グ ラムの もつ ノ ンバー
バ ルなコ ミュ ニ ケー
シ ョ ン・
メ ディ ア の特 質40 は 失 わ れる。 日本 語をはじ め と 楠 見 孝 (Dr.
Takashi KUSUMD の ホー
厶 ペー
ジ Ubk と壊 哩irthorlith
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・
B 櫪オ.
馳 末 禰 宵 霊…研 罵 胤盈膚 購 取 戯 胃 認趣 Ω理 霎 璃 魔 俶 青 字 鋤 助敏 綬.
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する英 語以外 を 母 語 と す る者は,
情 報 化 社 会の グ ロー
バ ル化の中で(事 実上の 世界標準である)英語 を母 語 とする者に比べ て不 利な 立場に置 か れ る。 翻訳 ソ フ トは ま だ非力である。 英 語 習 得の た めの時 間 はコ ン ピュー
タス キル の 習熟よ り もは るかに長い のが現 実である。5 .
ま と め :GUI
の メタフ ァ と言語 中 心 インタフ ェー
ス の協 調 本 稿で は,
ユー
ザ・
フ レ ン ド リな インタ フ ェー
ス デ ザ イ ンの た め の メ タ ファ の 役割に つ い て,
情 報 機器の 代 表で ある コ ン ピュー
タを 中 心に 認知 科 学の 観 点か ら,
以 下の 三点を議 論 した。
第一
に,
イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァ の種 類 を,
理解過 程と知 識 構造 に基づい て検討 し た 。 と くに,
コ ンピ ュ
ー
タの 画面 上のGUI
(Graphical User lnterface)では, デス ク トッ プ
・
メ タフ ァが大 きな役 割を果た し,
換 喩と提 喩に依 拠し たアイコ ンが, 構 成 要 素と なっ て,
比 喩 的 世 界の構 築を支え,
共 感 覚的メ タフ ァが迫 真 性を 高 め, 擬 人 的メ タ ファ が 人 と機 器の イ ン タ ラ ク シ ョ ン を支えてい ることを示 した。 第二 に,
ユー
ザ・
イン タフェー
ス に おける メ タフ ァ の 進 化につ い て述べ た。 と くに, イン タフ ェー
ス におけ るメ タフ ァ の使 用は,
個人のデス ク トップ環 境か ら ネッ トワー
ク 環境に広が り,
仮 想空 間 を 作 りだ し た こ とにつ い て述べ た。 第三に,
イン タフ ェー
ス・
メ タ ファ,
と くにデス ク トッ プ・
メ タフ ァは,
コ ン ピュー
タ が普 及し は じ め た 頃に はパ ワー
が あっ た が,
現 在はWindows のGUI
が 標 準化 し,
多 様な イン ター
ネッ トメ タフ ァ の出現で,
相 対 的パ ワー
が低下 したこ とにつ い て議 論 した。 し か し,
方 位 メ タ フ ァや空間メ タフ ァな どの 身 体 を基 盤に したメ タフ ァ は重
要 な意 味を持ち続けてい る こ と を指 摘 し た。一
方,
WEB デ ザ イ ンでは,
メ タフ ァ を 用 い ず, 現実に徹した,
日常 言 語 中 心の イ ン タ フ ェー
ス の 重 要 性が主張さ れ る ようになっ た背 景に つ い て述べ た。 本 稿で議 論 して きた イン タフ ェー
ス・
メ タフ ァに おけるデス ク トップ か ら仮 想 空間へ の進 化
,
そ して,
現 実 指 向の言 語中心 主 義へ の 回 帰 を 踏 ま えて,
今 後の イン タフ ェー
スデ ザ インは どの ようにあるべ きだろ うか。 言語 中 心 の イン タフェー
ス は,
今 後 もGUI
の メ タ フ ァイン タフェー
ス を排 除 するの で は な く,
相互補 完 的 な もの と考える41。GUI
は,
ユー
ザ,
と くに,
初 心者,
子ど も,
障 害 者や 他 言 語の ユー
ザ にとっ て も操 作や理解が容易であっ た 。イン タフェー
ス・
メ タ フ ァ は,
ユー
ザの 認 知や知 識の構 造や身体経 験 を 基 盤に し た適切 な 標準 化に よっ て,
メ タフ ァ の パ ワー
を一
層 発揮で き る と考える。一
方,
言 語 中 心の イン タ フ ェー
ス も,
抽 象 的な内 容をわか りやす く表現 する た めに,
ユー
ザの 認 知や知 識の 構 造に立 脚 し たWEB デザ イン (ハ イパー
テキス ト構 造 )や情 報の可 視 化技 法42・
43に よっ て,
自 然 言語のパ ワー
を一
層 発揮で きる と考 える。
た と え ば,
電子掲示板は,
テキス ト中心の 表示 に ツ リー
構 造を導入 す る こ と に よっ て,
議 論の 流 れ を 把 握 し やす くし た好 例で ある 。 今 後の 課題 は,
デ ザ イン学に おい ては,
メ タフ ァ に依 拠 し た GUI と現 実に依 拠 し た言 語 中心イ ン タフ ェー
ス をい か に統 合 的に デザ インする の か であ り, 認 知 科 学に お い て は,
ユー
ザの イン タフェー
ス の操 作 や 学習を支え る非言 語 的お よ び言 語 的認 知 過 程の協 調 的メ カニ ズ ム を 明 ら かにする こ と で あ る と考える。 そして 両 方の 学 問 領域の協調が イン タフ ェー
ス デザ イン研 究を実 りある もの にす る と考える。 謝 辞 本 稿の草 稿に対 して, 京 都 大学 大 学 院 教 育学 研 究 科』
の大学 院 生, 北 神 慎 司,
小島 康 次,
中 西 政 志の 各氏 か ら有益 なコ メ ン トを も らい まし た。 記 して感 謝 し ま す。 文献1
) 海 保 博之・
原田悦子・
黒 須 正 明 :ワー
ドマ ップ : 認 知 的イ ン タ フ ェー
ス,
新 曜 社,
1991 72 SPEClALISSUEOFJSSDVol 」ONo.
12002 デ ザイン学 研 究 特 集 号 2)ノー
マ ン,
D .
A .
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