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木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価-18 : 直刃状鉋刃を仕込んだ一枚刃台鉋における鉋台刃口押えの影響 (鉋の切れ味に及ぼす屑返し角度と水平刃口距離の影響)

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木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価-18 : 直刃状鉋刃を仕込んだ

一枚刃台鉋における鉋台刃口押えの影響 (鉋の切れ味に及ぼす屑返

し角度と水平刃口距離の影響)

Author(s)

杉山, 滋

Citation

長崎大学教育学部自然科学研究報告. vol.49, p.77-90; 1993

Issue Date

1993-05-31

URL

http://hdl.handle.net/10069/32226

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

(2)

長 崎大 学 教 育 学 部 自然 科 学 研 究 報 告 第49号77∼90(1993)

木 材 切 削 工 具 の 切 れ 味 測 定 と切 れ 味 評 価(XVm)*

直 刃 状 鉋 刃 を仕 込 ん だ 一 枚 刃 台 鉋 に お け る鉋 台 刃 口押 え の 影 響 (鉋の切 れ味 に及 ぼす屑返 し角度 と水 平刃 口距 離 の影響)

長崎 大学 教育 学部 工業技 術教 室 (平成5年3月15日 受理)

Studies

on Quantification

of Sensuous

Sharpness

and

Mechanical

Sharpness

of Wood Cutting

Tools. XVIII.*

Effects of Angle of Chip Guide and Horizontal Opening of Mouth

on Sharpness of Japanese Hand Plane without a Cap Iron

Shigeru SUGIYAMA

Department of Technology, Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki 852

(Received March 15, 1993)

Abstract

In this paper, the effects of the angle (OR(w))

of chip guide and the horizontal

opening (h) of mouth between a chip guide and a knife edge on the occurrence of torn

and chipped grain, surface quality of the workpiece, and chip discharge in planing of

wood with a Japanese hand plane without a cap iron were investigated. The chip guide

with a length (iR(w)) and an angle (OR(w))

was made, and its chip guide was equipped in

the plane for this test. The depth of cut (0 was about 0.05 mm. The chip-guide angle

(OR(w))

was changed from 64° to 114° and the horizontal mouth opening (h) was changed

from 0.10 mm to 3.30 mm.

The material used for this test was white seraya

(Parashorea malaanonan Merr.) in air-dry condition.

This material was planed

against the grain and with the grain, at the grain angle (SPA)

of about 10°. The results

obtained were summarized in Figs. 4 (a)-5 (b) and Table 4. Using the results in this

paper and in the previous paper"' 2), characteristics of the wood planing with a hand

plane without a cap iron are discussed, comparing it with the wood planing with a hand

plane with a cap iron.

・本 研 究 の 一 部 は,昭 和63年 度 文 部 省 科 学 研 究 費 補 助 金 一 般 研 究C〔 研 究 代 表 者 杉 山 滋;課 題 番 号 63560175;研 究 課 題 木 材 切 削 工 具 の 切 れ味 評 価 法(感 覚切 れ 味 と機 械 切 れ 味 の 定 量 化)に 関 す る研 究 〕に よ っ た 。 な お,本 研 究 を 「学 校 教 育 にお け る木 材 加 工(木 工 ・工 作 を含 む)学 習 指 導 の た めの 技 術 的 基 礎 研 究(第22報) TechnicalandFundamentalStudiesonEducationofWoodWorkinginTechnicalEducationLessonsof School,XXII.」 とす る。 上 記 の 研 究(第21報)お よび 標 記 の 研 究(XVII)は,長 崎 大 学 教 育 学 部 自然 科 学 研 究 報 告 第49号61∼76(1993)に 掲 載 。

(3)

78 杉  山 滋 、1.緒 コ  一般の家庭に備え付けられている道具または趣味の日曜大工を楽しむために集められた 道具のうち,台鉋(平鉋とも呼ばれている)は,児童・生徒にとっても身近な道具である から,現在もなお学校教育の場では,正規の授業の教材として,または,課外活動などの 道具として広く利・活用されている。この種の台鉋は,工匠具(専門職人の道具)と同種 同形のもので,鉋台に鉋刃のみを仕込んだ一枚刃台鉋と,逆目ぼれの防止を目的として, 鉋刃に裏金を装着させた合わせ鉋(以下では,二枚刃台鉋と言う)とがあるが,家庭に常 備の台鉋は一枚刃台鉋,二枚刃台鉋の両方あるいはいずれか一方であるが,学校教育の場 に常備の台鉋は二枚刃台鉋が多い。  前報で詳解したように,二枚刃台鉋はそれの調整や使用が極めて難しい1L2》。それにもま       こな      つや して一枚刃台鉋を巧みに使い熟し,逆目ぼれを防止し,艶のある鉋削の仕上げ面を作りあ げたその当時の職人の技能はまさに芸の極致であるが,今日,その技能を検討してみるこ とは,鉋の切れ味を考えるうえで極めて重要なことと考えられる。  一枚刃台鉋で逆目ぼれを防止するには,つぎの5通りの方法が考えられる。即ち,①順 目削りになるように鉋削方向を絶えず変えて鉋削する方法(順目削りの途中から逆目削り に変る場合には,反対方向から鉋削し,順目と逆目の中間では横削りとする),②三次元 削り(バイアスカット)による方法,③鉋刃に刃押え(鉋刃のすくい面にマイクロベベル)

       き

を付けて鉋削する方法,④鉋台の刃口押え(水平刃口押えと垂直刃口押えとがある)を利

      うわぱ

かせて鉋削する方法,⑤鉋台の切屑排出口に上端面を押えている右手人差指と中指を突っ 込み切屑の流出・排出を拘束または阻止しながら逆目ぼれを防止する方法,などがある。 これらは,鉋削方向の境い目を上手に削る方法(鉋削の進行に対応する鉋の運び方),バイ アス角の設定の仕方,刃押えの設定の仕方,刃口押えの利かせ方,切屑排出口への右手指 の突っ込み方,など鉋自体の調整や研磨の巧劣に左右されるほか,鉋削時の姿勢・動作・ 力の入れ方などの鉋削の仕方の巧劣にも左右される。まさに,一枚刃台鉋による鉋削では, 道具,身体,およびそれらを微妙に制御するカンとかコツとか言う脳の制御機構が渾然一 体となって作動し,婦人用ナイロンの靴下よりも薄いと言われる切屑が鉋刃と同じ幅で, しかも途切れることなく鉋を通して吐き出される。これが一枚刃台鉋を使い熟す職人の芸 と技の極致と言われるところである。  この研究では,一枚刃台鉋を用いた鉋削における逆目ぼれ発生防止効果などの優れた技 法に着眼し,数々あるそれらの技法の中から鉋台自体の調整法,即ち鉋台の屑返しと鉋台 の刃口押えをとりあげて,一枚刃台鉋の切れ味や逆目ぼれ発生防止に及ぼすそれらの影響 についての検討を試みた。なお,この研究では,鉋の切れ味に関する基礎的要因を的確に 把握し,切れ味についての基礎資料を収集することを主な目的としており,切れ味の定量 化をはかるための研究の一環として行ったものである。

2.実

2.1 実験の概要

 この研究では,これまでに殆ど明確に示されていない一枚刃台鉋における鉋台調整,とくに刃

(4)

木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(XV皿1) 79 切屑 (a)直刃 θ〔k)、(==αlk》+β(幻、 !n 切屑 β㈹、 θ〔k》、(=αlk》+β(k》,) 磁}、護纈k》+β(k》2) (b)刃押え刃(すくい面マイクロベベル設定刃) 図1 直刃または刃押え刃を装着した一枚刃台鉋による二次元削りの模式図 ∫.:鉋刃の出(切込量)l h:水平刃口距離(刃口距離);αω:鉋刃垂直逃げ角;β(k》、およびθ(k)、: 鉋刃刃押えを有しない直刃状鉋刃(あるいは,刃押え刃を設定する以前の鉋刃)の垂直刃先角(鉋 刃先端1段研ぎ垂直刃先角)および垂直切削角(鉋刃先端1段研ぎ垂直切削角)1βR(k》:鉋刃垂直刃 押え角(鉋刃垂直先端2段研ぎ角)1β(k),およびθ〔k》、:鉋刃刃押えを有する鉋刃の垂直刃先角(鉋刃 先端2段研ぎ垂直刃先角,あるいは鉋刃すくい面垂直マイクロベベル角)および垂直切削角(鉋刃 先端2段研ぎ垂直切削角);孫(k):鉋刃垂直刃押え長さ(鉋刃すくい面垂直マイクロベベル長さ); θ(w》:垂直刃口押え角度;θR(w》(=180。一θ〔w)):垂直屑返し角度1ム(w):垂直屑返し長さ (注)三次元削りと比較しない限り,角度や長さの用語に“垂直”という語を付けて表現することは不要とな   る。       図2 一枚刃台鉋の鉋台における水平刃口距離hおよび下端面不陸∂          (とくに,刃口押え一台尻間の不陸)       記号は,図1に同じ。 口押えおよび屑返しの影響についての検討を行う。即ち,一枚刃台鉋における屑返し角度魚w)お よび水平刃口距離hの大きさの変化と鉋の切れ味との関係を明らかにする。  一枚刃台鉋には,鉋刃の鉋台への仕込みの違いにより二次元仕込み台と三次元仕込み台とがあ り,鉋刃の刃押えの有無により直刃状鉋刃を用いた鉋とすくい面に刃押えを施こした鉋とがある。 本研究では,二次元仕込み台を用い,直刃状の鉋刃を用いて木材の縦削りを行う。刃押え刃を用 いた一枚刃台鉋による二次元削りと比較して,直刃状鉋刃を用いた一枚刃台鉋による二次元削り の模式図を図1に示した。鉋台の伽w)およびhのいろいろな組み合わせの変化を容易にするため に,本報においても,既報n・2)の場合と同様に,スライド式刃口押えを作成して用いた。魚W)およ

(5)

80

杉 山

滋 びhの異なるスライド式刃口押えを一枚刃台鉋に装着し,同鉋による鉋削実験を行い(図2参 照),鉋削中および鉋削後の切屑や鉋削面の詳細な観察に基づいて,その鉋の切れ味に及ぼす&(w) およびhの影響について検討を行う。その結果に基づいて,一枚刃台鉋における磁w)およびhの 適正値を明らかにし,さらに二枚刃台鉋における切れ味との違いをも明らかにする。

2.2 供試鉋

 この研究で用いた供試鉋の諸元および特徴を衰1に示す。同表に示すように,供試鉋は,新規 に購入した二枚刃台鉋(二次元仕込み台で,上仕工鉋の類に入るが,鉋台刃口が口入台となって いる)であり,実験にあたっては裏金を装着せずに一枚刃台鉋として用いる。実験前に,同鉋の 下端面を予め調整した。  通常の場合,台鉋の鉋台下端面の仕立てには,下端定規を鉋台下端面に密着させた定規線を基 準として考えると,刃口押えおよび台尻に接触する“2点接地仕立て”の場合と,台頭,刃口押 えおよび台尻に接触する“3点接地仕立て”の場合とがある。また,鉋が上仕工鉋であるか,中       ふろく       すき 仕工鉋であるか,あるいは荒仕工鉋であるか,などにより不陸の大きさ(即ち,“隙”の大きさ) 表1 供試鉋の諸元(鉋削実験時の諸元)        鉋台が口入れ台の二枚刃台鉋であるが,実験時には裏金を装着しないで,一枚刃台鉋とし        て使用する(鉋の外観などは,既報1レ・2)に示している)。鉋台は,その刃口に埋め木(本文で 鉋の種類と特徴は,スライド式刃口押えと呼ぶ)を装着して刃口押えを形成する,いわゆる口入れ台となっ        ている。このスライド式刃口押えの形状・寸法を変化させることによって,鉋台の水平刃        口距離hおよび屑返し角度伽w)を変化させることができる。 購入年度

鉋価格

購入価格) (円)

 鉋刃寸法

  幅 mm) 切れ刃線長さ (mm) 鉋重量 (9) 刃先角 (k)、(o) 鉋  刃  角  度

 逃げ角

  徴k)(。) 切削角 仕込み角) (k)、(o) 鉋 台 寸 法 ×厚さ×長さ  (mm) 平成元年11月 16,800 11,700) 59.2 52.5 925 24.0 ベタ裏) 16.0 40.0 75.7×36.3×273。0

   鉋台刃口

(スライド式刃口押えを装着しないとき) 最大開き (mm) 刃口距離 h(mm)

 屑返 し

(スライド式刃口押えを装着しないとき) 刃口押え角度 屑返し角度 θ〔W)(o) 廉(Wl(o) 屑返し長さ ム(W》(mm) 鉋台刃口 の包み 鉋台下端面 鉋台の材種 の仕立て  木製の場

〔鑑立〕篇の

鉋台の処理 12.0 2.0 55 125

〔藩麹

45.0 使用台

    シラカシニ方柾刃口押えと台尻の    台,下端面は板 普通台2点接地型    目面木表側

鉋台下端頂の形状

鉋台下端面台長方向の不陸の大きさ(mm) a1 0.05 a2 0.05 a3 0.05 a4

0

a5 0.05 a6 0.05 a7 0.03 a8

0

        鉋刃 頭      鉋麟 台尻 下端定規a1 a2 a3a4 a5 a6 a7 a8

(6)

木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(XVIII) 81 が異なってくる。  本研究では,新調鉋としての供試鉋を予め調整して,鉋台下端面の仕立てを,“2点接地仕立て” とした。供試鉋の鉋削実験の直前における鉋台下端面の形状(不陸の大きさ)を0.01mm精度の シックネスゲージを用いて測定した結果を,表1に示した。表1から明らかなように,刃口押え一 台尻間の不陸の最大値oを0.05mm(上仕工鉋の類に入る)とした。

2.3 実験条件と実験方法

 既報D・2)と同様に,スライド式刃口押えを鉋台刃口に口入れして,鉋の切れ味に及ぼす鉋台調整 の影響についての検討を行った。スライド式刃口押えは,図2に示すように,鉋台刃口に口入れ したとき,鉋台の屑返し角度θR働および水平刃口距離hが種々に変化するように特異な形状に作 られている。このスライド式刃口押えを用いて,鉋台の磁w)およびhの変化に伴う切れ味の変化 を検討する。表2に示すように,鉋刃およびその他の鉋台に係わる鉋削条件は一定とし,磁w)お よびhを変化させた。θR(w)を64。∼114。の範囲で6段階に変化させ,hを0.1∼3.3mmの範囲で 7段階に変化させた。同一の一枚刃台鉋を用い,魚w)およびhの種々異なる組み合わせ下で,表 3に示すような方法で鉋削実験を行い(鉋削は二次元縦削り方式),鉋削中および鉋削後の切屑お よび鉋削面の詳細な観察に基づいて鉋の切れ味の評価を行い,磁w)およびhの変化に伴う切れ味 の変化の影響などについて検討した。

表2 実験条件

鉋刃とその研磨

筆者により研磨。絶えず鋭利な状態を保って実験を行った。(研磨後の刃先角β(k》、は,β(k)、=240一定を保った。) 鉋台の台長方向の形状 程膿慧尻間中央部の不) 2点接地型仕立てで,∂;0.05mm一定とした。 刃口押え角度θ(w》 屑返し角度魚wlの変化に伴い,同時に変化する。θ(w)=660,760,86。,96。, 060,1160の6段階に変化。 屑返し角度魚w) 魚w》=114。,104。,94。,84。,740,64。の6段階に変化させた。 屑返し長さ魚w) ム(w)=10.5mm一定とした。

水平刃口距離h

h=0.1,0.3,0。6,0.9,1.6,2.3,3.3mmの7段階に変化させた。 鉋削実験用被削材 ホワイトセラヤ板材(気乾材)(図3および表3参照) 鉋 削 面

柾目面(欝鶴各黛鶴羅宴螺態縦場合平行)

鉋削実験者 筆   者 鉋押し付け圧力

/講欝/慧難議灘鋪

鉋削姿勢(鉋削動作) 鉋削速度 鉋刃の出(鉋刃の突出量) 可能な限り最小限の厚さの切屑を鉋肖1し得る刃の出を保つ。0.03∼0.06㎜程度。 繊維走向に対する鉋削方向(鉋削の方式) 繊維走向に平行,または極めて小さい角度の順目あるいは逆目の縦削りで,二次元削り。 鉋の切れ味評価         こうあな として,屑出し口(甲穴)からの切屑の流出・排出の様子や,鉋削後の切屑の 状(変形様相)および鉋削面の精粗に基づき,感覚的相対評価により行うが, れに加えて,鉋削音や刃の掛かりの良否,鉋削の軽快さなど,鉋削実験者に る感覚的評価をも加えて行う。鉋削面の精粗および切屑の性状に基づいて切 味の評価を行う際には,巨視的判断による場合と微視的判断による場合とに けて行ったが,最終的には,これらを全て含めての総合的判断により行った。

(7)

82 杉  山 表3 供試材(鉋削実験用被削材) 樹    種   ホワイトセラヤ 昂郷ho名即㎜伽御紹πM㎝r.) 産     地 マレーシアカリマンタン島サバ州 含  水  率 10.7% 比     重 0.45

平均年輪幅

晩  材  率 鉋削面・鉋削方向 正柾目面(交錯木理につき順目 よび逆目の両方向がある) 繊維傾斜角ψ1 0。(平行) 木理斜交角ψ2 2。 年輪接触角蝿 90◎ 鉋削用被削材 試験材)寸法 長さ×幅×厚さ) 同一材の心材部から採取 670×88×46mm (注)鉋削基準面の作成:ホワイトセラヤの同一原木   から,上記の被削材(試験材)寸法に製材した   のち,材面に現れた狂いおよび鋸断に基づくお   が目を自動一面鉋盤で鉋削し,鉋削実験に使用   する材面に限っては,それの材面に現れた回転   削りに基づくナイフマークを別個の二枚刃台鉋   (中仕工鉋に調整。鉋刃研磨,鉋台調整は筆者に   よる)で鉋削した。この鉋による鉋削面を,本   実験における鉋削の基準面とした。

2.4 供試材

 この研究では,ある一定の鉋削長さの中で,鉋 削面と被削材繊維走向との交差角度(即ち,繊維 傾斜角ψ1)が順目角度(ψ1<ooの場合),平行角 度(ψ1=ooの場合)および逆目角度(91>ooの場 合)に変化するような板材を選んだ(図3参 照)。この研究では,交錯木理材のホワイトセラ ヤを供試材として用い,同材の柾目面を鉋削面 とした。鉋削実験材料の寸法・形状などを表3に 示した。

2.5 鉋の切れ味評価の方法

 本報においては,鉋の切れ味を判断する場合 には,前報1)・2)と同様に,鉋削面の精粗と切屑の 性状とから判断する。まず,鉋削実験中に,一定 の材長にわたっての鉋削面と切屑とから瞬時に 切れ味を判断する(これを“切れ味の巨視的判 断”と呼び,以下,巨視的判断と言うこととす る)。つぎには,鉋削実験後に採取された鉋削面 と切屑とからの拡大写真により細部にわたって 切れ味を判断する(これを“切れ味の微視的判 断”と呼び,以下,微視的判断と言うこととす る)。巨視的判断は,一定材長における木理走向 の変化を考慮して判断するものであるから,鉋 の切れ味を判断する場合には,欠くことのでき ない判断の一つとなる。一方,鉋削自体の最終の 評価は,鉋削面全体にわたっての平滑性・光沢・ 艶などが問われることになるから,部分的にも 鉋削面に逆目ぼれが生じていると,高い評価を 得ることは難しい。したがって,巨視的判断と微視的判断により,鉋削面と切屑とが良好と判断 されてはじめて,鉋の切れ味が良好である,と言うことができる。

3.実験結果および考察

 本報では,鉋削面と切屑とを用いて微視的判断を行う場合の図を例として示すこととし,巨視的判断を行う場合の 図は,煩雑であり数量も多いので図示を省略することとした。なお,微視的判断を行う場合の図として,一定材長の いろいろな部分のうち,とくに粗面を呈する部分を示すこととした。一定材長の鉋削面のうち,粗面を呈する部分は 順目木理の部分ではなく,逆目木理の部分あるいは1屓目木理から逆目木理(または,逆目木理から順目木理)への移 行部分であるから,微視的判断を行う場合には,とくに逆目木理の部分あるいは移行部分で判断することが必要不可 欠となる。本報のホワイトセラヤは正柾目木取りの板材であり,一定の鉋削材長のうちのいずれもが交錯木理(順目 層と逆目層とが交互に鉋削面に現れるが,鉋削方向に対して順目層における順目角度および逆目層における逆目角度 は,一定の鉋削材長のうちのどの部位かで若干異なる)となっている。  したがって,本報のホワイトセラヤの場合には,鉋削開始側の部分,鉋削終了側の部分およびそれらの中間部分で 写真撮影を行い,それらの拡大写真を用いて総合的に微視的判断を行うが,図示は,中央部の一例を示している。  鉋削実験において採取された鉋削面と切屑の一例を図4(a),図4(b),図5(a)および図5

(8)

木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(XVllI) 83 ψ2 93 鉋削長さ 鉋削方向 ψ1

∼ >一一一一

 鉋削面上の繊維走両、マ、、r 繊維走向 (a)本邦産材板目板斜走木理材の場合

α

鉋削面  「「板厚

鉋削幅 曳aノ小邦座暦恢日恢斜疋不埋珂の場口’ 則目捌

 (i♪〃      (i)〃

 ” 、   侮。侮頒・

(i)疲1

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  、

(i)91>oo(逆目角度)の場合 竃 鮎 (ii)ψ1=oo(平行角度)の場合        ㈹ ψ・〈0。(順目角度)の場合  (b)外国産材柾目板交錯木理材の場合       図3 鉋削実験用被削材の寸法と形状についての例 ψ1:被削材の繊維走向と鉋削面との交差角度(繊維傾斜角)で,91=0。の場合は鉋削面と被削材の 繊維走向とが平行な場合(鉋削は,平行削りの場合となる)を,ψ1>0。の場合は鉋削面と被削材の繊 維走向とが逆目角度の場合(鉋削は,逆目削りの場合となる)を,ψ・<0。の場合は鉋削面と被削材の 繊維走向とが順目角度の場合(鉋削は,順目削りの場合となる)を,それぞれ意味する。ψ2:鉋削面 上における被削材の繊維走向と鉋削方向との交差角度(木理斜交角);ψ3:鉋削面と鉋削方向とに 垂直な木口断面における被削材の年輪走向と鉋削面との交差角度(年輪接触角) (b)に示した。図は,いずれの場合も鉋台の屑返し角度魚w)および水平刃口距離hの変化に 伴う鉋削面の精粗および切屑の性状の変化の一例を示したものである。これらの図の他に, いろいろな部位での鉋削面や切屑の様相の変化などに基づいて,鉋削面の精粗および切屑 の変化の微視的観察の結果をとりまとめた。さらに,鉋削中および鉋削後の鉋削面の精粗 および切屑の性状などに基づいて,鉋削面の精粗および切屑の性状の変化の巨視的観察の 結果をとりまとめた。既報1L2)の場合と同様な方法で,本報の場合もとりまとめを行い,そ

れらの結果を表4に示した。

 まず最初に,鉋削面の精粗により鉋の切れ味の評価を行ってみた。表4(a)(鉋削面の精粗の巨 視的判断による鉋の切れ味評価)により明らかなように,hの極めて小さい場合には,魚w)の極 めて小さい角度の場合から比較的大きい角度の場合までの比較的広い範囲で良好な鉋削面となっ た。hを大きくするに伴い,良好な鉋削面となるための伽w)は比較的大きい角度で,しかもその 魚w)の範囲は次第に狭くなった。即ち,hを大きくすると,磁w)の広い範囲で不良な鉋削面となっ た。  また,表4(b)(鉋削面の精粗の微視的判断による鉋の切れ味評価)により明らかなように,h および伽w)のいろいろな組み合わせ下で,鉋削面が良好となるhおよび魚w)は殆ど存在しな かった(良好な鉋削面となるhおよび磁w)は散在したが,実験条件間のデータのバラツキを考慮 に入れると,良好な鉋削面となるhおよび魚w)の範囲は存在しないと考えられる)。hおよび 磁w)の広い範囲での鉋削面の微視的判断による切れ味評価は,鉋削面の巨視的判断による切れ味 評価よりも1段階低くなった。即ち,鉋削面の巨視的判断で,良好と評価されたhおよび魚w)の 範囲は,微視的判断においてもそれより若干低いが不良とはならない範囲と概ね一致した。さら に,鉋削面の巨視的判断で,不良と判断されたhおよび俵(w)の範囲は,微視的判断においてもそ

(9)

84 杉  山 滋 像(w)ニ64。 廉(w)瓢74。 像(w)罵84。

9

β 門

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騰 哉 雛 摸 …ii 鰻 ゆ 随 哉 賃 ……i 燈 ゆ 瞬 織 鎧 霜 ③

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9

0う ㎡ II 凝 麟 一一一一一》鉋削方向      一一〇一一 (mm)        む  む  む 図4(a)屑返し角度θ、(w〉および水平刃口距離hの変化に伴う鉋削面の精粗の変化

(10)

木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(XVIll) 85 6辰(w)=94。 廉(w)瓢104。 像(w)==114。

9

9

d

9

蔓 り ゆIi ぺ ε

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纏 の 鋒 哉 貫 i…… Φ の 翻 ぺ …… 霞

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9

ε り ぶ 腰 ぺ …i ε り のll ぺ 一一一  鉋削方向      0 10 図4(b)屑返し角度θR(w〉および水平刃口距離hの変化に伴う鉋削面の精粗の変化 20(mm)

(11)

86

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(13)

88

杉山 

滋 表4 鉋削中および鉋削後における鉋削面の精粗・切屑の性状の巨視的判断,ならびに鉋削  後における鉋削面の精粗・切屑の性状の微視的判断による鉋の切れ味評価 (a)鉋削面の精粗の巨視的判断による鉋の切れ味評価  (c)切屑の性状の巨視的判断による鉋の切れ味評価 θR(w)(。〉 θR(w)(。) 64  74 84  94 104 114 64 74 84 94  104 114 (ξ目)ぺ 0.1 羅@.蕪醗… 鍵’ △   △ (貫9)ぺ 0.1 趨i’継− 璽… 麹箋 △  △ ◎△△

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0.9

i

囚 1△ 1△ …’鎌 △   △ 0.9 △ ,△

難灘

一麹麟 △

1.6 …圏1

;抵 鐡/ △   △ 1.6 △ △ ,一@、掌

霧鱗 △

△ 2.3 ×  }×、 △、餓i △   △ 2.3 △ ,△ @i 鱗 @i △

3.3 ×_  △   X   △ ×一  X 3.3 △ ◎ △ 纈i鰯・醗 △ (b)鉋削面の精粗の微視的判断による鉋の切れ味評価  (d)切屑の性状の微視的判断による鉋の切れ味評価 θR(w)(o) θR(W)(o) 64    74    84    94    104 114 64 74 84 94 104 114 (鍔目)ぺ 0.1 △   △   △ ◎: △1 × (琶ミ 0.1

獺麟獺簸鎌

,三麟1 △ ① 0.3 .6 =×  ①  4 O  × × 0.3 懸講、麟難麟… ① ◎ }×  △  4 ◎ × △ 0.6 △ i雛 寅 灘i △ △ 0.9 ×  ×  1△ △  × × 0.9 ① 蓬灘 ,@i ⑳.1 ① △△ 1.6 ×  ×藁× ××  △,  × × 1.6 △ 麹i 、@… 騨萎 2.3 .3 ×× ×る× ××  ×   △ × 2.3 ① 灘灘 難灘・難懸轍羅i馨 × 3.3 △ 「△

・@1

@1 、@疑 x×  ×  ××  ×× ×× ×一㎜} _又 (注)1.鉋削面および切屑の巨視的判断:鉋削実験の繰返し中に,鉋から排出される切屑の性状および鉋削面の精粗の様相を  瞬時に,しかも巨視的に判断する場合で,鉋削面の様相および切屑の性状の良否を,下記の5段階にそれぞれ分けて  表示した。鉋削面および切屑の微視的判断:鉋削実験終了後に,鉋から排出された切屑および鉋削面を採取し,切屑  の性状や鉋削面の精粗の様相を写真撮影し,それらの拡大図と鉋削条件の変化との関係を相対的に判断する場合で,  この場合にも上記の場合と同様に,下記の5段階に分けて表示した。◎:極めて良好な場合,○:良好な場合,△:  良好・不良の判断が難しい中間の場合,×:不良な場合,××:著しく不良な場合。 2.鉋削面の精粗および切屑の性状から判断して,“極めて良好な鉋削条件”となる範囲を薩盤,“良好な鉋削条件”と  なる範囲を匿璽嚢翻,“良好・不良の判断の難しい鉋削条件”となる範囲を[皿]],“良好でない鉋削条件”となる  範囲を匿…ヨ,”極めて不良な鉋削条件”となる範囲を匪匿璽翔で,それぞれ表示した。なお,“極めて良好な鉋削  条件”となる範囲は,本実験では,表示できなかった。 3.記号hおよび&(w):図1参照。 れよりさらに1段階悪い鉋削面となる範囲と概ね一致した。 一方,切屑の性状により鉋の切れ味の評価を行ってみた。表4(c)(切屑の性状の巨視的判断に よる鉋の切れ味評価)により明らかなように,hの極めて小さい場合には,伽w)は極めて小さい 角度の場合から比較的大きい角度の場合までの比較的広い範囲で,良好な切屑となった。hを大 きくするに伴い,良好な切屑となるための魚w)は比較的大きい角度で,しかもその&(w)の範囲 は次第に狭くなった。 また,表4(d)(切屑の性状の微視的判断による鉋の切れ味評価)により明らかなように,良好 な切屑となるhおよび魚w)の範囲は,表4(c)の場合における良好な切屑とならないhおよび &(w)の範囲よりも若干広い範囲にまで及んだが,両場合における範囲は概ね一致した。 このような鉋削面の精粗および切屑の性状の巨視的判断による切れ味評価ならびに微視 的判断による切れ味評価(表4(a)∼表4(d))から,一枚刃台鉋の切れ味に及ぽす鉋台調整 (hおよび魚w))の影響について,つぎのことが判明した。

(14)

木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(XV皿) 89  (1)鉋削面の精粗および切屑の性状のいずれにおいても,また,それらの巨視的判断および微 視的判断のいずれにおいても良好と判断されてはじめて』鉋の切れ味は良好であると言うことが できる。本研究におけるhおよび飯w》の変化に伴う鉋削面の精粗および切屑の性状の変化は,巨 視的判断および微視的判断のそれぞれの場合において若干異なる様相を呈したが,鉋削面の精粗 および切屑の性状が良好となるか,または不良とはならないhおよび魚w)の範囲は概ね一致し た。  (2)鉋の切れ味が良好となるか,または不良とはならないhおよび魚w)の範囲を求めるには, 鉋削面の精粗および切屑の性状の重複する範囲を探し求めればよいことになる。この方法によっ て,鉋削面の精粗および切屑の性状が良好となるか,または不良とはならないhおよび魚w)の範 囲を求めると,h=0.1mmの場合では魚w)=64。∼940,h=0.3mmの場合ではθR(w)=74。 ∼94。,h=0.9mmおよび1.6mmの各場合ではいずれも&(w)=940,であった。即ち,磁w)が小 さい角度の場合には,hは極めて小さく限定されるが(θR(w)=64。の場合には,h=0.1mm),畠(w) が次第に大きい角度になると,hの範囲は小さい値から比較的大きい値まで,その範囲が広くな る(&(w)=74。∼84。の範囲の場合にはh=0.1∼0.6mm,θR(w)=940の場合にはh=0.1∼1.6 mm)。  (3)交錯木理材を被削材とした鉋削で,逆目ぼれ等の発生を防止し,円滑な切屑の流出・排出 を行い得るような良好な切れ味,または不良とはならない鉋の切れ味を保持するためのhおよび 魚w)の適正値については,つぎのように考えられる。本報の一枚刃台鉋におけるhおよび魚w)の 適正値(上記(2)項参照)と,既報の二枚刃台鉋におけるhおよび像(w)の適正値2)とは,それぞれ の実験条件の範囲内での鉋削面の精粗および切屑の性状の相対比較によって求められたものであ るから,直接の比較はできない。しかし,両実験結果に基づいての適正値を明確にしておくこと は,今後の研究のための基礎資料となり得るものである(即ち,鉋の切れ味を良好にするための 屑返し角度および水平刃口距離についての適正値を追究するうえでの基礎資料となり得るのみな らず,その他の鉋台因子に係わる実験を推進するための実験条件の組み合わせを検討するうえで の基礎資料となり得る)。一枚刃台鉋におけるhおよび魚(w)の適正値は,θR(w)を比較的大きくす ると,hは小さい値から比較的大きい値の広い範囲にわたるが,θR(w)を小さくすると,hは小さ い範囲に限定されてくる。なお,魚w)を著しく大きくしたり,あるいは魚w)は大きくはないがh を著しく大きくすると,切れ味は良好でなくなる。一方,二枚刃台鉋では,裏金を適正に設定し さえすれば,hおよび魚w)の広い範囲で切れ味は良好となった(敢えて,適正値を挙げれば,裏 金の作用角よりも若干屑返し角度が屑出し口側に開いた角度,即ち,裏金作用角aB),=100。の場 合で磁w)=114。のときに,h=0.3∼3.3mmの範囲で切れ味が良好となった)。

4.結

目  だいがんな      ひらがんな       ひらめん  台鉋(または,平鉋とも呼ばれている)は,長い材長の角材や広い材面の板材の平面を平滑に 仕上げるための道具であるが,長い材長にわたって,あるいは広い材面全体にわたって平滑で光 沢のある鉋削面を得るためには,台鉋そのものの充分な調整のみならず,優れた鉋削技能が必要 不可欠となる。台鉋の調整が不充分であったり,また,そのような調整の不充分な台鉋を用い, しかも鉋削についての技能や知識が充分でない作業者による鉋削にいたっては,作業時間,作業 労力,作業経費の浪費をもたらすのみならず,ひいては台鉋の損耗,被削材料の損壊をももたら す。また,優れた技能をもった作業者による鉋削であっても,台鉋の調整が充分でなければ,満 足し得る鉋削面は得られないし,さらに,これとは逆に,台鉋が高価でそれの調整が充分であっ ても,充分な技能をもたない作業者による鉋削では,満足し得る鉋削面は得られないばかりか,

(15)

90 杉  山 滋 台鉋の損耗をもたらす。  長い材長の角材や広い材面の板材を鉋削面の繊維走向に平行に鉋削する場合(即ち,平削りす る場合で縦削りの場合)には,鉋削の進行につれて,鉋削面と被削材の繊維走向との交差角度に 変化が起り得る。即ち,鉋削面と被削材の繊維走向との交差角度が鉋削方向に対して平行角度で あっても,鉋削の進行につれて順目角度や逆目角度に変化する場合がある。とくに,逆目角度に おける逆目削りではその逆目角度も種々の大きさに変化するから,鉋削面に生じる逆目ぼれの程 度も種々異なる。このような逆目削りにおいて発生する逆目ぼれは,鉋削面の評価を著しく低下 させるものであるから,逆目ぼれの発生を防止するために,鉋そのものや鉋削の仕方に種々の工 夫が凝されている。例えば,鉋が,一枚刃台鉋の場合には,鉋台の刃口押えや屑返しを利用する ことによっても,逆目ぼれの発生をより一層防止する効果があるから,刃口距離や屑返し角度が 適正な大きさであることが望まれる。  この研究では,一枚刃台鉋を用いた鉋削における逆目ぼれ発生防止効果などの優れた技法に着 眼し,数々あるそれらの技法の中から鉋台自体の調整法,即ち鉋台の屑返しおよび鉋台の刃口押 えをとりあげて,一枚刃台鉋の切れ味に及ぼす鉋台の水平刃口距離hおよび屑返し角度魚w)の影 響についての検討を行った。  得られた主な結果を要約すると,つぎのとおりである。  (1)鉋削面の精粗および切屑の性状のいずれにおいても,また,それらの巨視的判断および微 視的判断のいずれにおいても良好と判断されてはじめて,鉋の切れ味が良好であるということが できる。本研究におけるhおよび磁w)の変化に伴う鉋削面の精粗および切屑の性状の変化は,巨 視的判断および微視的判断のそれぞれの場合において若干異なる様相を呈したが,鉋削面の精粗 および切屑の性状が良好となるか,または不良とはならないhおよび&(w)の範囲は概ね一致した (図4(a〉∼図5(b),表4(a)∼表4(d)参照)。  (2)鉋削面の精粗および切屑の性状の巨視的判断および微視的判断において,良好か,または 不良とはならないhおよび魚w)の範囲で,重複する範囲を探し求めることにより,鉋の切れ味を 良好,または不良とはならないhおよび魚w)の範囲を求めた。それによれば,hニ0.1mmの場 合ではθR〔w)=64。∼94。,h=0.3mmの場合では魚w)=74。∼94。,hニ0.9mmおよび1.6mmの 各場合ではいずれもθR(w)=94。,であった(表4(a)∼表4(d)参照)。  (3)一枚刃台鉋におけるhおよび魚w)の適正値は,魚w》を比較的大きくすると,hは小さい値 から比較的大きい値までの広い範囲にわたるが,伽w)を小さくすると,hは小さい範囲に限定さ れてくる。θR(w)を著しく大きくしたり,あるいはθR〔w)は大きくはないがhを著しく大きくする と,切れ味は良好とはならない。しかし,二枚刃台鉋では,裏金を適正条件で設定しておけば, hおよび魚w)の広い範囲で,切れ味は良好となった。 文 献 1)杉山 滋:木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(XIII)二枚刃台鉋の切れ味に及ぼす鉋台調整の影響  (1)一鉋台の水平刃口距離および下端面不陸の影響一,長崎大学教育学部自然科学研究報告,第47号,  79∼98 (1992). 2)杉山 滋:木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(XIIII)二枚刃台鉋の切れ味に及ぼす鉋台調整の影響  (2)一鉋台の屑返し角度および水平刃口距離の影響r長崎大学教育学部自然科学研究報告,第47号,  99∼112 (1992).

参照

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