4.その先 の 助 産 ケ ア-自 己理 解 を相手 の理 解 と相 互 のエンパワメントにつなげる
自己理解 を相 手 の理 解 と相 互 のエ ンパ ワメントにつ なげる
座長 日本赤十字看護大学 村 上 明 美 私 た ち助 産 師 は 、 日頃 よ り専 門 的 な助 産 ケ ア を提 供 す る際 に は 、第 一 に 「ケア の 対象 で あ る女性 の こ とを 理解 しな けれ ば … 」 と考 えて い ます 。 助 産 師 は、 そ の 女 性 が お かれ て い る 健 康 状態 や 社 会 的 な 環境 、家 族 関係 、信 念 や 価 値 観 な ど様 々 な情 報 を収 集 して ア セ ス メ ン ト を行 い 、女 性 を十 分 に 知 っ た上 で 必 要 と され る個 別 性 を尊 重 した助 産 ケア を立 案 し、提 供 す る とい うこ とを至 極 当 り前 の こ とと して 行 な っ て い ます。 そ して 、女 性 や 家 族 との信 頼 関係 を築 きな が ら、 女性 を 理解 した上 で ケア を提 供 す る こ とが 、 そ の女 性 の もつ 能 力 を 十 分 に 引 き出す こ との で き る質 の 高 い助 産 ケ ア に つ な が る と信 じて い ま す。 ところ で助 産 師 は 、 ケ ア の対 象 で あ る女性 の こ とを理解 す る こ とには 一 生 懸命 に な ります が 、一方 で、 どの 程 度 自分 の こ とを理 解 して助 産 ケア を提供 して い るの で しょ うか。 現 実 的 に は 自己 を理 解 す る こ とに 対 して は無 関 心 な 方 が ほ とん どで は な いか と思 い ます。 加 え て 、 自己を理 解 す る とい うこ とが 、助 産 ケア を提 供 す る上 で どの よ うな意 味 を も って い るか とい うこ とを考 え る こ と も ほ とん どな い で しょ う。 今 回 の ワー ク シ ョ ップ で は 、人 間 の 心 的 内 面へ の 接 近 を ご専 門 とされ て い る宮本 真 巳 氏 を 演 者 にお 迎 え し、 テ ー マ に示 され て い る よ うに 、 自己 を理 解 す る こ とが 、相 手 を 理解 す る こ とや相 互 のエ ンパ ワ メ ン トに どの よ うに つ な が っ てい くの か を 具体 的 に考 えて い きた い と思 い ます 。 演 習 を行 い な が ら、参 加 者 自身 の 体験 を通 して 自己理 解 を深 め、 そ の 先 に あ る もの を身 体 で 感 じ取 っ て い た だ こ う とい う斬 新 な 企 画 です 。 この ワー ク シ ョ ップ が 、 今 ま で とは 異 な る新 た な 自 己 を発 見 した り、 「そ の 先 の 助 産 ケ ア」へ とつ な が るケ ア の 方 向性 を見 出 した りす る機 会 とな り、 実践 変 革 へ の 原 動 力 とな る こ とを心 よ り期 待 して い ます 。 な お 、 こ の ワー ク シ ョ ップ は 演 習 運 営 の都 合 上 、参 加 者 を30人 限 定 と させ て 頂 き ま す 。 参 加 者 の 受 付 は 、 当 日、 先 着 順 と し、 定 員 に な り次 第締 め 切 ります こ とを ご 了承 くだ さ い 。 日本 助 産 学 会誌 第17巻 第3号(2004.3) 574.そ の 先 の助 産 ケ ア ー 自己理解 を相 手 の理 解 と相 互 の エンパ ワメントにつ なげる
自己理解 を相 手 の理解 と相 互 のエ ンパワメントにつ なげる
演者 東京医科歯科大学保健衛生学研究科 宮 本 真 巳 相 手 の 理 解 は 、 自分 自身 の理 解 か ら始 ま る と話 す と、 け げん そ うな表 情 を す る学 生 が い ま す。 ど こが納 得 い か な い のか と問 うと、 相 手 を理 解 す る上 で 自分 に つ い ての 情 報 は 関係 な い よ うに 思 うとの答 です 。 確 か に 、相 手 に つ い て の 客観 情報 だ け を使 って 人 物 像 を組 み 立 て る こ と も、 そ れ な りには 可 能 で す。 しか し、相 手 の言 動 に刺 激 され 自分 の 中 に 生 じて い る反 応 に つ い て の 自覚 が 、 相 手 に つ い て の 理 解 を深 め る の に役 立 っ こ と も事 実 で す 。 今 か ら約40年 前 、 看護 と臨床 心理 の領 域 で ほ ぼ同 時 に 、援 助 場 面 で湧 い て き た 感 情 を 自 覚 し率 直 に 表 現 す る こ と、す な わ ち 自己一 致 の 提 案 が 行 わ れ ま した。 この 提 案 は 、援 助 者 の 本音 が ク ライ エ ン トの本 音 を 引 出 し、関 係 の深 ま りと率 直 な や りと りの 中か ら問 題 が 明確 に な る とい う発 見 に基 づ い て い ます。 苦 悩 の 根源 が 明確 に なれ ば 、 ク ライ エ ン トは 自分 で解 決 策 を 見 出す の で 、無 力 感 が 解 消 し自信 と元 気 が湧 い て く る とい うエ ン パ ワ メ ン トの 発 想 です 。 とこ ろが 、 自己一 致 とい う原 則 は 現在 に 至 る ま で 、 日本 の臨 床 や 教 育 の現 場 に 定 着 して い ませ ん 。 日本 人 に は、 相 手 に 不快 な感 情 を抱 い て も、そ の 内容 を 口に して相 手 との 関 係 が壊 れ る の を怖 れ 、率 直 な 感 情 表 現 を 抑 制 す る人 が 多 いか らの よ うです 。 相 手 の反 応 が 、 予想 外や 期 待 外 れ だ っ た ら不 快 な感 情 を抱 い て 当然 な の で 、 そ の表 現 を抑 制 すれ ば コ ミュニ ケ ー シ ョン は阻 害 され ます 。 不 快 な感 情 とい っ て も、は じめの内はせ いぜ い驚 きや 疑 い の程 度 な の で 、早 め に返 せ ば 相 手 との 関係 が壊 れ る心 配 は ま ず あ りませ ん 。 と ころ が 、驚 きや 疑 い を飲 み 込 ん で い る と、 い つ の 間 に か相 手へ の 不信 や 怒 りが つ の っ て き て 暴発 す る か 、 自分 を責 め て落 ち込 む こ とに な ります 。 相 手 との 人 間 関係 を 大切 に した い と思 うあ ま り、 か え って 関係 を壊 した り、疎 遠 な 関 係 に 陥 った り して い る わ け で す。 そ こで 私 は、 援 助 場 面 で 体験 した 不快 感 を早 め に表 現 し、それ に対す る相 手の反応 を受 け 止 め て返 す こ とを提 案 した い と思 い ます 。 患 者 さん との関 係 が 深 ま る と同 時 に 、それ ぞれ に 抱 え て い る問 題 も明確 に な り、 ど ち ら も 自信 が湧 き元 気 に な る は ず で す 。 この ワー ク シ ョップ で は 、相 手 の言 動 に不 快 感 を覚 えな が ら 自己一 致 で き な か っ た場 面 を思 い起 こ して振 り返 る作 業 を参 加 者 で 分 か ち合 って み た い と思 い ます 。そ の よ うな共同体 験 は 、健 康 上 の 問題 を抱 え てい る相 手 との や りと りの 中 で 自 己一 致 を貫 き 、 援 助 関係 を成 立 させ るた め の リハ ー サ ル に な るか らで す 。 58 日本 助 産 学 会 誌 第17巻 第3号(2004.3)4.そ の 先 の 助 産 ケ アー 自 己理 解 を相 手の 理 解 と相 互 の エ ンパ ワ メ ン トにつ な げ る
異 和 感 の 対 自化I(後 で振 り返 る)
5.そ の先 の助 産 ケ ア-助 産 の喜 び を見 い だ す助 産 師 を育 て る
助 産の喜びを見 いだす助産 師を育てる
座長 川島助産院 川 島 広 江 宮城大学 塩 野 悦 子 助 産 師教 育 は、 専 門職 大学 院 と して認 可 され2004年4月 か ら新 しい 教 育 の 形 で も展 開 され る こ とに な りま した。助 産 師 と して大 変楽 しみ に思 う と同時 に 、助 産師 教 育 の さま ざま な問 題 が あ る中 、 どの よ うな こ とを大切 に して助 産 師教 育 を して いか な けれ ば な らな い の か を早 急 に検 討 す る必 要 が あ るの で は な い で し ょ うか 。 さて 、 この助 産 学 会 ワー クシ ョ ップ の助 産 師 教 育 に 関す るテ ー マ は 、 これ ま で 「助 産 学 教育 と臨床 の連携 、「助 産 師教 育 に期 待す る もの」な どで デ ィス カ ッシ ョンが 行 われ て き ま した。 これ らは、 臨床 指 導助 産 師 と助 産教 員 の2つ の立 場 か らの 話題 提 供が 主 で あ り、 内 容 と しては 、 臨床 側 と教 育側 の連携 に 関す る こ と、助 産 師教 育 の 内容 に関 す る こ と、 助産 師 教 育 シ ステ ムに 関 す るこ とな どが 含 まれ てい ま した。 それ ぞれ のデ ィス カ ッシ ョンの 中で 、 どの よ うな助 産師 に なっ て ほ しい のか とい うビジ ョン も出 てい ま した。 これ は 、今 回 の テー マ で あ る 「助 産 の喜 び を見 い だす 助 産 師 を育 て る」とい うこ とが、 あ る程度 、参 加 者 の共 通認 識 で あ った と考 え ら れ ます。 今 回 は、 共 通認 識 で あ った と考 え られ る 「助産 の喜 び を見 い だ す助 産 師=モ デ ル 助産 師 像 」をは っ き りさせ る こ とに焦 点 を 当て た デ ィ スカ ッシ ョンに して 参 りた い と思 い ま す。 デ ィス カ ッシ ョンの た め に話 題 提 供者 と して 、現 場 で活 躍 して い る3人 の助 産師 さん をお願 い しま した。 それ ぞ れ の助 産 師 さん に 、 「私 に影 響 を与 え た助 産 師 」と して 「助 産 の 喜 び を 見 い だ して い る助 産師=モ デ ル助 産 師 」の紹 介 を さま ざま な角 度 か ら紹 介 い た だ きた い と思 い ます 。 そ して そ の 中か ら 「助 産 の喜 び を 見い だす 助 産 師=モ デル 助 産 師 」のエ ッセ ン スを皆 さん と考 え て参 りた い と思 い ます。 助 産 師教 育 は 、助 産 師学 生 の学 内お よびや 臨床 での 教 育 、 また 資格 取 得後 の 卒 後 教 育 な ど さ ま ざま です 。 教 育 に関 わ る全 て の助 産 師 一助 産 師学 生 に とっ ては助 産 教 員 ・臨 床 指 導助 産 師 を は じめ1年 目の助 産 師 か らす べ て の助 産師 、す で に助 産 師 に な って い る者 に とって は 、 す べ て の先 輩助 産 師 、 ま た病 院 、教 育機 関に 限 らず 行 政 ・地 域 で の助 産 師 活動 に 関 わ って い るす べ て の助 産師 が助 産 教育 に関 わ って い る こ とに な ります 。 助産 教 育 は 特別 な場 だ けの もの で は な く、 助 産 活 動が 行 われ てい る とこ ろに助 産 教 育 が展 開 され ます。 この こ とを 考 え ます と、 今 回 の セ ッシ ョン で、 あ らゆ る立場 の助 産 師 一 人一 人 が 、 自分 は 「助 産 の 喜 び 」を永 久 に見 い だ す助 産師 でい るか を問 い 直 せ る機 会 に もな る こ とを 心 か ら願 い た い と思 い ます 。 60 日本 助 産学 会誌 第17巻 第3号(2004.3)5.その先 の 助 産 ケ ア-助 産 の喜 び を見 い だす助 産 師 を育 て る
私に影響 を与 えた助産 師
演者 日本赤十字社医療センター分娩室 宍 戸 あ き 恥ず か しなが ら私 は 大 学生 に な る まで 助 産 師 の存 在 を知 らな か っ た。 そ れ なの にな ぜ助 産 師 を選 ん で しま った の か.そ の理 由 はや は りMentor制 で 毎 日一 人 の助 産 婦 につ い て まわ っ た,あの濃 厚 な助 産 実 習 に あ るの だ ろ う。 自分 の 希 望 で看 護 大学 に は入 学 した もの の,将来 自 分が看 護 師 と して働 い て い る イ メー ジが 今 ひ とつ浮 か ばな か っ た。 現 場 で働 く看護 師 は 素 敵 だ った が,それ ほ ど私 を 引 き つ け る もの が な か った 。 これ は助 産 師 の 実 習 ほ どに 看 護 師 に密 着 して そ の ス ピ リ ッツ を 得 る こ とが 出 来 なか っ た か らか も しれ な い。 な に は と もあれ,あ の 助産 実 習 で は 助 産 師 それ ぞれ が 持 っ ス ピ リ ッツ を毎 日肌 で感 じ る こ とが 出 来,助産 師 の 多様 性 と自律性,す ば ら しい職 人 芸 な どに 興 味 が 持 て た 。 そ の 引力 の ま ま に今 もま だ 日赤 医療 セ ン ター で 勤 務 して い るの で あ る がや は りそ の 影 響 力 は失 われ て い な い よ うに思 う。 もち ろ ん助 産 院 や,そ の他 い ろい ろ な場 所 で活 躍 す る助 産 師 に もた く さん の魅 力 を感 じ, 影 響 を受 け て い る が,実習 を し,今勤務 して い る こ の病 院 の助 産 師 に つ い て話 して み て も十 分 時 間 を 要 す た め 限 定 して み た い。 ・多彩 な助 産 師 妊 婦健 診 や 分 娩 介 助 は も ち ろん の こ と,学級 運 営 や 教 材 用 の 媒 体 作 り(ビデ オ な ど),学生 の 教 育,生活 の知 恵 の 伝 授,雑誌 記 事 の 作成,日本 中 へ(世界 へ も)講演 巡 り,渋谷 の 真 ん 中で歌 っ て踊 る,ポス タ ー の モ デル,女優 な ど学 校 教 育 の 幅 を超 え た知 識 や 技 を持 っ て い る。 ・人 間 の強 さ を信 じる助 産 師 人 間 の 持 つ 能 力 を 引 き 出 し,忍耐 強 くつ きそ う。 ・み ん な をや る気 に させ る助 産 師 人 に 仕 事 を かせ るの で は な く,実は そ の 人 の 能 力 に あ っ た課 題 の提 供 で あ り,且つ そ れ が 達 成 可 能 とな る よ うな サ ポー トを して くれ る。 また 病 院 の枠 を越 えて助 産 師 の将 来 を考 え た 働 き をす る。 そ れ は 女 性 や そ の 家 族 ま で も及 ぶ ・柔 軟 な 助 産 師 病 院 だ か ら と 自分 で 足 か せ を つ けず,エ ビデ ンス に基 づ い て妊 産 婦 を 中 心 に した ケア をす る。 医 師 と対 立 した 立 場 で は な く,周 りを 巻 き込 ん で」 緒 に 取 り組 む とい う姿 勢 を持 つ 。 日本 助 産 学 会誌 第17巻 第3号(2004.3) 615.その 先 の助 産 ケ ア-助 産 の喜 び を見 い だす 助 産 師 を 育 て る
私に影響 を与 えた助産師
演者 愛育病院 新 崎 早 苗 助 産 師 に な って3年 目の経 験 未 熟 な私 です が 、助 産 師 学 生時 代 の経 験 を含 めて 、"私 に影 響 を与 えた 助 産 師"そ して"私 に とっ て の理 想 の助 産 師"に つ い て考 え て み た い と思 い ます。 私 は 看 護 学 生 時 代 の母 性 看 護 実 習 で は 分 娩 見 学 も な く、 ま た 正 常 褥 婦 を受 け 持 つ期 間 も 1.5日 間(その 他 は 切 迫 流 産 患 者 を受 け持 つ)とい う短 い 実 習 で 、 母 性 看 護 に 対 して 興 味 を抱 くま で に は至 りませ ん で した。 そ の よ うな私 が助 産 師 な ろ う と決 め た の は 中 学 時 代 の 友 達 の 妊 娠 が き っか けで した。 そ して 、 助 産 師 学 生 に な った 私 に 、(学 生 の 間 で 厳 しい と言 わ れ て い た)助産 院 のS先 生 は 、 「分 娩 を一 度 も 見 た こ とが な い とい う学 生 が 、助 産 師 に な ろ う して い る とは … 」 と、 まず 一 言 、私 の助 産 師 にな る心 構 えが 甘 い の か と考 え させ られ ま した。 緊 張 したS先 生 との 出 会 い か ら三 週 間 の助 産 院 実 習 を通 し、 分 娩 介助 技 術 は も ち ろ ん助 産 師 の 心 意 気 を学 び 、 助 産 師 と して私 は こ うあ りた い!と い う今 後 の 方 向 性 に大 き な影 響 を受 け た 人 物 で した 。 現 在 も時 々助 産 院 に伺 い 、S先 生 か ら ヒン トを得 て い ま す 。 私 に は も う一 人影 響 を受 け た人 物 が い ます。 病 院 で の 分 娩 介 助 実 習 で 、 あ る産 婦 さん を受 け持 ち 分 娩 室 に入 室 させ 分 娩 準 備 を して い る 時 、 「ベ テ ラ ン の ス タ ッ フ に 替 え て っ!痛 く て!ど う した らい い の!!」 と産 婦 さんか らの 思 わ ぬ 発 言 が あ りま した。 私 の頭 の 中 は 真 っ 白 にな り、 指 導 担 当のH助 産 師 に涙 目に な りなが ら"ど う しよ う…"無 言 で訴 え ま した。H 助 産 師 の 計 らい で継 続 して分 娩 介 助 を行 うこ とが で き無 事 に経 膣 分 娩 とな りま した。 そ の後 、 そ の 産 婦 さん と分 娩 のふ り返 りを行 うこ とが 、 正 直 言 って とて も怖 く、 自分 の未 熟 な ケ ア に 申 し訳 な く思 って い ま した。H助 産 師 とも分 娩 時 の 産 婦 の 発 言 に つ い て 話 し合 い 、 私 と産 婦 さん の 二 人 で ふ り返 りを行 い 、今 の 自分 の気 持 ち を正 直 に 話 して み た ら… と助 言 して くれ ま した。 助 言 の よ うに 自分 の気 持 ち を話 した こ とで産 婦 さん の 思 い を知 り、気 ま ず い 関 係 に な る こ と も な く産褥 期 も引 き続 き ケ ア させ て も ら うこ とが で き ま した 。H助 産 師 か ら は分 娩 介 助 技術 の 他 に 人 と人 との つ なが りの 大 切 さを学 び 、 私 に とって 理 想 の助 産 師 の 一 人 とな っ て い ます。 そ して 現 在 、H助 産 師 と同 じ職 場 で働 いて い る私 はH助 産 師 の ケ ア を身 近 で学 ばせ て も らっ て い ます 。 で は"私 に と って の理 想 の助 産 師"と は … 、 ワー ク シ ョ ップ でお 話 させ て 頂 き た い と思 っ て い ます 。 62 日本 助 産 学 会 誌 第17巻 第3号(2004.3)5、その 先 の助 産 ケ ア ー 助 産 の 喜 び を見 い だす助 産 師 を育 て る
私 に影響 を与 えた助産師
演者 湘南鎌倉総合病院 加 藤 麻 紀 私 は 以前 、看 護 師 と して 総合 病 院 の産 婦 人 科 病棟 で 勤務 してい た 頃 、 ひ と りの先 輩 助 産 師 と出会 っ た。 先 輩 は、 妊 娠 、 出産 を 自分 の もの と して捉 え 、 いか に 妊 婦 自身 が積 極 的 に妊 娠 生活 が過 ごせ る か、 常 に創 意 工 夫 を繰 り返 して い た。 微 弱 陣 痛 にな った 時 、産 婦 がお 産 に対 して後 ろ 向 き に な った 時 、 そ の 先輩 の 関 わ りの 中で 、積 極 的 にお 産 に 望 む産 婦 に変 化 した 様 子 を見 て 、驚 い た こ とを覚 え て い る。 先 輩 は 自分 のお 産 で も 「自分 の 体 を 自分 が 一 番 理 解 し てい る。 リラ ック ス して 自分 ら し く過 ごせ る場 所 で 、 自分 が 思 うお産 を した い。 そ れ が 自分 の産み だ す 力 に な る と信 じて い るか ら、 どこで 出 産 す るに しろ 自分 の お 産 に は 自分 が責 任 も って出 産 場所 を選 択 したい 」 とい っ て 、 自宅 で 水 中 出産 を した 。 後 に 出産 の様 子 を ビデ オ で 見せ て も らっ た が 、分 娩 台 で 点滴 に つ な がれ 、 怒 責 を か け、 血 だ らけ のお 産 しか 知 らな い 私 には、 大 変 な衝 撃 で あ った 。 先輩 の妊 娠 に対 す る取 り組 み を知 って い る私 は 、 自分 の 体 と向 き合 い 、 取 り組 み をす る こ とで母 児 と もに元 気 に 出産 で き る こ とを教 え て も らった 。 妊 娠 ・ 出産が 自然 な営 み で あ るな ら、 自 らの力 で女性 は 産み だす 能 力 を備 え て い る。 先 輩 の 自分 の 力 で産 み た い と努 力 す る姿 か ら、胎 児 を思 う温 か さ、女 性 と して の 自立 した 強 さ を感 じた 。 だか ら こそ 、対 象 に も笑顔 で 迎 え られ る 出産 の お 手伝 いが 出 来 るの だ ろ う。 助 産 師 と して の 先輩 にお 産 をす る 立場 と して 、 ま た 、 お産 の お 手伝 いす る立 場 と して の 姿勢 や 魅 力 とい うも の を感 じ、 私 の 目標 を 明確 に して くれ た よ うに 思 う。 助 産 師 と して妊 産 婦 さん に よ り寄 り添 うこ との 難 しさ、そ して 喜 び を教 え て くれ た の は、 助産 師 学校 で の学 び の 中 で あ った。 対象 に ケ アの 必 要性 を どん なに 説 明 して も理 解 して も ら えない 、 そ の原 因 は ケ アや 情 報 の 提供 者 で あ る私 自身 に あ る こ とを学 ぶ。 自分 自身 を知 らず して、対 象 を理 解 す る こ とは 出 来 な い。 当 た り前 の 事 の よ うに思 われ るが 、 人 は、 自分 の欠 点や 嫌 な部 分 は認 め た くない もの で あ り、 また 対 象 との 関わ りで 、 自分 の癖 が 出 て い る こ と に気 づ か な い事 さえ あ る。 自分 を 知 らず して、 有 効 な保 健 指 導 は 不 可能 で あ る し、 対 象 と信 頼 関係 を築 き 、寄 り添 うこ とで もで き な い。 これ は 、対 象 と妊 娠期 か ら育児 期 ま で継 続 して 関わ る 中 で学 び得 た こ とで あ る。 助 産師 と して対 象 の 目指 す 道 、歩 む道 に 寄 り添 い 共 に歩 む。 そ の 中 で 、時 に対 象 が 道 に迷 った と して も、 対 象 自 ら解 決 で き る力 を持 っ て い る こ とに気 づ い た り、 思 い出 す こ ともで き るだ ろ う。 継 続 して 関 わ る こ とは 、 大 変 な 労 力 と責任 が つ い て くる た め、 精 神 的 負 担 の 大 き さは計 り知 れ な い。 しか し、そ れ を乗 り越 え 「対象 の た め に 」 と学 び えた 知 識 や 技 術 、保 健 指 導 は助 産 婦 と して 私 た ち を成 長 させ るだ け で な く、 共 に命 の 温 か さや 充 実 感 、 達 成感 、満 足感 を味 わ らせ て くれ た。 これ は継 続 して 関 わ るか らに こそ 得 日本助産学会誌 第17巻第3号(2004.3) 635.そ の先の助産 ケアー助産の喜びを見 いだす助産師を育てる られ る もの で あ る と思 う。 今 で も、 続 い て い る継 続 さん を 見 て思 う。 自分 の生 きか た に しっ か り向 き合 え る女 性 は 、 しっか り子 供 と向 き合 う育 児 が で き るよ うに感 じる。 そ して 、女 性 や そ の家 族 の ライ フ サ イ クル をサ ポ ー トす る助 産 師 の役 割 と して 、継 続 的 か か わ りは 対 象 の利 益 に つ な が る ば か りで な く、 必 要 不 可 欠 な の で は な い だ ろ うか 。 64 日本 助 産 学 会 誌 第17巻 第3号(2004.3)
6.その先 の 助産 ケ ア-改 めてエビデンスに基 づい たア ロマセラピ-を 学 ぶ
改 め て エ ビデ ンスに基 づ い たアロマ セラピーを学 ぶ
座長 東京大学大学院医学系研究科発達医科学教室 井 村 真 澄 太 古 の昔 か ら現 在 に 至 る ま で 、 人 間 は植 物 との深 い か か わ りの 中 で 生 きて 来 ま した。 人 は植 物 を食 し、成 分 を 薬 と して 用 い 、香 りを さま ざ まな 場 面 で 活 用 して い ます 。 人 類 の歴 史 を紐 解 くと、 人 と植 物 と香 りが密 接 に関 連 して い た こ とが 分 か りま す。 時 代 は下 り、1930年 代 に フ ラ ンス のル ネ ・モー リス ・ガ ッ ドフ ォセ が ア ロマ セ ラ ピー とい う言 葉 を初 めて 用 い て以 来 、 欧 米 では芳 香療 法 と して の ア ロマ セ ラ ピー が 日常 生 活 や 医 療 現 場 に 広 ま りま した。 近 年 日本 で も、 助 産 ケア をは じめ 多 くの 医 療 分 野 に もア ロマ セ ラ ピー が 活 用 され 始 め て い ます 。 さ らに それ ら と平行 して 、 基礎 ・臨床 の 諸領 域 にお い て嗅 覚 と香 りの 心 身 へ の 効 果 が 現 在 進 行 形 で解 明 され つつ あ ります 。 今 回 は 、薬 剤 師 で あ り、植 物 療 法(フ ィ トセ ラ ピー)に 造 詣 が深 く、 補 完 医 療 ・代 替 療 法 と して の メデ ィカ ル ハ ー ブ とア ロマ セ ラ ピー の 普 及 に尽 力 され て い る林 真 一 郎 氏 と、聖 路 加 病 院 でのハ ー ブ テ ィー サ ー ビ ス とア ロマ セ ラ ピー の 導 入 に先 鞭 をつ けた 黒川 寿 美 江 氏 にお 話 頂 き ま す。 ま た、 皆 様 に は 会 場 で実 際 にハ ー ブテ ィー を ご試 飲 頂 き 、ハ ン ドマ ッサ ー ジ を 実技 体 験 し て頂 け る よ う準備 して お ります 。 この機 会 に 、 改 め て エ ビデ ンス に基 づ い た ア ロマ セ ラ ピー を学 び 、 麗 し く洗 練 され た感 性 一 エ ビデ ン ス に基 づ い た確 か な 知識 一 卓 越 した 技 術 が 統 合 され た助 産 ケア を皆様 の 日々の 実 践 に おい て展 開 して頂 き たい と願 っ て お りま す 。 日本助 産 学 会 誌 第17巻 第3号(2004.3) 656.そ の先 の 助 産 ケ ア ー 改 めてエビデ ンスに基 づい たア ロマセラピーを学 ぶ
エ ビデ ンス に基 づ い た ハ ー ブ ・ア ロ マ テ ラ ピ ー の
助 産 領 域 で の 活 用 を め ざ して
演者 グリーンフラスコ研究所 林 真 一 郎 わ が 国 にア ロマ テ ラピー が 紹 介 され て お よそ20年 が過 ぎ 、最 近 で は 臨 床 現 場 で の 活 用 の 試 み が さか ん に行 わ れ て い ます 。また 、西 洋 ・近 代 医 学 と代 替 ・相 補 医 学 の 長 所 をお 互 い に 生 か し合 い 、患 者 中 心 の 医 療 をめ ざした統 合 医 療(Integrative mediclne)へ の 関 心 が 高 まり、そ の 流 れ の 中 でもハ ー ブ ・ア ロマ テラピー と言 った植 物 療 法(Phytotherapy)が 注 目を集 め てい ま す 。人 類 の 癒 しの 技 の歴 史 で 、ここ100年 ほ ど別 れ 別 れ にな って い た2つ の 道 す じが 再 び 出 会 う時 代 を迎 えつ つ あ るの です 。ハ ー ブ は 医 薬 品 の ル ー ツ(起 源)で あ るた め 、科 学 的 研 究 に お い ても従 来 の 薬 理 学 的 手 法 によるアプ ロー チ が 可 能 で あるた め 、医 療 従 事 者 の 理 解 を得 や す い 面 が あ ります 。一 方 、ア ロマ テラピー も生 体 計 測 機 器 の進 歩 に より、香 りの 生 理 ・心 理 効 果 を非 侵 襲 的 に 実 証 す ることが 可 能 に な り、エ ビデ ンスが 蓄 積 しつ つ あります 。 さて 、ア ロマテ ラピー で 用 い る精 油 や ハ ー ブ テ ィー に 含 まれ る成 分 な ど 、植 物 が 光 合 成 の過 程 で 生 合 成 す る植 物 化 学(フ ィトケ ミカル)成 分 の 作 用 の 本 質 は 、生 体 防 御 機 能 の 向 上 と生 命 力 の 賦 活 と言 えます 。そ して 、そ の 作 用 の 特 徴 は 、治 癒 系 を司 る神 経 ・内 分 泌 ・免 疫 系 の機 能 の調 整 にす ぐれ 、また 、生 体 へ の侵 襲 や 代 謝 シ ステ ム へ の負 担 が 少 な い 点 があ げ られ ます 。 した が って 、心 身 の バ ランスをくず しや す い 女 性 や 、医 薬 品 の 副 作 用 が 発 現 しや す い 老 人 や 子 供 に適 した療 法 と言 え るで しょう。助 産 領 域 で の活 用 は マイナ ー トラブ ル の 対 処 法 として だ けで は な く、セ ル フケ ア(自 己 管 理)の 意 識 を育 て ることにもつ な が ります 。また 、この 時 期 に 自 然 薬(ナ チ ュラル メデ ィスン)の 持 つ 自然 の や さしい 力 を実 感 す ることは 、母 子 ともに成 長 期 ・更 年 期 ・介 護 ・リハ ビリと言 ったそ れ ぞ れ の ライフステ ー ジ で ハ ー ブ や ア ロマ テ ラピー を上 手 に 活 用 し、女 性 の 一 生 を支 えることにもつ な が ります 。 今 回 の 発 表 で は 、ハ ー ブ や ア ロマ テ ラピー の 基 礎 知 識 や 研 究 報 告 をご 紹 介 す ると共 に 、ハ ー ブ テ ィー をお 飲 み い た だ き、さらにハ ン ドマ ッサ ー ジを体 験 して い た だ きたい と思 い ます 。ハ ー ブ や ア ロマ テ ラピー で 大 切 な ことは 、頭 で知識 を学 ぶ(新 皮 質)こ とと同 時 に、嗅 覚 や 触 覚と い った 人 間 の 根 源 的 な 感 覚 器 を介 して本 能(辺 縁 系)で 感 じることで あ り、め ざ す べ きは 両 者 の 統 合 で あ ると思 わ れ ます 。 66 日本 助 産 学 会誌 第17巻 第3号(2004.3)6.その 先 の助 産 ケ ア ー 改 めてエビデンスに基 づいたア ロマセラピーを学ぶ