皆さんこんにちは、橋本です。よろしくお願いします。血液だけ対応を標榜している わけではないのですが、私が血液がん相談対応を長くやってきて、そして今のJ-CRSUのがん電話情報センターへ移管し、またここでも当初は血液がんと乳がんのみ 受け付けていたことがあり、血液がんの相談が非常に多いのが実情です。
話の流れを、「血液がん患者を囲む状況の特徴」から始めさせていただきます。お聴 きの方々は、この前の血液がんご専門の先生から治療に関して今日長く勉強されて いると思いますので、疾患と治療についての用語、治療法についてはよくご存じのこ ととして割愛します。
ここでは、「患者さん自身が置かれている治療と心理的な状況、そしてそこから出てく る相談の特徴」まで話すことになります。そこで最初は患者さんの置かれている状況 の特徴を、次のようなスライドに表現しました。
血液がんの相談に現れる「血液がんの闘病」の特徴は、「長い」ということです。血液がん治療は、 開始から早くて1年半くらいは治療にかかります。そして、治療が一応終了宣言されたとしても、な かなか「治癒」という言葉は使われず、終わらない感じというのが続いていくわけです。それでも通 院の期間が次第に空き、生活の中で患者であるという感覚が薄れていくことはもちろんあります。 最初の、赤い輪のところの気分は、衝撃が乗り越えられればあとは「がんばるしかない」となる。これ はどのがんでも一緒かと思います。それからが治療期間が非常に長いです。その間に、いろいろ なことを経験していきます。それまで未知だった病名をなんとか理解しようとし、厳しい治療と格闘 していきます。それでもひとまず治療が成功すると、次の明るい青の丸い気分になるだろう、なって ほしいなと思います。次に、これもどのがんも一緒かと思いますが、このあたりから後遺症との闘い も発生しますし、同時に、再発の不安も常に付きまといながらも日常へと戻ります。 そして社会復帰もしていくわけですが、そこで、また新しい気分がかなり加わってきます。完全に体 調が戻っていなくても、学校に行ったり、仕事に少しずつ復帰したりします。つまり気分と現実に時 折遊離が起きつつも、暮らしは病院外にいます。私たちはこれを「あれ~…な気分」と呼んでいま す。この時期、病気からの心のクリアリングをしていかなくてはなりません。そのとき最も望ましいの は何事もなく過ぎることですが、実際はなかなかそうはいかず、張り切り過ぎて調子を崩したり、も のすごい倦怠感が発生したりなどいろいろと起きてくるのですが、その事態について自分が何を悩 んでいるかもわからないでいる人も多い様子です。 この時期、患者会に参加していくという人は非常に多いです。またこのころは治療を耐え抜いて自 信を深めていて、経験上一般社会では見えないことを見たという事実もあり、独特の経験則と自分 の意見や物語を持っています。それを「患者同士」という真に横並びの人間関係で消化していくの は社会復帰の準備としてとても効果的です。闘病そのものを「もう、思い出になりました」と、言った 人がいますが、その人が診断から8年目です。「でも、まだしびれは残っています」とも言います。で すからやはり長くて完全に医療と縁が切れた気になれないのが、血液がんの特徴かと思います。 4
この長い闘病生活の折々に相談してこられます。その折々の「今」というのがどのよう な時期なのか、血液がん闘病の全体を理解し、それぞれの相談の語りの中から「ど の時期(今)なのか」を聴きとっていくことが非常に大事です。つまり、「その治療法は これこれ」とか、「それについてはこの情報があります」というだけで完成できないのが、 血液がんの相談の特徴の1つかと思います。 以上が、相談員と合意している電話相談の支援の基本です。私たち相談員が「医療 について解説してあげる」という姿勢ではなく、情報を一方的に提供するのでもなく、 「今ある日本のがん医療を、相談者さんと相談員が共有する」という感性で向き合うと うまくいくと思います。 5
血液がん医療の関連システムで非常に重要なのが、骨髄バンクです。また同じ意味 で、さい帯血バンクネットワークがあります。さらに、クリニカル移植コーディネーター という人たちが増えつつありますが、この人たちは病院で移植を受ける患者さんとそ の家族を支援します。
日本骨髄バンクの現況です。
血液がん医療環境の特徴は、前述と重なりますが、骨髄バンクの存在があると言っ てよいかと思います。こうしているときも、骨髄バンク事業に協力されているボランティ ア数はたいへん多くて、その一般市民の方々も骨髄移植医療にとても関心が高く、 さらに患者会の歴史も古く、インターネットや紙媒体で血液がん関連の情報を出して いるグループがとても多いです。また、移植医療にはドナーが不可欠です。家族ド ナーの場合もありますが、非血縁移植の場合は全く見知らぬ人への無償の提供で す。骨髄バンク成立から20年、ひとつの医療文化を形作ってきたことになります。 8
がん電話情報センターのほかに私が所属している「血液情報広場・つばさ」の、今年 (2011年)行った患者さん向けの学習会です。日本各地で医療者と一体となって、非 常に活発に学習会が展開しています。この各地の学習会に、いくつもの患者会の運 営者の方々も参加されます。
このように記録が白黒写真の時代から、患者さんとご家族が熱心に勉強し、理解して 納得して医療を受ける、という習慣を作ってきたことになります。
2008年、名古屋で行ったフォーラムです。
2010年の夏ですが、このときはこの会場に400人の患者さんが座って学習していまし た。
また、血液がんの中にもいくつもの疾患がありますが、その疾患別に患者会がありま す。 ただ、急性白血病に限定した患者会はありません。これが実は、急性白血病の特徴 と言ってもよいと思います。急性の白血病は、まず発見(診断)されるとすぐに入院 (治療)が必要な状況にあることが多く、患者さんにとっては、自分が血液がんの患者 であると自覚したときには、既に治療がある程度済んでいたり、もう治癒が見えていた り、あるいは後遺症との闘いという新しい状況になっていたりします。使う薬剤も多種 多様であり、急展開の状況の中、「疾患名」の括りで共通の状況を確認し合って情報 交換をしている時間の余裕も、ある意味必要もないまま推移していくのかもしれませ ん。 13
従いまして急性型の疾患の患者さんは、ある程度状況が落ち着いてから「病棟患者 会」に所属することが多くなります。 治療でお世話になった先生たちや同じ時期に治療を受けた人たちと、「次に来る人 たちを支援したい」という想いで会を立ち上げます。 病棟患者会は大変たくさんありますが、ここに全てを羅列できません。私の情報収集 能力の低さも理由ですが、患者会の数は「呼吸」して移ろいます。つまり、会が3年く らいとてもしっかりと運営していたと思うと、運営者が「卒業」するのに従って終息して しまったり、また新たにできてくる、ということがありますが、それはとても自然なことと 感じます。 14
次に、がん電話情報センターの話をさせていただきます。
がん電話情報センターですが、奥にナビダイヤルの装置が見えます。
今年(2011年)11月末までの相談の移り変わりです。受付数は全体に微増はしてい ますが、実は2回線を1回線に減らしました。経済的な事情で減らさざるを得なかった のですが、回線を半分にすると相談数も半数になる、というわけではありません。「話 中」の時間が増えてしまいますから、半減以下となってしまいます。さらに、当セン ターは相談時間を限定しませんので1時間半というような相談もあります。そうすると、 あきらめてしまう人も多いはずです。2回線ない実情の、その辺が少々痛いのですが、 相談の質をさらに上げる努力でカバーしていこうと、前向きに推進しています。 17
相談数は血液・リンパがほぼ半数です。理由は単純ではないと思いますが、1つは、 先ほどお話しした血液がんの学習会の際に「がん電話情報センターの存在を知らせ る」ようにしていることも大きいと思います。
心情吐露が全体の4分の1ありますが、心情吐露は、相談員が「心情吐露があった」と 感じるとこの項目にチェックを入れます。 相談はまず、治療や家族との関係などのテーマがあってかけてきていますが、私た ちはそれを「主訴」と呼びます。その主訴(テーマ)をきちんと浮き彫りにしていくとき に心情吐露は付きものですし、心情吐露がうまくいかないと、真の相談・ニーズにた どり着けないことになります。ですから、心情吐露をうまく促すのがたいせつな技術、 とも言えます。 19
対応時間は30分未満が全体の3分の2ですが、特に時間制限がありませんので、非 常に長い(1時間半を超える)ケースもあります。 しかし電話での会話で30分を超えると、実感としてはかなり長いです。また少数です が、相談者の状況(年齢や病気から来る実情)によっては、うまく短時間に絞り込まな いと(相談者の疲労よって)話が散逸してしまう恐れもあります。 20
相談者は「本人」が半数以上で、配偶者が次に多くなっています。当然のことですが、 相談者が誰かによって相談内容はまったく異なります。これをあとの「相談の実例」で 述べます。
患者の傾向は、相談者にとって患者はどのような人か、を示しています。前の、相談 者の性別では女性が多く、ここでの患者の性別は男性が多い、というのも「電話」とい うツールと関係があるのかもしれません。
ほとんどが電話対応のみで終わります。たとえば「セカンドオピニオン」について説明 したとして、近年は、相談者もインターネットで病院へのアクセス法を検索できますの で、「では、それで申し込んでみてください」という口頭の案内で完了します。わざわ ざプリントアウトした紙をファクスで送信する、という必要がありません。
大都市近郊からの電話が非常に多いのですが、医療施設の多さ(従って患者数も多 い)、患者会活動の活発さからより良い闘病への関心を高められる要素がある、など が関係しているのかもしれません。
相談対応上の各種紹介の情報源です。これは相談員のマニュアルに掲載されてい ます。
相談員の学習資料です。がん電話情報センターの相談員となる過程では、およそ 170時間の学習時間があります。
もちろん全てのがんについても勉強します。加えて、造血細胞移植についての学習 は不可欠ですが、これには骨髄バンク・さい帯血バンクというシステム、あるいは家族 ドナーの心理等の学習も含まれます。 同時に、血液情報広場・つばさの患者さん向けの学習会にも参加することで、懸命 に最前線の情報を得ようとしている当事者の方々と同席する機会を持ちます。 27